○
公述人(今村彰君) 本
委員会に
公述できることを、我々五十万教
職員の意向を反映できることを非常に喜ぶものであります。時間の
関係もありますので、簡潔に我々の
意見を申上げたいと思います。
第一に、この
地方公務員法案を
政府が今
國会に提案いたしまするまでのその経過における
政府の方針に対し、私は概括的な反対
意見を申上げたいのであります。現在の
政府の一般的な政策を検討いたしますると、この
地方公務員法も誠に妥当な
法律案と思います。即ち
政府の本
法律案に臨む態度といたしましては、すでに出されました
國家公務員法を最も科学的な
公務員制度として、これを金科五條として
地方公務員法案にもその原則、並びに殆んど全部をこの中に活かして行く、そうして我々の
地方公務員の身分を保障し、安定させるのである。こういうようなことを申しておりまするが、果して
政府はこの
地方公務員法案において現在の情勢に立
つて妥当な
法律を作り、我々
公務員、一般大衆のために果して妥当な身分を保障するという
考えがあるだろうかということに関しましては、我々としては殆んどそういうことが見当らないのであります。御承知のように、
政府はこの
法律案を作るに当
つて、今申しました
國家公務員法を全く移行しておるのでありまするが、
國家公務員法が一九四八年の七月のマツカーサー書簡によりましてでき上つたわけであります。当時の労働情勢というものは、これがそれから三年前の一九四五年の終戰当時、その秋に、当時の総理大臣であつた幣原さんに、マツカーサー元帥から日本民主化に関する五原則が書簡によ
つて寄せられて、そのほかに
政府は労働組合の結成を促進して日本の民主化を図らなければならない。こういうふうに積極的なところの指示が出されたのであります。爾来日本の労働組合というものは非常なる発達を示しましたけれ
ども、この間において
運営その他において欠陷なしとしないのであります。私
どもも率直に幾多の欠陷のあつたことを認めます。その結果三年を経て、一九四八年の七月にマ書簡によ
つて一応労働組合の欠陷を排除するように、そうしてより健全化するように指示されたわけであります。以来我々労働組合はここ三年間に健全な日本の労働運動、それを作り上げるために孜々として努力して参
つたのであります。従
つて三年前に一般
住民が我々労働組合口に対する批判、誹謗というものは今日の
段階においては大いに変
つておるということは私が確信を持
つて言えると思うのであります。ところが三年前の当時の情勢と今日の情勢と何ら区別することなく、より強化しておるというのが現在の
政府の
考え方であります。私
どもは現
段階においてはあの
國家公務員法がどさくさにでき上り、そうして現
段階においては積極的に
政府は
國家公務員法を改正すべき
段階に来ておるというのが一般的輿論であるにもかかわらず、何らこれを改正することなく、
地方公務員法案を
國家公務員法と同様に、より以上にこれを強化しようとしておるわけであります。こういう
政府の政策というものに対しましては、我々は全面的に反対せざるを得ないのであります。
飜
つてその
政府の
考え方に基いて提出されましたこの
法律案も、又我々が
政府当局から聞くところによれば速かに成立させなければならない。原案の通りに速かに成立させなければならない。
國会の
審議も我々の聞いておるところにおいては、非常に重要な
法案であるにもかかわらず、この臨時
國会でどうしても打上げなければならないというようなことを申しておりまするが、これは私
どもは包み隠すことなく、
政府諸君の意図というものは四月、五月の
選挙というものにこの
実施期日を間に合せるのであるということが私は否めない肚の底だと思うのであります。これでは
國会におけるところの
審議も現在の日本の
住民の意向を反映して十分に検討する
機会が外れるのではないか、こういう点に関しましては本参議院があの衆議院の圧倒的な数を擁しておりまする
政府與党、それに対してこの参議院に二院制度の本質から申しましても、十分なる
審議を私
どもは期待するわけであります。
なおこの
内容を見ますというと、私がその主要なる点について四つの点から反対しなければなりません。その第一は先ほど申しましたように、この
