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1950-10-13 第8回国会 参議院 大蔵委員会 閉会後第4号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月十三日(金曜日)    午前十時二十五分開会   —————————————   本日の会議に付した事件 ○金融政策並びに制度に関する調査の  件  (最近の金融情勢等に関する件)   —————————————
  2. 小串清一

    委員長小串清一君) それではこれより大蔵委員会を開会いたします。かねてから公報で御通知いたしましたように最近の金融政策につきまして、銀行局長その他の諸君にお出でを願つたのですが、今舟山銀行局長が見えておりますから、舟山君から説明を聞くことにいたします。
  3. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 最近の金融情勢を御説明いたします。資料といたしまして主なる計数を御配付申上げました。金融情勢を判断いたします大きな指標といたしまして、通貨発行高が問題になるのでありますが、これを大ざつぱに申上げますと、今年の六月頃の日本銀行券発行高は、大体昨年に比べまして百億上廻つております。ところが七月に入りまして朝鮮動乱が勃発いたしましたので、七月末におきましては約二百億の上廻りということになつております。これを数字について申上げますと、六月末は去年は三千六億、これが本年は三千百十一億となつております。四月末は去年の三十日が二千九百五十四億、これが今年の三月三十一日旦二千百九十八億と相成つております。ところがその後銀行券発行は逐次殖えまして、最近では三百億を上廻つておるという状況でございます。特に九月の末項からはこの三百億すらもともすれば超えんとするという情勢であります。これを日本銀行の必死の操作によりまして、大体三百億内外に止めておるというのが現況でございます。これを言い換えますると、昨年の銀行券発行高に対して大体現在では一割を上廻つておる。そこで問題となりますのは、この一割上廻つておるということが、現在の経済活動に比べまして適正であるかどうかという点であろうかと思うのであります。尤もドツジ氏あたりの見解によりますれば、昨年の銀行券発行高そのものが、もうすでにオーバーで、もつと日本経済としては圧縮させておつて然るべきだという考え方む持つておらるるかに伺うのでありますが、そういたしますと、それに対して今年の一割増ということは適正であるかどうかという問題が出て来るわけでございます。これにつきまして適正通貨量というものが問題になるのでありますが、いろいろの要素を分析して考えましても、具体的に一体幾ら通貨であれば日本経済情勢にマッチしたものであるかという算出はなかなか困難であります。併しここにこの通貨発行に大きな働きをいたしまする諸要因を御参考までにピック・アップしたのでございます。資料について若干の御説明を申上げたいと存じます。  先ず第一にこの日銀券発行高推移、これをそれぞれの年における前年の年末の発行高を百といたしましたときに、各月末の銀行券数字がどうなつているかということを昭和十二年、二十四年、二十五年について比較したのでございます。十二年につきましては御覧の通り三月末八四%、それが六月末八八、七月末八五、八月末八九、九月末九一と推移しているのであります。これが昨年は一段上の欄を御覧の通りでありまして、十月十一日現在におきましては八四%となつておりますのが、本年は九三%というふうになつておるのでございます。そこでこの間における経済活動推移というものを次に若干掲げたわけでございますが、いずれも昭和七年—十一年を基準といたしまして指数を取りますと、今年は廃業活動指数が三月に一〇一・六というのが八月には一〇八・五になつておる、これは二月に対する増加率が六・九%ということになるのであります。その下に鉱工業生産指数を掲げておるのでございますが、これは御承知でもありましようが産業活動指数の下にあります鉱工業生産の諸指数に電気、ガスの供給量というものを加えたものでございます。そこで夏場のものの生産が若干減少いたしますので、総合指数といたしましてはこの三月に対する増加率が減少するのであります。それから物価のうち東京卸売物価指数を見まするというとここにございますように、対三月十一%の増加でございます。貿易はここにございますように、輸出の方は三割の増加という数字を示しておるのであります。  それから賃金は一一%の増加、これに対しましてC・P1は一・七%の減ということになつておるのであります。東京では一・二%の減でございます。これらの要素通貨発行高関係いたしますというと私共の感じといたしましては、対前年一割ぐらいの増加ということはさして問題にすることはないのではないかという感じもいたすのでございますが、ここで心配になりますのは、この増加趨勢が年末に向いまして拡大して行く傾向があるということであります。それから先ほど申しましたように前年を基準といたしますが、前年の信用量自体が適正、であるかどうかということを一応検討の必要があるかと思うのであります。そこで引続きましてこの資料について若干の説明を補足いたしますれば、日本銀行券増発要因といたしましては、一言にして申しますれば政府資金揚超日本銀行信用でカバーしておるということになるのであります。六月は三十億の揚超、これに対して民間資金は二十三億の増、その結果七億の通貨の増というふうにいたしまして、逐月この通貨増加しておる。これは表に現わされた通りでございます。  次に財政資金動向につきましては、こういう政府資金揚超を反映いたしまして、国庫の余裕金は八月末は百八十億でございましたのが十月九日には二百十五億に増加ということになつております。これらのうち指定預金と申しますのは今年の二、三月頃金融資金逼迫に対処いたしまして、市中金融機関の約百五億の国庫余裕金を預託したそれが今日まで続いておるのでございます。期限は当時二ヶ月、三ヶ月、四ヶ月、五十億ずつ区切つたのでございますが、期限を経過しました後も金融界情勢に鑑みまして、そのまま据置ついて今日に至つたのでございますが、後で申上げたいと存じますが、この引上げが当面の問題となつておるわけであります。  それから預金部資金につきましては、この預金部資金の中枢を示します郵便貯金増加は年初来、今年の上半年の間は顕著な増加を示しまして、月四十億乃至四十五億ぐらいの増加を示しておつたのでございます。八月頃からその増勢は鈍化をしまして約半分になつておるかと思います。で、九月末、殊に今月に入りまして数日の間は郵便局郵便貯金の受拂としては赤を出しておるところもあるような次第でございますが、併し御承知通り預金部資金運用が極めて限定されておる関係上、余裕金は八月末の二百五十億に対しまして十月十日には二百六十五億というふうになつております。但しこれは糧券その他に運用されておるのでございまして、一つの問題といたしましてはこれは余裕金ではない、糧券を持つておる限りはこれは一つ運用であるという見方もあるような次第でございます。  それから次に見返資金につきましては八月末の余裕金五百四十七億に対しまして十月十日には六百二十四億、逐月増加をいたして参つたようなわけであります。  次に市中金融機関動向といたしましては、日銀貸出はこういうふうに日銀信用の膨脹に伴いまして毎月のように殖えておるのでございます。その計数は表に現われております通りでございます。  それから国債買上オペレーシヨンの方は債務償還が第一四半期だけで停止されておりまして、後は日本銀行オぺレーシヨンといたしまして、市中金融機関から国債を買上げておるのでございます。七百七十億、八月四十四億、九月三十五億となつておりまして、日本銀行といたしましても貸出の方が増加いたしますので、国債買上オペレーシヨンの方は極力抑制しておる方をとつておるのでございます。  次にこの日本銀行貸出の内容が問題となるかと思いますが、次の表にございますように、割引手形の方はさしたる増減はない。これに対して貸付金で殖えておるということが注目すべき現象かと思うのであります。先に出て参りました政府資金余裕金、これを預託関係だけを引抜いて見ますというと次の表でございまして、預金部では最近百八十三億になつております。このうち百億は御承知通り昨年末金融対策といたしまして金融機関に預託した金がそのままになつておるのでございます。八十三億は配炭公団の滞貨を処分し、又貿易公団のうち繊維関係、これの滞貨を処分いたしますために、いわゆる紐付預託をいたしました分がこれでございます。それから国庫余裕金の預託は先程申上げました通りでございます。債務償還の次の表にございますように、預金部及び日本銀行に対してはまだ一文も実行されておらないのであります。市中金融機関に対しましては八十億ばかり、その他は電話公債、その他の一般人の所有に対する既定計画の実行でございます。この合計は約二百億くらいになるかと存じます。  次に全国銀行預金及び貸出増減を掲げたのでございます。ここで著しい特徴は、預金増加に比べまして貸出が上廻つている、いわゆるオーバーローンの形が顕著であるということでございます。ただ九月末は決算期でありまして、預金について多分に扮飾がなされました関係上、預金増加額は例月に比べまして著しく殖えておるような次第でございます。  ここで大体銀行貸出の原因はどういうことであるかということの検討の必要があるかと思うのでありますが、最近市中銀行についてその項目を拾つて見ましたところによりますると、貸出増加要因といたしましては、貿易量の増大、それから特需関係資金動き、それから物価の騰貴、次にこの人件費の増ということが考えられておりますが、これは必ずしもベースが上つたものとは思いませんけれども、残業手当とか、或いは会社の営業の活況に伴いまして、従来遅配であつた過去の給與が若干動き出しているといつたような現象も認められるのであります。それから貸出増といたしましては、市中における資金繰りが非常に窮屈な面がありまして、そのために手形が長期化して行くという現象があるようであります。それから次にはまあいわばストツク資金増とも申すべきものでありまして、例えば肥料のごときは公団配給を廃止いたしましたので、少しずつ市中に対する金融の杉でストツクの抱きかかえ資金が出ておるのであります。それから鉄鋼に対する補給金の廃止ということや、或いは関西以西の風水害の復旧資金といつたような要素も数えられるかと思うのでございます。只今申上げましたことを相手方の業種別について見ますというと、肥料、石炭、製鉄というようなものが多いそうであります。引取資金といたしましては鉄鉱石、それから原油、輸出パルプ、原綿、原毛の引取という資金需要が目立つておるのでございます。  これに反しまして銀行貸出回收はどうかという点でございますが、報告によりますれば概ね順調ということになつております。但しこの順調というのは書換えました継続融資の分が相当あるのではないか、併しその間利息の拂込というものは行われている、こういうことかと思うのでございます。そこで次に只今申上げましたところの特需の数量でございますが、ここにございますように、特需発注高、これは各方面の資料を収集いたしましたので、推定でありますが、物資に対しまして円換算二百三十九億円、サービス百七十一億円、合計四億円を超えるのでございますが、この日銀の持つております特需手形額面金額は一月末で、五十九億円、一割少々というところになつておるのでございます。  尚ついでに社債、金融債消化状況を掲げますれば(五)の通りでございます。六、七月頃がこの金融債の消化は非常に……始まつたばかりでもあり、スタートは非常に好調であつたのでありますが、九月になりましてやや低調になつて来たという現象が窺われるのでございます。まあこれらの諸要因が働きまして日銀券発行は、冒頭に申上げましたような動きを示しておるのかと存ずるのであります。  そこで今後の政策といたしましては、今後の金融動きに対する見通しもなかなか困難でございます。日銀行券の膨脹の傾向が相当警戒すべきものがあるということは申せるかと思うのであります。現在までの信用量というものは止むを得ないものといたしましても、今後相当引締めて行かなければならないかと思う。但しこの通貨信用の増量というものはそういうことでございますが、経済界の各部門につきまして、信用の潤沢になつたところと、尚依然としてこの資金需要の一逼迫しておるところ、こういうふうにむらが出て来たということは明らかな事実として申せるのではないかと思うのでございます。そこで大観いたしますれば、信用は全体としては引締めるけれども、これらのむらを平均化して行くということは、資金の質的な構成といたしまして相当考えなければならんのではないかと思うのでございます。  今後の通貨金融の施策につきましては、ドツジ氏も来ておられまして、万端指示を得なければならないので、確定したことは申せないかと思うのでございますが、当局といたしまして大体どういう点が注目すベきものであるかということを考えてみました結果を、暫定的なものでございますが、若干申上げてみたいと存じます。  第一は只今申しましたように、飽くまでインフレの再発というものを予防するという見地におきまして、日本銀行信用調整力の強化を図らなければならないのではないか。必要な資金は出しますけれども、漫然と資金が出るということにつきましては、何らかここに調整力をもつと強力ならしめるということか必要ではないかというふうに考えるのであります。  それから何と申しましても民間資金蓄積が十分でない。これらがいわゆる銀行オーバーローンというような問題にもなつておりますので、民間資金蓄積を推進すると共に、又金融機関に対して資金が集まるという方策を講じなければなるまいと思うのであります。  それから次に市中における資金の質の問題でありますが、従来は市中において、元来長期資金で以て賄うべき方面に対して、日銀信用による短期資金で賄つて来たという傾向が認められるのでありますが、そうして一面長期資金の供給が非常に不足であるという訴えが強いのであります。これらについて是正をして行く必要があろう。この一面の問題といたしまして、例えば預金部資金のごときものは元来長期の性質を有するものでありまして、これが棚上げされまして食糧証券等を保有しておるというようなことは、どう考えましてもその所を得ないというふううに考えてよろしいのだと思うのであります。この意味におきまして、預金部資金市中還元ということが必要であろうと考えるのであります。それやから日本の現在の状況におきましては、財政による支出とそれから市中金融というものが画然と区分されておる。こういう建前になつておりますのでありますが、ものによりましてはやはりこの中間を縫う一つの特殊の金融を考える必要があると思うのであります。現に存在いたしますものといたしましては、国民金融公庫活動、或いは住宅金融公庫活動でありますが、この意味におきまして農林漁業金融公庫のごときものは是非とも実現させたいものであるというように考えておる次第であります。  それからもう一つ資金の流れが不自然になつておる原因といたしまして、金利体系のひずみがあると思うのであります。戰前の状態を一応ノーマルなものと仮定いたしますと、現在の金利上昇率というものが預金とか、貸出とか、長期証券とか、それによりまして一律でない。これらについて何か下自然なものを感ずるのでございまして、結局はそこまで徹底して堀下げて行かなければならないのではないかというふうに考えておるのであります。只今資料がございましたので若干金利動向につきまして戰前昭和二十五年五月との倍率を見てみまするというと、日銀割引歩合が戦前はこれは三・二八%、これが昭和二十五年五月には五・一一でありますので倍率は一・五五であります。主なものだけを拾いますが、銀行貸出金利につきましては戰前が三・六五%、五月が九・一二でありまして二・五〇の倍率であります。それから国債利廻り戰前三・九三、これが五月には五・五〇、倍率は一・四〇、金融債利廻り戰前が四・二八、五月には八・五〇、倍率は一・九九。これに比べまして定期預金の利子六ヶ月ものは、戰前は三・三、五月には四・四、倍率は一・三三であります。普通預金利子戰前一・八二、五月には一八五、倍率は一・〇二、こういうふうになりまして、預金利子上昇歩合が非常に低い。これは現在金利を考えるに当つては引下げを考えることは適当であるが、反騰ということはおかしいという考え方をとつておりますために、預金利子について調整を加えておらないのでありますが、果してそのままでいいのかどうかという点が論議の種となつておるわけであります。  元に戻りまして、先ほど申しましたようないろいろの考え方に基きまして、具体的にどういう方策が考えられるかということを一言申し上げたいと思いますが、通貨の調節につきまして量的の統制と、それから尚質的の統制と両面あるのでありますが、これらの資金の規制につきましてこの融資準則による貸出順位表のごとき法的規制というものは過去においても実施いたしましたが、いろいろと抜け道もあつて万全の効果を期し難い。又統制を外して行くという方向から申しましても必ずしも適当でないと考えるのでありますので、これは止めまして、やはり金融操作の常道でありますところの日本銀行金利政策を中心とすべきものかと考えるのであります。そこで日本銀行の公定歩合が低過ぎるという事実を是正いたしますために、この際高率適用制度並びに歩合につきましても改正をする必要がないかと考えまして研究しておるのであります。こういうふうに大体量的に規制します間において尚質的規制といたしましては、例えば輸入金融の疏通とか、輸出金融或いは特需金融円滑化といつたようなものを図つて行かなければならないというふうに考えるのでございます。財政收支金融に大きな影響を及ぼすことは申上げるまでもないのでありまして、これらについて従来ともすれば財政資金動き金融動きとがなかなか一体化しない憾みがあつたのでありますが、これらについては今後も引続き努力して行かなければならないかと思います。この第三四半期国庫收支が撒超になる時期でありますから、債務償還のごときは第三四半期はこれを停止すべきものかと考えるのであります。  それから第二は、民間資本蓄積について十分な努力をしなければならない。これが銀行オーバーローンを是正することにもなるのでありまして、この会社の資本市場活発化を図る、或いは金融機関資金吸収便にならしめるということが必要でありまして、これは税制に関係するところが非常に多いと思うのであります。それから次の項目といたしましては長期資金の確保をいたさなければならないのでありますが、ドツジ氏の構想によりましても産業設備の改良ということにつきましては相当力を入れておらるるようでありまして、見返資金の円滑なる放出等も期待できる段階になつたかと思うのでありまするが、尚預金部資金につきましてもこの運用について是非とも弾力性を持ち得るように希望して止まないのであります。  それから特殊金融の面につきましては先ほども一言いたしました農林漁業金融公庫是非とも必要と考えまするし、又輸出金融公庫はこの予算にも計上せられておりまするので、早速法制化の手続をとりたいと考えておるのでございます。尚民間には復金の機能を再開せしめまして、或いは第二復金とも言うべきものを作つた方がいいんではないかという声があることは御承知通りでございます。金利体系調整につきましてはなかなか影響するところの多いものでありまして、まだ研究が十分に進んでおりませんのであります。長期金利短期金利との調整、或いは政府資金による、例えば見返資金金利市中金利との調整といつたようなことを考えるべきでありまして、産業の負担を軽からしめる意味において、又国際の水準に近付けるという意味においてできるだけこれが低下に努めるということが必要かと考えられる次第でございます。只今申上げました政策的な部面につきましては、一つ事務当局で考えておりますことがございまして、この終局のことはもう少しドツジ氏との交渉というものも待たなければならないかと考えるのでございますが、御参考までに一言いたしたところでございます。極く簡單でございましたが一応御説明を終りたいと思います。
  4. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 数字の点ですね。六月末日銀券発行高三千六十二億、これは私が日本銀行統計で調べたのによるとちよつと違うのですがね。六月三千百十一億……。
  5. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 今年は三千百十一億です。恐縮いたしました。ミスプリント……。
  6. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると三枚目の貸出の七月千百五十二億となつておるのですがね。八十二億そちらの……。
  7. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 貸出は今年は千百八十二億です。これは間違いないです。
  8. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 日本銀行統計は五十一億になつておりますが、もう一遍お調べ願いたい。
  9. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) はい。
  10. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから六月の預金増ですがね。全国銀行預金の増六月百六十八億というのが、私の方の日本銀行の月報では百九十五億となつているが、それも一つ調べて頂きたい。
  11. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) その辺も調査いたします。
  12. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それから九月の全国銀行増減は出ておりますが、絶対額は幾らですか。
  13. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) これはまだ正確なところ分らないかと思います。只今調べまして申上げます。
  14. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それに関連いたしまして、絶対額と同時にいろいろな定期制預金というものがどのくらいになるか、いろいろなドレッシングとか、両建とか、政府預金とか、そういうものを引いてそういうものの純預金貸出の比率というものを若し願えたら調査して貰いたい。
  15. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) いつも甘えておりますから、拵えさして届けたいと思います。
  16. 黒田英雄

