○
参考人(
大内兵衞君) 私が
大内でございます。それでは
山下委員長さんの御指示によりまして、
社会保障制度に関する
勧告の
趣旨、或いはその沿革、或いは
勧告の現在の地位、こういう話を二、三申し上げますけれども、
委員長から承わるところによりますと、この
委員会ではすでに
社会保障制度に関してはいろいろ御研究がおありのようでありますし、それからもとより
皆さんにおきましてはその道の
専門家でありますから、
勧告に関する十分の御理解があることと思いますから、初歩的なことは余り申上げる必要がないように思いますので、むしろ特殊的なこと、重要な問題というようなものを取上げて二、三申上げまして、その上で御
質問に応じて私の今までの経過その他についての所見を述べる、そういうことにいたしたいと存じます。
この
社会保障制度審議会は凡そ一年半前にできまして、総会は毎月、二十回ほどやりまして、各
委員会というのを百何回やりまして、恐らくはこういう
種類の
審議会では最も勉強した
審議会であると存じます。それから
参考資料というのが或いは御手許に行
つておるかとも思いますが、こういう大きさの
勧告文と
勧告の
参考資料がありますが、それに今まで研究したすべての結果が集ま
つております。尤も
参考資料ですから非常に正確でない点もありますけれどもとにかく一応
日本の
資料が印刷されておるということが大変便利だと思いますから、十分御利用を願います。
それでその
勧告がどういう
趣旨において、どういう位置でにあるかとうことですが、御
承知の
通りイギリスの
社会保障制度というのが
範囲が一番広い。広いのみならず行届いておるというのが特色でありますが、その行届いておるのには、
国家が非常にたくさんな
費用を
負担してや
つておるということ、言い換えれば、
イギリスでは
国民から
租税を取
つて、特に金持から重い
所得税その他によ
つて得る金で以て全
国民に
最低生活を
保障する。その
最低生活というのは、
病気でも、
子供の
費用でも、葬式の
費用でも、或いは教育でも、食べるものでも、すべてそれらを含んでありますから非常に広
範囲であります。もう一度言い換えますれば、
イギリス社会主義という
思想に基きまして、
社会保障制度を通じて
社会の富の再
分配をする。建
つて富の
平均化を図る。行く行くはこれによ
つて社会主義を実現させるという
思想が非常に明瞭に現われております。これは一九一一年のロイドジヨージの
改革から始ま
つて、一九四二年のいわゆる
リバリツヂ案というもので、そういう
考えが具体化して、一九四八年七月五日において先ず全部が実行されたということにな
つておる。ところがこれに対しまして非常に
違つた色彩を持
つておるのは
アメリカでありまして、
アメリカも一九三五年から
社会保障制度というものが発達をしております。そうしてこれは全国の
制度となりつつありますけれども、その
思想は、決して富の再
分配をするというのではなくして、全
国民に
失業をさせないようにする。それから
失業した場合及び
労働者として年が
寄つた場合に、非常に豊かな
生活ができるようにしてやる。この
二つを主に狙
つておる。
従つて国家が金を出すということは余りないので、そういうことをやらなければならんということについては
政府が
世話をするけれども、それをやるのについては
資本家と
労働者とが
両方金を出してそうしてや
つて行く。而もや
つて行くには、いわゆる
最低生活というものを
保障するのでありますし、それから
失業もしないようにする。
失業したならば
失業保險金をやるというのでありますけれども、そのいわゆる
最低生活なるものは、
イギリスとは非常に違います。とても
イギリスの何倍か、四倍か五倍くらいの
收入を得て豊かな
生活をして行く。つまり
社会の実情に応じて豊かに楽にするというのが
アメリカの
思想で、而も相互の金をふだんから溜めて行
つてやる。
国家がやるというのではない。
イギリスと非常に違
つておる。これに対しまして
日本は如何つなる
思想でこの
勧告ができておるかと申しますと、
日本は第一貧乏の
程度が
英米とは非常に違う。
従つてこの
社会保障の問題にたる必要が、
英米の何倍か緊切である。而もその問題が
英米よりは非常に広い。つまり
貧乏人の
種類が
英米よりはずつと多い。而も
病気とか、
不具廃疾とかということによ
つて、生きる人の苦痛なるものが非常に大きい、つまり
生活程度が低いから。その上に
戰争の
惨害が
英米と比較しますというと問題につならずひどい。そこで
戰争の
惨害の次に起つた問題は、
社会制度の
改革に
従つて、
日本に従来あつた
家族制度なるものが念に破壊されて来た。そこで
家族制度の破壊に基く
社会の弱者の救済ということが特に重要にな
