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説明員(神戸正雄君) 昨日も一応の御
説明を申上げましたか、その節書き物を持
つて参
つておりませんので更に提出しろということで、今日は我々としまして一番最近の試案的なものを持
つて参りました。これは始終変りますので、これは最後的なものではありません、飽くまでそのつもりで御覽を頂きたいのであります。これを全部申上げますということは煩に堪えませんから、概要
要点だけを申上げさして頂きます。
ここに第一、第二、第三といたしまして、第一といたしましては再配分の前提となるべき事柄も書き記しました。即ちその趣旨とするところは、元来
シヤウプ勧告の趣旨は地方自治の確立、地方自主の増強という点にありますので、その線に沿いまして考えたのでありますが、併し同時に能率的とか合理的な運営とい
つたようなことも考えなくちやならんのでありまして、我我は或る程度そのことも考えて問題を
処理するつもりでおります。ただ自治とか自主の強化だけではいけませんから、恐らく同時にこの能率的な面も考えて行くつもりでありますが、併し何と申しましても自主とか自治ということが主眼に
なつておりますから、能率の面は多少二次的になるようなふうに考えておりまする。この二つを調節しますが、その間に重点が自治とか自主の確率の方に傾いておりまする。それと伴いましてここに考慮すべき問題を列記いたしましたが、段々
地方団体の仕事が殖えましても、義務的の
処理を建前とするもの、即ちどうしても
地方団体のやらなければならんことは極力限定する。力のないところの市町村もありましようし、従いまして市町村全体としますれば、義務的な仕事は成るべく制限して、力の多いとこは力の多いところによりまして、市町村民の福利を増進するようなことを相当や
つておりますが、幾らでもやればやる程ありましようが、義務的な面は極力制限するようしようという趣旨を考えておりまする。それから国なり上級団体といいますか、下の方に移りました仕事につきましては成るべく簡素化する、複雑でないように考えて見たいというふうに考えております。
それから公務員制度も無論これは同時に考えなければならんので、どうしても地方の事務を充実しまするに従いましては、地方の公務員制度をしつかりいたしまして、時代に即応した民主的な、併し能率的な公務員制度ができるようにということも考えなければならんと存じております。それから事務の再配分をしましたところで、なかなか容易に直ぐ実現ということはむずかしいのであります。
従つて前の制度から新しい事務の再配分制度を実施するまでの過渡的なことも考えて見たい、こうい
つたように考慮しておる次第であります。殊に町村等におきましては弱小な町村かありますから、いずれ人口の相当程度な大きなものに、例えば一万ぐらいのところに平衡を取ることにしたいと思いますが、そんなことも実行上むずかしい点もありましようし、いずれにいたしましても委譲するにおきましても、それまでの間なかなか貧弱な町村ではできんこともありましようが、そうい
つた面はむしろ都道府県で以て補足的に
処理するとい
つたようなことも考えなければならんというふうに思
つております。
それから基本方針でありますが、基本方針は大体成るべく国から地方に、更に地方でも府県よりも市町村にという趣旨で仕事を配分するつもりでおるのでありまして、従いまして国に留保する仕事はどうしても国でなければいけないというような仕事、
全国家的な仕事というものに帰りまして、できるだけ
地方団体に移してやらすという建前でおりまする。従来のこの
地方団体委任とか機関委任の仕事などが、これは委任というのでなくて
地方団体の仕事として配分するように持
つて行きたいというふうに考えております。それから国家からしてこの地方の仕事に関する関與の方式でありますが、これは成るべく権力的な関與を避けまして、
基準を示すとか、
勧告をするとか、技術的に援助するとか、報告を取るとか情報を公開するとか、いずれもそうい
つたような権力でなくて地方の仕事を指導するというような面に持
つて行きたいと考えております。ただ併しながら仕事によりましては次に挙げましたような仕事、労働
基準、伝染病予防、或いは物質の統制とか食糧の供出とかいうような問題になりますと、これはどうも権力的でなければ、それを随意に任しておいては国家的に見まして好ましくないことでありますから、これはむしろ相当権力的な面も残す、併しその他の面においてはできるだけ国は指導とか援助とかいうことにいたしまして、権力は成るべく使わんようにしたいと、こういう考えでおります。それから先刻申しました
通り、府県と市町村の関係におきましては、市町村の方が住民と直結するところの基礎的団体であるという意味におきまして、
