○尾崎末吉君 私は、ここに自由党を代表いたしまして、ただいま上程せられました
昭和二十五年度
一般会計予算補正(第1号)並びに
特別会計予算補正(特第1号)及び
政府関係機関予算補正(機第2号)に対しまして
賛成をいたすものであります。(
拍手)
今、この
昭和二十五年度
予算補正を総括してみますとき、第一に、終戰以来
国民が苦しんで来た租税負担の
実情にかんがみ、かつわが自由党の責任ある公約による大幅減税を忠実に盛り込んであるのを見られるのであります。第二に去る六日はからずも勃発いたしました朝鮮動乱を機といたしまして、世界的に軍需資材等の需要が急速に高まつた影響及びその他によりまして、
わが国の経済が活況を呈し、輸出と、いわゆる特需の増加を見つつあることを考慮して、財政の安全性を十分に確保するためインベントリー・フアイナンスを設けた
措置が見られるのであります。第三に、強い
国民の
要望にこたえて、当面緊要なる産業資金の疏通をはかるために必要な
経費をあとう限り計上した点が明らかであります。第四に、
災害復旧費、失業
対策費、
地方財政平衡交付金等の増額等、この際必要やむを得ない使途に充てるための所要
経費を計上いたしてあるのであります。第五に、国家公務員及び公共企業体
関係の給與改善の
経費の捻出に
努力のあとがうかがわれるのであります。
今これを歳出の面について申しまするならば、大きな特異性あるものとして、価格差補給金は、
昭和二十四年度
予算においては当初二千二十二億円であつたものを、
政府の
努力により、
予算補正において一千七百九十二億円に減じたのでありましたが、
昭和二十五年度におきましては、当初
予算九百億円に減じてこれを計上いたしたものを、今回これを六百四十億円に補正し、産業を正しい自立の姿に帰らせることと、国際信用の回復をはか
つておるのであります。来年度におきましては、さらにこれを三百億円以下に減ずる
計画とのことでありますが、なおおもな点について簡単に申しますならば、
一、外国為替特別会計は、本来から申しますれば、一時借入金でこれを処理するのが適当なのでありますが、インフレの防止と、今後の財政に安全弁を持つことを必要として、一般会計から百億円を繰入れたことは、まことに妥当なことであると申すべきであります。
二、現在及び現在以後最も必要とせられる産業資金供給の円滑化を期するため、とりあえず二十五億円をも
つて日本輸出銀行を設立し、また中小企業信用保險制度の創設と、中小企業に対する見返り資金の一、四半期における貸付高三億円を九億円に引上げたこと、
国民金融公庫への出資を十億円増加いたしたこと等重要な施策が盛り込まれておるほか、さらに現在瀕死に悩む農業協同組合に対する
予算としまして報奨物資の損失補填金が計上されておるのみでなく、さらにこの農協に対する更生方策等が立てられ、他面農林中金を通じて農
漁業に対し低利にして長期と短期との資金供給の道が開かれることが明らかとな
つておることは、特筆すべきことであると思うのであります。
三、
災害復旧費の今回の増額は、必ずしもこれをも
つて十分とは申されないといたしましても、国家財政の都合上可能なる
最大限の処置であり、なお
政府は新たに
災害起債のわくを拡充してその遺憾なきを期する
計画であるということは適当と申さねばなりません。
四、国家公務員並びに公共企業体勤務員の給與ペース引上げが、人事院勧告の線に近く、平均一人一千円程度増額の実現ができますことは、まことに喜ぶべきことであり、なお不十分ながらも年末手当の支給の道が開かれたことも、一両年前までの年末における公務員を初めとしお互いの苦しい経験と思い合せますとき無量の感があり、御同慶と申さねばなりません。(
拍手)
五、
地方財政平衡交付金三十五億円の増額につきましては、これを不十分なりとして、なお増加すべしとのことにつき論議が多いのでありますが、愼重にこれを考えましたならば、今年度の
地方財政は、全体的に見て税源の増加、国庫交付金の増加等によりまして、前年度に比し財政規模が著しく増大いたしておるのであります。従
