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1950-07-19 第8回国会 参議院 本会議 第7号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十九日(水曜日)    午前十時十七分開議     —————————————  議事日程 第六号   昭和二十五年七月十九日    午前十時開議  第一 国務大臣演説に関する件(第五日)
  2. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 諸般の報告は朗 読を省略いたします。      —————・—————
  3. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これより本日の会議を開きます。  日程第一、国務大臣演説に関する件  昨日に引続き質疑を許可いたします。大山郁夫君。    〔大山郁夫登壇拍手
  4. 大山郁夫

    大山郁夫君 議長並びに参議院の皆様、私はこの両三日来病床に臥せつておりましたので、今日やつと出るようになつたのでありまするが、併しながらまだ十分の力がないのであります。殊に私は準備不十分の演説を諸君に聞いて頂くことを考えると非常に不本意に考えまするが、併しこれも一老学究が祖国再建の事業に参加しようという熱意から出たものであると御了解下すつて、お許しを願いたいと思うのであります。(拍手)  私は無所属立場から選挙に臨んだのでありまして、今も無所属立場でこの参議院の議席に連なつておるのであります。そういう関係上から勿論一党一派に偏するような立場を持つておらないので、全民衆の立場を代表して、ものを言いたいと思うのであります。殊に選挙のとき、或いはもつと早くから、即ち私が亡命生活を終えて日本に帰りましたときから、私は民族独立日本民主化或いは平和的建設について語つてつたので、今日もこの立場から語ろうと思うのでありまするが、こういう問題は勿論全民衆の問題であると思うのであります。共産党人々も、社会党の人々も、或いは労農党人々も、自由党人々も、民主党の人々も、こういう問題には関心を持つておられる。だからどの党派に所属される人々と雖も、私の論旨に若し共鳴して下さるならば、私はそういう方といつでも提携することを辞するものでないということを先ず初めに申上げて置きたいのであります。(拍手)それで全民衆の立場からとは申しましたが、併しながら、過去の私の経歴上、或いは又私の持つておる理論的立場から、労働者農民或いは労働者農民と提携しておる一般勤労大衆立場を特に強調することは、これは当然のことであります。今日の反動政治の下において苦しみ喘いでいるのは、勿論労働者もそうであり、農民もそうであるが、それ以外に中小企業家もそうである。それから民族資本家も或いは又科学者芸術家、文士その他小学校の教職員までも含んでおるところの、いわゆる文化人知識人も、同じような境遇に置かれて、時代の悩みを悩んでおるようなわけであります。こういうわけで、今日の段階においては、解放運動と言えば全民衆のものであるということは申すまでもないことでありますが、併しながら、この解放運動が成功的に闘われ得るためには、労働者農民、殊に労働者がその先頭に立つて闘わなければならないし、又一般の大衆もそれを労働者に期待しておると思うのであります。そういうわけでありまするから、勿論この労働者立場は非常に尊重されなければならないと思うのであります。それからもう一つ、私は自分の過去の経験からもそういうことが言えると考えるのであります。私は今この演壇に立ちますときに、二十年前に、あの日比谷の公会堂の演壇を占めたときのことを思い出し、或いは又私達は、私自身は、学窓を出て街頭に来たり、労働者農民並びにそれを支持する一般勤労大衆と手を携えて闘争に従事しておつたのである。そのときに、我々が掲げておつた中心的スローガンというのは、帝国主義戰争反対というのと、政治的自由旋律というのであつたのでありすます。このスローガンを我々が今日の時勢に適用して見るときに、それは実にあのポツダム宣言日本国民に課した民主化日本民主化平和的建設というあの使命と、符節を合したように一致しておるのだと思うのであります。(「その通り」と呼ぶ者あり、拍手労働者農民は、ポツダム宣言が発せられたときから二十年も前からその主張をしておつたのである。今でもその線に沿つて、進んで祖国の自由と平和と独立のために闘つておるということを我々は考えなければならないのであります。(拍手)こういうふうに、同じ立場をしつかりと固守して変らない、その線に進んで飽くまで人類を解放に導こうとしておる階級は、我々は非常に尊重しなければならないと考えるのであります。こういう労働者農民或いは戰闘的大衆は、あの日本無用戦争を起して置きながら、ポツダム宣言が発せられるや、急に昨日までの軍国主義とか、帝国主義の看板を、今日は民主主義平和主義に塗り替えたような政権盲者達とは、その選を異にしておるということもできると思うのでありますが、(「その通り」「よく聞いて置け」と呼ぶ者あり、拍手)こういうわけでありますから、私達は今後祖国再建が叫ばれるときには、こういう大衆に非常に重要な場面が振り当てられなければならないのであります。今日、日本は危急存亡の際に立つておる。民族独立が失われるか失われないかの瀬戸際に立つておるのでありますが、こういうときにこそ、創造的の政治的識見というか、創造的経綸とでもいうか、いわゆるクリエイテイヴ・ステイツマンシツプというものが要求されておるので、この点に少しでも関心を持つておる者は、今申しました点を非常に胆に銘じなければならないと思うのであります。