地方団体の事務はできるだけ市町村に移す、府県の方は上級団体という意味でなく、公益団体、公益的な団体であるという意味でむしろその市町村のできんこと、市町村ではできないことだとか、或いは市町村の間の関係とか連絡とか、いろいろ世話すべき問題もありますが、そういうことをよくや
つて行くようにしたい。つまり府県は市町村を包括する団体としていろいろ市町村でできんことをできるだけやるというふうに持
つて行きたいと考えております。極めて簡單に申上げましたけれども、趣旨はそういう精神で考えておるということであります。一々の仕事につきましては、これは
余りに多くなりまして何でありますから、
説明を省略させて頂きます。
それから次に、
地方財政制度につきまして、これはこういうことです。いずれ私共の行政の再配分が行われますれば、もう一度税制とかいう問題も考えてみなければならん問題があるだろうと思います。相当行政の配分から更に
財政の方に問題が移る面がありますが、それは暫らく後廻しにいたしまして、ただ取敢えず現在の下におきまして、
地方財政制度について何か考えて頂かなければいけないのじやないかということで、差当り解決を要する問題を取上げまして、案をまとめてみたのであります。一つは補助金のことであります。一つは災害復旧費のことであります。それから一つは地方債のこの三つの問題について案を考えてみたのであります。補助金はこれはもうすでに御
承知のように整理されましたが、まだ残
つておるものがありますが、残
つておるものにつきまして更に詳細に亘
つて考えました結果、尚その全額補助金として残すべきもの、一部補助金として残すべきものと二つに考えまして、全額補助金として残すべきものは全く国家か国として地方に渡すべきものでありますので、これは御覽頂きますと分ります
通り殆んど私人の契約と同じような形式で、同じような立場で出しておるのであります。
地方団体に対して税とか、賃借料であるとか等々といたしまして、これは当然に国が
負担していいものであります。或いは予算外契約によ
つて債務に
なつているというもの、いろいろなものでありまして、これは当然に残していいだろうというのでこういうものは残すということにいたしております。
それから委託費は、これは国の統計の費用であるとか、
国会議員の選挙の費用の委託とい
つたようなものは
現状のまま残して置きたい。これはつまり国の仕事を地方がお世話している、国が地方に委託する、それらは全額地方にそれだけ必要な費用だけは出して頂きたい、こういう趣旨であります。それから一部補助金として残すべきものといたしましては、何か新らしい仕事で、これは
シヤウプ勧告にもありましたが、奬励的な補助金というものはこれは残すべきものであります。その他におきましても、尚考えて見ますと一部の
地方団体に限られるもの、或いは臨時費的に與えるとい
つたようなものもこれも残すべきものであるというふうに考えた次第であります。そうしてそういうこの補助というものは成るべく定率で以て、何分の一を出すというのではなくて定額で與える方がはつきりするのであります。いろいろな弊害がありまして、何パーセント出すというのはいろいろ問題が起ります。おのずから地方の行政に国が関與する、干渉する弊が相当あるようです。これを成るべくやめて定額で行きたい、こういう考えを持
つております。
それから平衡交付金に移すべきものでありますが、以上挙げましたもの以外のもの、補助金を残そうというもの以外のものはこれは平衡交付金を受けるということに考えました。補助金を残すとか、平衡交付金に入れるとかいうのですが、これはこの二つ以外のものは平衡交付金に入れよう。それから補助職員の設置のための補助金、これがその問題になりまして、これはよく農林省あたりから
政府の役員を出しまして、そうして地方に出してその紐つきの職員に
なつておる、そういうものがいろいろ弊があるというのでやめようということで、そうい
つたものはこれはむしろ平衡交付金の中に入れたらどうか。全部の
地方団体に関係のある平衡交付金に入れても差支えないものとしよう。補助金という名前があるためにいろいろ中央
政府の干渉を受けますからこういうふうに考えました。併しまあここにいろいろ問題がありますけれども、平衡交付金で入りにくいものがありましていろいろ問題がありますが、ここに詳しく申しませんけれども、とにかく何か特別の平衡交付金、一般平衡交付金の外に相当平衡交付金としては整理のできにくいものがありますけれども、そういうものは何か特別平衡交付金とい
つたものがあ
つてもいいんじやないかと考えております。問題が非常に錯綜して何ですが、そういう考えも問題になることであります。
次は、災害復旧費でありますが、これはやはり災害復旧費というものはここに挙げました
通り、全額国庫補助という問題になりまして、よく御
承知の
通りでありますが、日本のような天災地で以て災害の費用というものは全部
