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証人(大森眞一郎君) それでは
小作料、その他の問題につきまして、大体
小作料或いは
地価の問題を中心といたしまして、
農民の立場から申上げてみたいと存ずるのであます。
政府の今回の改正案に対しまする提案の理由その他について詳細を知ることができなか
つたのでありますが、大体説明資料を中心といたしまして、先ず我々
農民側といたしまして、疑義を持つ点を指摘いたしまして、最後に若干私見を申述べたいというふうに考えておる次第であります。
先ず
小作料の取扱の
原則について、政府の説明資料で申されておりますることは、
小作料の統制
基準は、定められた
米価と、米の
生産費とを対比して、小作農が再
生産を阻害せず
支拂い得る額を限度として合理的に決定する、こう申しておるのでありますが、この言葉自体から申しまするというと誠に結構でございます。ただ併しながら私共は率直にこの言葉をそのまま受取り難い点があるのでありまして、我我は次の諸点に疑点を持つ者であります。先ず疑義の第一点といたしましては、説明資料は、小作農が再
生産を阻害せずに
支拂い得る額を限度として
小作料を決定すると申しておるのでありまして、その
前提になるのは、
米価と、米の
生産費とを睨み合せて、これが再
生産を阻害しないという
前提に立
つておると思うのであります。そういたしますると、この考の
前提になるのは、やはり現在の
米価というものが適正な額で
支拂われておるということが
前提にな
つておると思うのであります。その点について、私共は疑義を持
つておるのであります。これは
米価決定の経過を見ましても、こういう現在我々か再
生産費を賄
つておる、償
つておるというようなことは考えられないのでありまして、昨年度の
米価決定の経緯を簡明に申上げますると、我々が当初
米価審議会において要求いたしましたところは、我々の
計算におきましては、原單位
計算を
基礎として主張いたしましたのでありますが、この石当りの額は五千九百九十三円九十四銭であります。又
農林省の
食糧庁が、これは企画課の試案として提示されました原單位
計算におきましても、四千七百十四円四十九銭という数字を出しておるのであります。併しながら私共はいろいろと
経済の面、消費者
価格の面、それらを考慮いたしまして、最後に妥結いたしました審議会案といたしましては、超過供出代金三倍を二倍に切下げ、一倍分を基本
米価に織込んで、而も尚これも四千七百円の線で抑えたのでありますが、この審議会の答申案に対しまして、政府が最終決定を下しましたのは、申すまでもなく四千二百五十円であります。即ちこれまでの政府の
計算でも四千七百十四円四十九銭という数字を出して置いて、更にこれが四千二百五十円と決定して、再
生産が償い得るとは私共考えられないのであります。その点が我々として疑義を持つ点であります。又現在の
米価が真実に
生産費を償い、更に再
生産費を償わないということが、これは單に私共の一方的
見解でないのであります。これは先般開かれました麦価決定におきまする
米価審議会の席上において、暗示的に述べられました安本側の主張におきましても、すでに現在ではこの
価格パリテイ方式では十分に
生産費を償い得ないという結論にな
つておるやに感じられるのであります。現在におきましては
価格算定方式に対しての疑義がありまする観点から、現在所得パリテイ方式の研究を進めておるというのが実情てあろうと思うのであります。又もう
一つ。これは安本次長も申されてお
つたのでありまするが、今の
農民の実情を見ますると、
農家経済が行き詰
つておるばかりでなく、
農業経営自体が縮小傾向にある。こういう事態から
農家所得は急激に激減する傾向にあるということを重点といたしまして、これを論拠といたしまして、パリティ指数で算出された
価格に更にアルファーを加えても
米価を一定線で維持しようという動きがあるのであります。こういう
考え方が出て来ておるのであります。
従つてこの
見解、私共が今日の
米価というものが真実に我々の
生産費を償い得ないものであるということは私共の一方的な
見解でないということを申上げらるると思うのであります。以上が大体疑義の第一点であります。
疑義の第二点といたしましては、政府は
米価決定に当
つては、我々の要求を蹴
つて、原單位
計算を指定いたして、パリティ方式のみを採
つておるのであります。勿論パリティ方式と原單位
計算方式によりましては、いろいろ
情勢の変化によりまして、いわゆる
インフレの昂進期であるか、後退期であるかによりまして、必ずしも
