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古池信三君 第四班の
視察の
報告を私から代表いたしまして申上げたいと思います。
第四班中国及び四国
地方は九月十六日から九月二十二日まで私と江田
委員と両名が参
つたのであります。先ず最初に神野瀬
水力発電所の
視察を始めました。更に広島市、松山市及び岡山市におきましてそれぞれ
座談会を開催いたしたのであります。又大品
需用家の多い特殊な
電力事情にあります四国の新居浜
地方の工場を
視察し、又所在の工場の
関係者からも話を聴いて帰
つて参
つたような次第であります。以下順を逐いまして概況を簡単に申述べます。
神野瀬
水力発電所は昨年の末に完成いたしたものでありまして、私共が参りましたときには丁度数目来の雨続きのためにダムは満水いたしておりました。最大発
電力二万キロをややオーバーしておるような
状況でありました。中国
地方は御承知のように殆んど貯水池を持つ
発電所というものが稀なのでありまして、この神野瀬
発電所が新設されたことによ
つて常時
電力を確保し、
産業に及ぼす
影響は誠に大なるものであると認めて参
つたのであります。
日本発送電支店の話によりますと、広島県の立岩貯水池におきまして先般のキジや台風の際に、豪雨のため毎秒千立米余りの水が入
つたのでありますが、これを調節して毎秒七百立米余りにして放流したのでありますが、このために下流の広島
地方は洪水の危険から脱することができたと考えるということでございました。これを見ましても電源の
開発につきましては霊力の増強と共に洪水の調節、更に又灌漑用水の確保等河川の総合的
開発利用が必要であるということを痛切に感じたわけであります。
広島市におきます
座談会においては電源の
開発、
電気料金及び再
編成問題につきまして主として
需用者側の
意見を聴取いたしたのであります。この
座談会におきましては多数の
関係者が集まられまして誠に盛況でありました。
その前にちよつと中国
地方の最近の
電力需給状況について申上げて見ますると、八月におきましては、
水力が八千四百三十七万五千
キロワツト・アワー、
火力が六千四百三十三万九千
キロワツト・アワーでありまして、総需要量は億四千八百七十一万四千
キロワツト・アワーとな
つております。そのうち関西から受電した芳が二千八百三十三万一千二百
キロワツト・アワー、逆に関西に塗りました分が九十四万九千七百
キロワツト・アワー、更に九州から受けました
電力が五百五十一万一千五百
キロワツト・アワー、更に九州の方に対して送りました分が百二十七万二千
キロワツト・アワーいうとことにな
つておりまして、差引三千百六十二万一千
キロワツト・アワーの受電をいたしておるのであります。八月の自然流量による発
電力は平水の六五彦、九月の上旬は相当雨が降りましたので一四〇%という
状況にな
つております。八月は中国
地方におきましては最も水の濁れる渇水時期でありまするので、
電力の
事情は非常に窮屈にな
つております。
従つて今申上げましたように関西と九州と両方から多量の
電力の融通を受けて漸く需要
供給の均衡を保
つておるというようなわけであります。これは例年八月におきまする中国の
電力需給はかような
状態を繰返しておるように聞いて参
つたのであります。
電源の
開発につきましては中国
地方は工業立地
條件が比較的恵まれておるにもかかわらず、
電力が
不足しておりまするので速かに
開発をして欲しいという
要望が致して非常に強く聞かされたのであります。又
建設費につきましても本州の中央部からの
送電線の
建設、或いは
送電中のロス等を考えますれば必ずしも高いとは言えない
火力について見ますると山口県は宇部の安い石炭が豊富に出まするので、
火力発電所の
増設につきましても十分考慮をして貰いたいという
意味の
意見の発表がありました。更に山陰
地方の
需用者が出席しておられまして、その発言には山陰は冬期においても降雨量が平均しておるにもかかわらず冬期
料金が高いのは十分に納得が行かないところであるから、冬耕の
料金制度をやめて、特に大口
