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説明員(田中三男君) それでは出入国管理庁設置の経緯、それからその管理庁の機構の概要、並びにその運営の概況につきまして
簡單に御
説明をさせて頂きます。
先ず出入国管理庁設置の経緯でございますが、実は昨年の六月二十二日に総司令部の覚書を以ちまして、昨年の十一月一日以降、進駐軍
要員を除いたすべての外国人の出入国に関して日本
政府においてその監督取締を行うように、こういう覚書が
参つたのでありますが、これに基きまして昨年の八月十日に政令を以ちまして外務省に入国管理部の設置がきま
つたのであります。このときの覚書によりますると、各地の税関に入国監理官というものを置いて、そうして外国人の日本への出入りを監督するということ、並びに中央にその記録を保存するセントラル・ロケー・フアイルスというものを設けろということが明示してあるのでありますが、これに基きまして入国管理部ではこの二つの点の事務と、更に外国人の出入国に関しまする
関係機関の事務の連絡調整を行うという目的で、入国管理部が設置せられたのであります。ところが昨年の十一月三日に、そこにお手許に配りました指令二〇五五号というのが出たのであります。これによりますと今までの外国人の正規の出入国のみならず、不法入国者についての取締を行うために日本側において司令部の係官と話合いをするようにと、こういう指令が出たのであります。更に引続きまして今年の二月の二十日に至りまして税関出入国及び検疫に関する新しい覚書が出たのであります。これによりますると税関出入国及び検疫に関する現行手続を再検討して、そうして
一般に認められている国際慣行に一致するようた組織を作り、そういう必要な
措置をとるようにと、こういう覚書が出たのであります。これに基きまして
関係省におきまして再三協議を重ね、又その間司令部の係官とも始終打合せを継けたのでありまするが、その結果こういう外国人の出入国、それは正規並びに不正規を通じてでありまするが、これを統括的に行う機関の設置につきまして、どういう役所にこれを設けるのがいいか、又どういうふうにするのがいいかということでいろいろ協議が続けられたのであります。そういう問題につきまして行政管理庁が中心にな
つて案を進めて行かれたのでありますが、その結果本年の八月二十九日にお手許にありまする出入国管理機関設置に関する閣議決定が行われたのであります。これによりまして従来外務省の入国管理部で行な
つておりました出入国に関する記録の整理、並びに入国監理官によ
つて監督をして参りました外国人の出入国の外に、従来法務府で行な
つておりました外国人の登録に関する事務、及び警察、海上保安庁等において行な
つておりました不法入国者の逮捕、護送等、及び九州の佐世保の援護庁にありました不法入国者の收容所の維持運営、これらの事務を一括して事務を行う新しい出入国管理庁というものを、外務省の外局として設置する、こういう方針が決定されたわけでございます。これに引続きまして本年の九月十五日に又新しい覚書が司令部から出たのでありますが、これによりますると、この外国人の出入国に関して包括的に、統一的に行う役所を早急に設置するように、こういう趣旨の覚書でございまするが、これによりますると指令が出ましてから十五日以内に所要の計画を立てて、そうして司令部に提出するように、こういう期限付の覚書なのでございます。そこで
先ほど申しました閣議決定によりまして、外務省におきましては大急ぎで準備を進めておる矢先、こういう二週間以内に整備をするようにという覚書が出ましたので、更に準備を早めまして、今年の九月三十日に
出入国管理庁設置令を出すような準備を進めて
参つたのであります。今申上げましたように非常に時間がなか
つたので、当時国会が開かれておらなか
つた等の経緯から、こういうポツダム政令によ
つて設置令を発布することに
なつたわけでございます。
次にこの出入国管理庁の設置令の内容について概要御
説明をいたします。この出入国管理庁の設置の任務、並びに権限は、設置令の第三條及び第四條に謳