一つにのみより得ないと思うのでありまするが、少くも
価格パリティ方式のみによ
つて決定するという方式を固執することは私共としては不満であるのでありまするけれども、いずれにいたしましても
米価決定ではパリテイ方式を採る。而して
小作料の決定については原單位
計算を探る。こういう方式を採られておるのであります。そしてこの説明資料では合理的に決定するというておるのでありまするから、この合理性の
基礎を原單位
計算に置いておるということは私が申上げるまでもないと思うのであります。こういうふうに
二つの計管方式が採られておる。更に原單位
計算に対しましての
非難の点はいろいろありますが、大体において検査が多いということを挙げております。又調査戸数が少いということも挙げておる。又
労賃計算に私営的な
要素が多いということ、この三点、更にいろいろありますが、主だ
つた点はそういう点を挙げまして、これを
基礎といたしまして原單位
計算の非科学性を指摘いたしておるのでありますが、これはやはり原單位
計算を以て
小作料を決定する。このような問題によりまして、その
計算の
基礎が変るという点に私は多少の疑義を持つものであります。更に地方税の
関係を見ましても、やはりこの決定は我々といたしましてはこの決定に……
自作農創設特別措置法の第六條に規定する対価を
基礎としてこれを二二・五倍するという
考え方でありますが、やはり
土地に対しても、私共は
收益価格を採るべきであるという考えを持つのであります。こういう点におきまして、全体といたしまして、ばらばらな形の
計算方式が
基礎にな
つて、総合目的に思索されるべきものがばらばらにな
つておるのでなかろうかと、こういう点が私共の疑義の第二点であります。
次に説明資料によりますると、
基礎となりました原單位
計算につきまして、二、三私共の疑点とするところを申上げてみたいと思うのであります。原單位
計算におきましては、現在までに私共の手に入りましたのは、昨年の
米価審議会において、
食糧庁の企画課試案として提示されたもの、今回の
農地課の資料、こういうふうに見られるのでありますが、両者を比較いたしますると、種子費、
肥料費、薬剤費は同額であります。諸材料費が若干異なりまして、百二十五円と五十八銭というのが
食糧庁の案であります。小農具、大農具、建物費、労力費が同額であり、畜力費も同額であります。そして公課の面では
小作料の決定がありまするので、租税を拔いたと思うのでありますが、これが
差額が一千三百三十玉円五十銭という
差額があります。この
差額は恐らく租税部分として拔いてあると思うのであります。更に
資本利子におきまして、二十六円三十五銭の開きを示しております。小作費におきましては、これは新しく七倍の
小作料が出ております。原案では十三円という数字でありまするから、ここにやはり開きがあるのであります。総体としては同一資料に基いておると思うのであります。ただ私共の考えておる原單位
計算におきましては、これと非常に開きがあるのであります。時間の
関係もございましようから、細かい数字は省略いたしますが、量も大きく開いておるのは労力費であります。これは
食糧庁の
計算では五千三百六十九円四十六銭でありまするか、私共の
計算では六千三百八十七円と九十二銭、その開きの出た原因は、労力費の
計算方式が我我と官庁側との喰い違いでありまして、これは私共の
計算では労力の投下時間における作業別労力を
計算しまして出しておるのであります。
農林省側では、この点につきましては
平均労賃を
基礎にして換算しておりますので、これだけの差があるのであります。
従つて資本利子の面に相違がありまして、その額が六百七十二円と六十二銭という開きがあるのでありますが、これは当然労力費、その他の数字の相違から来る問題であります。
私はここでこの点で申上げたいのは、この資料におきまして、我々の
考え方と
違つておるから信憑性がないという主張ではないのでありまして、尚その
計算の
基礎になる原單位
計算にも、細部に亘
つて検討の余地があるということを申上げたいのであります。殊にこの
基礎になりました資料は、どの
農家層を採
つたかという問題が残るのでありますが、政府側の案によりますれば、いずれも三石五斗一升の
收量を挙げておるのであります。我々の
計算では二石四斗六升五合であります。而も我々の取
つた調査資料も、要するに
平均耕作面積は一町三反を上廻る上唐
農家を採
つておるのであります。そうして同じく石数
收量におきましても、
昭和二十三年度の
全国平均というものは反当
收量二石一斗五升であります。
従つて非常に
收量も上廻
