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1950-07-26 第8回国会 参議院 予算・大蔵連合委員会 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月二十六日(水曜日)    午後一時十四分開会   —————————————  委員氏名   予算委員    委員長     波多野 鼎君    理事      石坂 豊一君    理事      野田 卯一君    理事      羽生 三七君    理事      伊達源一郎君    理事      藤野 繁雄君    理事      櫻内 義雄君    理事      東   隆君    理事      木村禧八郎君    理事      岩間 正男君           池田宇右衞門君            泉山 三六君            大島 定吉君            工藤 鐵男君            中川 以良君            長谷山行毅君            一松 政二君            平井 太郎君            平岡 市三君            深水 六郎君            安井  謙君            山本 米治君            岩崎正三郎君            内村 清次君            河崎 ナツ君            佐多 忠隆君            下條 恭兵君            山田 節男君            原  虎一君            若木 勝藏君            吉川末次郎君            飯島連次郎君            楠見 義男君            高良 とみ君            西郷吉之助君            新谷寅三郎君            高瀬荘太郎君            高橋龍太郎君            前田  穰君            菊田 七平君            鈴木 強平君            中井 光次君            一松 定吉君            堀木 鎌三君            森 八三一君   大蔵委員    委員長     小串 清一君    理事      大矢半次郎君    理事      佐多 忠隆君    理事      山崎  恒君    理事      木内 四郎君            愛知 揆一君            岡崎 真一君            九鬼紋十郎君            黒田 英雄君            清澤 俊英君            野溝  勝君            松永 義雄君            森下 政一君            小林 政夫君            小宮山常吉君            杉山 昌作君            高橋龍太郎君            油井賢太郎君            森 八三一君            木村禧八郎君   —————————————   本日の会議に付した事件昭和二十五年度予算国民経済に及  ぼす影響に関する調査の件  (最近の金融状況に関する件)   —————————————    〔波多野鼎委員長席に著く〕
  2. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) それではこれより予算並びに大蔵委員会を開きます。  この前から問題につなつておりました現下の金融情勢につきまして日本銀行総裁であり、且つ日本銀行政策委員会の議長をしておられます一万田氏が御出席になりましたので、一万田氏から一応の御説明を承わりたいと思います。
  3. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 今日ここに参ります機会を得まして金融のことに関しましてお話ができますことを非常に有難く存じております。丁度この朝鮮事変を契機として恐らくすべての政策相当の検討を要するこういうときに際会しましてお話を申上げることは、非常に私としては時を得ておるように思うのであります。併し同時にちよつと二十四年度の、一口二十四年度の事柄を申さなくてはならん。二十四年度の金融政策といたしましては、これはひとり金融政策のみでありません。財政経済金融政策を通じてインフレを收束するということがこれが主目的でありまして、無論こういう政策を実行する上におきましていろいろとこれに基く副作用、或る意味において面白くない副作用も起るであろうということもそれは覚悟の前であります。いずれにしてもインフレを收束せなくてはならない。丁度大きなおできができておる、これを切開せずに置くとやはり生命を失う。切開することによりまして身体のいろいろな機能に若干の障害を生するであろう。これも併し敢えてやらなければならない。これが当時の政策である。が、併し当時の金融政策といたしましては、その同じおできを、できておるそのおできを治す手術はこれが誰が見ても相当のお医者が見る限りでは同一であります。併しながらおできのできておる身体というものは殆んど各人各様身体であります。そうでありまするから、この手術をするということは、言い換えれば当時ではドツジさんの趣旨に從い、ドツジ・ラインを堅持する。ドツジ・ライン処方籤というものがいわゆる手術に当る。併しそれを実行する上においてこの病気を患つておる体質というものを考慮に入れなければならん。その体質を考慮に入れたのが、いわゆる金融上り調整となつて現われたのであります。言い換えれば二十四年度におきましてはこのドツジ・ラインを飽くまで堅持する、これは百パーセント堅持する。併しそれによつていろいろな惡い副作用を可能な範囲において金融上で調整して行くということが当時の日本経済の実態、病人に誓えれば体質と言いますか、或いは体の工合から見て、適当であると考えたのであります。それで大体そういう方向において金融政策を採つで参つた。それは御承知のように大体において財政によつて引揚げ金融の措置によつてカバーをしたという政策が現われて来ておる。これが二十四年度の私は金融の大筋と御覧下すつてよろしい。が併し二十五年度に入りますとそれが違うと私は考える。それは丁度お医者が病人を扱う場合と同様でありまして、病人を、相当重病人手術する、その重病人に対する態度、その手術がまあ大体において手際よくやつてのけた後の病人に対する扱いというものは異らざるを得ない、異るべきが当然であると私は考えておる。ですから二十四年度のことを金融情勢から申せば二十四年度におきましてはインフレを收束するという、この目的は達し得る。副作用は起きても、若干起きても或る程度これをカバーするが、或る程度副作用が残る。言い換えれば経済上ににおいていろいろの困難が起つてもこれも止むを得ない。そうしてそのやり方としましてはこの手術中と同じように、手術中ではやはりこれでは輸血をしなければならん、病人の意思に拘わらんでも輸血をする必要があります。或いは又栄養灌腸栄養注射、或いは葡萄糖の注射も必要である。そういう行き方が止むを得ない。そうしてその二十四年度の眼目と私のいたしましたことは、闇物価を下げる。二十四年度の金融政策といたしましてはそういうふうな財政引揚げを調整はするが、闇物価は下げなはればならない。更に又当時生産が相当増大した結果、統制から外した物資価格から言えば自由市場価格といとものは相当形成されて参つたのであます。この価格は下げる。こういう程度に大体目途を置く。從つてその範囲においては若干デフレ的傾向、デフレ的であるとも言えるかも知れん。そうして補給金を外したことによつて価格が上る。この公定価格それをひつくるめて物価で一般としては大体横這い状態に置く。これが政策の眼目であつたのであります。大体私はこの政策相当実現をし得たと確信をしておるのであります。そうしてそういう程度のことが当時の日本経済にはやはり私は適当である。こういう見解で二十四年度では相当の金を出したのでありますが、具体的に言えば財政引揚げたのが約九百億前後と思いますが、それ以上若干一千億近い金を私は出した。從いまして、刻々いろいろな危機があるとか、いろいろ叫ばれまたけれども、二十四年度においては、私は大体において経済は微動もせずして済んだと思います。そこで二十五年度はどう違うか。二十五年度は前と若干違うと言うがどう違うか。それは丁度手術した後の病人に対して、手術十分成功裡に終つた。病人は安静をしておる。これに対する行き方というものは手術中の病人に対する手当と違うことはこれは申すまでもないのであります。大体経済も同じ状況であります。二十五年度は一体どういうふうなやり方をするか、それにはちよつと金融状況というものを申さなければなりません。大体このドツジ・ラインと申しますか、ドツジさんの趣旨に基いた予算の編成、財政というものは御承知のように非常に黒字を生ずる。