○
加藤(鐐)
委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程にな
つております四つの法案に賛成をいたしますが、賛成するにつきましては数点についての強い希望
意見を持
つておりますので、それらの点につきまして一応きわめて簡略に
説明いたしまして、賛成の討論といたしたいと存じます。
現
鉱業法は公布以来非常な年数を経ておりまして、今日の時代に適しないものであり、さらに戰争中の重要鉱物増産法に盛られた非常に強い戰時的な色彩がありましたが、これが拂拭されて、民主化されたその精神は認めるのでありますけれども、私はまだはなはだ中途半端な感がいたすのでございます。たとえば地方鉱害賠償
基準協議会を官吏のみによ
つて構成し、その決議、決定が何らの拘束力を持
つておらない権威のないものであるというような点も、はなはだ中途半端であり、ま
つたく必要のないものではないか、むりにこういうものをつく
つて民主的な装いをさせたというような感がいたすのであります。あるいは通産
局長と知事との協議がととのわなか
つた場合の
処理等についての
規定がなくて、結局通産
局長に決定権がゆだねられるというような点もはなはだ不徹底であり、運用よろしきを得ない場合には、多くの問題がそこに発生するということも
懸念せられるのであります。
それから次に通産
局長に一切の
権限が與えられておるのでありますが、これは旧法の委任の形と形式的には同じでありましても、法的には大きな違いがあ
つて権限は非常に強くな
つております。この点も運用に当る政府の深く注意をしなければならぬところであると思うのでしあります。
それからまた
一つ大きな問題といた、しましては、第十七條の但書の問題でございます。これは
日本国家の自主権が侵される憂いがあり、また
産業の自主性が侵される
心配があるのであります。これはもちろん條約が締結された場合に限るものでございますからして、私はその條約が締結される場合に、この点を十分考慮すればよかろうかと思うのでありますけれども、この点は今後十分われわれが関心を持
つて見守
つて行かなければならない問題であると思うのであります。
それから鉱害賠償の問題は最も重大視しなければならないのでありますが、本法案では先ほど申しましたように金銭賠償を原則として、多数の費用を要しない場合にのみ被害者は原状回復を請求することができるというふうにな
つておるのでありますが、この問題は非常に軽く扱われている。わずかな金銭の賠償をも
つて片づけられるという
一つの観念が、
鉱業権者の中に持たれるのではないかと思うのであります。そのために鉱害の頻発するおそれがある。その結果といたしましては、国土の荒廃、食糧の減産、民生の不安定という問題、特に農民の生活権が奪われ、先祖代々の土地から離れなければならないというような大きな問題が起
つて来るのであります。
従つてこれは今後かかる国家補償の形において、おそらく特別法が制定されることになるのではありましようけれども、原則はあくまで原状回復という点に立たなければならないと私は思うのであります。そこで政府は鉱害発出の危險のある鉱区等につきましては、特に監督を嚴重にして、鉱害の発生をできるだけ予防し、それを
最小限度にとどめるところの処置が常に講ぜられなければならない。万一発生しました場合には、ただちに
鉱業権者に賠償の責任を
遂行させ、でき得る限りの原状回復の方途を研究し、実施させなければならない。これは特に監督の任にある政府の十分なるところの用意と、その責任の
遂行を要求いたしたいのであります。
それから自由党の修正案につきましては、
考えてみまするに、一口で申しますならば、私はこの法案の進歩性を多分に後退させているというふうに
考えるのであります。その根本的な
考え方が資本家を中心とする、また多分にブローカーを擁護するという結果になるのではないかと、いうふうに私は思う。特に試掘の期限延長の問題は、非常に重視しなければならぬ。幸いに最初の自由党の意図とは違
つて参りまして、二年ごとに区切
つて行くというふうになりましたことは、われわれの
考えに一致して来たので、この点ははなはだけつこうであると思いますが、年二回にわた
つて延長を許されるということは、十分この法案の中にもうたわれておりますけれども、監督官庁は十分な監督をして、実際に試掘を行いまた事業を続けている場合に
限つて延長を認めるということを十分誠意をも
