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相馬助治君 私は日本社会党を代表いたしまして、
只今議題に供せられておりまする衆議院より回付にかかる
政府原案並びにその
修正案に対して反対の討論をするものでございます。
岡野国務大臣の提案理由の説明書を見ますというと、
政府は前国会における
論議に鑑み、且つは
法案成立の遅延に伴い原案に若干の修正を施して云々と書いてございまするが、先に廃案と
なりました
法律案と、今般提案にかかる
法律案とを比較して見まするというと、そこにはこの
法律案に対する国民の輿論、公述人の公述、前議会の
論議などというものは殆んど取入れられておらない、無視されております。いわば廃案に
なつたものと
内容は殆んど変らないものを、我々の前に再び提案したということができるかと思うのであります。このことから見まするというと、
政府は、先に廃案と
なつた
法律案をより理想的なものに向
つての修正の
努力は全然試みられていなか
つたということを断じ得るかと思うのでございます。本
法案は由来先になされたシヤウプ勧告に基いて立案されたものでありまするが、
地方自治を確立する目的を以て、その
財政強化を図る意図を含むシヤウプ勧告の趣旨に基いて、
地方税を改正しなければならんということに対しましては本員は賛成でございまするが、この
地方税法案を見るに及んで、一点遡
つて指摘しなければならない点は、曾て
政府がシヤウプ使節団に出された
資料というものが極めて欠陥誤謬に満ちており、且つ日本の
地方財政の
現実を率直に説明するものではなか
つたということを指摘することができるかと思うのであります。今
西郷委員が討論された中にも、不満足な点が多々あるが、止むを得ず賛成すると申されておりまするが、この不幸、この悲劇、これはすべてここに発したと言い切
つても過言ではないと思うのでございます。次に提案理由の説明を見ますというと、
地方公共団体の現状は相次いで負荷せられる任務の重いのに比べて
財政力は微弱であり、ために
地方自治は
財政的に破綻に瀕していると書いてございまするが、その
通りであります。そうしてその救済策として当然ここに
地方税収入を拡充し、
地方税制の自主性を強化して
地方自治の根基を培うことを目途としてこの
法案を
提出したと謳
つてありまするが、恐らくは本
法案成立によりまして、反対の、
政府が狙いましたこととはまるで反対の悲しむべき
地方自治の混凡と
地方財政の破綻の状が我々には懸念されるのでございます。そこで本
法案の提案理由には、国民の
地方税負担の合理化及び均衡化の徹底を図る必要があると纏
つてありまするが、事実はこれ又反対でございます。これは後に具体例について触れて参りまするが、要するに本
法案につきましては、今次国会に
なりましても、我々
地方行政委員の机上に山と積まれた陳情書、請願書だけを見ましても、且つ又先の公述人の公聴会における公述によ
つて見ましても、本
法案が極めて不満足な矛盾に満ちた
内容を包蔵しているものであると我々は断ぜざるを得なか
つたのでございます。従いまして我々日本社会党は、この国民の輿論に応えるべく、衆議院より回付されました原案に対しまして、各派、共同提案を以ていささか
なりとも修正を加え、そうしてこれをよりよきものに作り上げんとするの
努力を連日に画
つて試み、敬虔な気持を以て谷汲にその賛同を求めたのでございまするが、結果は不幸にしてその同調を得るに至らなか
つたのでございます。従いまして我々は事ここに至りましたが放に、飽くまで勤労大衆の
負担軽減と
地方自治振興並びに
地方財政確立という基本線に沿いまして、次のようなる一つの修正
意見を持つに至
つたのでございます。従いまして私は日本社会党の修正
意見を加えつつ、
政府原案並びにその
修正案に対しまして反対の討論をなさんとするものでございます。
総括的に申しまして、本
法案によ
つては税
負担はいよいよ増大するでありましよう。
政府は減税されると印しております。
地方税で
増税し、国税において減税され、併せて半強制的な
寄付の軽減によ
つて国民は減税されるということを申しておりまするが、
事態はまるで反対の結果を生むことは、本
法案が明瞭にこれを指摘していると思うのであります。なぜならば、本
法案によりますれば、課税対象が極めてその捕捉に不明瞭なるものが多いのでございます。尚
地方自治の
現実に照しまして、例えば固定資産税の評価並びにその徴税一つを取上げて見ましても、実際にその評価は極めて困難でありますると共に、結局するところ、実際は予定額を上廻
つて徴税される危険性があるのであります。このことは
