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1950-12-08 第9回国会 衆議院 海外同胞引揚に関する特別委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十二月八日(金曜日)     午後一時五十四分開議  出席委員    委員長 若林 義孝君    理事 小西 英雄君 理事 玉置 信一君    理事 坂口 主税君 理事 受田 新吉君       青柳 一郎君    菊池 義郎君       北川 定務君    佐々木秀世君       佐々木盛雄君    庄司 一郎君       玉置  實君    天野  久君       小林 信一君    堤 ツルヨ君       竹村奈良一君  出席政府委員         外務政務次官  草葉 隆圓君  委員外出席者         外務事務官         (管理局引揚課         長)      武野 義治君         外務事務官         (管理局借入金         審査室長)   池田千嘉太君         大蔵事務官         (理財局経済課         長)      吉田 信邦君         大蔵事務官         (銀行局銀行課         長)      大月  高君         厚生事務官         (引揚援護庁援         護局長)    田邊 繁雄君         厚生事務官   渡邊 文也君         農林事務官         (農地局入植課         長)      伊田通次郎君         農林事務官   長山 秀夫君         農 林 技 官 柳澤晋一郎君         郵政事務官         (郵務局管理課         長)      荒巻伊勢雄君         法 制 局 長 入江 俊郎君         衆議院参事         (法制局第二部         長)      福原 忠男君     ————————————— 本日の会議に付した事件  在外公館借入金に関する件  未復員者給与に関する件  留守家族援護に関する件  引揚者定着援護に関する件     —————————————
  2. 若林義孝

    若林委員長 これより会議を開きます。  日程第一の在外公館借入金に関する件を議題といたします。本件は、申すまでもなく終戦のとき、外地において当時の在外公館は、奥地よりの悲惨なる引揚者に対し何ら施すすべもなく、時の吉田外相の訓令に基いて内地帰還支払いする約束のもとに、居留民より救済資金を借り集め、辛うじて引揚げ事務進捗することができたのであります。終戦以来五年有余、本問題にまつわる社会問題と相まつて、その結果さきの第五回国会において、在外公館等借入金整理準備審査会法公付とともに、爾後関係機関も設置せられましてその解決に向つて一応軌道に乗つておることは各位も御承知のことと存じますが、本件に関しまして処理を要する件数二十一万件、金額にして数十億と推定されておるのでありますが、当局において本件に関する現況と、目下の処理の経過について詳細なる御説明をお願いいたします。それではただいまの件は役所の方の出席都合によりまして他に委員各位の第一議題についての御発言を許します。
  3. 玉置信一

    玉置(信)委員 私は、第五国会以来毎国会に継続的に当局に質疑を重ねて参りました北海道拓殖銀行樺太支店樺太在住者預金をいたしておりました預金が、たしか大蔵省令第八十八号だつたと思いますが、終戦と同時にこの払出し停止を受けまして、これが解除をなすべしということを私当局に要望し、要求いたして参つたことは、当局はすでに御承知のことでございます。同時にまた昨年の十二月に、この預金解除がありまして、その後引続きこれが払出しが行われておつたものと解しておりましたところ、この夏になりまして、さらにこれが払出し停止されたということで、北海道におりまする樺太引揚げ預金者が私どもにその実情を訴えて、重ねて払出し解除当局に行つていただくようにとの陳情を受けた次第であります。第八国会まで私詳細に数字をあげていろいろ当局に申し上げ、所見も伺つておりましたので、本日はそうした過去の詳細は一応抜きにいたしまして、現在なお残つておりまする預金が何ぼあるか、それからいかなるわけで支払い停止になつたか、ただいまここで大蔵省理財局から御提出になつておりまする北拓樺太支店預金の払いもどし調査資料をいただきましたが、これによりますと、口数で一万七千百五十九件、金額で二千六百五十八万九千二十八円七十三銭、こうなつておりますが、この金額はおそらく払出しを受けた金額ではないか。預金全額といたしましては問題にならない数でありますので、この点も明確にしていただきたいと思います。
  4. 大月高

    大月説明員 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上まげす。北海道拓殖銀行樺太支店は十一行ございまして、その十一の支店の発行いたしておりました預金通帳に対しましては、ただいまのお話のごとくことしの一月の二十五日の大蔵省告示をもちまして、昭和二十年十月三十一日現在の預金残高の四分の一という制限を付しまして払いもどしを実施して参つたのであります。その後関係方面意向もございまして、われわれといたしまして、せつかく努力いたしたのでございますが、遺憾ながらこと上の六月三十日限りその払いもどしを停止して現在に至つております。今後残つております預金をどう扱うかということに関しましては、はつきりした方針はきまつておりません。なお樺太のほかに朝鮮台湾支那南方地域等にも銀行預金がございまして、それをどうするかということと一緒に、講和条約後に決定されるものとわれわれは推測いたしております。  従つてとりあえず六月三十日をもつて打切つてございますが、これに関しては将来何らかの措置があるということを期待していいのではないかと考えております。現在六月三十日までにどういうような実績をあげたかと申しますと、預金残高の元になつております昭和二十年十月三十一日現在の預金残高は一億九千七百七十六万四千円という数字なつております。従いまして払いもどしの限度額はその四分の一になるわけでございます。その四分の一の金額は四千九百四十四万一千円という限度なつております。ところでこの中でどれだけ払いもどしをしたかと申しますと、本年六月三十日現在の数字で三千四十一万三千円になつております。これを最初の四千九百余万円の数字と対比いたしますと、払いもどしを実際にやりました額のパーセンテージは六一・五%という数字なつております。件数で申し上げますと、全体の預入れ件数五万四千件に対しまして、現実に払いもどしました件数は一万件という数字なつております。それで残つております三八・五%はどういうものかと申しますと、一つ法人関係預金でありまして、他の一つルーブル起債伴つた預金がおもなものでございます。法人関係預金は、別に在外会社整理に関する政令が出ておりまして、その政令に基く特殊整理過程におきまして、払いもどしを実行いたして来ております。これはまた整理過程にありますので、六月三十日までに払いもどしましたものは、整理都合上数社でございまして、金額も僅少なものでございます。従つてその残りのものが残つておる。それからルーブル起債伴つた預金通帳は、為替管理方針といたしまして、外貨建預金一切は輸入自体が禁止されておりますので、払いもどしは全然行われておりません。そういうものが払いもどしを受けるべくして受けてなかつたものであります。従つてその他法律的には払いもどしはできるのであるけれどもとりに来なかつたために残つてつたというような数字はほとんどないものと了承いたしておりまして、現在も拓殖銀行なり大蔵省なりに払いもどししてほしいということを言つて来られておる件数はほとんどございません。ただ一件樺太庁職員、あるいは樺太庁警察職員、あるいは教員その他の任意団体がございまして、ちようど互助会のようなものでざいますが、その匿名組合の分が法律的に問題になつて、未解決のまま六月三十日が参りまして、払いもどしが行われておらないということもございます。その関係の方はしばしば大蔵省にも見えて払いもどしをしてくれということを言つて来られるのでございますが、先ほど申し上げました在外会社整理に関する政令の中に、この特殊整理を行う主体といたしまして、ただ会社だけではなくて、その他の団体という言葉が入つておりまして、この匿名組合もやはりその団体に入る。それで一般の個人の中には含まれないということで、法律的には払いもどしの困難なものでございます。従つてその特殊な例を除きましては、事実上法律的に許されて、しかも払いもどしの行われなかつたというものはほとんどなくて、実際問題として全部解決しておるものと私は考えております。
  5. 玉置信一

    玉置(信)委員 私の方へは、引揚者樺太預金団体といいますか、そういうものを何か結成しておるようでありますが、そこの代表者から書面をもつて来ておるわけでありまして、ただいま課長さんのお答えによりますと、個人預金者というものは大体済んでしまつた。六一・五%というものが、個人預金者で、三八・五%というところのルーブル起債を伴う預金と、それから在外会社としての整理対象なつておる法人関係、この二つだけだということでありますが、そこにちよつと私どもへ申し出て来ておるのと食い違いがあるのですが、そういたしますと、個人預金者払出し済みだということになりますか、もう一応確認いたしたいと思います。
  6. 大月高

    大月説明員 もう一つ制約があるのでございまして、この払いもどしあ可能なものは昭和二十四年の六月二日以前に入国した者という制限がついております。従つて再度御説明申しました数字は、それに該当する人についての話でございまして、二十四年の六月三日以降においてかりに帰つて来た人がございましたならば、その人については払いもどしを受けられないのでございまして、あるいは実際問題として若干残つておるかもしれません。しかし実際に樺太から引揚げられた方につきましては、大部分六月の二日以前に帰つて来ておられるのでありまして、未帰還の方があと部分である。六月の三日以降にお帰りになつた方はほとんどないものであると承知いたしております。従つてそういう意味において事実上解決されておると申してさしつかえないと思います。
  7. 玉置信一

    玉置(信)委員 根本にさかのぼるのですが、先ほど御説明になつた四分の一を払いもどしをするというこの基準をきめた基礎的な要件といいますか、そういうものは関係筋の指示に基くものでありますか、それとも大蔵省において何かお考えになつた点でありますか、その点をお伺いしておきたいと思います。
  8. 大月高

    大月説明員 この四分の一という数字は、北拓帳簿に基きました。隻数でありまして、樺太にある十一の支店北拓本店との間には、やはり別人格のごとくに帳簿上の関係が生じております。それで北拓といたしましては、預金者に対して樺太においては債務を負つてつた。それに対しまして、今度は本店といたしまして、それの見合いとして終戦当時四千九百万何がしという債務樺太支店に対して負つておるわけでありますので、債務を負つておる限度において払いもどす。それを超過する分は逆に支店から取立てるようなかつこうになるわけでありますから、その実数に基きまして最高限度をきめております。
  9. 玉置信一

    玉置(信)委員 この樺太預金払出し問題につきましては、委員会で主として私が担当して当局に要望して引出しについて御協力申し上げたのですが、なかんずく大蔵当局において非常にこの点については御努力を払われましてこうしたきわめて条件の悪い制度のもとにおいても、かかる成果を収められたことに対しまして重ねて私は大蔵当局に対しまして敬意と謝意を表します。なお残り支払い問題は先ほどの御答弁によりますと、講和後ということになりますが、昨年の払出し解除状況等から見まして大蔵省独自の関係筋との御交渉、ごあつせん等によつて私は講和を待たずしてこれはできるのではないかというような気もするのですが、もしそういうことにできれば御努力を願いたいのでありますが、その見通し、お考え等について重ねて承りたいと思います。
  10. 大月高

