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政府委員(舟山正吉君) 銀行法の
改正につきましては、終戰後各方面の
制度が
改正されますに伴い、銀行だけが遅れておるのではないかということで
改正が問題にな
つてお
つたのでございます。昭和二十三年度には司令部の方から非公式の提案もあつた次第でございますが、その後実施を見るに至りませんで今日に至
つております。併しインフレも漸く收ま
つて参りまして金融問題の仕上げとしては金融
制度に手を著けるべきではあるまいかということで、今度の通常
国会を目標にいたしまして
一つの
法案を捕えるようにという指示もございましたので、当局におきましては先般来急遽一案を草したわけでございます。これは終戰後たびたび金融
制度調査会もございまして、いろいろな考え方は一応披露されておりましたので早急にこの度案をまとめたのでございますが、尚通常
国会までには余日もございますので、できるだけ輿論その他各方面の意向も取上げまして司令部と折衝して参りたいという考えで、先般非公式に
内容が発表せられたような次第でございます。この金融
制度の
改正につきましては、單に銀行法の
改正でなく、その他の従来の特殊
金融機関、現在残
つておりますのは農林中央金庫、商工中央金庫というようなものがございますが、更に範囲を拡げ保険業法等も含めましてできれば次の通常
国会に
改正案を提出したいという心組でございます。
今般試案ができましたのは銀行法を中心とし、これに信託業法、無盡業法、それから市街地信用協同組合法、これを織込みまして
一つの体系を形作つたわけでございます。別途特殊
金融機関ができますれば、それに対応いたしまして一般的
金融機関に関する
法律というようなものができ上るのであります。尚この組織に関しまする
規定の外に、例えばあとで御説明申上げますが、金利調整とか
日本銀行に対する支拂準備の問題とか、
金融機関の運営に関する
規定等も織込みまして、
金融機関並びに金融事業に関する
法律とも申すべきものを試案として作成したわけでございます。従いまして試案は相当條数も多い厖大なものでございますが、その中には最近の立法例にならいまして、特に従来であれば省令その他の施行細則に謳いましたものでも
法律に語おう、それから商法辺りに
規定してありますことも念のためにこの
法律に謳うといつたような最近の例にならいましたので、相当條数も厖大にな
つております。そこで本日はこの
改正の主要点につきまして要点を確認いたしましたものにつきまして御説明申上げたいと存じます。
尚この取運びといたしましては、大体銀行局におきまして
一つの成案を得ましてこれを司令部に
報告いたしますと共に、司令部の指示によりまして、
日本銀行政策
委員会の
意見とそれから法務庁法制局の
意見だけを取敢ず司令部に伝達しておるという
関係にございます。今後
内容につきましては紆余曲折がいろいろあることと考えております。配付いたしました資料を読上げながら補足説明をさして頂きたいと存じます。
先ず第一に「この
法律による規制の対象たる
金融機関は銀行、外国銀行、信託会社、相互銀行及び信用協同組合とし、この
法律の基本概念で免許の対象となる「金融業務」とは預金の受入れ及び
資金の貸付又は手形の割引を行う業務をいうものとする。」これは
只今申上げましたように、銀行法を拡大いたしましてその他の信託会社、相互銀行、これは現在の無盡会社を改組いたしまして、簡易なる銀行といつたようなものを捕えたいといつたような構想でありますが、これを入れまして尚現在協同組合による信用事業に関する
法律というのがございまして、俗にいわゆる信用組合というのがございますが、これもこの
法律の中において規制しようとするものでございます。
先ず第一に銀行につきましては、「(一)資本の最低限度を引き上げ、これに伴い必要な経過期間を設ける。外国に
支店を設置する場合については新たに資本について特別に最低限度を定める。」この銀行の資本金は現行法では
原則として百万円、東京、大阪に営業所を持
つておるものについては二百万円とな
つておりますが、その後の通貨価値の変動に伴いまして現在では低きに失しますので、現在内規といたしましては三千万円
程度の限度を置いておるのでありますが、一応新法におきましても三千万円くらいが適当ではないかと考えておる次第でございます。これに入りません銀行は現在数行ございますので三年間くらいの猶予期間を設けたらどうかと考えております。但し外国に
支店を設置する場合につきましては、国際信用力という
関係もございますので一億円以上という最低限度いたしたらばどうかと思うのであります。尚新商法では無額面の株式の発行が認められるのでありますが、銀行についてこれを認めますことは適当でないと思われますので、銀行についてはこれを禁止する予定でございます。
