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足鹿覺君 私は、
日本社会党を代表いたしまして
昭和二十五
年度産
米価についてわれわれの
米価に対する基本的な態度並びに主張を明確にしつつ、以下五項目につきまして
政府の所信をたださんとするものであります。
まず第一に生産者価格についてであります。およそ再生産を保障する
米価とは、生産農民が絶対に讓ることのできない最低限の要求でありまして、今日までこれを要求し続けて参たのでありますが、この農民の生産、
生活防衛の最低限の、きわめて謙虚なる要求に対しまして、
政府が農民に與えたものは強権供出と低
米価政策のみであつたことは、あらためて指摘するまでもない、
天下周知の事実であります。しかるに、
昭和二十四年よりドツジ安定政策が生み出しました
わが国経済循環の変調と、さらに
外国食糧の大量輸入とは、相互にからみ合
つて農民
経済を窮乏の一遂に追い込み、
政府が
わが国農業の維持存立を必要とする限り、従来の農産物価格政策は、ここに重大なる転換期に到来したといわなければならないのであります。すなわち、農民
経済が單なる価格政策によ
つてのみ、その所得の安定を得ることの困難であることはもちろんでありますが、価格政策は、またそれ自体の政策目的を農民所得の安定と向上に指向しなければならないのでありまして、農民が主張する最低限の要求もまた重点をここに置いておるのであります。この意味において、去る十一月二十九日より三日間開催せられました
米価審議会が、生産費計算方式に基く五千八百円を生産者価格として答申したことは、けだし当然というべきであり、きわめて妥当なるものと確信するものでありますが、
政府は、
審議会の答申に対し、今日まで一週間を
経過いたしましたが、これが
予算化についてはきわめて誠意を欠く態度が多く、答申の実現のためにいかなる
措置をとつたか、また今後いかに
努力するつもりであるか。安本、農林両大臣の所信のほどを承りたいと存ずる次第であります。
政府は、今回の
米価決定にあた
つて、供出最盛期に至る今日までその決定を遷延せしめ、総司令部との折衝を終えて、この結果をも
つて強引に
米価審議会に臨み、
会議を一方的に押し切らんとして失敗をしたのでありますが、
政府は、
米価審議会を昨年九月設置以来、その答申をことごとく無視し来り、今回また、これが答申の実現のために何ほどの
努力をも傾注せず、一方、
米価決定の最終的責任を
審議会に転嫁しつつあるこの意図はあまりも明白でありまして、われわれは、
政府の
米価審議会を一片の形骸と化せんとする、非民主的な、農民を愚弄する態度に対しまして猛省を促すと同時に、
米価審議会設立の経緯を再考し、人事院の
勧告にも比すべきこれが答申尊重を強く要求するものであります。
第二にたださんといたしまする点は、
政府は将来
米価決定の方式をいかにする考えであるかということであります。すなわち、
米価審議会を存続するのかどうか。その存在の意義を
政府みずから事実上否認したるがごとき今日の
現状において、その性格を
決議機関として一新しないならば無意味であると思うが、
審議会の性格を変更する意思があるかないか、また財政法によ
つて、
米価は
国会に決定権を與え、
予算の
審議と表裏関係においてこれを
審議することが適当とも考られるが、
政府の構想について伺いたいのであります。
第三には、
米価の算定方式について、
政府はすみやかに生産費計算方式を採用すべきであると思うが、その意思と用意があるかないかということについてお尋ねを申し上げます。本来
米価は、それによ
つて米の生産に要した費用を回收し、次の再生産を確保せしむることを主眼とするものでありまするから、基本的には生産費計算により形成さるべきことは、何人といえ
ども動かし得ない大原則であります。さらに最近における客観
情勢の推移は、
わが国食糧の自給態勢の急速強化を要請しつつあるにかんがみましても、