つて行われないと、今申し上げましたような、自由党の諸君の意図しておられるような結果に陥ると思うのである。
従つてあらゆる情実か排除する、また例外を認めないという点については、絶対手心を加えてはならないという点を強く要望いたしておきます。
それから出願中の転売を許すという点の修正も、これはブローカーに利益を與えるという以外にはあまり多くの利益がないようでございますが、この点は政府が鉱区の出願の許可をできるだけすみやかに許可するという方針をとられますならば、こうしたいわゆる惡いブローカーを益するというような点は排除されると思うのであります。その点はまた
日本の
産業の発展の上から申しましても、出願者に対してのすみやかなる許可を與えるという点は、嚴に励行していただきたいと思うのであります。
以上が
鉱業法に対する私の要望であり、
意見でありまするが、さらに希望
條件といたしまして明確に申し上げておきたい点が二つございます。その
一つは試掘権の延長を許可する場合には、
鉱業権者が誠意をも
つて試掘に従事し、あるいは炭鉱を継続しておる実を認めた場合にのみ計可することを嚴重に実行し、絶対に例外を認め情実に流れてはならないということ。第二には政府は鉱害発生の予防については特に監督を嚴重にし、鉱害の復旧についてはできるだけ原状回復を行わしめること。この二点を希望
條件として最後に付しておきます。
採石法につきまして
意見を申し上げまするならば、従来野放しにされておりました岩石の採取が、本法の
制度によりまして
公共の利益と合致せしめられるということ、さらに従来の土地所有者の一方的な利益を押えて、他の
産業との摩擦を
調整すること、こういうふうになりましたことははなはだけつこうであると思いまするが、この法案につきましても、
鉱業法と同様に言えることは、はなはだ不徹底な感がある。運用上幾多の問題が起
つて来るのではないかということが憂慮されるのであります。そういう点は今後の
運営について十分に御注意を願いたいところでございます。特に土地の所有者の立場を守ることにまた比年が重い感があるのであります。この点はこの法の精神を生かして、
産業の発展に寄與するという点にあくまで重点を置いていただくことを要望いたします。
なお施行法につきましては、関連する
法律でございまするので、特に
意見を申し上げませんが、その運用につきましては、あくまで十分なる注意をも
つて日本の
産業の発展という
一つの基本的な方針の上に立
つて処理していただきたいということを要望いたします。
それから
土地調整委員会設置法につきまして、簡單に
意見を申しまするならば、
土地調整委員会の
運営にあたりましては、公正なる人事によるところの適正なる処置がとられなければならないということは申すまでもないのであります。
従つてまず第一に必要なことは、
委員の
人選が最も公平適正でなければならないということであります。また十分にその
資格を備えた人を得なければならないということであります。これは先ほど
質問のときにも申し上げましたように、非常にむずかしいことである。五人というきわめて少数の人間で、第三條に
規定されましたような広汎な、かつ困難な問題を
処理しまするには、非常に困難が伴うと思うのであります。
従つてその
人選につきましては十分に意を用いていただかなければならないと思うのであります。かつその任務の
遂行にあた
つては、その問題の
処理が最も公正妥当に行われるように、十分な用意が必要であります。従
つて事務局の
構成と、さらに必要なる
予算の計上ということがこれに伴わなければならないのでありまするが、この点につきましては先ほどの
お話では、なおはなはだ不十分なものがあるように
考えられるのであります。
委員会の運用が結局不十分にならざるを得ないということになりますると、この
委員会の設置ということは無意義になりまするので、その点今後万全の処置をと
つていただきたいということを強く要望しておきます。
そこで要約いたしまして、要望事項を申し上げますると、第一は
委員はできるだけ
関係産業の代表的人物を、特に労働者の立場を代表する者を入れるということが第一でございます。それから第二には、森林法、国立公園法、農地
調整法に優先する立場にありまするところの、
委員会の裁定に強い
権限が與えられておるわけでありまするからして、これらの
法律と抵触する場合には十分注意して適正な処置を誤りないようにしていただきたいということを強く要望するわけであります。以上簡單に賛成の討論をいたしました。