○梨木
委員 今
法務総裁の御答弁の中においても、たとえば
神戸事件においては地方税の撤廃とか、あるいは
生活保護法の適用を
要求するという、そういうことは單に名目に使われたにすぎないのであ
つて要するに
不法行為をやるための口実であつたというような答弁がございましたが、これは実に現実を無視するも、はなはだしい見方であると思うのであ
つて現に今
日本においては、多数の職のない労働者——これは、ほとんど六百万を数えておる。東京都下におきましても、たとえばこの間の本
会議においても労働大臣は、公共職業安定所においては三十日のうち十九日職がある、こういう状態で、これでようやく少しずつよく
なつて來たと、こう言
つておるのであります。しかしながら公共職業安定所に行
つている自由労働者諸君は一日に二百四十二円もら
つている。この二百四十二円もら
つている労働者が一日あぶれれば、その人の生活がどうなるかということは、これはあまりにも明白な現実です。そこに問題があるんです。そこでこの自由労働者の諸君が公共職業安定所に参りまして、きようもあぶれが出たということになると、その人たちは自分たちの生活の現実から出発して、どうしてももう少しあぶれを少くしてもらいたいという、これは生活を守るための、ほんとうに本能的な欲求として出て来るわけであります。そこでこれが職安へ対していろいろな団体交渉となり、あるいは陳情と
なつて現われるのであります。ところが、そういう
要求と
なつて現われたときに、職安
当局はどういうことをや
つているかと申しますると、てんでこの団体交渉にも応じないし、個人の交渉にも応じようとしない。そして少しでも多く自由労働者が集ま
つて陳情をやりますと、たちまち大部隊の
警察官がや
つて来て、どういうことをやるかというと、もうすぐ
こん棒とピストルで彈圧し始める。現実にどういうことをや
つているかと申しますと、
警察官もやつぱり働いて食
つている人たちです。従
つてこの人たちは上の者がすぐとつかかれという命令を下しますと、いくら何でも、何もしない労働者を追い散らすわけには行かない。だからどういうことをや
つておるかといいますと、目をつぶ
つて群衆の中へ飛び込んで行くのだ、そういう恐しい現実が行われている。「でたらめ言うな」と呼ぶ者あり)これは現実だ。諸君は一ぺん朝あの職安のところへ行
つてみなさい。こういうことをや
つている。そこに諸君の現実の認識の相違がある。そういう事態が起
つている。今日
憲法において文化的健康な最低生活が保障されているといわれている。しかも労働費に対しましては団体
行動をする権利が認められている。しかるに、こういう場合に情理を盡して交渉しても、そこへ来るものは警察の
こん棒とピストルということになれば、一体この人たちはどうして自分たちの生活を守つたらよろしいのです。ここに問題があるのです。これに対しまして、
政府の方は、これらの人たちの生活を安定するための努力ということをや
つておらない。それをやらないでおいて、ただ彈圧々々だけというようなやり方をや
つて行きますならば、これは東條軍閥時代の警察国家が復活することじやありませんか。このことに対する
政府の責任をどう考えているかということです。現にそのほかにもこういう問題が起
つている。この間私は本
会議におきまして、新宿職安におけるころの
警察官の発砲
事件を質問しましたところが、驚いたことには、
法務総裁はそういうことはデマであるというように答えられた。これはあまりにも現実を無視した、あつた事実を全然否定するような、恥知らずといいますか、何といいますか、表現の言葉もないくらいだ。これは現にわれわれは告訴しておる。現に被害者が出ておる。これを
法務総裁はどう考えられるのです。もしこれが現実になかつたことだということになりましたならば、これはもう
日本の
政府当局に対して人民はどう信頼を持ちますか。現に起つたことまでも
事案を否定し抹殺しようというようなやり方、これでは労働者諸君はどうしたら自分の生命を守
つて行くことができるか。刑法においては個人に対して急迫、不正の侵害に対しては、正当防衛の権利を認めている。緊急の危難に対しても緊急避難という、個人の責任を免除する
規定がある。従
つて個人々々が、その生活を守るために、
政府は何らめんどうを見てくれない、こうなれば、団体的な
行動も
憲法で認められているのだから、これが
政府なりあるいは所轄の官廳、税務署区役所等に陳情に行くのかなぜ惡い。この陳情が