つてあるのでございまするが、第一番には外国人の出入国の管理であり、第二番目は外国人の登録であり、第三番目は不法入国者の退去の強制でございます。この不法入国者の退去の強制は、
一般の外国人の外に、北緯三十度以南の南西諸島に籍を有する者、これはいわゆる沖縄人でございまするが、この沖縄人の不法入国者の退去強制も行うことにな
つておるのでございます。この三つが管理庁の主なる任務と権限でございます。
機構の概要につきましては本庁に、そこに表を用意して差上げたのでございまするが、本庁に官房と第一部に第一課、第二課、第二部に第一課、第二課という二部五課の機構にな
つておるのであります。官房につきましては
説明を省きます。第一部におきましては、不法入国者の退去強制に関する事務を行うことを主たる任務としておるのであります。第二部におきましては、正規の出入国者の管理に関する事務を行うことを主たる任務といたしております。これには登録も含んでおるわけであります。
更に
本店以外の機構といたしまして不法入国者の退去強制を行うものの收容所といたしまして、長崎県の針尾に收容所を設け維持管理運営をいたしております。更にこの不法入国者の逮捕護送等を行うために各地に地方の出張所を設けることにいたしました。現在は
東京、神戸、下関、福岡及び松江の五ケ所に出張所を設けております。特に出入国管理庁の特別の職員といたしまして、
先ほど来御
説明いたしました出入国監理官というものを、これは各地の税関に配属しておるわけでありますが、この出入国監理官は、身分は大蔵省の職員たるの身分を持
つておりますが、その職務に関しましては出入国管理庁が監督いたしておるわけでございます。それは出入国に関しまして旅券等に証印をしたり、又外国人が日本から出て行く場合にその
許可を與えたりする役目を行な
つておるのであります。第二に、入国審査官というものを各地の出張所に配属することにいたしておるのであります。これは従来は都道府県知事が退去強制令書というものを発付いたしてお
つたのでありますが、新しいこの管理庁の機構では各出張所に配属いたしました入国審査官が本庁の
長官の訓令に基いて退去強制令書の発付をすることにな
つております。第三に入国警備官を持
つておるのであります。入国警備官は不法入国者の取締につきまして司法警察職員としての職務を行うことにな
つており、
従つて武器の携帶使用も許されることにな
つておるのであります。この入国警備官の職務は退去強制令書の執行、即ち不法入国者の逮捕なり、取締なり護送の任務であります。更に入国者收容所の警備に当るというのがその任務でございまして、この入国警備官は入国者收容所並びに地方出張所にそれぞれ配属することにな
つておるのであります。
以上が出入国管理庁の機構の概要でございまするが、
最後にこの出入国管理庁の機能の概要を御
説明をしたいのであります。正規の出入国者の管理につきましては
先ほど申上げましたように管理庁の第二部でこれを管轄いたすことにな
つているのであります。先ず第二部のうち第一課では、
先ほど申上げました各税関に配属しておりまする入国監理官を通じまして外国人の出入国を監督いたしておるわけであります。尚本庁におきましてはこれらの外国人の記録を全部保管いたしており、又外国人の出入国の異動に際しましては、一々この記録の整理を行な
つておるわけであります。第二部の二課におきましては、在日外国人の登録の事務を掌
つているのでありますが、これは全国の都道府県知事及び町村長に
依頼いたしまして、外国人の登録の報告をして頂きまして、それぞれカードを整理をいたしておるわけであります。これが正規の外国人の出入国に関する管理の事務でございますが、不正規の出入国者に対しまする取締につきましては、先ず第一部の第一課におきましては各地の出張所並びに入国者收容所の管理設営並びにこれらに配属いたしまする警備官の訓練その他の仕事をやることにな
つております。一部の第二課におきましては不法入国者に対しまする退去強制令書の発付が主たる任務でございますが、従来の密入国者の取締の機構と、この新しい出入国管理庁によりまする不法入国者の取締のほうの概況は、お手許に差上げまして表によ
