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参考人(
矢野一郎君)
お答えを申上げます。
只今新谷委員から極めて適切な御勧告を頂きました。
経営委員会の
経営方針はもつと早くこれを立てて、そうして必要があれば頻繁に開くように経営できないかどうかという
お話でございました。この点は
只今申上げました大体の
経営方針は、やはり当初から第一回の
委員会において大体その輪郭を現わしまして、今日までその
方針の
決定という
意味におきましては、割合に早くその
方向をきめました次第でございます。併しこれを実際の問題に移しますると、非常な複雑な
計算その他を要しますために、
事務当局に一々のことについて、これをその
方針を具体化するためにはどういう
変化が起るかというようなことについての
資料を愼重に作成させて、今日まで並行的に進んでおる次第でございます。従いましてその間
委員といたしましても、初めの間は
放送協会の
実情もわかりませんでしたが、だんだんにたくさんの
資料を始終送
つて貰いまして、
研究の結果ほぼ
内容もわか
つて参りましたために、
従つてそれと照合しての
意見もだんだんと現われて参りました。そんなことで今日までの四回の
経営委員会におきましては、
内容的には
相当活溌な
意見を
戰わせながら、大体の
方向は、
只今申上げました
方向に大した
変化はなくだんだん進んで参
つて来ております次第であります。今後はいよいよその具体的なものと
方針との睨合せでものをきめて行く段階にそろそろ近付きつつあるということが
実情でございますので、恐らくこの次の十一月の又下旬に予定いたしておりますその際には、そういうものが一応の段階に参りまして、
方針に睨合した具体的の
決定というものを考慮し
審議するという段階に到達するだろうと
考えております。大体その
方針で目下着々進めておる次第でございます。
それから
経費の面につきましては、放途
協会が
只今三十五円という
聽取料を聽取者から徴收いたしまして、それを以て経営の基礎といたしております。今後の
施設の
拡充若しくはその他
番組の
強化等、先ほど申上げましたような、どうしてもこれだけのことはしなければならんということを盛り込みますると、自然今まででも
経費的に無理をしておる面もあるのだし、又更に新しいことのために必要であるという面も起る、さような結果、更にどれだけの新しい資金を要するかという問題に当然ぶつかるものと
考えております。従いましてその点も、先ほど申上げましたように、順序といたしましてこの程度のことは織込む、こういう
方針で
強化するという、最小限度やらねばならんという
方針を示しまして、それの結果、どのくらいの費用がかかるかということを
只今折角
事務当局をして、各部門ごとに
計算をさしております。従いましてこの次の
会合には、事務局案としてはこれだけのものが要るという数字が出揃うことを期待しておる、それが或いは意外に厖大な数字になるかも存じませんが、その際における
経営委員会の
立場といたしましては、事務的には或いはそれだけのものが要るという、恐らく数字でございましようが、
只今新谷委員からの
お話の通り、これは
国民的な
立場から見ますると承大な問題でもございまするので、これを鵜呑みにしてそのまま提出するというようなことは決していたさんつもりでございます。飽くまで
国民的立場からどこまでこれを抑えるか、
従つて多少の値上げをしなければならんという場合には、それが絶対必要なものであ
つて、
国民としては値上げをされてもそれによ
つて得るものが大きい。むしろ
聽取料をたくさん拂
つてもそれだけの
改善が好ましいというものでなければならん、さような
意味からこれを
審議いたすつもりでございます。
それから次に
世間の噂としまして、
放送協会の
役員が非常にたくさんの報酬を従来受けておるのではないかという話でございますが、この話は私共もよく前に耳にいたしました次第でございます。今度
協会の中に入りまして早速各
委員ともその点について
事情を聽取いたしました次第でございます。
調査の結果は、
放送協会の
一般の給與というものが、私共
一般社会人から見まして決して惡いものではないということは確認いたしました。併しこれを公共の
機関、或いは官公吏に比較すれば、これは比較にならんほどよいと申上げて差支ないと思いますが、先ず私共が
