○
河野(平)
公述人 私は今御紹介をいただきました
河野でありますが、私の所属する団体を先に御紹介申し上げたいと思います。
東京都
労働組合連合会、略称都労連と申しますが、この組織構成は、
東京都における警察官、消防を除いた一切の都の職員をも
つて構成しております。従いましてこの中には
交通、
水道といういわゆる公企業体に属する職員と、それから公立学校の教職員全部、さらに一般
行政事務に従事するところの職員と、その他の單純労務と申しますか、清掃、土木、港湾等々に従事する職員、これらを包容した七万五千円ほどの連合体であります。そういう立場から申しますと、今まで
交通関係の公述は
河野さんが先ほど行われました。また
交通、
水道、教員関係を除いた一般を代表して、占部さんが公述されました。なお明日は
水道関係を代表して小田原さんが公述される予定であり、さらにまた教員組合関係を代表して、辻原さんが公述されるという予定にな
つております。従いましてその構成
内容から申し上げますると、私どもは四つの産業別と申しますか、あるいは業種別と申しますか、そういうそれぞれの
全国組織の下部組織としての
東京都における労組、この四つの団体が連合して組織されておるのでありますから、この四つの部門の代表の方々の公述があれば、そこで大体述べようとするところが盡きるわけでありますが、ただ組合の関係等におきましても、
東京都は何とい
つても政治経済の中心地であり、また労働運動においても、いやが上にも中心的な立場にならざるを得ないという関係で、わが国における労働運動のすべての
全国的組織の中に——今申し上げたような特殊な連合的な団体ではありますけれども、すべての労働運動のつながりの中において、
全国組織としての取扱いを受けているというのが実情でございます。こういう関係から、本日も
公述人に御指名いただいたものと了解しているのですが、そういうことから、その專門的な立場からの主張を総合すると申しますか、そういう形において若干
意見を申し述べさせていただきたいと思うのであります。
先ほど占部さんが申されましたように、
昭和二十三年の七月二十二日、マ書簡が発せられてから、ただちに政令二百一号の制定となり、さらにまた
国家公務員法の改正と
なつたことは、御承知の
通りであります。しかしその情勢においては、あるいはその必要があつた。もとより立場によ
つて見解が異なりますけれども、私たちの立場といたしましては、その当時においてすら
国家公務員法の改正、私たちの
言葉でいうと改惡、これに対しては徹底的に反対であるという主張を続けて参
つたのであります。しかし不幸にして遂にこの改惡案というものが議会を通
つてしまつた。そういう立場から申しまして、
国家公務員法それ自体に反対であり、さらにまた改惡に反対であるという立場から申しますと、この
地方公務員法の制定というものに対しましても、私どもの基本的な態度は、あくまで制定反対であります。しかし制定反対と申しましても、今の現実の情勢の上に立
つてこれを
考えますときに、單に反対一本では押し通せないという遺憾な実情にあることも見のがせない。そういうことから、改善の策として、どうしても
地方公務員法というものが制定される場合においては、最小限度かくあらなければならない、こういう
意味において申し上げたいと思うのです。そういう観点から申しまして、一口にい
つて、今度の
地方公務員法案というものに対しては、非常に遺憾な点が多い。これを特に大きな問題として摘出いたしますならば、先ほど
河野さんもおつしやられたように、何とい
つても
団結権、団体交渉権、それから団体協約の締結権、罷業権というものが確立されていないということ、それから
政治活動が全面的な
禁止に近いほど、その自由が奪われているという二点に集約することができようかと思うのであります。私どもの今申しました都労連という組織は、
昭和二十一年の六月に結成されました。しかしながらこの構成員の中には、戰前か
つて二十年もあの軍閥官僚の彈圧のあらしの中に立
つて闘
つて来た組合員も、多く包容しているのであります。従いまして労働運動というものがどうあらなければならないかということくらいについては、すいも甘いも承知しているつもりであります。そのことは、
昭和二十年の秋にいち早くも私どもは組合を結成いたしました。その結成した組合が、翌年に至