    黒田英雄君 全国銀行預金貸出増減の、九月はちよつと殖えているのはどういうわけですか。
  17. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) これはドレッシングが行われまして、毎年銀行決算期である九月末は銀行の上期の決算がございますので、やはり成績を誇示するために大きな数字を出す癖がございまして……。
  18. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それはむしろドレッシングの問題だと預金の増か九月六百四十六億も殖えている、その面じやドレッシングの結果と言つていいでしようが、貸出が殖えている前の月、八月に三百八十一億あつたのに九月に三百五十九億になつている、これはドレッシングをやつたに拘わらず、尚且つどうしても止むを得ないものがこんなに殖えているという意味じやないですか。従つて資金需要は若しドレッシングをやらなければもつと沢山になつていた筈だということにならんでしようか。
  19. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 預金の増をドレッシングするためには手許現金が殖える、そういう形で行きますから貸出は大体実勢を示しているのじやないかと思います。
  20. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 質問してよろしうございますか……。
  21. 愛知揆一

    愛知揆一君 その前に、この見返資金收支実績表資料として配付されておりますが、この見返資金の収支の計数についてちよつと御説明頂きたい。
  22. 小林政夫

  23. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 見返資金とか預金部の方の御説明はもう少しあとに願つて局長は何かお急ぎのようだから……。
  24. 小串清一

    委員長小串清一君) それではどなたでも質問を早くやつて頂きたい。
  25. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 ちよつど質問したいのですが、年末の予想はどのくらいのお見込になつているのですか。
  26. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 先ほど申上げましたように、去年の一割増というような見当で参りますと、年末が昨年三千五百五十一億でございましたから、三千八百億乃至九百億ということになりますが、いろいろ計算を追うて通算して参りますと、それでは少し不足のようで四千億を超えまして、或いは四千百億前後ということになるのでございます。併しこれを公示いたしますことは相当問題もございますし、又今後の金融政策によつても変るもつのであろうかと存じまして、実は今年末の通貨発行最高限度を決めることはまだ結論に達しておらないのでございます。
  27. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それから今政府の方のお考えになつている金融調整ですが、これは一応枠を作つて大体適正通貨量というものを推定して、そこで抑えて、それに経済界を逆にマッチさせて行くという考え方のようですが、その場合国内の方の信用政策でそういう点を抑える政策だと思うのですが、為替の方で調整するという考えは今のところ、海外の物価高が国内に波及するのを抑えるため、国内の信用政策で抑えるか、或いは為替届で調整するか二つあると思うのですが為替の問題は別段今のところ触れないというお話があつたのですが、これは今後海外物価がだんだん上りまと、国内の信用政策だけでインフレを抑えられるかどうか問題なんですが、為替の問題についてほどうですか。
  28. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 為替レートの変更の問題については、担当部局もあることでございますが、現在のところ政府としてはそれに触れた研究をする段階になつておらんのであります。
  29. 小串清一

    委員長小串清一君) り御質問中でございますが、先刻資料として出されました預金部の貸借、それから見返資金收支の問題について簡單に御説明願つてその後にしたらどうですか……。
  30. 大島寛一

    説明員(大島寛一君) それでは御手許に配付されました資料につきまして、見返資金の収支の状況を御報告申上げます。お手許の資料は本年九月末現在の総計でございまして、昨年度見返資金が設置されまして以来の、両年度に亘りまする累計を合せて書いてございます。昨年度につきまして簡單に申上げますと、御手許の二段目にその合計がございまするが、收入といたしましては合計千二百九十三億余万円に対しまして次に線の引いてありますところに支出がございますが、その最初の欄にございますように、支出の合計が千百四十億余でございます。従いまして一番左の括弧の中に余裕金がございますが、昨年度末から今年度にかけまして、百五十二億余万円の余裕金が繰越されたわけでございます。これに対しまして、本年度に入りましては、第一第二両半期の合計といたしまして、收入は九百四十一億余万円でございます。但しこの中には表に現われておりませんが、昨年度からの繰越百五十二億余万円を含んでおりますので、本年四月以降の実際の収入といたしましては、七百八十九億四千万円になつております。次に本年四月以降の支出でございますが、九月末までの合計は三百十一億余万円でございます。その内訳を申しますと、公企業といたしまして百六十六億余万円でございます。暫く数行飛ばして頂きまして、私企業といたしまして合計九十一億に相成つております。債務償還につきましては、本年度は先ほど銀行局長より御説明申上げましたようにまだ実行いたしておりません。  次に再建及び安定という費目がございます。これは一種の予備費的な項目でございまして、九月末までに合計五十二億九千六百万円を支出いたしております。差引九月末。余裕金は、先ほど申しました前年度からの繰越を加えまして六百三十億余でございます。四月以降の收支だけを取つて申上げますと、收入七百八十九億円に対しまして、支出は三百十一億でございますから、四月と九月の半ヶ年間に差引四百七十八億を引揚げたという結果になつております。  尚余裕金運用の方法につきましては、この表にもございますように、食糧証券その他政府の短期証券といたしまして四百六十九億、その他の残余は日本銀行への預け金といたしまして、百六十一億を持つておるわけであります。  この機会に若干実積につきまして全体の計画との関係等を御説明申上げます。御承知のごとく先般の国会におきまして成立しました現在の見返資金の予算におきましては、本年度の総額が千五百八十一億円と相成つております。その史と使途といたしましては、公企業に対しまして四百億円、私企業に対しまして四百億円、債務償還といたしまして五百億円、その他経済再建及び安定費、つまり予備費的な費目でございますが、差引の二百八十一億円が計上されております。その上半期におきまする実行状況は、只今御説明しました表によつて御覧通りでございまするが、公企業の部面におきましては、大体順調に司令部の許可を得ることができるようになつて参りました。現在まで計画四百億に対しまして、正式に決定いたしておりますのが三百九十億余になつております。その内訳といたしまして、電気通信事業百二十億、国有鉄道四十億、国有林野事業三十億、住宅金融公庫百億、公共事業百億余という内訳でございます。第二四半期の後半に至りまして、可なり大口の許可を関係当局から貰うことに至りましたので、今後第三、四四半期にかけまして、この公企業に対する支出ば円滑に推移する見込でございます。  次に私企業でございまするが、私企業四百億の予算の内訳といたしましては、電力に対しまして百五十億、造船に対しまして百三十五億、中小企業に対しまして十二億、金融機関の優先株式等に対しまして六十億、二の他石炭、鉄鋼、肥料等々の重要基礎産業に対しまして四十三億という予定になつております。これは一応の予定でございまするが、その上半期における実績は、今御説明申上げましたように、九十億に止まつております。その内訳はこの表にもございますように、銀行等の優先株式は、五十二億すでに実行済みでございます。それを基にいたしまして、金融債発行が相当大幅に、きるようになつたわけでございます。即ち見返資金から五十二億を出しましたことによりまして、それに数倍する長期資金の確保ができるようになつたわけでございます。その他直接投資の分野におきましては、電力が最も多額を占める予定でございましたが、これにつきましては、すでに御承知のように、未だ関係方面の許可を得るに至つておりませんで、政府といたしましていろいろ折衝懇請をしている段階でございます。海運につきましては、現在までのところ、昨年度八十数億を投下しまして、新造並びに改造の事業をやつております。その継続工事の進捗に応じまして、二十六億の許可を得、実際額としまして二十二億を実行したわけでございまするが、尚、更にいわゆる六次造船の計画を目下策定中でございます。その他の石炭等につきましては、上半期の終りに至りまして、可なり正式決定を見るようになつて参りました。現在まで四十三億の計画に対しまして、二十一億ばかりの許可を得るに至つた次第でございます。  やや細目に入つて恐縮でございますが、今後の見通しを一応申上げますと、私企業につきましては、電力、海運の新規計画等を、早く承認を受ける段階に持つて参りまして、それによりまして放出を円滑ならしめるようにする必要があると考えております。今後第三四半期、即ち十二月末までの見込につきましては、尚援助物資がどれくらい入つて参りまするか、或いは今申上げましたような県案の解決の速度等が、いろいろ噛合つておりますので、正確な見通しを申上げることができない段階でございまするけれども、大体の感じとして、敢えて申上げまするならば、約三百億乃至二百五十億程度の收入を見込みまして、これに対しまして二百乃至二百五十億程度の歳出を期待したいと考えているわけでございます。以上大体の見返資金の概況でございまするが、更に今後いろいろの点におきまして努力をいたしまして、收入と支出が円滑に調整できるようにしなければならんという点を特に考慮しているわけでございます。
  31. 舟山正吉

