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鈴木直人君 それに関連してお聞きしたいのですが、そうしますとどうもこの未
復員者給與法というものの建方ですね、
法律の権利、義務の建方。何故、どういう
意味で貰
つているかという建方は、まだ
軍人の身分とて曾て貰
つていたところのものを、戰争が終
つて、
軍人がなくな
つて新らしい憲法の現在にな
つてもですね、国と個人との
法律上民法上の、民法上と言いますかそういう契約ですね、公法上の契約ですが、いわゆる自分は
軍人とな
つている場合には
現物支給というようなものの外に、
煙草銭程度のものを貰うのだといういわゆる公法上の契約が、
軍人としてそういうふうにな
つていたけれども、それが
軍人でなくなる、それが廃止ざれ新らしい憲法の時代にな
つてもそれが継続されて、そうして現在にまで来ているところのものである。その契約は
家族にやる契約でなくしてその個人に国からやるものであ
つて、その個人が
家族に、貰
つた分をどういうふうに分配するかということは、貰
つた個人と
家族との
関係において行われてお
つたんであるが、そういうことについて今
家族にやるとかということは、従来のその
軍人と
国家との契約を破棄するということはできない。それはその個人は今どこにおるか分らん。だからしてその人がもう一度契約を仕直すことを納得すればできるけれども、そうでない限り曾て
軍人であ
つた時代の
国家の義務を、そのまま継続して行かなければならないのであると、こういう
説明でした。そういう
性質のものであるということは了解した。そこで第一点はですね、今高良さんから一体戰争前のそういう国と個人との契約が今も続いているというのはおかしいではないか、いわゆるそういう契約は終戰と同時に個人と国との
関係においては、そういう契約は終
つたのではないか、一応そこで御破算にな
つたのではないか。併しながらそういう意思を承けて……、そういうような終戰前における、そういう
国家と個人との契約の意思を続けて行く新たな
給與法というものができたのではないか。そうであるとするならば、その
給與法というものは、
性質は、必ずしも曾て
軍人であ
つた時代におけるところの、個人と
国家との公法上の契約をどこまでも厳守する必要はないのではないか。現在その
本人はどこで生きているかちよつと分らない
状態、
家族は
生活をすることもできないという現実にある場合に、新らしく憲法に基いてできたところのその
給與法の内容が、やはり新らしいところに盛
つて行くということが必要ではないか。こういうことだと思うのですが……そこでそれについての私ら是認し得る点があると思うのです。その点について一つお聽きしたい。
もう一つ、それが是認せられないとするならば、曾て戰争中においてされたところの契約の本旨が現在も継続されなければならないということであるとするならば、私は
煙草銭だけ
国家が負担するというのでは十分でないところがある。
現物支給として幾らかのものを毎月国が
本人に
支給していた筈である。これは相当の額に達するものと思う。その
現物支給に匹敵するところの
金額は現在の
ベースに応じて
計算されて、そして現在の
本人に引継ぐべき
性質のもので、そういう
意味のことは
公務員についてすでになされておる。
軍人においても
煙草銭だけが、そういうふうに
本人と
国家の
関係であるということを強く主張するならば、その
現物給與もやはり同じような
性質の下に支出せらるべき
性質のものである。決して戰争と同時にそれは消えてしまうものではないと思う。その点について、どうして
現物支給というものは戰争と同時に消えてしまうという理論が出て来るのか、それをお聽きしたい。