尚ここにはございませんが、銀行の役員につきましては取締役五人以上、監査役二人以上といつたようなことで、できればいずれも
日本に国籍を有し且つ
日本に住所を有する者でなければならないといつたような
規定にしたらばどうかと考えておるのであります。更に監査役につきましては
関係方面の示唆もございまして、取締役会に対しまして監査役会というようなものも拵えてその会長といつたようなものを拵えまして、銀行の監査機能をもつと積極的に活発に行わしめるといつたような構想も考慮中でございます。
「(二)不動産担保貸出は、当該不動産の
評価額の一定割合以内とし、その総額は定期的預金の総額及び実質資本の金額を標準として制限する。債券発行によ
つて得た
資金はこの
資金の別枠とする」ということにな
つておるのでございます。ここに実質資本という新らしい言葉がございますが、これは従来の公称資本金、或いは拂込資本金、或いは積立金も加味しました自己資本金という観念から一歩進みまして、そのうち銀行検査の結果によりまして欠損と認められたもの、その他償却を要する
資産を考慮したものを実質資本ということにいたしまして、これを以下いろいろ出て参ります基準にいたしたいという考えであります。これは
関係方面の示唆によるものでございます。併しこれにも一利一害がございまして、成る程銀行
資産の
内容を堅実に見るという
意味においては至極妥当でございます。併しこれは実質資本というものは表面に現われない、外部からは窺い知れないために銀行の業務上支障も来やしないかということで、これに対する反論もございます。現在のところはまだ研究中の域を脱しません。それはれ不動産担保貸出は当該不動産の七〇%以内が適当ではないか、個々の不動産につきましては
評価額の七〇%以内というような規制を置きました。そうして担保貸出の総額が定期的預金の六〇%と実質資本の金額、これは全額のいずれか高い金額を超えてはならないという規制を置いたらどうかと思うのでございます。
従来
日本の銀行の
破綻の原因が長期不動産貸出というものが固定して不良化するということにあつたに鑑みまして、最近銀行につきましては商業銀行主義をと
つて資産の流動性ということに相当重点を置かなければならないという思想に出たものでございます。一面これに対しましては非難もございまして、やはり
日本においては不動産は有力な担保である、且つ最近の検査方針による貸出については
原則として担保をとらなければならないという思想をとりますと、不動産担保貸出について制限を設けることはそこに矛盾が出て来るのではないかといつたような疑問も起
つて参るのでございます。以上申上げましたようなことが大体一応の考え方でございます。但し昨年できました銀行等の債券発行に関する
法律によりまして債券発行を認められまして、債券発行といたします銀行につきまして債券発行によ
つて得た
資金というものは、これは元来長期の
資金と見合うものでございますから、この制限の枠外とするということになるのであります。
「(三)一人に対する貸出は実質資本の二五%を限度とする。これに必要な経過期間を設け、又ある種の貸出についてはこの限度に算入しないものとする。」これは一銀行の一人に対する貸出が余り大きくならんようにということからこの限度を設けようとするものでございます。二五%ということにつきましてはいろいろの見方もございましようが、又現在銀行がどの
程度の貸出をしておるかということとも睨み合せて考えなければならないかと思います。それで又一方におきましては、早急にこの限度まで引下げるということが非常に無理な場合もございますので、大体本法施行後三年間には実質資本の五〇%まで下げ、そうして施行後五年間の経過期間にはこの基準にまで引下げるということの経過
規定を設ける予定でございます。この限度に算入しない貸出といたしましては、この貸出につきましては
債務の引受も含むのでありますが、社債又は株式の保有はこれを除く、それから他の銀行又は地方公共団体に対する貸出も又この制限から外す、それから期限が短く、或いは倉荷
証券、国債、当該銀行の預金等によ
つて十分に担保されておる貸出というものは、この制限に算入しないということにいたしたいと考えておるのであります。併し如何なるものをこの制限から外すかということにつきましては、又極めて多くの
意見が出るところかと考えております。
それから次に「業務用不動産の所有額は
原則として実質資本の七〇%を限度とし、業務用以外の不動産の所有は例外的な場合の外認めない。」これはこの前段につきましては現在も大体の指導におきましてこういうことに相成
つておるのであります。
公団につきましても、例えばビルデイングの所有は、賃貸目的であ