つて連合体を組織したということになるのでありますが、それ以来御承知のように、マツカーサー元帥の書簡が出るの余儀なき状態にまで
日本の労働運動を進めてしまつた。これがいいか惡いか、その責任がいずこにあるかというようなことについては、あえてここで申し上げる気持はございませんけれども、しかしあのようにいわゆる労働攻勢の熾烈な、しかも多少むりでも要求して囲えば実に勝たざるはなしという、労働階級のほんとうにはなやかだつた時代、その当時におきましても、私どもは決して当事者に対してむりな要求をし、あるいはむりな
争議行為を行つた事実はありません。
日本の再建は、何とい
つてもこの組織
労働者大衆が中堅にな
つて経済を復興し、
日本の民主化の礎とならなければ、真に文化的な、かつ民主的な平和
国家というものが建設されるものではない、こういう自覚の上に立
つて、ひたすら建設面を中心に
考えて活動して参
つたのであります。そういうまじめな組合運動が相当数多くあるにもかかわらず、一部矯激なる破壊的行動をとる組合ができたことのために不幸にしていいものも惡いものも十ぱ一からげにして、われわれの反対する、あの
国家公務員法、あるいは政令二百一号が現われ、その延長として今日この案が
法律化されんとしているのであります。私どもの立場から申し上げまするならば、われわれは人様に言われぬでも、
日本における善良なる
国民の一員である。また
東京都民の忠実なる
公僕であるということを、常に念頭から離しておりません。従
つてわれわれ都における
公務員というものは、どういう態度で行かなければならないかということについても、十二分にわきまえて行動しているつもりであります。そういうふうな自覚の上に立
つて日常運動をし、活動を続けているものにと
つては、このような
法案によ
つて自分たちの行動を不必要な程度にまで拘束されるということについては、これは非常に精神的な面から行きましても不愉快であります。自尊心を傷つけられること、これ以上のものはありません。そういう点から申しまして、幸いにして
日本の労働運動全体がわれわれと同じような見解をも
つて運動に当りますならば、このような
法律は全然いらないと確信して疑わないのです。占部さんも先ほど来申されたように、われわれのまじめな運動というものが最近結実いたしまして、それを結集したところの総評議会とな
つて現われ、か
つて矯激な労働運動を指導したところの全労連、産別会議というものは、いよいよ凋落いたしまして、その影を没するのではなかろうかという状態にまでな
つています。こういうふうに
日本の労働運動というものが非常に健全な、しかも剛健な姿で伸びようとしているときに、それに
一つのわくをはめて行動を制約するということは、別な
言葉でございまするならば、角をためて牛を殺すの弊に陥りはしないかということを心から憂えるのであります。もとより
地方公務員は、
社会公共の福祉のために
公僕として働かなければならない。前の
公述人もおつしやつたように、三十條、三十一條というようなものについては、われわれ自身も
考えているし、全部そうでなくてはなりません。このような一般的な
公僕としての守るべき義務というものは、これはそれぞれの
地方庁の中において、あるいは就業規則の形において、あるいは
服務規定の形において、それぞれこういう
規定のもとに日常の仕事に專念しているのであります。あえてここに画一的な
法律を制定して全部この
法律によ
つて律しなければならないという必要性は、この観点から見ただけでは
感じられないのであります。そういう点から申しまして、私どもといたしましては、この今の
法案の中において
意見を申し上げまする場合、
地方公務員につきましても、先ほど申されたように、公企業関係は特別立法によ
つてこれを律するということにな
つておるようでありまして、この提案された
法案は、それを除く職員ということになるわけでありますが、これについてもるる皆さんによ
つて公述されましたように、教員関係があり、單純労務、そういう関係のものも相当あるわけなのであります。その種々のものをし
ばらくおくといたしましても、一般の
行政事務に携わるものについてだけ申し上げましても、これは
労働組合法上にいうところの
団結権、団体交渉権、それから団体協約締結権というものが当然認められてしかるべきものであろうと確信するのです。それは