巨額の黒字を生ずる財政である。これはインフレの收束のために止むを得ない。又とるべき措置であつたと思うのでありますが、非常にそういうふうな黒字、從つて当時の日本経済力からいたしますれば、総国民所得の中かちこういう税金を払つた上に銀行等に預貯金をなすだけの余裕はないのであります。それにも拘わらず二十四年度にそういう巨額のこの信用を出しておる。そうでありますから、例えば二十五年度から考えると誓えて言えば、ここにお櫃が二つある。一つのお櫃にはそういう税という形で国民所得から吸上げておる金がずつとこの財政に余裕となつて現われます。一方のお櫃には銀飯と言いますか、飯が一杯溜つておる。一方のお櫃金融界である。金融界お櫃は今のような措置で預金が集まらないという結果空櫃になつておる。ところが世間は金融と言えば銀行のこと以外に金融はないように錯覚をする。又そういうふうに考え易い。日本銀行金融機関との間だけが金融なんかのように考える。ここに間違いがある。今のお櫃で誓えると、この金融界の方のお櫃空櫃になつておる。財政の方の資金の方に銀飯が一杯溜つておる。これは余りそう動いていない。空櫃お櫃の飯をつけいつけいと子供がわいく言う。これをついだらお櫃が壊れます。これは当然のことであります。そういうことは金融当局としてやられることではないのであります。そんならお櫃にはないかも知れない。お櫃にはないかも知れないが、新らしい米を出して、といで又飯にしてつければいいではないかという意見がある。それを実際に申しますれば、日本銀行から追加信用を出せばいいのではないか、こういう議論である。そういうことがこれはまあ御婦人あたりにお尋ねすればお分りかも知れない。もう炊いてある飯はここにあるのに又米を新らしく出して飯を炊くというのは、そういう馬鹿げた話はあり得ることじやない。そんなことをしていれば、こつちの飯が腐つてしまう。そういうことが今日、日本の困窮の経済から立ち上ろうとして、無駄がなく一銭一厘もすべて効率的に行かなければならないときに許さるべき態度ではないと私は確信しておる。それでどうしてもこのお櫃を壊さないように、こつちにある銀飯を一つ出して欲しいというのが、二十五年における資金源としての私の立場。資金供給としてはどういうふうに二十五年度はなるかと申しますと、これは手術中のこの金融につきましては、先程申上げましたようにカンフルの注射もしなければならない。それから輸血も場合によつては必要、そういうふうにやるというのではないのでありますけれども、そういうふうな考え方金融も、ときと場合に止むを得ない、こういうことであります。併し二十五年度は手術が立派に成功裡におさまつておるのでありますから、そこでこれは先ず第一にはこの病入自体が起き上ろうとする、回復しようとする意欲と、節制が守られるということが何を言うても要請される問題であります。同時にこれに適当な栄養もやつて行く。こういうふうな行き方をせなくちやならん。そうしてこの病人が日一日と床の上に起き上り、或いは運動をする稽古をして行く。そうして後は外へ出てステツキを持つて散一歩もできるでありましようし、或いは又マラソンに出る。こういうふうに持つて行かなくちやならんのであります。そこでそういうふうになるように、金融の方法を二十五年度以降には取らなくてはいかん。言い換えればこれは少しく経済的な用語で申せば経済循環をよくするということであります。経済循環、いわゆる人間の身体でも血の廻りが惡かつたらどうにもならん。経済循環、生産から消費に亘つて物がずつとこう適量において捌けて行く、そこで経済というものが循環をして行く。こういうふうな経済体勢に二十五年度以降では持つて行かなくてはならん。それをそんならばどういうふうにしてそれを持つて行くか。これが金融をする上の一つのコースになる。それを私はそういうふうによくなるように持つて行かなくちやならん。運動ができるように持つて行かなくちやならん。ただ併し日本経済といたしましてはただ起き上り、ただ運動をするというような行き方ではいけない。無論一時にそういう状態が出現するとは私は思つておりません。併しながらそういうふうに持つて行く日本経済をして要請されるところがある。どういう要請を受けるかと言えば、貿易によつて、いわゆる輸出というものを振興しなくてはならん。国際のマーケツトにおいて競争し得る程度健康体に行く行くはならなくてはならんという要請があります。そこで同じ動くにしても国際水準に一歩々々と近寄るように立ち上るように持つて行かなくちやならん。又そういうふうな金融も考えなくてはならん。こういうことになるのであります。そこで、この二十五年度におきましては、私そういう点を、外の言葉で言えば合理化を進めて欲しい。企業の合理化を進めて欲しいということに要約されるのであります。企業の合理化というのは、今日におきましてはよい機械を入れる。設備が惡ければ設備も改善する。よい機械も入れなさい。技術もよいのを入れなさい。そうしてこの商品の生産費というものが十分国際競争において堪え得るようなものにしなさいというのが合理化の内容であります。そうしますと、この合理化には相当多くの資金が要るのであります。又この資金を供給することによつていわゆる金融というものが緩かになつて行く。ただ滯貨があるから滯貨金融をしようというような行き方ではいけない。この滯貨が如何に動き、自然にこの滯貨が捌けて行くようにする。金融をすることによつていわゆる合理化を推進する。企業自体合理化によつて国際水準に近寄る体勢を徐々に示して行く。その金融面ではその所要するその資金の産業に入ることによつて金融が楽になつて行く。こういう方向をどうしても二十五年度から取らなければならん。それが二十四年度と異なるのであります。ところがこの合理化資金は私がここで申上ぐるまでもありませんが、長期資金であります。そこでどうするかという問題がある。そこで先程申しましたように、資金源としては二十五年度は見返資金預金部資金、これをお使いになればいいぢやないかというのが私の考。飯を炊いて置くということは食べるため。ただ蓋をして置くというようなために飯を炊く必要は毛頭ない。そこでこれを動かして来る。そうしないと、空櫃の方は如何にお代りをして出してもつげない。つげばお櫃が壊れる。そうして、空櫃の方のお櫃はこれは金融機関というものを指すのでありまするが、若しも金融機関が不健全な様相を呈しておるといたしますれば、日常に日本の人々が日本経済外資導入なくしてはやれないということを幾度も繰返して言うておるが、日本金融機関が不健全な様相を呈しておつてどうして外資導入ができるでありましよう。実にこれは考えて貰わなくてはならん点であるのであります。そこでどうしても見返資金預金部資金というものを動かして欲しい。これは相当な金額に上るのであります。又私の考ですと、見返資金のこういう性質について、余り私がむしろいろいろと御審議をされて專門な皆様方にかれこれ言う必要もないかも知れんが、この見返資金について若干の何と申しますか、誤解と言えば惡いが、十分この資金の性質というものを了解をしていないかの感じがある。この見返資金資金というものは、アメリカ援助物資等によつてその代り金がここに集まつておる。これは間違いはない。併しながら何故にアメリカタツクス・ペーヤーの負担においてそれ程の物資日本に寄越して呉れるかと言えば、それ程のものがなくしては、日本国民生活日本経済も堪え得ない。從つて自分達アメリカタツクスぺーヤーとしては甚だ負担が大きいが、止むを得ずこれだけは日本に送ろうということがコングレス等の決定であると思う。そうしてみると、そのもの自体日本経済国民生活の上にどうしても全部が入つて来なくては、そこにマイナスを生ずる。ところがその変つた形である見返資金というものは、これは国民所得の中から買つた資金である。これはアメリカから来たんじやない。例えば食糧を買う場合は私共が月給の中からこれを出している。或いは又外の資材でしたらそれぞれの会社がやはり出している。從いまして、この見返資金というものは、援助という立場にある限りは常にやはり還元をして貰わないと、資金面では自立経済を営んでおるという様相を呈する。そこに無理が生ずる。よく分り易く言えば、仮にそういう見返資金を十分使わずに置くとすれば、ニューヨークに持つてつておると思えば概念がはつきりする。そうするとそれは売買です。資金的に言えば、日本の金がニユーヨークに行つておることと変りはない。そうすると日本経済は大きな金詰りをするであろうということは、これは私は何人も考え得ることであろうと思う。そういうゆとりのあるものだつたら甚だ私は相済まんと思う。そんなゆとりのあるものをアメリカタツクス・ペーヤーに御負担して頂くということは、これは又相済まない思つている。これはぎりぎり必要のものである限りにおいて私は許されるべきものじやないのであろうか。こういうふうに私は考えておる。そこで二十四年度はインフレ收束という見地でありますから、そう金が出なくてもよろしい。これはインフレを收束するために他に副作用が起つてもよいという態度でやつたんでありますから、そう細かく議論しなくてもよい。