    大月説明員 この樺太問題につきましては、たまたま北海道拓殖銀行一行の問題でありまして、先ほど申し上げましたように、樺太本店の計数が比較的はつきりいたしております。ただこの場合におきましても、樺太における預金がはたして幾らであつたかということにつきましては、やはり樺太帳簿がございませんので、推定を免れません。それと同じような問題は朝鮮台湾その他にあるのでありまして、その他の地方におきましては、関係銀行が、非常にたくさんございまして、その間の貸し、借りの関係は一切不分明な状態なつております。従いまして、本来の公平論から申しまするならば、樺太関係の問題だけを先に取扱うことにつきましては、若干疑義はあつたのでございますが、現実数字はつきりしておるという意味におきまして、先に取上げたわけでございます。そういう関係からいたしましても、やはりこの問題は朝鮮台湾支那南方地域その他をひつくるめまして、在外資産及び負債の整理として考えるのが妥当な点が多いのでございます。大蔵省独自の立場といたしまして、関係方面を離れて考えましても、樺太の問題のみを先に進めるということにはやはり相当の問題が残されておるものと考えております。それで理論的には割り切れないわけでございますが、現実状態としては、ほぼ事実上の解決終つた段階で、講和を待つて全般的な方針を立てる方が適当ではなかろうかと考えております。
  11. 若林義孝

    若林委員長 では先ほど私から申し上げました在外公館借入金に関する審査事務進捗状況の御説明を、ただいまちようど外務省当局がお見えになりましたから、説明を煩わします。
  12. 草葉隆圓

    草葉政府委員 在外公館等借入金審査状況につきましては、実は法律の実施後法律によりまする審査会委員を十名、外務大臣関係者といたしまして二名、民間関係者六名、そのほかにこの審査会の補佐の事務をいたしまする官吏を十八名をもつて、昨年の十二月二十日に審査会を設立いたしまして、本年の一月からこれが実際の仕事を開始いたした次第でございます。現在毎週一回木曜に定例に開いておる次第でございます。  調査方法は、借入金性格上、御承知のように地域によりまして、あの当時の状態がまことに混乱の中に行われました借入金でございますので、千差万別であり、それが材料あるいは資料借入れ状態から考えまして、相当困難な調査であるのでございますが、審査会におきましては、借入れのいきさつなり、方法なり、あるいは条件なり、そういうことに対しまする借入金の使途というような方面を十分調査する必要を感じまするので、そういう方面につきましても、一通り十分調査をいたす次第でございますが、何分にも当時の状態が御案内のような状態でございまするので、なかなか簡単に捗し得ない状態なつておりまするうちを、毎週一回鋭意これが解決努力をいたしておるような次第でございます。現在は地域約七百ぐらいのところで、九十地域くらいが大体審査ができまして、そのうちで全体といたしまして五月までにできましたのが約二十一万件ほどございますが、その三十一万件のうちで、いろいろと該当しないと思われるようなものも相当事務的に見ましてあります関係上、大体十四万件弱ぐらいが該当するのではないかと考えられますが、そのうちで現在二万六千四百七十余件ほどが請求書受理審査事務を一応いたしました。その中で近く約二万件弱を決定して、確認証を出せる程度に進んでおる次第でございます。今後のこれが調査事務進捗状況は、この借入金性格から考えまして、また借入金を提出されました方々状態から考えまして、なるべくすみやかに審査事務完了すべきものでございますから、鋭意調査完了いたしたいと努力いたしておるのであります。先ほど来申し上げましたように、あるいは当時の状態資料、いろいろな意味におきまして不十分な書類が多い状態でございますけれども、努めて早い期間にこれが完了をいたしたいと存じております。ただ未引揚者相当あります関係で、今後の問題につきましては、引揚げ後ある期間をもちまして、その後もこれを申し出ることができるようになつておりますから、この事務完了というものは全部引揚げ後でないと完了とは言えないと存じますが、現在出ている請求に対します調査は、ただいま申し上げましたように、すみやかに完了して、なるべく近い機会に確認証を約二万件ほどは発給措置とり得る状態に相なつておる次第であります。
  13. 玉置實

    玉置(實)委員 二、三の件につきまして、ちよつと外務省の御意見を拝聽したいと思いますが、ただいま政務次官からのお話もございましたし、また管理局からの配付資料等を拝見いたしますと、進捗状況はすこぶる成績が悪いようであります。ごく結論的に申し上げますと、あまり芳ばしくないようでりますので、この点われわれといたしましては、引揚者立場から考えまして、相当憂慮にたえないというような感じを受けるのであります。ただいまのお話なり、管理局のこの資料を拝見いたしましても、請求書受理件数が二十一万件に上つておる。しかも確認を受け得られるものが十九万件、審査済みのものはわずかに二万六千余件である、こういうような状況でありますので、われわれといたしましては現在の段階から判断いたしまして、外務省なりあるいは関係各省は、一体今後どういうふうなお見通しをもつて、早急な本件解決を所期されておりますか。この点を特に伺いたいと思うのでありますが、要点的に申し上げますれば、こういうような遅々たる進捗状況をもつていたしまして、一体審査完了する時期はいつごろのお見通しでありますか。まずこの一点についてお尋ねしたいと思います。
  14. 草葉隆圓

    草葉政府委員 現在出ております請求件数か約二十一万でございますが、先ほど申し上げましたように、該当する、と患われますものが大体十四万弱、十三万八千とお手元の資料には出しておりますが、その程度ではないかと存じております。この中でただいま申し上げましたように、二方五、六千件は審査済みなのであります。地区から申しますと約九十地区ほどで、あとの問題の中には、いろいろ資料その他におきまして、また実際のいろいろな当時の条件におきまして、相当困難なものもありますけれども一つ地区解決しますと、それに付随しての問題はずつと片づいて来る。厳密に申しますと、ここには相当期間かかるようには書いておりますが、はつきりどこの期間を要するということよりも、この期間以内においてできるあらゆる方法とりたい、こう考えております。
  15. 玉置實

    玉置(實)委員 そういうような御返答ではございますが、事実から判断をいたしますと、二十一万件の中で審査済みのものが二万六千余件、しかもこの玉か六千余件の中で確認証書発給を終りましたもの、第一回分が約一万九十件、こういうようなお話でありますが、この遅々たる状況と申しますか、約十箇月を要しまして、二十一万件の中で大体該当は約十四万件弱のようでありますが、わずかに二万件足らずのものが十箇月の歳月を費したということになるのであります。でありますので、この点は十分に外務省の方においても用意していただきましてなるべく早くできるだけ万全を期しまして、事務完了をしていただきたいと思うのであります。なおこれに関連いたしまして、この審査事務機構があるいは不備ではないか、予算的にも、あるいは機構それ自体におきましても、不備の点があるために、こういうような遅延の状況を招くのではなかろうかという感じを受けるわけでありますが、審査機関の拡充をなさいます御用意がありますかどうか、この点を次に伺いたいと思います。
  16. 草葉隆圓

    草葉政府委員 この点に対しては、御心配のように、そういうふうにお感じになる点もあろうかと存じます。従いまして十分さらに検討いたしまして、事務進捗上改善を加えるべき必要がありましたら、御意見のように今後とりはからつて参りたいと思います。
  17. 玉置實

    玉置(實)委員 本年度におきましては、事務局予算は大体一千九十万円というような報告でございますが、もうすでに来年度予算編成も目前に迫つておる、来年度につきましてはどういうような予算を御提出なさる御意向でありますか、この点を承りたいと思います。
  18. 池田千嘉太

    池田説明員 二十六年度におきましては本年度よりやや減少しまして、約八百九十万円に内定しておるように承知しております。
  19. 玉置實

    玉置(實)委員 八百九十万円がいいか悪いか、これは別論でありますが、一千万円以上の予算を費しまして、約十箇月かかつて今日のような遅々たる情況でありますので、この点はとくと御相談をいただきまして、たとい少しくらいの予算的な増額がありましようとも、引揚者立場から申し上げますならば、一刻も早く審査の終了を期待しておると思いますので、この点は十分御留意をいただきたいと思うのであります。  次に外務省のお方にお尋ねしたい最後の点でございますが、審査の終りました確認証はいつごろ発せられる御用意があるか、それから確認証によります支払い開始というのはどういう御予定でありますか、またその完了予定につきましてお伺いいたしたいと思います。
  20. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま申し上げましたように、確認証が現在発送し得る状態完了しておりますのは、約二万件弱でありますが、まだ発給はいたしておらないのであります。この点をはつきり申し上げておきます。それは今御心配なつておりますように、確認証は出しましても、これは審査会の性質上確認をいたすというだけの問題で、支払いになりますと、また別な方法、当時の向うの金、それぞれの地域の金を現在の円との換算率を道して現実幾らの金で支払うかという問題になつて参りますから、結局これは法律によりましてその方法を決定した後でないと、支払い方法がとれないと思います。従つて換算率を決定して、それから支払う、いわゆる現実支払いというものができて来るのではないか、かように考えます。これはなるべく急いでいたすべきものであると思います。
  21. 玉置實

    玉置(實)委員 ただいま換算率の問題が出ましたので、大蔵省の方がお見えなつておりましたら、ちよつと二点ばかりお伺いいたしたいと思うのでありますが、換算率の点は非常に大きな鰻で脅ましてわれわれがいろいろな方面へ出張いたしましても、引揚者方々からまず第一番に質問を受けますのは、この換算率の問題であります。当時の状況と現在とを比較いたしますことは、とうていできないことでありまするが、かといいまして、換算率に非常な不公平な点、不合理な点がありますると、せつかく血の出るような金を出しまして引揚者の皆さんだちが払つたものが、現在の貨幣価値から判断をいたしますと、何ら価値がないというような結論になりまするので、ひとつこの基準の問題は実情に即しました、しかも現在の貨幣価値から逆算をいたしましても、相当程度効果のあるようなお考えをいただきたいと思うのでありまするが、為替レート確認と申しまするか、これは非常に至難な問題でありまするが、大蔵省当局といたしましては、このレートの問題をどういうふうにお考えなつておりますか、これをお伺いしたいと思います。
  22. 吉田信邦

    吉田説明員 お答え申し上げます。ただいまの点は、私どもとしてもきわめて重要な問題と考えております。種々研究を続けておりますが、まだ結論に逆上ない状況でございます。ただ為替換算率と申しましても、厳密に申しますると、向う物価が徐々に上りつつある、また日本の物価も徐々に上りつつあるというような関係から、たとえば同じ地域支払つた金、同じ法幣払つたといたしましても、その払つた時期によりまして、換算率は非常に違つて来る。そうした問題をどこまで現実に見られるか。理想的に申せば、向う物価指数が入手できればよろしゆうございますが、それがなかなか手に入りません。ことに一つ地域で普通の状態ならば、かなり広汎な地域、満州なら満州という全体の地域が、同じような物価であるべきはずでございますが、こういう期間には、ことにそれが混乱いたします。そういつたようなことをいろいろ考え合わせてみますと、理想的に申しますると、ほとんど無限の問題が出て参ります。そこいらの点をどの程度で打切るか、どの程度であきらめをつけると申しますか、これは徹底的にやりますと、何年かかつてもきまらぬという問題で、ございまして、どの程度で打切るかというようなことも目下研究をしておるような次第であります。いずれにいたしましても、この為替換算率をできるだけ正確に行うということが最大の要件であろうと考えておる次第であります。
  23. 玉置實

