○砂間
委員 私は
日本共産党を代表いたしまして、本
法案に反対するものであります。と申しますのは、何も今日の
中小企業を見殺しにしてよいという趣旨からではございません。ただ本
法案が、
中小企業の振興とか
救済という羊頭を掲げまして、実は何らその
救済の実を上げるようなものでない、そういう狗肉を売るところの、ごまかしのインチキの
法案であるという点から反対しておるのであります。最近におきまして、
日本の
中小企業が比較的順調に行
つたのは、終戰直後のほんの一、二年でありまして、すでに二十二年ごろからは
中小企業の危機ということが叫ばれて来てお
つたのでありますが、それがますます深刻にな
つて来た。このことは單に一
金融の行き詰まりとか何とかいうことだけではございませんで、歴代
政府の財政経済政策に根本があると思うのであります。一、二の例を申し上げますと、たとえば
政府の財政経済政策に基くものといたしましては、傾斜生産及び傾斜
金融方式並びに
融資規則による大企業偏重と
中小企業軽視、それから
中小企業に対する基本対策の欠如、ドツジ方式安定政策
施行による
一般的不況の
中小企業へのしわ寄せ、増税及び徴税の強行、
政府の支拂い遅延。また海外経済
事情の変化によるものとしましては、国際市場の変動とか、ポンド切下げの影響、盲貿易、いろいろありますが、特に最近におきましては、
日本に最も接近している最大の隣国であるところの中国に対して、貿易を禁止するというようなめちやくちやな措置をと
つている。こういうことがやはり
日本の
中小企業に非常に大きな影響を與えております。また
金融機構
制度の欠陷であるとか、あるいは
中小企業自体にもいろいろ受入れ態勢の不備というような点で、欠陷はありますけれ
ども、とにかくこういう
政府の全経済政策が、今日の
中小企業の困難をもたらして来たということは疑う余地のないところであります。そういうふうに
政府の根本政策を改めずして、ただごまかし的に糊塗的にこういう保險
制度をつくりましても、真の
中小企業の
救済あるいは振興は今後とうてい庶幾できない。この
法案は徹頭徹尾ごまかしである。なるほど五百万円以下の
資本金、それから従業員二百人以下の工場ということを言
つておりますが、この中に含まれるものは圧倒的に多いのであります。たとえば工場数について申しますと、全
日本の工場数の九八%を今言
つた範疇で占めている。従業員数から見ましても六一%、全生産額の六〇%を占めておるのでありまして、
日本の
産業経済の大部分を占めているのであります。ところがこれまで
金融機関と何らかの
関係を持
つて、その
融資を受けているのは、その上層のごく一部分にしかすぎません。先ほどの
政府委員の
答弁によりますと、まあその半分くらいは何らかの
意味において
銀行と
関係があ
つた。そして相当の部分は
融資を受けていたという非常に甘い楽観的な御
答弁をなす
つておりましたけれ
ども、しかし事実はそれとははるかに違
つております。たとえば
中小企業庁の昭和二十三年の十二月の調査によりましても、
金融機関に対して借入れ申込みをしたものは、調査対象数のわずか二八%にしかすぎない、七二%は
銀行へ金を借りに行
つておらない。行
つても
銀行が相手にしてくれないというので、全然
金融機関から見放されている。そういう事態にな
つておるのであります。また
金融機関に金の融通を申し込みましても、その
融資を受けたものは七、八割でありまして、二割程度は申込みしても受けられないという
状態にな
つております。
従つて十万近くの
中小企業の経営の圧倒的部分は
金融機関に見放されて、ごくその上層の一部分しか
金融機関とのつながりを持
つておりません。
従つて今度のような保險
制度をつくりましても、やはり
銀行は二割五分の危險を負担しなければならないというところから、比較的経営規模の大きな、そして設備のしつかりした、
担保力の、対人
信用のあるものしか事実においては恩恵に浴することができないと思うのです。
従つて今一番困
つているところの
中小企業の圧倒的部分というものは、特にこの従業員数四、五十人以下とか、あるいは
資本金百万円以下とか五十万円以下とかいうところのものは、ま
つたくこの保險
制度から見放されているということが言えると思うのです。また他方におきまして、この
法案はしよせん
金融機関の
救済になる、これは
政府委員の
答弁によりましても、過去に
金融機関が貸し出したものであ
つても
金融機関の自由
意思によ
つてこの保險に加入することができるという
お話でありましたが、こういう逃げ道が講ぜられている以上は、この
金融機関が過去に貸し出したもので成績の悪いもの、貸し倒れになるものに限
つて申し込み、そうしてその
損失を
国家に背負わせるという危險性がきわめて多いのであります。表面上は今一番
金融に逼迫している
中小企業の
救済というふうに見せかけておいて、事実は
中小企業のうちでもごく上層の一部分だけを救
つてやる、そうしてその反面においては
金融機関の
中小企業に対する貸し倒れを
国家がしりぬぐいをやる、こういうことになるのでありまして、この
特別会計の将来は必ずや大きな赤字にな
つて、やがてまた
国民にあの重い税金の中からしりぬぐいさせるという事態が起りはしないかということも案ぜられるわけであります。
以上申し上げました
理由によりまして、本
法案は徹頭徹尾見せかけのインチキ
法案であり、ほんとうの
中小企業の振興
救済にはならないという点からいたしまして、私は反対する次第であります。