地方団体が賄うということになりますと、これは誠に地方としましてはむずかしいのであります。どうしても国家に出して貰うという部分が多くならなければなりません。併しさりとて
地方団体が全然国家に負ぶさ
つて行くということも、これも地方の自主性というものを
却つて阻害することになりますから、そこで或る部分は地方が持つ、併しそれを超えれば国が助ける。こういう趣旨で考えております。その災害復旧費の仕事というものは先ず成るべく二年なり三年なりの間にやりますと、例えば初年度に三〇%、次に五〇%その次に二〇%とか何とか割合を決めまして、一定の率を決めてせめて三年くらいには復旧事業ができるようにということが望ましいと考えております。それから一ケ所当りの復旧費につきまして、少額は地方が持つという建前でありますが、これは現在確か十五万円を以て、それ以下は地方で持つということでありますが、段々考えまして、又小さいものは府県ならば十万円とか市町村ならば五万円くらいのものはこれはまあその地方で持つ、それくらいは地方で持つということにいたしまして、併しそれ以上のものにつきまして考えなければならんのは少額のもの以外は全部国が持つというのですが、それはどうかと思います。むしろもう少し地方で持つ部分を考えなければならんということになりまして、復旧費がその
地方団体の前年度の
收入見込み額の一〇%、一割くらいの見当であれば地方が持
つても耐えられます。十万円或いは五万円以下は地方が持ち、更にその上のところで以て一〇%くらいは地方も持ち得るし、
地方団体が
負担し得る。又持たなければ地方としても済まん。それ以上のところは一つ国が
負担するというふうに考えたいということであります。併しそれを国が
負担するにつきましても、国の
負担の仕方でありますが、これは国の
財政計画との関連を考えまして、例えば過去三年間の国庫の
負担してお
つた災害復旧費の平均くらいは国の予算に計上して貰いたい。国の予算に計上してその国が災害復旧資金特別会計というようなものを設けて、そうして復旧費を会計に繰入れて、その会計から
地方団体に交付することにする、それが足らん場合には、その会計が不足額を借入れる、借入れることができる途を開いて、それからしてその三年平均の繰入れて貰
つた額で以てたまたま災害が少くて
余りができる。
余りができた場合にはその
余りには前の債務の繰上げの償還に当てるとか、尚それで余裕があれば積立てて置く、翌年度以降に繰越す。こういうことにいたしまして、何か日本のようなところではそうい
つた国が災害復旧費というものを見込んで、そうしていざと言えばそれ以上の大きなものを借金によ
つて賄
つて行くこともできますし、余れば或いは前の債務の償還に当てるとかいうようなことにして、そうして安心して災害に応じ得るような途を開いて置く、こういうように考えたのであります。そこで一つ問題はこれは実はいろいろと考えた結果がそれでもよろしいのですが、併しこの特別会計を設けることが必ずしも唯一の途ではなくて、或いは別な方法といたしまして国庫の
負担すべき額というものを一般会計から
地方団体に貸付ける。
地方団体に貸付けるという方法もこれも考えられますけれども、この方法よりも私共は前の方がいいと思いますが、そういうような考えもあります。そういう考えを出した人もありますが、これも
考え方としては国が全部出すか、或いは貸してやるがその代り貸してや
つた場合には無論平衡交付金のところで以て計算するときには、それはまあ見てやるということにしなければならんと思うし、ですから形は貸してやりましてもその元利償還費というものにつきましては
地方団体が従来よりそういう
負担が殖えますから、そういうことは平衡交付金で地方の
負担が殖えるということで計算してやるということにいたしますれば、これも一つの方法だ、併しどちらかと言えばこれより前の特別会計を作
つた方が簡便でないか。それから個人財産のような農地の災害復旧費などはこの問題とは別に考えまして、災害復旧事業の半分を
負担してやるとい
つた別途の方法を考えるということにいたしたいと思います。
地方債につきましては、地方債は御
承知のように今日中央
政府、
財政委員会、それから大蔵省と、両方からいろいろな制限を受けまして、一々許可が要
つて、地方債を借りるためにはお百度を踏んで、相当な無駄な費用も使いますし、無駄な労力を使
つておる
現状だから、これを何とか簡單にできるようにしたいということで考えたわけであります。そこでいろいろ考えました基本的の方法と、それから人為的な
措置と二つ考えておりますが、地方債の制度といたしまして、これまで地方債に関したいろいろな
法律がありませんから、何か発行、借入金に対する統一的の
法律を作るということが問題となりました。それで発行限度とかいろいろな方法とか、償還年限とか、減償基金制度等を
