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政府委員(慶松一郎君)
薬事法の一部を改正する
法律案につきまして、御
説明申上げます。
現在用具或いは化粧品の製造につきましては、同法第二十六條におきまして、製造の登録を必要とするのであります。併しながらこれは製法の登録だけでございまして、それによりまして別に製造したそのものにつきましての制限があるわけではございません。なおこの化粧品或いは用具の広告につきましては、第三十四條におきましてその制限、即ち誇大に亘るとか虚僞に亘るとかという点につきましては禁止されております。なお化粧品につきましては、同法第四十三條におきまして、不良な化粧品即ち汚染された所で作られてお
つてはいけない、或いはそういうものが入
つて来るような
状況において作られてはいけないというように規定してございます。なお同法第四十三條におきまして不正表示、即ちそのレッテルに製造業者の名前は書いておらないのはいけないとか、或いは品名がはつきりしておらないものはいけないとかいうような規定はございます。なお用具につきましても同じく同法第四十條におきまして、不良用具の取締の点がございます。又第四十一條におきまして不正表示の用具の取締がございます。併しながらこの用具と化粧品につきましては、ただ不良なものはいけないというようなことはございますけれ
ども、併しながらそれにつきましてどういうものが不良であるとかいうようなはつきりした基準をきめる点が現在の
薬事法にはございません。と同時にこれを不良であるかないかというようなことを
国家が検定いたしますための法的
措置が何らございません。従いまして、その意味におきまして今回
改正案を
提出いたした次第でございます。実際白粉或いは口紅とか、或いは頭に使いますローシヨンのようなもので外を受ける点もなきにしもあらずでございます。又例えば赤ん坊の使いますベビー・パウダーというようなもので被害を受ける例もなきにしもあらずでございますが、それにつきましても基準が今日まで法的に定め得られない
状況にございます。従いましてその意味におきまして法的な基準が定め得るようにいたし、又これを
国家で検定いたすようにいたしたいと序ずるのであります。なお医薬品につきましては、すべてそういう点におきましては同法三十二條或いは三士三條におきまして、基準の制定、
国家検定を行い得る規定がございますのでありますが、同じく取締或いはその品質の確保を図るためにございます
薬事法におきまして、用具、化粧品におきましてはその点に欠くるものがございますので、その点を完全にいたしたいということがこの法案の趣旨でございます。
なお次に、毒物及び
劇物取締法案の御
説明をいたします。この法案の要点は、毒物或いは劇物につきましては、保健衛生上必要な取締を行うことを目的といたしております。毒物劇物の品目を
法律で定めましてその品目を追加変更いたそうとする際には、これを政令で定めることにいたしたのでございます。従来は勿論、毒物劇物営業取締法なるものがございますが、その中におきましては品目の制定は、厚生大臣の即ち省令によ
つて行われているような
状況でございます。
次に、毒物劇物製難業及び輸入業は厚生大臣、又販売業につきましては都道府県知事の登録を受けさせることにいたしたのであります。製造業及び輸入業につきましては、五年ごとにその更新をいたさしめ、又販売業につきましては二年ごとにその更新を受けさせるようにいたしたいのであります。
医薬品或いは化粧品或いは用具等につきましては、
薬事法におきまして一年ごとに製造業或いは輸入業、或いは販売業の登録の更新をさせているのでございますが、毒物劇物におきましては、製造業者或いは輸入業者といたしまして、登録をさるべく予想されますのが約五百軒ございます。且つその貯蔵或いは殊に貯蔵設備でありますが、貯蔵設備の耐用年限から
考えまして、若し五年ごとに更新せしめれば十分その実態を把握し且つその設備につきまして完全を期することができると
考えまして、五年ごとに更新を受けさせることにいたしたのでございます。一方販売業につきましては、予想されます登録するであろうという販売業者は
全国で三万軒くらいございます。販売業につきましてはその設備その他が簡單でございますことと、なお数が多いという意味におきまして、この実態を把握するために二年ごとに更新を受けさせるということにいたしたいと存ずるのであります。なお登録を受けたもの以外のものが、販売又は毒劇物を販売又は授與すること、或いはこれらの目的でも
つて製造、輸入することを禁止いたしますと共に、登録基準と登録事項は
法律で定めることにいたしたのでございまして、即ち同法三條、四條、五條、六條においてこの点に規定を設けたのでございます。事実今日におきましては、毒物劇物の取扱につきまして登録に際しまする基準が何らございませんのです。従いましてその点での危険を防止するという意味におきまして、登録基準を
法律で定めることにいたしたのでございます。即ち毒物劇物が漏れ
出しましたり或いは盜まれたりすることにつきまして、特にこれを嚴重に防ぎたいというのがその目的でございます。毒物劇物営業者はその製出所、営業所又は店舗ごとに
法律で定める資格を有する事業
管理人を置かしめまして、その実務を
管理させることにいたしまして、且つ事業
管理人を置いたとき又は変更したときは届けさせることにいたしたのでございます。即ちそれが同法第七條及び第八條に定められておるところでございます。即ちこれらの毒物劇物につきましては、その劇性或いは毒性につきまして十分な知識を持
つた者、技術を持
つた者をして当らしめるという意味からして、事業
管理人を置くことを定めておるのでございます。
次に毒物劇物営業者が、毒物又は劇物の取扱に当りまして必要な貯蔵、運搬、陳列等の取扱
