○参考人(加納久朗君) 今日お招きにあずかりまして今
委員長から
お話になりました
貿易金融一般及び今の敗戰後における日本の
金融というものをどういうふうにしたらいいのかということについてかいつまんで私の
意見を先に申上げまして、後から御質問にお答えする、こういうふうにお願いしたいと思います。
第一に日本が敗戰後の非常に頽廃して貧弱になりました経済を復興し、且つ富国にまで持
つて来るには非常にいい時期が来たという点を第一に触れたい。それから第二にそれにはどういうふうにしたらいいかというと、これは減税と外資導入ということしか途がないということ、それからその次に日本に欠けている長期の資金の
金融というものはどういうふうにすべきかということ、それから輸出輸入の
金融というものは今の形体では極めて不満足な状態にあるから、こう組織をこういうふうに変えなければいけないという問題について、大体そういう順序で
お話して行きたいと思います。
朝鮮事変が勃発いたしまして、日本の経済がドツジ・ラインで、息を拔きそうにな
つてお
つたものが、非常に息を吹返して形体が違
つて参りました。丁度第一次職事の起りました前夜には日本の在外資金というものは非常に欠乏いたしておりまして、当時綿花を輸入するということの資金さえなくて、どうしたものだろうかとい
つて非常に案じたものでございます。それが第一次戰爭が勃発いたしますと非常な輸出が起
つて参りました。それから従
つて日本の輸入というものも活撥にな
つて参りました。又輸出が出て行くということで大変な活撥な輸出を日本がいたしました結果が五年間に二十七億円の金を日本が獲得することができたわけでございます。当時私は二ユーヨークの正金
銀行におりましたのでございますが、毎船太平洋から出します船に金を積むのでございますが、金というものは一船に積む量が大体きま
つております。それ以上積むと保險がつきませんですから、極めて限られております。それで太平洋から船の出ます、毎船金を積んでも間に合わないというくらいに日本がお金を儲けた。それでもまだ足りないで一方今日起
つておる問題と同じような為替
銀行に円の不足という問題が起
つて参りました。今日のように全般に円不足というものが起
つたのではなくて、為替
銀行の
手許に円の不足が起
つて来て、当時横浜正金
銀行はイギリス政府、それからフランス政府、ロシア政府、こういうもののために日本で円の公債を発行いたしまして、そうして円資金を賄うというくらいに日本がお金を儲けたのでございます。当時の為替相場が二円に対してほぼ一ドルという為替相場でございましたし、当時のドルは一オンスが二十ドルしてお
つたときであ
つて今日は三十五ドルしておるのでございますから、当時の儲けというものはアメリカのお金でも五年間に二十億ドルをきれいに儲けたというわけでございます。そのくらいに日本があの戰爭で儲けられたのであります。ところが今度のこの朝鮮事変から続いて、これが大戰爭に勃発してしまえばもう万事窮すでございますけれども、仮に今のような軍事競爭というものが英米の陣営とソヴイエトの陣営に続いて行
つたならば、どういうことになるかというと、アメリカが今年に使いまする軍備の費用というものが四百七十億ドルと申しておりますので、来年は五百億ドル、再来年が五百二十億ドルという金を使います。フランスもイギリスも大きな金を軍備に使う予算を出しております。ソヴイエト自身もそれからソヴイエトの衛星国も同様にお金を使う。これを併せて見まするというと恐らく幾ら内輪で見積りましても世界で軍備に使
つて行く、つまり無駄遣いをするために使
つて行くお金が一千億ドルあると私は思います。仮にそれが三年続いたといたしまして、日本がその三分を儲ける。儲けるというのは何も直接軍需品を売るわけではありません。彼らのすべき商売は我々の手に来て、東亜の圏内に来て商売をするとこういうことになりますから、三分として、楽に百億ドルもの金が儲かると思うのでありますであるからしてこの機会にうんと日は儲けて、そうして單に経済の回復をするというばかりでなしに、世界の富国にするというチヤンスが日本に与えられているとこういうふうに私は信じております。従
