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説明員(田中榮一君)
只今齋藤国警
長官から大体
お話がありましたので私から重ねて申上げる必要もないと思うのでありますが、今回のレッド・パージは今年の七月二十一日に中央気象台で先ず皮切りをいたしました。その後或いは電産、映画
関係、交通
関係及び最近は農林省及び通産省がレッド・パージをや
つておるのでありますが、最利の間は非常にレッド・パージも気勢が上りませんでまあむしろ会社側、工場側の方が押し気味で進んでお
つたのでありますが、十一月に入りまして急にいわゆる反抗がものすごくな
つて参つたのであります。殊にこの
東京都下の大田区下丸子の東日本重工業
東京製作所における紛争は、外郭団体が多数参加いたしまして気勢を上げまして殆んど工場等を占拠するというような
状況が起りまして、その後更に蒲田区糀谷にありまする電業社のレッド・パージの際にも、この東日本重工業
東京製作所のレッド・パージされた連中及びその他の外郭団体がこれに参加いたしまして大きな鉄塊、鉄板、或いはいろいろな工作機械の器具、それからシャベル等を
警察官に対しまして投下いたしました。丁度
警察官と労働者との距離が僅か六尺の路地の中でその鉄塊、鉄板を投げつけられまして、まさに二人程飛込んだところがもう退くに退かれず出るに出られないというような
状況になりまして、そのままであ
つたならばその
警察官はそうしたものに当
つて殺されてしまわなくちやならんというような險惡な
状況になりましたので、止むを得ず
警察官としましては威嚇発発砲いたしまして漸く気勢をそいでその隙に路地を脱
出して身を以て逃れたというような、極めて険惡な様相を呈し
つてお
つたのであります。
このレッド・パージの今までの
関係が、共産党といたしましては電算、日通の実施頃までは党
本部といたしましてもこれに対する指導方針が確としておりませんので、極めて消極的でありましたので、当初はこれを各單産に任せて特別の指示を行わなか
つたのでありますが、その後若しそのままの
状態でおいたならば共産党陣営の後退を
意味する、やがてこれが越年鬪争に非常に影響するというような
関係からいたしまして、十月の末項からこの際レッド・パージに対する反發を更に
一つ指導するというような
関係から、相当暴力行為を行使するというようなことの指令があ
つたようであります。従いまして十月末項から本鬪争を急速に盛り上げて
参つたのであります。この鬪争を盛り上げた結果、十一月になりまして各
地方の工場代表者会議というものを
組織して、これによ
つて鬪争方針を決めるということになりまして例えば
東京都下におきましてはこれを全都工代会議(全都工場代表者会議)の名称で十一月十一日からこれらの会議を各所で随時行な
つたのでありますが、今まで大体四回程行な
つております。
特に注意しなければなりませんことは、これらのレッド・パージの鬪争におきまして、九月頃まで職安鬪争におきまして日雇労働者が職よこせ運動で職業安定所に押しかけてお
つた連中がおさま
つたというのは、この連中が今度はレッド・パージの方に廻りましてそうしていわゆる專門的に流して歩くことに
なつたわけであります。
それから早大、東大の全学連の尖鋭分子、こうしたものが又学校騒擾において一敗地にまみれた
関係上、又最近の学校のパージ等も拍車をかけたのでありますが、これらの連中が参加し又旧朝鮮連盟の左翼分子が合同いたしまして、そうして各工場を專門的に指導し流して歩くというようなことにな
つたのであります。その結果特に著しいことといたしましては、
東京の全都工代会議に際しまして議長に
東京土建王子職安の
委員長をや
つておりました富田彦市という者が
なつたわけであります。従来この日雇労働者というものは比較的にこれら鬪争分子の中からは軽く扱われてお
つたのでありますが、更に今回の全都工代会議におきましてはこの
東京土建王子職安
委員長の富田が議長にな
つて今牛耳
つておるというようなことは、誠に面白く又注目すべき現象であります。それから全都工代会議は今度のレッド・パージ並びに
地方税鬪争を越年鬪争に持ち込むということを
只今いろいろと協議をいたしております。レッド・パージの鬪争と
地方税鬪争とを絡み合せてこの越年鬪争に持ち込むということが今度の鬪争方針の中心にな