一般の会社あたりを標準としてこれを比較しましたときに、大体上の部に属すると申して差支ない現況にございます。これは
役員のみならず従業員
一般を通じまして……。従いましてその賃金体制、或いは報酬体制といたしましては、役職員を通じてある段階をなしてだんだんにこう上まで来ております。その面から見ますれば、
役員の給與が特に多いということはない現況でございます。併しこれが今度公共企業体と
なつたという性格のために、これは公務員に準ずるものとして公務員並の給與に下げるべきであるという議論も或いは一部にはございましたが、実際問題といたしましては、
設立委員会においても従来の給與をこの際急激に減らすということは、一時機能を撹乱することでもあるし、又事業の性質上、これは特に
番組をよくする等の点におきましては、この
協会の外に、
放送する人と同時に
協会の職員がやはり同時に一体とな
つて一生懸命にやらないと、單に
放送者が非常な立派な芸術家であ
つてもうまく行かんという面もございまして、何と申しますか、非常に意気込みなり志気というもので左右される性格の
仕事であるということ等を
考えまして、この際公共企業体にな
つたのであるからして、その性格は十二分に
会長を通じて役職員に徹底さして頂くと同時に、今後大きな、又従来のような或いは昇給その他はできないものと覚悟して欲しい。併しこの際乘り移りの際に非常な削減をすることは、実際の運行上いかぬから
現状を以て止めようという
方針で、
設立委員会も今年度の
予算を組まれました。それで今度はいよいよ、
経営委員会は、
只今二十五年度は
設立委員会によ
つて組まれた
予算によ
つて運営をしておる次第でございますが、明年度はいよいよ新しい
経営委員会がこの
方針を盛り込んだ
予算を作るということに直面しております。而も先ほど来
お話のございましたように、決して従来のようなそのままの
放送形態では満足できないといたしますると、若し新しい資金を要するというような場合には、一番先にできるだけ人件費その他の面で
合理化をして
経費を節減して欲しい。それからたとえ資金を、新資金を要する、或いは結果において何がしかの
放送料金の値上げに立至るような場合におきましても、これによ
つて増加した資金が少しでも人件費のほうに流れるということは、絶対にこれは避けるという
方針を持
つております。尚でき得べくんば将来だんだんと皆さんには我慢をして頂きまして、社会的の比率の点において、或いは
現状よりももう少し外との釣合上下に持
つて行くことが好ましいのではないかというふうな御
意見もございます一面におきまして、率直に申しますと、この
仕事がなかなか派手な
仕事でございます。殊に
会長その他の事務執行
機関当局は、だんだん国際的にもいろいろの出入も起りますことでございますので、そう給與を特に窮屈にすることは却
つて協会の
運営に惡いのではないかという
意見も
経営委員の中にはございます。さりとて性格上、これを
世間が見て、社会通念から言
つて多過ぎるというものにしてはならない、先ず現在の
状況におきましては、大体において
会社等の給與に比較して、
放送協会は
一つの大きな会社と
考えてどうだというような
立場から見ますならば、従来の実績を減らさないという建前から、その数字で運行しておりまするが、そういう見方からいたしますれば、まあ非常に
世間で言われるほど多いという数字ではないという一応の見解に皆
委員の
意見が一致している次第でございます。
それから
放送債券につきましては、これを三十億円まで発効できるように
法律で規定されております。御
承知のように従来とも
放送協会の設備は、今日帳簿価格において約十億円ほどの
施設を持
つております。この
施設を大雑把に申上げますると、そのうち約八割は借入資金を以て賄
つております。あとの二割が二十五年間に蓄積をして参りました自己資金を以てできておるという
状況でございますが、これの帳簿上は十億ほどでございますが、これをいわゆる再評価いたしました場合にどのくらいのものがあるかというと、一応再評価の数字で当
つて見まして、約二十八億ほどの
相当額の
施設を持
つておるということにな
つております。この再評価の点も、これが
国民のものであるという
考えからいたしますと、
是非再評価を実行してその実態を数字に現わすことが望ましいと