政府みずからが本
法案の提案の中にこれを物語
つていることは、すでに我々の知るところでございます。特に衆議院において成立いたしましたあの案を見まするというと、
附加価値税実施を二ヶ年間延期して、事業税並びに特別所得税を取るというふうにな
つておりまするが、これはいよいよ大衆収奪の形を露呈したものであり、中小企業者に対してより大なる圧迫を加えるものでございますると共に、今までの
政府の極端なるデフレ政策によりまして、一部互大資本家は別といたしまして、各階暦、とも甚だしい収入減とな
つていることは我々のすでに知るところでございます。特に本
法案において農林事業に対しては、資産税を免除するというような手心も加えられてはおりまするけれども、ひとり農村だけを例にとりましても、現在の極端な現金收入の段階におきましては、総体的に本
法案は
増税を
意味するものであります。而してこの国民所得の減少、牧縮と本
法案と対象するとき、国民の
負担いよいよ増大し、実質上甚だしい重税となるであろうということが我々には思われるものでございまして、これが私共の反対の一つの原因でございます。
次に本
法案によ
つて税
負担の公平を試み、均衡化を行うとありますが、事実はまるつ切り反対な結果を生むでありましよう。総体的に本
法案は、大所得者よりも、小所得者に多くの税金をかけて来るように相成ると思うのであります。いわゆる弱い者いじめの税制というのはこういうものを申すと思うのであります。上の方が軽くて、下の方が重い、軍艦税金とはかかる税率を持つところの税法を指すのであると言わざるを得ないと思うのでございます。これが反対の第二の原因でございます。第三には、本
法案の成立によ
つて、先程触れましたように、衆議院の修正によ
つて尚一層中小企業への圧迫となるであろうと思われますので反対するものでございます。
次に、最も我々が本
法案の成立に連関して関心なきを得ないのは
教育財政の問題でございます。御
承知のように日本が文化国家として再建せられまするためには、我々は次の時代を背負う子供たちの
教育にはあらゆる犠牲を拂
つてでもその
努力を傾倒すべきことは今更論を待ちません。然るに拘わらずこ
法案の成立によりまして、
義務教育費すベてが
地方財政の下に隷属せしめられるのでございます。皆さんもすでに御記憶であろうと思いまするが、昭和六、七年頃までの、あの日本の
教育界の
現実一小学校、中学校の教員給與というものが、貧弱なる、脆弱なる
地方財政の下に賄われておりましたがために、俸給不拂いという現象を初めとして、実に悲しむべき幾つかの事例のあ
つた通りであります。そういう観点からこの
教育財政が、
地方財政の下に必然的に隷属せしめられることを
意味する本
法案に対して私は少くとも敗戰国民の責任において反対せざるを得ないものでございます。次に
寄付金の問題でありまするが、
政府はシヤウプ勧告の趣旨に
従つて、掛付金を減らして、結局するところ国民
負担の均衡を図ると申しておりまするが、強制
寄付であるとか、或いは
任意寄付というものは、その区別極めてこれはむずかしいものであることは今更論を待ちません。従いましてこういうふうな
法律案の成立によりまして、
政府の意図するところとは反対にこの
寄付金というものが、国においても
地方においても次々に形を変えていわゆるみずから進んでなすところの
任意寄付であるという美名の下に行われることは、火を見るより明らかであろうと思うのであります。これに対しては甚だ消極的な立場から法的
措置を試みておりまするが、積極的な法的
措置を行わない限り、これは極めて問題であろうと思うのであります。
総括的にはそのようでありまするが、私は以下、誠に長くな
つて恐縮でありまするが、日本社会党が意図しましたところの修正
意見を加味して各税目について一言簡単に触れて参りたいと思います。先ず都道府県普通税の
附加価値税の問題でありまするが、この
附加価値税は日本の
現実並びに税制の理論的立場よりも我々の首肯し得ないものでございます。
従つて我が党として特に、その廃止を先般来強力に
要望して参りましたが、今日においてもその見解は変
つておりません。この
附加価値税の実施が停止に
なりましてニヶ年間事業税及び特別所得税が行われるのでありまするが、このことについて反対の
意思は先程申上げましたが、これが若しも成立して取られるならば、我が党としては免税点を基礎控除に改めて、その額を四万円とする、事業税の非課税
範囲内に農業協同組合、生活協同組合及び連合会、中小企業等協同組合及び公益性を持つ新聞事業、こういうものを加えることを主張するものであります。その税率におきましても、普通法人税におきましては、