電力については特別の
料金制度を設けて貰いたいというような
意味の
意見が述べられたのであります。
電力の
割当方式につきましては、でき得る限り中央が
割当てるという方法を止めて、
地方の
産業の
実情に明るいところの
地方通産局で実施して貰うようにして欲しいという
意見が出ておりました。
次に再
編成の問題につきましては、中国
地方の
需用者としては
料金地域差の撤廃、
地域間融通の確保、
電源開発の
促進のこの三つの
條件が満たされるような再
編成であるならば、その
企業形態如何を問わず十分に時期と方法について慎重な考慮の上決めて貰いたいというような
意見が多くありました。又中には最もよい方策の考えられるまでは現状維持で行くのも一つの方法ではないかというような
意見も聞かれたのであります。又出席中の電産の組合の代表者からは
全国一社、それは公社の形態によ
つて運営されたいという
意見の主張がありました。広島通商
産業局管内の大口需要者百九工場について、第七
国会提出の
政府案に関する
意見を徴ざれた結果を見ますると、この再
編成法案並びに公益
事業法案について賛成が七工場六四%、修正すれば賛成であるという
意見が三十四工場三一・二%、反対六十八工場六二・三%という数字が出ておるのであります。その修正
要望をした主な点を見ますると、第一は
地域差を撤廃して
料金の
全国均一化を図
つて欲しい、第二は
料金の
地域差は上下おのおの一割以内に留めて調整金は国庫の
負担として貰いたいということ、第三は地帶融通の
計画を立ててこれを法律の中に明記して欲しいという問題であります。第四は
開発を強力に
促進するために、
日発及び
配電に属しない別個の
開発会社を設置されたいという
意見であります。第五は
公益事業委員会の
地方部局を設置して、その補助機関としては各府県に
電気審議会を設けるようにして欲しいという
意見、第六は
電気事業の独占権を排除して
需用家擁護の規定を法律の中に入れて欲しい、これらの修正
意見であります。更に又
政府案に対する反対の理由としましては、第一は
電力の融通及び
料金の
地域差の調整範囲が甚だ不明確である、第二は
地域差が増大して
産業の発展が甚だ不均衡不公平になる、第三は
電気事業の独占性が増大し、
従つてその弊害が大きくなる、第四は電源の
開発が困難となり、
電力の融通が現在よりも更にむずかしくなる、第五に分断の理由が不明確である、第六は
公益事業委員会の実際上の実行の
効果に大した期待が持てない、以上が反対の理由のようであります。
更に
座談会の外に我々は
日発の支店並びに
配電会社を訪問いたしまして、それぞれの立場から
意見を聴取いたしたのでありまするが、詳細は省略いたします。
次に四国に渡りまして松山市における
座談会について主なる事項を御
報告申上げますると、この
座談会も非常に多数出席者がありまして盛会でありました。先ず席上四国
電力復興会議の代表者から、四国の輿論は必ずしも一致しないが、
料金の
地域差が甚だしくならない
措置がとられ、更に電源の
開発が進捗せられるのであるならば分割は必ずしも否定しないという
意見が強く出ております。再
編成に当
つては
水力の賦課金は特殊
電力に対してはこれを安くし、水利使用許可は
公益事業委員会の権限に属せしめ、
事業者の土地使用、収用、樹木の伐採等については特権を認めるべきである、又
建設資金を融通するために
開発金庫のようなものを設けて新会社を援助する方法を講じて貰いたいというような
意見の開陳がありました。又
電力需用者協議会代表者からは、四国の後進性は
電力の
不足によるものであるから、電源の
開発を
促進し、
料金は現行のごとき不合理な
地域差料金並びに
割当制度の
矛盾を是正して、形態については独占の弊を排除するように十分考慮を拂われたいという
意味の
意見の開陳がありました。四国市会議長会議の議長からは豊富、低廉、良質の
電力を
供給し得るような再
編成の
早期実現を
要望する、その
企業形態については大体
政府案に賛成をするという
意味の発言がありました。高知県の代表者からは公営の
要望が強く、
