○平尾
公述人 肩書が長いのでこれは省略されてありますから、
立場を明らかにする
意味で申上げますと、全国農業協同組合の下に代表者会議の実行
委員会というものの事務局長をいたしております。更にもう
一つ全国指導農業協同組合連合会の農政部長をいたしております。農業協同組合代表者会議でこの
地方税法案要綱につきまして、いろいろ
意見を本
委員会にも差出しておるわけでありまして、すでに一応要請の
趣旨については御了承を願
つておると存じますが、主な点だけ簡単に説明申上げたいと思います。最初に農業協同組合の問題を申上げ、次に農業或いは農民全体につきまして申上げたいと思います。農業の協同組合の
立場から申上げますと、要請にも
附加価値税並びに
固定資産税の免除又は低
税率にして欲しいということを要望しておるのでありますが、これは協同組合の目的が法律の第一條に明らかでありますが、更に第六條には「組合は、その行う
事業によ
つてその組合員及び
会員のために最大の奉仕をすることを目的とし、営利を目的としてその
事業を行
つてはならない。」という規定がございます。更に員外利用、組合員外の利用につきましては、全
事業分量の五分の一に制限されておるというような協同組合の
事業については、法律によ
つて制限を加えられておるわけであります。從いまして農業協同組合は公法人と私法人の間の中間法人というようなことが言われておりますが、その行な
つております
事業は免税にな
つております。公共団体の
事業と
相当準ずるということが言えるものが多いのではないかと思うのであります。從いまして
附加価値税が営利を目的とし、営利行為の結果の附加価値を
課税する。又
固定資産税が、公共の用に供しない
資産、即ち
事業上の
資産を
課税客体として取上げておるものありとするならば、農業協同組合に対しましてはその法律の規定等の
趣旨によりましてできるならば免税、更に
課税をするというならば、他の法人等と異なり低い
税率を
是非ともお取りを願いたい、こういう要請をしておるわけであります。現在
事業税の
負担と、それから
附加価値税が今度農協に課せられるというのを比較いたして見ますと、
附加価値税は單位組合、町村にあります組合に対しまして七億二千五百万円、連合会に対しまして二億二千万円、計十億四千五百万円になりまして、從来の
事業税負担に対しまして約五十一、二倍というような非常に大きな殖え方になるわけであります。他の
事業、
企業には二、三倍、或いはもつと大きいのもあるように
只今。話がございましたが、それに比べましても農業協同組合に対する率というものは驚くべきものになるのでありまして、この理由は何かというと人件費の割合が非常に多いということ、更に
一般的にい
つて経営規模の小さいもの程これが割高になるという傾向があるわけでございますが、先程申上げましたように、農業協同組合は員外の利用が制限されておるということから、又経営規模が小さいというようなことから、
只今申上げたような非常に高率の
課税にな
つて来るわけであります。御
承知のように、現在農協は経営が非常に困難にな
つておりまして、
赤字を出しておる組合が、すでに四割
程度に及び、僅かに收支を償
つておるというような組合が
相当あるわけであります。從いましてこれに対しまして
附加価値税をかけるということになりますと、農協の経営を破綻させるということは極めて明らかなる事実であります。若しこれを、
附加価値税を流通税であるということで組合員に
転嫁するか、或いは経営規模を拡大してその総体的な税
負担を
軽減させるというようなことになりますと、これは
一般の商事会社と同じような経営にな
つて、農業協同組合は本来の
趣旨を喪失して、協同組合の名を掲げた営利
事業ということにな
つてしもう、こう
考えるのであります。又
固定資産税については、農協が蒙る税
負担は非常に増大するのでありまして、数字を申上げますと、現在農協の持
つておる
固定資産は、帳簿価額で約百二十二億と言われております。これを帳簿価額のまま
評価するということにいたしましても
課税額は二億一千三百万円でありまして、現行税額一千六百万円の十三倍半になるのであります。この時価を帳簿価額の十倍ということにいたしますと、二十一億ということになりまして、現行税額の百三十倍という驚くべき額に達しております。從いまして現在不振の組合が激増しつつあるときにおきましては、
附加価値税以上の圧力を持
つて農協経営に打撃を與えるということは明らかでございます。次に農協に対する
市町村民税について申上げますと、これにつきましては同一市町村内に事務所又は
事業所を二つ以上持
つておる場合には從たる事務所にはかけないようにして頂きたい、こういうお願いをしておるわけであります。これは村内における交通の不便なところ、或いは組合員の便宜のために設けておるわけでありまして、こういう