だが、今日の事実は全然それに反しておるのである。今日の反動政治の下において、真先にその経済的搾取と弾圧の衝に立つておるものは労働者農民であり、そうしてだんだんこの労働者農民或いは一般大衆が、言論の自由であるとか、集会結社の自由、デモの自由、政治的活動の自由というものが奪われつつある。こういう状態が継続したならば、日本の経済的、文化的、政治的の発展ということは決して期して望むことができないと思うのであります。今にしてこの情勢を我々引つくり返さなければならないところ来てる(拍手)そういうようなことを念頭に置いて、先ず私は民主主義立場から幾らかの質問を始めたいと思うのであります。  この点に関しましては、勿論我々の注意は、最近あと月の六日でありましたか行われた共産党中央委員会の二十四名の追放、続いて行われた共産党機関紙アカハタ責任編集人追放、こういう問題から当然始めなければならない。これは国民生活の上に対して非常に大きな影響をもたらし来たるべき性質のものであるから、どういう立場にいる人もこの問題は徹底的に究明しなければならないと思うのであります。それで私は、この問題の起りはマツカーサー元帥の書簡から発しておるように新聞で見たのでありますが、併しそれは暫らく触れない方がいいだろうと思うのであります。併し先だつてのあの施政方針演説において、首相はそのことに関する説明を少し試みられたように思うのであります。それを読みますと、若し私の読み違いでなければ、首相治安維持目的のためにあの追放を断行したのであるというような意味に聞えることを言つておられたように思うのでありますが、この私の解釈は間違つておるかいないか。これに対してもその御答弁を願いたいのであるが、併し治安維持目的のためにあの追放を断行したとするならば、その所期の目的が十分に達成されたか。或いはその逆効果が今生じておるのではないであろうか。我々が新聞紙によつて知るところによるというと、そういう共産党指導部人々は、その追放を受けてから間もなく或る者は地下に潜入したということが伝えられるし、それからさまざま流言蜚語が行われるようになつたのでありまするが、これが却つて日本の治安の妨害になつておるのではないかという疑いを私達は持つておるのであります。これが私達の感じだけであるか、それともそういう事実があるかというようなこともよく承わりたいと思うのでありますが、同時にあの追放治安維持目的のためという理由で説明するということについては、どういう憲法上の基礎があるのであるか。この点もやはり究明する必要があると思うのであります。私達はあの事件の真相について知つておることは非常に少いから、殊に私は熱心にその点に対する説明を求めたいと思うのであります。私達の知つておる限りでは、共産党指導部の人人は、コミンフオルムの批判を理論的に受入れたというようなことがあつて、これは新聞紙にもそう書いてあつたのでありますが、併しコミンフオルムの批判を理論的に受入れたということは、直ちに共産党暴力革命の実行を掲げたということを意味するのであるかないか。この重要な点をやはり御教示を願いたい。法律は意思を罰せずというのは、これは民主主義の要素の非常に重大なものであると思うのでありますが、この点からこれはどう説明されるのであるか。こういう問題に関する疑問は果てしなくあるのでありますが、時間の関係上、私はそれを端折らなければならないのでありまして、この次には講和問題の二、三に触れて質問がしたいのであります。  それに対して先ず第一に、私はあの多分皆様も御存じであろうと思いますが、最近のニューヨークで発行されておるところのへルド・トリビユーン紙に関して一つの記事があつた。それは六月十一日東京発、というのに載せられておつたのでありますが、マーガリード・ヒギンスという東京在勤の同紙の通信員がその電報を打つたということになつておるのであります。その電報の中に、吉田内閣單独講和と引換えに軍事基地の提供をマツカーサー元帥に申入れたと書いておるのであるから、何でもない電報のようでありますが、これは非常に重大な意義を蔕びておるものと思うのでありまするから、これはそのままにして置くことはできない。それで私はそのヘラルド・トリビユーンを最近探し廻つてつたのでありますが、併しとうとうそれは見付からなかつた。それで詳しいことはまだ分らないのであるが、それで筆者であるヒギンス女史会つて様子を聞こうと思つたのでありますが、ヒギンス女史朝鮮の方へ今行つておられるということで、とうとう会うことができなかつたようなわけでありますから、それで私は止むなく外の材料でこの点を明らかにしたいと思うのであります。北米新報というニユーヨークで発刊されておるところの邦字新聞なのでありますが、この新聞はさつき申しました件についてはこういう記事を載せておる。それをここで読むことを許して頂きます。北米新報の六月十五日附の号であります。「ヘラルド・トリビユーン東京特派員マーガリード・ヒギンス女史は十一日東京発通信で、吉田首相の率いる保守的な親米政府は、若しも米英側との單独講和が締結されれば、日本政府は自発的にアメリカ軍事基地を提供すると、マツカーサー元帥に申入れたと伝えられておる。ヒギンス女史は、右通信で、先週枢要な地位を占める日本の一閣僚」……名前は挙げていないが、大抵見当が付くでしよう。「先週枢要な地位を占める日本の一閣僚と講和問題について会見したとき、その閣僚も同じような意見を述べたと会見談を次のように伝えておる。