併し二十五年度はそうはいかない。そこで今育つたような行き方金融をするから見返資金預金部資金というものを活用しよう。こういう方向。それは恐らくが大蔵大臣も全く異論のない、私と同じ考えでおありになると信じている。ただ私は直接のその特別会計財政の問題の直接の責任者ではない。ただそれが金融面に大きな影響を与えますから、その限りにおいてできるだけ大蔵大臣をお助けして、そうしてそういう金が動きますようにと努力をしているのであります。見解において決して相違はない。幸いにしてこういう点は相当よく分つて来まして、この見返資金預金部資金の運用ということが二十五年度の金融中心題目に今日なつておりまして、そうして動き方も徐々によくなつておる。どうしてこれを動かそうかというふうなところまで来ておりますから、これは私は今後相当よくなつて行くという確信の下にあるのであります。こういうふうな行き方というのが私の抱いておる二十五年度の金融政策のメイン・ストリートであります。これでよろしい。言い換えれば、合理化ということによつて相当有効需要を起す、その有効需要経済循環を図つて行く、そうしてその線でデイス・インフレというようなところで行ける、こういうふうな考慮の下に進んでおるわけです。こういうふうなところに朝鮮事変が起つたのであります。私自身は朝鮮事変日本経済に如何なる影響を与えるか、これは非常な細心の注意を以て見ておるのでありまするが、まあ併しこれは相当日本経済影響を与えるということは言い得ると思うのですが、細かいことは無論私の十分知つておるところでありません。これは又仮に若干知つてつても、いろいろと作戰上のことにも関連することで、申し上げ得ることではないのでありまするが、併し言い換えれば、ここに有効需要というものの関係が又起つたわけです。そうしてこれは戰争というようなものの要請でありまするから、戰争とまで言い得るかどうか知りませんが、朝鮮事件というものの要請、こういうことを中心として更に又こういうふうな事柄から国際の政局というものがどういうような動きを今後するであろうか、こういう進展をよく見つつ考えないと、何とも今は判断は下し得ない。併しいずれにしても相当需要を喚起する。ただ私が今日そういう面において言い得るであろうと思いますことは、この事変がどういうふうに解決いたしましようとも、どういうふうにという意味は、非常にどうなるという意味じやありませんが、私共としては、速かに局地的解決を念じておるのでありまするが、そういうふうに行きましても、今後の世界の情勢というものは相当程度において防衞態勢を強化するであろうことは想像がつくのであります。言い換えれば、国際的に物資需要相当喚起されるであろう。これは更に価格政策の上から申上げれば、国際物価水準という、ものが、どちらかと言えば上昇を迫るであろう、こういふことが言い得るのであります。從いましてこの事柄は同時に日本経済に大きく影響をするであろう。まあこういうふうにも考える。言い換えれば、有効需要日本経済に及ぼす影響が徐々にやはり大きくなつて来る。そう今日において大変な需要を喚起するかのような考え方をするのは非常に間違いであり、同時に謹愼を欠くのでありまするが、併し徐々に相当需要があるであろうと思う。こういう形はインフレ傾向を取る。傾向としてはインフレ。いわゆる有効需要がそういう形で国の内外から起る。言い換えればインフレ傾向。今インフレということについて神経過敏になつておるのでは、決してありません。何もそう恐れることはない。これは又インフレに断じて再び転じてはならない。又転ぜんでもよろしいというふうに考えておるのでありまするが、そういう傾向はあるということはやはり十分腹に入れて今後の政策を考えて行かなくてはならん。これは言い得る。併し例えばアメリカの……今新聞では特需、特別な需要の特需、というような言葉で呼んでおりますが、アメリカ作戰上から、日本物資に対する需要、こういうものはこれはドルの裏付けがある。ですからそれ自体直ぐにインフレ的と言わんでもそれはよろしい。ただ輸入状況が、今後における日本経済に対する物資の輸入がどういう程度にスムースに行くかということがキー・ポイントである。ドルの裏付けがあるから直ぐに安心だというようなことを考えると大変な間違いである。これは六一次大戰当時における日本の輸出が如何に振興し、そして百円が五十数ドルというような為替相場の現出をした。外貨は溜るに溜つた。二十数億の外貨が溜つた。併し日本国内価格が高くなつたのと同じであるのであります。要するにドルというもので日本に輸入をする……特に日本の場合におきましては御承知のように原料資材というものが極めて少い。原料資材が非常に少いのでありまするから、この補給というもうが十分できない限り、差当つては若干のストツクがありますが、この限りにおいては物の需要に応じられまするが、併しこれは直ぐ物価騰貴を生ずる懸念を生ずる。これがそういうふうなことになると、日本物価騰貴というものは国際物価水準を上廻る可能性が多いのであります。それは自分自身原料資材を持つているか、或いは輸入如何にかかつている。こういうことなんでありますが、仮に日本物資に対する需要が多くなつて来て、而も原料資材がこれに伴わんということになると、日本物価は上つて来る。言い換えれば、それでも無理に需要に応ずるとすれば日本国民生活をぐんぐん下げる。いわゆる日本の戰争中みたいに国民国内生活の面において変つて行く。あの戰争状態と同じような状況を生ずる慮れが多分に生ずるのであります。こういう点はやはり十分に注意をいたまして、今後の経済政策並びに金融政策を見て行かなければならない。これは又どういうふうな金融上の形で変つて来るかという点も一つ申上げて置きますと、今分つておることだけでも二つの点が財政上において違つた形を取つておる。一つは今申しましたように、私は大体先程申しましたように、見返資金預金部資金を大いに役立てようということを説明した。今後は産業に対して預金部資金も見返資金長期資金として出して貰いますが、今度そういう特需と申しますか、アメリカ需要、貿易の方は暫く措きましてアメリカの方から軍事用の需要がありますと、ドルでそれを買つて行かなければならない。そうするとこのドルは日本物資を買うために今日では為替管理委員会と言いますか、あすこに売るわけであります。言い換えればドルが来て、そのドルを売つて、又ドルが円になつてその円が産業界をずつと潤して行く。いわゆる外国為替特別会計といいますか、私法律をよく知りませんが、この外国為替管理委員会の基金に、ドル資金を麺やすような形において国内金融は大きく賄われている。これは大きい一つの変化であります。これは見返資金にも預金部資金にも財政支出というものにも関係なくて行われる大きな経済の口がここに一つできた。もう一つ財政上においてやはり変つた形があるのは今回のいわゆる私余りよく知りませんが、予備警察隊ですか、警察の方が七万五千人ですか、それに水上保安隊が八千人、こういうものが殖えて行きまして、相当これは恐らく財政上予定しなかつたことでありますから、これにやはり数百億要るでしよう。これは私より皆さん方がお分りのことですが、恐らく私は数百億円の資金もこれは結局債務償還を減らすという形において賄えるだろうと私は想像している。そうしてそれだけ又資金需要が出て来ているわけであります。それが又一般産業界にいわゆる国民所得という形で還元されて行く。こういう形になつて、こういうふうに幾つか変つて来ている。特にやはり外国為替資金から産業資金が投下される。これは十分その他の輸出入貿易とも総合的に考えるべきは無論でありまするが、要するに輸入状況というものを十分よく見ないと、これは非常にむずかしい問題だ。日本の産業というものは需要があつて原料資材がない。そのために物を作るのにどうにもならない。ましてそういう要地席があつて設備の拡充をやつたところが、直ぐに行詰つてしまう。そういうような状況である。そういうふうな形で今後行く。これが二十五年度の金融が動いて行く上において一つの大き道なである。そういう点を一つ十分皆さん方が御承知、御注意下さつてつて、いろいろ政策を立てて下されば、非常に私は有難く思う次第であります。今日は極く大筋なところを申上げまして、尚御質問がありますればお答え申上げます。これで御容赦願いたいと思います。(拍手)
  4. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 暫く時間の余裕を貰いましたから、これから質問をして頂くことにします。