    玉置(實)委員 ただいまの御返答は、事務当局といたしましては、まことにむりのないものだと思いまするが、たとえば前参議院議員の北条君であるとか、いろいろな方々が各地へ参りまして、レートの問題についていろいろの考え方を申されておるようでありまするが、そのために引揚者各位といたしましては、相当気持が動揺しておるようであります。でありまするので、ただいま大蔵省お話のようにこの点は非常にむずかしい。基準を立てるにもいろいろ資料の入手が困難であろう、これはまことにもつともであろうと思いまするが、一応結論が得られましたならば、大蔵省独自のお立場でただちに決定をなさらずに、本委員会へ参考的に事前に御提出なさいまして当委員会意見を一応お聞きになさいまする用意がありまするかどうか、この点をひとつお伺いしておぎます。
  24. 吉田信邦

    吉田説明員 その点の支払いに関しましては、支払い方法支払いの時期等につきましては、いずれ別個の法律できめることになると思います。従いまして、それに伴う必然的な措置として換算率をどういうふうに考えるか、どういうような換算率でやるかというような問題も、当然国会にお伺いするということになるのではなかろうか、あるいは国会の委任を受けて政府がきめるということになるにいたしましても、いずれにしてむ国会に提出すべき性質のものと思つております。
  25. 玉置實

    玉置(實)委員 最後にもう一点だけお伺いいたしたいと思いまするが、在外公館等借入金整理準備審査会の現在の機構では、どうも所期の目的が達し得られぬような感じを受けるのでありますが、この際機構を拡充いたしまして、急速に完了する御用意がありまするかどうか、この点を最後にお伺いしたいと思います。
  26. 吉田信邦

    吉田説明員 私どもが申し上げるのは、案はおこがましい次第でありますが、外務省当局とも常々御相談いたし、またわれわれとしても、この問題については真剣に考えておりまして、外務当局と御相談の上適宜の措置をいたしたいと考えております。
  27. 小西英雄

    ○小西(英)委員 関連してでございますが、今在外公館借入金審査事務の進行状態が非常に遅れているという意味の同僚議員の質問でありましたが、非常に遅れておるが、少いながらも現在確認証発給されたものもある。その発給されたものに対して、それがすぐ金にかわる方法があるかどうかということをちよつとお聞きしたい。
  28. 吉田信邦

    吉田説明員 先ほど外務政務次官からお答えがございましたように、まだ発給はされておりません。しかしいずれ発給されることになるかもしれませんし、その用意はいたしておるのでございますが、発給はされておりません。なおこれについて、すぐそれを換貨する方法があるかということにつきましては、現在といたしましては、そういう債務があるということが確認される書面が、それによれば出るわけでありますが、しかしながらそれはおそらく向うの貨幣表示、あるいは法幣なり何なり、向うの貨幣表示でなされることになると思います。これを円に換算して、今の貨幣価値幾らだということは、その上には表示にはならないのではなかろうか。従つてまたそれについてこれをどういうふうにお支払いするか、お支払いの時期はどうか、またそれに対するいろいろな関係がどうなるかということは、別途の法律で定められることになるであらうというふうに考えております。
  29. 小西英雄

    ○小西(英)委員 それを法律で定めないと支払いをする方法がないのですか。その先に凡か他の処置で、一応半額なりを立てかえて払うとか、引揚者のことですから、きまれば即時ほしいのだと思います。
  30. 草葉隆圓

    草葉政府委員 案はこれは在外公館等借入金整理準備審査会法の第一条の第二項に、「この法律において、『借入金確認』とは、政府が現地通貨で表示された借入金を、法律の定めるところに従い、且つ、予算の範囲内において将来返済すべき国の債務として承認することをいう。」こううたつておりますので、やはり法律に定めないと、ちよつと困難ではないかと思います。
  31. 小西英雄

    ○小西(英)委員 大体現在では今外務政務次官が御答弁になりましたようなことですが、実際にこれを軍体的に、われわれ引揚者の同僚としては何か便利をはかつて、たといきまつた中のその当時の貨幣価値でもいいから、半額でもすぐに金になるような方法をぜひ講じてもちいたいと思うのであります。
  32. 玉置信一

    玉置(信)委員長 私も関連して御質問申し上げますが、この請求書受理件数約二十一万、この当時の三十一万に対しての借入金の総額はどういう数字を出しておられますか。この点が一つと、それからただいま草葉外務政務次官のお答えのうちに、予算の範囲内においてということがありましたが、この予算の範囲内というのはどういうように解釈すべきものでありますか。その点をお伺いしたいのであります。
  33. 草葉隆圓

    草葉政府委員 借入金金額の総額は、これは当時のいろいろな地域別の金額で来ておりますから、それを総計いたしましてもちよつと合いにくいかとも存じます。あるいは朝鮮、満州、華中、華北、華南、いろいろ円、元さまざまでございますから、この点はさよう御承知を願いたい。  それから予算の範囲内とここでうたつておりまするのは、いわゆる国の助政力ともにらみ合してという意味であろうと存じます。
  34. 玉置信一

    玉置(信)委員 先ほど吉田課長の御答弁もありましたように、換算問題から考えますと、なかなか標準をつくつて押えるという点では相当困難だろうと思うのでありますが、そうしますと、ああしてお答えのありましたように、これは相当期間がかかると見なければなりませんが、しかしそう無制限に薄目を延ばすこともできないことは、先ほど来同僚委員の御質問の通りでありますので、そこでこの審査委員会というものは、この要求書を受理し、これに対して確認を与えるまでの仕事が終れば、これで一応解体するものであるかどうか。あるいはまた大蔵省の今の換算率をきめる仕事と並行して、これを存置してやつて行くのかどうか。この点をお伺いしたいのです。
  35. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは今後の問題でございまするが、先ほど申し上げました審査会法には、ちよつと先ほども触れましたが、「未引揚者については、本邦上陸後一年以内とし、この法律施行後現地において死亡した者」云々とありますので、未引揚者引揚げて参りました場合は一年以内に請求をする、そうするとまだ相当あると存じます。従つて現在出ておりまする二十一万、その中で事務的に考へまして約十四万、それがかりにその間に引揚げ完了いたしますとけつこうだと思いますが、そうじやないような状態で、引揚げがすみやかに完了しない、そうしてその後一年以内に請求をするということになると、この審査がやつぱりそのままで存置されるのではないかと考えております。
  36. 玉置信一

    玉置(信)委員 そうなりますと、相当期間委員会が存置されることになるのですが、予算面において二十六年度八百九十万円を計上されておるということでありますが、そうしますとこれは毎年おそらくこの程度予算を計上されなければならないでしようが、どのくらい——引揚げの問題が解決しなければならぬので、それと並行してのことですから、これはどのくらいといつてもお互いなかなかめんどうな問題ではあるが、しかし大体大きな大まかな整理だけができてずいぶん少数のものだけは残すというような見通しもあるだろうと思いますが、その客観情勢等から見ましても、そういうようにも考えられるのですが、その点お伺いしたい。
  37. 草葉隆圓

    草葉政府委員 御意見のように私ども考えております。大体の点は、従来の借入金請求で一応の中心はつくのであります。今後それで完了したと厳密には言えないけれども、なお残るのは当然であろうが、残るのはごくパーセンテージが少いのではないか、かように考えております。
  38. 北川定務

    ○北川委員 私も一、二点お伺いいたしたいと思います。在外公館借入金につきましては、引揚者が外地において公館などに貸しつけた金でありましてこれは純然たる国家が国民から借財をしたものと私は考えておるのでありますが、この財源につきましては、御当局におかれましては十分尊重していただきたいと思うのであります。そうしてでき得まするならば、私は予算の範囲で支払うなどおつしやらずに、これに利息を付して相当率のよい換算率でお支払いくださるように私は希望をいたすものであります。伺いたい点は、本年の五月十九日までであつたと思いますが、それまでに申告することのできなかつた人もあると思うのでありますが、これらの支払いについては、いかようなお考えを持つておられましようか。
  39. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは一応期間を切りましたが、それでなお遅れておる方が相当あるというので、昨年三月法律を改正いたしまして、たしか五月十八日まで延ばしたのでございますが、それでもなおあるいは今のような御心配の点かないでもないのではないか、もしやそういうことがありますぢために、相当の数の人か困難な状態にありますることがわかりますると、何かまた方法を講じねばならぬと考えております。
  40. 北川定務

    ○北川委員 さらに不確認になつたものには、不確認の通知書を発しておられるようでありますが、この不確認になつた部分について、委員会の処置が不当だとするものには、いかなる方法で救済を求むべきか、御当局の御指示をいただきたい。
  41. 草葉隆圓

    草葉政府委員 これは、審査会といたしましてはそれで決定いたしたことになりますが、もしやそれでどうしても都合が悪いときには、普通の方法によりまするあるいは裁判なりといつたような方法以外にはないかとも存じます。
  42. 北川定務

    ○北川委員 最後に一点だけ大蔵御当局にお伺いしたいと思います。昭和二十年の九月二十三日であつたと思いますが、大蔵省令で外地にあるところの債権の支払い停止せられたもののように考えておりまするが、この九月二十三日以前に外地から送金した部分であります。そして送金の通知が内地に到着しているものもたくさんあるようであります。これらの債権につきまして、あるいは送金為替で送つている部分もありまするが、これらの送金につきましては、ひとしく外地資産として支払い停止しておられるようでございまするが、その点はいかがでございましようか。
  43. 吉田信邦

    吉田説明員 の御説のように、以前のものについても支払い停止しております。
  44. 北川定務

    ○北川委員 この支払い停止せられておる金額相当多額に上つておると思いますが、もしこの数字がおわかりになりましたらお示しを願いたいと思います。
  45. 吉田信邦

    吉田説明員 今その金額を調べたものはあるかどうか、ちよつと記憶いたしませんので、後ほど……。
  46. 北川定務

    ○北川委員 外地資産には純然たる外地に存在しているところの個人の財産とか、あるいは法人の財産、国の財産というものがあると思いまするが、この九月二十三日前に送金せられてしかもその送金の通知が銀行を通じて、あるいは郵便局を通じて内地に到着している部分と、純然たる外地に存在上ている資産とを比較しまするならば、私はこの両者は取扱いを異にしてもさしつかえはないものではないか、送金して内地にその通知が到着している部分につきましては、少くとも外地における純然たる外地資産と区別してお払い願えるものではないかと思うのでありまするが、これに対する大蔵当局の御見解を伺いたいと思います。
  47. 吉田信邦