つてもそのビルデイングの所有といつたようなことは、これを認められていないということになるのであります。
「(五)銀行等の債券発行等に関する
法律と同様の基準で銀行に債券の発行を認める。」これを一言に申しますれば、この銀行の預金と発行しておる債券の合計額が自己資本の二十倍に満たない間は、その債券の発行ができるという
規定が、ここに掲げてあります
法律によ
つて認められておるのであります。これは今度の金融業務に関しまする
規定をもこの新法に同一的に盛り込むという
趣旨において、こちらに移し替えることを予想しておるのであります。
それから「法定準備金は、
原則として従来の銀行法におけると同様とするが、預金と債券の総額が実質資本の二十倍をこえているときは、より多くの法定準備金の積立をすべきものとする。」法定準備金は
原則として従来の銀行法の
規定と申しますのは、毎期收益の一〇%以上ということにな
つておるのでありますが、預金と債券の総額が実質資本の二十倍を超えているときはこの率を殖やす、これも後に出て参ります銀行等債券発行関する
法律に調われておるのであります。これを移し替えるのであります。
それから次に「(七)検査を一層励行する。」とございますが、ここに
一つ立法上の問題といたしまして、毎年少くとも一回は銀行の検査をする、さようなことを語うことが適当であろうという有力
意見があるので、これにつきまして当局における検査機能、検査能力という問題と睨み合せまして、こういう毎年一回といつたような義務付けをするかどうかについては尚研究中でございます。それからこれに関連いたしまして、この銀行につきましては金融検査官によります検査の外に、その最も顕著な例は税に関する検査、調査、その他いろいろの検査、調査が行われるのでありますが、これは
金融機関並びに金融
制度の信用保証上、
法律を以て一定の場合に限
つて、これが銀行に対する検査ができるという
規定を盛り込む方が適当ではないかというふうに考えておるのであります。それからもう
一つ検査に対しましては、これはアメリカの例によりまして、検査の場合に一定の基準を以て検査を受ける
金融機関から検査の手数料を取るという
規定を設けたらどうかという
意見が出ておるのであります。
日本の通常観念を以ていたしますればこれは少し変な感じがいたしまするが、この点については尚研究折衝をしておる次第でございます。
次に「(八)業務管理の
制度を新設し、銀行の業務又は財産の
状況により銀行の資本保全等のため業務管理人に銀行の業務を管理させることができるものとする。」これは銀行が破産その他によりまして店を閉じる一歩手前におきまして、或いは店を閉じます前の段階といたしまして、
大蔵大臣が適当な業務管理人を派遣いたしまして、銀行の公正を図り或いは
債務の償還、債券の保全ということを監督しながら、これをやらすという仕組をここに設けるのでございます。
次に「(九)銀行の破産の場合において一預金者につき、その預金のうち一定金額以下の部分につき優先的取扱をする。」現在銀行の預金について、この
国家的に補償する
制度はございません。又
金融機関の
経営については、飽くまでそれは
経営者が責任を負い、預金者がその
経営者を信用して預金をするという建前で行
つておりますので、
国家補償はないのでございますが、零細預金を
保護する
意味において、例えば一定金額以下とありますが、例えば十万円以下の部分については優先的に取扱をするといつたようなことを考えて見た次第でございます。
次に「外国銀行については従来は
日本における外国銀行の各店舖をそれぞれ独立の店舗として、取り扱
つてきたが、この
法律においては、
日本における主たる営業所を本店とする銀行として取り扱い。性質上適用されがたいものを除き、
原則として銀行に関する
規定を適用する。」特に御説明は要らんかと思いますが、従来は
日本における外国店舗はそれぞれについて
報告を徴し、一個の独立の店として扱
つて参
つたのであります。これを
日本内地における総括店ともいうべきものを認めまして、これと対
政府との
関係で話をするということにいたしたいと思うのであります。
次は今度の信託会社に関する
規定であります。信託会社に関しましては現在信託業法にございまして、この銀行が信託業務の兼営をできるという建前を採
つております。そこで現在ありますいわゆる信託銀行なるものは銀行でも
つて信託業務を兼営するという性格を有しておるのでありますが、今度の新法におきましては四にございますように、信託会社については、従来の業務の範囲を若干拡張し、銀行に信託業務の兼営を、信託会社に銀行の兼営ができるということにいたしたらどうか。若干の業務の範囲を拡張、何といいますか、例えばエスクロウというようなアメリカ