法律は
國家公務員法の矛盾を何ら解決することなくそのまま移行しておる点であります。いろいろな業種態の異なるところのあらゆる職場の諸君を一括して
地方公務員法で律する、こういう点を
國家公務員法において顕著にこの矛盾が今日
経験として立証されておるにもかかわらず、
地方公務員法におきましても一把からげて全部
地方公務員法によ
つて律しようとしておる。例を挙げて申しまするならば、私
ども教
職員に関しましても、これを他の
行政手段乃至は補助者的な
性格の
職員と別個の
性格を持
つておるのであります。又
行政部門を担当するものでないということは明々白々であります。かようなものを一緒に包含いたしましてこの
法律を
規定しておりまするから、たとえて申しますると我々
地方教
職員、市町村立教
職員は、我々の身分は市町村に属するわけであります。ところが第五十五條に
規定してありまするのによると、
交渉の場合において我々
職員が
当局と
交渉するというその
当局は、当然身分のある市町村になるということになるのであります。ところが議員の各位が御承知のように、現在
地方教
職員についての
人事、
給與、任免その他一切監督も含めてこれが教育
委員会、主として現在は都道府県に
設置されておりまするが、この教育
委員会がすべての
権限を持
つておるのであります。ところが我々が
当局と
交渉するといつた場合に市町村の役場の吏員諸君と同じように、何ら
権限を持
つていない町村
当局と
交渉しなければならない、何たる不合理な
法律であるか、全くこれが今申しましたように一把からげて、この
法律で律しておる。そうして労働三法の適用を排除する、何が何でもそういうふうにして行くんだというこの
法律はあまり投網を拡げ過ぎた結果、どうしてもこれは解決できないところの矛盾を持
つておるのであります。
第二には我々労働組合としての労働
基本権の問題でありまするが、この
法律案によると三十
七條、五十五條、五十
八條等に
規定をしておりまするが、労働組合として、或いは
政府のいう本
法律案における
職員団体と申しましても、先の
公述人も申しておりましたが、当然
団体交渉権というものは認めらるべき筋合いであります。ところが
団体交渉権もこれを否定して、單に陳情的な
性格を持
つているということは、これは間違いない事実であります、と申しますのは、これは先ほど蝋山さんが非常に進歩的であると申しておりまするが、何ら進歩的でない。なぜかと申しますると、この中に書いてある五十五條の「
当局と
交渉することができる。」ということがありまするが、その
交渉はどんな
交渉であるかということを
一つ各
委員は
政府の提案者諸君に聞いて頂きたいと思うのであります。こういうごまかしをしておりまするが、御承知のように政令二百一号によ
つて罷業権を
裏付とする
団体交渉権は否定されましたが、そのときの
政府の解釈声明の中に
はつきりと何としてあるかというと、この
交渉は対等の
立場に立たない
交渉である、こういうような解釈声明を出しておるのであります。これが今日の
政府の
考え方でありまして、この
交渉というものは何ら先ほどの
意見のような筋合のものでなくて、單に陳情、こういうような
内容を含んでおることは明々白々でございます。若しそれを
政府の諸君が違うというならば、なぜに
団体交渉、或いは対等の
立場に立つ
交渉ということを明確に謳わないのか。その対等の
立場に立たないと曾て
政府が声明しておきながら、なおそれは今日もその一貫した方針を打消したためしがないが、我々はこの立案過程において
政府当局、岡野國務相その他と
交渉をいたしましたが、この点は曖昧でありまして、こういう点からも、又
団体協約の面に関しましても、
政府は当初協定と言い、今日申合せと言う。協定と申合せとはどこが違うのかということを私共は
政府諸君に聞きたいくらいです。あえてそういう言葉を一日にして変えたということは、
政府が如何に我々に対して労働組合の正当な
交渉、或いは協約というような労働組合の
権利を飽くまでこれを抑えて行こう、可能な限り抑えようという一環の精神の現われである。我々が