    吉田説明員 その点につきましては多少問題がございますので、やはり送金をし得たものもありますれば、奥地その他いろいろな関係で送金をし得なかつたものもございます。これらの問題は一括して講和問題等の解決した際に処置を決定いたしたい。やはり一部分だけを取扱いますと、いろいろと不公平の問題が出て参ります。それらの点についてなるべく不公平の起らないものにつきましては、外地における郵便貯金とか、そういうものにつきまして支払いを認めるということにはなつておりますが、そういう点について公平上疑義の起りそうなものにつきましては、やはり講和後に一括してきめる方がよいのではないかと考えております。
  48. 小西英雄

    ○小西(英)委員 今とよくにたような問題でありますが、朝鮮銀行あるいは満州中央銀行とか、あるいは外地に本店を有しておつた銀行に貯金をしておつたものは、もう自然消滅するのだろうと思いますが、当時横浜正金、現在の東京銀行のように本店を東京に有して、台湾とか、あるいは朝鮮、満州等に預金をしておつたものの、その金の扱いについてはどういう扱いになるか。
  49. 吉田信邦

    吉田説明員 この点につきましては、やはり店舗主義で行つておりますので、向う支店に預けた預金支払いは現在停止されておるのであります。やはりこれら向うの店舗における預金というものは、一面から申しますれば、向うにおいてその銀行が運用した資産というものと相対応した場合のものでありまして、そういつた関係から、これらの問題はすべて後日の解決にゆだねるということで、ただいまは停止した状態のままにあるわけであります。
  50. 小西英雄

    ○小西(英)委員 それでわかりました。在外資産の問題について、いよいよ講和も早く締結されるという現況でありますが、現在まで外務当局なり政府当局は、終戦直後の満州、台湾樺太、千島、日本人が外地におりました当時の国の財産、あるいは法人の財産、個人の財産等について、事務的にその当時の現況を十分調べて準備ができておるかどうか。在外公館の問題については、かように事務当局ができまして、しかもそれについては十分やつておられるようでありますが、在外資産についてそういうふうな事務局でも設けて、今の国家、法人あるいは個人とわけて検討しておるかどうか。
  51. 吉田信邦

    吉田説明員 在外財産の問題につきましては、終戦直後に総司令官からの命令に基きまして、日本人が内地に持つておる外国に対する資産、在外資産、そのほか金、銀、外貨証券といつたものにつきまして、すべて報告を出すということにいたしております。そうしてまたその後外地からお引揚げになつた方につきましても、同じように報告を提出していただいております。しかしながら、これらの報告は関係方面からの御要望によりまして、その必要に基いて作成したものでございます。そんな関係で、現在そのものがどうなるかということについて、まだ発表し得る時期に達していない状態であります。
  52. 小西英雄

    ○小西(英)委員 第一次欧州大戦当時にも、いろいろその在外資産の問題について検討され、遂に個人財産についてはやはり相当な補償をなされたようでありますが、第二次大戦の結果、現在敗戦国となつておるイタリアとか、あるいはドイツの近況を調べた例があるかどうか。
  53. 吉田信邦

    吉田説明員 先般当委員会の御希望もありましたので、刷りまして、第一次大戦後におけるドイツの在外財産の補償の先例につきまして、お手元にお配りいたしてございます。要するにこの場合は、日本の今の状況とは多少違つたかとも存じますが、ドイツの場合におきましては、在外財産の補償をしようということでいろいろの試みがなされましたが、実際問題として、その当時ドイツのはげしいインフレーションにぶつかりまして、従つて実質的には千分の二程度の補償ということに終つておる。これにつきましても順次いろいろと方法がかわりまして、最後にはそれらの金額につきましても、大きい金額は、たとえば一億マルクを越える金額については二・五%、五千万マルク以上は四%というふうに、大きな金額については切り捨てるというような計算がなされております。なお最近におけるドイツは、まだその問題は全然出ておりません。またイタリアにつきましては、条約はできており、またその政府は補償するということになつておるようでございますが、その補償の方法等の具体的な問題は、まだ私ども入手いたしておりません。
  54. 小西英雄

    ○小西(英)委員 今説明されたものは第一回の……。
  55. 吉田信邦

    吉田説明員 前大戦のときのものでございます。
  56. 小西英雄

    ○小西(英)委員 イタリアの現状についてのお話は今回でございますか。
  57. 吉田信邦

    吉田説明員 イタリアの分は今回のでございます。
  58. 小西英雄

    ○小西(英)委員 イタリアの方は、何かの見通しをつけて、政府が補償をしようというふうに承つてよろしいのですか。
  59. 吉田信邦

    吉田説明員 まだ詳細なことがわかりませんので、補償すると申しましても、金額を補償するのか、一部を補償するのか、あるいはそれにどういう率をかけるとか、あるいは税との関係をどういうふうにするかというような点につきましては、わかつておりません。何らかの補償をするということは確かだと思います。
  60. 小西英雄

    ○小西(英)委員 在外資産の問題でありますが、現在満州とかあるいは朝鮮台湾等はこれは戦争手段といいますか、そういうようなものによつたものもあるし、朝鮮のように、戦わずして彼此一致を見てわが領土になつたものもありますが、それらはまた別といたしましても、現在の沖縄、千島、あるいは小笠原諸島は、これはもとより日本の領土でありますので、おそらく講和会議の締結後には、日本の国となると私たちは確信をいたしておりますが、この問題について、外務省はどういう見解を持つておられるか、一応承りたい。
  61. 草葉隆圓

    草葉政府委員 領土の問題につきましては、実は現状は御承知の通りでございまして、最近いわゆる九月十四日にダレス顧問を中心にしました、アメリカの条約の原則的試案といわれて発表されました中には、それぞれ領土の問題を取扱われておるようでございます。台湾樺太、千島、膨湖島は四大国において協議し、さらに一年以内にこれが決定をしない場合においては、国際連合において決定をする。小笠原、沖縄は国際連合の信託統治として、アメリカが管理するという案のように伝えられております。この問題は、今後各国のこれに対する意見がアメリカに回答されまして、それから初めていろいろ講和問題の条項になつて来る問題となろうと思いますので、今のはまつたくアメリカの原則的の一つの試案であつて、固まるのは今後であろうと存じます。日本政府といたしましては、実はこれらの小笠原、沖縄等の帰属の問題につきましては、それらの島に住んでおられる人たちからも、請願、陳情等も国会あてに数多く出ておりますし、これらの地理的、歴史的状態を、十分連合国関係にもその都度伝えておるような次第であります。
  62. 小西英雄

    ○小西(英)委員 これは無条件降伏という立場から、そういう主張ができるかどうかわかりませんが、私たちの考えといたしましては、台湾とか、あるいは樺太とかいうものと違つて、小笠原あるいは沖縄、千島等は、これはまつたく歴史的に日本の領土でありましたので、これは外務委員会の所管かと思いますが、相当その地から現在内地に引揚げておられるそれらの人が、国は破れたりといえども、自分の本国であつたところの土地は必ず返つて来るであろう、返つて来た場合には、前のような状態に、土地とかあるいはいろいろなその土地にある財産というものが、手に入るかどうかということについても、いろいろお尋ねがあるので、特に私たちは規定されておるところの台湾樺太、あるいは朝鮮とか、あるいは満州、関東州というようなところには、それほどの希望を持つておりませんが、千島、沖縄、小笠原諸島は、ぜひ講和の際には強く主張していただいて、それらの昔より住んでいる日本の住民にその財産を与えるように、ひとつ外務当局の御努力あらんことを劫にお願いいたしておきます。
  63. 玉置信一

    玉置(信)委員 在外資産の問題に関連してひとつお伺いいたします。今日まで在外資産に対して該当者からどれだげ要求しておりますかどうかということが一つと、それからはつきりしている在外資産として個人の船舶等がありますが、こうしたものはやはり講和条約締結後にあらざればその処置はできないのかどうか、この点を伺いたいと思います。
  64. 吉田信邦

    吉田説明員 はつきりいたしました拿捕船のようなものとか、こういつたものは、やはり原則的には講和条約後でございましようが、また各国ごとに特殊な話合いと申しますか、そういうような点もあるかと存じます。原則としては、講和の後になるものだと考えております。
  65. 若林義孝

    若林委員長 では次は、役所の御出席都合によりまして、未復員者給與に関する件と留守家族援護に関する件を議題といたしたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  66. 若林義孝

    若林委員長 それではさよういたします。本問題中、特に特別未帰還者給与法におきまする未帰還者数の認定について、さきの委員会で検討されたところでありますが、外務当局の御出席がありませんので、明確を欠いた点があつたのであります。この際質疑を許します。天野久君。
  67. 天野久

    ○天野(久)委員 この前の委員会で、給与を受ける資格のあるものが一万九百九十四名、そのうち支払つたものが二千七百二十件、こういうお話を伺つたのでありますが、われわれとしてはどうもそこにふに落ちないところがあるのであります。今社会の現状は、給与をもらいたいが資格がないので困つている。そしていろいろな申請をするが、なかなか給与がもらえない。こういう人が数多いのでありまするが、未復員者、あるいは特別未帰還者と申しますか、こういう人の数が現在どのくらいあるのか、それからこれに対して給与を与える資絡は、どういう人を選定して、どういう方法、こういう形のものに給与を与えることになつているかということを、まずお伺いいたしたいと思います。
  68. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 給与を受ける資格者でございますが、これは未復員者給与法も、特別未帰還者給与法も同じでありますが、内地に居住しております留守宅のうちで、本人、つまり外地にいる方が扶養すべき義務のある家族で、すなわち六十歳以上の父母、十八歳未満の子供と妻、こういう方に対しては、家族に対するいわゆる扶養手当と、本人の俸給が渡るわけでございます。その他の方々につきましては、手当が出ないわけであります。これは保留になつているのであります。
  69. 天野久

    ○天野(久)委員 その数はどのくらいございましようか。
  70. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 これは特別未帰着給与法と未復員者給与法と両方合せまして、十月末現在で約三万二千世帯になつております。
  71. 天野久