方法を定めまして、毒物又は劇物の販売又は授與いたしますときには、その容器或いはその包紙に一定の事項を表示させることにいたしたのでございます。即ち第十一條にその定めをいたしたのでございまして、成分含量、更に毒物劇物に対しまして解毒剤がある場合にはその解毒剤を記せしめるようにいたしたのでございます。一方農業上使用されます毒物又は劇物につきましては、色を着ける義務を課したのでございます。勿論これにつきましては現在の毒物劇物営業取締法におきましても、色を着けることにいたしておるのでございます。即ち例えば砒酸鉛或いは水銀の製剤等につきましては青を着けさせ、又砒酸石灰或いは弗化砒酸石灰というものについては赤い色を着けることにな
つておるのでございます。なお同法第十三條におきましては、極めて毒性の強い品物を取
出して空いた容器の返還、これは元へ返還せしめるとか或いはその処理をはつきりせしめるようにきめておるのでございます。
次に毒物又は劇物を営業著聞で販売又は授與するときには、取引の都度一定の事項を書面に記載する。即ち売り渡したほうで書面に記載せしめる。又営業者以外に販売又は授與するときは、一定の事項を記載いたしまして捺印した書面を
提出せしめまして、且つその書面を五年間保存せしめますと同時に、
法律で定めますものには毒物又は劇物の交付を禁ずることとしたのでございます。それが第十四條第十五條でございまして、現在の毒物劇物営業取締法におきましては、ただ単に十四才未満の者には毒物劇物を売
つてはならないということだけの規定があるのでありますが、今回は十八才未満の者又は精神病者、又は麻薬、大麻の中毒者に売渡すこと、手渡すことを禁じておるのでございます。なお現在の毒物劇物営業取締法におきましては、業者間におきます取引におきましても、やはり文書に捺印をさせたものを買うほうから出さしてお
つたのでございますが、それは業者間におきましては十分な知識を持
つております。又その営業に関しましては、一々その必要がないと認めまして、ただ売渡したほうで一定の事項を記載しまして、そうしてはつきりして置くということにいたしたのでございます。
次には四エチル鉛と申しますのは、殊に戰時中使われたのでございまして、ガソリンの力を強めるために航空機ガソリン等に使われたのでございますが、これは非常に毒性が強うございまして、それを呼吸いたしておりますと遂に死に至るというような非常な猛毒でございます。それらの毒性の強いものにつきましては品目を政令で規定いたしまして、政令でその製油、貯蔵等に関します技術士の基準を特にきめることにいたしまして、且つ右の基準がきめられますまではその製造、輸入、販売等が禁止されることにいたしたいと存ずるのであります。
第十六條であります。この基準と申しますのは、従業員の
身体検査、或いは防毒、或いは毒を除くという、そういう設備、
処置等につきまして基準をきめたいと
考えておるのでございます。
次は厚生大臣又は都道府県知事は、毒物劇物営業者につきましてその登録の取消又は業務の停止を命じまして、又毒物劇物監視員をしてその営業所、工場等に立入検査を行わしめることにいたしたのでございますが、現在におきましては毒物劇物監視員なる制度はございません。ただ立入検査権に基きます当該官吏の資格において検査をや
つておるに過ぎないのでございます。
次は登録を取消し、又は業務を停止させます場合には、
関係者から意見を述べさせることにいたしたのでございます。第三十條でございます。
次は毒物劇物営業者が登録を取消され、又は営業を廃止いたしましたときは保健、衛生上必要なる
措置を講ぜしめることにいたしたのでございまして、それは第二十一條でございます。例えて申しますと昨年三月に青森県でこういう事件がございました。それは硫酸工場が廃業いたしましてその
措置が十分でございませんでしたために、その廃工場の硫酸が附近に流れ出まして、ために附近の井戸に入りましてそうして死者が何人か出たというような例がございますので、従いまして廃止いたしましたときは、そこにあります毒物劇物の処理につきまして必要な方途を講ぜしめることにいたしたのでございます。
次は本法で規定いたします毒物又は劇物の貯蔵、運搬、表示、営業廃止等の場合の規定は、憲物劇物常業者以外のものでありまして亭主省令で定める毒物劇物を業務上使用するものに準用することにいたしたのでございます。現在におきましては毒物劇物、例えて申しますとメッキに使います青酸カリというようなもの、或いは塗料工場におきます毒物劇物のようなものにつきましては、それらの業務上使いましたものにつきましては、何らの規定がございません。従いまして青酸カリのごときものがメッキ工場から外に出まして、かの帝銀事件のような問題も起り得るのでありますが、これにつきましては業務上使用するものにつきましての何ら制限規定がございません。従いまして、その規定を本法で規定いたします毒物又は劇物の営業者に対しまする規定を、業務上使用いたしまするものに対しまして準用し得ることにいたしたのでございます。それが第二十二條でございます。
なお本
法律につきましての予算につきましては、この実施が大部分は府県において実施されますので、この実施に際しましては営業登録に対しまする手数料で大体賄い得ると見ておるのでございまして、本省におきましては先ず予算の必要はないと
考えられるのでございます。なお且つ毒物劇物監視員につきましては、現在員の補職を以て足りると私
どもは
考えております次第でございまして、その点も御了解を得る次第でございます。
なおこの
法律は保健衞生の見地のみから立案されておるのでございまして、従いまして登録につきましても経済統制的な面は一切考慮すべきではありませんし、又考慮いたされておらないことも申添えたいと存ずる次第でございます。
以上二つの
法律案の
事務的な御
説明を終
つた次第でございます。