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曾祢益君 私は
総理大臣に対しまして、
朝鮮動乱の及ぼした国際的な
影響等につきまして御
質問申上げたいと思うのでありまするが、時間を節約する
意味におきまして数項目に分けまして全部
質問を先にさして頂きまするから、まとめて御
答弁下さるようにお願いいたします。
第一に
只今の
国際関係につきましては、私が喋々申上げる必要もないくらい全
世界を挙げてこの
朝鮮に対する
中央軍の大量を投入、この
事態に対しましては
世界の
戰争か平和かの岐れ道ではないかというようなことから、全
世界を挙げて
関心の的にな
つておるのでございます。従いまして
イギリスとアメリカとの両
首脳部が緊急な会談を持つというふうな非情な
事態にな
つておるのでありまして、我々
日本国民といたしましては、この問題の成行きに対しまして非常に重大な
関心を持
つておると共に、この
国際情勢の
見通し等につきまして、進んで
総理大臣から
国民に対してその
見通しを告げるというようなお
考えはないか。又これに関連いたしまして
日本国民のこの切実なる平和への
希望乃至
日本の
国家の将来の安全に非常に至大の
関係のありまするこの問題に関する
日本国民の要望を率直に
世界に告げる
意味において、進んで御
発言あ
つて然るべきではないかと思うのであります。然るに今日まで不幸にいたしましてこれらのことにつきまして
外交権がないからという
占領下の
情勢の
必然性とも見えるかも知れませんけれ
ども、このことは
外交ではないのでありまして、
日本国民の
希望であり、いま
一つは
当局の
見通しの問題であるのでありまするから、進んで
説明をして頂きたいと存じます。
そこで第二の点でありまするが、
国内におきましても、又全
世界に亘りまして如何にも第三次
世界戰争が殆んど必至であるような、いわゆる先走
つた議論が行われておるのではないか、このことは我々としても決してゆるがせにできない点ではないかと思うのであります。併しながら現在の
世界の
情勢を観察いたしまするに、今直ちに
朝鮮動乱から第三次
世界戰争に突入することは非常に
可能性が薄いのじやないか、それにはいろいろな理由が挙げられましようが、極めてこれを簡單にかいつまんで見まするときには、やはり
基本におきましては
ソヴイエト連邦の
首脳部におきまして現在の
米ソの両方の力量、
軍事力、或いは
潜在戰力等を全部合せまして
考えましたときに、第三次
世界戰争、
米ソの
正面衝突をもたらすようなオープンな
戰いに行くことは損である。
従つて第三次
世界戰争には発展しない、ソ連の
軍事力はそのまま無傷のままに保持させつつ、而も冷たい
戰争を各地において強いる、かような根本的な戰略に乗
つておるのではないかと思われる。而して今一方
西欧陣営におきましては、もとより
予防戰争のごときことは
西欧陣営の
民主主義の特性からして或いはやらないであろう、かような
二つの
意味から、更に又これに追加いたしまして、
国際連合が
世界の
安全保障に関する
能力及び機能を相当強くしておる、かような三つの
條件からいたしまして、直ちに
朝鮮動乱の結果、勿論今後いろいろな変転がありますでしようが、直ちに第三次
世界戰争に突入するんだというような先走
つた観測は誤りではないかと思うのでありまするが、若しそういう御
意見であるならばこれを率直に述べて頂くことが先走
つた議論を冷静化する
意味におきまして極めて妥当ではないかと存じまするので、
総理大臣の御
所見を伺いたい。
さて第三点でありまするが、かような
国際情勢が直ちに第三次
世界戰争には突入しないといたしましても、併しながらもとよりこの
中共の
朝鮮に対する介入ということは非常な
危機を孕んでおることは申すまでもないのでございます。従いまして、この現在の
危機を如何に
打開するか、又し得るかということが我々の
重大関心事でありまするが、その点に当りまして
中共の
意図は
奈辺にあるかということが、私は一方におきましては非常に重要な要素ではないかと思うのであります。この点につきましては、先ず
朝鮮という地勢から言いまして、
朝鮮が曾ての
日本の
大陸へ侵略する
一つの路線であ
つた。又逆に
大陸の
侵略勢力が
日本列島及び太平洋に侵略する場合の廻廊であるというような特殊な地勢掌的な
地位にあると思うのであります。従いまして
朝鮮の
事態に関して最も直接な、且つ近接な
利害関係を持つ国は、
朝鮮を除きましては
日本、ソ連邦、及び
中国、この三ヶ国であるということは、これは
議論の余地がないと存ずるのであります。かような
見地におきまして、
中共が若し真に
中国的見地からこの
朝鮮の
国境方面に対しまして、軍事的、政治的並びに経済的のいろいろな
要求を持つということは、これは極めて私は妥当ではないか。殊に経済的には皆様も御承知のように、あの
鴨緑江を中心とするところの