  5. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 只今の日本銀行総裁説明によりますと、二十四年度はインフレ收束をするために財政的に相当の緊縮が行われるので、金融的な調整をやつて、それで大体ディス・インフレの線に持つて行きたい方針でやつたところが、二十五年になると事態は変つて来ているのであるから、インフレ收束の問題は勿論やるが、而もそれを緩和するディス・インフレの操作も財政自身でやるべきだというようなお話だと承つたのでございますが、この点に関しまして、今年の四月、五月あたりは財政自身措置すべきであつたに拘わらず、非常な引揚超過になつたために、日本銀行は依然としてこれを金融調整する方策をお採りになつていると思うのですが、その後六月に至りまして、私達に言わせればむしろ突如として金融政策を変更になつたように考えるのですが、こういうふうに突如と変更されたのじやないか。これが若し突如とされたならば、どういう理由によつてそういうふうに突如と変更をなされたのかという点、それからそれを契機にしまして、大蔵大臣はそういうふうに突如と金融の引締をやることは、インフレ收束に対して非常な弊害があるというような見地から、日銀総裁に御相談を申上げまして、そういう政策でなしに、もう少し金融による調整をやつて欲しいということを懇請したというふうに我々は聞いておるのでございますが、而も大蔵大臣がその会見の直後新聞記者団に発表したところによりますと、日銀総裁もそれに賛意を表されたということになつておるのでございますが、今のお話によりますと、むしろそうでなくてインフレ收束の問題は財政自体措置すべきだ、金融金融として方針を変えた方向に今後も進むんだというようなお話のように承つたのでございまするが、そうだとすると、財政政策金融政策が二元的に分立しているような感じを受けるのでございますが、それらの点に対して総裁はどういうふうな御所見であるか承わりたい。
  6. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 実は私は安本時代から佐多君が非常な勉強家であるということを承知いたしております。(笑声)その佐多さんから今のような御質問を受けることは私は非常に意外に思う。こういうことを言うのは惡いのですが、それは突如とおつしやる。突如というようなことは絶体にない。それは今日国際情勢が如何に激しく日々変化しつつあるかということを御勉強なさつておれば、日一日或る意味において政策が変つても決してこれを不思議に思うことはないのであります。それ程かように違うのです。二十四年度はああいう政策、二十五年度はそういうふうに行くべきでないということは私は勉強が少し足りないと思う。むしろ日本銀行は遅過ぎたのではないかというふうに考えて行くのが当然じやないか、私はそういうふうに答弁をして……。決して突如じやない。二十四年度はああいうふうな財政……、そういうふうに行くのであります。二十五年度はそういうふうなことを繰返してはいけないということは少し深く考える人は当然思いを及ぼさなければならんと私は思う、突如というのはおかしい。それは要するに自分の不勉強でただ日本銀行のすることだけをいろいろ見たり聞いたりするからそういうふうに突如……。自分が勉強しておれば決してそういうことはない。それから大蔵大臣と私がどうというようなお話がありますけれども、大蔵大臣と私とは見解の相違はない。それは私が画面から大蔵大臣の仕事がし易いようにうまく持つてつて上げなければならん。大蔵大臣責任者であるが、今日の日本経済にはいろいろ問題がある。そこに時間的ギヤツプが生ずるから、私は強そうなことを言う。私はどつちかと言うと大いに気勢を上げる方なんです。そういう勢いを以て、大蔵大臣が自分の仕事をずつとされると非常によかろうということだけで、そのために時間的ギヤツプを捕えて上げなければならん。それから私は、一つは純経済人であつて日本銀行総裁として純経済人で、金融的な範囲を一歩も出ておりません。從いましてそういう見地で、大蔵大臣となると私にはよく分りません。私は政治家じやない。政治家というのはそうもいかんのじやないか。これはあなた方に聞いて見なければ分らんですが、そう生一本で経済人の言うようなことをやつておられない。経済人が政治家みたいなことを言うておると国は潰れてしまう。私は私共の立場を固く守る。併し政治家のお立場も同情を持つて考えてあげないと佐多さんが大臣をやられてもうまく行かない、こういうことになると思います。こういうことが大体の考え方で、突如じやない。大蔵大臣と何らの食違いもない。それから財政金融がバラバラになつておると言われる。冗談じやない。これも佐多さんの誘導尋問のように私は感ずるが、そうじやない、ごつちに御飯があるじやありませんか、こつちは空櫃で、それですからその御飯を食べるのが人間の常識で、それがなくなれば又私の方から新らしい米を出す。言い換えれば日本銀行追加信用を出して行く前に先ず蓄積資金を先にお使いなさい、あるじやありませんか。日本銀行の通貨を幾ら増発しようがどうであろうが、出さざるを得ないじやないかという、そういうふうな無茶なことをしなくても、ここにちやんとある蓄積資金、その御飯を先ず頂戴したらいい。特に物資不足の折だから一粒の米も無駄にしてはならないでしよう。先ずある御飯を先に食べなさい。何も金融財政が乖離しておるわけじやない。財政金融は極めて緊密な調整下にある。こういうふうに考えております。佐多さんの言うようなことは決して私はないと考えております。どうぞそういうふうに御判断願いたいと思います。
  7. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) ちよつと質問の方に申上げますが、時間が余りありませんのに質疑通告者が非常に多いですから、どうぞ簡單に御質問願います。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日銀総裁から不勉強を指摘されまして誠に恐縮なんですが、併し私が突如と申しますのは、私はしつかりした数字を以てお話しておるので、四月、五月には少くともそういう方向でなかつたかと私は数字的に説明ができると思いますが、これらの点になりますと見解の相違でございますから、この点は別にして置きますが、今おつしやつたように、成る程財政財政の問題として処置しなければならんということはお説の通りで、だからこそ我々もすでに去年から例えば見返資金なり、預金部資金を積極的に活用することが資金運用の合理化であるという点を強く主張して、漸くそれが認められて、最近においては日本銀行総裁自身すらもこれを強調されるようになつて、非常に我々がかく先見の明があつたというふうに考えておるのでありますが、指摘されておることはもうすでに前から指摘されていて、その必要が叫ばれておるに拘わらず、尚且つ見返資金なり預金部資金は現在に至るまで、なかなかうまく活用されていない、そして今おつしやるように政府財政の飯櫃には銀飯が一杯あるに拘わらず、これが合理的に運用されていないというのがむしろ実情であつて、何故そういうふうにうまく合理的に運用されないのか、その隘路なり障害はどこにあるのか、どうすればそれが打開されるのかという点についての総裁の御意見を聞きたいと思います。
  9. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) これは併し私が先走つてあれこれそれを説明するのは少しおかしい。これは大蔵大臣一つお聞き願いたい。大蔵大臣が責任を以て管掌されておる事柄である。その管掌なさつておる仕事は、仮に佐多さんがおつしやるようにあれが惡いとすれば、それは大蔵大臣が……。私は私として見解は持ちますけれども、暫く差控える方がよろしかろうと思います。それから先程この六月に金融政策の変更をしたと言われるが、そういうことはしない。これも非常に一般に誤解がありますから、この機会に解いて置きます。五月に日本銀行はどういうことをしたかと言えば、一つ日本銀行が不見転に取ります商業手形……。尤も日本銀行の取る再割引手形というものは不見転に取る手形、これは言い換えれば有価証券という形をとる、そうしてこの商業手形は金融の準備の一つであります。言い換えれば兌換券の価値を維持する資産であります。從つてこれは金に匹敵するわけであります。從つてこの手形は国際的水準でなくてはならない。言い換えれば金というものが国際的であると同じような意味を持つておる。從つて不見転に取る、幾らでも持つて来い、幾らでも取る。こういう態度でいる。從つてそういう手形、今日本銀行が持つておる手形、その値打が下るような方策は、日本銀行として絶対に採り得ない。それは国民大衆を犠牲にして、或るところに特別の金融をするという結果に終る。そういうやり方日本銀行として絶対に取り得ないのであります。從いましてそういう不見転による手形は、必ず期日に落ちるものでなくてはならない。ところが期日に落ちるものでなくなつて来たから、それで今から商業手形は嚴密に見るぞという、極めて中央銀行としては当然の措置を当然にやつていたので、これを以て若しも政策の転換なりと言うのならば、極めて私は何を指しておるのか分らない。そういう手形をそのまま割引しよう、そういうふうなことは許されるでありましようか。これは私は断じそそうではないと確信しております。それからもう一つ取りましたのは、工業手形を再割引から外した、日本銀行が工業手形を再割引から外したことについて、世間では大体誤解がありまして、日本銀行がもう金をそれでは貸さんかのように思つている。