    ○天野(久)委員 社会の実際は、主人公が帰らない、そして奥さんと子供だけであるという家庭で、これがもらえなくて、各府県の世話課などに迫つている人があるのでありますが、この間の話ですと、一万九百九十四件支払うものがあるのだが、そのうち三千七百二十件だけで、あとはまだもらいに来ないのだというのでありますが、どうもそこに納得が行かないところがあるのであります。ほかにたとえてみると、山梨県あたりにしましても、先々月あたりでしたか、三十何人かの要求者があつたが、そのうち四、五人だけが許されて、あとは許されない。こういう現実の場合がありますが、そういう食い違いは一体どういうところから起きているのでしようか。
  72. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 特別未帰還者の該当者が一万一千と申しましたのは、つまり特別未帰還者として認定してさしつかえない人の名前を、府県に通知したという意味であります。本人からの通信であるとか、あるいは帰還者のいろいろな情報等を基礎にいたしまして、これだけは特別未帰還者として認定してさしつかえないというものを、われわれの方で外務省と相談してつくるわけであります。その中で、本人の留守家族が給与をいただきたいということを申請して参りますれば、無条件でその方には差上げるわけであります。ところが一万一千人の中には、家族がみな向うにいる方もあると思います。また内地に家族がありましても、単なる兄弟関係ということで、扶養親族に該当されない方も相当あるのではないかと思います。そういつた関係から、特別未帰還者として認定してさしつかえないといつた少数のうちで、現実に手当をもらつている方がそれだけになる。こういう関係になるわけであります。但し本人が該当してこの名簿に載つておりまして、しかも本人の留守家族が扶養親族である限りは、必ず扶養手当を渡すようにいたしております。
  73. 天野久

    ○天野(久)委員 今の援護局長お話で、大体その大綱はわかります。が終戦後の混乱当時、それからまたかりに認定をされた人といたしましても、国内においてはつきりした、つまりこの人は、どういうところで、どういうふうにして、どうなつたかということは、私はわかり得ないと思います。従つてそこにりつぱな証拠があがらないで、この給与をもらえないという人があるのではないかと思います。こういう点について、私外務省へも一、二回参つたこともありますが、はつきりした証拠がないので、これに支給されないというのであります。現実に帰らないことははつきりわかつている。しかもその家族には給与しなければならない人たちがある。こういうものに対して、何とかいま少し広い範囲において、実際において向うで徴用された、あるいは、拉致されたということがはつきりわかつた以上は、支給するようになされる御用意はないかどうか。
  74. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 そういつた御要望は、ときどきわれわれも留守家族の方々、あるいは実際の実務当局から質問も受け、また御要望を承つております。御承知の通り未復員瀞給与法の法律の建前は、未復員者でありますれば全部該当者として扱うことになつております。これは未帰還者ということを建前としておりませんで、かつて国家が権力をもつて動員した未復員者という身分に基いて、俸給その他をやつているわけであります。それで未復員者であつても、何らかの事情によつて外地で除隊になつたという者には、給与は出ないことになつております。特別未帰還者給与法というのは、御承知の通り外地で徴用を受けておつた者は同じように扱うべきではないかという考え方から、ソ連の領土内で、いわゆる捕虜として扱われたような一般邦人であつて、最後まで軍人軍属とまつたく同じ待遇を受けて帰つた方がありますが、こういう方々を未復員者と同じように扱うべきだということから、この法律ができております。この法律が中共地区に拡張になつて、いろいろと問題が出て来たわけであります。この法律ができますとときに、当初から、われわれは中共の内部の実情がわからないから、認定をする場合に非常に困難だということを申し上げたのでありますが、一歩でも前進であるから、わかる限りにおいてやつてほしいという、立案されました国会側の要望でございました。われわれはわかり得る限りできるだけ寛大に扱つております。何分にも法律の中に、特別未帰還者とは、中国及びソ連の地域内にあつて、ソ連地域内の未復員者と同様の実情にあるものとなつております。ソ連地域内の未復員者というのは、いわゆる捕虜であります。生活が全面的に規制されている方々であります。しか上この点は、中共に拡張された場合はできるだけ広く解釈いたしまして、捕虜と同じように生活を全面的に規制されませんでも、向うで徴用になつている者は、現在資料のある限り認定いたしております。現在府県から資料のありましたものは、約八割は認定になつております。中には、届出ていないために認定にならない方もございますが、届出さえすれば必ず認定になる。そういう数も含めて、八割は県からの申請に対して認定をする、こういうことにいたしております。認定にならないものにつきましても、決して却下はいたしませんで、保留してございます。そのうちだんだんと資料が整備して参りますので、その資料に基いて逐次追加をいたしております。最初からたとえば子供、非常な幼児、こういう方々にはもちろん特別未帰還者に入れておりません。これは未復員者と同じような状況にあつたという方々でありますから、向うで自発的に残つた方とか、あるいは残つている中で子供であるとか、こういう方は特別未帰還者とは認めておりません。特別未帰還者らしいけれども、何らの資料がない、消息がわからない方は留保してございます。こういう方々に対しても、未帰還という事実に基いて全部俸給は出すようにしたらいいじやないかという御議論があるのでありますが、現在の法律の建前としては、そこまでこれを拡張することは、事務的にはちよつとできないと考えております。しかしでき得る限り資料を集めまして、できるだけ寛大に扱つて、これが援護になるように運用上扱つて行きたいと考えます。
  75. 天野久

    ○天野(久)委員 まことにごもつともです。今お話を聞くと、つまり法律の建前が、やはり中共地区などの者に対しては非常に適用がしにくい、これはごもつともですが、そこで中共地区に対しては、われわれとしてもなかなかその情報がつかみにくいのであるが、しかし聞くところによれば、相当の軍人等があの中共の戦争に使われた、あるいはまた朝鮮動乱などにも幾分参加しておるではないか。こういうような説を聞いておりますが、そこでわれわれとしては、そういう人たちの家族に対しても、このあたたかい恩典に浴させるようにしなければならぬ。今のお話では、八割まではやつておるが二割は残つておるその一割の者も残してはならぬと考えております。そこで援護局長の言われることを聞きますと、法律を直さなければわれわれの手ではそこまで行かない、こういうのであるが、それに対して法律を直しておやりになる御用意があるかどうか、承りたい。
  76. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 実はそこは非常にむずかしいのでございます。特別未帰還者給与法は、未帰還者に対して給与をやろうというような実態的な理由があつてつておるのではございません。根本は未復員者の給与でございます。未復員者という一つの身分に基いて国家が給与を支給する。それを利用いたしまして——利用なんというとなんですが、それによつて、それを利用してやつておるわけであります。お話の通りであるとすれば、特別未帰還者給与法も未復員者給与法も全部一本にいたしまして未帰還者給与法とでもすれば一番完全だろうと思いますが、未帰還者に給よを出すという根本がなかなかむずかしいのではないか。そこにわれわれ非常に苦心があるわけであります。しかしわれわれは協力情報をつかんで行くようにということで努力いたしておりますが、最近赤十字会議からお帰りになりました日赤の社長さんなどのお話を聞きますと、中共の赤十字社におきましても、できるだけ調査してくれ、内地へ通信してくれるように助力するというお話でありますので、今後さらにソ連地区に日赤がいろいろ便宜を供出したように、日赤を通じて向うから積極的に内地へ手紙なり通信なりをよこすようにお願いしてございます。幾らかでもその方で緩和して行きたい。かように考えております。
  77. 天野久

    ○天野(久)委員 そうしますと、法律を直してまでというお考えは今のところお持ちではないわけですか。
  78. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 この点はいろいろ研究いたして考えてはおりますが、事務的にはなかなかりくつがつけにくい問題ではないかと思います。これはあくまでも援護法ではないのであります。留守家族を援護するという建前で立法された法律ではございません。あくまでも援護を要するものも援護を要しないものも、すべて一定の身分に基いて——未復員者及び未復員者と同様の事情にある未帰還者という身分に基いて支給しております。従つて身分関係をとつてしまいますと、何を根拠にして給与を出すかというりくつがなかなかつきにくいのではないかと考えております。いいお知恵がございましたら、ひとつ教えていただきたいと思いますが、この点は私どもも運営上非常に苦慮しておるのであります。留守家族の面から申しますれば、利用になつておる者もおらない者も、まつたく同じであります。しかし留守家族の建前から立法されたものではありませんので、その点にわれわれの苦心があるのであります。
  79. 玉置信一

    玉置(信)委員 給与の前渡上の点で局長にお伺いしたい。せんだつて委員会で、たしか復員課長の御答弁であつたと思いますが、六十歳以下の者でも省令によつて給与の前渡しができるというように、はつきりお答えになつたように思うのでありますが、その点確認のため、局長より特にお答え願いたいと思います。
  80. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 給与の前渡しは、現在の法律によりますと、特別の事情があつた場合にはやつてよろしいということになつております。その特別な事情というのは省令で定めるということになつております。現在は内地に扶養親族のある方だけに給与の前渡しをやつております。それは六十歳以上の親でございます。それからこの前の引揚同胞対策審議会においていろいろ審議いたしましたが、直系親族であるならば、六十歳未満であつても前渡しができるように政府においては考慮したらどうかという決議がございました。その決議に沿うように目下いろいろと協議をいたしております。
  81. 天野久

    ○天野(久)委員 お話承りました。とにかくまだ社会には給与の受けられない悶々たる人がたくさんあることを御承知の上、善処を願いたいと思います。  それからもう一つ今もお話が出ましたが、給与法によりますと、十八歳未満ないしは六十歳以上の人でなければ給与を出さないというようなことが規定されておりますが、この給与に対して特別な扱いをもつて、年齢を問わず、ひとつ家族に出してもらうようにわれわれ要望したい思います。  それから次にお伺いしたいことは、今中共地区から個人引揚げというような形で引揚げて来られる人があるようであります。また来られる道も方法によつてはないでもないと思いますが、こういう引揚げに対して、政府は何かこれに援助方法をお考えなつておられるかどうか、これを承りたい。
  82. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 この問題も実は先般引揚同胞対策審議会に取上げまして、いろいろ研究いたしたのでありますが、これは実を申しますと、技術的な面においていろいろむずかしい問題があります。たとえば日本の船は全然行つておりませんので、外国の船を利用するよりほかはない。その場合船賃はどうしても外貨ドルで払わなければならぬ、いかにして外貨ドルを出せるか、貴重な外貨ドルをいかにして獲得するかという問題があります。また外国船にどういう連絡をとるかという技術的な問題もございます。それからまたこういう引揚け促進の方法を日本政府において正式に承認して、大いに援助するというやり方の及ぼすいろいろな影響を、大きな立場から外務当局でも研究されております。これは慎重にきめなければならぬということで御研究になつておられます。これはいろいろむずかしい問題がありますが、にわかにきめにくい問題ではないか。われわれといたしましては、槙重にやつて行きたいということで、目下外務省大蔵省、それから運輸省等においてそれぞれ研究はいたしております。なお私どもといたしましては、国連に出席されました方々の御帰還を待ちまして、いろいろ御意見を伺つてみたい。できますれば、われわれとしましては船をやるようにいたしたいのであります。船さえ行けば帰られる状態でありますので、できれば日本の船が行つて、その方を乗せて帰つて来るというようにしたい。またそういたしませんと、なかなか徹底いたしません。何とかそういう方法はないものかと考えておりますが、現在のような情勢でございますので、その点もなかなか見通しがつかないような状態であります。
  83. 天野久