電気事業の株式を県が保有しておる場合今後もこれを持続し保有し、無制限に保有し得るように考慮されたいという
意見がありました。又住友共同
電力からは、電源の
開発については住友としても熱心に研究しておることで、
日本発送電会社の存続が許されないとするならば、新しくできる会社と住友
電力と二社が存在して競争をした方が、独占の弊を防ぎサービスの向上も期待できて望ましいのではないかという
意見が述べられたのであります。
我々は翌日新居浜市に参りまして、日新化学、四国
機械別子鉱業並びに住友共同
電力の第二
火力発電所等を
視察いたしたのでありまするが、再
編成に
関連いたしまして最も問題の多い住友共同
電力の発電
設備譲り受け要求について、簡單に申述べたいと考えるのであります。住友共同
電力は、
電力国家管理に伴いまして、
日本発送電に強制出資をいたしたのであります。
水力発電所七万一千三百
キロワツトのうち四国における
電力関係諸般の事精も考慮の上佐賀、津賀伊豫川大橋の四ケ所合計四万一千三百
キロワツトに相当する
発電所の返還を
要望しておるのであります。これは四国の総発電
設備の約五分の一に当りますが、現に住友が使用しておるだけの
電力量以内であるから他には大きな
影響はなく、而も
電力会社が四国に二つできれば競争によ
つて能率が上り四国の
電気事業の発展を
促進するのではないかという
意見が、住友共電の
当局から述べられたのであります。これに対しまして反対の立場にある側からは、これらの四一の
発電所はそれぞれ調整能力も持ち、日々の変化に即した
需給の調整を行う上に重要な役割を占めておるものであるから、これを分割譲渡するとすれば渇水期の
火力発電の稼働率はいよいよ高くならざるを得ない、場合によ
つては制限も、予想される、又二社の競争は
事業の性質が異なるものであるから大した
意味はないという
意見が述べられたのであります。住友
関係の
電力消費量は四国全体の約三〇%に当り、これだけの特殊なる需要に対しては別途独立の
発電所を求めるのは一応理由の存するところと存じまするが、一般
供給電力に対してこれを圧迫しないということを
條件とするという
意見が一般に強いように窮われたのであります。
以上で四国を終りまして岡山に参りました。岡山の
座談会におきまする
意見を申上げますが、これは広島市におきまする
座談会の
意見と大体において同様であります。要するに
料金の
地域差を調整して現
産業が成立つように再
編成されることが最も望ましいことであるというように
意見は一致しておるようであります。その一つの例を申上げます。三井流船玉野製作所の代表者から詳細なる
資料が提出されたのでありまするが、そのうち
料金の改正以後の
産業に及ぼす
影響として次のような数字が示されたのであります。その数字を挙げて見ますると玉野製作所では、改正前は百三十五万
キロワツト・アワーを使用した場合に
水力ばかりの
料金で計算すれば九十万円
程度であ
つたものが、昨年来の
料金改正後には税込みで二百七十九万円と
なつた、
火力料金十万
キロワツト・アワーとし、残りを
水力料金で計算した場合を見ますると、三百五十四万円となるのであります。これを同量の
電力を使用して関東
地方で
水力一〇〇%で見ますると百六十四万円、関西の場合は二百二十万田、更に
火力十万
キロワツト・アワーを使うといたしまするならば、関東の場合は二百四十六万円、関西の場合が二百九十九万円ということでありまして、この両者を比較いたしまするならば、生産の原価に
影響するところは極めて甚大であるということがはうきりいたす。分断されて
料金の
地域差が大きく
なつた場合には当
地方における
企業は全く成り立たない。
割当についても最近の実績に即した
割当をして欲しい、保留分を残してこれによ
つて相当調整を図るべきであり、又再
編成に当
つては或る
程度の準備期間を置かれたい、その間に
需用者の方におきましても十分再
編成の受入態勢を整える必要があるというような
意見も聞かれたのであります。大体以上を以ちましてこの岡山の
座談会を最後として私共両名
視察を終えたのであります。甚だ簡単でありまするが、以上を以て御
報告といたします。