規定しまして、よるべき
基準を作
つてやる。こういうことが必要でないかとこう考えます。今の地方債に関する
法律について何か統一的な方法がなければならんというふうに考えておるのであります。それから地方債の発行の限度といいますか、最高額の問題でありますが、これはアメリカ等にも例もありますし、やはりこれは
地方団体の償還能力といいますか、能力というものの限度ということが当り前で、目的とか講釈を言
つて中央で干渉するより、地方の償還能力というものを非常に重きを置く、こういう建前からしまして、先ず過去三ケ年間の平均実行予算で、歳入総額から地方債等を引いた額ですが、何か一定の地方の歳入のテン・パーセント、テン・パーセントならば各
地方団体は地方債が出せるということにして置けば、力に不相応な地方債を出さない。何か地方の力というものを見て、力の限度において相当自由に地方債を出せるようにする。こういう
考え方でありますが、若干そこに償還年限につきましては、目的によりましては事業であるとか、或いは普通の行政であるとか、いろいろ目的によりましてそれはその償還年限に多少区別はつけてよろしいでしよう。これは細かい問題であります。いずれにしても償還能力というものに重きを置いて地方債の発行制限をするということにして、あとはできるだけ地方に任して置く、こういうやり方をしたいと思います。ただこういうふうにしますと、大きな団体、六大都市というようなものになると、或いは有力な府県になりますと割合に楽でありますが、貧弱な
地方団体、貧弱な府県、貧弱な町村ですと相当困るのですから、これはやはり一つの
地方団体相互間の共済組織である
地方団体の中央金庫というようなものを作
つて、そこを通してやる。今であれば例えば八分とか九分、一割とい
つた高い利子、或いはそれ以上でなければ借りられないものを、こういうものができるなれば六分とか七分とか、或いは五分とい
つたような金が利用できる途がありますから、何かそういうものを考えてやらなければならん。そういうことにいたしまして、そういうような制度を設けて後は成るべく地方債発行は許可を要らんようにしよう、こういう発行総額を決定したり、枠を決めたり、許可をするということはやめたいということですが、これは若し行われるとすれば差当りの処置としてどうするかという問題を考えて見たい。差当りの処置といたしましては、先ず一番目はどうかと言えば、現行の事業別の許可制度、これはいろいろうるさい、これを一つ何とかしたい、こういうことであります。併
し地方債の今のように預金部に成るべく依存しないでも
つて行きたいのですが、今のような地方債の資金を預金部に依存するようなことを前提としますれば、或いは預金部と
財政委員会とが協同でこの各都道府県の起債の額とそれから各都道府県内の市町村の起債の額とを決定しまして、その額の範囲内では府県なり市町村なりの自由意思によ
つて行ける。枠だけを国の方で決めて後は府県なり市町村なりに任す、こういうことにしたいと思います。それから
只今御
承知のように、
地方財政法にやかましい
規定があります。こういう目的以外に起債ができんとか、地方債を起すことは例えば制限外の税率の課税までや
つていなければ地方債を出せんということ、無理なことですが、これは理窟になりますから申上げませんが、いずれにしてもやかましく
地方財政法で目的の制限とか、或いは地方税法で起債の條件とか、随分無理なことを言
つていますが、むしろそういうことはやめて、これこれは地方債はやつちやいかんというくらいのことはいいかも知れない。そんな制限外課税までや
つていなければ地方債は出せん。これこれをや
つていなければ地方債は出せんというようなことは、自由にした方がいい、こういうふうに考えます。それで預金部が地方債の発行額を
財政委員会と
一緒に決めます場合に、我々は起債につきましては償還能力に応じてという建前であります。償還能力のことは十分返せるかど
うかということははつきりしなければなりません。それ以上のことはやかましく干渉しないようにしよう。それから割当額内の起債の申込みにつきましては融資の保証をしてやるというところまで親切にやりたい、こういう
考え方であります。それから今のところでは地方債は預金部資金にのみ依存しておりますが、これはもつと地方債の枠を拡めまして交付する。学校とか住民の利害関係に密接なものは進んで応じてくれます。併し最近に六・三制の学校のときにもちよつと例外的に学校の起債を公募の方法でやりましたが、まあ苦情も別になか
つたようですが、併し不平はあ
つたかも知れませんが、併し住民といたしましては
子供の教育のためには進んで応じてやるというものもありますからして、できるだけ国に依存しないでそうい
つた方面で借りられる途は十分あるということを考えております。
以上順を逐うて
説明いたしました。