東京都の場合について申し上げますと、政令二百一号の出るまでは、
東京都との間にりつぱに団体協約を締結し、そして業務協議会という常設
機関を持
つて許された両者で協議の整つた範囲における一切の問題について、きわめて円満裡に問題の解決処理をはか
つて来ているのであります。ところが二百一号の政令が出るや、ただちに当局側は二百一号の趣旨に基いて、従来の業務協議会、それから団体協約、これは自然消滅に
なつたものと了解されたい、こういう申出があつた。しかしながら現実において、
法律上の問題は別としまして、実質的にはそういう形を通じて都政を
運営することが、ほんとうに筋金の入つた、中身のある
運営ができるということを
理事者自身もはつきりとこれを確認いたしまして、今日といえども、そういうことが
法律上許されていない現状のもとにおきましても、事実上においては完全に団体交渉も行い、かつ団体協約という公式の文書ではありませんけれども、
一つの覚書なり、あるいは協定書というような形において協議決定したものは忠実にそれが両者の責任において行われつつあるのが今日の現状であります。そういう実態の上から
考えてみましても、私どもが今主張していること、すなわち
労働組合法にいうところの
団結権を認めろ、それから団体交渉権、団体協約権を認めてくれということも、決して
理事者が反対すべき議論でもなければ、また現実に沿わない架空の議論を主張しているのでもありません。繰返して申しますけれども、政令によ
つてそういうことができなく
なつた現状においても、なおかつ事実上の問題としてはや
つておるという現実から推しまして、円満なる
行政の
運営のために、あるいは事業の
運営のためには、いかにそういう
機関が必要であるかということを事実をも
つて立証するものとして、十分注視すべきものと思うのであります。
政治活動の問題につきましてもまた同様と言えるのであります。か
つて封建的な時代におきましては、
日本におきましては、一部の特権階級によ
つて一切の政治を壟断され、そのためにいろいろな運動の起つたことは、今ここで多く申し上げますまでもありません。幸いにしてこの正しき主張というものが認められ、
昭和二年の普選を初めとして、一般
国民にも政治に参加する自由が與えられた。いわんや今日
ポツダム宣言によ
つて日本の民主化が推進されなければならぬ大きな義務が
日本国民全体の上に與えられている、その民主化時代において、戰前におけるよりももつと政治的な自由を
制限された、あるいは
禁止されたような形の
法案を制定実施されることは、これも
日本の今進まなければならない立場とおよそ逆行する
反動的なものとして、われわれは断じて了承することができないのであります。われわれ
地方庁におけるものといたしましても、あるいは
中央政界においても、われわれ
地方公務員が
選挙に出るというようなことに対して巷間いろいろ説をなされております。これも先ほどの
公僕としての使命が果し得るかどうかという問題と多くの関連を持つのでありますが、これもまたそれぞれの地位、あるいは職権というものを惡い方に用いて、そして
自分たちの政治
目的を実現しようとするがごとき惡い行為のあつた者に対しては、嚴にこれを戒めるというか、これをたたく措置を講ずればいいのであ
つて、たとえば、学校の先生が教壇に立
つて特定の
政党のために講義をしたとか、あるいは
選挙のために講義をしたとかいうようなことがある場合には、その面についてそういうことのないような措置を厳重にとらるべきであり、また一般
行政職員も、その地位を利用して住民との間に芳ばしからざる行為のあるがごとき事柄に対しては、嚴にそれを愼ませることは当然であり、そういうことをやらないような方途を事前に講ぜられておけばいいのであ
つて、そういう弊害を除けば、
日本国民として
憲法で保障されたこの政治的な自由というものを、一
国民としてりつぱに行使することが何のふしぎがあり、どこにいけない点があろうかと私は言いたいのであります。そういう立場から申しまして、この
政治活動の
禁止に近いほどの強い
制限は、はなはだも
つてわれわれの了解に苦しむところであり、かつ断じて賛成のできないところでありまして、こういう点につきましては、公務執行上に弊害の及ぼすことを是正しつつ、