つておるというにとが一方においてある。もう一度申しますというと、
社会保障制度なるものは
英米のようなものではないので、
最低生活を保証するといつたところが、それはその
最低生活の
保障というような瞥沢な問題ではなくして、死ぬか生きるかということで、何とかして助けて行くという問題にな
つておるということが
一つ。
他方において、御
承知の
通り財政が非常に貧弱でありますから、問題の大きさに対しては、非常に困難な
問違が多いということがあります。そこで結果といたしましては、非常に広い
範囲に対して少しずり分けてやらなければならない。先ずいわば薄いお粥を
皆さんに食べさせる、窮民に配給するというような昔からの
日本の非常に
社会的困難のときに行われる
方法を、今度は全
国家的に全資力を盡してやるというような形になります。そういう
意味で、
日本の
社会保障制度というものは、やはり
世界の他の国とは違つたものであります。而も
最低生活の
保障ということを
目標にはしておりますけれども、その
最低生活なるものも実際の
最低生活には遥かに及ばない。実際の
日本の
最低生活が
幾らであるかということは、これはなかなかむずかしいですが、月三千円ということも
考えられるし、月六千円ということも
考えられますが、そういう
程度にはとてもならないので、すべての人にそういうふうには行かないので、
程度ももつと低いし、それから今度はすべての人に及ぶという、そのすベての人の
範囲が非常に限定された。特に
社会の貧困なる人々の中で特に低い人ということにしかならない
状態であります。そういう
意味においては甚だ
世界的にはまずい。まずいと言いますか、
程度がひどい。併し緊切な問題であるということ、
世界の他の国に比較しまして、
社会保障制度が緊切な国であるということの二点、これで全部の
勧告ができております。
そこで今度は、今度の
勧告の立て方のお話をいたします。今度の
勧告の立て方は、
アメリカのように
失業とか、或いは
養老年金とかというものに、たくさんな金を皆の人にやるというようなことにはできていないので、
日本人としましては、貧と病ということを申しますが、その貧と病を直接に
目標といたしております。病は
社会保險の
方法でや
つておる。貧は主として
国家扶助という形体でやる。それから
病気と
貧乏人、即ち誰も助けることのできない、或いは
寄る辺のない人間を助けるというその
二つの問題が先ず最初に出て来る。その次に予防的な面と、それから福祉的な面とがある。
従つてこの
勧告書を御覧下さるとわかりますように、第一編が
社会保險、第二編が
国家扶助、第三編が
公衆衛生及び
医療、第四編が
社会福祉、第五編が
運営機構及び
財政、とこういう形にな
つておりまして、
社会保險というものを、つまり
病気に対する
方法を前に押し山して、その次に
寄る辺のない
貧乏人を助ける
方法、それから
社会全体の
公衆衛生及び
医療、そういうものをよくして行くという、そういう形にな
つております。こういうふうにな
つておるのがやはり欧米と違うところでありまして、又
日本の
性質が表面に出ておるのであります。その中で
社会保險の話をいたしますと、
社会保險は
日本では
相当広い
範囲に長い間試みられておるのでありますが、今申上げたような
原因によりまして、大体失敗であります。まあ少くとも十分成功しておるということが言えない。それは今日の
医療が
健康保險におきましても、
健康保險というのは
労働者に対する
保險でありますが、それから
国民健康保險、これは主として農民に対する、農村の
保險でありますが、いずれも成績が非常に悪いのです。悪いという
意味はいろいろありますけれども、だんだん
普及をしておるという点においては非常によくな
つておりますけれども、
普及をすればするほど
経営主体の
財政状態が非常に悪くな
つて来て、
負担が重くな
つて、今や困難に瀕して、瀕死の
状態にある
経営が非常に多いのであります。これを亡ぼしてしまうのがよいか、或いは亡ぼさないで改善をするのがよいかということが当面の問題にな
つておる。この
勧告はこれを亡ぼさないのみならず、これを改良して行くということに力点をおいております。改良して行く
方法は、申すまでもなく技術的に言いますと
医者の
診療手数料の問題でありますし、又
保險料の問題でありますが、
保險料を
幾分か軽くして、そうして
医者にはもう
十分報酬を現在よりは早く拂えるようにしたいというのが改良の
方法であります。
従つて保險制度の
費用を全部
国家が
負担するという
一つの原則を立てておるわけであります。それから第二には、大体
医療給付の二割を
国家が
負担するのでありまして、更に肺
結核その他
結核一般につきまして、これが非常に今の