課税方法を取られますならば、組合員の便宜のために
事業所、或いは事務所を設けることを阻害する結果に相成ると存ずるのであります。以上が大体協同組合の
地方税法に対する
意見でございますが、この協同組合に対する税額の割合を
予定されておるのを見ますと、全部で一千九百八億円の中で、大体三十億というものが
予定されておるわけであります。現在の農村の経済的な困難の時代におきまして、それらの団結によ
つて協同組合が困難を打開して行こうという社会的な責任があるわけでございますので、私はできるならばこういう税金を農協にかけることを止めまして、この三十億のために農協の経営を困難にさせるということを
是非ともお止めを頂いて、
財政平衡交付金というようなものの支出によ
つてそれが補えるなら補
つて頂きたい。こういうふうに
考えておるわけであります。次に農民の場合について申上げますが、第一に
市町村民税のことを申上げます。最も主張いたしたい点は、均等割の
課税方式が極めて不合理であるということであります。これは改正
所得税法によりますと、第十一條の二に、農業專從者の
所得は、これをその生計を一にするところの納税義務者の
事業所得とみなす、とな
つておりまして、農業專從家族の
所得というものはすべて
経営者の
所得と一緒に合算されるということにな
つているわけであります。從いましてこのような專從者に対しまして、
是非とも均等割の
課税というものを廃止して頂きたい、
政府はこれに対しまして、均等割の逓減を三百十二條の第三項に規定していると言われているのでありますが、併し農村の事態というものを見ますと、それだけではなかなか救えない、こう
考えるのであります。調査によりますと、農林省の昭和二十三年度の農家経済調査によりますと、一戸平均の農業專從者の数は一毛作、二毛作、普通畑、蔬菜いろいろ違
つておりますが、大体において平均をいたしまして、四人ということにな
つております。世帶主がその中で一人あるということなので、專從家族は三人ということになるわけでございます。一人当りの均等割を逓減したものとして計算いたしますと、九百円、世帶主の分を入れると大体千三百円くらいになると思うのでありますが、これはこの税金は均等割でございますから、村内におきまして、貧農も富農も殆んど同一の割合で
課税されるということにな
つて参ります。一町未満の農家も三町
程度の農家も平均してこの專從家族の税金を拂
つているということにな
つているのでありますが、最近調査しました実例によりますと、茨城県の真壁郡の川西村というところで調査いたしました結果によりますと、この村の住民税は一等級より五十等級までに分かれておりまして、一等は七千百十六円、五十等は三百十円ということにな
つております。この等級を戸数の割合で見ますと、全戸数六百十七戸のうちに、丁度半分の二十五等までが百三十五戸、それから税金が二千二百三十六円であります。残りの四百八十二戸がこの下半分に乘
つておりまして、更に五十等は四十六戸というふうに最も多数を占めているわけであります。それが先に申上げた均等割の計算一戸平均千三百円というものと比較いたしますと、五十等級の四十六戸の農家は、本案によりますと、從来の税金の四倍以上を負わなければならないという結果になるわけであります。而も改正
所得税法によりますれば、これらの下層農家というものは、
所得税を大体納めていない、免税点以下であるという実態でありまして、貨幣收入としては、殆んど何ものも有しないというような悲惨な農家でございます。從来から
地方税につきましては、人頭割的な傾向が問題にな
つて来たのでありますが、今度の案のような、画一的な均等割というものを課ずるといたしますと、
一般に
市町村民税の増率は二・五倍という予想がされておりますが、このように
所得のない階層に一方的に四倍以上というような増税がされて、惡平等の結果を生ずる。こういうことに相成ると存ずるのであります。從いましてこの專從家族の均等割の方につきましては、
国税、
地方税と一貫した形で行くというのが今度の税体制の整備の
根本的な
立場でありますし、更に現実において、今申上げたような
負担の不均衡を更に増大するという
立場から、
是非ともこれは改正をしてほしい、こう
考えておる次第であります。第二に
固定資産税について申上げたいのでございます。
固定資産税については、農民が最大の
負担者であるということは、從来からいろいろな方に言われておるのでありますが、この
附加価値税を農民に課さない理由として、
固定資産税をかけるからだと
言つておりますが、これも実に大変な
負担増になるわけでありまして、計算した結果によりますと從来の田畑併せての現行
税率によりますと、三十四億二千二百万円というのが現行
税率による税額でございます。今度
政府から