つてこの貿易に対する
金融というものは、余ほど円滑に行
つて支障のないようにして行かなければならない、こういうふうに私は信ずるのであります。その点において今日の輸出、輸入貿易というものは、非常に不満足なものであるというふうに感じております。で、私はこの為替管理委員会が今持
つておりまする四億ドルのドル貨というものが、恐らくこれが忽ちのうちに五億になり、六億になり、七億になるのだと思うのです。それは輸入するために
計画を立てましても機械とか技術とかというものは六ケ月先、或いは八ケ月先でなければ入
つて来ない場合がありますから、今買うという
計画を立てましても、そのドル貨が溜り、又更に輸出が続いて来て溜るとこういうことにな
つて相当多くの金が溜るものと思うのです。それでございますからこの際どうしても日本は原料がどんどん上
つて参りまから、上らないうちにできるだけ日本に入れて置く、そうして同時に日本の遅れておりまする二十年以上も遅れておる技術、及びその機械を改め、そうして二年又は三年の後には国際レベルの機械技術にして、そうして軍備
競争が終
つたときには、日本はどこの国に対しても負けないだけの技術と、それから機械を以て、国際水準で以て堂々と向
つて行くという態勢に、この際こそと
つて行かなければならないものだと思
つております。ところでこの為替管理委員会の持
つておるお金のことでございまするが、商売としてはこれは全く落第なんであ
つて、安いときに売
つてしま
つた、そのお金が三億ドル以上も溜
つて、そしてそれを今度は補充しなければならないという、原料を買おうとしたときには、原料が上
つてしま
つた、というのでは、商売としては極めて拙劣なるやり方だと思います。でこれはやはり後家さんのお金を大事にするような
考えで、輸出は成るべく奨励するが、輸入は成るべく少くする、というような
考えからこのお金は溜
つたのであ
つて、そういうけちな
考えではいけないのです。とにかく借金をしてでも原料を輸入して、日本は出さなければならない、という
考えで行かなければならないのですが、遺憾ながら日本
銀行でも、為替管理委員会の
当局でもが、そういうような
考えでなくて、今のようにお金が溜
つたと、これは私は大変拙劣なやり方だと思うのですけれども、実際はそういうふうなわけなんであ
つて、こんな馬鹿馬鹿しい下手な商売はないのでございます。だから前のことは仕方がありません。三億円の犠牲を払
つたとするならば、今後起るべき十億ドル、二十億ドル、三十億ドルとい
つて来るものは、そういうへまをしないように皆様方も御後援願
つて、そうして
当局を鞭撻して頂く必要があると思うのであります。
それから外資導入という問題に第二に触れて見たいと思うのでございます。この戰爭が終りましてから、外資導入という問題が非常に多く言われて、やあ只見川の水力電気に外資が入る、どこの会社に外資が入る、どこに日米共同でやるのだという話がございましたけれども今のところそういうようなところへ来た外資というものはニツケルもない、五銭の金も入
つて来ていないと思うのでございます。それで外資というものは一体どういう形から入
つて来るのかというと、丁度個人がお金を借りますのに、初めからこの金を君
一つ二年間貸してくれ、三年間貸してくれと言
つたらとても貸してくれない。けれどもここで私は仕入れをしまして、そうしてこの仕入れたものを二ケ月先、三ケ月先ですから三月だけお金を貸してくれないかと言えば、それはいいから貸して上げましようというふうに金を貸してくれる人があるというようなわけで、外資の導入と言いましても、長いものを初めから貸さんかと言
つても初めから無理なんで、これは短資のものから外資というものは入れて行かなければならない、こういうわけでございます。ところが昨年の八月に二ユーヨーク・ナシヨナル・シテイ・バンクのレオ・チエンバレンという人がこのチエンバレンという男は戰爭前から日本におり、又戰後直ちに日本に来て、二十年の経験を持
つておるものですから、見渡すところ如何にも日本の
銀行屋さんたちが知識が薄くて気の毒だ、何とかしてこれはアメリカの金を入れて日本のファイナンスというものを、輸入