水力電気のこの供給に対しては、死活的な
緊要性を持
つておることは勿論でございます。従いまして
中共が真にさような
意味だけであるとするならば、このたびのこの
中共の介入問題の
解決につきましては、
国連を通じまして列国との話合いによ
つて解決の途がある。
国連側がしばしば
中国の
領土を犯すことはない。並びにこの政治的、経済的の
要求については合理的なものはこれを容れて行くという
態度を示しておる。そこで我々の平和への
希望があると思うのでありますが、ただこの
中共の
意図がそうでなくて、若し
国際コミンフオルムの線に乗りまして、飽くまでもこの
世界の
軍事力のバランス、これを破
つて西欧陣営をして
極東に釘付けし、その出血を強要するというような準ソ連的な
見地に立
つておるとするならば、はた又
中共が現に呼号しておるごとく
対ソ一辺倒の
政策、或いは東亜の
解放と言いまして
日本まで
解放する、
反米闘争の
解放と言
つておりまするような、かような
意図を以てするとするならば、これは真にその
影響は恐るべきものがあるのではないかと思います。従いましてこの
中共の
意図が
奈辺にあるか、この点こそ
一つの大きな我々の
関心の的でなければならない。これに関しまする
総理大臣の
一つの見解を伺いたいと思うのであります。
次に
日本といたしましても、
只今申上げましたようにこの
朝鮮の
事態に関しましては当然に十分なる
発言の
地位にあるということでございます。で、さような
意味から我々
日本国民といたしましては
朝鮮問題に関して、
日本国民の
希望はこうであるというようなことを
世界に率直に述べるべきではないか、我々はかように
考えるのであります。殊に
日本国民といたしましてはこの現在
国際連合が如何にこれを処理するか、特に
西欧陣営が若しこの
国際連合の
権威を失墜するというような
宥和政策、
西欧の軍事的な現状から見て必要であるというような
見地から、この
国連の
安全保障に関する
能力と
権威とを失墜するような、かような
取引をやるということであるならば、我々としてはこれは非常な大きな危惧を持たざるを得ないと思うのであります。従いまして
日本といたしましては、極めてかいつまんで申すならば、先ず第一に
朝鮮に対しまして如何なることを
考えるかということを申しますると、真に民主的な強国な
独立国朝鮮の統一を
我我は強く
希望せざるを得ない。第二に
朝鮮問題の処理は飽くまで平和的な
方法を以て、
国際協調を以て処理して貰いたい。第三に
只今すでに申しましたように、
国連の
権威の維持ということは非
武装平和日本の将来にとりまして非常に重大なことである。この
国連の
権威を失墜するような
方法によ
つて解決されることは、
日本の
安全保障並びに
世界の平和上において非常に重大なことであるということを叫ばざるを得ない。第四に
中共に対しましてはすでに申しましたように、
中共が真に
中国的な立場に返
つて合理的な線において
事態の
收捨に当
つてくれることを強く
希望する。又一方
国連に対し、中又
西欧に対しましては平和的な手段による賢明なるステーツマンシツプの発揮によりまして
事態を
收捨して貰うと共に、先ほど申しましたようなアピーズメントのための妥協をかようなことにのみ走
つて、
極東及び全
世界の平和に類を及ぼしてはならないということを
希望したいのであります。
最後にかような
日本の諸種の合理的な
要求に対しましては、当然に
国連の総会に
日本代表の出席が認められ、その席上
日本の切々たる
要求の開陳の機会が與えられることを私は当然に要請すべきではないかと存ずるのでありますが、以上の点に関しまする
総理の御
意見を伺いたいと思います。次に
日本の再武装並びに
日本の人員を
軍事力として利用するというような
意見がぼつぼつ
外国において伝えられております。この中には
中共を
一つ誘い出すためのソ連の宣伝もあるやに思います。又同時に必ずしもその
方面ではなく、
西欧陳営からもかようなことが叫ばれておることは事実でございます。これらの点につきまして、即ち
日本が再武装しない、又すべきではない。
日本人は決して再び侵略
戰争をしないのみならず、
日本人を
軍事力として
外国に派遣するようなことは如何なる形において、義勇兵、傭兵或いは警察予備隊、如何なる形におきましてもさようなことはしない。これこそ我々のはつきり
世界に告げなきやならない点ではないかと思うのであります。
従来の
総理の御
所見は大体私が今申上げた線に沿うておるとは思います。が、この際明確率直にこの点に対する確認を願いたい。即ち再武装をせぬ。又
日本の
軍事力は如何なる陣営に利用させることにおきましても国外に使うということはしない。もとより
日本国としては
独立の曉自衛の
能力、自衛権そのものはあるけれ
ども、自衛
能力の根幹であるというところの戰力は持たないというこの平和憲法は維持して行くという、かような御所信であると思うのでありますが、御確認を願います。