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証人(
大橋武夫君) 私の行きました当時は、まだ正式に恐らく請求をするというような運びにな
つておらなか
つたのでありまして、無論品物の
代金の請求をする以上は、品物が納ま
つていなければ支線ができないことは、私も役所に長くおりましてよく
承知いたしております。前拂というようなごときものは私は全然知らない。それですから私としては、納ま
つているだろう、納ま
つているということを前提にして話に行
つたのであります。
そうしてこの間の
事情をもう少し皆様に
はつきり御理解願うために、当時の
事情をもう少つし詳細にお述べを
申上げることをお許し願いたいと思います。当時特に私に、
高橋専務からこの品物の
代金の年内支拂を
調達庁へ行
つて頼んでくれということがありましたから、そんなことは俺が行かなく
つたつて君が行けばいいじやないかと、こういいましたところが、実はこれは
調達庁としては、この品物はキヤンセルにな
つておるからというので、品物は受取
つておるけれども、その
代金の支拂を拒否している。そこで
ちよつと困
つているのだという話であ
つたのであります。そこでいろいろ私
事情を聞きますというと、成るほど八月頃に
調達庁に対しまして、調達命令の取消があ
つたということは事実あ
つたらしい。そこで本来から申しますると、
特別調達庁が調達命令を取消されました場合におきましては、その旨を直ちに契約の相手かたでありまする
足利工業に通知をいたしまして、そうして事後の物品の納入を拒絶いたしますると共に速かに契約解除の手続を運ぶということが、これが当然の運びであります。然るに
特別調達庁におきましては、何らかの
事情によりつまして契約解除の手続をいたさなか
つたばかりでなく、その後
足利工業からの物品の納入に対しまして、これを無條件に受領を続けておりますのみならず、時には納入すべき倉庫を
調達庁から指定をして、そこへ搬入せしめておるというようなこともあ
つたわけであります。そこで私はまあ当時弁護士をいたしてお
つたのでございまするが、これを法律として
考えまするというと、調達命令の取消ということは、
調達庁と司令部の間の
関係でございます。ところで
足利工業の品物の納入というものは、
調達庁と
足利工業との間の契約に基いて行われておるのであります。従いまして調達命令の取消ということは、これは
特別調達庁といたしましては、直ちに契約の解除の申入れをしない以上は、法律上契約が無効にな
つたということを
足利工業に対して主張する理由とはならないわけであります。然るに当時
特別調達庁といたしましては、八月以後納入せられましたる約二千万円ほどの品物の
代金を、いざ暮にな
つて支拂うという場合におきまして、これはキヤンセルにな
つておるので、
ちよつと支拂ができないのだというようなことを言
つておる、こういうことを聞いたわけであります。それでそれは法律に照して
考えまするに、明らかに
調達庁側において契約の解除をしておらないし、又引続き物品の納入を受領いたしておりますので、この受領いたしたる品物に対しては、これは契約上正当に履行せられたる
債務でありますから、それに反対給付としての
代金支拂を適当な時期に行うのは、
調達庁として当然のことではないか。そこで私はそのことを
調達庁の係の諸君に
申上げて、そうして十分に法律的にも正当な支拂を年末までにして頂きたい、こういうことを特にお願いいたすために
調達庁に参
つたわけであります。従いまして当時幾ばくの額物が納入されておるか、幾ばくの
代金が支拂われるかというようなことは、このお願いにおいて重要な問題でなく、むしろキヤンセルがあ
つたということだけでは、品物の
代金の支拂を
調達庁が拒絶される理由とはならないのであるということを御了解願うということが主眼でございましたから、自然
只今御
質問になりましたような
事項は、当時私にとりましては余り重要な問題ではなか
つたわけでありまして、自然その点について確めるというようなことは、私としては必要を認めなか
つた次第でございます。