つておるし、恐らく
平均耕作反別はここに掲げてありませんが、上層
農家を
基礎として採
つておると考えれらるのであります。こういう点から考えますると、やはりこれで
計算されて出た数字を、生のまま直ぐ
小作料の、政府の決定する
小作料の
基礎にするということに、私共は疑点を持たざるを得ないのであります。午前中の近藤先生のお話のにもあ
つたように、やはり
小作料の決定というものは、單に上層
農家を
基礎とした数字、而もその
收量も非常に多い
收量でありまするから、
一般の耕作
農家を中心として考えますれば、この
生産費は
もつと高い
生産費が出なければならんと思うのでありまして、こういう面から見まして更に限界
生産費の
考え方を加えて考えますれば、
もつとこの数年に加減しなければならぬというふうに考えられるのであります。殊に我我
農民の側から見ますれば、理論上の問題ではいろいろ議論のあるところであろうと思うのでありますけれども、現在の実情から申しまして、
農家の租税の負担部分というものが非常に高騰いたしております。ここで先程申しましたようは千二百三十五円五十銭という大きな租税負担部分かあるのでありまするから、これらを何ら勘案することなしに
小作料を決定するということには、私共十分疑念を持つのであります。これに
農林省の
統計によりましても、
昭和九年——十一年の
平均に対しまして、二十三年では
農家所得が百十六倍、租税負担が三百十三倍、公課が三百七十七倍というような大きな数字の開きを示しているのでありまするから、この点から考えましても、
農家負担の部分を考慮なしに
小作料を決定するということは、私共に單なる
收益計算だけから見るのでなく、
一つの政策からして考える場合は十分考慮の余地がある、こういうことを申上げたいのであります。
次に
農地価格についてでありまするが、この点は
小作料とやはり同じでありまして、これを單に形式的措置として七倍に引上げるという政府原案のようでありまするが、私共は
原則としては、
農地改革につきましても
收益価格を
基礎として決定すべきであるという孝でいるのであります。すでは我々として今申上げましたような点でいろいろ疑義のありまする
小作料を
基礎にいたしまして、單に機械的に七倍に引上げるという原案でございまするが、この点には同様に疑義を持たざるを得ないと思うのであります。
尚政府の説明資料の前段では、改正法律施行後は新しい改訂
価格によ
つて農地の強制譲渡を行うべきである、こういうふうな規定をしているのでありまして、何故改訂
価格で譲渡しなければならないのか、その点を私共は先ず問題にすべきでなかろうかと思うのでありますが、これは七倍値上げの
前提條件ではないと思うのでありまするが、説明資料ではそういうふうなお考があるのでなかろうかと解決されるのであります。これは
農地改革に当りまして、勿論政府としては有償買收の方針は採
つたのでありますが、買收
価格は決して
物価の変動につれて変動するところの時価主義を採
つているのではないということは、午前中の近藤先生の説明でも明かなところであります。
従つて私共は
価格の改訂がなければ買收の計画はできないというような
前提から、七倍値上げというものを直ちに合理的であるように説明されている説明資料の取扱い方に対しまして、疑念を持つ次第であります。で我々から素直に申しますれば、
農民側の率直な素朴な気持としては、現状のままで現行
価格で買收しても差支ないのではなかろうかというふうに感ぜられる次第であります。
次に
小作料の七倍値上げの
農家経済に及ぼす
影響の点について、説明資料について若干私共の感想を申述べさせて頂きたいと思うのであります。説明資料によりますると、
農地改革後において残存する小作地は、全耕地の一割未満だから、
小作料を引上げても
影響はないというようなお考のようであります。この点に私共は疑義を持つのでありまするが、
農地改革後において残存する小作地が非常に少いから問題がないのでなくて、この小作制度
そのものについて、この
小作料を値上げすることによ
つて果してこれが旧来のような
地主的な
土地所有制度というものが復活する危険があるかないかという点を私共は考えなければならんのじやないかと思うのであります。そういう点についてもう一段と考慮する余地がある。私共の率直な感想から申しますれば、どうも最近の傾向といたしましては、
農地改革の基本的な立場というものが、漸次失われているような感じを
農民側としては強く受けさせられるのであります。申上げるまでもなく、
農地改革についての覚書の
基礎は、要するに現在我が国の