再割引というのは今申しましたような性格と重大性を持つから、それで工業手形というのは、要するにものを作る場合の原料の手形であります。それを工業手形と日本銀行では言つておる。それを從来は再割引した。何故再割引するかと申しますれば、これは公団というものがあつて、できた製品を公団が必ず買上げる。そうすると、そういう制度がある間は、その製品を作つた原料代の支払いに欠くことはない、そうするとその製品は公団で買入れる。その公団に売つた代金で原料代を払えばいい。原料代は必ず支払い得る。言い換えればそういう工業手形は期日に必ず落ちるということが当時の経済構造の上において保証されておつた。ところが今日では公団というものが次々に廃止をされまして、そうしてできた製品はお前達の能力に応じてそれぞれ自由販売で、自由競争しろ。こういう立場になつたのでありますから、その製品が売れるが売れんか分らん今日、ストツクとか、或いは從来のストツクということが叫ばれている場合である。そうすると原料代を払つて呉れるかどうか保証が取れん。原料代が払えるか払えんか分らん。そこでこういうふうな、期日に落ちるか落ちんか分らんものを取る、そういうものを再割引することはできない。先程申しました日本銀行の再割は、言い換えれば必ず期日に落ちるものでなければならん。そういうものと工業手形が、均等の、等しい手形と見ることが今日では困難になつた。これは日本銀行がやつたわけではない。政府の公団という産業構造の是非について言うのではない。現実として公団という制度を廃止する以上には、それを廃止した場合には、中央銀行がそういうふうな手形の扱いをすることは当然なことで、何も問題になることはない。そうであるからと言つて日本銀行は全然融通せんというのじやない。原料というものは大したものですから、日本銀行資金を出す、普通の運転資金の中では第一番目に置いたのです。スタンプをその手形に押してやる。そうして一遍持つていらつしやい。その手形は取つてあげますということを保証した。そうして一銭五厘の金利にした。再割は一銭四厘、一厘高くなる。市中銀行は今幾らで借しておりましようか。一銭五厘で日本銀行の金を借りて、市中銀行はどういう程度になつておりましようか。相当なものである。大体私の考えでは金融機関というものは、日本銀行から借りた金で稼ぐということはいけない。私はそれは国民に申訳ない。銀行というものはやはり自分の辛苦して集めた預金を運用して、それで自分の收支を立てて行くべきものです。日本銀行から安い金を借りて高く廻して、その利を稼ぐというようなことはこれは本当を言うと私は好ましくない。ただ日本経済の今日において、金融界の今日の実態から見て、或る程度の鞘を置かねばいけないというので、日本銀行の金利を低くして置いて、そうして軸を上げている。一銭五厘で借りて、高率のときには若干加わつて一銭六厘です。何かこれは金融政策の点か、或いはこのことによつて金融が締まることがあるかも知れませんが、何でもかんでも無茶苦茶にただ無條件に金を出して安い金利でなくちや金融は楽にならんという考え方もあるかも知れないが、そういう無秩序のことは許されるべきじやない。そういう方針でやつたに過ぎない。融資斡旋というものも止めたのじやない。從来は統制経済、統制経済というものはやはり金融面においても統制、その方向金融を向けて行かなくちや、流さなくちやならん。そのために融資斡旋というものは大いに強化した。ところが統制が外れて来ると、そういうような行き方というものが自然弱体化する。同時に金融機関といたしましても、ただ日本銀行が右へ行け、左へ行けというような、そういうような金融機関では将来の日本が危い。中央銀行も市中銀行もそれぞれ独自の見解を持つている。いわゆるこれを貸すべきか貸すべからざるか、自分の認識を持つて、自主性を確立して行くということ、これを徐々に育成して行かなければならない。それでこの辺で日本銀行は少し後へ下つて市中銀行に廻して行つて、それでいかんところは手を取ろう。前列から後列に下る。こういうことなんだ。こういうことは日本の今日の経済の推移から言つて当然の措置だと私は考える。何でもかんでもこういうことはすべて人間は依頼心が多過ぎる。今日戰時中の軍部のやり方について非常に批判し、反省し、軍部に盲目に從つていたことを批判している。そうであるにも拘わらず、御承知の通り依然として誰かが音頭を取らんとどうも動かんということは、心構えとして私はいかんと思う。又皆が自分の認識と責任で仕事をやつて行くという考えを、こういうときに育成して行かなければならんと思う。そういう見地でやつているということを一つ御了承を願います。
  10. 羽生三七

    ○羽生三七君 一万田総裁の御答弁はもう少し要約して頂いていいと思います。
  11. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 もう一つ、いわゆる特殊需要について、若干御説明がありましたが、この特殊需要を費目別に見てどういうもので、而も金額的に見てどれくらいと予測されるか、それに対して円資金調達が非常に必要になつて参ると思うのですが、それらに対する金融対策をどういうふうにお考えになつておるか、一つ……。
  12. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 簡單に一つ申上げますと、特需というところは分らない。特需ということは恐らくアメリカの軍の方を言うのだと思いますが、これは軍の対策で話してならないようで、これは安本あたりの方がむしろ……これはなかなかいわゆる秘密事項に属することが少くないので分らない。ただ今私が言い得ると思いますことはこういう関係で、この月の中において、この六、七月中において約六十億ぐらいな資金需要が殖えるだろうと思う。併しそれは実際はまあ本当のこの朝鮮関係の仕事は私は大して……数字で申上げていいかどうか分りませんが、割合に少いと思う。少くて今のところはやはりこの見越しです。やはり今の中に買溜めて置く。物価が上りそうだから早く実際に買う方がよろしい、そういう先の需要を見越しているものと思う。それ又無論いういろいろなものも、例えば闇物価もすでに或る程度上りまして、又繊維品も食料品もやはり影響を受けて上つている。こういう関係から資金上も殖えますが、どちらかというと今は直接の関係よりも、そういうふうな関係、言い換えれば間接の一般産業人と商売人に与える心理的の関係からの資金需要が、それが私は七月に六十億近いものが殖えるだろう、こういう程度しか今申上げかねると思います。
  13. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 その六十億増加して、今後更に相当増加すると思いますが、それに対しては特別な金融的の措置は如何にするわけでありますか。
  14. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) この金融の点をちよつと申上げて置きますが、これは私の考えといたしましては、先方の希望されるものが期日に必ず受渡しをされないと、いろいろ支障を生ずるのであります。その支障は非常に影響が大きいかと思います。それでこの際実需と実際の製品というものが必ず一致するような形で取引をしておる金額、言い換えれば先方の買入れ機関で、どこそこに注文を発注するという認証、その認証を出す場合に、その受ける方において商品をそれぞれの程度に持ち込む十分能力があるというような金融機関等の証明を一つ附ける。そうして仮需要というようなものを送らないように、言い換えれば往々にして宣伝のためとか何かで、或いは從来の特殊の関係から能力のないのに注文を引受けて来る、こういうようなことは今回の場合甚だ不適当ですから、そういうことがないような形でけじめをつけて行く。こういうようにやつております。大体そういうふうに行くだろうと考えております。
  15. 野溝勝

    ○野溝勝君 一万田総裁に二、三点お伺いいたします。大蔵大臣財政金融の一体化を唱えておるのでありますが、総裁のお話を聞きますと、財政金融とは時間的のズレはあるが、これは一体化の精神でやつているというお話がありました。併し先般総裁の発表した御意見によりますると、政府は金を出せ出せと言つて盛んに攻めるけれども、政府自体においてまだ見返資金、或いは預金部資金として政府資金があるではないか、それらのものを相当放出して置いて、然る後に日本銀行の方にさような話があるならば、これは私尤もに聞えるが、その点は政府の方に対して僕らとしても意見があるというような意思表示が、いろいろ新聞に散見したのであります。先程のお話を聞いておりますると、それと符合する御挨拶がありました。例えば佐多君の質問に対しまして、まだ御飯があるがその御飯を先にやつて置いて、足らないところはこちらで出すという裏付けの御挨拶がありました。その点に関して政府の方におきましては、今回の債務償還のうち、特に朝鮮事変に対して御指摘になりましたような、警察その他海上保安隊等に対しましては、さような費用も出すことになつたのでございますが、こういう点に対して総裁は財政金融の一体化を承認しつつも、この間の矛盾をどういうふうにお考えになつておりますか、その点を一おつ聞きして置きたいと思います。