憲法において禁止しているわけじやないでしよう。(「暴動だ」と呼ぶ者あり)このことを諸君は暴動という。しかしながら人が軍に大勢集まつたところで暴動になりますか人間が大勢集まれば暴動だという、そういうばかげた感情をも
つて群衆を彈圧することになりますならば、これは人民すべてを敵にまわすということになるじやありませんか。こういうばかげた政策に上
つて諸君は今後の警察行政をや
つて行こうとしているのか。この点について私は国警長官の見解を承りたい。つまり何もしない労働者に対して発砲してみたり、
こん棒とピストルによ
つてこれを強圧するというようなやり方、(「そんなことがあるか」と呼ぶ者あり)実例を申します。現に十月二十七日の新聞にも出たが、電業社という会社におきまして、いわゆる赤追放ということで追放した、ところが現実にどういうことをや
つているかと申しますと、追放した直後において、もう会社へは入
つてはいかぬ、入
つて来たら住居侵入だということで、おつぽり出そうとしている。しかしながら考えてごらんなさい。不当な首切りをやられたことに対して——労働者に対してはこの不当首切りに対して反対する権利は当然認められなければならない。これには組合の団体
行動によ
つてこの不当首切りに反対し、これを撤回することを求めることもできるでしよう、あるいは
裁判所に提訴してその救済を求めることもできるでありましよう。いろいろま方法が認められているはずだ。これが認められないとするならば、首切りは切捨てごめんになるじやありませんか。従
つてこれは当然認められている。そのことが確定的に決定しない限りは、会社へ入ることは何ら住居侵入にもならない。にもかかわらずこれを住居侵入なりとの想定のもとに警官を動員して来ている。こういうことをや
つている。しかも電業社におけるところの発砲
事件のごときは、私は現地を見て来たのでございますがこれは一層ひどい。わずか四名の労働者が裏口におつた。その裏口におつた労働者に対して、その物置をぶち破
つて、警官が六名入
つて来た。その先頭に立
つておつた指揮官が、撃てと言うて、室へ向けて二発撃つた。その直後におきまして続いて来た警官が四名の何もしない労働者にすぐ発砲した。現にそこには水平にピストルを撃つたあとが三十数発あります。私は現に見て来ておる。こういうことをや
つている。こういうむちやなことをやるから労働者がその発砲に対して自己防衛のために、何かそこにあつた鉄くずを投げた。こういうだけなんだ。ところがそれがあとに
なつて、どういうぐあいに
なつて来たかと申しますと、それから何時間かたつたあと警察の方から来まして、これもそうだ、これもそうだとい
つて、その辺の鉄くずを集めて、これを証拠物件だというわけで、結局初め労働者の方が鉄くずや
石ころを投げた証拠だとい
つて、時間がたつたあとから来て、これを持
つて帰
つておる。しかもこれが労働者が抵抗したのだ、反抗したのだということで、労働者を
公務執行妨害でやろうとしている。こういうようなことが行われている。こんなことをや
つて来ているから、一体労働者はどうして自分の生活を守るかという問題が出て来ている。こういうような現実においての労働争議の武力による彈圧をや
つて来ておるこの事態が、労働者自身がどうしてその生活を守ればいいかという問題に発展して、これが起
つて来ていることを考えなければならぬと思う。特に朝連
事件においては、どういうことをや
つておるか昨年九月八日の団体等規正令に伴う朝連の
解散に
政府はどんなことをやつたかと申しますと、
朝鮮人諸君の財産、長い間かか
つてつくつた財産を、朝連の財産だとか
つてに認定して、これを全部取上げてしまつた。そこには個人の財産もたくさんあつた。ところがその財産に対しまして、この財産は個人のものであるということで、この財産接收に対して、
日本の
裁判所に対してその権利の保護を求めた。ところが
日本の
裁判所はどうやりましたか。これは
裁判権がないということで却下してしま
つている。一体
日本において生活している
朝鮮人の諸君に対して、個人の私有財産をか
つてに蹂躙しておいてこれは蹂躙でございますとい
つて裁判所に提訴しても、
裁判所はこれを
裁判権がないということで却下する、こういうやり方をや
つておつた場合に、一体
朝鮮人諸君は
日本でどうして自分の生活を守ることができましようか。ここに私は
朝鮮人諸君の生活安定や、あるいは地方税撤廃の切実な
要求が出て来るところの根本的な
理由があると思うのであります。こういう問題について一体
政府はどのような考えを持
つておるのか。この点を伺いたいのであります。