あたりで行われておる例を採入れるのであります。それよりもやはり銀行が信託業務を兼営するという場合の外に、独立の信託会社というものも認めてもよろしいのではないか、これについては銀行業務の方を兼営させるということにいたしたらどうかということで、ここに新法に特に信託会社に対する
規定を設けたいと思うのであります。
五が「従来の無蓋会社は、
物品無盡を除き、健全な相互銀行への転換を認める。その責木の最小限度は従来の無蓋会社におけるものを引上げる。」無盡会社は現在戰時中特例を以て預金の取扱を認められておるのであります。その
意味において銀行と同じような機能を営んでおるのでありますが、ところが一部からは無盡会社からはやはり預金の業務を外すべきであるといつたような
意見もあるのであります。現実に預金を取扱
つておる、これを元に戻すことも非常に至難であります。かたがた無盡会社は現在の銀行の取扱
つておりません中小金融というものにつきましては、まあ極めて恰好なものであると思われますので、ここに
一つ普通の銀行に対しまして簡易なる銀行ともいうべき
一つの銀行のタイプを作りまして、そうしてそれをこれへ引上げますと同時にその新法にそれを盛込むことにしたらどうかということを考えたのであります。一方貯蓄銀行というものが従来ございました。これは例えば定期積金というものを扱
つてお
つたのであります。こういう專門の貯蓄銀行がなく
なつたことによ
つて、こういう機能がが停止されておる。非常に不便を感ずる向きもありますので、かたがた従来のごとく銀行に対して貯蓄銀行を認めるごとく、この無蓋会社を昇格さして相互銀行といつたような
一つのタイプに仕上げまして、そうして普通の商業銀行と相互せしめたらばいいのではないかというふうに考えたのでございます。
「六、信用協同組合は、この
法律に基いて
大蔵大臣が監督するものとし、詳細な
規定を設ける。」これも特殊
金融機関に対しまして、普通の
金融機関はこの新法に統一的な
規定を網羅するという思想から出たのであります。現在この協同組合による信用事業に関する
法律の中に盛
つてありますことを、この新法に移し換えようということでございます。この中にも若干の
内容の修正もございます。例えば現在信用協同組合が困
つておりますことは、その役員としては出資者相互間におきまして選挙によ
つて選ばなければならんということにな
つておるのであります。この選挙によるということは、ともすれば多数を頼んで
金融機関の
経営者として適当でない人が選ばれるという弊害もございますので、これらの点は新法においては改めたい、則ち候補者を定めまして議決の方法によるといつたような扱いにいたしたいということを考えておるのでございます。以上が
金融機関の組織に関する
條項でございます。
次に「七、信用の調整につきましては、(1)リザーブ・システムをとり、銀行はその預金に対して、一定割合の金融の
日本銀行預け金を保有しなければならないものとする。」この中央銀行の信用の調整方法といたしまして、市中銀行から預金を強制的に預けさす、そうして信用の緩急に応じましてこの率を上げ下げして信用を調節するということが、最近の中央銀行の行き方にな
つておるのであります。これを
日本においても採用いたしたいということでございます。この支拂預金の準備率をどうするかといつたような問題につきましては、まあ大体大都市銀行、地方銀行に分けて、それぞれ率を変えなければならないだろうと考えておりますが、なお現在ではどの銀行も
日本銀行の借入が非常に多額に上
つておりまして、借入をしておる一方において預金をするということは或いは
意味のないことでございますので、この実施の時期についているいろいろ研究を要する点があると考えます。
「(2)マージン・リクワイアメントに関する
規定を設け、銀行等は、貸出しをする場合に担保として徴する
有価証券の種類及び担保
価格の限度が定められた時は、これに従わなければならないものとする。」これもアメリカの
制度を採用いたしまして
証券金融に対する信用量を調節するということを狙いとしたものでございます。
それから「(3)銀行等の預金又は貸出の利率の最高限度又は最低限度が定められた時は銀行等はこれに従わなければならないものとする。」現在金利調整法によりまして、この預金又は貸出の最高限度というものは決められておりますのでありますが、これを恒久法であります新法に織込んだらばどうかということを考えたのでございます。これについては勿論いろいろの
意見がございまして、金利のこの規制は別途の
法律体系に織込むべきであるといつたような
意見もありまして、又金利等についてはこれを自由にすべきであるという
意見もありました。なおいろいろ研究中であります。この要目に書上げました事項につきまして、一応甚だ簡單でございますが御説明申上げる次第でございます。