  16. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 私は今のお話ですが、財政金融は矛盾しておるようには受取りにくいのでありまして、先程も申しましたように、若しも、もう少し外の言葉を使いますと、若しも財政の金が動かんからといつて、私の方で仮にイージイにお金を出しますと、いよいよこつちが動かなくなる。これはこつちを動かす場合にも、先ず第一私の方はインフレを抑えて行かなくてはならない大きな眼目があるのですから、私の方は抑えますから安心しておつてよろしい。インフレが起ることは絶対にない。こつちはこういうふうに思つております。大蔵大臣も同じです。  それから少くともそこに何か財政金融の不調和という御質問のようですが、私ポイントがよく分りかわるのですが、そういうふうにお考え下されば分ると思います。
  17. 野溝勝

    ○野溝勝君 それではこういう場合を仮定して一つお伺いしたいのでございますが、総裁は、日本銀行は国家機関であるとは先程から絶えず述べられておるのでありますが、この国家機関が資金を運用する場合におきましては、やはり国家的に運用されると思うのです。その場合政府の資金運用に対する方針というものが、国家の人民の多くの必要に応じてやる処置であるかどうかということについては、私はその運用の内容につきましても、又資金の内容につきましても、相当あなた自身においても意見があると思うのであります。もつと具体的に申しますならば、今回の朝鮮事変に対する予算の点、或いはあなたが現在やられておりますところの、進駐軍の発注品目に対しまするところの再割引の点、こういうような点におきましても我々といたしましてはまだ外に日本の産業の発展の上に、日本の国家の産業の施策の上にこういう方面に資金を出すべきものだというような見解があると思うのであります。そういう場合には勿論政府ではありませんから、あなたとしては意見があつても、それをなかなか抑えるということはできないでしようけれども、その場合にあなた自身としては、こういう見解に対してどういうような態度を以てその際に臨まれますか、その点を一つお聞きして置きたいと思います。
  18. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 財政資金日本銀行資金ということについてのいろいろな御見解のように、どうも私は甚だ恐縮ですが、御質問のポイントがどうも掴めないのですが、こういう点を一つ考えつて置けば分るのではないかと思いますが、問題は日本銀行も公の機関であつて、どこから国家に必要な資金を出すのもよいのではないか、或いは出さんのもいいのじやないか、どちらにもそういうふうにお考えになるかのように感ずるんです。財政資金日本銀行の金というものは全然異つた値打、異つたものなんです。異つた値打といいますか、異つた性格を持つておる。日本銀行の出す金というのは、これは紙とインキと機械で作る。まだマネしではないのでありまして、私に言わせれば、これ一つも動力が加わつていない。政府のお持ちになつておる資金は、国民が働いた代価として一遍国民所得に入つて、それが税なり或いはいろいろな関係で政府に集まる。これは立派なマネーであります。そうですからこの日本銀行の金を政府が仮に動かさして欲しいといつても、日本銀行はそれを使つていいとも言えない。税によつて集まる金、或いは郵便貯金を通ずる金というものは、性格が長期に使われる資金、長期に運用される。問題になつているのは設備等に要る長期の資金にそういうものを使つたらどうだという行き方、短期の運転資金は季節的な調整とか一時的なもので、出ると思えば又引込む金、そういう短期な資金日本中央銀行として当然資金調整をして行く任務からも日本銀行からそういう金は出してよろしい、こういうふうな一つ特別な違つた、まあ格といいますか、そういうものがある。そういう点も一つ考慮に入れまして、或いは御質問の点が外れたかと思いますが、事実私はどの点が要点がちよつと分りかねまして、甚だ恐縮ですけれども……。
  19. 野溝勝

    ○野溝勝君 時間がありませんから詳しくは私質問を繰返しません。ただ総裁に希望しで置きますことは、私の言うことがあなた自身に分らんわけはないと思うのです。大体分つておりますが、あなたの立場といたしましては、さような見解を、ここに発表することはいろいろと支障があるというお考えからだと思うのでありまして、誰も日本銀行の通貨がどうの、金かどうの、使える金か、使われん金かということは、そういうことは一年生でも承知しているんであります。さような点は私としてはむしろおかしく聞えるのであります。  次に最後に御質問したいことは、あなたの最近の朝鮮事変以来の経済的な見解というものはやはり発表がありました。それによるというと、非常にやはり心配しているのは、インフレに流れようとするのを防止しようというあなたの福意見、その唯一の方針としては、輸入の増進を以て、輸入の積極的な活動によつてこれを防止して行こうというような御所見のようであります。本日も御所見を聞きましたが、私もその点は同感でございます。併しあなたの御指摘になりましたように、現実の日本におきまして、原料不足の日本におきまして、且つは又原料をよそから入れるにいたしましても、船舶の事情から見まして、さようなことが私は具体的にできるでしようか。あなたの構想自身におきましては私は同感でございます。併し現実の問題としてさようなことに対する危險、不安を私は感じておるのであります。その点に対して若し輸入の活発化が、原料の輸入、それによるところの貿易の促進、かような見通しがあなたとしてはこれで十分確信を持てるでしようか。若し持てないとした場合における日本財政金融措置を、その場合においてはどういうふうに一体転換しようという御意思でございますか。大体先の見通しも相当おありでしようから、その点に対する御所見をお聞きしたいと思います。
  20. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 大体御心配になつておる点は同じように思います。併しそれは要するに今後の国際債勢の進展如何にかかつておるのでございます。何も今から心配しておつても仕様がない。今のところにおいてこの輸入相当増大し得るということは、これは私は相当十分な確信を以て言い得ると思います。今回外貨予算相当輸入の方を大きくしてあるのも結構だと思います。こういうふうなこと、それから又輸入々々と言つても、ここで日本ドルが無茶苦茶に溜るわけじやないのでありまして、そう御心配なさらんでよかろうと思います。
  21. 森下政一

    ○森下政一君 今日は大変私は愉快な話を総裁からお聞きしたと思いますが、若し二十五年度の予算を本院において審議しました当時に、大蔵大臣が、総裁と同様の説明をしましたならば、もつと快く我々は予算審議ができたと思います。二十四年度はインフレというおできができている。それを手術するということが眼目つたのです。それは金融面で何とか操作しなければならない、要するにおできを征伐しなければならん。二十五年はもうそうじやないのだ。一応おできは片がついたのだから、二十四年度と同じ政策を採つてつてはいけないのだ。変えて行かなければならない。そこで片一方は米櫃が空になつているし、片一方は銀飯が一杯詰まつているから先ず銀飯をよそつて食うということが先決問題である。その途を選ぶべきだというお話を聞いたのですが、それは一々御尤もで、大蔵大臣がさような見解を二十五年度予算審議のときに漏らしましたら、私共は非常に気持よく審議することができたと思う。ところが大蔵大臣は、我々の質問に対しても、二十四年度とちつとも政策を変えないのだ、財政金融政策は同じ政策でやるのだ、去年とちつとも変えない、我々の要請したことは二十四年度はこれで辛抱したけれども、二十五年度は変えて貰わなければならない、だから政府はそこで財政金融に対する政策を転換すべきだということを要請したのですが、頑として池田大蔵大臣は言うことを肯かなかつた。そうして同じ方針でやるということを宣言したことは当時の予算審議の速記録を御覧になつても一目瞭然で、一向変えようとしなかつた。ところが大蔵大臣は一万田総裁と全く同じ見解を持つているのだというような総裁談のように私は聞えたのでありますが、同じ見解を持つておりながら、あなたは経済人だ、大蔵大臣は政治家だというので本管を隠してでも政治家だから言わなかつたというふうにもちよつと聞えるのですが、総裁の立場から御覧になつて大蔵大臣は二十五年度は本当に銀飯をよそつて食わし得るかどうか、どう御覧になりますか、そこを知りたい。私から言わしめれば大臣になつてから思う通り行かんのだから、それは同情してやれというお話があつたが、経済人であろうが、政治家だろうが、今日の段階においては、そういうことは抜きにして、本当に声明すべきときじやないかと思います。それが自由党の大蔵大臣でありまするが故に、社会党の言うことが本当だと思つても、よそを向いてうそぶくというのでは、今日の政治家としては本当に時代感覚に即しない。それはあなたと議論しても仕方がないが、あなたの立場から御覧になつて、政府が若しあなたと同じ見解を持つているなら銀飯をよそつて食わして呉れると思いますか、食わしつつあるとお考えになりますか。食わしたいのだけれども食わせられないのだというのか、総裁の立場から御覧になつて銀飯を食わせるお考えですか、それをお伺いしたい。