つて、そのやり方により
相当に伸縮性があるのでありますから、ここに善処の道が見出され得ることもあるべきことを思わねばなりません。なお第七回
国会における野党各派の
地方税法通過引延ばしの作戦によ
つて、これが決定を第八
国会に持ち越されましたので、新
地方税法実施が遅れたため、年度内の徴税期間が短かくなり、納税額が一時に重
なつた結果といたしまして、納税者に納税困難の度合いを加えたこと等も原因いたしまして、いまだ真の実績をあげるに至らず、従
つて地方財政收支の
実態が明確になる段階ではないのでありますが、国税の自然増収の
実情から見ますれば、今後
地方税收の増加も期待しがたきにあらざることは申すまでもありません。また
地方財政は、歳入面においても歳出面においても合理化の余地が認められることは、既定の平衡交付金の配分についても、
地方の
実態に即してなお検討を要する点があることに思いをいたさねばなりません。以上のような事情を考慮するとき、今日において三十五億円増加がはたして不足かいなかの
結論を出すべき時期ではなく、今回の
補正予算においてはこの程度の増額をも
つて一応妥当なりとし、今後さらに
地方財政の
実態を的確に把握して平衡交付金制度の運用に最善を期すべきであると思うのであります。
農業関係予算におきましても、野党の
諸君によ
つて種々の批判が行われたのでありますが、この
予算は、二十五年度
補正予算のみでなく、二十六年度
予算並びにその
計画を通じて見るべきものであると思うのであります。そこには農業施策
経費のほか、融資の
計画、米価引上げの
計画、供出制度の是正、課税軽減等の問題もあわせて見るべきものであり、單に一般会計の
予算面だけをも
つて批判することの当らないことは申すまでもありません。この
補正予算におきましては、八億八千七百万円を繰入れての農業共済再保険の拡充、麦の増産
対策費一億四千万円の繰入れ等によ
つても、いわゆる興農政策の一端はうかがわれるのであります。またパリテイ計算のほかに、報奨金に該当するものとしてパリテイ計算額の約一割五分ほどを算入をいたした五千五百二十九円という新米価の
計画は、実に農業経営の安定が意図せられておることを見ることができるのであります。(
拍手)そのほか、さらに二十六年度の
予算においては、農業施策の見るべきものが行われると信ずるのであります。
歳入の面について申しますならば、源泉所得税の大幅軽減を初めとし、物品税、砂糖消費税、揮発油税が大幅に減ぜられたほか、
国民もこれを喜び、共産党員でさえも喜ぶ酒税の大幅減少をいたしておるのであります。(
拍手)野党の一部
諸君によりまして、
政府及び與党の言う減税は税法上の減税であ
つて、自然増收をやるのであるから実際の減税ではないなどと言われるのも耳にするのでありますが、
政府は申告所得税のごとき自然減収をそのまま
予算面に計上いたしておるのを見ましても、事実は額面
通り大幅な減税と相な
つておるのであります。(
拍手)なお二十六年度
予算におきましては、七百億円の大幅減税を行う
政府の
計画が明らかとなり、
国民の期待と喜びとは、けだし大なるものがあるのであります。(
拍手)他面において租税の自然増收が六十九億円近く見込まれておることは、歳出面におきまして百億円の外国為替特別会計繰入れを行いながらも多くの緊急施策の実現を可能ならしめておるものとして、局部的のことながらも、安定から復興への前進として喜ぶべきことであります。
なお一言ここに電力再編成の問題に関して真相を明らかにしておきたいと思うのであります。御
承知のごとく電力再編成は、マ元帥の書簡により、去る十一月二十四日、ポツダム政令によりこれを決定いたしたのであります。その
内容は、第七
国会に
政府が提案いたしまして野党
諸君の協力を得るに至らず、
審議未了と
なつたものとほぼ同様のものであります。しかるに野党
諸君は、電力再編成をこのポツダム政令によつたことに対しまして、あるいは
国会審議権の無視であり、