我が党(自由党)は今日の世界情勢から見て、日本が中立を保つことは不可能だと考える。我我はできるだけ速かに主権の回復を望んでおる。併し差当つての将来の最小限度アメリカ軍隊が駐屯することが、国内又は国外からの侵略を防止する上に必須の條件であると考える云々とこう言つた」と、こう書いてあるのでありますが、これが記事に現われたような事実が若し本当に事実的の根拠があるのであつたならば、吉田内閣国民の背後に隠れて闇取引によつて日本軍事基地というものを外国に提供しようとしたと言わなければならないのでありますから、非常に重大な問題である。勿論政府はこれを否定せられるであろう。吉田首相或いはこの記事に対しても、新聞紙に載つたことは自分には責任がないと言われるかも知れないと思うのでありますが、併しこれは今日そういうような答弁でなくて、この記事が虚報であるか、虚構の記事であるか、それとも事実を伝えておるものであるかということをはつきりと弁明して頂きたいと思うのであります。(拍手)これは非常に重大な意味を含んでおるのである。日本軍事基地化することが如何に重大な影響を国民生活に臭えるかということは、もう論じ盡されておることでありますから、私は言わないつもりでおりますが、併しながら民族独立ということを我はしよつちゆう叫んでおるその関係上、如何にこれが日本主権の制限ということを意味しておるかということについて一言したいのであります。我々はポツダム宣言のあの第八項に日本の領土に関する一つの條文があるのを知つている。それにはこう書いてある。「カイロ宣言條項ハ履行セラルベク、又日本主権ハ本州、北海道、九州及四国並二吾等ノ決定スル諸小島二局限セラルベシ」と、こう書いてありますが、限らるべしというのは、これは地域的に言つたのであつて、とにかく主権が及ぶ限りはその主権に制限が加えられるというようなことは少しも書いておらないので、私はこの條文をどれだけ頼もしく考えたか知れないのでありますが、日本軍事基地化されるようなことがあるならば、基地化されたその範囲内において日本主権が全部と言つていい程制限されるのであります。ところが最近の国際的の、あの国際問題に関する評論家達の言葉を聞くというと、日本軍事基地化に関連する面積がますます拡大化して行くような傾向があるように思うのであります。あの当時から我々はしばしば有名な評論家、ウオルター・リツプマン、或いはニユーヨーク・タイムスのガルツバーガー、或いはニユーヨークタイムスの軍事評論家であるハンソン・ボールドウインといつたような人達のこの問題に関する議論をしよつちゆう見る機会を持つてつたのでありますが、外の材料もあつたでありましようが、それは我々の目に触れることはできないけれども、そういうような人の書いた論文は始終我々は目に触れておりましたが、それから得た印象は、現在アメリカが沖縄において持つておる軍事基地というものは余り狹過ぎるので、一発の原爆の襲撃を受けたならば忽ち粉砕されてしまう。だからアメリカ日本の本土においてもつと沢山の軍事基地を持たなければならない。極端な場合には日本の全土を軍事基地化しなければならないというようなことを考えておる人人がアメリカ有力者の中に相当沢山あるという感じを私達は持たされたのでありますが、万一これが事実の上に現われるというと非常に大変なことになつてしまうのであつて、非常に広汎なる面積の上に及ぼさるべき日本主権というものが殆んど全部的に制限されてしまうということになるのではないか。殊にその軍事基地が設定されるというふうになつて来るというと、もはやそこには恐らく日本人の立入が禁止されるでありましよう。主権の制限というようなこういう法律上の用語を以て表現すれば何でもないようであるけれども、実際から見るならば、それに関係するところの面積というものは、もはや政治的に利用することもできなければ経済的に利用することもできない。又その上に農業が営まれたり、産業が営まれたり、又そういう面積を運輸とか交通とかその外の経済上の目的に使用することが全然できなくなつてしまうのであつて、これは国民生活の上から言つて非常に重大な問題になつて来るのであります。日本は非常に人口が稠密で、その割台に面積が狭いと言われるのに、この上に尚こういうふうに軍事基地が設けられるようになつたならば、我々は一体どこで生活してよいのかという問題が起るに違いないと思うのであります。そういうわけで、この問題は非常に重大である。それから又さつき申しましたような外交評論家或いは軍事評論家の言葉によるというと、割合に狹い地域に軍事基地を持つということは、これは戰路上非常に好ましからざることである。戰路上価値がないことであるということが盛んに言われておるのであります。将来アメリカ日本の国を見捨てるかも知れないというふうの論拠も、多くの人々によつてそういうことの上に置かれておるのであります。狭い土地の上に軍事基地を持つておることは危險である。即ち今日のような武器の発達した下においてはみんな粉砕されてしまうような危險にさらされておる。又日本の再軍備ということがこの頃ポツダム宣言にも拘わらず海外で唱えられておるのも、やはりそういうような軍事基地を守るということが如何に危險であるかということを表明しておるのではないかとも考えるのであります。吉田首相日本軍事基地段定ということに関連して安全保障ということを説かれるが、併し日本軍事基地となるときには、その軍事基地占領国の敵国の側からの襲撃を我々は覚悟しておらなければならないことになるのでありますから、そういうことになつてしまつたならば、安全保障であるべき筈のものが危險保障になるというような結果が現われるのではないか。