  22. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) これは私は別に今日は大蔵大臣の心の中まで御説明申上げるわけには参りません。それはできもしませんし、ただ政府とすればそういうふうなことでなくして、お互いに何の関係もなく、見返資金預金部資金が、いわゆる先程申しました銀飯というような言葉で言いますが、お櫃は空か、銀飯は食べられるのかどうかというその純粋な問題だけを取上げて一応御返事申上げます。それはそういうふうになりつつあるということを申上げて直さます。例えばお分り易いように申出げますと、例えば輸出金融金庫は、これはできるかどうかということは知りません。私は何とも言えませんが、輸出金融金庫、そのうちから見返資金を数百億円を出そうというのも一つの現われです。こういうものと或いは関連するかも知れませんが、例えば新聞なんかの報道、これは我々大きく出されますと迷惑ですけれども、一応ここでお話申上げれば、例えば銀行預金部資金とか見返資金を出して増資をする。いろいろそういうふうな、そういうことが実現するかせんかは私は今のところ何とも申上げられないのでありますが、そういういろいろな苦心をされておる点は、如何に見返資金預金部資金を今後動かして行くかということの現われであると御考えになつて決して差支ないと思います。こういうふうに私は申上げて置きます。
  23. 小林政夫

    ○小林政夫君 長期資金は、今の見返資金又は預金部資金の、これが使える業種、業態等については、相当限りがある。一般的に多くの中小企業者、或いは巨大資本企業でなしに、ちよつとその下のものなんかは、大部分が自己資本の調達に充てるには株式発行等をやつて行かなければならんわけでありますが、その際に証券金融の点について昭和十五年の末には、銀行の貸出額の二七%は証券担保による貸出しである。現在は、昨年の八月においては二%でありますが、それから本年の五月の末には三%になつております。昨日池田大蔵大臣相当この株式担保融資を銀行に慫慂して積極的に持つように仕向けて、可なり持つている筈でありますというようなお話があつたのでありますが、事業数字の上においては非常に微々たる数字であります。これについて積極的に市中銀行をして株式担保による融資を図らせるのには、日銀がやはり株式担保融資をお考え願わなければならんのでありまして、それが昭和十七年以来日銀は株式担保による融資ができることになつておりながら、今日まで一つもやつておらないということの点は如何でございますか。
  24. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) できるだけ株式市場を健全にして、ここで長期資金を調達して行く、こういうふうな方向に進んでやつている。今お話銀行の貸出の株式担保の割合が非常に少いこと、これはもう満洲事変以来融資命令まで出して、ただ貸せ貸せで、その後のインフレでは、株式の発行など殆んど問題にしない。そういうふうな状況銀行は貸す一方でおつたので、割合が低くなるのは当然です。終戰後にそれを再建して、長期資金まで何も銀行で貸すのは面白くない。長期金融市場を確立しようじやないかということで、そういうことでできるだけ努力をして、今後金融界から株式方面へ出ておる金も相当なものです。これは例えば昨年末において株式市場が非常に惡いとか何とか言われたけれども、ずつと無事に経過しているという状況を見ても、相当そつちへ金が行つているということは明瞭だと思う。それから日本銀行の株式担保というようなことについては、ここで今私が申上げる自由を持つておりません。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 二、三点御質問申上げたいのですが、先程のお話で、総裁は長期資金として見返資金預金部資金を……、銀飯ですか、これを大いに使えということを強調されたのです。それは同感なんでありますが、これが又なかなか出ない。実際において出ないということにつきましては、私は総裁においても相当責任があるのではないかと思います。それは二十四年度におきまして、旧債務億還をするということが問題であつたと思うのでありますが、二十四年度において財政の皺を金融に寄せるに当りまして、余りに安易に日本銀行としては皺を寄せ過ぎたのではないか、その結果が金融機関がオーバー・ローンという形に今日なつて来て、銀の経営内容は非常に惡くなつておるわけですね。現在決していいわけではないけれども、総裁も銀行経営の内容は惡いとおつしやつた。銀行の経営内容が惡くなるまで日本銀行としても相当貸出しをされたということは、これはむしろ先程出し過ぎたと言いましたが、たしかに出し過ぎた。これは日本銀行総裁にも相当責任が私はあつたと思う。それだからこそ見返資金はなかなか出ないのです。見返資金がなかなか出ないということは、日本銀行からこれまでどんどん出していたから、日本銀行から出しているうちは見返資金を出せば二重になるから、出さなかつたのであつて、そこに私は相当問題があつたと思うのです。そこで私はお伺いいたしたいことは、これはもうただ議論の問題ではなく、実際において見返資金は出ないのですから、御趣旨はその通りだと思うのです。見返資金預金部資金を使わなければならん。そのときにどうしても出ないという現状において日本銀行はどういう政策をお探りになるか。最近池田大蔵大臣などのお話を承わりましても、この金詰りの責任は何か日本銀行に責任があるようなことを言つておる。見返資金やなんかどんどん出ない、出ないから実際問題として金詰りになつて来るから、日本銀行にもう少し緩めてはどうか、そう無茶言わないでもう少し緩めてはどうかというと、日本銀行はなかなか言うことをきかないというようなことを言つておる。そうするとこのデフレの原因は日本銀行にある。或いは日本銀行の総裁のお話を伺うと、いやそうじやない、政府が銀飯を持つていてなかなかこれを使わない、だから金詰りの原因は政府にあると言われる。それでは国民が、いい迷惑なんです。この金詰り、デフレの原因を、日本銀行は政府の方に責任がある、政府は日本銀行の方にあると言つておる。現実の金詰りの問題を解決するために、若し見返資金預金部資金を出すことができれば好ましい。好ましいに拘わらず、今現実にスムースに出て来ていないのです。大蔵大臣は総裁が先程お話なつたようないろいろなプランをお考えになつているようですが、実際に出て来ない。この実際問題についてはどういうふうに御解決なさるか。
  26. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 二十四年度の金融政策についての御意見、これは一つの御意見として拝聽いたして置きます。それから今の日本銀行が非常に金を締めたようにもおつしやるのですが、先程も縷々申上げましたように、締めたんではない。ただ日本経済の実態、構造等の変化に応じた形で日本銀行の金を出す方法を変えた。それにマツチするように形を変えたというだけでありまして、決して締めるわけじやない。先程も言うように工業手形を再割から除外したのも、何も締めたわけではない。工業手形があるべき姿に戻つたならば取ります。而もそれはスタンプをして一銭五厘の金利しかとつていない。何も日本銀行が締めるという問題じやない。最近のごときは小売市場で毎日東京だけで七十数億といつたような金がうろうろしている。こういうふうに決して締めているのではない。今水はあるが、なかなか飲まんとか、飲ませられないとか、そこに非常に経済の実態自身をよくして、やはり金融機関が金を出せるように、私しよつちゆう申しますように、インフレのときは日本銀行の蔵というものが非常に中心になる。安定経済にはどうしても市中銀行の窓口というものが中心になる。ここが動かねばどうしても……。こういうふうに一つ考えを願いたい。先程の御意見は御意見として傾聽いたします。、
