○
山本勇造君
高橋委員長から
文化財保護委員会の発足以後の経過について詳細な御報告があり、又森田
局長から
予算についての御報告がありましたのについて、各
委員からそれぞれ御
質問がございましたが、私も
ちよつと一言申上げて見たいと
思つております。
この
文化財保護法は御
承知の
通りに国会で立案して、その国会とい
つても特にこの
文部委員会が中心になりましてやりましたものなので、そういう上から行きますと、我々はこの
保護委員会に対して非常な責任を持
つておるわけであります。若し世の中の普通の例に従いまして、赤ん坊を産んだとすれば、当然その産んだ母親がその赤ん坊を育てて行くのが当然なのでありまするし、又
一つの
事業を
計画いたしましたならば、その
計画した人がそれをや
つて行くのが当り前なんであります。ところが国家の
機構におきましてはそういうわけに行かないで、三権分立の建前から、立法したものは立法だけ、それから事務行政に当るものは事務行政をや
つて行くと、そういうふうな建前にな
つておりますために、我々はこれを立法はいたしましたけれども、その先のことは一切手を触れぬ、又触れてはならない、そういう建前にな
つておりますものですから、これはできました後のことは、まあ一切この
文化財保護委員会の手によ
つてや
つて頂かなければならないのであります。ところがこの
文化財保護委員会なるものは、昔の
国宝保存会などに比べますと、非常に範囲が広くな
つており、権限も強くな
つておる。而も
予算は大分先程
お話も出ておりましたように少いので、非常にやりにくい
委員会だと思うのであります。従いまして、私達がこれを立法しております当時において、この
委員会ができるのは結構だができたときにいい人が出て来て呉れるだろうか、こういう面倒くさい
委員会であ
つたらなかなかいい人が出て来ないんじやないかと、非常に実は心配しておりましたのでありますが、幸いにして五人の立派な方が選ばれ、而も今日はその
委員の方の殆んど全部の方が御出席にな
つておるというような御熱意を示されておる。我々の方で今日この
委員会を開くに当りまして、御
説明を願いたいということは申入れましたが、皆さんに揃
つてお出でを願うとまでは我々は
思つておらなか
つたのであります。それにも拘わらず皆さんが揃
つて御出席になるということは、皆さんの御熱意のほどが我々にも感ぜられまして、非常に有難く
思つておる次第で深く感謝をいたしております。併しながら、又ついこの間の、今月号であると思いますが、或る有名な人が或る雑誌に書いておるのを見まするというと
文化財保護法なんというものは必要じやないと、そうしてあれに使う金は勿体ないから、むしろそういうものは減税に充てるべきだというような意味のことを書いておる人があります。勿論国民の誰でもが
税金には苦しんでおるんですから、減税は誰でも望んでおることでありますし、ここの国会でも皆減税のことを
考えてないものはないと思います。そういう点はその点は賛成でありますけれども、
文化財保護法はそんな必要じやないというあれは、まあ
文化財保護法をお読みにな
つておるのか、或いは実情を御存じにな
つておるのかいないのか、その辺甚だ疑問でありますけれども、例えばただ
一つの例といたしまして、若し
文化財保護法がなか
つたならば、昔の
国宝保存法だけであ
つたならば、
国宝を指定するということもできない。ストツプ
状態にされておる。今度の
保護法ができたのでやつとこれが指定することができるようにな
つたのでありまして、若しこの指定ができなければ相当に立派なものが海外に流失するというような心配があり、又あ
つたやにも聞いておるのでありまして、そういう点非常に心配なんでありますが、これができたために段々そういうことがこれからなくな
つて行くだろうと思います。その一事を取りましても、この
文化財保護法というものは決して無用なものでないのでありますし、又この
予算の面におきましても、これで使うのは僅かに三億円前後の金、来年の
予算にしましても四億円
程度のものでありまして、国家の全体の総
予算からしますると非常に微微たるものであります。これを若し税を取らない、この方にかけないで減税したとしましても、一人当りの
税金がどれだけ少くなるか、実に少いものであろうと思われます。又これをそういうものにかけないで減税しまして、先程から問題にな
つておるように荒廃しておるさまざまな
文化財をそのままに放
つて置いてどうするかという点を
考えますると、この
文化財保護法ができで、又この
委員会ができてや
つて行くことは非常に僕は大事な点であろうと思うのでありますが、今申す
通り相当な有識な人でもこの
法律乃至はこの
委員会に対してとかくのことを言う人がある、僕は実に
ちよつと分らない気持がいたしておる。併し幸いにして先程の
若木委員や、或いは岩間
委員の御
質問を聞いておりますと、今のとは反対の立場に立
つておられるように見受けられますので、大変心強く思うと共に、あなた方の方も心強く思われるだろうと思いますが、併しこの
委員会が今後においても
予算等の面においてはさぞかし大変であろうと思います。皆さんの御苦労をお察しする次第であります。そこで先程の
高橋さんの御報告なり、或いは
局長の御報告を聞きまして、実は私いろいろ疑問がありましてあの御報告の中についても
質問したいこともあり、或いは又御報告になか
つたことの中にも僕は
質問したい点があるのでありますが、私は今日はわざと
質問を遠慮しようと
思つております。
質問を持
つてお
つて遠慮するということは議員の職責を果さないようにも
考えられますけれども、併しながら又何も
質問するだけが大事なことではなくて、一番大事なことはこの
法律がどういうふうに活用されて行くか、これが本当に活きてうまく成功を挙げて行くかというところが大事な点だと思いますので、私は
質問はいたしませんけれども、併しながらどういうところにそういうのがあるかということは賢明な皆様においては大体お察しがついておるのだろうと思います。そこで今日は私わざと
質問はいたしません。無論私だけでありまして、外の方に
質問しないで呉れということを申しておるのではございません。私は
質問はございますが今日は
質問いたしません。併しながら
質問すべきようなものがあるように私は
思つておりますから、この
文化財保護法の根本の精神を
一つ十分お呑み込み願うと共に御活用願うように進んで頂きたいと思うのであのます。この
委員会はとにかく発足して僅かでありまして、赤ん坊で言えば這い這いのところでありますから、這い這いのときに余り突込んだ
質問をするのもどうかと思いますから、私は今日は控えるつもりであります。殊に五人の
委員の方々は非常に人格においても見識においても手腕においても実に立派な方々でありますから、皆さんの手腕、人格、識見に信頼をいたしまして、私は今日は
質問いたさないつもりでございますから、どうか
一つこれを方向を誤らないようなふうに持
つて行
つて頂きたいと思います。尚又この
委員会が成立すると共に
事務局も設けられ、森川
局長を初めといたしまして事務当局ができたわけでありますが、事務当局の方におきましても今のような意味合いで十分に誤りなくそして敏速に事務を運んで頂きたい。私はそういうふうな意味で五人の方々に御苦労を感謝いたしますと共に今のような
希望を申述べまして私の話を終ります。