日本の
保險制度を悪くしておる
原因でありますから、
結核患者が出ますと、或る
一つの
保險経営は、
患者が少し多くなると、
保險経営自体がすぐに参
つてしまう。そういう
意味において
結核は
国民的病気であるのみならず、
社会保險を亡ぼす
病気であるのでありますから、この
結核につきましては五割まで
国家が
負担するという
制度を拡充する、そのことによ
つて現在の
社会保險、
各種の
社会保險制度はよくなる、必ずうまく行くという
見込を立てているわけであります。この点が
議会その他においてはこの
見込が正しいかどうかということが大問題になると思いますが、
審議会は
給付についての二割の
国庫負担、それから
結核についての五割の
国庫負担をやれば、大体よくなるという
見込であります。ここで
経営主体の問題があるわけですが、これらにつきましては、大して
現有の
制度を改める
考えはないのでありますが、ただ現在
労働者の
保險、
会社労働者、そういういわゆる被用者の
保險は、
組合保險ではない場合は
国営にな
つておりますが、それを今度は
組合保險でない場合には
府県営にしようというのであります。この点は
審議会でも非常な問題でありまして、現在の
通りの
国営主義がいいか、
府県営主義がいいかというのが大問題でありましたが、多数の
意見として、
経営を民主化する
必要上府県でやるほうがいい。というのは、つまり将来この
医者の
制度、特に
病院、
公営病院というものは
府県單位にする
考えであります。あとのほうで詳しく述べますが、つまり
国立病院主義というものは成るべく少くして、これを
府県立病院にする、それが
府県の
衛生施設の
中心になるという
考えが
一つであります。それとマツチする
意味におきましても、
社会保險の中で
組合でない
部分は、
国家がやるより
府県がやるほうがいいという
考え、県がやれば県民としてそれに
利害関係を感ずるから、ザモクラテイツクに運営できるという
考え、これは大問題にな
つておりますが、今そういう
意見が、
県営主義が勝利を得ております。もう
一つ問題に
なつたのは、
一般国民の、この第二章の、
老齢、遺族及び癈疾に関する
保險、としてありますが、この
老齢者に対しては、今ある
養老年金制度を変えて進歩さして行くということ、それから
一般国民に対しても、年寄りに少し金をやつたらいいじやないかというのです。これは
家族制度の
関係におきまして、そういう
考えがあります。七十歳になりますというと、一月千円くらい、少くとも千円くらいでもやるような……七十歳のお爺さん、お婆さんになれば、
所得がない、特別な
所得がない者にはやるのが
日本国家としての義務ではないかというのが我々の見解でありますが、併しながらノン・コンパルソリ、ノン・コントリビユートリの……
保險料をふだんから拂わないでそういうふうにやるということはデモクラシーに反する、反しはしないかというのがGHQの
意見であります。この点がやはり大問題になると思います。が、我々は、
日本のヒユーマニテイ、
日本の従来の
国家というものに対する
考え及び人道というものに対する
考えから申しまして、やつ
ぱりそれほど年取つた人、而も
家族制度が今日懐われているときにおいては、それほど
年取つた人に場対して、それくらいのことを
国家がするのはいいという
考えでありますが、併し
報告書ではその点を
幾分か和らげまして、
財政に余裕ある場合はその
制度をやるというふうに書いてあります。ここが政治的な問題として将来十分御
考慮を願いたい点であります。
その他の点について、
財政のほうを先に
説明いたしましよう。その他
国家扶助の点は、もう
皆さん御
承知のいわゆる
現有の
生活保護法、大体あの精神を少しく拡大するだけであります。それから
公衆衛生のほうは、
結核対策というものに特に重点を置いておりまして、現在のところは
結核を封ずるために、
結核の蔓延を防ぎ且つ少くするために、一方においては
予防衛生を盛んにすると共に、
他方においては
結核の
ベツドを多くする、で五ケ年間に十九万
ベツドという
目標でやるという
考えであります。これは
開放性結核患者が今数十万ある、百五十万乃至二百万の
結核患者がありまして、そのうちの半数或いは三分の一くらいは
開放性といたしまして、これを若し家の中に閉じ込め得たならば、即ち
ベツドの中に収容して置いて、彼らの
生活を
保障し得たならば、
日本においては
結核が
社会病としてはもうなくなるということは確実なのでありますが、そこまでは行きませんが、まあとにかく十九万床というものを
目標としてや
つておる、そういう
考えであります。
それから
社会福祉のほうは、これはいわゆるケース・ワークというものを大いに発達させよう。これはつまり従来のような素人が