    ○天野(久)委員 政府当局としてもいろいろこの点に御考慮願つておるようでありますが、とにかくその方法さえ講じれば解決ができるということは、はつきりいたしておりますので、この点一層研究と御協力を願つて、たとえ一人でもこちらへ引揚げられるように御心配願いたいと思います。  それから次に伺いたいことは、今までも引揚委員会、あるいは同胞救援議員連盟とか、抑留同胞救出連盟とか、こういうものが中心になつて、そして引揚げに対する輿論喚起に努めて参り、いわゆる国民運動の声をもつて関係者を動かした、また動かし得たという事例も私はあつたと思いますが、そこで現状は、一体国民はこの運動に対してあきてはおらないが、実際の費用の点においておそらく活動を停止しなければならないという立場なつておるものがたくさんあるやに聞いております。現実において今残られた人たちはすでに六年目の冬を迎えなければならぬ非常に悶々たる情は、まことに抑えがたいものがあるのではあるが、しかし社会はこの運動に対する資金の欠乏によつて、なかなか活発な運動もできない。こういう状態なつておる。そこで私はこの運動費を政府から出してもらうことが当然で、はないか。この間も何か外務委員会でこの問題が取上げられて請願も出ておりましたが、政府としてはつきりその費用を出そうという御答弁もなかつたようでありまするが、要するに戦争は国が起した戦争であつて、国民は国の命令のもとに動いて、今なおその戦争の結果によつてかの地に抑留されておる。今国連などもしきりに取上げて、当委員会からも中山委員がオブザーバーとして出ておる。こういうような形であるが、そこで国連のこの努力に対しても、われわれ国民はより一層力強くこの引揚運動に努力いたさなければならぬ。努力いたさなければならぬことはわかつておるが、金がなくてできない。こういう状態である。従つて先ほど申し上げましたこの戦争の根源、起りは国が元である。従つて私はこの際この引揚げ運動に対する費用を国から支出して、国民運動を展開し、また帰らざる家族を待つ人たちのこの気持のためにも、また国連が取上げてこの問題をいろいろ論議されていただいておるそれに対する義務としても、これを展開しなければならぬと思う。そういう点についてどなたかお考えがありましたら承りたいと思います。
  84. 草葉隆圓

    草葉政府委員 ただいま御質問になりましたように、一昨日も実は外務委員会に請願が出まして、当委員長からるる同じようなお話を承りました。また本日ただいまも同様の熱烈なる御意見を御質問にかえて承つたのであります。私どもといたしましても、国会議員の皆様方なり、あるいは国民の各層の方々引揚げ問題について国民運動として熱烈なる行動を従来おとりなつておる点に対しましては、衷心より感謝を申し上げる次第でございます。だがこの運動費用を国費をもつて支弁したらという問題でございますが、実は一昨日も、十分今後関係各省とも連絡しながら研究いたしましようということを御答弁申し上げておいたような次第でございます。昨日と本日いろいろと研究いたしておるのでありまするが、まだ現在本日までいろいろ打合せておりまする点では、どうも国費として出すことにおいては、いろいろな関係から考えて妥当とは必ずしも考えられないのではなかろうか。なかなか困難ではなかろうかという見解でございまして、今後とも十分研究はいたしたいと存じておりまするが、やはり純然たる国民運動として、政府の費用による運動となると、いろいろ影響するところが、むしろ場合によつてはかえつて都合が悪いような場合も起りはしないだろうかという、実はただいままでその程度の点までしか参つておりませんが、しかし御意見の点は十分拝聽いたしまして、今後とも研究をさらに続けて参りたいと存じます。
  85. 若林義孝

    若林委員長 ちよつとこの件に関しまして、法制局から来てもらつておりますので、この委員会としてちよつと御報告いたしておきますが、ただいま天野久委員から御発言がありました国民運動に関する国費支弁の件について、請願が出ております。これは外務委員会に付託されたものでありますので、一昨日私が外務委員会出席いたしまして、この件を強調いたしたのであります。ただいま草葉政務次官から御答弁があつたような趣旨であつて一つ憲法上の疑義がこれに加わつて来ることが、論議の一点になつたわけでありますが、今日そういう意味をもちまして、憲法上これを明確にしておく必要があると思いますので、法制局関係の御出席を願つておりますから、一応ひとつ意見を聞いてみたいと思いますが……。
  86. 天野久

    ○天野(久)委員 一点で終りますから……。政務次官お話を承つて、いろいろお骨折り願つておることはわれわれも感謝いたします。そこでこれは、地方における現実の問題として申し上げておきますが、実は資金難のために各帰還促進運動が下火になつております。そこでその家族の心境を私は聞いたことがある。それは今まではいろいろと心配つておるが、最近何とも言つてくれない。まあ私の子供だけは国の犠牲になつておるのですが、一体それでわれわれの家族は甘んじていられましようか。しかしわれわれはそれを国民に訴えるわけに行かない。またみずからどうする力も持つておらない。ほんとうにわれわれ家族は日々涙に明け暮れしておるのだ。何とかひとつというような非常に悲痛な、つまりみずから何か奈落の底に落された悲惨な人のような気持で社会に訴えておる現実があるのです。これはわれわれがそれに同情して、引揚げ運動を盛んにやつておるだけでも、その人たちは一つの気持の慰安になる。またその人たちが妙なこじれた気持にならないで、国の恩恵に浴して、日本国民として生れたことが仕合せだとして暮らさせるのも、またその人たちをほんとうの悲境のどん底に陥れるのも、私はこの運動に相当かかつて関係があると考えております。従つてかりに憲法上どういうことになりましようかしらぬが、しかしまたこれに対して政府として、協力するというならば、これは何かの方法もありましよう。不幸にして憲法上どうしても出すことができないならば、また何かの方法と手段があると私は思いまするが、どうかその点について、ほんとうに声なき未帰還者を待つ家族の気持になつてひとつ御処理願いたい。それを願うことが非常に国民の安心を得、国民の平和のもととなり、国民が全部国のためにありがたく感謝の念をささげつつ生活できるもととなる、と思いますので、どうかその点をひとつよろしく御考慮願いたいと思います。これで終ります。
  87. 玉置信一

    玉置(信)委員 援護の一環として政府にお伺いいたしますが、最近新たに年末手当をやることになつたのでありますが、私は未復員者に対する年末手当も出すべきではないか。これは額の多少にかかわらず、こうした措置を講ずることがやはり援護の事業の一つといたしまして関係者に対して非常に力強いことであつて、家族が非常に忍耐力を持つて更生するというような措置にもなるのじやないかと思うのですが、この点に関して御所見を伺いたい。
  88. 田邊繁雄

    ○田邊説明員 未帰還者の家族に対しまして年末の手当を出したらどうか、こういう御意見でありますが、実はこれは、留守家族全部に対して年末手当を出すということになりますると、やはりその間に例の遺族との問題が出て参ります。戦争中なくなられました方もおりますし、帰還の途中でなくなられた方の遺族もおります。これを除外するということはどうかという問題もあります。それからもう一つ政府職員に準ずるという建前でどうかという御意見があろうかと思います。そうなりますと、先ほどお話がありましたように、未帰還の方も、もらわれる方と、もらわれない方が出て来る、そういうことになります。さらに政府職員と申しましても、実は今度の年末手当の法律では、政府職員の中でも、現実に政府に対して勤労を提供していない方は除外されることになつておるわけです。大体俸給の半額というものをそのまま準用してみても、かえつて妙なものではないかということも考えられまするし、これは留守家族全部を対象として特別にお慰めをするという趣旨で、特別な法律に基いてやるということであれば別でございますが、未復員者給与法なり、今度の国家公務員に対する年末手当の支給に関する法律という線に沿うての支給ということは、なかなかむずかしいと思います。
  89. 福原忠男