金融というものをして上げたいということで、自分のところの資金をつまり外資導入の初めとしてここに先ず六百万ドルばかりの金を日本の
銀行のために短資として上げて、そうしてこれだけで自分のところの
銀行の金で日本の輸入というものを賄
つて上げたらどういうものであろうか、一体それが賛成されるかどうかと
考え、一万田総裁を訪ねまして、木内為替委員会の
委員長も一緒に話をした。それでその話を持出したところが、そのときに余りはつきりした御返事がなくて、まあ結構でしようという
お話で、一週間経
つてもはつきりした返事がない。それはどうも余り話がよ過ぎるので、自分のほうは嘘じやないかと思
つて御返事しなか
つたけれども、本当なのかと言う、それならばや
つて貰いたいということで、又チエンバレンが日本の為替
銀行全部を訪ねまして、十一行の
銀行に成るところは七十五万ドル、或るところは百万ドル、或るところは五十万ドル、或るところは二十五万ドル、成るところは十五万ドル、おのおのこちらから見た、この
銀行にはこのくらいの
信用を与えてもいいというくらいにものの
信用をお与えするという約束をして、それだけの限度においては常にアメリカから輸入して来る為替の
金融は私のほうの金でして上げましようということを言
つてくれたわけであります。それが三ケ月の手形で、そうしてアメリカのお金を四分で貸してくれます。そうしで日本の
銀行に一分差上げる。日本
銀行は一分輸入商から取る。そうすると輸入商は五分で輸入ができるというようにしたのでございます。それで一体日本の輸入の状態はどうであ
つたかというと、すでにこの占領が始まりましてから、昨年の八月までのやり方というものはすべて参着払のやり方で、つまり物が来てしまえばすぐそこで現金を払わなければならん。現金を払
つて物を受取る、こういうわけであります。現金を払
つて物を受取るというのにはその
銀行は市中で借りなければいけない、日本
銀行から借りなければいけないということになると、八分七厘というような利息でなければお金ができない。だから輸入は今まで九分近いお金で輸入してお
つたものが、それだけの途が開かれただけで五分で輸入する途が少いけれども開かれた。これが短資の外資導入というものをやりました始まりであります。それで二ユーヨーク・ナシヨナル・シテイ・バンクがそれをやりましたので、これはこうしちやいられないというので、チエース・ナシヨナル・バンクというのが私のほうでもや
つてもよろしいということで、全体から言いましても恐らく四、五百万ドルの
信用を与える。それからバンク・オブ・アメリカ、これもやはりこうしちやいられないというので、
信用を与える。結局今日ではバランスで約百億円に近いものが今の外国
銀行の
信用を以て日本に安く輸入できた、こういうわけです。それがつまりこの間うちから問題にな
つていたユーザンス・ビルというものの一番初めで、外国
銀行がユーザンス・ビルで
信用状を出してや
つて日本の輸入をや
つて上げましよう、こう言
つてくれたものを日本のほうでがたがたがたがたと、まあ為替委員会では賛成でありましたけれども、そんなものは、三億ドルも金があるのに外国
銀行の金を使う必要はないじやないかとかいう
意見もあ
つて、
ちよつととま
つているわけです。けれども日本のように輸入超過を続ける国で以て、而もこれだけの貧乏な国が、人が今短期であろうが五分で金を貸してやろう、それで輸入を助けてやろうというものを断るという手は私はどうしてもないのだと思う。それをしているのであ
つて、これはもうできるだけ早い機会にこの門を再び開けて、これだけの外資を導入して行かなければならないものだと私は思
つている。こういうことで嫌やがらせをすればどういうことになるかというと、長期の資金も入
つて参りません。もう
一つ、この外資導入ということに対して日本の
銀行の態度はどうであろうかというと、これは非常に結構、これはどうかしてや
つて貰いたいということを言
つておりますけれども、日本の
銀行ではまだこういう疑いを持
つている
銀行がある。外国
銀行がどうもドルを売
つて、そうしてここへ円を持
つて来られて、それで日本で以て貸付けなんかをやられたひには日本の