(拍手)これは非常に重大な問題であつて、決して国民の背後に隠れて闇取引によつて決すべき問題ではない。これは飽くまで公明な手段によつて国民一般投票に訴えなければならないと思うのであります。(「そうだ」と呼ぶ者あり、拍手)そういうような点を言えば限りがないのでありますが、簡單にいたします。  又最近あの北鮮事変が起つてから、吉田首相は、日本国際連合に協力しなければならないというようなことを言われておるのでありますが、一体これは何を意味するのであるか。我々はこれは、あの新鮮事変に適用した場合においては、朝鮮に対する国連武力制裁に何らかの形式によつて参加するということを意味するのではないか。若しそういうことを意味するもりとすれば、私はそれは明らかにポツダム宣言に違反しておるものであるということを断言しなければならないと思うのであります。第一、日本はまだ国連に加盟しておらない。私は日本国連に正当に加盟することを急ぐという議論には賛成であります。加盟するために我々は準備を着々整えなければならないということには賛成でありますが、併しながらそれはまだ日本が加盟しておらないということと協力しないということとは矛盾するもりでありません。全く加盟しておらない。そうして国連の機構の中にいて一票も持つておらない。発言権を全然持つておらないのでありますから、だから日本はその国連の決議を一も二もなく無批判的に受入れるというような地位にあるわけではないと思うのであります。若しそういうことを考えるならば、それは明らかに非民主的な考えである(「その通り」「そうだ」と呼ぶ者あり)ということは言うまでもないことであります。それで国連と雖も人間の集まりなんで神様でも何でもない。勿論、国連世界平和保障のための国際的協力機関としては立派なものである。だから我々はそれを尊重しなければならないが、何といつて国連は人間の集まりで過ちを犯さないとも限らないのでありますから、過ちを犯したようなときに我我はそれに参加する必要はない。それに加入しておるならばこれは話は別であるが、まだ我々は参加しておるのでも何でもないのであるから、国連の決議だと言つても一々これを批判してから、かからなければならない。殊に今日動乱の朝鮮の場合においてはそうである。先ずあの国連が北鮮に加えておる武力制裁日本が参加するということがポツダム宣言の條項のに違反するか、しないかということを考えなければならないが、ポツダム宣言の精神は明らかに日本世界中のすベての国と親善関係に立たなければならないということを日本に命じておるのであります。即ちポツダム宣言によつて日本は完全に非武装化されている、そのことから来る当然の帰結はそうであります。それで我々は朝鮮に対しても、イデオロギーという問題を超越して、朝鮮民族朝鮮民族として見てそれに対しても心からの友情を贈るのは当然であつて、この際、国民は、南に或いは北によつて同情を示す態度をとるべきでは断じてないと考えるのであります。(拍手)それで、この点も大抵このくらいのところで端折りますが、最後に、まだいろいろの項目を並べて置きましたが、これを一々ここで論ずるわけに行きませんから、最後にあの講和問題についての質問と書いてある、あの辺に書いておることを一言だけ言いたい さつき朝鮮のことに関して言つたことはそのまま中国について言える。我我ポツダム宣言を受諮したときには、中国はまだ国民政府の支配の下にあつたのでありますが、今や中華人民共和国となつて人民政府の支配の下にある。が併し我々が飽くまでポツダム宣言の精神の上に立つ限りは、曾て国民政府支配下にあつた中国に対して我我は友情を示したと同じように、今中共政権の支配下にある国民に対しても同じく友情を示さなければならないと思うのでありますが、殊にこの点に関係しては、我々は直ちに日本の将来の国民生活というものが、アジアとの緊密な提携にかかつておるということに関連して来るのであり、又経済的のものは、あの日本の将来の経済生活の方面における至上命令であるところの日華貿易の線が、非常にくつきりと浮び出て来ると思うのであります。こういうふうに、経済的に文化的に我々はアジアの諸民族と緊密に提携しなければならないのだが、今日におきましては、殊にあの世界平和の擁護という問題において、隣接のアジア大陸の諸民族と一層提携を緊密にしなければならないと思うのであります。勿論、世界平和という以上は、我々は世界の各国民・各民族親善関係を結ばなければならないことは当然でありますが、併しながら昔から遠きに行くには近きより行くということがあるのでありましつて我々はここに世界平和の建設ということを論じたにしろ、お隣りの諸国民親善関係を結ばないで世界平和を説くということは、実に矛盾した態度であると言わなければならないのであります。我々の世界平和建設に対する貢献は隣国の諸民族と仲よくするということから始めなければならない。ところがあの單独講和というのは、これはその日本国民アジア大陸から引離すというような意味を蔕びておる。そういう意味において我々は單独講和に絶対反対なのであります。我々は本当の講和は全面講和でなければならない、單独講和というものは講和の名に隠るるところの戰争の準備以外の何ものでもない(拍手)と考えるのであります。これも又日本を非常に危險なところに導く。我々は飽くまで日本民族独立を守らなければならない。私の場合においては、過去何十年間、殊に世界大戰以来、自分の生命を犠牲にしてやつて来たことは、民族独立を守る、日本民主化すること以外のことではなかつたのであります。