憲法で與えられた政治的の自由というものを全面的に許すという態度で行
つてもらわなければならぬと思うのであります。
なおこの適用の範囲と申しますか、この関連において若干申し上げたいと思いますが、先ほども申し上げましたように、われわれ
地方公務員の中には種々雑多な職種が入
つている。この点占部さんも特に指摘されましたけれども、とても
地方公務員なんというりつぱな名前を頂戴して恐縮するような仕事に従事している者が、実に
東京都すなわち警察吏員、消防、
交通、自動車、教員、そういうものを除いたその他の職員約三万五千名であります。この三万五千名のうち三五%はそういう種類の
従業員であります。またそれに対応するところの職員があります。それを
考えると、約四〇%の職員というものがそういう
現業と申しますか、單純労務と申しますか、そういう関係の従事員であるわけであります。これらの
諸君を、全然特別立法措置も何もなく、この
地方公務員法の中から適用を除外して、純然たる労働三法の適用者として離してもよし、あるいはそれが適当でないというのであれば、特別立法措置によ
つていろいろな面が緩和された、この
制限を除いた立法措置によ
つて処理さるべきものである、こう
考えるのであります。教員の問題についてもまたしかりでありまして、これは教職員という特殊な立場があるわけでありますが、これにはこれに対応する適切な立法措置が講ぜらるべきであると
考えるのであります。これにつきましても、巷間伝うるところによると、教職員の特殊性にかんがみて特別の立法措置を行うことはいいけれども、この立法措置の
内容というものが、まごまごしていると今出されている
地方公務員法の
内容よりもむしろ惡いものを特別立法にして出すのではないかというような懸念も持たれているようでありますが、そういうことであ
つたのでは、これはもう全然私どもと見解が違う。これも特殊的な伸縮はありますけれども、一般的には相当緩和されたものでなければならないということを、付言しておきたいと思うのであります。
最後に附則の第二十項ですが、それと本文の第五十七條の関係において、
ちよつ
とつけ加えたいと思うのであります。附則第二十項においては、
地方財政法の第六條に
規定する公営企業に従事する職員の身分取扱いについては、別途措置を講ずるということであり、五十七條においては、「職員のうちその職務と責任の特殊性に基いてこの
法律に対する
特例を必要とするものについては、別に
法律で定める。但し、その
特例は、第一條の精神に反するものであ
つてはならない。」ということにな
つております。「その職務と責任の特殊性に基いて」という
内容解釈の問題でありますが、これが明確でない。それから二十項の特別の立法措置を講ずるというがごとき、これについては、いつこれに必要なる立法措置を講ずるのであるかという点についての時期が明確でない。これは両方とも立法技術の上からい
つて、あるいはそういうことが入れられないのかもしらんと思うのですが、もしそうであるとすれば、百歩讓
つてそれを了解するといたしましても、その
内容だけは明確に今度の
国会で打出していただきたい。と申しまするのは、先ほど来どなたか公述されましたように、二十三年の七月三十一日ですか、政令が出てから、
地方公務員法の早急なる制定が一部に叫ばれておつた。これは私どもは反対なんですが、一部に叫ばれておつた。しかるに二年有余の今日ようやく
法案とな
つて出て来たという事実にかんがみまして、この二十項のごとき問題につきましても、別にこれを
規定する、それまでの間は従前
通りの例によるということであ
つて、今のような形がいつまで続くか、
ちよつとその見当がつかないということで、相当懸念が持たれているわけでありまして、その点を明確にされるようにお願いしたい。それとこの五十七條の範囲というものについて、われわれだけの解釈をも
つていたしまするならば、これは先ほど来私どもが強調いたしておりまするように、企業関係職員を除いた
現業関係及び教職員の人たちが、この対象になるのではなかろうかと想像するのであります。またぜひともそうでなければならぬと
考えているのですが、そうあらしむるための努力も含めて、これを明確にしていただきたいということをお願いいたしまして、はなはだ
順序が整
つておりませんでしたけれども、これをも
つて私の公述といたします。