    ○福原法制局参事 先ほど外務御当局からお話がございました点について、昨日法制局の方にお間合せがありましたので、その点について研究したところを申し上げてみたいと思います。  この請願に関しまして外務委員会において質疑が行われました際に、外務当局としては、公金の支出については憲法八十九条の解釈上消極的な御意見を漏らされたように聞いておるのであります。しかしその際の右の意見につきましての詳細は、まだ速記録等もございませんので承知しておりませんが、ただいま草葉次官からのお話では、多少その点については、諸般の情勢を判断して困難でないかという、政治的な含みのある御解釈もあつたようでございますから、私たち法制局といたしましては、単にこの点を法律的な問題にとどめて御回答いたしたいと考えております。問題の請願は要点が二つに要約されてあると考えます。まず第一点は、問題となつておりまする海外抑留同胞救出国民運動に対しまして国費の支弁方法があるかどうかという点、さらにこれに対しまして、国費支弁そのものがあるいは困難とかいう事情がございましたならば、割増金付同胞救出切手というものを発行する方法があるかどうかという二点と考えます。国費支弁の点は、この海外抑留同胞の救出国民運動というものの本質がいかなるものであるかという点につながつていると思います。事柄は法律の解釈と申しますか、憲法を適用します前提である国民運動の性質が、憲法八十九条にいいます慈善または博愛の事業に該当するかどうかという点にかかつていると考えます。これは公の支配に属しないという条件がございますが、この点は、おそらく国民運動が公の支配に属するものとは考えられませんから、問題外としておきます。この国民運動がはたして慈善あるいは博愛の事業かどうかということについては、従前のこの運動の実績というものについて、はなはだ申訳ありませんが、法制局といたしましてはその実績をつまびらかにいたしておりませんので、さきに配付を受けましたところの、この国民運動の総本部と称されるところから出ております海外抑留同胞救出国民運動のその趣意書並びにスローガン等を通じましてこれを見まするに、まずその重点を置いているところは、ポツダム宣言受諾に伴いまするこの宣言の厳粛なる、しかも完全なる履行を要求するということと、次には海外に抑留されておりまする抑留者の即時解放ということがこの運動の主眼目になつているようでございます。もちろんこのような運動の基本となるものには、肉親愛あるいは同胞愛というような人道主義的な観念があることは否定できないと思うのでございますが。この底を流れる同胞愛というものがあるところ、この運動自体を慈善あるいは博愛事業にすぎないものと見るには、さつき申しました運動の綱領その他から解しましては、その範囲にとどまるものでない、それ以上のものであるということがうかがえるのであります。従いまして、要はこの国民運動が単なる博愛あるいは慈善運動にすぎないか、それ以上のものであるかという認定にかかるのでありますが、資料といたしましてわれわれの持つているところでは、この運動は単なる慈善あるいは博愛運動をもつて目すべきものじやないという結論が出る余地があると考えております。スローガンが大体七つあるのでございますが、そのうちの最後に遺家族あるいは留守家族の生活擁護というようなことが掲げられておりますので、多少慈善、博愛的なにおいがいたしますが、要はさつき申しましたようにポツダム宣言の即時完全履行ないしは抑留者の急速なる引揚げという点に重点があるということを見まして、そのように理解するものであります。     〔委員長退席、青柳委員長代理着席〕  次に憲法八十九条の公の支配に属しない慈善または博愛の事業であるという点について多少の疑義があるというようなことでございますならば、そのほかに国で支弁の方法はあるかどうかという点を考察してみますると、従前の例をここに調べてみたのでございますが、御承知のように憲法第八十九条の規定というものは、その制定当時から論議がありました通り、きわめて厳格過ぎるという非難のある条文でございます。さようなところから、従前国がこの博愛、慈善ないしは教育の事業における補助金を支出していた例は多多あるのでございますが、その最も顕著なものは社会事業に対する補助金及び私立学校に対する補助金、その三つが大きいものかと思うのでございます。これらのうち社会事業団体の補助という点については、これは直接に憲法八十九条に抵触するおそれがあるというところから、そこに従前の補助金制度は全面的にやめまして、これに対して調査委託、あるいはその他の事業の委託をいたしまして、その委託金名義で交付している例を聞くのであります。さらに私立学校につきましては、これは調査委託というようなととが事実上不可能というようなところから、御承知のようにさきに私立学校法を設けまして、私立学校法によりまして、公の支配に属する団体であるということで、補助金を出すという形をとつているのであります。従いましてこの問題の国民運動に対しまして、調査委託費という形で何らかの国庫の費用の支出ができる余地があるのではないか、こういうように考えるのであります。もちろんこれも予算の認める範囲でございますので、その事項に該当する費目のあることを前提としての議論でございますが、一部にはそのような用途に充ててもいいような費目があるように見受けられますので、その点もつけ加えて申し上げたいのであります。  次に、割増金付同胞救出切手の発行ということは、従来の例といたしましては、本年の正月にございました例のお年玉付の郵便切手がございましたが、あれは共同募金に対する寄付金を同時に郵便料金に加算しまして発行した郵便切手、あるいは郵便はがきによりまして、その切手ないしはがきを購入したものに対しましては、その購入したということによつて、切手あるいははがきの額面に出ております差額を寄付したということにしまして、その寄付金を団体に醵出するという形をとつた例がございますが、もちろんこれは法律をもつてつたことでございますので、現在の法制上、ただちに同胞救出切手の発行ができるかといいましたならば、これはできないとお答えするほかないのでございますが、その点について立法的な措置を講ずるならば、十分実行可能なものがある、こういうことをお答えできるかと思つております。はなはだ簡単でございますが、要点だけお答えしました。
  90. 玉置信一

    玉置(信)委員 ただいまの法制局部長の御解釈に対してちよつと暗示されるものがありましたので、御質問申し上げますが、先刻天野委員から御発言のありましたように、国が戦争を起して、国の犠牲になつておる同胞の引揚げ促進運動であります。従つて広義に解釈いたしまして、この引揚げ運動の事業そのものが政府の委託事業というような建前をとるならば、これに対して国費を支出することができるのではないかどうか、この点をお伺いいたしたいと思います。もつとも先ほど草葉政務次官の御答弁の中にありました政治的の意味を含んだことにつきましては、私もその詳細を伺わなくても、大体了承する点はありますが、しかし一応事務的に考えまして、法制局当局の御所見を承りたいと思います。
  91. 福原忠男

    ○福原法制局参事 国の委託と申しますか、そうなりますと、ちよつと言葉も問題でありますが、公の支配に属せしめる形にしたならば、憲法八十九条には直接触れないということはお答えできると思います。
  92. 天野久

    ○天野(久)委員 法制局お話は、たいへん含みのある、余地のあるようなことでわれわれ愁眉を開いております。実は私この委員会の発足当時から関係いたしておりまするが、ポツダム宣言には、日本の軍人、軍属、いわゆる軍隊は武装を解除して、ただちに郷里に帰り家業に復せよこういうことを命じておると思います。すでに五年、六年たちますのに、まだ帰らない。これは国としてポツダム宣言を完全に履行しておるので、従つてポツダム宣言に命じたことを実行せよということをわれわれは要求する、こういう気持なんです。ただ敗戦国の悲しさに、それをまつこうから権利を振りかざして行くことがでさない。その悲しさから、国民運動として、その実行を迫る、こういう気持なんであります。従つて私は、これは国が国の仕事としてやつてさしつかえないという解釈をもつて、国がその費用を支弁すべし、こういうことを強く主張するつもりでありますが、その点につきまして何か御意見がありましたら承りたいと思います。
  93. 福原忠男

    ○福原法制局参事 御質問の趣旨が、この海外同胞の救出国民運動を国家的なものに、いわば従前国民運動として、政府の手を煩わさずに、国民の自発的な運動として来たものを、今度は国家的なある程度の保護を与える、その保護の与え方が、あるいは国家あるいは政府の運動として、というふうに性質をかえて行くというふうにもお聞きしたのでありますが、もしそうならば、それは一つの政策問題でありますので、われわれとしては、その点の可否をお答えすることはいかがかと思いますが、要はこの運動が今天野委員が申されたように、一応慈善博愛の運動ではなくて、一種の国民的な、ポツダム宣言の完全履行に伴う当然の要求を主張するものであるというところからいいますならば、これはいわゆる憲法八十九条の事業ではないのであつて従つてこれに対し国が直接支配しなくても、ある程度の補助ができるというふうに先ほどお答えしたのでございまして、もしそれ以上に、さらに国自体の運動とするということについては、ちよつと意見を述べる範囲ではないと考えます。
  94. 天野久

    ○天野(久)委員 私の言うのは、ポツダム宣言は、かれこれをして日本はこれに従えということであります。その中に、日本軍人は武装を解除して、ただちに帰つて、そうして家業につけ、帰つて家業につけというのに帰さないから、国はこれを要求する一つの権利がある。ただしかし敗戦国なるがゆえになかなかそう行かない。こういうことで、これを実際からいうならば、国の仕事としてりつばに堂々と私は権利を主張してもさしつかえないものである。こう解釈いたしておる。ついでにいま一つ、これは現実にあつた問題でありますが、政務次官がおられますので、ひとつ御注意を願いたいと思います。実はつい先月のことであります。遺家族二十数名が子供を引き連れ、そうして女、年寄りなどが帰還促進運動に参つた。そうして司令部あるいは議会方面に参つて、最後にソ連大使館に参つた。ソ連大使館に参りますと、ソ連大使館の門衛は中へ入れさせない。つばぜり合いをしていた。そうするとそこへ日本の警察官が十二、三名やつて来てお前たちは連れだつてここにおつてはいけないということで、非常に強く解散を命じた。だがしかしその来た人たちは、ほんとうに命がけで来ておるので、そこで強くソ連大使館の人たちに面会を要求した。そうすると奥から出て来て面会をしてくれて、よくわかつた、それでは待つてくれといつて向うからつまり帰還に対するメモを持つて来て、この通りであるからといつて、会つて明細に話してくれたということでありますがその辺一体日本の警察は、日本政府の命令によつて陳情に行つた大衆を解散させようとしたのか、あるいはソ連大使館の命によつてつたのか、ソ連大使館の命によつてソ連大使館がその陳情者の解散を命ずるくらいならば、懇切丁寧にこうこうかくかくであるというメモをもらつて帰るはずはないのでありますが、こういう事例があつたのであります。もし日本政府がこういうことを命じたとするならば、今後においてはさようなことのないように、ひとつ外務当局から警察方面に御注意を願いたいと思います。
  95. 草葉隆圓

    草葉政府委員 国民救出運動についての補助金の問題、それと憲法の関係についてはただいま御答弁がありましたが、実はこの前の外務委員会においては、憲法論でなく進んで参つたわけであります。そうしてそのときにたまたま佐々木委員から、憲法の八十九条にこういう規定があるが、これはどうかということがありまして、そういう問題になつたわけであります、実は憲法論については、私どももただいまの御答弁の通りだと存じております。今後の国民運動の行き方を考えますると、これは従来のような行き方がいいのではなかろうかと考えられる。国費を出した運動のようなかつこうになつて来るよりも——ただ資金が困る、こういうことから問題が出て参つたわけでありますから、資金についてはいろいろな面で検討する余地もあるだろうと、実はこの前もお答え申し上げたような次第でありますが、これは私どもも研究いたしますし、また場合によりましたら皆さん方といろいろ御懇談でも申し上げまして、進めて行くべきものではないかと考えます。結局留守家族の御心情並びに国民全体の感情から考えまして、一日も早く帰還の促進ができますることが国民全体としての熱望でございますので、それが達成される方法を、最も都合のよい、また影響のよい方法をとつてくれというのが眼目だろうと思います。あとの御意見はよく了承いたしました。     —————————————
  96. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 それではこの際、さきに国際連合総会に出席いたされました同僚中山マサ君らは、出発以来相当の日時がたつておりまして、その動静についてわれわれは大いに関心を寄せているので、同君らの動向について外務当局で何か情報をお持ちになつておりますならば、それにつきましてお話をお願いいたしたいと存じます。
  97. 草葉隆圓

    草葉政府委員 国際連合におけるいわゆる引揚げ問題について日本から中山、斎藤両国民代表と、外務省から倭島管理局長が出席いたしておりますが、その後今日までその動静等について御報告をいたしかねておつたような次第であります。幸いに六日からこの問題に関する委員会が開催されまして、本日一応報告が打電されて参りましたから、その大要を御了知願つておきたいと存じます。  六日は、開会後議事を進めずにただちに散会いたしましたが、昨日国際連合社会人道委員会という、いわゆる第三委員会が開かれまして、第二次大戦における日独伊俘虜引揚げ問題の審議に入つたようでございます。ただいま申し上げますのは、この三代表からの正式な報告と申し上げるよりも、外国電報等によつて伝えられておりますのが早く参つておりまするから、それによつて御報告を申し上げていることを、御了承を願つておきたいと思います。日本からはオブザーバーとしてただいま申し上げました三人、ドイツからは四人出席いたしました。イタリアからはマシヤという国連に常駐しておりまするオブザーバーが出席いたし、結局日本、ドイツ、イタリアと三国のオブザーバーが出たようであります。各国はそれぞれ資料を配付し——日本におきましては三十七万の未帰還者の資料を配付し、ドイツも百二十八万五千余者のソ連におきまする未帰還者の資料を出し——イタリアは資料を出しておらなんだようであります。これに対しまして、イタリアがどうしておりまするかは未確定でございます。それからイギリス代表マクドナルド氏から、この問題について委員会を設置してソ連ブロツクに抑留されている俘虜の状態調査する事実が確認されることが、国際連合今後の活動の前提条件であるというような発言があり、それは三人委員をもつて——その三人委員は、国際連合事務総長の指名するものをもつて充てる。そうして三人の委員調査をする場合においては、関係各国は調査をすることに便宜を与えるという意味の提案があつたようであります。なおオーストラリア代表は、日本の三十七万の俘虜につきまして、この提案に賛成をしながら、さらに日本の俘虜の引揚げについては、アムステルダムにすでに船を用意しているということさえ言われており、これは比類まれな国際条約違反であるというような意味の強い発言があつたようであります。米国代表サンプソン夫人も、日本の俘虜問題について相当発言されたようであります。詳細はまだ手にしておりませんが、日本といたしましては、倭島局長が日本の俘虜の抑留問題につきまする陳情書を、吉田総理の名前において総会議長あてに提出いたしたのであります。以上ごく概要でございますが、一通りの御報告をいたした次第であります。     —————————————
  98. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 次に引揚者定着援護に関する件に移ります。特に食糧配給公団廃止に伴い、引揚者が優先的に米穀販売業の許可が得られるかいなや、この点につきまして政府当局の御見解を伺いたいと思います。
  99. 長山秀夫