不具廃疾その他
子供、お産、そういうものの
世話をするのでは不適当である。それよりは
専門のそういう
社会技師を養成する、それをソシアル・ワーカーといいましようか、或いはソシアル・サービスをする人を特に養成して、それを発達させる。それによ
つてそれぞれの親切な指導をする、そういうことが
中心にな
つておりまして、非常な金のかかるような特殊なことを
考えておりません。ただ
方向はそういう確定的な
方向をとりたいということであります。
結局のところ一番大きな問題は、現在の
社会保險を改良しつつ発達させるということ、それから新たに
国民一般の
養老……
老齢年金法を作るということ、それから
国家扶助、
公衆衛生についての現在の
考え方をもう少し拡大し組織的にするということ、それに帰するのでありますが、それらを
まとめて
一つの
社会保障制度として
考える。そうして
日本の
社会保障制度として
考える。
従つて日本の
社会状態に応じたように、與えられたる金を最大の能率あるようにして使いたいということが
勧告の
趣旨であります。
従つてそれに対する官庁、
政府の組織といたしましては、
社会保障省というのを作る、
勧告の
一等おしまいの第五編のところに書いてありますが、
社会保障省というのを作る、その
社会保障省にすべての今申上げたような四つの部門、即ち
保險と
国家扶助と
公衆衛生とこの
社会福祉、これらを総合した
一つのものりにする。
従つて実質的には、現在の厚生省というものは大体全部その中に入
つてしまう。それから
労働省の中で、特に
失業その他に関する
保險制度の
部分は、こちらに入れるというのが
一つで土あります。そういふうなのが、やはりこの参議院その他
議会において特に御
審議の
対象になり、又御
考慮の
対象になると思いますが、つまり現在の
行政制度の変わるということがあるわけであります。
それからそれらについてまだ細目は、いろいろの問題がありますが、改めて申上げます。それを集めまして、今度は
一つ重大なことは、現在では各
保險が別に
保險料を取立てておるのを、
保險料は全部一
まとめにして、
各種の
保險を一
まとめにして被
保險者から取る、その取るのは、今までのように各
保險の
主体が取るのではなくして、それを
租税として
大蔵省が
世話をして取るという、そういう
考えであります。これは重大な変革でありまして、取られる方から申しますというと、
大蔵省から取られるのだから
租税であるという意識が非常に強くなるわけであります。この点が非常に問題になると思いますが、是非ともこうしなければ、今のままでは、先ほど申上げましたような、
保險経営機関が、金がないために、
保險の実際に当るお
医者さんその他に
十分報酬が拂えないというような、
従つて保險経営が非常に危險であるということ、
保險料の徴収という問題が困難でありますから、これを
租税として取るということになれば、非常にやさしいということが
一つであります。それからその次に、
各種の
保險に対する
積立金及び
保險料金というものは非常な巨額になります。特に
積立金は
相当になりますし、それから
保險のお金も
相当に成る場合には残る場合があります。それから又足らん場合もありましよう。それらを
一つの
特別会計にいたしまして、そうして
国家の
制度として、それを大きな
制度として運用し、
目的にかなうように使
つて行くということであります。これは今日各
保險において試みられておるところでありますが、
保險の
性質によりましては、
大蔵省預金部がそうであるように、必ずしも
保險目的のためには使われていない、
社会保障目的のためには使われないということがあります。で、それらは成るべく
社会保障の
目的のために使う、併しながらそれを
財政的に健全なる使い方をしなければならんということは
間違いないのですけれども、とにかく
社会保障の、即ち
社会の貧乏な人の
生活の安定のために使うということを確立して行きたい。そういうふうにな
つております。
それらにつきまして、それぞれの
委員会なり、あれを作
つて行くということが主な基本的な
考えにな
つております。
勧告の
通りフルにそれを全部やりますと、約八百数十億、八百五、六十億の、年額それだけ
国庫の
負担になるというわけであります。現在この
範囲において
政府が然らば
幾ら使
つておるかというのを計算しますと、この
範囲に限
つて計算いたしますというと、およそ三百五十億ぐらいでないかと思います。
従つて五百億そこそこが増額されるという計画であります。
日本の現在の
財政で五百億増額されるということは、
相当大きな新しい
要求になりますので、これがまあ
政府にと
つても重大問題であると思います。併しながらこれは
