○風早委員 第三に、全面
講和と單独
講和と、この両方のいずれが
日本国民に対して利益となるか、この問題について
首相の所見をただしたいのであります。しかしこの問題はただ抽象的の論議の
段階ではない、今日は具体的に、われわれが貿易一つと
つても、実際中国やソ同盟、こういう
アジアの
近隣諸国とほんとうに
友好関係に入り、これと自由の貿易ができるような
講和であるか、あるいはこれらの国々と敵対
関係に入る
講和であるか、この二つのいずれがわれわれに実際に利益を與えるのであるか、このことが真剣に具体的に一つ一つの経営についても、メーカーの中でも問題にな
つておる。そういう
段階でありますから、そういう点については、ただ單なる仮定の問題というものではないのであります。そのつもりで
お答え願いたいと思います。
今年初頭に
講和論議が再燃しましたときに、二月十三日の東京
新聞によりますと、
講和と
経済界の
要望と題して財界人の
意見を載せております。われわれはその都度国会においてこれらの
見解は出しておりますから、今この際は重複して申し上げませんが、ただ思い起してもらうために帝銀の社長佐藤喜
一郎氏、野村証券の社長奥村綱雄氏、さらに……(「みな資本家じやないか」と呼ぶ者あり)みな資本家でありまして、皆様方のお好きな資本家なのであります。その資本家がみな異口同音に中共あるいはソ同盟を抜きにしたような
講和はナンセンスだと
言つておる。その人たちは何とか早く
講和が望ましいということを
言つておる。ただこういう人たちはみずから犠牲を拂
つて、みずから先頭に立
つて講和の実現のために努力しようとしないが、みな望んでおる。またこういう古い
資料でなくとも、ごく最近の
アメリカの下院の歳出
委員会におきましても、ゲーリー氏の
質問に答えて、フアイン博士が証言しておりますが、そういうものを見ましても、実際
アメリカと
日本との取引は限られておる。やはり
日本は、近隣
アジア諸国との
関係がほんとうに重要で決定的なんだと、いうことを、一々品物まであげましてよく証言しておる。実際こういうような事実を見ましても、内外ともに
日本が客観的に見ても、どこと実際利害
関係が深いかということは、十分に証明せられておると思うのであります。この
段階におきまして、われわれは、たとえば今度の朝鮮の問題が始ま
つて後、いわゆる特需景気というものが起つたわけでありますが、この特需景気の
段階になりまして、いよいよこの問題がほんとうに各メーカーに浸透して来た。私どもはたとえば大阪あるいは神戸あたりへ
参つて、いろいろな実業家の諸君にも会
つておる。そこで懇談会をや
つて、いろいろ聞いてみますと、これはもう実際みな困
つておる。特需景気といいますけれども、実際その注文を受けて困
つておる。値段についてもいろいろな制限があるし、また納期にきわめて制限があるし、納期をはずれれば罰金だ、こういうことで、さらに原材料が暴騰しておるというようなことから、実際にこれはや
つて行かれない。これが戰争とからみ合
つて来ておるという
段階になりますと、いよいよ今の貿易の態勢ではや
つて行かれないということがはつきり出て来ておる。こういうことは、具体的には池田
大蔵大臣や周東安本長官にあとで関連してお尋ねしたいと思います。が、
首相に対して私はこの際
日本の
国民が実際今どういう岐路に立たされておるかということをひ
とつ考えてもらいたい。今
吉田首相がや
つておられることは、一つ一つこれは單独
講和の地ならしをや
つておられますが、このことは同時に実業家をも含めて——もちろん労働者は言うまでもありません。農民もそうです。中小商工業者に至
つては言うまでもない。しかし実業家、大メーカーでも非常に困
つている。タンクの注文がある。タンクの注文があ
つて、これでしかし実際合わない、ところがその同じメーカーに対して、たとえば農業用のトラクターが中国からどんどん注文がある、これを引受けたならば必ずもうかる、こういうふうな場合に実際そろばん
関係からいいましても、どちらと
友好関係を結んだ方が得であるかということはわかる。この問題がやはり私は今日
政府当局の
責任としても十分に
考えられなければならない根本の問題であると
考えるのです。全面
講和、單独
講和ということを、ただ抽象論議だ、あるいは東大の南原総長のあの全面
講和論に対して、
吉田首相があれは曲学阿世だというふうなことを言われたということが伝えられておるけれども、そういう抽象論議ではない、実際今
国民がどつちに行くことが、将来の
日本の利害
関係を決定するかという重大な関頭に立
つておるということを知
つておられるのか、どつちが実際
日本に利益を與えると
考えておられるか、こういう点についてひ
とつ首相の所見を伺いたいのでありますが、なおその際に……。