農業構造が長い間領主的に馴らしめられておりました諸種の原因の根拠を芟除するということが重要な目的である。その重要な原因として認められるのは、零細な経営と不利な小作
條件にあるところの小作農が、確かに存在するというところにあ
つたと思うのであります。こういう点から見まして、今回の改正案は、
農地改革によ
つて達成された成果を恒久的に保持するということを主眼としておるというのでありまするから、若しこれを、その成果を恒久的に保持するというのならば、結局これに前述いたしました
農地改革の主要眼目を沒却しない、それを
意味しているという点にあろうかと思うのであります。即ち寄生的な
地主制度というものは、できるだけこれを排除し、そうして正しい
自作農を作り上げ、同時に
自作農が現在小作農に転落する傾向にありまするが、この小作農への転落を防止する、その二点が重点になければならんかと存ずるのであります。これは全体に亘
つての思想でありませんから、意見を徴されているのでありませんから、改正案のその他の部分については深く申上げませんが、大体において政府が今後
農地改革の成果を保持して行くとするならば、現状から申しましても、政府は尚強くこれに干興して行かなければならんと思うのでありまするが、今回の改正案では、政府は肩を脱いで、結局
農地委員会は一部参画いたしまするけれども、当事者間の自由売買ということが
基礎にな
つているのでありまするが、この点について我々としては深く疑念を持つ次第であります。要するに政府が
もつと積極的に不正売買を排し、闇売買を抑え、そうして
農地改革の成果を尚一段と挙げなければならん立場にありながら、却
つて政府は強制買收をやらないというような制度の変革を見るというのも、
一つは私共から極言するといたしまするならば、
農地改革に逆行するという方向へ馴致する危険がありはせんか、こういうふうにも考えられるのであります。これは
農民側の一方的な感想かも知れませんが、諸般の
事情を考慮して、そういうことも我々としては感じられるということを申上げたいのであります。
いろいろの点はありまするが、省略いたしまして、最後にこの
考え方の
基礎にな
つておりまする第二点は、現在の
小作料の水準を
一般物価の水準に比して非常に低い、だから
小作料は値上げしてもいいという
考え方が背後にあるように思うのでありまするが、やはり現在の
農地は勿論統制されておりまして、売買等においても制約を受けるものでありますから、結局これは單なる自由
商品でないのであります。殊にこれが投機の
対象になるような形にすることは、私共
農地改革の意義を根本的に没却するものと感じられまするので、
一般物価の水準と
土地価格なり或いは
小作料というものを必ずマッチさせなければならんという
考え方には反対いたさなければならんと存ずる次第であります。
最後に説明資料の中に挙げられておりまする数字でございまするが、私も時間がありませんので、具体的に検討をすることができなか
つたのでありまするが、この資料の小では、大体経営耕作地が九反九畝で、うち小作地が八畝に過ぎない。これは
全国平均を挙げておると思うのでありまするが、それだからその
農家経済に及ぼす
影響は軽微であると断定されておるのでありまするが、私はこの数字は
平均数字でありまして、これでは
農家経済に及ぼす
影響の
実態は掌握できないと思うのであります。少くも経営規模別、階層別、更に地帶別にこの数字を挙げまして、比較検討して初めてどの層に一番重く
影響するか、どの属には
影響が少いかということが、出て来るのではなかろうかと思うのであります。殊にこの
農家経済調査はサムプル調査でありまするし、サムプル調査の採り方も、これは各階層を
平均に採
つておるのでありまして、その間、下層
農民の数字というものは具体的に私は反映せず、上層
農家の数字がウエイトとしては重く出て来るように感じられるのでありまするから、そういう点から見ましても、ただこの
平均数字だけで、これを根拠にいたしまして
影響が少い、極めて軽微であるという
考え方から、今回の七倍案を決定されるといたすならば、我々としては甚だ不満であると言わざるを得ないのであります。以上大体疑点を二、三指摘いたしましたが、結論的に私共の
考え方を二、三の点について申上げて見たいと思うのであります。今回の
小作料値上げの問題は、殊に七倍値上げというのは、私共この前から聞いておる点でありまして、今回現在の税制改革や、その他の
農家経済に及ぼす
影響、或いは
農家経済の今日の趨勢、こういうものを具体的に検討した上で出された案ではなかろうかと存ずるのであります。その点が私共は、もう少し現在の
農民の具体的な