政府案によりますれば百分の十二でありまするが、これを百分の十に、特別法人税におきましては百分の七に、個人におきましては、第一種事業は百分の十、第二種は百分の七と主張するものでございます。特別所得税につきましても、第一種業務に関しましては百分の五・三、第二種業務に関しましては百分の七、これを要求するものでございます。次に市町村民税におきましては、現在の賦課方法によりますると、どうしても勤労階級に重くな
つて参りまする故に、個人に対しましては均等割、資産割、所得割、法人に対しましては均等割、資産割、資本金割を加えまして、個人
負担を軽くするような操作を要求するものであります。個人に対する均等割におきましても、
政府原案と異
なりまして、我々といたしましては、人口五十万以上の市においては四百円、五十万未満の都市におきましては三百円、前二号以外の市町村においては二百円、これを提案し、同時に同一世帯内の稼働人員に対する均等割は逓減制を主張しますると共に、農業をただ一つの收入源とする者に対しましては、その世帶にのみ課税せよと主張し、同時に非課税
範囲の中には、失業者、次に六十歳以上の勤労による生計者であ
つて、前年の所得十万円未満のものを含み、次に農業協同組合、消費組合、中小企業等協同組合、漁業協同組合、水産加工協同組合、それらの連合会、これらのものをこの中へ加えんことを要求するものでありますと共に、税率は所得額の百分の九を我々は主張するものであります。従いましてこの減らす分は、先程来申しまする
通りに、法人税により
負担を重してこれを賄えと主張するものでございます。固定資産税につきましては、農地以外の土地及び家屋については、
政府原案によりますれば九百倍でありまするが、五百倍を我々は至当といたします。自作農創設特別
措置法第六條に
規定する価格の一二・五%の調整係数に課するものといたしますると共に、この倍数は昭和二十五年二月一日以降においては、農地の法定価格が引上げられたときは、これに応じて引下げる
措置を講ずることを主張するものでございます。その他この問題につきましては、固定資産税の問題というものは極めて大きな市町村の財源でございまするが、これを我々は政令の定めるところの積雪、寒冷地帯及び平均降雨量を常に越える地帯においては、農地以外の土地家屋は賃貸価格の四百倍、農地については調整係数の十倍これを要求するものでありますると共に、非課税の
範囲につきましては先程来ずつと申しましたような協同組合にかかる資産及び農業用償却資産、遊休施設、未稼働資産、それから隧道、小型漁船、学術用並びに試験用、
研究用の諸施設及び海運業、
地方鉄道軌道業、発電事業、ガス事業、この事業の固定資産の評価に関しまして、
地方財政委員会の定めるところによ
つて、一定率の減額をすることができるという法的
措置を加える必要を認めるものでございます。免税点は、原案によりますれば三万円でございまするが、これは五万円を妥当といたします。且つ家賃、地代の転嫁を防止するための法的
措置も必要であろうと存じます。特に私はこの固定資産税に対して声を大にして述べたいことは、第三十五條の問題でございます。私は、我が日本社会党は、この
條項の全面的削除を要求します。何故ならば一・六というのは、本
年度の
標準税率でなくて一つのこれは仮定税率とな
つておりまするからして、市町村のやり方によ
つてはこれは取り過ぎる危険がある、恐らくこれは取り過ぎるでありましよう。
政府も又それを予定しまするが故に、かかる條文を挿入しておりまするか、このことにつきましては当然これを取り過ぎたらば返すか、税金を余計取られたものは返して貰う権利があります。返してやるか或いはこれを来年に廻す
措置を講ずべきであります。而も第三項においては、本
年度だけではありまするが、
財政委員会において税率を変えて、これを国会並びに
政府に報告すればよいと申しております。丁度これが昭和二十六年一月であります。折から通常国会も開かれておるときであります。従いましてこれは当然国会の
審議権を尊重するという立場からもおかしい
條項でありまするが故に、以上二つの理由によ
つて、私は第三百五十條を全面的に削除せよと主張するものでございます。遊興飲食税につきましては、勿論常識的に言う遊興というものに関する奢侈的な税金として、これを十分
考えなければならんことを主張するものであります。電気ガス税につきましては、電気ガス税は、その使用量を課税
標準として課税することを要求します。
政府原案は料金を課税
標準といたしておりますが、この細長い日本の国土は北の端から南の端まで電気料金の
標準率というものは適当でないという点から
考えましても、当然これは使用量を課税