提出された改正されたものによりますと、百九億八千百六十万円ということになりまして、実に農地だけで七十五億五千万円の
負担増になるということに相成りまして、
土地による
負担額が二百十億ということに
予定せられておるようでありますが、実に農民の、農地だけで全額なかば以上を
負担するということになると
考えるのであります。次にこの
固定資産税について申上げたいのでありますが、
固定資産の税
徴收予定によりますと、農地を含めた
土地並びに
家屋については把握率が一〇〇%ということにいたしまして、
償却資産については把握率を五〇%で計算をしておるのであります。そうしてその結果五百二十億の
税收を確保する仕組にな
つておりますが、同
法案の第三百五十條においては、その收入見込額がおよそ五百二十億となるように昭和二十六年一月中において一・七%の
税率を変更し得る規定を掲げておるのであります。そうしますと一方においては一〇〇%の
課税、他方では五〇%しか
課税客体を把握していないで、而も一定額だけの
税收を掲げるために、あとで
税率の調整をするということになりますと、
税收が
予定を超えた場合はよろしいが、下廻つたときは
税率を引上げなければならないことに相成りまして、総体的には
土地家屋の
所有者と、
償却資産所有者との
課税負担額の不公平が更に増大するということが
考えられるわけであります。次に農地の倍数について
是非お願いをしたいのでありますが、我々は公定
価格の十二倍という倍数を計算をいたしておるのであります。これは農林省が行
なつた調査から来ておるわけでありまして、自作地中等田の反当り收益率が四百九十八円五十三銭、これを国債利廻り五五%で資本還元いたしますと、九千六十四円に相成ります。これは現在の公定の他の
価格の約十二倍であるということでありますので、
是非とも現在の倍数を十二倍に変更するということをお願いをいたしたいのであります。農地の
事業用の
資産でありますから、それは飽くまで收益を
基準として
課税すべきであろうと、こう
考えるわけでありまして、十二倍の係数ということがそういう根拠から出ておることを
是非御了承をお願いしたいのであります。次に
シヤウプ勧告には、この
徴税係数は各府県毎に異
つてよろしいがというようなことを
言つておりますが、これにつきまして私は寒冷地の農地に対して特別の
倍率を
是非ともお願いをいたしたい。こう
考えるのであります。これは單作
地方十一県の平均と、一方は多毛作地帶三十四県の平均を見たわけであります。現在の反当り
賃貸価格は、單作地帶の方は十四円八十九銭、多毛作地帶は十八円七十銭ということにな
つておりますが、これを
政府案による
固定資産税を見て見ますと、単作地帶では二百三十四円五十二銭。それから多毛作地帶は二百九十四円五十三銭ということに相成りまして、二十二年度の單反收益額というものを一応取出しまして見ますと、單作地帶は二千四百八十五円。多毛作地帶は四千二十二円ということにな
つておりますので、この
固定資産税は單作地帶においてはその收益に対しまして九・四%になり、多毛作地帶は七・三%ということに相成るわけであります。明らかに單作地帶の方が、一律に
徴税倍率を掛けますと、
負担の不均衡がここに生れて来るということが言えるわけであります。從いまして私たちはこういう計算から
一般は十二倍、寒冷地は十倍の
徴税係数を採用することが適当である。公平な
負担に相成る。こういうふうに
考えておるわけであります。又農地以外の
土地家屋についても、
一般としては倍数が六百倍。寒冷地については特別
倍率として四百倍を採用することが適当であるということを申述べておるのでありますが、その理由といたしましては、最近の実際の売買の事例を見ますと、宅地で
賃貸価格の四、五百倍、
家屋は三百五十倍から一千二百倍というような幅がございますが、大体を平均すると、先ず六百倍くらいが最も現実の時価に近いものであるというふうに
考えておるわけであります。寒冷地については、
家屋については特別の工事費を要するとか、或いは積雪のために耐用年数が短くなるとか、いろいろな理由が
考えられるわけでございますが、これにつきましても私たちが調査いたした数字を御参考のために申上げたいと思うのであります。同じく先程申上げたのと同じように、寒冷地と單作地帶が大体一致しているわけでありますが、一道十一県のものと、それからその他の温暖
地方とを分けて見たのであります。そうしますと人口一人当りの住宅、納屋、倉庫、その他の建坪を見ますと、寒冷地帶においては一人当りが五・二八坪、温暖
地方は四・四九坪ということに相成
つておるのであります。從いまして寒冷地帶においては一人当りの戸数坪数というものを広く要するためにこういうことにな
つておりますが、その結果寒冷地帶には非常に税金が高くなり過ぎるということが言えるわけであります。