つて御覧を願いたいのであります。従来の密入国者の取締機構の
状況は、小さいほうの九月二十二日付の入国管理部で作りました表を御覧願いたいのであります。その概要を御
説明いたしますると、不法入国者が上陸地で検挙される場合と、上陸地を離れて
国内の他の地域で検挙される場合とあり得るわけなんでありまするが、上陸地におきましては、従来は国警及び自治警又は海上保安庁でこれを検挙してお
つたわけであります。海上保安庁で検挙した場合には、直ちにこれを国警及び自治警に引継いでいたわけであります。
国内潜入の場合には、国警及び自治警がこれを検挙いたしまして、これらの不法入国者は検察庁に送致せられるのであります。検察庁におきまして、これらの者が不法入国者であるということが分りました場合には、知事にその事惜を申しまして、これこれの者が逮捕されたが、これは不法入国と思うから退去令書を発付されたいということを知事に申請したわけであります。知事はこれに基きまして法務総裁に訓令を仰ぎまして、法務総裁の訓令があ
つた場合に知事の名前で以て退去強制令書が発付せられたわけであります。この退去強制令書が出ました場合に国警又は自治警がこの令書を以ちまして不法入国者を長崎県針尾の收容所に護送をいたしまして、この收容所で或る
程度人数がまとまりました場合に船を用意いたしまして、これをぞそれぞれの本国に送還いたしたわけであります。これが従来の不法入国者の取締の機構の概要でございまするが、出入国管理庁になりましてからこの趣きはやや変
つて参
つておるのであります。これは十一月十三日に私共のほうで用意しました大きいほうの表を御覧願いたいと思うのでありますが、この新しい機構によりますると、不法入国者の場合には従来
通り海上保安庁及び国警、自治警が検挙いたしました場合はこれらの身柄を一応出入国管理庁の出張所又は收容所にある入国警備官に引継ぐということにな
つておるのであります。併しながら入国警備官もみずから不法入国者を検挙することができることは当然でございます。更に登録令の手続違反者があるわけでありますが、これは專ら国警及び自治警において検挙してこれを検察庁に送致する。こういう建前にな
つておるわけであります。これらの不法入国者を入国警備官に引継ぎました場合は入国審査官の審査を受けまして、入国審査官が取調の結果明らかに不法入国者であると認めた場合は退去強制令書の発付を出入国管理庁
長官に請訓することができることにな
つております。この請訓に対しまして出入国管理庁
長官が訓令を出しました場合、この退去強制令書を以ちまして入国警備官は身柄を入国者收容所に護送する。この收容所に一定の人数がまとまりました場合に、出入国管理庁におきましては、運輸省方面と連絡をとりまして配船の準備をし、そうしてこれを本国に送還することにな
つておるのであります。この海上におきまする護送は、海上保安庁でや
つて頂くことにな
つておるわけであります。これが新しい出入国管理庁によります不法入国者の退去強制の概要でございます。
最後に申上げますのは、実はこの新しい退去強制はまだ出入国管理庁では実施をいたしておらないのでありまして、まだこの設置早々でありまして準備が整
つておらないために目下その準備をいたしておるのであります。この政令の設置以後、附則の二に謳
つてございます
通りこうした事務はこの十一月三十日までは従前の例により引続いて警察においてや
つて頂くというふうにな
つておるのでありますが、今当管理庁におきましては入国警備官の募集を漸く終りまして、明日から約一ケ月の訓練を実施することにな
つておるのであります。
従つて実はここに十一月三十日と書いてあるのでありますが、実際の執務は十二月中旬以降になると思うのであります。又退去強制令書の発付の手続につきましてもまだ準備が整
つておりませんので、これはやはりその附則の三に規定してあるのでございまするが、十二月三十一日までの間で政令で定める日までは、暫定的に都道府県知事が、外務大臣の訓令に基いて強制令書を発付いたしております。これも本年の終りまでに管理庁のほうで引継ぐことにな
つておるわけであります。
以上
簡單でございまするが、御
説明を終ります。