銀行はたま
つたものではない、成るべく外国
銀行はそういうことは進出して貰いたくないという
考えを日本の
銀行で持
つておられる方がある。ところがこれは全く御心配無用なんです。まだ外国から見ますというと、日本の円というものは安定した通貨だとは思
つておりません。ですからドルを売
つて円を買うというような外国
銀行は一軒もありません。そういうことをしたら本店のほうが、そんなことをしてはいけないと言うのでやりません。ですからできたら結構です。若しドルを売
つて日本
銀行から円を貰
つて、それで日本の中に投資するとか、或いは貸付けをするという
銀行があ
つたならばこんな結構なことは私はないと思う。併しそんな危險を冒す
銀行はないです。それからもう
一つは非常に哀れな
お話を申上げますけれども、日本の今
全国の
銀行の
預金を合せて八千八百億円と申しております。これを三百六十円の為替相場でドルに直して見て、そうしてここにあります二ユーヨーク・ナシヨナル・シテイ・バンクなり、或いはチエース・ナシヨナル・バンク、或いはバンク・オブ・アメリカなり、どの一行でもよろしうございます。一行だけの
預金の総額というものを比べて見ますならば、一行の
預金額が日本の全体の
預金額の先ず二倍から三倍あるのです。それでございますから、そんな
銀行が日本へ来てこの危險な為替を冒して円を買持ちをして、そうして而もこの日本の商社の
信用というものが全然分
つておらないのに、日本で貸付けをするというようなことはございません。その点において外国
銀行は日本の
銀行と
競争をしないのである。むしろ先ほど申上げたような短期の外資導入というようなことで、日本の貿易を助けろという立場で来ているということを御了解願いたいのでございます。それからその次に、いよいよ長期の投資、外資導入ということ、これが非常に日本の工業の技術を改良する上から見ましても、
資本の足りない日本に外国の技術と、それから機械を入れて来て、それを十年なり、十五年なりで貸して貰
つて、漸次日本で儲けたお金でそれを返して行こうと、これが外資導入の形式になりまするが、それをするのには日本の外資導入受入態勢というものが全くできておりません。この間も吉田さんにお目にかか
つたとき、吉田さんは、何よりも外資導入というものが大切だと、こうおつしや
つていましたけれども、私は、日本政府も、それから日本の官庁にしても、外資導入を受入れるという能勢ができていませんよ。今のままで置いたら、ちつとも来ませんという
お話を申上げました。今のような税制、それから今のような日本の
気持では外資は入
つて参りません。税制のほうの問題から云いますと、漸く今年から外国法人も、内国法人も一様に法人税が三割五分かか
つて来ておるのでございますが、それ以前はどうかというと、外国法人には四割五分かけて、日本のほうは三割五分だ
つたので、漸く今年から日本は三割五分に下げたわけでございます。ところが外資導入を願
つている中南米の国々、メキシコにしてもコスタリカにしても、それからブラジル、そういうような国にしましても、どういうことをしておるかというと、外国法人に対する税、殊にそれは外国法人とい
つても、アメリカの法人のことを言
つておるのですが、その税というものは大体五分から、高くて一割というところが、外国法人に対する税率であ
つて内国法人とは全然別にしておるのでございます。そのくらいにしなければ、外資というものは入
つて来ない。又アメリカが百数十年に亘
つて、建国から一九一七年くらいまでの間に、あれだけの未開発の土地を開発して、あれだけの富を作
つたのは、何によるかというと、外資導入ということでや
つたのであ
つて、アメリカは百何十年に亘
つて外国
資本をのべつに入れて、そうして先ず太平洋と大西洋を繋ぐユニオン・パシフイツクの鉄道を作
つた。その作
つたときも、それから続いて外資を入れるために、鉄道の沿線の両方十マイルだけの土地はただでやるのだというくらいにして外資を導入したわけであ
つてそれから南北戰争のあとで、殆んどアメリカの
信用が地に墜ち、一時ヨーロツパの
資本が来なく
なつたときに、困
つたものだから、ドル勘定はやめる。ここへ作る会社の