政府の謀略であるかのごとき強い非難をいたしておるのでありますが、その所説は当らざるもはなはだしいものであります。前に民主党所属の参議院議員稻垣平太郎氏が通商産業大臣であつた去る第七
国会当時、日本発送電会社はポ政令により集中排除を命ぜられておることと、その
事業の性格にかんがみポ政令により電力の再編成をなすべきものである旨の空気が伝わ
つたのでありますが、
政府は極力
国会の
審議にまつことを希望し、この空気をとらずして、
法律案としてこれを
国会に
提出いたしたのでありますが、野党
諸君のことさらの反対と、謀略による
審議の引延ばしにより遂に
審議未了となり、第八
国会は、その期間が短かいためにこれを
提出するに至らず、今日に及んでおるのであります。
政府は諸般の深刻なる事情にかんがみまして、今
国会にその
法律案の
提出を
計画中でありましたが、この間民主党は、去る第七
国会に
提出せられました電力九分割案と著しく異なるところの五分創案を、社会党は三分創案を公表いたしまして、重ねて
本案の決定を著しく妨害するがごとき態度を明らかにいたし、本問題の混乱をはか
つたので、
政府はこれに対し善処を苦慮いたしております際、マ元帥から吉田総理あて、本件はポ政令によるべしとの意味の書簡を受けましたので、事態の急なると、マ元帥の書簡への忠実なる態度とによ
つて、去る十一月二十四日、ポ政令によりこれを決定いたした次第であります。
以上申し述べました事情により判断いたしますならば、何人といえども、第七
国会における野党の態度は
国会審議権の無視であり、今日ポ政令決定後における野党
諸君の論難は、ことさらに事実を歪曲いたし、事を構えるものであり、その責任は野党にあると断定することも当然であると信ずるものであります。(
拍手)いずれにいたしましても、ポ政令による電力再編成によ
つても事態を正常化し、所期の目的を達することを確信するのであります。
結論として申しますならば、本
予算補正は、今まで申し述べましたように
相当に苦心と
努力の存するところがうかがわれ、大幅の減税を実現しながら、産業金融の改善充実、
災害復旧対策と失業
対策の充実、公務員等の給與改善及び年末手当の支給、生活保護の充実、農業経営の安定と増産
対策、
地方財政の充実等、当面緊要の施策は、おおむね盛り込まれておるのであります。この中で、特に低米価、低賃金、価格差補給金制度等、これらの政策で、不自然な、そして国際的にも不信用なやり方から脱却をいたしまして、米価と賃金と物価とを正常な経済ベースに乗せて国際的な信用の回復をはかり、インフレを極力防止いたしながら産業と貿易との振興を期するという、正しくしかも根強いやり方は、一言にして申しますならば、間近に控えた
国民待望の講和に備えた妥当なる
予算なりというべきであります。これわが自由党が、平和国家、民主国家の理念をもととして祖国のたくましき再建を強く念頭に置き、移り行く客観情勢を正しく把握しながら不断のくふうと
努力を拂い、米国を初め連合国の援助のもとに現
内閣をして確信ある政策を行わしめる一面の現われであるということを断定することができるのであります。
最後に一言希望を申し添えますならば、特に財政と金融との調和については、見返り資金の運用と、久しく私どもが
要望し来つた預金部資金その他
政府余裕金の運用につき
一段の
努力とくふうを拂われたいことと、
地方財政につきましては、前に述べましたように、すみやかにその
実態を把握されて、二十六年度
予算においてはなお適切な
措置を講ぜられたいことと、徴税については、自然増收を追求するのあまり誤りのないよう留意すべきことと、税務行政の適正を
一段とはかられたいことであります。
野党の
諸君も、党略に基く反対せんがための反対や、不要なる論難をやめて深く反省いたし、正しく
国民の信頼にこたえるために、国家全体の客観的情勢と財政の
現状とを正視せられ、進んで本
予算補正に
賛成せられるものと確信をいたしておるのであります。以上、
賛成の意をここに表明いたす次第であります。(
拍手)