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西村説明員 今御指摘の点は、全然別問題でございます。今申し上げましたのは、一国の憲法のもとにおいて、條約も
法律も、同じく憲法によ
つて規定されております。いわゆる国家の権能として、制定されるわけであります。一つの憲法のもとにおいてできる條約と
国内法とが、どういうような
関係に立つかというのが御
質問であ
つたので、その点に対して御答弁申し上げたわけであります。今御
質問になりました、條約と憲法との
関係はどうなるかというのは、全然新たな問題であります。私の先刻申し上げました答弁によ
つては、全然それには解決が與えられておりません。條約と憲法との
関係、これは非常にむずかしい問題でありまして、今まで私が拝見した憲法の先生の著作にも、国際法の本などにもあまり取上げられていない問題であります。と申しますのは、條約締結権というものも、要するに憲法によ
つて規定されておりますから、その憲法が既定している條約締結権によ
つて締結された條約と、憲法との
関係がどうなるかという問題にな
つて来るわけであります。その点については私はほんとうの私見でありますが、こういうふうに
考えております。ここにある一つの條約があるとする。その條約を批准し、または條約に加入する。いわゆるその條約を確定的に
国内に対して効力を発生せしめれば、当然
日本の憲法の
條項に抵触する結果を来すというような場合には、その條約の締結の担当に当る
政府というものが、非常に愼重に
考えるだろうと思うのです。一体
国内法との抵触問題が起る條約の締結すらも、
政府はきわめて愼重であります。いわんや憲法の
條項に相反するような
内容の條約をつくろうという場合に、これを受諾するかしないかということは、
政府としてはきわめて重大な問題であります。その段階において
政府としては愼重考慮されるだろうと思います。かりにその場合、結論として、どうしてもこの條約というものは締結した方がよろしいという結論に達したとするならば、私の常識から見れば、必ず憲法
改正というものが先に立
つて、條約との矛盾を解消して、しかる後に條約を
日本に対して確定的に成立させる。こういう手続をとられるだろうと思うのです。こういう問題は今まで起
つたことがございませんし、先例もございませんし、学者先生も論じておられませんし、憲法に非常に興味を持
つておられる方々の御
意見をたたきましても、まだ結論を得ておらない未熟の問題であります。この未熟の問題について私個人の
意見を申し上げただけでありまして、そういう軽い
意味でお聞き願います。