資本金はスターリングの勘定で、つまりイギリスの通貨で会社をお作りにな
つて、イギリスの通貨で利益を持
つて行
つてもいい。だから何とかしてここに
資本を持
つて来て仕事をして貰いたいというくらいまでに、アメリカは外資導入を歓迎したということも歴史上あるのでございます。そういうことから
考えて見ると、破壊されたこの経済で、この貧弱な日本が起ち上るために、大いに努力しなければ外資というものは入
つて来るものじやないということを我々は
考えなければならないと思うのであります。
それから外国人に対する課税の問題も、日本人と同様に課税するわけじやなくて、今じや五〇%だけを取
つて、その残りを日本人と同様の課税をする。こういうことにな
つて、大層
大蔵省では外国人に対しては優遇しているようにお
考えにな
つていますけれども、実はそうならないのであ
つて、極く近い例を申上げますと、サンフランシスコあたりで、本当にハイスクールを出て、
銀行会社の小僧にな
つて日本にや
つて来るのは、年に一番下で三千ドル取る。年に三千ドルということは日本の金にして百二十万円くらいのものです。それで半分は課税するけれども、あとの半分は……こういうことになると、先生たちの生活は日本ではや
つて行けない。これは趣く上のほうで一万ドル以上二万ドルも取るというようなところは、それは半分に割
つてや
つてもいいのですけれども、極く当り前の大体一万二、三千ドル以下で以て日本でや
つて行こうというようなことになると、今の税率では日本に来て働きたくなくなる。だから外資導入と一緒に来る技術者及びその会社員に対しても、今のような税率では高くて日本に来るのはいやだと、こういうことになる。であるからして、これもどうしても日本の国を富まさなければならんと、それには外資導入が必要だということであれば、思い切
つて外国法人の税率を下げること。それから同時に思い切
つて個人の課税というものをうんと少くして、それも少くとも十年間これで行くという
一つの保証を与えない限りは、外資導入の回復ということはなかなかむずかしいものだ、こういうことを私は
考えます。
それからその次に申上げるのは、輸出輸入の
金融の問題でございまするが、輸出輸入
金融というものは、特別会計で予算の中に入れて、そうして今までのやり方が為替管理委員会で以て韓出ビルを買取るというときに円を出してやらなければなりません。それはその会計のほうから入
つて来る金で円を出してやる。それから輸入ビルを売
つて円をそのほうの会計に入れてやる。こういう
考えで、そしてその差額が五百万円までは日本
銀行から借りられるのだと、こういうことにな
つてお
つたのです。ところが朝鮮事変が始ま
つて以来非常に蔵出が出て来たために、もうすでに五百億円金がなくな
つてしま
つた。そこでおかしなことが起
つたのですが、輸出をしなければ死ぬかというようなこの大事な蔵出をするのに、輸出しますからと言
つて輸出為替を持
つて行
つたところが、円が足りないから輸出為替は買わない、こういう現象が数ケ月前に起
つたわけであります。それで漸くそれを日本
銀行が為替を買取るというような為替資金はどうかするというようなことで、その難関を
通り拔けたのでありまするが、私はどうしても予算の外に輸出輸入
金融というものは入れて、そうして日本
銀行と、それから為替管理委員会で以て輸出に関する限りは幾らでも円は出してやる“輸入に来たものは円は取り立てるのだということにしてや
つて行きたい。これを予算の中に入れたかというと、輸出というものがひどくなればこれはインフレーシヨンになる。つまり輸出が大きくなるに従
つて円が足らんのはインフレーシヨンだ。そして蔵入がその間に来て、通貨を收縮すればよいのですけれども、收縮できない、物が足りないということになるとインフレーシヨンになる。であるからして、輸出して、輸入するまでのそのギヤツブがインフレーシヨンになるのだからというような細かい
考えで、こういうようなおかしな
方法にな
つてお
つたのですけれども、これはどうしても改めて輸出に関する限りは幾らでも出して、輸入に関するものには幾らでも吸收するというような組織に直さなければいけない。これはどうしても輸出輸入