審議会でこういう
意見が出たわけじやないが、私
個人の
考えによりますと、
日本で
たばこの税だけでも九百億でありますから、
たばこを吸う人の而も税です、
たばこの税額ぐらいを
国家が
社会保障の金に使うということは、決して多いのではないと
考えております。又これは全予算に比較しますというと、一五%ぐらいでありまして、
イギリスよりは遥に低いのであります。
考えようでありますけれども、
日本においては貧と病の問題は、貧乏な国でありますから、
国家的な重大問題であると
考えますならば、割合において
イギリスに
相当するくらいのパーセンテージを、
国家が
拂つてもいいんじやないか、特に軍備を持たない国としては、そのくらいのことを
社会保障にしなければならんのじやないかというのが、私
個人の考であります。これは
審議会の
考えではありませんが、余り不当に大きな
要求であるというふうには私は思
つておりません。これは併しながらフルにやつた場合でありまして、フルにやるということは、
勧告の
要求でありまして、
勧告者としては、即ち
社会保障制度審議会としては、絶対にこれを支持したいのでありますが、併し多少の余裕、何といいますか、フレキンビリテイといいますか、
伸縮性をこの
勧告が持
つておることは疑いないのでありまして、その他そこはまあ
政府との
関係及び
政府の
受入態勢の問題になると思います。
次に
政府との
関係を申上げますと、
政府に対しましては、この
勧告を受入れてくれということ、即時に実行してくれということはたびたび申入れました。
岡崎官房長官にも申入れましたし、それから私から
関係閣僚諸君にも
説明をいたしております。併しながらまだそれらについては確たる返答は受けておりません。何らかの御挨拶があることと予期しておりますが、今のところありませんです。慎重に
考慮して、
十分敬意を
拂つて受入れのことを
考えるというくらいが彼らのお答であると思
つております。
それで次の段階といたしましては、第一は、私共としては、
審議会としては、
政府の
答えが欲しい、而も全部これをこの
通りやるという
意気込を示して貰いたい。その次に、それをいつまでも放
つて置かないで、来年度、即ち二十六年度からすぐに着手し、二十七年度にはフルにや
つて貰いたいというのが本当の
要求であります。で、それをやるにつきましては、どうしても次の問題としまして、
立法をどこでするかというのですが、この
立法は非常にたくさんな問題を持
つております。これには
医薬分業のこととか、或いは
共済組合の資金を将来どうするかとか、そういうような問題については何らまだ
答えをしておりませんので、そういう点については、具体的にはこれからであるというふうにしております。
それから現在の
保險が非常に
緊急状態にあるので非常に急ぐこともあり、
立法範囲という問題が非常に多いのでありますから、我々の経験によりまして、又
皆さん御推察の
通り、
審議会というものはそういう
立法をするのに適当なところではないのでありますから、
政府としては
主管、誰がこの
責任者であるかというふうに
政府としてはきめるべきであると思いますし、それから又その
責任者がきまつたならば、即ち
主管大臣がきまつたならばこれを
立法にすぐやらせるような
一つの態勢を作るべきであると思
つております。このことも
政府に申上げたのでありますが、まだ返事はありません。
それから次に
司令部との
関係を
ちよつと最後に申し述べて置きます。
司令部との
関係につきましては、世上多少の
誤解があります。この
誤解は
労働省の
労働次官が誤
つてでありましようか、故意でありましようか、とにかく流布した
説明が
間違つておりますので、それは
政府に訂正を
審議会として申込んでありますけれども、とにかく
司会部が著しく
反対である。
反対なのは、これが
社会主義であるからであるというような説が行われたのであります。放送もされたのでありますが、これも全く
間違いでありまして、大体のところ総
司令部は
本案に
賛成であると
見込んでおります。それは特に
賛成を求めたわけではありませんが、総
司令部の
意見は、
相当十分に愼重に
考慮しておりまして、主な点ではもう
反対のないような点まで
考慮してあります。
個々の技術的な問題、小さい問題は無論これからいろいろのことがあると思いますが、これは折衝するしかないのであります。それで決して
司令部か
本案に
反対であるというようなことではなくて、むしろ
本案がこんなに早く立派にでき
上つたということに大いに驚歎しておる
程度であると思います。
その他
個々の問題については申上げたいことは
幾らもありますけれども、大体そういうところで私の一応の御
説明を終りまして御
質問にお
答えいたします。