つております。そして
東京地区といたしましては東日本電工業、石川島造船所、府中の東芝車輛工場、元相模造兵廠、この四つの工場を鬪争の拠点として決定いたしております。
それから特に
只今お話がありました京浜地区といたしつましてはその下部に暴圧紛砕京浜共同鬪争会議というものを
組織いたしまして、十一月七日が丁度ロシア革命記念日にな
つておりますので一大ゼネストを企図する等の動きを示してお
つたのでありますが、別に十月二十九日に追放反抗鬪争特別行動隊というものの編成をいたしておるのであります。これは共産党から特に指令が出ておりまして、今回のレッド・パージによ
つて罷免された連中、そういう相当尖鋭分子を中心にいたしまして去る十月二十三日に関東
地方の労組細胞代表者会議を招集いたしまして、この会議の結果十月二十九日付で
組織指令を発しておるのであります。この名称が追放反抗鬪争特別行動像、これが今後恐らく越年鬪争における鬪争の中心分子、指導分子として相当指導力を獲得するのではないかと
考えております。この追放反抗鬪争特別行動隊というものは、大体追放された共産党の労働者、党員をも
つて組織されております。例えば関東
地方では約三百名、東海五十名、北海道三十四名、これは非常な尖鋭分子でありまして、特に
本部の中には例えば鈴木市藏、木村三郎、鈴木勝夫ら十数名の者がこの指導面を担当いたしております。鬪争の拠点といたしましては大体において
東京、横浜、川崎、名古屋、神戸、大阪、広島、福岡、戸畑、八幡とい
つたような労働
都市を中心としてや
つている。それから全官公、特に国鉄に重点を置いて働きつかけている。かようなことをいたしておりまして今後追放反抗鬪争特別行動像というものが先程齋藤君から
お話がありました朝鮮工作除、それから学生の尖鋭分子、
地方労働者というようなものと全部ミックスしまして実際の行動に移るであろうということであります。
そこで先程
お話がありました暴圧粉砕京浜共同鬪争会議というのは、これは最近の共産党の戰術といたしまして飛込戰術というものを、今の新聞のやつも多分これだろうと思いますが、
東京等最近
ちよいよいするくするのであります。盛り場とかそうい
つたところに、特に川崎市に起りましたのは丁度十一月七日がソ連の革命記念日でありましてその際に大体予定をしまして横浜であるとか、川崎であるとか鶴見であるとか、そういうところにデモの届をするわけであります、大体
警察では断わる。そうして
警察の方では大体やらんだろうという予定をしてお
つたところへぽつとやるというのが飛込戰術というのでありまして、どういう
意味で飛込戰術というかよく分らんのですけれども、恐らく
委員長の仰せにな
つたのは飛込戰術と思いますが、当時の
状況をよく知りませんが、バスやら電車やらトラック等を使用しまして、丁度川崎の盛り場とか或いはいろいろな雑沓する地域に成る一定の時期にぱつと集まり、そうしてそこで無届のデモをやる、そうして相当気勢を上げるというのが飛込戰術で、はないかと
考えております。必ずしもこれは京浜地区を共産党が選んだというわけではないのでおりまして、
東京都内におきましても現在そうしたことを
ちよい
ちよいやるという情勢がありまし
つて、これはまあ大体事前の情報をキャッチいたしつましてそれによ
つてこいつを防ぐというような方法を今と
つております。
それからこの朝鮮人の問題でありますが、どうも朝鮮人は現在
東京都内において大体登録されておりますのは四万名程度ということにな
つておりますが、実際の問題としましては四万名以上で六万名か七万名であるかその点は
はつきりしていないのでありますが、最近では鬪争に必ず鮮人が加わり、殊に最近の鮮人のやり方は例えばフツトボールのサークルを作る、或いは映画、演劇の鑑賞会を行うとか、或いは個人の宅で文化の会を開く、そういうような盛んに文化面に名前をかりまして集会を開催するというような傾向が非常に強ぐなりまして、私の方にも無届でやる場合が非常に多いのでありまして、特に情報を事前にキャッチいたしまして無届のこうした実際上の集会が行われんように十分に注意をいたしております。
それから
さつきも
お話がありましたが、朝鮮青年工作隊というものは相当今活発に行われております。
東京都内におきましてもこの工作隊というものが行われておりまして、いわゆる朝鮮青年のバルチザン化と向うでは