    ○長山説明員 お答えいたします。現在食糧配給公団の解体作業を進めておりますけれども、このうちで直接消費者につながる米屋と、パン屋と麺屋のうち、米屋につきましては目下業者の登録の申請を受付け中でございます。来月の十五日から二十一日までの間に消費者の自由意思によつて登録を行いまして——得票数を申し上げますと、六大都市が五百人、その他の市が四百人、町村が三百人、これだけの消費者を獲得すれば米屋になれる。こういうことになつております。またパンと麺につきましては、来月業者の登録の受付をいたしまして来月の中ばから終りにかけて登録をやることになつておりますけれども、目下司令部と折衝いたしまして農林省令を改正して、パンと麺の小売につきましては、登録のような手数を省いて届出制にしよう、こういう計画で進めておりますから、ずつと楽になります。また業者として、の資格につきましては、ほとんど条件がないというくらいに簡単でございますから、かりに引揚者か復員の方で御希望があれば、簡単にパンと麺の販売業者、米の取扱い、販売業者にはなれるというふうに思つております。
  100. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 何か御質疑がありますか。
  101. 天野久

    ○天野(久)委員 今度食糧の配給制度がかわるということで、米は登録制によつて大都市が五百人、町村が三百人の投票を得ればいいということでありますし、パンその他については届出制にしようという話ですが、引揚者に対して、何か特別に業務をさせようという御配慮はないでしようか。今のお話ですと、投票を集めたものばかりが米屋をやれるということになり、そのほかは届出ということになるのですが何かそこに特別な恩典はないでしようか。
  102. 長山秀夫

    ○長山説明員 これが登録とか何とかいうのでなければ、引揚者だけ特別にということが考えられるのでありますけれども、届出制であり、登録制であり、その登録もわずかに東京で五百人も集めればできるという、今の制度といたしましてはきわめて最大限に門戸を開いておるというふうに考えられまして、特に引揚者だけにどうするというようなことは、もちろん考えなければならない問題だろうと思いますけれども、さしあたつて最大限に門戸を開いておるものですから、その御希望があれば簡単にできることでありますので、その御趣旨さえ御徹底願えばいいのじやないかと思つております。     —————————————
  103. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 それでは次に引揚げ開拓団の入植問題でありますが、これまた御当局から御説明をお願いいたしたいと思います。
  104. 伊田通次郎

    ○伊田説明員 海外におりました者が引揚げまして入植いたしておりますのは、お手元に資料を差上げてある通りであります。満州の開拓民で引揚げて参りました戸数が七万八百六十三戸であります。そのうち入植をいたしておりますものは二万四千九百八十戸、また樺太の農家でございまして引揚げて参りましたのが一万百五十四戸、そのうち六千二百二戸というものが入植をいたしております。なおその他の方面から引揚げて参りましたものは、実態をよくつかめないのでありますが、現在入植いたしておるのは大体三千十六戸、こういうふうになつております。合計いたしまして三万四千百九十八戸というものが、現在入植いたしておるのであります。引揚者総数に対しまして、入植をいたしましたのは大体二、三割の率であります。いずれも引揚げて参りました人たちのうち、海外において開拓に従事しておつた者を優先的に入植させております関係で、入植後の成績は一般に良好のように考えております。  なお入植者の選考等につきましても、海外からの引揚者の中で、特に農業に従事をしておつたものは優先的に入植させますように従来から指導をいたしておるのであります。大体以上でございます。
  105. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 何か御質疑はございませんか。
  106. 庄司一郎

    ○庄司委員 この際、渡米されたわが委員会委員である中山マサ君に対して、いかがなものでございましようか、本委員会委員長の名において、あるいはできるならば本院の議長の名において、激励といいましようか、そういう意味の電報でも出して、中山女史が一層感激の上に御奮闘願い得るような措置とりたい、こうう考えておるのでございます。現在出席委員もきわめて少いのであるから、御相談の余地があるかどうかわかりませんけれども、もし委員長等に御相談されて、ただいま申し上げたような趣旨にはどの委員も反対などはあり得るわけはないと思いますから、もしまとまるものならば明日でもけつこうでございます、何らかの方法で懇談会なり何なりを催していただいた上において、中山君激励というような趣旨において電報を差上げて一段と御奮励を願うというようなことにしたならばけつこうではないか、こんなふうに考えておる次第でございます。  なおもう一つ、ただいまの入植の問題について、けさの新聞を見ますと、都内の世田谷からでございましたか、北海道に入植された諸君が、生活にたえないで二十何戸帰る準備をしたというような悲しい情報を、けさの新聞で読みまして、心を痛めておるような次第であります。環境が悪かつたかどうかわかりませんが、まことにこれは困つたことだなと考えておりますが、何らかそれらについて情報を農林省当局において持たれておるならば、この際お知らせ願つておきたい、こう思うのであります。
  107. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 ただいま庄司委員から御要望がありました、中山マサ委員などを激励のために、委員長名または議長名で激励電報を出してはどうかという御要望に対しまして、御趣旨は了といたしました。後に委員長とよく相談いたしまして、とりはからうことといたします。
  108. 伊田通次郎

    ○伊田説明員 ただいまの点につきましては、当局としまして十分実情調査いたしますが、おそらく終戦直前あるいは直後の都市の集団疎開者の人たちではなかろうかと思うのであります。この問題につきましては、北海道庁とも連絡をとりまして、集団帰農者の更生につきましていろいろと対策を研究中でございます。今お話の点は十分調査をいたしたいと存じます。
  109. 天野久

    ○天野(久)委員 ちよつとお尋ねしたいのでありますが、入植という問題については、今まで住民がそれぞれ占有しておる土地のほかに入るのでありますから、それは生活上あるいは開拓上非常に困難が伴うことははつきりいたしております。ところがわが国の現状といたしまして、国民の数と面積から申しましてどうしても新しく開拓いたして行かなけれどならぬということは、これは議論をまたないのであります。そこで、本年度の入植者を約一万戸予定しておつたが、それが五千六百に削減されたということを聞いております。またこの入植が非常に困難で、今庄司委員から言われたように、何か開拓地から引揚げてしまつたという場合も私ども聞いておりまして、これは非常に困つたことだと思つておりますが、それは入植地の選定と、入植後における政府の保護指導にいま一段と努力を払わなければならない点がありはしないか、こういうことを考えます。それはいわゆる政府当局のお考え、お骨折りによつてなし得る問題だと思う。そこで来年度におきまして、本年が五千六百戸に縮減されたから、来年はこの程度でいいではないかというお考えがあられると、これは大きな問題だと思う。従つて年度におきましても一万戸の予定を立てて進んでおられるかどうか、またそれが実現を期して努力されておられるかどうか、この点をちよつと承つておきたいと思います。
  110. 伊田通次郎

    ○伊田説明員 来年の入植戸数でございますが、これはまだ予算の決定を見ておりませんので、本きまりでありませんけれども、大体六千五百戸ということに一応なつております。二十五年度は一万戸でございますが、二十六年度はいろいろの関係で六千五百戸というふうに削減をされたのであります。われわれとしては非常に困るのでありまして、ぜひとも一方戸以上のものを二十七年度には要求いたしたい。かように考えております。  なお入植に関しましていろいろ問題があるのでありますが、これは終戦直後、特に二十年以降二十二年までの終戦後のどさくさの際に入りましたので、国としても十分受入れの態勢もできておらない、また計画も十分立つておらぬという際にどやどやと入つたのがいろいろと困つておるのであります。その後今お話のありましたように、入植者の選考にしましても、あるいは適地の選定にしましても、一定の基準を設けまして厳選をいたしております。昭和二十三年以降においては軌道に載つてつておると思うのであります。大体さような特況であります。
  111. 天野久

    ○天野(久)委員 来年度一万戸の入植予定をしたい、こういうことでございますが、これは一つぜひ実現するように努力を願いたいと思います。東京付近などは土地が少いのでありますが、東北、北海道等においてはまだ未開拓地が相当あります。従つて入植地の選定を誤らないで行きますならば、りつぱにそこを開拓して食糧増産に寄与し得ることは、われわれ視察してはつきりそういうところを見受けております。また干拓等においてもし入植ができるならば、これは非常に有数ではないか。また干拓に適したところが相当あるようにわれわれは見受けております。従つてどうか入植の戸数を減すようなことがなく、必ず一万戸以上を案現するように御努力願いたいと思います。  それから先ほど帰還促進運動に関していろいろ国庫支弁の要求もいたしましたが、その節実は申し上げようと思つたが、これは各委員の要望であり、国民の要望であると私は考えております。そこで本委員会として決議案を上程して、国会においてこれを国が援助してなすべきものであるという決議案を提出いたしたらどうかと考えますので、どうか委員長においてもしかるべくおとりはからい願いたいと思います。
  112. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 ちよつと速記をやめて。     〔速記中止〕
  113. 青柳一郎

    ○青柳委員長代理 速記を始めて。ただいまの天野委員からの御要望につきましては、委員長とよく相談して善処いたしたいと存じます。  これにて本特別委員会の第九回国会委員会の議事は終了いたすわけでありますが、短期議会にもかかわらず、委員各位にはよく本委員会設置の趣旨にのつとり引揚げの促進ないし留守家族の諾問題等の各般にわたり御熱心に御審議、御調査を願いまして、委員長としてまことにありがたく厚くお礼を申し上げたいということを、委員長よりのお伝えでございまして、それを皆様方に御伝言申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後四時三十二分散会