私はこれを考えて、その立場を守り、又諸君と提携してこの立場を守り通そうとして考えておる。私はこの立場から絶対單独講和には反対して全面講和を主張するものであります。全面講和に関する吉田首相の説明はたびたび聞きましたが、今日は日本の将来の、日本の隣国との提携の問題の一線から、もう一遍考え直して頂いて、その点から首相の熟慮せられた意見を聞きたい。  私が首相に答弁を求めました問題は、日本の全国民が非常に大きな関心を持つておるばかりでなくて、全世界がやはりそれに対して大きな関心を持つておると考えるのでありますから、それで私は非常に厳粛な態度で今日の質問を試みたのであります。私は吉田首相に同じ嚴粛な態度で、こういうすべての問題に対して、明確な一点疑いのない答弁が與えられることを期待しておるということを申上げて、今日の演壇から下ろうとしておるものでございます。(拍手)    〔国務大臣吉田茂君登壇〕
  5. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) お答えをいたします。  追放の問題はすべてマツカーサー元帥指令によるのでありまして、これは降伏條約の結果であり、又その都度、追放の問題は、單にこの度の問題のみならず、数年前から、追放の初めからして一にマツカーサー元帥指令によつて処置いたしております。これは憲法のどこに根拠があるかと言われるが、これは併し降伏條約の結果であると御承知を願いたいと思います。尚、法的の根拠については主管大臣からお答えをいたします。併し一言附加えまするが、共産党の中央委員、アカハタ編輯部員等の追放は、政府としても治安の必要上から、又治安維持の上から、はた又人心安定の上から、又民主政治発達の上からいたして、甚だ好ましからざる行動をなして、その発達を妨ぐるものは、これは追放その他の処置を加えざるを得ない事情にあつたことは政府としても同感であるのであります。(拍手)即ち政府責任においてこれをいたしたのであります。(拍手)又その追放の結果はよくないではないかというお話でありますが、追放の結果についての議論はこれはおのおのその立場において議論の相違と申すか、意見の相違であるのであつて、これに対して黒白を争うということは意味のないことでありまするから差控えます。(拍手)  又ヘラルド・トリピユーンを引用せられて軍事評論家日本政府單独講和に引換えに自発的に基地の提供をマツカーサ一元帥に申入れたということでありますが、これは全然無根の事実であります。その他、新聞或いは軍事評論家議論についてはここでお答えはいたしません。  軍事基地の問題についていろいろお話がありましたが、これはしばしばこの演壇において私が申しております通り、今日軍事基地の問題はないのであります。進駐軍が進駐の目的のために或る施設をする、これに協力することが條約上の政府の義務であります。故に軍事基地ということになるかも知れませんが、今日のいわゆる軍事基地なるものは、これは進駐軍占領の目的のためにする一つの設備であります。これを如何に利用するかということは占領軍の自由な決定によるべきものである。即ち軍事基地の問題は今日においてはない。然らば将来のことは、将来起つた場合において……具体的の事実が起つた場合にお答えをいたし、又研究もいたします。現在においては軍事基地の要求はないのであります。(拍手、「結果には責任を持たんのだね」と呼ぶ者あり)  それから朝鮮問題について、国連との関係でありますが、私は国連との関係については、はつきり申しておるのであります。国連世界の平和擁護のために起した行動は、政府としては精神的に飽くまでも協力するが、併しながら政府として、或いは日本国として、今日の立場上積極的に行動をすることは許されないのであるということをはつきり申して置きます。  又中国との講和でありますが、常に申します通り、好んで單独講和を主張するのではないのみならず、全面講和はできれば結構であります。殊に中国とは開闢以来と申すか、歴史あつて以来の関係があるので、その関係たるや、歴史的にも、又その他の意味合においても、非常に密接な関係にあることはお話の通りであります。我々も決してこれに対して異論はないのである。できれば中国との間に十分の外交関係を復活さして、そうして相互いに手をとつて東洋の平和に協力するということができれば誠に結構なのであります。善隣外交については殊に私はその希望を捨てないのであります。併しながら講和も相手国があるのであつて中国自身が日本国との講和を欲しないという場合に、これをどうして講和をさせるかということは、私において案はないのであります。併し御越意は賛成であります。一応お答えをいたします。(拍手)    〔国務大臣大橋武夫君登壇拍手
  6. 大橋武夫