    説明員舟山正吉君) 預金部資金につきまして御説明申上げます。御配付になりました預金部貸借対照表御覧願いたいと存じますが、九月末の現況におきまして、右の欄の郵便貯金は、千四百七十億に達しております。その他大口の資金源といたしましては、簡易生命保険の二百二十億、それから厚生保険の二百七十億、この厚生保険の資金は相当馬鹿にできない増加を示しているのであります。その他は他の政府関係資金が、法律の規定等によりまして、預金部に納入せらるべき合計長期原資といたしましては二千五十五億、これに対して運用はどうなつておりますかというのが左の欄でございまして千三百十六億、即ち七百億ぐらいの長期原資というものが長期には運用せられておらない、短期に運用せられておるという現象を現わすものでございます。運用の大きな項目は従来から残つております長期国債五百十三億、小さい項目は大体古くからの運用の残りでございまして、取立てて申上げる意味は少いかと存じますが、4の地方公共団体の貸付金、これは字の現わします通りでございますが、現在御承知通り預金部資金は原則として、国債、地方債に限るという建前から、地方公共団体に対する貸付金の形になつておりますものが非常に多いのでございます。その他は先ほど申しましたように、大した意味を持たんかと思います。それから短期原資と申しますのは、下にあります右の欄で浮動性原資で十日か二十日で引出しに来るといつたようなことではないが、長期固定にまで至らんという原資でございますが、これが失業保険の五十九億、これを筆頭といたしまして総計百四十二億あるわけでございます。これに対しまして短期運用の方は長期原資の方から廻つて参りまして、合計が六百三十六億ということになつております。このうち公団貸付金が二百五十三億、公団の市中金融を切換えまして、預金部資金に使うということになりましたので、これが現在こういうことになつておりますが、これは将来公団が廃止せられますと、又なくなる金でございます。それから地方公共団体の短期貸付金、これは年度内の融通資金を地方公共団体に貸付けるのでございまして二百億。それからこれは先ほどの御説明に出て参りました金融機関の預け金が百八十一億、内訳は指定預金が九十九億、滞貨金融が八十億ばかりということになります。一番下の欄の原資、並びに資産は極めて短期なものでございまして、特に御説明の用はないかと思いますが、運用の面におきましては、預金部資金の性質といたしまして、遊ばして置くわけに行かないので、糧券に百七十二億、外為資金証券に百十八億運用しておるのでございます。これは九月末の現況でありまして、或いは問題になるのは今後の預金部資金の収入見込かと存じます。これは印刷が間に合いませんで、御配付の運びに至つておりませんが、結論から申しますと、今年度末には五百十一億ばかり余るという形になるのでございます。これを四半期別に申上げますと、第一四半期には八十四億の支拂超過であります。その大きな要因をなしますのは、地方公共団体に対する短期融資、これは地方税の不成立に伴い暫定繋ぎ融資をいたしました金がまとまつて出ておるのであります。この関係で第一四半期は八十四億の支沸超過でございます。第二四半期は百三十六億の引揚超過ということになつております。第三四半期の見込は、この金融機関に対する預託金品を引揚げるかどうかということによつて計画が非常に違つて参るのでございますが、回收をいたしませんと大体二百五十三億の引揚超過になるかと考えます。第四四半期のことはなかなか見当も付きませんけれども、二百億ばかり引揚超過になるものと見込んでおる次第であります。この地方公共団体に対する融資というものは年度内の短期融資でございますので、年度末までには返つて来る。そこでこの運用の面といたしましては、確定いたしておりますのは地方債、当初決めました三百七十億が市中に残つております。高利地方債を預金部資金で引取る予定額が三十億ございまして、四百億がこの運用先として確定しておる。その他公団からも年間を通じまして八、九十億は返つて来る予定でございますので、その結果が五百億ばかりの引揚超過になるという見込を立てておるのでございます。
  32. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは舟山局長の御説明はこの程度にして、安本からもお見えになつていますから、安本の内田金融局長のお話に移ります。又尚質問のおありの方はこの次の機会にお願いいたします。安本の方の内田さんにお願いすることは、本年度の資金計画について第二四半期までの実績と、並びに後半期の計画について御説明を願いたいと思います。資料が若しおありでしたらお配りを願いたいと思います。
  33. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 資料は実は持つて来ておりませんです。御注文を承つておりませんでしたし……。それでは私から本年度の財政金融の金の動き方の概要につきまして全体論を一つ申上げたいと思います。金の動き方は申すまでもなく財政関係産業金融関係。二要因で動くわけでございまして、今までの実績につきましてしばしば世間でも申されますように、財政が非常に引揚超過をする、従つてそれたけ資金民間から引揚げられるから、一方輸出の増強なり生産の増大なり、或いは物価の変動に応じて政府としては資金不足に堪えられないために、日本銀行貸出増加を通じて市中銀行からそれだけ資金市中供給される。ここに資金オーバーローンの形はこれは止むを得ないところの姿である、その間の通貨は昨年に比べると若干殖えておるけれども、全体としてはそう乱れた足取りをしていないのじやないか、こういうことが言われるのでありますが、それを実績の数字についで申上げますと、第一四半期及び第二四半期を申上げますが、先ず第一四半期では財政関係では預金部、見返賛金一切を通じまして、世間の言われる通り三百四億円の財政関係で引揚超過をいたしております。そのうち引揚の主要の要因なつておりますのはやはり見返資金でありまして、見返資金が二百一億円近くの引揚をしたままでおります。見返資金は先ほど大蔵省からもお話がありましたように、すでに昨年度において百五十二億円の金を引揚げたままで今年に繰越してありますから、第一四半期末における見返資金余裕金というものは、今申上げました二百一億円にそれを加えて三百五十三億円見当になる勘定でありまして、これは手許に資料がございませんが、恐らく大蔵省の配られた資料も第一四半期からの見返資金の手持はさような数字なつておると思います。ところが預金部につきましてはこれも只今大蔵省からお触れのこれは引揚要因をしていない、むしろ預金部資金は拂出超過になつておる。と申すのは、例の地方税不成立に伴いまして一般会計から平衡交付金を前拂いすることに相応じて預金部の繋ぎの融資をいたした結果でありまして、つまり言い換えますと預金部は第一四半期に集まつた郵便貯金なり簡保の郵便年金その他の金を一般に出しているので、従つて預金部は大きなポケットを作つておつたということは、少くとも第一四半期に関する限り当つておらないわけであります。預金部は同じ期間では百五十四億円を郵便貯金その他で受入れて、二百三十八億円を地方公共団体その他に貸出しておる。従つて八十四億円だけは支拂超過になつておる。こういう形になつておりますが、併し全体を通じますと、今の見返資金なり、或いはその他の特別会計等の関係で三百四億円の引揚超過をしておる。第二四半期におきましてもやはり同じ形が実は出ております。この期間の引揚超過は、これは預金部をも含めますと二百三十八億の引揚超過になつておりまして、これもこの主因は見返資金でありまして、この期間には見返資金二百七十六億円の新らしい金を溜め込んでおります。尚又預金部につきましてもこの期間に至りますと今度は支拂超過ではなしに、これは主としてこの第二四半期の終りの方に近くなつてからだんだん金が入つて来たものと思われますが、預全部は百三十六億円の資金を引揚げたままになつております。従つて第二四半期については世間で言われますように財政関係預金部が溜め込んでおる、それを世間に出さないから産業界は堪えられないので、日銀貸出の方がオーバーローンなつておるということは当るわけであります。尤も預金部につきましても、先ほども或いはお手許に大蔵省の資料があるかも知れませんが、第二四半期におきましても実は郵便貯金とか、簡易保險、厚生保険なんかに使える金が溜つて、それらが引揚げられたのではないのでありまして、これは私は弁解するわけではないのですが、第二四半期の金が殖えた原因は浮動性の預金、短期預金郵便貯金や簡易保険の金以外のごく短期に動く金がたまたま入つたために、数字の上では百三十六億の引揚げとなつておりますが、いずれにしましてもさような形になつて来ております。従つて本年度に入りまして九月までを合計いたしますと、財政関係で五百四十二億円の引揚超過をしておる。そのうち見返資金が四百七十七億円の引揚超過になつておる。これは見返資金は先ほども申しますように、十この外に去年から繰越した金が百五十二億円ばかりあります。から、九月末現在の見返資金余裕金、つまりポケット・マネーの六百二十億というものを放出しないで持つておりますが、この百五十二億円、これは去年の金ですから、結局今年のデフレには関係がありませんから、今年のデフレ原因が起きた引揚超過は四百七十七億円程度、1預金部はこの第一四半期と第二四半期を通じますと、それは短期資金であれ、長期資金であれ、これも又五十二億円ばかりの引揚超過になつておりまして、大体がやはりこの預金部と見返資金関係で引揚超過が生じておるというふとは、これは言い得る形ができております。その半面それだけの引揚超過はやはり金融で埋めております。第一四年期におきましては銀行その他の金融機関に集まりました金が四百六十四億円集まりましたところへ、金融機関貸出が殖えまして、これは貸出と申しましても厳密には金融機関の引受ける社債や株式も入つておりますが、金融機関かち供給いたしました金が七百四十六債円で、結局金融の尻は二百八十二億円の金が不足しておる。財政資金の大体とんとんまでは金融で埋めておる。その他若干、復興金融金庫の関係とか、閉鎖機関の関係とか、若干の変化がありますが、大体財政の尻を金融で埋めまして、通貨は第一四半期においては二億円ばかり減つております。つま昨年度末の、言い換えると本年三月末の通貨発行額三千二百八億円に対して、六月末の発行額は三千百十一億ということで、フラットよりちよつと減つておる、デフレだデフレだと心配され始めた時代でございます第二四年期におきましてはこの金融機関関係では八百十九億円の金を集めましてそれを貸出す、或いは社債の引受等によりまして金融機関から千二百三十四億円金を出しております。その結果金融機関に金の足りない尻が四百十五億円というふうに大き、く出まして、これが同じ期間の、先ほど申上げました預金部を含めて大きく財政の方に二百三十八億円金が出ておりますために、通貨の尻が百七十六億円ほどふくらみまして、九月末の通貨発行高は御承知のように三千三百億に正に達せんとする三千二百八十七億円という形になつておりまして、金融機関の方が財政の尻を洗つて、尚それ以上出している。この出し方はこれは結局金が日本銀行から出ますけれども、金融機関に対する貸出と、それからいわゆるマーケット・オペレーシヨンと申しますか、金融機関保有の国債買上げをやつておるわけであります。この期間に予算に載つておる政府の債務償還等が金融機関にどんどん行われたならば、日銀の勘定はそれだけ改まつて日銀の貸増しを生じないで金融機関に金が入つたということにもなりましようか、この第一四半期における債務償還合計百六十二億円の債務償還をいたしておりますが、この第一四半期におきましては債務償還の出しました先は金融機関に対して七十二億円、これが金融機関資金源になつておるわけですけれども、その外一般の個人や会社が保有する分に九十億円ほど出しまして、合計百六十二億円、日銀に対しては僅かの債務償還しかいたしておりません。第二四半期以降になりますと、債務償還が実は順調に行かなくなりまして、いわゆる予算に載せてある債務償還政策のための償還は暫く停止した恰好になりまして、期限その他の関係て止むを得ざる国債の償還が全体で四十一億円行われたに過ぎません。この当時からぼつぼつ通貨の増発が目立つて参り、いろいろの関係から予算の執行としての債務償還がこの通り抑えられておつた姿が見えておるわけであります。まあこのようなことで第一四年期、第二四半期は済みましたが、昨今頻りに心配される第三四半期関係になりますが、第三四半期はこれは財政関係では例年のことでありますが、一転して現在の見通しでも資金の撒布超過、支拂超過になることはもはや明らかであります。この要因はいろいろありますが、やはり一番大きいのは何と申しましても供米代金の支拂でありまして、供米代金、つまり食糧管理特別会計の関係では、恐らく七百億円近い支拂超過の関係が起つて参ると思われます。もう一つ原因は近頃輸出の増進、殊に特需等の関係を受けましで外国為替特別会計の支拂超過がだんだん目立つて参り、外国為替特別会計としては御承知のように先般ユーザンスの問題が解決いたしまして、輸入をする一般国民としては、これは金融機関から金を借りなくても済みますし、又外国為替特別会計としても今日明日金がないという状態がなくなりまして、輸入に見合う外貨を一応日本銀行に売りまして資金を調達しまして、それで金を作つて一般の輸出なり特需なりに関する支拂をいたすわけでありますが、併しこの場合外国為替特別会計が調達する金は民間から引揚げる金ではなしに、国庫と同調をいたしておるところの日本銀行から金を受取りますために、それを財源として支拂われたのは、要するに支拂い放しという形が出て参るわけでありまして、こういう両方の原因が重なりまして、第三四半期には可なり大幅の支拂超過を生じます。この数字は今後のことであります。し、殊に今申上げましたような幾つかの要点、見返資金がこの期間中にどのくらい放出されるか、預金部資金の姿がどうなるか、債務償還をどうするか、更に又先般銀行局長からちよつと触れておられたようでありますが、預金部関係において昨年民間金融機関に貸しました金が百億近く、九十九億ばかりある筈でありますが、そういうものを財政資金として引揚げるかどうかという問題、更に又同じことでありますが、預金部からではなしに政府の当座預金の中から現在市中金融機関に百五十億近い指定預金をいたしておる。言い換えると金融機関が詰つた際に、これはここにお見えになる愛知君が銀行局長としておられた時代に大いに英断をされたことでありますけれども、当座預金の余りを市中に、日本銀行に命じて預け替えをした分がありますので、そういうものを引揚げるかどうかというような要因動き方によつてこの数字は違うわけでありますけれども、まあこの第三四半期はそれでなくても今申すような財政資金が出る時期でありますから、見返資金も或る程度抑え込まれる、預金部資金もこれが余裕金を活発に運用することはむずかしかろう、債務償還政策についても第三四半期はやはり停滞するであろうというように、財政の方は一方締める要因を見ましても、先の米の金、外国為替の関係等でどうも私共の見るところではやはり八百億がそれを若干超える程度の財政では支拂超過が起ると見込まれます。従いまして他の一要因産業金融関係で、余ほど貯蓄が伸びて、その貯蓄によつて産業資金が賄われない限り、財政の支拂超過がそのまま通貨に反映せざるを得ないことになつて参りまして、年末通貨はしばしば伝えられるように四千億というようなことが言われる、大体当らずと雖も遠からずの姿をとるのではなかろうかと思うのであります。例年この産業資金につきましては第三四半期金融機関全般として見ますと若干資金が集まる方が多くて、日銀にも幾ら資金が、貸出が返つて参ると、こういう姿でありますけれども、この金融機関に集まる資金におきましても、分析して見ますと、これは食糧代金が活発に放出されることを受けまして農林中金或いはその系統機関であるところの農業協同組合方面資金が殖えまして、それが日銀に返つて来る部分が相当見込まれる。併し一般の市中金融産業金融を担当する方面においてはむしろ預金も伸びますけれども、まだやはり今日の輸出なり特需生産は若干物価の高騰、殊に、更に又公団の廃止等に伴う所要資金を想定して見ますと、一般の市中金融機関では金が足りなくてやはり第三四半期にも日銀から若干借りなければ済まされないだろう、こういう姿であります。こういうようなことで両方合わせると今の農林中金、農業協同組合のほうに資金が集まる。それで農林中金は日銀に金を返す。或いは農業手形も決済期に入るからこういう決済金が入つて日銀としては全体の貸出が或る程度回收されて、財政資金の支拂超過の八百億がそのまま通貨膨脹にはならないように持つて行きたいものだと、かようなことを念願いたして今いろいろ作業をいたしております。ついでに先まで申上げますと、第四四半期におきましては、これは御承知のように例年の現象として財政資金は又引揚超過に転じます。税金の関係等もありましようし、又食糧供出の関係が逆の関係になりまして、供出は一段落して売拂分の金がだんだん入つて来るということから、財政は当然何百億か引揚超過になつて参るというようなことで、通貨の尻も、一部産業金融のほうは或る程度資金を出したとしても、可なり通貨の尻が改まる筈ですけれども、まあそう数字を私共想定いたしております。ところがここに申上げてみたいことは、私共が試算いたしたところによりますと、今年年間の財政だけについて見ますと、見返資金預金部資金を或る程度溜め込んで引揚げ放しにして置く。更に又債務償還はこれは行わない。又行なつたとしてもその金を日本銀行の持つておる国債に向けて返して参る。つまり一般民間債務償還を通じて金が出て行かないというようなことで、世間で非難される財政における引揚要因を作つたとしても、そういう仮定を置いて見ましても、実は昭和二十五年度一年間を通ずると、財政全体の姿としては必ずしも引揚にならない。大体均衡するか、或いは今のようなきつい前提を置きましても百億か二百億かの引揚程度に終るような数字が出て参るのであります。  それは一番大きな原因はやはり外国為替、特需関係で為替会計が日銀から金を作つて、そうして市中に沸出すというその尻が可なり大きく出る。千億、或いは二千億程度にまで大きく現われざるを得ない結果になりますために、財政全体として見ますとそういう恰好になる。これがいいか悪いかは別としまして、その上預金部資金、見返資金債務償還というものを民間に向つて勇敢にやりますと、財政の姿としてはそれだけ通貨増発要因になります。それは必ずしもインフレでないかも知れません。それは一般に生産が殖えたり、貿易が多くなつたり、物価も或る程度動きましようから、財政関係で金が出過ぎる。それを割つてみると預金部資金を出すのが悪いのではなく、見返資金を出したのが悪いわけでなく、債務償還をするのが悪いのではない。たまたま輸出入の会計を扱つておる会計が政府会計で扱つておる。それが大きな支拂超過を財政に反映するためで、輸出で出た金、特需で出た金というものはどうせ金融に廻りますから、それが今度は金融のほうの操作において或いは貯蓄に代えるとか或いは金融機関を通ぜずして、産業設備需要を賄い得る、年間を通じて産業資金としては新しく銀行から出さなくても、輸出関係特需関係等を中心として出た金がうまく廻るような恰好になり、これは財政のほうではむしろ預金部資金なり見返資金、或いは長期の安定した資金を計画的に出して産業基盤を作つて行つたほうがいいわけでありまして、無理に日銀から不安定な金を出させるということよりもいいことだろうと思つております。この場合預金部資金については先に舟山君から話がありましたが、預金部資金は約五百十一億円ぐらいの金を溜め込むという前年と同じ想定をしておるわけであります。この預金部資金は五百十一億、仮に民間にさつと出せば、一年を通じてはそれだけ財政の形から金が出る。又債務償還におきましても、債務償還は御承知のように予算の金額におきましては千二百八十五億か六億ぐらいであつたと思いますが、そのうち警察予備隊の創設に伴いまして二百三十億円ぐらい債務償還で廻すことになります。ネツトの債務償還は予算上千五十五億ぐらいになる筈でありまして、そのうちの相当部分の、例えば五百億というものを日本銀行に償還するという想定で、その想定で日本銀行に償還するということは民間には金が出ないで日本銀行の中に一応溜められるということです。そういう規定をしましてこういうような形に相成るわけであります。全体の姿はさようなことで御了承願いたいと思います。  尚産業資金につきましては、これは産業資金の計画というものですか、見通しというものを毎年作りますが、非常に動いて参りまして、同じ金融につきましても統計なり業務内容を具体的に調べる手段を持ちませんために、いつも見通し計画を何遍も作るわけであります。只今も御要求がありましたから、最近までの状況及び見通しを簡單に申上げて見ますと、こんなことになります。第一四半期は、これは今から申します数字は企業の社内留保の関係は引続いて抜いておりまして、目に見える金として動いたものだけであります。第一四半期合計して八百二十億円の産業資金供給されております。その内訳は設備資金で百八十三億、運転資金で六百三十七億円になつております。尚これをその金の性質別、種類別について見ますると、設備、運転も合せて金融機関からの貸出が六百三十六億円、それから見返資金からの貸出は十億円、それから社債による資金調達が八十六億円、株式による資金の調達が八十八億円、こういうことになつております。この社債と株式につきましては、金融機関が引受けたものと一般の個人の引受けたものと両方を含んでおります。大体におきまして社債の八十六億円の総額に近いものは金融機関によつて引受けられ、株式の八十八億円の総額に近いものは一般個人、金融機関以外で引受けられているとお考え下さつてよろしいかと思います。大体社債は金融機関、株式は金融機関以外ということです。第二四半期はずつと殖えまして、合計で一千三百二十億円の資金産業供給されております。その内訳は設備資金が二百五十億円、運転資金が一千七十億円ということになつております。資金の性質別を見ますと、金融機関貸出が一千百七億、見返資金が二十九億円、社債が百十億円、株式が七十億円、株式を除きましてそれぞれの項目が皆殖えで第二四半期は相当の資金供給されておるわけであります。第三四半期の見込でありますが、これは金は幾らつても、多々ますます弁ずでありますが、先ほど申上げました財政資金の収支なり或いは産業資金の収支の総括を想定しながら、調達可能額というような見方で見て参りますと、恐らくこんな数字になるのではなかろうかと思います。これは全く見通しと申すか試算と申す程度のものでありますが、総額で一千六百二十二億円、その内訳は設備資金で三百三十億円、運転資金で一千二百九十二億円ということでありまして、資金の性質から申しますと、金融機関からの貸出が一千三百二十三億円、見返資金が九十七億円、社債が百二億円、株式が百億円という形になります。で今の中で特に目立ちますのは見返資金九十七億と、こういうことになつておりますが、先の政府の財政収支の中で、我々の気持でも見返資金は私企業で年間にできるだけ四百億を使つてしまうことにしたい。大部分は第四四半期に廻ることになるだろうけれども、第三四半期においても出せるものはできるだけ出したいということで今進んでおります。そのために、この見返資金が第一四半期には十億、第二四半期には二十九億、第三四半期には九十七億と、大幅に伸ばすことにいたしております。去年の傾向と同じでありまして、特に九十七億のうちでも、今問題になつております電力に対して見返資金を出るというか、出すという想定の下に組込んでおります。これぐらいにいたしませんと第四四半期に見返資金がうんと溜つてしまいまして、なかなか出ないかも知れないからできるだけ出す。第四四半期に固まるでしようけれどもできるだけ荷を軽くして置くというようなことの計画と申しますか、方針が入つておるわけであります。それで株式などは今まで申しましたように、大体少しずつよくなる程度でありまして、これは第四四半期はまだ申しておりませんが、年間を通じますと、どうも社債で四百十億円ぐらい、株式が三百三十八億円ぐらい、それから見返資金が三百四十億円ばかり、この見返資金が三百四十億と申しますか、予算は四百億でありますが、そのうち五十何億が金融機関の増資株を引受けて金融機関のほうへ入つておりますので、それを差引いた残りのものを産業資金の分へ全部出して三百四十何億ということになります。金融機関貸出総額が年間でいうと、三千六百三十七億というような数字になりまして、一年合計して、以上のものが今年は四千七百三十三億、これは企業の社内留保を除いた数字で動いた金だけでありますが、これに企業の社内留保何百億があるわけでありまして、これはなかなか計算いたしまても非常にあてずつぽうな計算になりますけれども、資金計画としては直接関係ありませんために除いたわけでありますが、そんなことになるのではなかろうかと思う。殊に又今申しました数字などのように、将来の社債は昨年よりも大分よくなります。昨年の社債は二百五、六十億だつたと思いますが、今年は四百億を超える程度に行くだろう。このところに今後のむずかしさはあります。それでこの社債を消化させるために日銀がマーケツトオペレーシヨンをやつて行つたわけでありますが、だんだんに日銀のマーケツト・オペレーンヨンにつきましても限界が来つつある。一方において金融機関の手持の国債が離れて来ておるがら日銀にそう無暗に買上げて貰う分がないということもありましようし、又日銀自体としても通貨が殖えて参りますから、無暗に国債を買上げるわけには行かん。若干はやるでしようが、そういう意味から社債の償還がだんだん困難になる面があるのではなかろうか、そういう点も心配いたします。従つて来年あたりからこの社債の償還についてはいろいろな問題があるわけで、見返資金からもやつたらどうか、預金部資金からやつたらどうかなどといいますが、私などは復金の回収金が年間元本だけで数十億あるわけでありますが、ああいうものを何か社債の引受け資金が何かに活用できないかというようなことも研究しておるようなわけでありまして、いずれにいたしましても社債は去年より大分よくなる。去年か一昨年あたりはそれ以前よりも殖えておりますが、更に今年はよくなると思います。去年の株式の佛込みは六百億ぐらいあつたと思いますが、これが三百億台に株式のほうは減つてつておる。こういうような形になつて参つております。
  34. 木内四郎

    ○木内四郎君 今のお話で見返資金預金部資金は出ないにしても、財政関係で年度内全体を通じて見れば引揚超過は余りないだろう、百億かせいぜい二百億ぐらいだろうというお話であつたのですが、その理由として、事変関係特需関係でそれが政府の特別会計のほうから賄うために特別会計は……、日銀を通じて札を出すというお話だつたけれども……。
  35. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) ちよつと訂正して置きます。預金部資金は相当引揚げたまま債務償還はしないが、或いはしても日本銀行に委したままとしても、こういうことで見返資金のほうは私企業には全部出すということに想定しております。但し見返資金の中に御承知通り債務償還五百億があります。それを大部分日本銀行に返す、これは市中銀行に廻しても市中銀行は喜びません、余り国債を持つておりませんから。返す方法も又ありません。又市中銀行国債を五百何十億か持つておりますけれども、相当の部分は担保になつたり、貸出有価証券になつたりしておるものですから、それらのものをなんとかしでも全部が全部というわけに行かん面もあるのですから、債務償還をするとすれば、見返資金日銀のほうから出さなければならないということで、見返資金は使います。私企業には全部出すわけで、債務償還は引揚超過の点でこういう前提の下ではどうしても年間を通ずれば余り引揚超過にならん、財政全体としてはこういうことになります。
  36. 木内四郎

    ○木内四郎君 ということは輸入関係のものを日銀に委せるから……。
  37. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) そういうことだろうと思います。
  38. 木内四郎

    ○木内四郎君 輸入関係も少し時間が立てば、輸入物資を国内に持つて来て、そうして国内から吸上げた円資金日銀に拂われなければならないわけですね。
  39. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 来年度はそういう形に近くなると思います。
  40. 木内四郎

    ○木内四郎君 そういう時間的のズレがあつて、今年度内ではそこまでは余り行かないだろう、従つて出つ放しになるだろう、こういう見込から来ておるわけでずね。
  41. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) そういう点でございます。出つ放しにして置いて政府が損をするわけでなしに、見合いのものがあるわけですから。
  42. 木内四郎

    ○木内四郎君 資金動きとしては、……。
  43. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 資金動きとしては、そういう恰好になります。資本につきましても、更にユーザンスは、ニケ月経てばその金は入つて来ますから、民間から取れますから、時間のズレに見えますが……ところが時間のズレといつてもやはり規模に問題がありまして、輸出のほうが先に伸びて行き輸入のほうはそれを追掛けて参る。ということは、今まで世間から攻撃されているように、政府はドルを溜め込んでまごまごしてさつぱり輸入をせんということをなくすために、今月例えば七千万ドルの輸出船積がされた、今年七千万円を支拂う輸入の陸揚げをしたとしましても、ユーザンスの関係で二ヶ月ズレますから、今月入つて来る金は三ヶ月前の輸入資金ですから、この輸出額は大きくなつて行く限りにおいては、安本の計画もそうですし、実際の計画もそうですから、輸入のほうは三月先には月一億は殖えるかも知れません。今月一億やるということで一億の信用状を開かない限り、いつまで経つてもギヤツプが出て……。
  44. 木内四郎

    ○木内四郎君 時間的ズレと量の相対ですね。
  45. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) ギヤツプが出て来るということになるのですな。
  46. 木内四郎

    ○木内四郎君 あなたのほうは輸出輸入は相当伸びるという見込ですか。
  47. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) そうです。
  48. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 政府は上半期は一応五百四十二億、この第三四半期は八百億、而も年間で大体とんとんになるだろうというお話しですが、第四四半期は三百億の何になるのでありますか。
  49. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 第四四半期はそうですね。まあ四百億かそこらあるのです。ということは、つまりここはどうも私共分りませんが、今特にドツジさんが見えておりますからいろいろ打合せもあると思いますが、御承知のように第三四半期に支拂ということが起つた場合にそうすると逆になるわけです。ところが今政府がポケツトに詰め込んでいるものを第三四半期にはポケツトを開けないわけですから、そこで第四四半期に税金が取れるときにそれを開いて見返資金を私企業に出し、債務償還日銀に移りますと三億ドルは市中銀行に廻るということで揚超になるわけであります。第四四半期揚超を起す。このことは逆に言うと産業資金のほうが余ほどうまく行かん限り通貨が一——三月の間にどんどんうまく落ちる……うまいかまずいか分りませんが、落ちるということでなしに、年度末三千八百億でも四千億にしましても一——三月の間においてそれがずつと落ちて三千百億になるか二百億になるか、形がどうもぴんと来ない原理が出て来るので……無論動きますから分りませんが、それが引揚がつた原理というものも余り分らんのですけれども、それを無理に引揚げるということになると可なり問題を起す。ただここに貯蓄の問題がありましよう。要するに見返資金関係貿易関係が出ますから、それをなんとかもう一遍金融機関が吸い上げて、金融機関日銀に返さんまでもそれをもう一度営業資金に廻せばいいのですが、貯蓄の成績が悪いのですね。少くとも今までのもので、それで第三四半期にいいと言つても、農協あたりの供米代金の関係が少くて市中銀行預金が必ずしも有効に伸びるかどうか……殖えはしませんね。殊に農協あたりの預金でも供米代金の支拂額を見ると、去年あたりは二五%くらい供米代金の預金になつたのです。農協、あの系統のところで……ところが最近は闇はなくなつて行き百姓も大分くたびれておりますから、今年供米関係で千五百億くらい出る金高は……千五百億くらい第三四半期に出たとしても、それの二五%、勘定して四百億なんぼになりますかな、千五百億の二五%ですから三百億か四百億でしよう、大体三百億も預金になるかどうか可なり怪しいのじやないですかな。それは大矢さんあたりのほうがお詳しいのかも知れませんが。
  50. 木内四郎