関係方面とこの間において
交渉を持ちましたが、
政府が
関係方面に提出いたしました飜訳文は、協定のときも、申合せのときも同一の言葉を
使つておる、それを勝手に変えているという
考え方に、
政府の一環した労働政策が出ていると見なければなりません。
第三に三十六條の
政治活動の問題でございまするが、これは
政府がしばしば申しておりまするように、本
法律案の最も政治的な中心眼目であると我我は見ております。この
政治活動の
制限ということを申しておりまするが、これを
制限というならばどれだけ残されておるか、私は
政府諸君にこれを捨い上げて聞いて見たい。この一項から五項までは全面的な
政治活動の禁止と言わなくて何であるか、これを
制限、若干の
制限などという言葉を使うならば、何と何の自由が残されておるか、知
つておる方があれば私たちは教わりたいくらいです。而も
政府はこの政泊
活動の禁止をするに当
つて、我々
地方公務員の身分を保障するということを申しておりまするが、若し我々教
職員に例をと
つて申しまするならば、教育
基本法第
八條において政治的な教育を強調されております我々教
職員が、一般市民としての政治的な
経験、或いは社会におけるところの一般市民としての
経験をそれを排除せられ、そうして身分の保障があるのだというならば、まさしく監獄の囚人こそが我々の模範とすべき境遇だと思うのです。こういうような政治的な
意見を何ら述べることなく、本人の不平、不満を平和的な民主的な手段によ
つて我々の問題を解決して行こうとする。このことを抑えるならば、これは明らかにフアツシズムの擡頭を
意味する以外に私は何ものでもないと思う。我々教
職員組合は過去においてこの
政治活動の
行為に関しましては決して安全でなかつたということは、私が責任者の一人として率直に申上げます。私共はそのために絶えず自己批判をいたしまして、この欠陷を改善するように努力いたしております。併しながらこの欠陷は改善せらるべき欠陥であ
つて、何ら本質的な機能の喪失ではない。この改善せらるべき欠陷を長い期間において國民の相互批判によ
つて作り上げるこそ、如何なる全体主義にも立ち向い得る民主主義のでき上りと確信ずるのです。民主主義の確立をして、そうして全体主義と戰う。こういうことを我々は今日日本國氏として念願するならば、憲法に
規定してあるところの政治的自由、言論の自由ということは何ものにも代え難い民主主義の基盤であります。これを封圧することは明らかに全体主義に移行するところのこれは素地を作りつつあると見なければなりません。かように
政治活動に関しましては、我々は全面的に
政府のこの
考え方に対しては非常な怒りを以て反対しなければならないのであります。第四に本
法律は
政府も申しておりまするように、
地方公務員の身分保護法として作るのだ、こういうことが一応の重要な提案の理由にな
つておりますが、各
委員の
方々がこの
法律案を今日まで御検討されておりますように、保護法たるの本質は誠に少く、形式的であり、そうして
制限規定のみが「ねばならない」というふうに非常に多くあります。なおこれ対するところの罰則も非常に過電な罰則を附しております。かような
地方公務員の身分を保護するという本旨を棚上げいたしまして、全く
制限し抑圧しようとするようなこういう
法律内容に対しても反対しなければなりません。例えば
人事委員会の問題、公平
委員会の問題を取止げて見ましても、議員各位は直もにこれに気が付くと思うのであります。それは
人事委員会、公平
委員会は第三者的な
性格を持つべきものであるにもかかわらず、一方的に自治
団体長の選任するところのメンバーが三人揃うのであります。かようなことで我々雇傭されておるところの
地方公務員の不平不満、或いはそれを雇傭しておるところの自治
団体長の労働基準法違反でめるとか、その他非常な不合理をこれを解決するところの第三者
機関が、
当局の
任命した者がずらりと三人お
つたのでは、果してこれが第三言
機関としての中立的
立場を堅持し得るかどうかということは明々白々であります。御承知のように
人事院が中央にできておりますが、もは
人事院においてすら