    国務大臣(大橋武夫君) 追放の問題に関しまする法律的な点についてお答えをいたします。(「結果だよ」と呼ぶ者あり)  我が国が連合国の管理下に置かれております以上、その管理権の作用として発せられます指示命令につきましては、その解釈はこれを発しましたる官憲の解釈に従つて誠実且つ迅速に従わなければならないということは、これは当然のことでございます。而して好ましからざる人物を公職より除去いたしますることは、一九四六年一月四日附の連合国最高司令官の指令によるものでありまして、この問題につきましては、本来内閣総理大臣は最高司令官に対してのみ直接責任を負うものでありまして、国内法の立場からその当否を論議いたしますることは、裁判所においてすら許されないことに相成つておるのであります。今回の共産党幹部の追放は、本年六月六日附の迎合国最高司令官の書簡による指令に基く措置でありまするが、その指令の内容は具体的に持定の個人を指定いたしまして、これらの者は、真理を曲げ、集団暴力を煽動することによつて、連合国の基本政策である日本平和主義民主主義体制を覆えそうとして、過去の軍国主義的指導者と殆んど同一のやり方をしているものであるから、軍国主義者と同様公職追放にすべきものであるという理由の下に、日本政府に対しまして、追放令による追放を命ぜられたものでございます。従いまして、政府といたしましては、この指令を忠実に実行いたしまするために、公職追放令の規定に従い追放の手続をとつたのでございまして、この追放令の規定にこれを当嵌めてやれという最高司令官の指令がありまする以上、そのまま適用されなければならんものと考えておるのであります。日本共産党機関紙アカハタ責任者に対する追放も本年六月七日連合国最高司令官の指示に基くものでありまして、右に述べたるところと同様の理由によりまして、政府は公職追放令の規定によつて追放の手続をとつた次第でございまするから、さよう御了承をお願いいたします。(拍手
  7. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) これにて質疑通告者の発言は令部終了いたしました。国務大臣演説に対する質疑は終了したものと認めます。      —————・—————    〔吉田法晴君発言の許可を求む〕
  8. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田法晴君。
  9. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私はこの際、公務員の給與ベース改訂に関する緊急質問の動議を提出いたします。
  10. 小川久義

    ○小川久義君 只今の吉田君の動議に賛成いたします。
  11. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 吉田君の動議に御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 御異議ないものと認めます。よつてこれより発言を許します。吉田法晴君。    〔吉田法晴君登壇拍手
  13. 吉田法晴

    ○吉田法晴君 私はここに一般公務員の給與ベース改訂の問題について緊急質問をなさんとするものでありますが、先ず第一に、七月十五日参衆両院の本会議において吉田首相施政方針演説に対して、我が党代表の質問に答えた淺井人事院総裁の答弁中において明白に言明せられ約束せられました給與ベース改訂の勧告を、昨十八日に至りまして急にこれをなさざる旨の言明をなされたのでありますが、その理由について、経緯について、政府及び淺井人事院総裁にお尋ねするものであります。  七月十五日、衆議院の本会議席上における我が党の鈴木茂二郎氏の質問に対する答弁において、淺井人事院総裁は今国会中に給與ベースの改訂を勧告する旨答弁せられた由でありますが、本院においても、我々はこの耳を以て「できるだけ近い将来において勧告をなす」旨の強い発言を聞き、野党は拍手を以てこれを迎えたことは、吾人の記憶にまだ生々しい事実であります。非公式な会見でありましたが、その後、我々が我が党を代表して淺井人事院総裁或いは山下人事官にお会いしたときも、同様の明言を繰返しておられたのであります。然るに昨十八日、突如として「今回の国会会期中には勧告をなさない」旨決定せられ、その由を談話として発表せられたのでありますが、この経緯と理由を詳細に答弁願いたいのであります。  言うまでもなく人事院は、国家公務員法第二十八條に基き、給與その他の勤務條件に関する基礎事項が社会一般情勢に適応するように変更するについて勧告をなす義務があるのであり、「毎年少くとも一回、俸給表が適当であるかどうかについて、国会及び内閣に同時に報告しなければならない。」そうして「給與を決定する諸候件の変化によつて俸給表に定める給與を百分の五以上増減する必要が生じたと認められるときは、人事院はその報告に併せて国会及び内閣に適当な勧告をしなければならない」責務と権限があるのであります。昨年十二月四日、人事院は、この国家公務員法第二十八條及び当時の政府職員の新給與実施に関する法律第二條第三号反び第五号の規定に基き、国家公務員の給與額総平均を月額七千八百七十七円に上げるよう勧告をなされたことは、我々の知る通りであります。これは昭和二十二年十月以来の六千三百七円ベースの基礎となつた同年七月の生計費に比べて、昨年七月の生計費が三八・六%上昇し、民間給與の上昇率——人事院の数字によれば四九%でありますが、我々の調べたところによりますと七〇%近く上つておりますが、そうした基実に基いたものであります。  然るに、今回なされようとした勧告について新聞に報ぜられました淺井人事院総裁談によれば、「本年度の予算は確定しておるので、今国会には如何なる給與法案も補正予算も提出せない実情が明らかになつたので、人事院としては、尚、調査研究を続け、明年度予算編成に間に合うよう国会及び内閣に給與の改訂の勧告を行う予定である」と言われておるのであります。併しながら人事院の勧告は予算にのみ制約せられるものでありましようか。本年予算が確定しているからというので人事院の勧告ができないものでありましようか。国家公務員法はそういうことを予定しておるのではありません。昨年の勧告は七月の生計費に基いて七月になされべきものが十二月に遅れたに止まるのであります。