    ○木内四郎君 今年は、最近は預金するか知らんが、非常に箪笥預金傾向が殖えて来ておるということを言われておる……。
  51. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 私もそう思いますね。
  52. 木内四郎

    ○木内四郎君 それと同時に今あなたが言われておる百姓の方も懐かくたびれている、もう干き過ぎているから、少しくらいのものを撒いても……こういうアブノーマルな通貨の回転の状態の下において今までのような通貨発行量の議論に余り触れるということは適当じやないのじやなかろうかということを考えておるのですが、普通に動く場合ならともかく、一方において箪笥預金が殖えて来て今の農民の懐工合が干き過ぎておるというような状態だ、こう考えて、退蔵が殖え回転率が少くなつて来ているという際においては、余りに今までのものに囚われ過ぎるというと予想外の結果になるのじやないかと思うのですね。
  53. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) まあそれは退蔵が退蔵のままでいる限りはいいのですが、今の退蔵たるや大概購買資金の面に動くものも相当あるのです。これはこういう国会の話にはならんかも知れませんが、私共が郷里に帰りまして話を聞きましても、やはりちよつと物を買つたり原材料を仕入れたりするために銀行を通さない金が可なりいろいろいたずらをして、そのために地方の銀行の支店あたりの預金が減つたり、それから金融を受けておつた、商業手形をとつてつておつた人が非常に悪いようですな。
  54. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどの年度内の預金ですね、大体三千六百三十七億くらい見積つておられるようですが……。
  55. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 年度内の……。
  56. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 年産内の……年間を通ずる計画ですね、預金は大体三千六百三十七億ですか、さつきのお話では……。
  57. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 年間ですか……それは預金じやないですよ。
  58. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そうすると金融機関供給は……。
  59. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) それは預金ばかりでなしに、外の金が、いろいろ金融機関に見返資金から投資をしたとか……。
  60. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 預金はどのくらいに見ておられますか。
  61. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 預金はこれは分りませんがね。全くあてずつぽうですから、そのおつもりで……。まあどうもこれは金融機関預金は、御承知のように表の預金と本当の預金と二つございます。例えば三月とか九月とかいうようなのはうわつと預金が殖えるのですが、実際は小切手の持合なんかで相当使える金ば殖えておらんのですが、そこの関係は見なければなりませんが、どうも形式的には二千八百億か、三千億……。これはまあ御承知のように政府の貯蓄目標というのが今年は三千四百億か何かになつているかと思いますが、どうもそんな形になるのじやないかと私想像しますが、これは責任は持ちませんよ。
  62. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 そこでお伺いしたいのは、この二千八百億なり、三千億、大体そういうふうに見て、こういう資金計画が年末通貨三千九百億から四千億、四千億というようなバランスになつて来るのですが、その場合に預金の見積りですね。先ほど銀行局のほうから聞きますと、今内田さんもお話になりましたが、非常に少いのですね。全国銀行的に見ましても百六十億とか、百九十億とか、八月は百十億、九月は特に多いと言いますが、それほど三千億と見積つていいかどうかですね。
  63. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) これは第三四半期にうんと伸びるのです。それで今の主として農中の糸紡の機関の関係です。
  64. 小串清一

    委員長小串清一君) ちよつと申上げますが、今日は時間のいろいろの都合がありますので、今木村さんから尚いろいろと御質問もあろうと思いますが、これは後に譲ることにして、今局長のお話の中の資料はでき次第このほうへ廻して貰うように願いたいと思います。
  65. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 実績に関する資料は私は差上げたいと思いますが、これは正直に申しまして、この年末から来年に掛けての資料は、それは右に行くか、左に行くか、これは先の見通しですから分らんから、出してもいいと思うのですが、今いろいろの関係で、司令部なり、ドツジ氏のほうとの話合をしているために、それの調整関係がありまして、ちよつと出しにくうございますから、一つ実績を出すようにお願いしたいと思います。
  66. 小串清一

    委員長小串清一君) それで、こちらでお願いしたいと思うのは、外の委員の方の意見もあるのですけれども、一九五〇年度の資金の需給に関して、第一四半期、第二四半期の実績、第三第四の予想が欲しいのですが……。
  67. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) 予想はちよつと……。
  68. 小串清一

    委員長小串清一君) 今ちよつとお話にあつたようでしたが、その程度において資料を……。尚外にお話がありましたから、それもまとまりましたならば至急出して頂きたい。   午後の順序は公述者が固い時間を決められておりまして、第一に午後一時半から二時半までは経済団体連合会長の石川一郎君、それからその次の二時半から三時半までは一万田日本銀行総裁、殊に一万田総裁はぴつたりこの時間以外には絶対いけないということになつて、外に約束があるそうですから……。それで三時半から第一銀行頭取荻野正孝君にやつて貰う。これはずつと遅くなつても構いませんけれども、それでありますから只今十二時半でございますから、私の考えではこれで午後一時半までお休みして、そうして一時半に必ず間に合うように皆様方もお集まりを願うようにいたしたいと思うのであります。それで木村君のお話が簡單でしたらちよつとこの際……。
  69. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 預金の見積りですね、これは年末通貨になると思いますが、先程のお話では甘く見積つてあるのか、辛く見積つてあると見ていいのか。相当、四千億は殖えるか殖えないかに影響して来ると思うのですが、そこはどう見ていいのですか。
  70. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) まあ甘いと辛いの中間くらいでしようね。これはこういう見方をするのです、技術的には……。前年度、前々年度の傾向線、環境をバツクにしました傾向線の外に、第三四半期にどれだけの資金の放出が行われるか。放出に対する還流率という見方があるそうです。還流率何%で、財政収支の方で八百億を超えるくらいの支拂超過が行われる。それについてそれと、これはもう一つ因果関係が、難が先か、卵が先かということになるのですが、貸出幾ら行われるか、その貸出に対する還流率がどうなるか、こういう考え方、見方で行くらしいのです。
  71. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは政治的意見を聞いているのじやないですよ。ドツジさんが来て、資金計画をやるのに相当ドレツシングをして輸入が殖えるように見積つて……。
  72. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) ドレツシングの関係は落しておるのです。
  73. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 いや、安本で作業をドレツシングさしているのです。通貨が相当殖える見込を殖えないように……。
  74. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) それは安本にお聞きになつても無理だ。日本銀行なり、大蔵省の方に一つお話願つたら……。実は私のほうは事実は事実として日本銀行も、大蔵省も大体正しい線に沿つて動くように、そうしないと安本は金融屋でもありませんし、自分で通貨発行しませんし、日本金融がうまいほうに動くように、可なり外の省と意見の衝突を来したり、外の省に逃げられたりして……。
  75. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体預金の見込は意見が一致していますか。
  76. 内田常雄

    説明員(内田常雄君) まあ意見を一致させつつあるのです。実は昨日も日本銀行と大蔵省と集まりまして、一応打合せをやりましたし、今後これはだんだん更に固めて行くつもりでおりますし、その前からも事務的には大蔵省と日本銀行と打合せしているのですが、皆恐がつて見込の問題にはこれで行こうということは実際ないのですね。
  77. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 まあ結構です。
  78. 小串清一

    委員長小串清一君) それではこの程度で午前の会議を終ります。    午後零時二十八分米憩    —————・—————    午後一時四十五分開会
  79. 小串清一

    委員長小串清一君) それでは午前に引続いて開会いたします。経済団体連合会の石川一郎氏に各種事業に対する金融の実情についての御説明を願い、尚金融に関して御要望がありましたらお述べ願いたいと思います。打角お出でを願いましたが、少し時間が遅れまして、大体二時半頃までに終つて、それから三時十分か十五分ぐらいまで又お話を願い、大体今から四、五十分お願いしたいと思います。
  80. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) 只今御紹介頂きました石川でございます。財政金融は離すべからざるものでありまして、これは実態を本当に噛んでおられる方が少いかと思つて実態表を作つたんでございます。何しろ最近は億とかいう数字一つの標準になりまして、非常に金の値打が減つたものですから、つい錯覚を起して、それで実は一体昔の一番日本の不景気のとき、この三十年代までの一番不景気のときをとつてみたのでありますが、これは昭和六年でありまして、物価が非常に安かつたのであります。その前は却つて高かつたのですが、これは世界的に不景気の渦巻が幾らか影響しておつたこともありましよう。これで以て日本経済の縮図が分るだろうと思つてつたのでありますが、多少昔の統計ですから幾ら統計の誤差がございましよう。大体アイデイアを掴まえるにはよいと思いますので作つたのであります。昭和六年の国の予算が十四億であります。そのときの国民所得が百五億、それから国民一人当りの一年間の収入が百六十円、そのときに民間銀行ですか、銀行、組合いろいろの方面にありました現金の貯蓄が百七十二億あつたのです。このとき輸出が減つておりましたが、この前後は十億ドル近くのことがございましたが、七億二千万ドルという大体表には書いてあるのであります。それと昭和二十五年の模様と比較してみたら一体どういうことになりますか。丁度この間に物価がたしか三百十六倍に上つて参りまして、アメリカのドルもこの間に半分に下落しております。二百六だか八だかになつています。要するに昔の一ドルが今のドルにすると二・〇六ドル、というふうな数字に丁度当ります。約二倍に下落したということになります。それで予算を今年度六千六百億の予算を換算して見ますと二十一億になるのです。国民所得は三兆前後でありますが、これは九十五億、要するに国民所得はまだ達しておりません。その上に人口がこの間に丁度三割殖えましたが、それで約七〇%くらいな国民所得にしかならない。現在のすべての貯蓄でありますが、これは郵便貯金も何も含めまして一兆三千億とか四千億とかで、それを昭和六年の貨幣価値に直しますと四十億という数字になります。輸出ですが、今年は八億になろうというのですが、実際の問題はドルの価値が半分に減つておりますから四億ドルの約半分にしかならない。こういうように日本経済が非常に縮少して来ておるのでありますが、それで生産のほうは御承知通りにだんだん回復しております。それで経済活動の百パーセント近くも行つておりますものもあります。いずれにいたしましても、勿論貯金の外にみんな現金として多くなつたりしまして相当の金額もあるだろうと思いますが、これは貨幣の出ておる三千二百億の中の十分の何とかになると思いますが、それは分りません。そういうような数字なつて非常に減つております。私共の最も強く主張しておりますのは、要するに昭和六年において予算が一億減つたり、二億殖えたり、いろいろなことがこの時代にもありました。どうも議会もやかましかつたときでありますが、ともかくも貯蓄が百七十二億円あり、国民所得が百五億あつた。それが一億が殖えるとか減るとかいう問題でありますが、現在におきましては表向きの銀行方面はそういう貯金が四十億であります。そうして国の予算に換算すると二十一億であるから、これの増減ということは非常に民間経済に響くのは当然でありまして、非常に響き易くなつておるのであります。それで政府のほうの資金ではございません、政府に属する資金という言葉を使つておるのでありますが、例えば見返資金のようなもの、或いは市民から吸い上げた金であるから、郵便貯金に余つておる金にいたしましても、或いは復金の金にいたしましても、閉鎖機関の金にいたしましても、そういう金は政府のポケツト・マネーだと言つて悪口を言つたのでありますが、そういうことで別に置かれてしまいますと非常に民間の方に大きく響く。若し貯蓄が昔通りに、例えばここで十四、五倍になりますが、これが三百億もあれば、そのくらいの金は昔の金にしてあれば影響はないのですけれども、ここに貯蓄がないということが非常に経済上に、財政資金の政府に属する金の運営ということが非常に重大なる結果になるというようなことを現わすためにこれを作つて見たのであります。その外に株の投資の問題等も、まだ昔はたしか国民所得と同じくらいの有価証券があつたのでございますが、最近は三兆に対して八%かそこらしかないという状況なつております。要するにそういう方面蓄積もないということが非常に響いて参る。それで我々として常に二、三年間唱えて参りましたことは、政府の巻き上げた金をどうか一つ民間に還元して頂きたいということ、丁度池の中に融通させないで溜めて置くような金を出して頂きたいということであります。これがまあ日本経済縮図でありまして、これがためにその結果がいろいろな方面へ影響を及ぼしている。最近の資金需要が非常に殖えて参りました。その殖えて参りましたものを一つ一つつて見て計算して見てもなかなかその計算はむずかしいのであります。一、二できたものがありますから後ほど御披露申上げますが、先ず資金の余計要るようになりました二つの原因は、一つは設備資金の問題で、もう一つは運転資金の問題、設備資金の問題は随分これは二、三年前からやかましく言われておりますが、なかなか運転資金のほうも軽く見るわけには行かないような状況なつております。例えば鋼鉄の助成金が解かれました。ソーダも十月一日から行われる。銑鉄は残つておりますけれども鋼鉄は残つていない。そういうことによつての運転資金増加ということが大きい。その外に価格調整公団とかそういうようなものの運営が一部分ずつストツプして行くから、そういうようなものも殖えて参つております。鉄その他肥料あたりの運転資金増加して、まだまだ統制撤廃ができたばかりでありますから、これからだんだん資金が余計必要な状況に至るのでありまして、肥料のごときは肥料公団の廃止によりまして、農家、商人、製造家、この肥料の製造流通過程をすつかり含めたもので約来年の三、四月頃には今までよりも三百四、五十億の金が必要じやないかという数字が出ております。これを全部合せて、そのうちメーカー金融が二百億とかいう数字であります。又鉄のほうもそうでありますが、スクラツプか何か安いものがありますから、それが利いて来るのはもう少しやはり先になつて、来年の二、三月頃になるとスクラツプでも何でもぐつと上つて来ますからそれを買つて行くから、それが本当に全体的に響くのは三月頃かと思いますが、いずれにいたしましても朝鮮事変にこれは関係ないのでありまして、助成金の撤廃ということのための運転資金というものは相当増加して行く。それから尚その外に増加しておりますのは生産でありますが、生産は約月一%と荒つぽく見たらいいのじやないかと思いますが、そういうふうに殖えております。又朝鮮事変によりましてそれ以上に殖えておるものもあるかも知れませんが、平均すれば一・二とかというような数字になるかと思いますが、そのくらいのものが運転資金として余計要るということになります。それから民間輸出入の問題ですが、民間輸出入にいたしましても今度ユーザンスができまして、民間輸入によつて日本に入つて来る品物は今年の春からそうなつたんですけれども、まだ非常に少いですけれども、十一月、十二月になると相当の金額が入つて来るようであります。どのくらいのものが一体入つて来るだろうかという見方につきましては、中には政府貿易の残つている国もございますし、いろいろありますからはつきり分りませんが、要するに為替委員会のほうでいろいろお調べになつたものを、これは為替の許可をいたしまして、そうしてそれの何%が入つて来るかというようなことで計算されたものが一つあります。その外通産省の方でいろいろお考になつて、大体こういうふうに荷物が入つて来るだろう、そうするとユーザンスならユーザンスで延びておるものを貿易業者なり工業者は現金で支拂わなければならん、そういう金もアジヤストメントをやつて見て、丁度今朝これを研究していたものですからでき上つたのでありますが、この年末両方の統計がまだ当てにならないので、これを見込をつけましていろいろやつて見たのでありますが、要するに民間輸出資金でありますが、それが三月末には二百七十六億借りているのが、大体十二月の末には五百二十六億、要するに二百五十億ほどの金がなければ賄えないような状況になるのじやないか、物の値段もこれは上つでおりますし、それでそのくらいな金に輸出のほうの資金がなる。それから輸入のほうの資金は大体——九で要つた金が二百五十億でありますが、十二月末になりますればこれは五百五十億、約三百億くらい余計に金が要るのじやないか、こういうふうに考えておりまして、それで両方を合せまして五百四、五十億の金が余分に要ることになるのではないか、こういうふうに考えております。これから申上げます……例えばその外に朝鮮事変後いろいろな状況で世界の物価が上りましたものを輸入するのもこの中に含んでおりますが、例を申上げますと、ゴム、銅、亜鉛、鉛、屑鉄、原綿、羊毛、パルプ、こういうようなものは相当値上りしております。その値上りをした品物を工場が持つということになつておる、運転資金というものは大体この中で賄えると思いますが、工場で少し長くストツクするようなものは余分な金が要るということになります。紡績のほうで調べて貰いましたら、現在よりも約年末においては二百億ほどの金が余計要りはせんか、その金は二百億の金が要る。その数字は今の輸入資金のほうで一部分賄つておりますから、それが直ちにプラスというわけではありません。これはプラスというわけではありませんが、そういうふうになるのであります。それからいま一つ小売相場でありますが、小売相場は朝鮮事変後日銀の調べによりますと約九%ほど上つ、ております。それから生産材のほうは一四%上つております。この一四%上つたの統制撤廃によりまして補助金がなくなつたということもこの中には加味されておるのであります。いずれにいたしましてもそういうふうな運転資金が余計要るということは現実であります。それからその外に統制撤廃によつて先ほどソーダの例、肥料の例を申上げましたが、鉄あたりもやはり余計今までより数十億の運転資金が要る。この数字も調べてありますが、余り細かくなりますから申上げませんけれども、そういうふうに金が要るというわけでございます。その外に、これはふだんから言われております復金の吸い上げというようなものがありますために非常に金が苦しく、その合計はまだやつておりませんが、どうも今まですでに朝鮮事変の始まる六月末ですか、それまでに非常に金融手形で賄つておりまして、極めてメーカーは困つており、生産資材を買いましても支拂代金に非常に困つて、実は例えば石炭鉱業に対する各メーカーが例えば機械を納めるとか、或いはいろいろなものを納めまして非常に去年の暮困りまして、それで去年の暮に日銀からたしか二回に亘つて三十何億の金が出ておるのでありまして、そうして将来返せる見込のある石炭鉱業には貸して頂きまして、そうして今までの溜つていた金の一部分を返して紐付で、その紐付はこういう紐付をお願いしたのですよ、例えば三井鉱山がこのメーカーに拂う未拂金が余計に溜つている分、普通二ヶ月くらいなら仕方ありませんが、これが五ヶ月、六ヶ月になつている。その分を拂う。併しそれが例えば安川電機なら安川電機の下請をさしているものに二段の紐を付けて、一遍じややれないから、どこへやつちまうか分らないから二段の紐付で出している。ところが今その普通溜るべき未拂金のプラスになつておつたやつの大部分を回収しているのでありますが、その後に又炭鉱が、あれが統制が外れまして自由になつたものですからやはり運転資金がいる。通産省あたりでは百八十億くらいの運転資金が要るだろうというお話でありましたが、我々はどうしても二百五十億くらい要るのじやないかと思います。そうして九月の統制撤廃になりましたものですからその金が要るわけですよ。それで一旦余計になり過ぎておつた部分だけ拂つて貰つたものですから又それが溜りまして最近にやはり百億くらい溜つていやしませんか。そういうような状況でありまして、それが中小工業に非常に御迷惑をかけておるというようなことであつたわけであります。特に石炭のほうの値が高い高いという御非難がありますけれども、だんだんと改良等をなすつていらつしやるために、合理化がされておるためにその金が要るということもございましよう。そういうことで最近今から半月くらい前でありましたか、又溜つたから何とか処理してくれという書類が参りまして、今日持つて来ませんでしたが、それが多分今は物価が上りまして少し違うかも知れませんが月に二十億、それが五ヶ月ぐらい溜つておると思います。二月くらいはこれは一般に止むを得ないというふうに考えております。肥料工業のほうでも復金のほうはこれはちやんとお返ししなければならん。そこへ統制撤廃が来たから運転資金が要る。でやはり圧迫されるのは小さい工業ということになります。
  81. 木内四郎