政府の圧力に屈伏して、我々の聞くところにおきましても、第八臨時
國会において一週間を出ずして大蔵
当局と同様の言明を浅井総裁がしたと聞いております。中央において國民の注視の真ん中にある
人事院にしてかくのことし。いわんや市町村或いは県に持たれるこの
人事委員が自治
団体長の
任命するものを以て占めるならば、この将来というものは、これは
当局の第二下請
機関となるということは、私共は予想するに難くないのであります。かように以上
内容の点について大まかに申上げましたが、これらの点を以てしても、
政府原案通りに対しましては私共は絶対に反対しなければなりません。
最後に私は結論といたしましてただこの
地方公務員法案に対する反対に終始することなく現実的に
國会の我々日本國民を代表する議員各位の良識を信じまして、今日の置かれておる情勢の中において最大限にこの
法律を改善して貰いたいという三つの提案をした終のであります。
その三つの修正提案と申しまするのは、第一は先ほど申しました
政治活動の
制限を、この
政府原案を憲法並びに現在の法規に照らしまして妥当な線まで緩和すべきである。緩和というよりも保障するように積極的にして頂きたいと思うのであります。その私
どもの
考えておりまする
政治活動の
制限に関しましては、これを全面的に廃止上というのではありません。私
どもは原則といたしまして
勤務時間、の施設内、並びに地位の利用、こういう三つの原則の上に立
つて政治活動が
制限さるべきであ
つて、他の如何なる理由を以てしても、先ほど申上げました、真に長い目で國民相亙の批判の上に立
つて民主主義を発達させようとするならば、一般市民としての
活動を封殺することに対しては絶対に我々は民主主義を守る
立場から反対です。
第三に
団体交渉の問題でありまするが、私
どもがこの
団体交渉権、
団体協約権ということについては勿論労働三法の適用を主張するのでありまするけれ
ども、現在置かれておるところの情勢から申しまして、私
どもは形式的な名目に囚われません。併しながらこの
法律案に
規定してあるところの
交渉というものは
当局の一方的な拒否によ
つて交渉が不成立に終るというようなことを防止し、並びに
交渉の結果成立した文書協定は必ず履行しなければならない。若し履行しない場合には、
人事委員会の
権限を強化して紛争処理
機関としての
性格を與え、
当局に対し不履行の場合はこれを審査裁定して、これを
実施せしめるという
内容を持つたところの平等の
立場に立つ
交渉だけは明確にこの際打出して頂きたいのであります。同時にこの
交渉の提案と同様に、我々といたしましてはその
交渉を妥当ならしめ、その紛争を解決し、その協定を不履行の際に裁定を下すべき
人事委員会の
構成に関しましては、これは我々労働組合の推薦する者一名、並びに
当局及び第三者というふうに中立
機関としての機能を十分に果し得る
構成にして貰いたいのであります。
第三点としては、先ほど申しました
人事委員会の
構成並びに権能としては、第三者的な
機関としてふさわしい
構成にし、その機能又仲裁裁定をなし
得るところの機能を與えて頂きたい、こういうふうに
考えるのであります。
以上三つの提案をいたしましたが、私
ども教
職員組合はくれぐれも議員各位にお願い申上げたいのは、現在我々といたしましては、過去のことを決して私
どもだけがよかつたということではなくて、
お互いに皆さんの指導と國民諸君の批判によ
つて改善されるべき、その欠陥を直しつ日本の民主主義を発達させるべきであ
つて、こういう
人事院の勧告はベース・アップにいたしましても何ら
実施しない。
政府のそういつたような
当局の不誠意こそが今日追及されるべきものであ
つて、我我に対するこうした一方的な
法律を以て
基本的な
権利を封殺することは、決して私は現に職にある教
職員、
公務員の利益とか何とか、そういうことじやなくて、日本の民族の将来のために、どうかこの参議院の各
委員の先生方は、衆議院のこの圧到的勢力を持つ
政府の行過ぎを是正するようにお願いしたいと思うわけであります。
以上教
職員組合の本
法案に対する一般的批判と反対理由並びに主なる修正提案の
公述を終ります。