一昨年七月の生計費その他の調査に基いて一昨年の勧告がなされ、六千三百七円ベースが実現せられたのであります。昨年七月の調査に基いて昨年の勧告がなされましたが、本年は、本年の七月の調査に基いて毎年少くとも一回の法律に定められた勧告がなされべきものであり、人事院総裁の言明、最近の態度は、この昨年実現せず本年に持ち越された問題をも含み、この定例の勧告をなさんとしたものと考えられるのであります。この予定された一年一回の勧告がなぜやめられたのでありましようか。予算に制約せられるということは意味をなさないのであります。これは国家公務員法違反であるのみならず、そういう理由によるならば、なぜ昨年の十二月の勧告がなされたのでありましようか。昨年の勧告は予算に関係なく、人事院の責務と権限に基いてなされたものと考えるのであります。  更に根本に遡つて、人事院がなぜ作られ、国家公務員法第二十八條によつて人事院が勧告をなす権限と責務を持つか。これは今更繰返すまでもないことでありますが、昭和二十三年の十二月、公務員法の改正によつて公務員の罷業が禁止せられ、団結権、団体交渉権が制限せられたが故であります。マ元帥書簡に言われました「国家の公益を擁護するために政府職員に課せられた特別の制限があるという事業は、政府に対し常に政府職員の福祉並びに利益のために十分な保護の手段を講じなければならぬ義務を負わしめておる。」この罷業権を剥奪しされ、団結権・団体交渉権を制限せられた政府職員の福祉と利益のため十分な保護の手段を講ずる義務は、政府及び人事院が担当するものであり、国家公務員法第三條はこのことを明白に規定いたしております。然るに昨年十二月の人事院勧告は吉田内閣自由党によつて完全に蹂躙せられました。我が社会党及び全野党は、全国五百二十万の民主的労働組合の諸君と共に六千三百七円べースの改訂を図り、本院人事委員会も又先の第七国会において六千三百七円べースば改訂すべしという意向をはつきり示したのであります。併し昭和二十五年度予算の修正が許されず、六千二百七可べースの改訂を含む新給與実施法の修正も許されなかつたのであります。そこで本院の人事委員会は、六千三百七円べースを昭和二十六年三月まで一ヶ年延長するという政府原案を本年七月までとする修正案を全会一致で採択し、三月三十一日の本院本会議はこの修正案を満場一致で通過せしめたのであります。このことは諸君の記憶に未だ生々しく残つておる事実でありますが、このことは、六千三百七円べースが低いということ、六千三百七円ベースを改訂することが如何に妥当であるかということを国民輿論が決定したことであります。(拍手)この修正案は翌日提出せられました六千三百七円平均の自由党案によつて覆えされましたが、自由党議員諸君が、これは五十歩百歩だからという理由にならぬ理由を説明せられたことによつても明らかなように、事理は明白にされたと考えております。給與ベースの改訂を求める我々の三月鬪争は、この本院決定と、專売局、全金属山、電産の賃金ベース・アツプを以て終りましたけれども、給與水準全般の改訂が必至の状態にあつたということは、三月末国会共闘の代表と増田官房長官、鈴木労働大臣の会見の際にも、両大臣の言によつて明らかにせられたところであります。その席上、国会共鬪の代表が、「従来公共企業体の職員であろうと、一般公務員であろうと、国家に盡すところは同じであると言われて来たにも拘わらず、專売局職員に限り裁定に従つて一時金を出し、予算上、資金上ということは、国家全体の予算上、資金上ということではなく、当該公社の予算上、資金上可能か不可能かであるということである、こういう大臣の説明であるが、これは前の説明とは矛盾しておるではないか」と強く突込んだのに対しまして、両大臣は、公共企業体の労働條件一般公務員の勤労條件とは必ずしも同一である必要はない、併し原則としては同じである方がよろしい、一般公務員についてもできれば出したい、一般公務員についても来年度予算の範囲内で出したい、前進したいのだと、こういうことを言われたのであります。同様の意向を吉田首相も当時漏らされたことは事実であると考えるのであります。その後、池田蔵相は国民の膏血からなる国の費用で渡米をして、シヤウプ勧告の緩和と共にドツジ・ラインの修正についてアメリカ側と折衝をして来られました。そうして自由党は今次参議院選挙に当り、ドツジ・ラインの事実上の修正となる五公約を国民にしたのであります。このことは給與バース改訂を含むドツジ・ラインの修正を求むる我が党の主張が如何に正しいかということを証明するものであります。自由党吉田内閣が、全国の勤労者の悲痛の叫びと圧力に負けた結果であります。ドツジ・ラインの修正が日本経済にとつて緊急不可欠のものであるという証拠であります。(拍手)かかる客観情勢の下において、人事院では一度決意し公言した給與ベース改訂の再勧告をなぜしないのであるか。自由党の政調会長、衆議院人事委員長が或いは方々を訪問して勧告を抑えて貰うように頼んだとのことであります。或いは吉田新内閣の私設官房長官と言われる廣川氏が淺井人事院総裁を訪問して、暫定措置については政府において考えておるからと、暗に勧告を止めたと噂されておりますが、吉田自由党内閣が自主性を失つておることは天下周知の事実でありますが、かくのごときはいわゆる袞龍の袖にかくれて民主主義の体制を破壊すると言うべきでありましよう(「その通り」と呼ぶ者あり)第七国会においてすら、人事院なり人事官が政府の方針に屈従し、政府を暗に弁護するの態度を見せたのであります。