○金子
委員 もう一点お伺いしたい。この
社会保障制度審議会の案に対しもて、私は非常な疑問を持
つておるのであります。その疑問のことにつきまして、過日の
委員会で大内
委員長にも申し上げたのでありますし、その後におきましても、
審議員の数名の方においでを願いまして、
保障制度の内容についていろいろ
検討させていただいたのでありまするが、私が一番
納得の行かない問題は
健康保險につきまして、依然として国保と健保の二筋の系統を立て、
国民を被用者と
一般国民にわけて、そこに利害
関係の違う、いわゆる差別をしておるということであります。今までの
保險というものは、
国家が
保障するという観点に立
つた保障制度ではありませんので、その
制度の中に、職域別によるその職域の救済的な、あるいは
補助的な感覚も多分に盛られて、おのおの別個な歴史的な発展をして参
つたのでありますが、しかし今度新しい
国家の立場から
保障制度を
考えて、
国民を機会均等に平等に取扱う立場から行きまする
保障制度が、しかも被用
国民と
一般国民というふうなわけ方をしておる
理由がどうしてもわからない。その
理由を聞きますと、ただ一点なのであります。その
理由というのは、現段階において、使われておる社会暦の人たちは、使
つておる人たちが半分の
保險料を
負担するから、それでこういうふうな待遇ができるんだ、
一般の人はそれができないんだ、こういう
理由以外に、私の知る範囲では何ものもないのであります。ところが私が
考えてみまするのに、
一般国民というもの——
日本では過小農や農山漁村民、あるいは大工、左官というふうな、直接工場や役所に使われておらない社会層の人たちが非常に多いのであります。しかも、これらの人たちの経済状態はと申しますと、使われておる人たちに比べて、
生活の安定度がよいとは、絶対に言われないのであります。山の中で炭を焼いて暮しておる人たち、あるいは山村にお
つて三反百姓をしておる人たちが、はたして使われておる
国民に比べてどれだけ
生活が安定しているかというならば、逆に被用
国民よりも
一般国民に属する人たちこそ、何とか
保障制度の恩典にあずからせなくちやならぬと思うのであります。しかるにああいうふうな
審議会の案ができた。そうしてこのできたことにつきまして、私はどういう
理由でできたかということを聞きますと、さいぜん申し上げたごとく、わからないとするならば、おそらくこの結論というものは、今の
保障制度をできるだけ問題なくつじつまを合せるように寄せ集めたんだという感が一つ、もう一つは、そうするような結果が出たことは、
審議会委員個々の人たちの感覚の問題だと私は想像しておるのであります。なぜ感覚かと申しますと、私はあの
審議会委員の方々の名簿によ
つて、その人たちはどういう
生活環境によ
つて今日人となりをしたかということを調べてみますと、——これは今の
大臣ではなく、か
つての
大臣がきめたものでありまするけれ
ども、あるいは議会が一部きめたのでありますけれ
ども、それらの人たちのほとんど九九%というものは、サラリーをも
つて人となりをした人たちで構成しておるのであります。あの
審議委員の中で、みずから農民と一緒にくわをと
つて生活の根拠とした人もない、みずから商人とな
つて暮した人もなければ、炭燒きをして暮した人もないのであります。そうして被用
国民としての
生活態度を、自分の
生活感覚に持
つておるのであります。その意識が働くからして、私
どもがこの案を見ますると、むしろ憤懣を感ずる
程度にまで
考えるのでありますけれ
ども、あのサラリーマンの人たちから
考えれば、あれは憤懣にはならないのであります。そういうふうな点から
考えましたときに、どういうことがあろうとも、今度
国家が
保障するというならば、百姓だから、くわとる農民だから、あるいはハンマーとる
労働者だから、あるいはかまを持つ
労働者だからというて、差別をつけるべきじやない。しかも一方の被用者は、
国家の
保障制度のほかに、休んでも給與はもらえる、あるいは何箇月間は給與をくれる、手当をくれるというふうな、特別な一つの契約上の給與があるのであります。しかるにほかの
一般国民は、百姓にいたしましても炭燒きにいたしましても、魚をとる漁師にいたしましても、それらの人たちは、自分の病気で休んだあくる日から一銭の
收入もないのであります。工場に勤めておる人たちは、
保險にあずかれると同時に、
一定の俸給はもらえるのでありますが、たんぼや山で生産する人たちは、休んだ時から同時に無
收入なのであります。にもかかわらず、
国家の
社会保障の面からい
つて、この給與が低い、恩典が低いということは、どう
考えても私は
納得できない。この
保障制度は、なるほど
日本の
医療に対する権威ある人たち数人が集ま
つて審議したかしれないけれ
ども、これがはたして正しいか正しくないかということに対して、私は最近農林漁村
関係の団体の人たちを糾合いたしまして、この問題に対して特に
考えてみた。決して我ではない。今までの政治のあり方として、こういうふうなものをつくるにいたしましても、結局結集がよくて、それが政治力にな
つて、強か
つた人たちが勝
つておるんだ。そうして黙
つて田畑に働いておる社会層の人たちが、いつもしわ寄せを食
つている。その点で今
研究会をつくらせておるのでありますが、そういう点から行きまして、今度の
社会保障制度を、今
審議中だ、まだ相談中だということでありますので、私は特にこの点に対してこういうふうな私の
考えを述べまして、これに対する
大臣の
考え方をお伺いしたいのであります。