    ○木内四郎君 肥料のほうは未佛はどのくらいありますか。
  82. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) これは一遍調べようと思つておりますが、まだ調べておりません。要するに未拂が溜つてしまつた産業に対する何は石炭が馴れつこになつておりますので、石炭のほうはすぐできまして、それで表を持つて来ておりますし、このほうは調べております。そういうように大きな会社が金に苦しんでおるために下のほうへ行渡らない。  それから次に賃金の未拂等がどうなつておるか、それから遅滞しているのがどうなつておるか、ちよつと調べて見ましたが、これは表向きに現われているのは、これは拂いませんと労働省の監督所のほうから叱られるものですから余り表向きにはしないのですが、私の方で調べたのは二十一億賃金の未拂がある。そういうわけで到るところ金詰りになつておりまして、而も今日も自動車工業の下請業者が来たんですが、やはり小さい会社でありまして、この朝鮮の特需によりまして相当の注文が来ているんだが、金がやはり五ヶ月くらいの手形しか貰えないで困る。その中の約二〇%が現金で後は三ヶ月、五ヶ月という手形で、その手形を割引いて頂きたいと思つて銀行に金がないからやはり売却しにくい。大体金詰りはそういうような状態で、何とかやはり金の道をつけて行きたい。年末にどのくらいの資金が要るかとすつかり計算して、これはいずれ安本の通貨審議会が開かれると思いますが、まあ私は勘でありまして、統制撤廃になつてだんだんと公団で取扱つたものが民間に移り、民間の資本が殖えて、貿易のほうが殖えて、ストツクの値上げでまあ千億くらいの金が要るんじやないかというふうに想像をしています。いずれこれはもう少し詳しく調べなければ申上げられません。ところが市場になかなか金が出過ぎているから締める締めるというお話があるのでありますけれども、そんなことをしたら飛んでもないことで私はとても生産増強はできないと思う。輸出入の資金あたりは途中でくるつと変つてしまう金です。又そこにやはり銀行オーバーローンがある。要するに私は見返資金とか政府に属する資金民間のほうに早く還元して頂く。そうしてインベントリー・ファイナンス、ああいうふうなところに融通をして頂くのが有利だと思います。そうして来れば金が自然流れに従つて行くのであつて、ああいう一時的のことをやると金が詰つて来る。要するに我々の考えといたしましては、決議書が来ているから後から差上げてもよろしうございますが、とにかく輸入をできるだけいたしまして、政府のほうからインフレーシヨンの原因というものが断ち切られているとすれば物を潤沢にして、物価を上げないという政策がいいんじやないかということを朝鮮事変以後に決議をし、打合せもしたのでありますけれども、そういうことによりまして物資を潤沢にし、特需その他によつて出て参りますものを直ちに……、ところがこの特需あたりについてはいろいろの問題がありまして、先般富山県に参りましたらばやはり電気に割当がございます、そうして割当以外のものは標準電気料金以外のものは非常に高いのであります、それで作つたんでは特需が賄えないというようなことで、それで若し標準電気料金だけで商品を作つて、それを外に出しても一般業者が少しもそれが使えないというようなことで非常に気の毒であります。併しいずれにいたしましても早く政府の引揚げた金を出して頂く。もう一つこれは政府のほうでいろいろやつて頂いておりますけれども、実際調べて見ませんと分りませんけれども、今度の電気の見返資金が出る、あれによつての影響です。その影響は調べてありますが今日持つて参りませんが、それらの点がやはり下請業者が非常に困る、又機械を作つている業者が困る、そういう状況なつている。こういう点にもやつて頂ければそれだけ金詰りが……、要するに何と申しますか、積極的経済活動によつてのものと、今のような消極的な締め方と二つ両方合わさつて来ているものですから非常に最近の金融が悪い。大体その大きな見方といたしましてはそういうことであります。ただこの物価政策その他に対しまして我々の持論は、実はこの鉄とソーダと、それから肥料の隣鉱石、食糧、そういうものに今補給金が出ております。まあ来年度の予算からそれを取つてしまうという話でございますが、我々としてはこれは取るべきものでないという意見をドツジさんにも出しております。要するに鉄の補助金のごときは、或いは全部の補助金も二千億から九百億円に下つて、今後まあこれは四百億円に下るくらいに行けば先ずいいんじやないかと思うのです。それを一遍に取ることによりまして、鉄あたりが上るのに拍車をかけるというようなことになるのじやないか、こう考えております。又隣鉱石に対する補助金、これは二十億ですが、こういうものも若しそれを外しますればやはり農村の手許にも響きますし、大した金じやないから徐々に取るようにいたして頂きたい。それからソーダのほうの製品の助成金は取つたのでありますが、食塩の助成金が今ありまして、それは一トン五千円くらいでございますけれども、五千円の塩を三千円に拂下げます。ところが来年からそれを四千円にしようということなんですが、一体日本のソーダ工業が外国では食塩は大体一トン一ドル乃至一ドル半で使つておるものを、日本では今補助金があつて三千円で使つております。で基礎的の化学工業でありますので、今は取られても世界的に足りませんから差支ありませんけれども、やはり非常に情勢がよくなつたら取るという意味においても補助金を出してもいいと、こう考えております。尚鉄の助成金の問題ですが、これは大問題でございまして、鉄の助成金がああいつたような銑鉄にトン三千円ずつでございます。で最近にスクラツプが三千円、五千円ということに上つて参りまして、それで鉄の生産費が上つて参ります。そうしますと、そういつもので作つたスチール・プレートで船を造りますと、こういう銅の値上りとか、ゴムの値上りとかが響きますが、船価が非常に上つて来るのでありまして、丁度今から二月ほど前には一トン標準船で七万五千円くらいで上るようにやつて行こうじやないかというふうに言つてつたのが、各種の物価の値上りと、助成金は取られることに大体今の政府ではなつておりますが、そういたしますと八万四、五千円になるのじやないか。ところがイギリスあたりは今までいい船を沢山持つておりまして、たとえ物価が上つて新しく船を作りましても、丁度今の発送電の発電所と同じように多くのものは安いので、そこへ新しく高いものが加つて来るというだけですが、日本は古いものが殆んど零なんです。殆んど零なんですから新しいものばかり作つて行けば、とても船の運営上外国船とは競争どころじやない、負けるのであります。その外に船に対する金利が相当、たしか三〇%前後、船の運営の費用の中の三〇%近くを金利が高いために見返資金で相当出して頂いて、そうして銀行金利を出す。そうなりますものですから、とても日本の船の運営ということは困難になつて来るというようなことでございますので、できるだけ一つ百億ぐらいですか、銑鉄に対して出して頂きたい。そうして幾らかでも船価を下げる。今第六次船がこの間新聞紙上で御承知だろうと思いますが、あれは見返資金から七、それから銀行のほうから三というので資金を調達するつもりになつておつたのでございますが、五、五となりましりた。五、五というのは見返資金が五、銀行から五、ところが銀行では船の資金というものが非常に長期に亘るからそういう金は出せない。出しても大体四十億しか出せない、こういうお話であります。而もそれは六次船全部に対してでありまして、六次船の本年度の見返資金から出るべき筈になつておつた金が六十三億でありますが、来年度も又それにプラスするのですが、ところが若し半々、六次船全部で銀行方面から出す金が四十億くらいになりますと、これはプラス四十で八十億金が入ることになりますが、日本銀行は五〇%は大体出さないでしよう。今そういう状況で船舶界は大問題になつておる状況であります。こういうことで、これは政府のほうの第一次にお決めになつた予算に対して何とかこれをやつて行く必要があるのじやないか。要するに助成金は取るべきものであるが、併し物価の値上り、或いは産業がどうなるかということをお考えになつた上でだんだん取るならば取つて頂きたい。こういう強い要望を持つておる次第であります。どうぞこの点をお聴き取り願つて置きたいと思う次第であります。  それから長期金融機関の問題ですが、この問題も非常に困つています。長期金融機関は新しく作る方がいいか、今までの銀行にやらせるのがいいがという議論はまだ銀行界では一致しておりません。おりませんが、いずれにいたしましても長期資金が非常に不足している。先ほど申上げたように、民間の貯蓄がないものですから、株を余計出そうと思つてもなかなか高い株でさえも増資ができにくいということになつております。最近におきましては社債等もやはり民間で希望している半分も勿論出ない。こういうふうな状況でありますので、何とか政府のほうに入つでおる金で操作をして頂くか、新しい金融機関を作つて頂くことが必要だろうと思います。まあこれあたりも今経済界で非常に困つておる問題であります。尚日銀の工業手形の割引問題が丁度二、三ヶ月前から止められまして、何か工業手形と称して何か外で使つたとか何とかということもあつたのだそうでございますが、メーカーが原料を買いまして、そうしてストツクするときの手形貿易手形と同じように割引ができたのでありますが、あれが変りまして担保に取つて九五%まあ貸すということになつたので、五%どうしても銀行が持出しになるということで、手続の関係その他でこの点も非常に今民間では工業家のほうでは文句を言つて来ておるようであります。一部分或る人が悪いことをしたということによつて、そういうことを全部止められては困るというようなことを言つております。  それからもう一つは、輸出金融金庫の問題でありますが、輸出金融金庫は閣議でも決つて、その後実は行方不明になつておつたので、どうなつておるか伺つてみたんですが、これはやはり今幸いに輸出はよろしうございますけれども、できるならばもつと早く一つつて頂くことにお願い申上げたいのであります。やはり政府のほうでお作りになりました金融公庫、これがいろいろな條件がございますので、それで結構ですから早くやつて頂きたいと思います。  それからこの輸入金融の問題で、ユーザンスの問題が大分長く長引きましたことに対しまして、非常に日本が損をいたしました。非常に残念なことをいたしたのですが、決定いたしたのでありますが、まだユーザンス問題も多少欠点があるのでありまして、これは為替委員会で政府のほうへも申上げでありますが、それは要するに遠方から輸入をする、例えば西欧とか、或いはブラジルとか、あの期限が短か過ぎるのでありまして、今までより却つて不利になるというようなことになるので、これは是非とも何とか延ばして頂きたいというようなこと、そうすればそれだけ円資金が少くてその期間だけ後に延びますから少くて済むから今やつて頂きでたい、こういうふうなことをお願い申しております。尚もう一つ銀行のほうにドルで借りるのでありますから、やはりそう長くなりますと銀行がその貿易商なりなんなりに貸すドルの信用が長くなるために重なつて来るということになるのでありまして、そういう点がやはり銀行の手許がオーバーローンになるとか、経営が不健全になるとか言われるものですから、銀行が澁る。要するに折角ユーザンスの期間が長くなりましても、その間に又次が追掛けて参りますと、又次が追掛けて来るということになりますので、一時的に余計に信用を拝借することになるのでなんとかこれをやつて頂きたいという話も……、大体ユーザンスができまして非常によくなつた点もございますけれども、そこらに少し欠点がございますので、そういう点を直して頂きたいということでございます。公団廃止に伴う運転資金増加、これは来年にならなければマキシマムにならないが、相当大きな数字が出ております。これは来年一番大きくなつたときの話になりますから、まだこれから六ヶ月先の話ですから申上げません。現在直接響いているものは二百億前後ではないかと思つております。これを実は決議しました。答申案の……これはドツジさんのラインと同じで、我々が違つております点は竹馬の足を切ることを余り急にやつて欲しくない、徐々にやつて欲しい。今年は去年の半分、来年は今年の半分とかいう程度でやつて行くべきだ。こういうことが違う点であります。
  83. 木内四郎

    ○木内四郎君 さつきちよつとお話になつた千億くらい要るというのは更に今の外に千億くらい年末あたりには出る……。
  84. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) そうです。勿論出入りがありますから、いろいろなものがありますから、その運営の仕方によつて非常に違いましよう。
  85. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 そうすると四千億以上、四千二三百億くらい……。
  86. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) 今まで苦しい上に出る金ですね。今まで非常に楽でなかつた。そこでその千億なら千億の金が来ますれば、前のものも幾らか楽になるだろう。その辺は私はこれは四千億くらいのものは要るんじやないか……。
  87. 木内四郎

    ○木内四郎君 さつきあなたのおつしやつたような、大会社が金に詰つているから下請又下請、そういうふうに積り積つているように思うのですがね……。
  88. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) そうです。実は朝鮮事変でどのくらい物が売れたかという問題です。実は七月末まで調べたのですが、九月末までは調べておりません。この二十日くらいにできるのです。日本全国ではありません。要するに、メーカーが今まで持つていたストツクがどのくらい増減があるかということを定期的に調べている。それで七月末と、それから三月末ですか、余り変化はございません。七月末というのは、その中に肥料ストツクを入れたものですから、肥料は公団が持つておるようなことがありましたから、これは少し計算が違つて来ておりますが、大体七月末までは違つておりません。金額においては違つておりません。それから九月末どういうふうに変化して行くか、どのくらい……。全体は勿論掴めませんが、大体は掴むことができる……。
  89. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 竹馬を徐々に切つてくれというお話、まあ価格差補給金のほうは徐々にとすれば、国内的な問題ですから徐々にできるのです。やろうと思えばやれる。もう一つの対日援助の問題ですが、それなんかもやはり五十二年あたりに切られると非常に困るという情勢でしようか。
  90. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) それはよく我我その計算はしておりませんが、若し朝鮮事変がなければ二億五千万ドルくらいどうしても足りないのではないか。特に日本が不幸にして御承知通り食糧の輸出国に変つたものですから、要するに工業国が食糧の輸出国になつてしまつた。大体アメリカとかカナダとか、そういう国でなければ余分の食糧を持つておらん。もう南米あたりもありませんし、濠州も殆んど輸出の能力はない。近東もない。こういうようなわけです。ところがこの朝鮮事変でどのくらいの金が落ちるかというと、今年一杯に恐らく五千万ドルか六千万ドルじやないでしようか。
  91. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 大体銑鉄ですが、平均百億くらいというお話で、今度これは二十一億になるわけですが、どうなんでしようか、これがなくなつて今年の銑鉄の……。
  92. 石川一郎

    参考人(石川一郎君) 今案はこうなつているのです。高炉メーカーが、銑鉄を造られて鋼鉄を造つておられる方は割合スチールを、幾分安く売つております。それからその銑鉄を買つて行かれていろいろ加工されてる人は、割合自由に売つているのです。それで世界的に鉄がなくなるだろうというような気がしているのですが、そうなりますと日本だけおつ放してしまりて……。この間大議論が出たのですが、それは製鉄業者のほうでは昭和二十八年度に四百三十万トン造るというのです。ところが安本ではそうはできんというのです。これで若しそういうことになりまして足らなくなつて来るというようなことになると、鉄は暴騰するだろうと思うのです。そうなつて来るとやつぱり鉄だけは何とかいう統制方式でもとらなければいけないような時期が来るんじやないか。例えば銅のごときものは今高くなつております。向うの相場は写真相場ですから。ところがアメリカでは銅を抑えるとか何とかちよちよつと新聞でも出ておりますが……。
  93. 小串清一