金融の特別の勘定を作
つてそれをや
つて行くか、或いは以前にあ
つたように為替
銀行というものを、輸出輸入
銀行というものを作
つて、それに一手に
責任を持たせて、他の日本の
銀行のビルがそこに来て売
つて、それを買う。それから今度は輸入が来たときには、日本の
銀行が取り立てたもので円がそこに行くということにして、その金が日本
銀行と為替管理委員会で見ていてや
つて行くというふうにして、輸出輸入
金融というものを非常に円滑にして行くということが今日の場合必要であると思う。ところが実に繁文褥礼と言いますか、レツド・テープと言いますか、手続が煩瑣であ
つて、通産省に許可を得て、為替管理委員会に行
つて、それから今度は
信用状を出してとい
つてや
つております間に、商売のことですから、一日で似てものがどんどん上
つて行くというようなわけで到底今のやり方で間に合わないです。ですからこれはどうしてももつと敏速に輸出輸入の
金融を改めて、
銀行或いは金庫というものを作る必要がある。こういうふうに存じております。
それからもう
一つ皆様の御注意を喚起したいことは、外国為替
銀行という
一つの階級を作
つたという間違いがあります。つまり貿易が民間貿易に移
つたときに、それで單一為替ができましたときに、外国為替というものをどの
銀行にもやらせるということはどうも多過ぎたからこれを五行にとどめる、それから今度は七行にとどめる、それから九行にして、それから十一行にした。今度はそれを今じやAクラスと言
つておる。それから今度はそのあとで来た
地方の
銀行、北陸
銀行、埼玉
銀行この間興業
銀行がBクラスにな
つたのですが、それから信託
銀行そういうふうなものがBクラスと言
つてそれがまだあと六行ある。そういうふうに変な階級を
銀行へつけた。これが大変な間違いであ
つて、いやしくも外国為替が取扱える
銀行だ
つたらどこでもやらせる、そうして輸出輸入というものを活溌にさせるというようにしないと、とかく日本人の悪い癖は、
一つの特権を得た
銀行というものが
一つ自分たちのものを作
つて置いて、他のものを排斥して、自分のほうだけでやろうとするからここに自由
競争というものはなくな
つてしまう。だからこれはどうしても為替業務を取扱う
銀行を特にきめるというようなそういう差別待遇を一切やめてしま
つて、どこの
銀行でも外国為替が取扱えるものは取扱
つて、それを為替管理委員会でどんどん売
つて行くという形式にこれを直さなければいけない。どうぞ又そういう点で
皆さんの御協力をお願いしたいと思うのでございます。
それから先ほどお誘いたしました外国
銀行の持
つておる資金から、円じやありません、向うにあるお金、ドルなり或いはスターリングなりそういうものは向うが融通してやろうと言
つたときには幾らでも借りるということでなければいけないのである。こういう点をお
考えにな
つて頂きたいと思います。
その次に私は長期資金の問題にタツチして見たいと思うのでございますが、昨年の二月にドツジ氏が来られまして、日本の安定
計画というものを立てて四月の終りに三百六十円の為替相場というものが立てられた。それから先ず五月から安定
計画というものがだんだん進行して参りまして、企業の合理化それから
金融を引締めて行く、こういうことで来たわけであります。そこで金詰りの問題についての日本の
銀行屋さんと昨年ドツジさんとの会合の際の話に、どうもお金がなくて困ると言
つたときに、ドツジさんは日本の
銀行を叱
つたわけです。どういうふうに叱
つたかというと、あなた方はアメリカの
銀行もこれは昔や
つた過ちなんだが、インフレーシヨンが進んでおる間は物はどんどん上
つて行くのだから物を持
つていますから金を貸して下さいと言うが、貸して置いた
つてちつとも心配はない、必ず金が高くな
つて返るのだからいいものでも悪いものでもどんどん貸して、借手というものの品性、素質というものにはちつともお構いなしに、金を貸して行
つた。それだから今度はいよいよ安定期が来たというときに必要なところへ出すべき金が
手許には皆悪いものが入