経済内容や、或いは
農家経済の推移状況にもマッチさせた形でこの案が出されて然るべきでなか
つたかということを感じられるのでありますが、この率の点におきましても、七倍というのはすでに今日の数字でなく、可なり古い数字を
基礎にしておられる点に私共はもう一度御一考を頂きたいと思うところであります。大体におきまして、これは実際的な問題でありまするが、これは
小作料が安いので
地主が固定資産税も抑えん、それだからというような点も一部にはあ
つたかと思うのであります。もう
一つは、
物価水準が上
つているのだから、
小作料も上げなければならん。こういうような点が、大体本案を提出される動機の
一つにはな
つておると思うのでありまするが、第一の点につきましては、成程そういう面も十分ありまするが、私共も、
農地改革の途上におきましては、
地主諸君のいろいろ相談も受けたのでありまするが、試に
個々の
農家に当りましては、そういう
地主におきましても、非常に苦痛のある点はあろうかと思うのでありますけれども、全体として
農地改革の線から言いまするならば、こういう犠牲については、私は止むを得ない犠牲であると思うのであります。こういう犠牲を
地主に負わせるということ、これは一方的には考えられませんが、それならば政府において別途にこれは考慮すべき点ではなかろうかと存ずるのであります。殊に現在では、水利費の負担が
地主に重いというのでありまするが、これは聞き及ぶところによりますと、北海道におきましても、水利費の問題は、小作人と
地主との間で十分いろいろな現地処理をや
つておるのが実情のようでありますので、私は水利費の問題は、これは現地解決で是正できるというふうに考えておるのであります。殊に
小作料に引合わないところの固定資産税がかかる、その他の租税がかかるといたしますれば、これは税制の方を是非共改革して頂きたいというのが、我々の希望意見であります。
それから小作地の問題につきましては、やはりこれは投機
対象になるような
一般の物件と同じような
考え方を探るべきでなく、やはり小作地というものは、小作地から
收益を挙げるという
考え方は、
農地改革の基本的な立場からいたしますれば、これは止めなければならない
考え方であろうかと存ずるのであります。即ち、
土地を持
つていても不利であるという点については、これは十分政府も考慮すべきでありまするが、ただ併しながら、小作地から
利潤を得るという形が出て参りまするならば、これはやはり将来におきましては、現在の
農家経済が段々窮屈になりますれば、或いは一部には、
土地の兼併というような問題も起ろうかと思うのであります。現祖では、
土地の兼併というものは
一般にはなく、北海道或いは九州の一部というような地方に見られる傾向のようでありまするが、併しながら現在では、これは午前中にもお話があ
つたように、耕作
農民の手から非
農民の飯米確保のため、或いはその他の非
農民的なものに多く流れて行くという傾向は、我々の灰関するところでも多いのでありまするから、そういう点から、本当に耕作できる
農民の手から非
生産的な人達の手に耕地が渡るという危険を十分蔵しておると思うのであります。こういう点から申しましても、私共は小作地につきましては、小作地から
收益を挙げるのでないということを
原則的な立場としてお考え頂きたいのであります。
更に私共の考えておるところは、要するに
農地改革の成果を確保するというならば、
土地の効率的な利用ということが
前提になるべきでありまして、
従つて、この点から行きますれば、徒らに私は自由売買の制度を開きまして、そうして
土地の異動が自由になるということは、むしろ危険であるというふうに感ぜられるのであります。と申しまするのは、いろいろな数字的な
基礎は、今直ちに申上げられませんが、要するに
土地の
所有権が移動せなくも、その村なり部落なりにおいて、
土地の余
つた人、労力の余
つた人に対しましては、
農地委員会の
土地管理権が強化されて参りまするならば、耕作能力のある人にこれを一時的に貸付けるという制度も採り得ると考えられるのであります。現在の
農地委員会でも、運行上では必ずしもできない線ではないと思うのでありまして、こういう形で
土地の移動というものを自由にすれば、金のある者がどんどん
買つてしま
つて、これは結局におきまして、
土地を効率的に利用するという点が可なり出て来ると思うのであります。
土地はやはり最も有効に使い得る
農民、真の耕作
農民の手に確保するという線でこの改革を進めて頂きたいと附帶して申上げたいのであります。
時間の点もあろうかと存じまするので、簡單にそれだけ申上げて私の証言を終ります。