言つているのでありますそれからいろいろ撹乱工作をするというのが主でありまして、これらの連中はいずれも猛列な鬪争精神を持
つた連中でありまして、殊に民族鬪争それから朝鮮統一独立運動というようなものに相当根強く訓練を受けでおります。でこれらつの運動は先程
お話がありましたごとくにこの
治安撹乱工作ではありまするが、まあ大体においてビラを貼りつけたり、それから工場の中に潜入をいたしまして従業員を扇動するとか、又最近のやり方は非常に巧妙でありまして、工場の前で普通のドレス・メーカーの広告を撒いていて普通の広告屋であるというように
考えて安心していると、さつと最も従業員の出勤時刻で多数出ると見込まれるような、例えば七時から七時半ぐらいまでの間であるとか、そういう時刻にいわゆる勅令三百十一号違反の宣伝ビラを二人が大体千五百枚から三千枚ぐらいさつと撒きましてそうして直ぐ逃走する。現場において
警察官が相当逮捕いたし
つているのでありますが、恐らくこれらは或いは今の朝鮮工作隊の一員等が実地訓練をしながら鬪争をして来ているという程度であろうと私は
考えるのであります。
それから訓練の
状況等も極めて
組織的にできており、而も規律が厳粛で軍隊式のきびしい規律の下に訓練を受けているのであります。従
つて上級者の命令に対しては下級の者は絶対服従であるというような観点に立
つております。大体一箇分隊が五人、三箇分隊で一箇小隊、四箇小隊で一箇中隊、大隊
組織ということにな
つておりまして各地区に一箇大隊並びに三箇大隊ぐらいが駐在しているわけであります。駐在という言葉ではおかしいのでありますが派遣をされているようであります。
それから尚都内におりまする朝鮮人の思想動向でありまするが、この六七月頃には殆んど先ず四万人といたしますると七割ぐらいが大体旧朝鮮連盟にあ
つたのでありますが、最近の朝鮮の事変の推移からいたしましてやや落着いているのでありますが、併しこの点が左翼系の暗躍というものが相当ありまして左翼系の脅迫といいまするか、強要といいまするか、そういうような
関係からして、どうも左翼系に段々なるのではないかという心配もありまするので、この動向につきましては十分に注意をいたしております。
それから尚華僑の点でありまするが、中国留日華僑総会というのが現在あるのでありますが、これも今までは相当穏健分子がこの華僑総会を牛耳
つてお
つたのでありまするが、段々中国国内の情勢つが殆んどもう国民政府というものが台湾の一隅に押しつけらつれてしま
つたというような
状況、それから又中国共産党のいわゆる各地に対する勢力の伸張というような点からいたしまして、この華僑総会におきましてもこの国内の政治情勢を反映いたしまして、最近においては穏健な指導分子というものが逐次後退をいたしまして、尖鋭分子が段々牛耳
つて来るというような現象が見受けられまして、この点も相当注意せねばならないかと
考えております。
それから十二月二十一日がスターリンの誕生日にな
つております。この日までにいろいろ日共
関係におきましても何か一仕事しようじやないかというのでいろいろ計画を立てておるようでありまして、これらにつきましても十分
一つ視察を徹底させたいと
考えます。最近の日共の行き方としましては、今まで相当各地の地区
委員会、
地方委員会に対しましては文書による指令を発してお
つたのでありまするが、最近はいろいろ党員の間にも脱落する者があるというような
関係からして又党内の機密が外部に漏洩するというようなことからいたしまして大体レポを利用した指令の伝達方法をと
つておりますので、
警察側といたしましても情報をキヤツチするということに非常に今困難を極めております。
尚御参考まででありますがこれはすべての共産党の発表した数字でありまするが、十月末目における党員の数が大体十万二千名ということに相成
つております。七月には十三万人であ
つたのが三万人程減少しておることを党自体が
はつきり確認をいたしております。この三万人というのは中間において脱落した者、並びに擬装転両者というような者が相当にいるのじやないかと
考えておりますが、党といたしましては荷少数尖鋭分子で今後活動を継続するということを
はつきり言明をいたしておるのであります。党員の減少したことはかえ
つて党内が純化されたのだということを豪語いたしておるのであります。尚又御
質問によ
つて申上げます。