つて来た、そうしたときに悪いものは少しつぶれるかも知れないからまあまあというので悪いものにも少しばかり、いいものにも少しばかりというのだから本当の合理化というものはできない。これは皆あなた方が悪いのじやないか。とにかく
金融機関、というものが本当の
金融業者としての使命を全うしていないのしやないか。こういうふうにドツジさんが言
つたのであ
つて、今でもそういうふうに彼は信じていると思います。これは
銀行の日本の業者というものの誤りでどうしてもオーバー・ローンというようなことが問題にな
つておりますが、これは
銀行それ自身の力によ
つて徐々に直して行くより外に途はございません。ところが日本の悪い癖で自分の
銀行だけや
つてもそんなことをしていたら皆お得意が逃げてしまうからできないというようなことで、皆が共同して悪いことをしておるというわけではありませんが、共同してサバタージユをや
つておるということになる。一行が先がけをして自分のほうの仕事の合理化と、それから
内容の
充実ということに努力するということが足りない。こういうふうに私は見
つております。それからドツジ・ラインが昨年五月に始ま
つて今日まで来て、どういうところがドツジ・ラインとして欠けてお
つたか。つまりどういうことがまだ手が着いていなか
つたかというと、これは長期資金の問題が手が養いておりません。それは何故かというと、ドツジさんが来たときには何しろインフレーシヨンが進んでいて、こいつをとめなければいけない。そのために先ず予算の均衡から行け。政府という最大の消費者の経費を小さくして行かなければいけないということから始ま
つたのでありますから、長期資金なんという問題に触れている暇がなか
つた。今度はあります。そこで私は今度はドツジさんに持
つて行く問題は、長期資金を如何にすべきかということが問題であ
つて、そうしでその長期資金というものは、即ちどうしてファイナンスすべきか、つまり工業のほうは興業
銀行、勧業
銀行をして
金融社債券を発行さして、そうしてそれを
預金部のほうで買
つて貰うなり、外の
銀行に買
つて貰うなりしてファイナンスするということ。もう
一つは農村、漁村に対する
金融はどうしても民間から金を預かることができなければ、財政部面から何十億か、或いは何百億かの金を出して、そうして
一つの農漁業
金融勘定というようなものを作
つて、そうして極く公平な委員がそれを管理する、委員が六人か七人かでそれを管理して、運用は農林中央金庫に……帳面つけて、払う、貸出をするというようなことを
考えて行く必要があるのじやないか。どうしてもドツジ・ラインの
修正じやなくて、一年間のや
つたのに今度あとをどういうふうにしてこれを結末をつくべきかということを、私は長期の
金融を如何にすべきかということを政府及び民間がドツジさんに持
つて行かなければいけない。こういうふうに
考えます。もう
一つは日本は何かにつけて今見返資金、見返資金というのですけれども、自主性をとれないやり方はもうやめて貰いたい。それは占領軍費に
相当すべきだけのドルをアメリカでそつくりドルで払
つて貰
つて、それを日本
銀行の見返りにするならば、日本
銀行はそれに対するノートを出して来る。ですから造船の資金にしても七分三分で行く、或いは五分五分で行くとかいう問題は起らない。もう造船は何ぼで行くという……日本が自主的に決定すべき問題だ、こういうふうにして行きたいのでありますから、この点も占領軍費というものの代り金はドルで以てそのまま払
つて貰いたい。ドルで払
つたものに対して、ドルができたに対して日本
銀行の札が何千億出た
つてそれはインフレーシヨンじやありません。何故かというと、ここにドルと金の裏付けがあ
つて出して行くのだから、そういうふうに日本の
金融行政というものをできるだけ早く自主的にしなければいけない。だからもう来年見返資金でお金を借りたいという話を聞くと私は
気持が悪い。来年のことはよして貰いたい。来年は見返資金はないと思
つて頂く。再来年は勿論ない。そういうふうにして日本の自主性、
金融においても自主性を回復して日本の産業の再建、それから富国にするということに進んで行かなければならない、こういうふうに私は存じております。そこいらで
一つ……。