    委員長小串清一君) 有難うございました。それでは日銀総裁が見えましたから代つて頂きます。どうも御苦労様でございました。  それではこれから日銀総裁の最近の金融情勢並びに将来の対策についての御意見を伺いたいと思います。どうぞ……。
  94. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) まあこの今後の金融政策の基本といいますか、これを掴むのにちよつと一口朝鮮事変の起つた前のことを申上げたい。大体ドツジ・ラインでこれを実行して来たわけですが、確かにドツジ・ラインというものは輸出の振興という、輸出が非常に伸びるというところまで行かないとこれは十分な目的を達しない。ところが朝鮮事変の前の状況ではこの輸出という面が無論伸びはしたけれども十分ではなかつた。そこで結果的に言えば各企業界に滞貨があるという形で資金的には未拂関係或いは売掛けといつてもよろしい、そういう状況が相当起つておる。そこでそういうふうな状況でございまして、あの当時の国際情勢というものからすればどうしてももう少しデフレを深めて行く、そうして物価も或る程度下げて何とかして輸出の増大に取りかからないと解決の途がなかつた。そこで当時一体そういうふうな方法で行つて日本経済はどうなるか、堪えられないからドツジ・ラインの政策の転換が必要だというような声も相当ありましたことは御承知通りであります。併しあのときにドツジ・ラインを転換して見ても、転換してもいいものはありますが、併し金融政策で行つて輸出は振興しない。どうしてもあの状況では輸出を振興するのにはいいものを安く作り、いわゆる合理化を進める、そうして輸出を振興させるという以外には大体見通しはなかつた。ただそういうふうな見方と日本経済がどの程度まで堪え得る力を持つておるか、一体限界はどの程度か、或いはそれ以上に進め得るかという問題、その辺のところが非常にむずかしい。そういうところに朝鮮事変というものが起きました。そこで特需という形で、或る程度の需要が起り、又国際的に見ても防衛体制の強化というような意味から国際的にも物の需要が喚起される情勢なつた。そうして朝鮮事変の直接の影響はこれはもう一時的のものと皆考える。併し国際的の防衛体制の強化から来る物の需要というものは永続性を持つておる、こういうふうに考えていい。そこでアメリカの国内市場における物価の騰貴、物の需要を先達として国際的にずつと各国とも物価が上昇して行く、日本は朝鮮という極く近い所で而も戦争という直接の消粍が行われるというような関係から物が足りなくなつて来たということで、大体において従来のストツクというものはまあなくなつたというふうになつて来た。非鉄金属は勿論繊維もそうである。それからまあ鉄鋼が補給金がなくなつて上るという傾向がどうも強かつた。なかなか手放さなかつたので鉄鋼だけはまだ若干ストツクがあると見ていい。スクラツプになりますとありません。こういうふうに客観情勢というものが当面においても将来においても違つて来た。併しそこでやはり誤解してならんことはドツジ・ラインのこの基本線は何ら変更を受けていない。言い換えるとドツジ・ラインというものは輸出の振興というところに目的がある。そこへ持つて行くということは今後においてもちつとも変つていない。ただ客観情勢が違つたから手の打ち方が、方法が今後においては変わらなければならない。こういう形に過ぎない。それではどういうように違つて来るかということを一つ金融政策の方から申しますと、先程申しましたように事変前においてはやはり金融を引締めるという方向でやつて国際競争力を増すという方法でありました。ところが今申上げましたように物がはける、差当つてはいい品質でなくても或いは価格は高くても朝鮮事変というようなことで焦眉の緊急的な物資ははける。これは併し大きく見てはいけない。これはほんの一時的なことであります。そこで人はどちらかというと特に苦しい時代から急に転換した結果、どうもそれを見誤つてこれで何とか行けるというふうに考え易いので、それはいけない。それだからあの朝鮮事変直後は将来価格も上り、インフレになり、何でもやれるというような気持が強かつた。ああいうときには人心を安定しなければならない。もう少し落ち着けという指針を金融政策の上からも與えなくてはならない、示さなくてはならない、併し今言つたように今後における世界的需要の持続性を考えても輸出貿易という径路では物がはけそうだ、但しそれを果たすためには私共の考えでは無論国際市場にマーケツトのある商品でなければならない、同時に価格も品質も国際市場で競争し得る商品、こういう商品の生産を増大するということがどうしても必要だ。折角この国際情勢から日本の物を買つてくれるという好機が来ておるにも拘わらず物がなければ如何とも仕方がない。それでどうしてもそれに適合する物を殖やさなければならないというところに経済の実態がある。これは物を殖やすためには日本の現状からも輸入を殖やさなければならないことは言うまでもない。そういう状況ですから金融政策としましても基調としては輸出とかというのみではいけない、そういうようなものができるように金融政策をマツチさせなければならない。そうかといつて何でもかんでも作つて売れるかというと物の生産或いは物の増強と大いに言いますが、物というものは先程言つたように若干長たらしい條件を持つところの製品の増加、いわゆる価格も品質も国際市場で競争し得るような、そうしてそういうマーケツトを持ち得る商品である、そういうような商品でなければならない。そういうようにして、金融政策は決して引締めて行くのではないというような見方が私のそれに応ずる考え方で、そこでそういうような価格と品質をもたらすための合理化の線が出て来る、その合理化を進めて行く。ところが合理化を進めるのには今が丁度いい好機である。何故いや好機かと言えば一応物が売れるのであります。そうして今日のところではドルでみんな買つてくれる。そうしてドル資金というものがそこに溜る、そうして生産費と販売価格との間の利潤というものが相当ある、すると会社においてドルの形で儲けが生ずる、そのドルを以ていい機械を購入することができる、いわゆる企業の合理化に使い得る資金が徐々に蓄積され得る客観情勢にある。この合理化をやらんと悔を将来に残す。今は何とか売れている。いよいよ自由競争になる。ほんとうの輸出ということになる。当然そうなる。それは又自由である。そのときに合理化ができていないとすぐ脱落する。折角の好機だ。ですからそういう方向で合理化を進める、無論そういうような状況ですから、合理化資金も必要である。物の生産というのが先立ちますから、そういう合理化資金も出さなければならんが、その償還というものを考える場合にどうしても長期にならざるを得ない。そこで私は合理化資金は今日ではなかなか市中金融で賄うことは非常に困難である。いわゆる預貯金というものが増加しません。非常に微々たるものである。それで見返資金から一つそういう合理化資金を出して欲しいというのが、私の一つの希望であります。何故かというと、見返資金というものの性質をよく掴んで欲しい、国から見ればこの見返資金は貰つたものが資金に変つたので、これはアメリカのフルの援助、国家から見れば、或いはもう少しコンクリートに財政という見地から見れば、無から有が生じたわけで、これは援助になります。併し私企業或いは国民経済から見れば、自分達の所得を吸い上げられる、これは自分達の自力で物を買つたということになる。それですから、見返資金はもう一遍又産業に返して貰わんと、いろいろの企業から見ると援助を受けておると言いにくい。私は私企業の点から言えばそうなるという見解をとつておる。結局非常にやかましく言えば、そういう援助があつたからそういう国民生活もでき、経済活動もできたのだから、所得自体に無論援助が影響している。それで買つたからというように非常に因果関係で言えば、或いはまあ援助に間違いありませんけれども、一応併しこれは資金的に見れば国民所得という働いた蓄積、それから買つている。一遍拂えば再び返して貰うまでフルの援助にならん。こういうような見解を私はとつている。見返資金はそういう性格のものである。まして預金部資金というのが今日非常に巨額の運用に困つておる。実際預金部資金は無論私が言うまでもなく、長期資金長期運用し得る資金である。勘定の上では余つております。それは食糧証券に運用しており、食糧証券は巨額に何百億と出るのであります。併し預金部資金は千億以上にもなりますからこれは余る。併し食糧証券は短期の、これは財政収支の季節的調整のために発行されるもので、言い換えれば大蔵省証券と大して変りのない性質のものである。秋には供出米の代金として発行されて行きますが、年度内には必ず償還される。生産のときには政府がその発行代金で買上げるわけで、今度国民に売つた場合にはその売上代金で償還して行く。そういうもので、短期の大蔵省証券類以のものですから、中央銀行が割引してもよろしい。財政資金調整、そういう短期のものに長期運用し得る資金を使うということが非常に金融上不便にしている、或いは困難にしている。長期に当然使うべき資金を短期に使つている。そこで仕方がない、やはり長期資金が要るから、日本銀行から金を借りる、又は短期資金しか持たない銀行長期資金を出させる。まあ極く分り易く言えば、男が女の仕事をしておる。女が男の仕事をしたつて、うまく行きつこない。それだから市中銀行のそういう金は返つて来ない。長期に寝てしまう。それが次々に繰返されるからオーバーローンという問題も一層ひどくなる。それだから私は大いに合理化を考える。同時にそういう見返資金預金部資金を使つて欲しいというのが、私の要望であります。いわゆる金融の基調、方針としては先程言つた通りでありまして、それなら具体的にそういうものを進めて行くにはどうするか、こういうところが私の考えているところであります。又具体的に御質問に対しまして……。
  95. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今のオーバーローンの問題その他は政府資金の引揚超過のためだし、具体的に言えば今のお話の見返資金或いは預金部資金が溜つている、どうにもならないのだという点は、これはもう前からやかましく言われている点で、非常に問題にはされておりながらこれが解決しないというのは、どういうことなんでしようか。
  96. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それはむしろ大蔵大臣に聞かれた方がいい。私の回答する筋じやない。このことは止むを得ん、あとの尻拭いをする、なぜ尻拭いをするかという答弁が必要か知りませんが……。
  97. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それでは尻拭いの問題になりますが、この間七月でしたか、ここの予算委員会でお話を願つたときに、今までは日本銀行の方で尻拭いをしていた、これからはやらないのだというような話があつて、従つて日本銀行貸出高を見ても、六月、七月というのはむしろ減少して来ている。それが更に八月、九月には又殖えて来ている。そこで一遍は総裁がそういうふうな決意をされたに拘わらず、今おつしやるようなどういう理由か分らんが、とにかく預金部資金なり見返資金なりがなかなかうまく行かんので、やはり若干の尻拭いをしなければいかんというようにお考えになつてこういうことになつたのかどうかという問題。もう一つは、この九月あたりには百億足らずの貸出増にしかなつておりませんが、これは非常にいろいろな操作をやられたのだということをあつちこつちで聞きますし、まあそのために殆んどもう或る意味ではパニツク状態と言つていいくらいだという、これは巷の声ですが、そういうことを聞くのですが、そうだとすると、十月以降十二月頃までにはもう一遍金融政策の方針の転換というようなことをお考えになつているのかどうか、それらの事情をもう少しお聞かせ願いたいと思います。
  98. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 財政の尻拭いの問題ですが、私共の考えではそういうような出さなければならん金はどうしても出さなければならん。ところが従来の二十四年度のようなああいう行き方は、もう金融機関の限度に来ている。それをただやつていると、金融機関がどうにもならん。そうしたら日本経済はうまく行かん。この辺でやはり金融機関の能力というものを考えて行かなければならん。ここで金融政策をしつかりしないと、なかなか財政資金を動かしてくれない。そこで一つ頑張ろう、こうやつたわけで、その後において、私の方の貸出が殖えたとおつしやるのは、財政資金のそういう意味よりも、朝鮮事変の影響が大きく出たので、特需という関係もある、価格も上つた、無論上つた価格をそのまま金融機関で見ることはないけれども、成るべく海外の物価の国内反映は抑えたい、上るだけ認めていると次々に上つて来る。それはフルには認められませんけれども、併し無論取引資金が殖えると同時にその後に政府自身が民間のいろいろなことを考えて行かなければならん、こういうふうないろいろな関係があります。別に私は貸出を殖やしたいとか殖やしたくないとかというようなことは考えておりません。そこで金融操作の必要を特に感じてもいなければ、そういうことを余りしてもおりません。私はいろいろ言いますけれども、例えば月末に無理に抑えて見たところで、月が越えれば月の初めから又金が出る。これは借さん出さんという決意からそれでよろしい。そうでなければそんな小手先のことをやつてもいかん。要するに私の今の考えは、金が出てもよろしい……、私が先程言つたように、朝鮮事変以後の問題はそういうような物の生産の増大にマツチするような資金を、言い換えれば資金の質というものを尊ぶ。日本銀行から仮に金を借りて、市中銀行が金を出してもその金がやはり返つて来る、回収できる。いわゆる資金が回転をして借りぱなしにはならん、こういう状況が強まり、又そういう状況なつて来れば当然資金は出すべきである。言い換えれば日本経済活動がそれだけ殖えるというわけであり、望ましい状態です。そのために今日本銀行券発行高が殖えておりますけれども、差当つてそれは認めなくてはならない。若干時間をかけたら、その間にそういう経済活動がよくなる、だから資本の蓄積というものはその後殖える。そうすると銀行預金が殖える。預金で以てそういう資本の需要を賄う、日本銀行操作せんでもよいという経済の形態が現われる。その一つ手前には、資本蓄積が起る前に経済活動が、先行する。今の市場の状態を見ると日本銀行が金を出して或る程度助けてあげなくちやならんと私は考えるのです。
  99. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それならば非常に意を強うするのですが、そうとすれば、午前中に大蔵省の方でいろいろな資料を頂きまして生産とか、物価とか、貿易は相当……三月末当りに対比して八、九月の増加を大体聞いたのですが、それらの増加から考えると、今おつしやつた程度の通貨の増発ぐらいじや十分に通貨が出ていないのじやないか、逆にそういう感じがするのですが。
  100. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これは物価とか、或いは生産、それから金融、ドル資金の問題等いろいろの要素に基いてはじくと、そこに非常にむずかしいものがある。それで特に或る一定の時期を取つて、そして計算をするのでありますから、翌日から適用が必ずしもできない状況に変化するのです、従つてそう簡單に言えないが、ともかくそういうふうな形で算定すると、今の通貨量というものは決して少いと言えない。資料のとり方によつていろいろと異つた数字も出て来るのでまあ何とも言えないのであります。併し私は毎日毎日日本銀行から出ておるあの通貨量というものを、私としては至極適当な量であると、そういうふうに考えてやつておるわけであります。
  101. 木内四郎

    ○木内四郎君 今後質的にも価格の点からいつても国際的に上昇するような競争力のあるものを作るようにしなければならんということは御尤もだと思いますが、そうすると今後そういう意味で合理化を進めて、質的にも価格の上からいつても国際的に競争し得るそういう合理化をやる方面に金は出そうということになりますね。それはやはり市中銀行の裁量にも委して置くわけですか。
  102. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) そうです。これは大体市中銀行の裁量を認める。無論例えば日本銀行で、優遇手形による貸出高率適用から除外するというような取引を通じての指導は與えております。
  103. 木内四郎

    ○木内四郎君 それはやつぱりそういう意味の合理化が行われておる方面に……。
  104. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 合理化といいましても、私の言う合理化は今後においてはどうしてもいい技術を入れ、いい機械を入れる、そういう方面が結局中心になる。どうやつて経済を縮少して行くかというようなことではない。例えば人間の雇傭を整理するというようなのじやないのです、私の今特に主張しているのは……。
  105. 木内四郎

    ○木内四郎君 そういう方面は雇傭関係なり技術の方面でやる、これは非常に結構だと思うのですが、そういう方面に金が打つて、そうでない勉強しない方へは行かないようにできれば一番いいのですが、そういう点をしないものには指導していられるのですか。
  106. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは結局技術にしても先程申しましたように、ドルを対価として朝鮮に物を売つている。そのドルで技術なり何なりを導入するわけですが、これには計画というものを立てまして……いわゆる外資委員会で……私はこれに直接関係しておりませんが、どういう技術、機械を入れるとか、外資を入れていいとかを決定する。今のところはそういう建前で行つておりますから、自然安本あたりで一体どういう設備或いは技術或いは機械をどういう産業に優先的に入れるべきかということが当然検討せられておる筈です。その計画に基いてこれはやつて行きます。
  107. 木内四郎

    ○木内四郎君 外貨などはそういうことがあつて或る程度やりますが、国内的のものまでも……。
  108. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 勿論。
  109. 木内四郎

    ○木内四郎君 そればやはりだんだん競争力を増して行つても将来の償還能力はあるのですから、見てもよろしいと……。
  110. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは今言つたように、できれば見返資金長期資金でやる、そうして日本経済力を最盛期に持つて行くように見返資金を使うというようなことば、見返資金の使い方としては最も有効な方法じやないかという意味です。ただ断つて置きますが、そういうふうな輸出のための生産を増すことを目標にしますけれどもインフレの関係もありますから、無論国内的な物資の生産もいい加減にしてしまうわけつじやない、そのための金融も必要であります。併しそれを……。
  111. 木内四郎

    ○木内四郎君 これは非常に結構ですが、そこで金が外へ行かないようにすることが一番むずかしい。それは日銀総裁の指導力に待つのですね。
  112. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは私の考えではやはり相当な年月を経ないと金が楽に……金が困る困るというような声が絶えるということは日本ではありませんよ。それは、それだけ日本が戰争で消粍してしまつたという貧乏の実例なのです。それで皆復興をやらなければならんという状態で、それぞれの立場からすれば皆やりたい、けれども資本蓄積というものは一朝一夕でできるものではありません。だからこれは、こんな貧乏国に誰がしたかということに結局なるのです。
  113. 木内四郎

    ○木内四郎君 通貨発行量の問題ですね、これはさつきお話があつたように、測定が非常にむずかしいと思うのですが、最近私共ちらほら耳にするところによると、シヤウプのこの前の勧告もそうですが、今度の勧告もそうだが、どうも日本に資本蓄積を唱えておることはいいが、税制自体というものですると日本に資本の蓄積ができておらんように思うのですが、シヤウプの勧告も日本の税制もむしろやや行き過ぎた点がありはしないか、その結果ある、かないか知りませんが、最近殊に富裕税が実施されるということになつて来ると、御承知のように所得税その他のいろいろな……いわゆる無記名預金が廃止されるということで、何か退蔵が大分一部に殖えておるということの声も聞くのです。それからどうも小切手が十分に信頼を受けておりません。昔から小切手は現金と同じことの筈だが、この頃は信用がない。それから闇……闇と言いますか、政府に出す拠金その他をいろいろな意味でそれを被す意味で現金取引をしている。その通貨の回転率というものが少し、少しではない、少からず鈍つているのじやないかということを言われるが、何か多少或る程度行き過ぎであれば……。
  114. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 回転率が鈍つているということは少くないでしような。
  115. 木内四郎

    ○木内四郎君 むしろ退蔵とか何とかいうことかアブノーマルな関係になるとすれば、その通貨の量測定の場合に従来と違つた見方をしなくちやならんと思うのですが、そういう点は如何ですか。
  116. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは主として安定経済で、バイヤーのマーケツトだつたものが、どんどん売れるという状態になつたからセーラーのマーケツトになつて余ほど強くなつた。なかなか売手が強くなつて、持つておれば値上りになる、山を買つてくれ、それをなかなか売らんぞというような関係、力関係がどうしてもこういう場合は生ずる。そうして物価が日々に上る傾向が国際的になつて来る。そうすると売る人の方は、現金を持つて来い、現金でなければ売らん、そうすると早く現金を持つてつてつて置かなければならん、早く買つた方が値が安くて買える、こういう情勢がありますから、それによつて現金取引が殖える傾向なつた。発行高を殖やすというような……。
  117. 木内四郎

    ○木内四郎君 退蔵というような傾向はありませんか。
  118. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 退蔵はあるかも知れません。あるかも知れませんが、それは余程プリミテイブな人です。金を持つてじつと使わずにいるという人は少いじやないか。併しこれは特別な人で税を特別に免がれるというような意味合からそういうこともあるかも知れん。併しそれはまあ少いのじやないか。
  119. 木内四郎

    ○木内四郎君 銀行に入れないで箪笥の中に入れて長く持つているというような人と、長く持つてはいないが、銀行に入れないでやるという傾向はありませんか。
  120. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは若干あります。それは例えば会社等で物が売れた。そうすると物が売れ出したから金融というものはよくならなくちやならん。今まで寝ておつたものが金に代る、而も簡単に売れる。外国に売れるのですからドルになる。又ドルが三百六十円で円に当然なるのですから、当然金の循環がよくなくちやならん。ところがそれほど現金状態がよくないというようなのは、先ほど申しました政府機関の商品が一番多い。それほど金が殖えたと思わないが、民間会社のものも売れるのだから、それだけ……。
  121. 木内四郎

    ○木内四郎君 それを金融機関に入れていないのじやないか。
  122. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 成るべく早く物を買つて置かなければ危い。いわゆる原料を買うということになりますから、金融機関にお返しするよりも、一応傾向としては金が詰まつているのですから、それで原材料を買うということになる。
  123. 木内四郎

    ○木内四郎君 というのは、現金を金融機関に入れないで右から左に金庫の中なりに入れて置いてそれを金融機関に返さないという傾向はあるでしよう。
  124. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それはあります。何故かというと、日銀通貨発行高は、分析してみないと正確には分りません。分りませんが、研究してみると、あの三千三百億ばかりの金のうち商業部門に行つていると認められる金はうんとある。そうして生産関係には割合に少い。農村にも少い。こういう傾向をとつております。それは商業部門というのは商売ですから私は生産部門に流すように流すようにと工夫する。例えば従来貿手は單名手形が多かつたのですが、輸出業者がなかなかメーカーに代金を支拂わないというような不平を従来しばしば耳にしますので先般来貿易手形は成るべく複名手形にして、割引かれた金は確実にメーカーの手に渡るような措置をとつたのもこの趣旨からであります。
  125. 木内四郎

    ○木内四郎君 工業手形の割引は再割はとめておられるですか。
  126. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これは再割はしませんが、担保にとつて一銭五厘で貸出す。一銭五厘でスタンプを捺して無條件に出しております。ただ再割にすると一厘安くなりますけれども、私のところは一銭五厘で出しましても市中銀行は大体二銭四厘から二銭五厘で出しますから大体一銭の利鞘ということになる。
  127. 木内四郎

