○内村清次君 第五国会以来対日講和の問題につきましては、終戰以来五ケ年間の
国民の熱望もありますし、又総理といたしましても
国民の熱望に応えて施政方針の中に織り込んで、この
政府の方針を鮮明にせられておりまするが、国会以来この問題が
中心にな
つて論議せられておりまするこの論議と同時に、総理の今回までの施政方針から見ますところの
考え方とを
考え併せて見ますときにおきまして、これはときにおいてその一貫した表現がなされておらない点も見受けるのでありまするが、併しただ一貫しておりますのは、総理といたしましては、アメリカを
中心とするところの西欧民主主義国家群、即ち又世界の自由国家群と相提携をして、この講和問題を片付けたいというようなこの希望が、特に第七国会の施政方針に強く打出された。その後におきまして
朝鮮動乱が起りましたその当時におきましても、国連協力、積極的協力というようなことも強く打出されておられまして、客観
情勢からいたしまして、国連内におけるところの共産主義国家群と、民主主義国家群とのいわゆる
相当な対立
関係にあることは、これはもう世界何人といえども認めておる問題でございまするが、この西欧民主主義国家群、自由国家群というふうに割切
つての表現の仕方で、総理は講和問題に対しまする
政府の所信を述べられておりまするそれ自体が、いわゆる近まりつつあるところの対日講和の問題に対しまして
相当刺戟を與えておりはしないかと、私はこの点に対しまして杞憂するものであります。勿論この
考え方からいたしまして、いわゆる講和の形式でありまする全面講和或いは單独講和という問題も起
つては参りまするが、併しそういうような一貫されたところの御思想又御方針、この御方針が却
つて日本の存在につきまして、希望につきまして、他の対立をいたしておりまするところの国家に対しまして
相当刺戟を與えるような
情勢に相成
つておりはしないかということを杞憂するのでありまするが、総理はそういうようなお
考えはお持ちでないかどうか。やはり自分は自分の思想としての所信を
はつきりと打出しておるのだというお
考えであられるのかどうか。然らばそのお
考え方は一体どういうふうなお
考え方で今後進まれようとしておるか。総理の
お話を聞きますると、全面講和は好ましい、これは併しながら講和を望むところの多数の国家とや
つて行くんだというようなお
考え方であ
つたとしましたならば、これは誰でも表現できる問題である。だから一体総理はどういうような
考え方でこの問題に対処されるか、この点が第一点であります。
第二点の問題は、これは
朝鮮事変が起りましてから、これに対する
国民のこの対日講和に対するところの刺戟、或いは又国内的な経済問題に対するところの刺戟、或いは又総理が第八国会では、特に愛国心というような表現をされて、
国民の愛国心を助長するような、又そうなくてはならないというようなお
考え方も発表されておりまするが、外務省から発表いたしました二回の外交白書、二回目の白書につきましては、総理みずからお筆を入れられたというようなことも仄聞いたしておりまするが、そのうちにつきまして、いわゆる国連への積極的協力を打出すために、特にこういう戰争の
状態の中においては、
日本国民といたしましては、これに協力をしない者は即ち敵前逃亡と同じことだというような極言までされておられる。そうしてそれに愛国心を繋いでおられる。こういうようなお
考え方でこの白書というものが発表されておるのであれば、白書というものはこれは各省の所管事務に対しまして公正なる統計、或いは客観
情勢を公正に述べて
国民に訴える、そうして
国民の
気持を聞いて見るというようなことでなくてはならないと私たちは
考えておりまするが、そういうような誘導的な、自分の思想のほうに誘導して行くというようなお
考え方で更に私が問わんとするところは、更に又外交白書というものをお出しになるようなお
考え方があるかどうか、この二点を先ずお尋ねいたしたいと思います。