国民食糧需給上、極力国内産米の増産と、その最大限の集荷をはからなければならぬのでありまするから、供出農家として限界にある農家の再生産の確保をはかることは、單に農民だけの要望ではなくて、
国民経済的な要請であると申しましても、あえて過言ではないと存ずるのであります。農林大臣は、旧来の方針に拘泥することなく、
米価について生産費方式を断行すべきであると思うが、その準備を進めておられるのでありますか、お伺いをいたしたいと存ずるのであります。
第四に消費者価格決定について、
審議会は
現状すえ置きを建議しているのでありますが、生産者価格と消費者価格の調整の基本方針について伺いたいのであります。
政府は、来年一月の消費者価格改訂を、十キロ五百二十円を予定しておると伝えられておるのであります。現在の十キロ四百四十五円に比し約一七%の値上りとなるのであります。
政府は、この程度の
値上げは減税や
賃金増加によ
つて吸收すると言われますけれ
ども、
賃金の増加による收入増には常に時間的なずれがあるのでありまして、また減税も階層別によ
つて大きな差異があります。いわんや今回の減税が、エンゲル系数の高い低額所得層に減税率が低く、これら
米価の値上り分と相殺することはできません。かりに相殺ができ得たといたしましても、それでは、
勤労者にと
つては今回の減税は何らの
負担軽減にならないところの
自由党、
與党の欺瞞政策といわれても何ら弁解の余地はないと申し上げてさしつかえないのであります。
消費者価格と生産者価格との調整は、中間経費の節減も必要であります。適当な二重価格政策によることが絶対必要と思いまするが、
政府のこれに対するところの所見はいかがでありましよう。最近、中間経費節減に関する
国民の強い要望に抗しかねて、
政府の一部には、協同組合の收入の主要なる源泉とな
つている集荷手数料、農業倉庫保管料、委託加工賃等の引下げによ
つて本問題の解決を糊塗しようといたしておる動きがあるようでありますが、これら諸料金の引下げによ
つてもたらされる組合経営の
危機は、直接農民の
負担の過重する結果とならざるを得ないのでありまして、農協の強化育成が叫ばれている今日、見当違いもはなはだしいものでありまして、われわれの断固
反対するところであります。私
どもが指摘いたしたい、中間経費中具体的に節減の余地ありと認むるものの二、三を例示申し上げますならば、まず第一に、食管人件費、
事務費四十三億円は、行政費として
一般会計負担に切りかえることが妥当である。運送費百二十三億は、元請制度の得失の検討、プール計算の適正化、輸送合理化によ
つて、二十数億の削減は当然予想されておるはずであります。また食糧証券に対する金利日歩一銭三厘、六十一億円は、資金の高率回転等によ
つてなお節減の余地があると考えるのでありますが、これらに対して安本長官の御見解をただしたいと存ずるのであります。
かくのごとく
相当の中間経費は節減可能と思われますが、しかし、消費者価格の
現状すえ置きの財源としてこれのみに期待し得ない
現状において、生産者及び消費者間の調整はいかなる
方法によ
つて行い得るか、真劒なる検討を要する問題であろうと存じます。すなわち、農林大臣がしばしば増配朗報として発表したり、また取消しをしたり、
国民は迷
つておるのでありますが、この配給増加による米食率を
引上げ、も
つてやみ依存度を低下せしめると同時に、一方生産者価格の値上りによ
つて生ずる輸入補給金の減少分約四十数億円、農家所得税收入増加の約三十億円等にその他を加えてなお不足する部分は、一般財政
負担による二重価格制の実行によ
つて生産者価格と消費者価格との調整は可能と考えておるものでありますが、安本長官の御見解並びにこの調整に対する方針を承りたいと存ずるのであります。
最後に、
米価の国際価格さや寄せの問題について大蔵大臣に伺いたいのであります。最近におきまして、
わが国経済は、貿易の増加、安定帶物資価格差補給金の廃止等によりまして、物価体系がおのみずから国際体系に接近しつつあるので、この際農産物につきましても国際価格を考慮せねばならず、それゆえにこそ……。