    ○木内四郎君 今言われるように工業の方面生産方面に行くには工業手形を再割されたほうがいいじやないかと思うのですが……。
  128. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは工業家から見ればいいですけれども、中央銀行から見れば再割手形というのはいけない。これは支拂が保証されないですから、工業手形というのは。
  129. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 見返資金を企業の合理化の方面長期資金に使いたい、成るべく多く出して貰うようにして、それから預金部資金も又長期資金のほうに充てる、非常に結構なお考えですが、民間からもそういう要望が前々から強いのですが、一方見返資金預金部資金余裕金は食糧証券或いは短期の方面に廻つて行く、これはやはり日銀券の収縮の一つの作用をなしておるじやないかと思います。そうすると見返資金、それから預金部資金長期金融のほうに出すというと、現在これらの資金で持つておるところの食糧証券は結局日銀所有に帰す、そういう関係からいたしまして、総体の通貨量は現在あるよりももつと膨脹していいのではなかろうかというような感じがいたしますが、如何でしようか。
  130. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは私は大体のところから言えばまあ通貨の量には変動がないと思う。市中銀行資金が非常に回転して来ますから日本銀行にも帰つて来る。それを短期証券にも廻せますが、今のように日本銀行券長期に出てしまうととても日本銀行に帰つて来ないから勢い金融機関資金が動脈硬化になつてしまう。国の財政資金をお使い下さいというのは資金量の問題ではない。資金はそれぞれの性質に応じて使うことが金融の本道だということであります。
  131. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 私の伺つたのは、結局長期資金民間で要望されておるようにスムースに通すようになるともう少し通貨の数量が殖えていいじやなかろうか、通貨の量がもつと殖えて然るべきじやなかろうか。
  132. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 民間のどういう人ですか。
  133. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 スムースに金融ができるようになれば日本全体の通貨の量は現在よりもつと殖えていいのではなかろうかと思うのですが……。
  134. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは私はそういうふうに資金の性質に応じて出すならばそれは通貨の量も自然殖えるでしよう。それは男が女の仕事をする場合には、如何にやつたところで全部女の仕事はできませんから、無理な金の使い途をすると自然出したいと思つても受け答えができない。そういう関係から若干少いという傾向があるかも知れん。併しそれだからというて、他方に無駄がないかと言えばこれも又そうは言えません。全体の資金量が多いか少いかは俄かに判定ができない。それだから正しいほうに正しいほうにと流す。それについては資金を正常の方面に流さなければ正常運転がつかん、それで出発して欲しいという考え方です。
  135. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 それからもう一つ預金部資金が豊富で運営に困つておるという状況である。然るに一般金融機関のほうはなかなか思うように資金増加しないというのでありますが、何か普通銀行預金金利、それから郵便貯金金利及び税制等について根本的に考え直して、両者の調整をとる必要があると思われますが、その点は如何ですか。
  136. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) その点は税制の面で……税務署に行つてみれば郵便局で三万円の限度で一人何百万円もしている人があるそうです。三万円までなら郵便局は通帳をいつでも作つて出すというようにしている。そういう噂があるくらいにやつておりますから、郵便局に預けて置けば税務署で一々調べることが堪えられない、税務署のほうも忙しいでしようから……。普通大口の預金でも、これくらい預金があるから担税力はこれだけに課税をするというのはいいんですが、併し私の聞くところでは預金は減つたがどういう商取引ができたか、その間に脱税はなかつたかまで遡るのですからこれはなかなか煩に堪えんでしよう、嫌でしよう。それが何でもない正当な行為であつたにしろ一々それをするために何回も何回も税務署に行かなければならん。それも相当に呼出されるとそれはやはりなかなか煩に堪えんでしような。
  137. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 それは細かい計算はしておりませんが、金利の点では別に考慮をする必要はないのですか。
  138. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 私はこういうふうに預金に対する金利については安定経済が徐々に回復して来ましたの、ですから、或る程度今後は考えて見る必要があろうかと思つております。
  139. 大矢半次郎

    ○大矢半次郎君 郵便貯金関係については、普通銀行金利面は相当お考えになるのじやないですか。
  140. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) やはり我々の方は、預金利子についても考えていいときに来たと思います。ただ貸出金利は下げたいものですから、預金金利については非常に愼重た態度をとつておるのです。
  141. 木内四郎

    ○木内四郎君 今のお話の郵便貯金のほうへ預けて置くと税務署に呼出されて困るということから、そういうことのために当人は銀行へ入れないで、郵便貯金にも銀行にも入れないで自分のところに持つていて、金を動かしているということが大分各方面から聞く……。
  142. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) そういうことがあればそれは特に注意を要します。
  143. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほど、まあこれまでは大体日銀券発行量ですね、大体において適量であるというお話でしたが、午前中やはり大蔵省側からも日銀券の最近の膨脹の趨勢についていろいろ伺つたのですが、まあこれまでは大体そう心配はない。心配というのはインフレ的な傾向がない。併しながら今後においては相当日銀券膨脹については警戒をする必要がある。そこで金融政策についてもいろいろ日銀高率適用の問題とかいろいろ対策は講ずる必要があるというようなお話であつたのです。総裁のお話をお聞きしますと、これまではとにかくそう通貨が異常に膨張した、経済活動にマツチしたいほど膨脹したとは言えないのですけれども、今後の問題ですね。総裁はどういうふうにお考えになつておるのですか。
  144. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 今後の問題は先ほど申しましたように、生産の増大に見合つてその状況をよく見て、極く具体的に端的に分り易く言えば、日本のそういう意味生産の増大は、結局輸入状況はどうかということに大きくかかる。それで現実に税関を通るものがどういうふうな状況日本に入つて来るか。例えば綿花で言えば、来年の三月まで五十五万俵と言えば一応そういうところで抑えなければならんし、そういうふうな具体的な輸入状況に応じた金融政策をとる。まあ輸入がうまく行かなくては何ぼ通貨を出してみたところでこれは物価を上げるだけで生産増加しない。そうするとこれはインフレになる。こういうことで輸出もできない、通貨も又抑制し得ない。こういうふうに考えておる。
  145. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それでは非常に今輸入が重要であることは分つたのですが、先ず輸入についてはいろいろ又重大な問題があると思うのです。従つて今後の日本の、日銀券の趨勢についてはインフレになる危険がある、相当警戒しなければならん、こういうふうにお考えですか。
  146. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) いや、私はインフレになる心配はないと思う。大体金融政策からいわゆるインフレは起らない……。景気不景気の現象は起りますよ。例えば或る程度の物価が高くなるということは当然起りますよ。併しインフレーシヨンというものは、財政が下手をやらん限りは金融政策でインフレになるようなことはない。これは私はそう思つておる。併し金融というものは、経済活動に照応して誰がやつても同じものですが、財政は初めから赤字を出して赤字財政を組んで、それをばら撒いて消費方面に向けようというのでしたらば、これは問題になりませんが、金融政策でインフレになるということは、それはもう非常に変な人がおつて金融政策という意味を勝手に、單に倉を開けて無茶苦茶に出すということなら別ですけれども、苟くも金融政策が長く続く以上はインフレになる心配はない……。
  147. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 むしろ逆にデフレになるのじやないか。
  148. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それは大体分りました。私もそう思いますが、ただ設備拡張をやつたりしても輸入がうまく行かない、こういうような場合になりますと、生産資金量とのアンバランスが、その危険が出て来ると私はそう思うのですが、財政インフレの場合と金融の場合と違うことは今のお話ではつきりしましたが、もう一つお伺いしたいのですが、先ほどドツジさんのこれまでの政策について輸入を非常に重点に置いてある。特に朝鮮事変前においては相当のデフレを強行しなければ輸出困難な状態になつている、こういうお話であつたのです。その後において、朝鮮事変後において今度は輸出を増進させるために産業合理化も必要であるし、それから国際物価の騰貴が国内物価に影響することを防ぐことも必要だ。その場合只今の総裁のお話ですと、国内の財政金融政策を中心にしてそれを以て輸出を値やすように、そうして合理化を推進させ、コストを下げるような方向に持つて行くというお話でしたが、もう一つ為替面からこれを調整するという方法は事変前ではなかつたものか。又今日においても国内通貨金融政策、或いは財政政策によつて合理化を推進させる方法の外に為替面から国際物価の騰貴、こういうものを抑える、こういう方法は考えられないものか。
  149. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは当然考えられるでしよう。ただ時の問題だけです。
  150. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 じやもう一つ、銀飯論をこの前お伺いしましたが、総裁のお話ではこの前政府のほうに沢山銀飯があつて民間の方の資金は空つぽだ。早く銀飯を民間のほうへ移さなければいけないと、そういうお話、先ほどもそうであつたのです。そこでそう総裁がお考えになつておるから…。先程大蔵省のお話を聞きましたが、まだ今後年末にかけて見返資金、それから預金部資金もどんどん増加して行くような、いわゆるアイドル・フアンドですか、殖えるようなお話なんです。そうしますと総裁がこの前言われた銀飯論と逆の方向に行つているのです。むしろ逆になつて来ている。
  151. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 逆とは……。
  152. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 逆というのは、見返資金預金部資金民間のほうに行かないで溜つておる。むしろ殖えている。その場合こういうことはないですか。日本銀行でどんどん金を貸すから預金部資金や見返資金を溜めて置いてもいいんだ、こういうことはないのですか。
  153. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それはそうじやないのですよ。当然私のほうも成るべく貸さんで、それがいわゆる財政の皺は伸ばさんようにするという言葉になつて現われて来ておるのです。当然私は財政資金を動かしてくれるだろうと思うけれども、経済というものは一日も放つて置けないのですよ。当然要るべき資金を抑えて置くと、議論は議論にしておつてもよろしいけれども、それはそれだけどんどんロスが大きくなる。却つてこれは私共の立場が弱い、或る意味においては……。それで経済上やはりそういうことをやりつつ解決は解決で図つて行こう、併し強い態度は示さなければいかん。むずかしいところで、実は非常に苦心惨憺しておるところで、それはまあ日本の置かれている地位、国柄というのを或る程度考えて行かなければいたし方ない。
  154. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今の通貨が若干殖えたとか、日銀貸出が又最近若干殖えたのは特需が殖えたとか、或いは輸出が殖えたとかいうことに原因がある。而もそれらの朝鮮事変の特需だとか、輸出はそうでもないかも知れませんが、そうしたものは一時的なものである。ドツジさんも来られて一時的なものだと言つて頻りと警戒をされておるようですが、成るほどあれを無茶苦茶に使つちやつたつて何もなくするというようなものに対する御説教としては一応受取れるのですが、もつとリアルに考えまして、一体あれを一時的なものと考えていいかどうか、もつとむしろ世界的な問題としても、日本経済としてもあれを契機として一つの大きな転換をなしている。今総裁は世界的な需要は必ずしも一時的でもないだろうし、相当続くのじやないかというお話であつたのですが、いわゆる特需という問題も例えば韓国に対する、或いは朝鮮全体に対する軍事援助の問題なり、開発援助の問題等々を考えれば必ずしも一時的とも考える必要はないじやないか、我々がまあ巷の数字として聞いているところによると、三ヶ月今までにすでに一億ドルぐらいの特需があつた。これから年末ですか、年度末あたりまで更に一億ドルくらい、或いは今後次の一年間なり何なりを推察して見ると、大体対韓援助その他で三億ドルぐらいはあるだろうから、それの相当な部分が日本に落ちるとすれば、相当やはり続くものと考えていいじやないかというような推測もなされていると思う。やはりそういう点はそういうものとして受取つて、もつと総裁のさつき言われた合理化なり、増産の方向への積極策をもう少しここで相当思い切つた転換した方針としてやつた方がいいじやないか、こういう感じがするのですが……。
  155. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) お説の通りそれは私の言う通りで、ここで合理化を進めるいい機会です。このチヤンスを失つてはいかん。但しこの朝鮮事変の特需は一時的なものでないという議論はありますが、それは要するに言葉の上かも知れませんが、非常に誤解を招いている。朝鮮事変の特需を一時的というのは、これは一時的と見た方がよろしい。なぜかというと、品質、価格が国際的に優秀であるから売れて行くという意味需要ではない。これは日本が地理的に非常に近い国であるとか、戰争という現実の消耗、こういうふうな緊急のいわゆる需要なんです。こういうような考えで、そういうものが長く続くと思うのはおかしいんで、それで私は朝鮮事変による需要は臨時的と言うてよろしいと思う。但し将来国際的の復興があり、国際的の需要というものを喚起しなければならん、そういう意味で朝鮮事変が済んでも物の需要が続いて行くだろう、そういう意味長期に亘る、併しその場合にはそういう戦争を現実にやつておるのと違い、やはり貿易という径路をとる、日本の商品が悪くて価格が高いなら日本の物を買わなくてもよろしい、外の国から買えばいい、そうすれば売れなくなる。そういう需要であるのだからほんとうの意味貿易ということになる。長いと言うたが、必ず輸出ということを考えよ。特需じやないぞ、とこういう差別をつけたわけです。そういう点において差別を考えて貰わないといかんと思うのです。
  156. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 併し特需としてあのときに緊急に需要されたのはおつしやるように値段その他品質にも構わずに、急選手に入れたというものもあるかも知れません。その計画として大きなものは鉄道車両についても、自動車についても、セメント等々についても、それらの価格は今の国際物価と比較してそんなに劣つていると見るべきでしようか。
  157. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) それは国際水準にはとても行きませんね。大いに努力して貰わなければならん。そんなことを言うて安心しでおつては前途危うしです。それではいかん。それに今競争力があつても油断してはいかん。ゆつくりコストを下げて売値は高く持つてつて、そうするとその間にマージンが多い、利益が多い。それで資本蓄積が起る。これを進めて行かなければならん。今事業家に安心感を與えて何とか行けるという生易しい感じを與えるというのはいかん。
  158. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それは安心感與えちやならないが、同時にこれを合理化をしなければならないし、そういう意味では非常に積極的に出なければならんのだ。従つて資金需要の面から言つても、供給の面から言つてもその限りにおいてはむしろ積極策に転じていいんだという感じがするのですが……。
  159. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) 大体意見は同じだ。私はまあ積極の上に相当という字を入れたい。
  160. 小林政夫

    小林政夫君 金利引下げの具体的な方策について何か御腹案がおありになりますか。
  161. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) これはまあ今金融機関に……私達は金融機関にお委せして具体的にやつて貰う。併し希望としては、金利についてはこういうふうに物が捌ける、生産も増す、価格も上る。従つて資金需要も多いというときは原則論としては金利は上げなくちやならん。又上るべき傾向をとる。これは国際的に今そういう勢いである。例えばアメリカでもすでにもう金利は上げておる。が併し日本資本市場というものはそういうふうには動きてくい状況にある。それは資本の蓄積が極めて貧弱である。極めて低い預金に依存しておる。アメリカあたりにすれば蓄積資金に依存ができる。それで金利の原則論が適用できるけれども、日本の今日では資本の蓄積のできるまではどうしても日本銀行の紙とインキと印刷機で作つたこの通貨に或る程度初めからもう依存するということがもう明らかなんです。例えば千数百億というものは日本銀行から貸出さなくてはどうにも動かない。これは頭から分つておる。そういう資本市場における金利動きというものは、やはり理論的には行かない。それが一つです。基本的なものです。もう一つ日本金利はやはり戰前に比べても、それから国際水準に比べてもまだ低いどころか高いと思つておる。これを下げて貰いたいという気持がある。そしてそれが今のところでは可能であろう。併し先ほど言うた常道論から言えば金利は上ぐべきだ。そこに上げると下げたいのと両方の面がある。それで今我々がなすべきだと思うことは、今の金利体系は下げないが、一応下げずに置くが、その体系のうちでも当然下げていい部分がある。それは先ほど言つたように、日本金融市場が当然頭から日本銀行資金に依存するということが前提とされる部分がある。その部分の資金については何も日本銀行の公定歩合と、市中金利との問に大きな開きがなくてもいいんじやないか。それで日本銀行の当然受取る手形、その市中金利一つ下げて欲しい。そのくらいは当然やるべきだろう。それで商業手形金利は下げたがよろし、こういうのが私の一応の今の意見です。
  162. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 さつき見返資金或いは預金部資金の問題が問題になりましたが、この点は総裁も頻りと積極的に運用しなければならんということをおつしやつておりますし、私達もこの委員会を通じて大蔵大臣或いはその他にも非常に主張しておりますが、この問題が更に、もつと根本的に言えば、あちらさんの問題だろうとも思う。やはりそういう意味で向うさんにも相当そういう希望を強く表明しなければいけないのじやないかと思うのですが、ドツジさんとお会いになつたときの感じはどうなんですか。そういう問題が問題になつたので……。
  163. 一萬田尚登

    参考人(一萬田尚登君) ドツジさんがどういう考えでおるか、私まあ知りません。これはまだ私忖度する能力を持つていない。なぜなら相手が偉いので、これは分らん。分らんが、併し物を作つても売れんという朝鮮事変前の状況では、ドツジさんであろうと、誰であろうと、そうなかなかこれは金を動かさんですよ。売れないのですから滞貨という形が積り積り、むしろその滞貨を処分して物価を下げて、その基準の上において国際市場に出すという仕組に持つて行くより外に基本的な打開の途はない。併し今日のように、国際的に物が売れるという段階に来たのですから、これからは必要なものを作らなければ折角の好機を逃してしまう。そうしてそういうものを作るために必要な資金、従つて合理化資金、或いは先ほど申上げましたような商品の増産に必要な運転資金とか、そういう資金は出さなければならない。そういう結果相当の融資を必要としますから、ドツジさんはどうか知らないが、私の意見とすれば、この際財政資金を或る程度長期資金に振向げることは十分リーゾナブルなことだと考えておる。それでやはりこれは皆さん方も見返資金を動かし、預金部資金を動かすことについて十分お考え頂きたいと思う。例えば郵便貯金であるとか何とか零細な資金を国の機関が集めて、これに利息を與えて行くところの預金部資金は国の、国家事業に持つて行くとか、見返資金で以てその金を使うことになつて来ればそれだけ見返資金が殖えて来る。言い換えますれば、見返資金は本年度私企業に四百億、公企業に四百億充てられることになつているが、この公企業に対する投資を見返資金ではなく、預金部資金を充てて行く。公共企業の中には、例えば電信電話とか、或いは通信、或いは国鉄、こういうものがあるが、これには預金部資金を使わせる。それにより見返資金に百億なり二百億浮いて来れば私企業に対する見返融資は四百億にプラスして六百億になる。そうすると、見返資金なら今でも貸付をやつてリスクを負担しておるからいいのではないかというような考えで、見返資金民間企業に対する貸付を殖やして、それを合理化資金に廻して行く、こういう一つ考え方、そういうことも国会でいろいろ御審議を願へれば非常に有難いと思います。
  164. 小串清一