標準とすべきであろうと存じます。次に非課税につきましては、電気ガスを使用するということでなくて、例えばセメント工業のごとき、或いは電気自動車施設規則による電気自動車充電の事業のごとき電気であるとかガスであるとかいうものを使用するというだけでたくして、一つの生産の原料とし、資材するようなこういう事業はおしなべてこれを非課税とすべきであろうと要求するものであります。特に農業用電士に課税してはならないと主張いたします。灌漑或いは排水或いは脱穀調製、これらの電気使用量というものは、不思議なことに日本の現状においては米価
決定の中にこれが勘案されておりません。この一つを見ても
政府は農村の振興の面からこういう使用料は軽減するか乃至は排除する
措置を講じてこそ当然であり、これに向
つて課税するというがごときことは、誠に以て農村侮辱であると言わざるを得ないと思うのであります。入場税につきましては、国及び公共団体の営む動物園、図書館、博物館及び展覧会を非課税とすると共に、その税率は現存百分の百でありますが、これは五十とせよと主張いたします。その外の税種につきましては、電話、金庫余裕住宅、使用人税は存続せよと主張いたします。電話税を課するということにつきましては、相当問題もあろうと思いまするけれども、我々といたしましても、ただ單にこの税金も取
つてはならない、あの税金も取
つてはならない、これも安くしろ、あれも安くしろというがごときことは言うベからざることであ
つて、日本の
現実から推しまして、我々は以上申した税というものは存続せよと主張すると同時に、年額百億円を超えておりまする不動産所得税は五十万円を免税点といたしまして、今後もこれを存続せよと主張いたします。そうして半面自転車税、荷車税、接客人税、これは廃止せよと主張いたします。次に酒の消費税、これは
地方税に廻せと私は主張いたします。御
承知のように酒の消費税というのは昨
年度五十億あ
つた筈であります。これを今度は国で以てその財源を取上げておる。そうして酒でも安くしてそうしてふんだんに飲ましてやろうというなら格別のこと、酒の値段はそのままにして、そうして酒の消費税だけを国で取上げておるというこの形に反対でありまするが故に、これを
地方税に戻せと主張するものであります。
以上において各税種目についての討論を終るのでありまするが、次に
地方財政平衡交付金並びに
地方財政委員会の問題に連関いたしまして、この四月から七月の空白及び酒税による
地方税の減収分は是非ともこれは
平衡交付金をより増額して賄わなければならない。特に先程述べましたように
教育財政は、後程これは特別に立法的
措置が行なわれなければならないと要求いたしますが、差当りこの
平衡交付金の増額によ
つてこれは今日我々は何とかアンバランスの生じないような方策を講ずべきであろうと要求するものでございます。
尚先程酒の消費税の問題につきまして、全部国で取上げたと私は討論いたしましたが、国税の
附加価値税として五%だけ、雀の涙程だけ
地方税に廻
つておりますから、私はこれは
全額地方税に廻せと……討論を間違えました。これを元の形に戻せと、このように言い直して置きます。
次に
地方財政委員会につきましては、労、農、中小企業代表者を参画せしめまして、その機構並びに運営の民主化を図るような法的
措置が必要であろうと思います。
最後に罰則の問題でありますが、税務職員が徴税に関して不当な行為を行
なつた場合には、これを厳重に処罰する
規定が必要であります。なぜならば税金を取られる側は非常に苛酷な懲罰を受けております。御
承知のように自転車の税金は二百円でありまするが、これを不申告の場合には過料として二万円取ると
規定がしてあります。このように取られる方には酷な罰則がある。取る方に対しましても当然これに見合
つたところの処罰
規定が必要であると主張いたすものであります。課税
決定につきましては同業組合の関與を認め、これを法的には税金の民主化のために税務協議会というようなものを作り、労、農、中小企業代表者を加えてこれを民主化して、これに
決定権を或る
程度與えるという
措置が必要であろうと思うのであります。総じて罰則に関しましては、この取られる側についての余りにも苛酷な取締というものは、これを緩和しなければならんと主張するものであります。
以上要するに各税目につきまして我が日本社会党の修正
意見を加えつつ、討論を行な
つたのでありますが、要するにこの原案並びに
修正案は、その提案理由に相反しまして極めて矛盾に富んだものであり、現在の日本の
地方自治に適合しない結果を生ずる危険性があると
考えますが故に、私はここに日本社会党を代表いたしまして断乎として反対の
意思を表明するものでございます。