今や全く人事院が政府の権威の膝に屈し、無用の長物と化しようとしているのであります。(拍手)国家公務員法の全條文が空文と化し、民主主義が危機に瀕しているのであります。社会党及び民主的労働組合がその民主主義的な枠を越したとしても、その責任は挙げて政府及び人事院にあるということを申して置きたいと思うのであります。(拍手)人事院総裁は、如何にして国家公務員法を守り、その存立の使命を果そうとするのか承わりたいのであります。  第二に、吉田総理と大蔵大臣は、選挙の公約と給與の改訂について政治的責任を如何にして果そうとするのであるか承わりたいのであります。給與ベースの改訂という選挙の際の公約は、本国会における答弁のごとく、そのうちにとか、或いは来年度からとか、或いは行政整理即ち首切りに関連して論ぜられるべき問題ではありません。給與ペースの改訂という以上は、或いは六百円とか七百円とか、そういう一時の金を出すというがごときものではない筈であります。六千三百円ベースそのものを上げるということであります。選挙の際の公約は本年内の話と国民は受け取つているのであります。池田大蔵大臣が帰朝の当初は、大蔵大臣自身のみやげとして、或いは功名になるからと他の閣僚自由党幹部の反対があつたり、或いはそのしつぺ返しに他の方からの提案を池田大蔵大臣が反対してもいいというがごときものであつては断じてならんのであります。(拍手)  今やいわゆるドツジ・ラインの修正は必至であり、給與ベースの改訂は遷延を許さぬ緊急の問題であります。(拍手)我々はむしろ公務員及び公社職員が今まで溜めて来ました生計費の赤字を考えるとき、遡及して支給すべきものであるとすら考えておるのであります。特別警察除設置に伴う財政措置と共に、或いは朝鮮事変勃発に伴います予算の修正と共に、給與ベース改訂のための補正予算を今国会に速かに提出すべきであると思うが、大蔵大臣の所見をお伺いいたします。(拍手)    〔国務大臣吉田茂登壇拍手
  14. 吉田茂

    国務大臣吉田茂君) 給與に関する人事院の勧告は、人事院が独自の見解からなさるものであり、それに従うか従わぬか政府が独自の見解によつて判断するのであります。これが法の精神であります。政府は、給與ベース改訂について、私の施政方針の演説の中に明らかに申しております通り、財政の許す時期、その額において、極力その実現に努めるという方針であります。(「そんな公約なんてあるか」と呼ぶ者あり、拍手)    〔国務大臣池田勇人君登壇拍手
  15. 池田勇人

    国務大臣(池田勇人君) 只今総理大臣がお答えになりました通りでございまして、私といたしましても、財政の許す限度におきましてできるだけ早く上げたいと努力していることはたびたび申上げた通りであります。(「答弁になつておらん、そんなことじや……」「インチキ答弁だ」、インチキ公約をするな」と呼ぶ者あり)    〔政府委員山下興家君登壇拍手
  16. 山下興家

    政府委員(山下興家君) 吉田さんの御質問お答えいたします。  吉田さんが御指摘になりましたように、人事院といたしましては、給與ベースを改訂しなくちやならんものということを始終研究いたしまして、そうして年に一回は必ず報告をしなくちやならんということになつているのであります。それで前回の国会の当初におきまして七千八百七十七円の給與ベースを勧告いたしましたことは御承知の通りであるのでありますところが最近になりしてもう少し細かな調査をいたしました。そうして五月の民間給與実態調査をいたしまして、その結果が六月末に出たのであります。それを基礎といたしまして細かく計算いたしました結果によりますと、大体前の七千八百七十七円ベースとしては余り沢山違つておらん、ということは、今の消費物資の価格は少し下つておりますから、それで生計費の方は少し下つておりますけれども、民間の給與の而におきましては、少しではありますが、上昇しておるのであります。それで両方を勘案いたしまして調査研究をした結果、今申しましたように、ベースの方では大して違わないが併し内部構造についてば随分違つて来る。根本的にこれは書き換えなくちやならんものだということに気が付きまして、そして鋭意今国会の当初にこれを勧告をしたいというつもりでやつてつたのであります。ところが最近いろいろ折衝の結果、本年度の予算については補正予算は絶対に出ないということがはつきりしたのであります。(「出せばいいじやないか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)それでありますから、我々はこの国会に勧告いたしましても本年度の予算には影響がないということがはつきりしたのであります。(「たいこもちだ」と呼ぶ者あり)併し同時に我々は来年度の予算につきましては、それを編成するのに間に合うように、早い機会において勧告をすることができるという事情がはつきりしたのであります。ところが来年度の予算に間に合せると申しますと恐らく来月になるであろうと思います。それですから我々は来月になりましたら、この予算編成の中に組み込むのに間に合いますように勧告をするということに決心をした次第であります。(拍手、「何を言つておるか」と呼ぶ者あり、その他発言する者多し)
  17. 佐藤尚武

    議長佐藤尚武君) 次会の議事日程は決定次第公報を以て御通知いたします。本日はこれにて散会いたします。    午前十一時二十三分散会      —————・————— ○本日の会議に付した事件  一、日程第一 国務大臣演説に関する件(第五日)  一、公務員給與ベース改訂勧告に関する緊急質問