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 只今は締めたんではないというお話ですが、それは日本銀行立場としてはそうですけれども、客観的に言つて金融は締つているのです。というのは、日本銀行としては、政府資金、見返資金預金部資金の円滑に出ることを期待して、從来の貸出し、二十四年度のようなやり方はいけないという考えになつて来ておられるに拘わらず、政府の見返資金及び預金部資金は出ないものですから、客観的に締つでおる。こういう状態を皆日本銀行が締めた締めたと言つておると思うのです。併しその日本銀行の方針に私は決して反対するのじやなくして、むしろそれが当然である。私はむしろ賛成しているのですけれども、実際に政府資金の方が出ない場合に、理窟としてはいいのでありますけれども、出ない場合に非常に困るのです。そういう場合に日本銀行としてはどうお考えになるかということを伺つたんですが、その点の御答弁がなかつたのですが、それともう一つ、政府の旧債務償還の問題、これを総裁どういうふうにお考えになつていますか。
  28. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 私共実際家でありますから、それでこうあるべきということは時と場合で断じて動かんでよろしいと思う。併しながらそれ程頑張らんでいいという場合は、実際家として実際の解決をつけて行く。例えば木村さんは数字をよく御存じですが、例を一つ挙げましよう。この二十五年の予算の四—六のとき、このとき政府の引揚超過額が三百億、詳しく言えば二百九十数億、それに対してやはり私の方の追加信用は二百九十幾億か出ている。そうして政府の四—六の引揚超過は僅かに二億に止つている。私共から言うと、もう少しこういう形でなくて行きたいのです。併し客観情勢がどうしても止むを得ない。又先の目安は立つとすれば、そのときの調和は或る程度とらざるを得ない。併しそれをイージイにやることはできない。確乎たる方針と態度はとりつつ、当面のどうしても動かんというときは、今日日本が置かれている客観的な條件下においては止むを得ないというふうに言つておる。その点御心配は私はないと思う。  それからもう一つの問題は、意見がありますけれども、私はその点については、国民の代表であられる国会が御承認をしている。これが一番最上の案と私は考えております。(笑声)
  29. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 私は金融政策との関連をお伺いしたわけなんですが、実は二十四年度において、日本銀行が我々から見れば非常に無理な貸出しをしてしまつて財政の皺を結局金融に寄せてオーバー・ローンという形ができたのも、旧債務償還ということ、そればかりじやありませんが、それが大きなやはりエレメントになつたと思うのです。そういうような点からも、旧債務償還は無理であつたと思う。殊に二十五年度になつては尚更旧債務償還は非常に無理で、それが無用に金融政策にいろいろな支障を及ぼしておると思うのでして、総裁はこの点についての積極的な御意見が、述べられないとすれば仕方がありませんが、次に朝鮮事変影響として、先程総裁からいろいろ伺いましたが、今後やはりインフレ傾向に向つて行く、そうして又日本銀行券も、急激じやないと思いますけれども、膨脹傾向にも行くと思いますし、又それをチエツクする方法、対策もいろいろ講ぜられると思うのですが、我々お伺いしたいことは、そういう場合に特需関係の方には資金がどんどん行く、そうして日本銀行券が殖えて行く場合に、これをチェツクするに当つて、今度非特需関係、その方をチェツクすることによつて、非常に跛行的な金融というものが現われるのじやないか。こういう点については、今直ぐ問題じやないかも知れませんが、どういうふうにお考えになつておりましようか。
  30. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) 資金需要が多くなるというふうな意味インフレ傾向と言われても、これは主としてやはりアメリカ特需といいますか、朝鮮事変その他国際情勢の変化から来る日本に対する注文というものが、大きなフアクターであります。これを人は輸出と同一視しておるのですけれども、輸出とは性質が違うので、一応ドル裏付けがあつてドルが来るという点において偉う。私は仮にそのために通貨が増加しても、代りにそれだけ輸入が殖える、そうしてそれだけ経済活動が増して来るということになれば、そうインフレ的に考えなくてもよい。要するに輸入がそれ程スムースに行くか行かんか、これの刻々の情勢を見つつやはり考えて行かなくてはならん。一応考え方としてはそれで構わん。後は主として日本産業としては輸出産業中心にものを考える。そうすると輸出が振興して、又輸入が来る、こういうふうな形になつて行く。そう心配しなくてもいい。むしろ日本経済の建直しにこういう国際情勢の変化を最もよく取入れて、そうしてインフレならずして日本経済をずつとこう建直して行く、こういう方向にあらゆる政策を集中して行く、それが最も望ましい、私は大体それが可能だろうというふうな考え方で今……併し同時にインフレ的な傾向を持つということは篤と肚に納めておつて、そうしてそれは別に神経的に今インフレインフレという人は毛頭ありません。それ程神経を細かくする必要はありません。ただそういう傾向を持つということを肚にとつくり入れて置いて、そうして今申したようにインフレを大きくせんという意味は、どうしても国際物価水準というものが或る程度上りますから、それを超さないように或る程度日本物価も騰貴する、これも止むを得ない。そういう程度のところで抑えてしまえば非常に日本経済というものはよくなる可能性がある、こういう意味であります。
  31. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 最後に一点お伺いしたいのですが、大分輸入について楽観されておるようですが、これはいろいろ問題があると思うのです。そう楽観は私はできないと思うのですが、最後に貿易の円資金を賄うために、外為の方で溜つたドル日本銀行へ売つて資金を調達するような意見があるということを聞いておりますが、外為の委員の人に伺いましたところ、ドルの所有権は日本側にないのだという話なんです。そういう所有権が日本側にない、そういうドル日本銀行がこれをお買いになつて、そうして円を出すということは、これはできるかどうか、又そういうお話がございますか。
  32. 一萬田尚登

    説明員(一萬田尚登君) いや別にそのことは聞いておりませんが、ドル日本側に所有権がないということはない。外国為替委員会は持つておる。外国為替委員会は日本の官庁になつております。ただ問題は私の考えでは、これは今直ぐにそういう心配することはないと思うのです。これにはいい一つの例があるのです。第一次大戰当時承知のように日本は非常に輸出超過で在外正貨というものが非常に沢山あつた。分不相応に輸出手形が溜つておる。その場合に当時そういうふうに溜る状況になる前にこれを日本銀行で買入れるという政策を止めた。そうしてこれは一つ政府資金で買つて欲しい、財政資金で買つて欲しい。在外資金は政府所有の正貨が多かつた。その後やはりインフレで……、まだそういうことを今日予想していろいろかれとれ今から論議することはないと思うのですが、そういうこともあつたというようなことをやはり思い起しておつて、そうして情勢を見つつ、例えば非常に外国為替委員会が外貨が買い持ちになるという場合に、その買い持ちになる資金、円資金は私はできればやはり財政資金からこれを買つて行くというふうにして、このインフレ傾向をチエツクして行く。日本銀行外貨を買うという話は全然聞いておりません。それでお答えする程のこともありません。
  33. 波多野鼎

    委員長波多野鼎君) 他に御質問の方ございませんか……。なければ本日の連合委員会はこれを以て閉会といたします。    午後二時四十四分散会  出席者は左の通り   予算委員    委員長     波多野 鼎君    理事            石坂 豊一君            野田 卯一君            羽生 三七君            藤野 繁雄君            東   隆君            岩間 正男君    委員            工藤 鐵男君            長谷山行毅君            平岡 市三君            安井  謙君            山本 米治君            岩崎正三郎君            下條 恭兵君            山田 節男君            若木 勝藏君            高良 とみ君            前田  穰君            堀木 鎌三君   大蔵委員    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            佐多 忠隆君    委員            愛知 揆一君            清澤 俊英君            野溝  勝君            森下 政一君            小林 政夫君            高橋龍太郎君            森 八三一君            木村禧八郎君   説明員    日本銀行総裁  一萬田尚登