    委員長小串清一君) どうも有難ございました。お忙しいところ恐縮でうございました。今日は御苦労さんでございます。  それではこれから全国銀行協会の理書で東京銀行協会の副会長をしていらつしやいます荻野さんに、最近の金融の実情についてお話をお願いいたしまして、更に金融業に対する法律の改正とか金融政策等についての御意見を合せて一つ伺いたいと思います。
  165. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 最近の金融事情ば、もう殆んど皆さんがおり話になりましたと思いますが、一口に申上げますと、私共銀行に入りましてから余り経験したことのない金詰りなんです。それは御承知のようにもう銀行の借入金というものは昨年の同期の一年前に比べまして、市中金融貸出が非常に殖えて、そうしてオーバーローンも極度に達しておるというように見えるのであります。それに対しまして、更に非常に資金需要が多い。これは最近朝鮮事変以来多少物価が上つておりますので、やはり運転資金が一般的に殖えて参りまして、それが相当大きな、又同時に貿易関係でも非常に資金が要るわけでございますので、輸出にいたしましても輸入にいたしましても、いずれも貸金の需要が非常に多い。そういう点もございまして、資金需要は非常に旺盛なのにも拘わらす、一方では銀行預金は、この四月以降九月までの間の情勢は、成るほど期末の預金は総額においては相当殖えでいるのでございますけれども、要するに実質の預金が余り殖えない。実質の預金と申しますのは、只今月末には非常に大きな決済が多い。殊に税金が非常に大きく、取られる金がお聞きになつておりますように数百億、四月から九月までに及んでおりますから、月末に取られる税金が非常に多い。のそ次にはいろいろな決済がございまして、月末の数字は非常に大きく出ておりますけれども、どうも大体一割五分、総預金が例えば五百億であれば、本当の実質預金は四百億余りあるかないかという程度でございます。その実質預金増加率を、四月から九月までの、まだ私は実際の数字についてよく見ておりませんけれども、その増加率は余り多くない。それに対してその実質預金というものが、いわば安心して貸金に向けられる金でございます。それが非常に遅々として伸びませんために、資金需要は多いが一向それに対してマツチするだけの資金が殖えて来ない。そういう関係から、金詰りというものはますます深刻でございまして、我々としても非常に苦慮しているのでございますが、やはりどうしても貿易関係なり、或いは国内の運転資金なりで必要止むを得ざるものはこれはどうしても出さなければなりませんために、自然日本銀行への依存率が高くなる。さつき申上げましたように、市中銀行貸出が殖えて来ているという実情でございます。金融事情、金詰りの実情は今申上げましたようなことで、それからもう少し平たく申しますと、物価は大体百倍、二百倍ぐらいになつていると思いますけれども、同時に兌換券もほぼ戦前の二百倍ぐらいになつているだろうと思います。銀行預金だけは、これは大銀行のことを申上げまして甚だ恐縮でございますけれども、昭和九年頃は預金が七千五百万ぐらい。それが今日は五百億に達しない程度、それでこの七千五百万ある金が実際の需要に対して、マツチするだけ殖えるとすれば、或いは千億以上の金にならなければ、千億が千五百億ぐらいにならなければ、昔の需要を賄う程度に行かない。このように運転資金というものはすべて物価上つた百倍二百倍になつている。物価の標準として作られているのですが、要る方の会社はどうしても要るだけの金が要るものですから、その百倍二百倍の金を使われる。要求する方は百倍二百倍になつておらん。今大銀行でそれだけの預金を持つている銀行はどこにもございません。それだけないというところに非常なギヤツプがある。我々としましても苦しいのはそのためなんであります。要するに国民の資本の蓄積が足りない、これが根本の問題だと思います。資本がもつともつと蓄積せられれば、これは自然に解決する問題です。同時にもう一つは資本が蓄積せられれば、もう一つ資金を圧迫しております事実は、大会社がみんな借金をしておる。昔は大会社というものは、配当資金であるとか、或いは製粉会社が麦を買付ける金であるとかいうような時期的に資金が要りまして、それを供給して置けば、後は預金銀行に置くと、それはそうは行かなくなりまして、資金が多く要るために、殆んど年中借入金をしておるという実情であります。これが資本の蓄積によつて訂正せられて来ない上は、どうしても我々としても預金が昔の状態に帰つて来ない。そこにそういう情勢が一日も早く来ることを希望いたしますが、これには皆さんの……非常に政治に関係もございますので、どうしてもそれに近い状態に帰つて来なければ、この金融の面が緩和する、つまり楽になるというような情勢は出て来ないだろうと思うのです。それで資本の蓄積ということを一つ皆さんもお考えを願いまして、如何にすれば資本が蓄積されるか、まあドツジさんあたりも今度見えて、日本も朝鮮事変で相当よくなる場面もあるから、そのよくなる部分を有効に使つて整理すべきものは整理する、それで外国の物価に追随しないように生産費を安くして、コストを下げて対抗しろというようなことを言つておるのです。そういうようになれば非常に結構だと思います。
  166. 木内四郎

    ○木内四郎君 資本の蓄積のことをおつしやつたけれども、これは何かそれに障害となつているようなものがあるようにお考えになりますか。具体的にどうしても減税をやつて頂かないと……。
  167. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 減税をできるだけおやり願えればずつと変つて来ると思います。
  168. 木内四郎

    ○木内四郎君 それもそうですが、所得税、その他の減税をすればそれだけ余るのですけれども、それと同時に銀行に直接御関係のある方で、何か税制の問題、或いは税率の問題、或いは他の機関に対する、貯金に対する税制その他との関係等から見て、この銀行に直接御関係なつている方で、何か税制の上でないでしようか。
  169. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) それは無論今の定期預金金利を見まして、税金を差引きますと、非常な低い利廻りになるのです。二分一厘ぐらいになります。もつと下るかも知れません。その程度にまで税金を差引きますとなるわけです。預金者に、定期預金が一番長く銀行としては……銀行へ預ける金でございますが、それが昔は、明治時代は、或いは私共銀行に入る三十年ほど前には、税金はなかつた、その当時は六分五厘ぐらいの金利でございました。それだけ優遇されておつたものが、今日では利廻りは悪いものになつて来ておる。というのは、日本の富が相当戦争前まで非常に躍進をいたしましたから、或る程度公平な意味で資本を、或る程度税金を取られるのも尤もかと思いますけれども、この戦後疲弊した日本経済蓄積を殖やすためには、こういう点もいろいろ考えて頂きたいと思います。殊に預金の課税は予算の全般から見れば極く僅かなものだと思いますので、非常に小さなものでございます。こういう点も大いに研究しで頂きたいと思います。
  170. 木内四郎

    ○木内四郎君 今の税率の問題はこれは所得の階級になつて、或いは人によつては地方税まで入れれば七〇%取られてしまう人もあるかも知れませんし、いろいろあるだろうと思うのですが、それは非常な障害には勿論なりますが、それと同時に税制の制度の上において銀行に対する預金ですね、それの障害になるような税制の上の制度に何かあるように思われるですか。
  171. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) これは会社の何といいますか、非常に高率な税金を資本金の割合……。
  172. 木内四郎

    ○木内四郎君 あれはなくなりました。今は一律に三五%ですが、或いは今の銀行預金にして置けば税務署に報告されて云々とか、そういうような何か別にあなたの方で……。
  173. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) それは非常に考えますのですが、殊に一般に税金は秘密を尊ぶものでありますが、この間も四日市のほうで非常に銀行の滞納者に対して名前を挙げて、銀行預金の拂戻を止めるというような非常手段が行われるようになつたのでありますけれども、これは何か誤解であつたのだろうと思いますが、これは取消しになりましたけれども、とかく銀行預金に対して税関係のいろいろなお調べがあるのが甚だ障害になつておると思います。その点は郵便貯金が余り数が多いし、いろいろの手数もかかるし、余りそういうことは聞かないのですが、銀行預金というのは非常に分り易いものですから、自然こういう対象になるという点を非常に残念だと思いますけれども、殊に郵便貯金は国家の信用から預けるものであります。我々の方は銀行を信頼してお預け願うというのですが、特に非常な区別があるということは、これは是非止めて貰いたい。成るべく平等な扱いにして頂きたい、そう考えます。
  174. 木内四郎

    ○木内四郎君 今銀行預金高、残高は幾ら報告しろとか、むしろ利息を幾らまで報告しろというようなことはありますか。
  175. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) あります。それから利息の千円以上のものを……。
  176. 木内四郎

    ○木内四郎君 元金を報告するのですか、それとも利息を報告するのですか。
  177. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) いや元金です。千円以上の……ちよつと間違いました。千円以上の利息を拂つておる者は税務署へ出す……。
  178. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今お話もありましたが、オー・バーローンという現象ですね、これは一体いつ項から特に顕著になつて、そして最近の経過はどういうふうになつていますか。
  179. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 昨年の丁度今頃でございましたか、可なり貿易が再開され、物がどんどん入つて来るようになりました。それで石油であるとか、羊毛であるとか、綿花であるとか、そういう大きなものが民間の決済に移りましてから、これは一時のことかと思つたのでありますが、そういうものの輸入を賄うのに資金を、その当時はすでに一杯でありましたけれども、その頃から大きく何億という金がそれぞれ必要になつて来たわけです。それが顯著になつて来たのは、私は丁度一年ぐらい前からだと思います。併しこの四月頃と今と比べると、やはり四月頃よりは今のほうが大分借入金も殖えておりますから、やはりその情勢は依然として強まつておりますが、弱まつてはおらんのですから、やはり決済の資金が相当にいつておると考えられるわけです。
  180. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 それで全国銀行の勘定を見ますと、勿論預金増加より貸出のほうが殖えておるのですが、それでも月末の数字を見ると預金より貸出が殖えたということはないのです。十日、二十日だけ貸出預金より殖えておる。
  181. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 中にはといいますか、いわゆる飾りのために預金計数を殖やす意味で甲の会社がABの銀行へ小切手を翌日決済するように預け合いをするというようなことがあるのでありますが、これは私共は非常に避けておるわけであります。これをやられると非常に困るのですから非常に避けておるのです。併しこれも或る程度はあるかと思いますが、それよりもやはり月末の決済が非常に多い。それでつまり月末の決済というのが、殊に税金関係は月末頃からずつと入つて参ります。二十五、六日頃から入つて来て三十一日、一日頃に日銀へ入つてしまう。それは非常に大きな金であります。殊に私共のほうの市中銀行は一番大きく影響する。例えばビール税であるとか酒の税であるとか、こういうものは非常に大きなものです。一行で相当あると思います。
  182. 木内四郎

    ○木内四郎君 銀行協会でよく政府資金は、見返資金といいますか、それよりもむしろ預金部資金に対していろいろな御希望がおありになるように承知しておりますが……。
  183. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) いろいろ我々のほうの実質預金が殖えないために、どうも却つて郵便貯金をかれこれ言うようにお考えになつておられて非常に残念だと思いますけれども、そういうような意味でなく、やはり今のような銀行預金ならば税務署は非常に簡單に調べられる。それから片方の郵便貯金ならばなかなか手が入らないということは、可なり金を持つて預ける人はよく知つておるわけです。そういう関係で或る程度は郵便貯金に相当出ておるという人もあると思います。昔はそれを銀行に置いておるような人が郵便貯金へやつておるというのがある。
  184. 木内四郎

    ○木内四郎君 その制度上と共に、何か預金部資金運用の点についても御希望、御意見は……。
  185. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) やはり民間の金として引揚げたものであるから、而も昨今のように我々の方は金詰りであるのに、郵便貯金が非常に殖えて来られるならば、これはこういうことに対して我々民間のほうに何かできれば預け替えをして頂くなりして、折角すでにある金ですからそういう方法はとれんものかという希望は持つております。
  186. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 九月末までは決算なつたわけでありますが、銀行決算の状態はどうなんでしようか。日銀あたりから随分借りまして、どのくらいで借りるか、相当貸出の量も多いし、決算の状態をちよつとお伺いしたいのですが…。
  187. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 決算の状態は各銀行によつて違うと思いますが、私共の方は借入金が前期より恐らく倍近く殖えておりはせんかと思います。尤も借入金はもともとそう沢山はしておりませんけれども、併しそれにしても相当に殖えております。借入金が殖えまして貸金が殖えております。それからつまり考課状面に出る預金は前期より四十億くらい殖えております。その程度です。借入金は又そのくらい殖えておりまして、貸金が相当殖えております。それで利益は前期よりはよいです。
  188. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 それはどのくらいでありますか。
  189. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) それはまだ決算が済みませんからはつきり分りませんけれども、均したところ各銀行によつても違いますけれども、四、五千万くらいは多いだろうと思います。
  190. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 どのくらいになりますか。大体どのくらい銀行は殖えておりますか。
  191. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 今度の決算は前より相当皆殖えております。殖えておるのは四、五千万じやなく、もつと殖えております。それは前は税金を引いたあとを決算面に現わしたが、今度は税金をあとから引くことになりました。それだけ今日では市中銀行の利益はうんと殖えた恰好になりますが、これは内実はそうじやない。
  192. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 四、五千万殖えるというのはこれは税込みですか。
  193. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 四、五千万殖えておりますのは、別に税金には関係なく殖えております。その主な原因幾らか三、四十億か預金が殖えておることと、借入金が殖えてそれが貸金に廻つておるということです。
  194. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀からの借入は幾らですか。
  195. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 私共の方は前期四十億ぐらいで、今期九十億近いと思つておりますが、これはまだはつきり分りません。
  196. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 日銀の外に……。
  197. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) これはいろいろあるのです。いわゆる高率適用というようなものもあるのでして、いろいろあります。
  198. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 平均どのくらいですか。
  199. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) そうですね、一千……その銀行にもよりますから分りませんが……。
  200. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 預金増加ですが、全国銀行勘定によりますと、六月、七月は百九十億足らず月に殖えておるそうでありますが、八月になりますと百十二億といつてつたのが、九月の正確な数字が分つておるかどうか知りませんが、さつき大蔵省から出しました資料によりますと六百四十億急に殖えております。これは一体どういうことを意味するんですか。
  201. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) ちよつとそれははつきり分らないんですが、今のいわゆる決済資金以外には考えられないのですが、いわゆる全国的に或いは会社がそういう銀行の歓心を買うために預け合いをするというようなことが案外拡まつておるのかも知れません。一日しか留まらないようなものが案外あるかも知れないし、ちよつと分りません。
  202. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 何か巷の噂によりますと、日本銀行が非常に無理な操作をされて相当資金を吸収された、それに関連して更に市中銀行市中銀行産業家なり業者に対してそういう操作をされたというような声が非常に強いんですが、この異常な預金増ともいうべきものはそれに関連した問題なんですかどうですか。
  203. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) そうですね、そういうことはないと思いますね。
  204. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 先ほどの利益率なんですが、資本に対してどのくらいの利益率なんですか。
  205. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) ちよつと計算が今のところまだはつきり出ておりませんが……。
  206. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 前期はどうですか。
  207. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 前期は私共の方は資本金の十億二千万円に対しまして、利益が一億九千万、公称利益まあその程度で今期はもう少しそれが多い。
  208. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 さつきのお話の通りに、この市中銀行全国銀行貸出は逐次殖えて来ているし、特に六月くらいから相当殖えて来ているんですが、これの資金需要増加の中には何か投機的なものなり何なりそういうものも相当含んでいると見ていいんですか、それともそうでなくて日本経済がここで転換をして相当大きく堅実の意味での資金需要が出て来ているのだとそのまま見ていいかどうか。
  209. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 大体は堅実だと思いますが、やはり或る程度は見込み、いわゆる思惑、どうしても商売意識があつて、金儲けの意識がある。殊に商売関係の方にはあると思います。まあそれで新聞にも出ておるようなことがあると思います。それを銀行が出すときにこれがこういうことをするのだから注意しなければいかんと、こういうふうにしなければいかんというふうにして、まあ銀行としては非常に嚴格な態度でやつてはおります。併し例えばその金は事実そうであつても外から入る金があつて、それを思惑資金に向けられればそういうふうにそれが銀行に返らないで行くことはあり得ると思います。ですから資金需要の中の一部にはどうしてもそういうものはないとは言われません。
  210. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 今後の資金需要、特に年末にかけての資金需要は数量的にどれくらいに殖えているというようなお見通しですか。
  211. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) それがなかなか見付からないのですがね。どうも年末は大分お話を伺うと、政府の支拂がおありになつて十、十一、十二が相当に撒布超過になるお話なんですが、まあそうかと言つて併し私共が貸付金を殖やすということはできませんから、まあ今ちよつと差当つて考えられることはこの朝鮮事変以来可なり物資の輸入を始めました。ちよつと時期が遅れましたけれども、相当の信用量か出ておりますので、それがこの十、十一、十二頃に入つて来る、そのときに相当資金が要るのだろう。少し撒布超過になつてもそういう方面に金が相当要るんじやないかという見込でおります。まだそれがどの程度かこれはちよつと、全般のことは分りません。私共の銀行だけならそれは分るのです。
  212. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 よくオーバーローン原因として今おつしやつた蓄積が非常に弱まつて来ているとか、貸出が殖えているということ以外に日銀金利市中銀行金利とが鞘があんまり多過ぎるから、どうしても市中銀行のほうは資金蓄積という困難な面よりも日銀借入といろイージーな途を選んでそれが一つ原因なつているという議論があるのですが、それは併し銀行家の感じはどうですか。
  213. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 私はそれはないと思う。私共は極力オーバーローンにならないことを初めから頭に置いてやつております。いわゆる利鞘がどうこうするということは全然考えない。むしろ借入金の殖えることを非常に苦にしておるわけです。アンバランス、オーバーローンということは初めからよくないことは分り切つておることでございますから、自然そのつもりでやつておるので、減らせれば極力減らして付こう。殊に十二月頃に非常に撒布超過になつて手許が少し楽になれば極力やるつもりでおります。そういうことは恐らく市中銀行にはないと思います。不健全な状態で、利益があるからといつてやることは銀行の本末顛倒だと思います。
  214. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 税金関係ではどのくらい負担軽減になりますでしようか。
  215. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 税金関係会社の利益に対する非常な高率な税金が廃止されましたから、この点は非常に会社は楽になつたと思います。併し御説のように昨今会社がときどき巨額の脱税も中には相当あるだろうと思います。資産の増加に対する税金が相当かかつておる。過去の蓄積は今度税金で取られてしまつたというような恰好になつておりますから、やはり会社の資産状態はよくならないですね。これはまあ一時的の税金であとがなければよろしいが、何かいろいろ承わるところによると相当に重税がかかるようであります。この点が是正されて昔のような式になつて来ないと、日本の事業というものは本当に蓄積はいつまで経つてもできないのじやないかと思う。
  216. 木村禧八郎

    木村禧八郎君 法人税関係で、金額でどのくらい低くなるでしようか。
  217. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) ちよつとそれは分りませんね。
  218. 佐多忠隆

    佐多忠隆君 さつきのお話、日本銀行総裁のお話では、この長期資金が不足しているということですが、預金部資金なり見返資金で合理化資金を、従つて設備資金をもつと長期に積極的に出すことが考えられなければならんだろうというような御意見だつたんですが、その場合に市中銀行の方が御覧になりますと、そういう資金を要するためにやつばり特別な金融機関を別途設ける必要をお考えになるかどうですか。
  219. 荻野正孝

    参考人(荻野正孝君) 私共は実は商業銀行で、できるだけ短期の金を動かして、それで短期に使用してそれが停滞しないように、一方には即時拂いにも持つているわけで、それに見合うようにやつて行きたいと思う。従つて長期の金はできるだけ避けたいというつもりでおるんですが、それで興業銀行さん、勧業銀行さんあたりにまあ長期の金をできるだけやつて頂くように、私共としては甚だ重圧なんですけれども興業債券も引受けますし、相当にやつておるわけです。これだけでは十分ではございません。殊に今度の日本経済復興のためには、いわゆる長期資金が安心して使えるような銀行といいますか、金融機関があつたほうがやはりいいのではないか。これは復金というのがありましたのですが、なくなりましたので、できればそういうものが欲しい。併し勧銀、興銀両行でもとても賄い切れません。従つて我々としても例えば船舶建造の資金など、三年ぐらいかかるものを日本海運の復活のために犠牲的にやつておる場合があるわけです。ですから本当の場合にそういうものが必要だと思います。
  220. 小串清一

    委員長小串清一君) 一いろいろお忙しいところを有難うございました。それでは本日はこの程度で終りたいと思います。    午後四時十二分散会  出席者は左の通り。    委員長     小串 清一君    理事            大矢半次郎君            佐多 忠隆君            木内 四郎君    委員            愛知 揆一君            黒田 英雄君            森下 政一君            清澤 俊英君            松永 義雄君            小林 政夫君            杉山 昌作君            小宮山常吉君            木村禧八郎君   説明員    大蔵省銀行局長 舟山 正吉君    大蔵省理財局見    返資金課長   大島 寛一君    経済安定本部財    政金融局長   内田 常雄君   参考人    経済団体連合会    会長      石川 一郎君    日本銀行総裁  一萬田尚登君    全国銀行協会会    長       荻野 正孝君