考えますので、いずれこれはその通り実行いたしたいと
考えております。従来は各年度の剩余金を以ちまして少しずつ
施設の拡売をや
つております。昭和二十四年度の剩余金は、たしか五百万円余りでございますが、そういう金で以て
施設を
拡充して参りますと、五年も十年もかかるということになります。それが今回の
放送債券の途を開かれますると、それを先に何年か分のものをすぐに資金として得られるという便宜がございますが、それを今度逐年償還して参りまするから、
施設の
拡充においては非常に早く、これは一刻も早く
全国に施般を
拡充するという
意味においては非常に有難いことと存じておる次第でございます。差当り本年度としてどのくらいのものを計画するかという
お話でございますが、
只今昭和二十五年度内において約十億円の
放送債券を
発行したいと
考えておる次第でございます。これは
内容的に申しますると、新
放送協会は六月一日に
発足いたしました。
従つて当年度におきまして四月、五月の二ケ月間は、旧社団法人として
運営されたわけで、その間にやはり
施設の
拡充をや
つております。又そちらの際に手を着けましたもの、いわば旧
協会時代の
施設拡充の
予算が約三億五千万円、それから新
協会となりましてから本年度内にやろうというものは約六億五千万円、この両方を合せますると丁度十億になるわけでございます。これを
放送債券に置替えるということを
希望いたしておるわけでございます。この
施設の
拡充はすでに着々や
つておる面もございまして、これらはすべて借入金を以て賄
つております。
只今借入金が七億九千万円、約八億近い借入金を持
つておりますが、
放送債券が
発行できますれば、この借入金を償還いたしまして
放送債券に乘替えるという操作をとるわけでございます。この
債券の
発行は、十月頃にこれを
発行したいと当初
考えておりましたが、なかなか御
承知のような財政、金融の状態でございますために、起債市場のいろいろの
関係からなかなか十月にはむずかしい、
只今のところでは十一月に約二億円初めて
発行できる見込でございます。これにつきましては大蔵
当局、日銀
当局等とたびたび折衝を重ねました結果、非常な御好意を以ちまして、十一月に起債のうち二億円だけをそれでは枠の中に盛り込むという御了解を得て今進んでおります。この二億円は差当り
一般社債と同様、民間資金を以て
発行する形をと
つております。それで
二つぐらいの銀行が面倒を見てくれることにな
つておるのであります。大体の
発行條件、
発行の行き方等は、
一般一流会社の社債と同様な
方法でこの二億を
発行するということにな
つております。その
考え方は、やはり
放送債券というものは、
債券市場におきまして新しい銘柄でございまして、今までこれに類するような性格の
債券はございません。
従つて証券業者その他といたしましても、新銘柄という
意味で非常にこれを注目いたしております。更にこれが
発行されました際に、これが今後
一般市場でどれだけの市場性を持つかということも
相当大事なことでございますので、初めが肝腎でございますから、大事をとりましてそういう
方法をとりました。その結果、恐らくこれは各
方面で歓迎をされる
債券になりはしないか、殊に銀行筋あたりはだんだん公債の手持が減
つて参
つておりますために、それに次ぐものとしてこれを取
つてくれるような
方向に
是非行かせたいものと
考えております。
その間
預金部資金との
関連の問題でございますが、この
預金部資金を使
つたらいいではないかという議論は最初からでございました。
経営委員会においても最初からその問題が提出されました。御
承知の通り現在
預金部資金は、
相当な金がございますので、各
方面からこれを引出して
国民経済に寄與させたいという要望が殺到いたしておりますが、なかなか
運営の上において実際問題として困難しております。この際
放送債券のような性格のものであれば、或いは可能でないかということを專門家も
考えられるわけで、我々もそれを
考えますので、将来の問題もございますからして、
是非この途も開いて置きたいという
考えを持
つております。日銀
当局におしても、そういうやはりお勧めを受けておりますので、両方どちらでも出せるという性格を持たせることにいたしたいと
考えております。さようなことが大体御
質問に対する私の
お答えであります。