○松原一彦君 第四班は山下
委員長、藤原
委員と私が参
つたのでございます。地域は高知県と愛媛県と大分県、大分県は公式には私の名がございませんが、便宜随行いたしました。総合的に見まするというと、厚生施設は平和なる文化国家の建設の上に基礎的必須條件ではありますが、開始以来日が浅いことと、日本の富力がこれに添わぬために施設が不十分であること、担当者に適材を得ておらぬというようなところからして、概して形式的な名目の羅列に止ま
つて、
一般的に貧弱幼稚の譏りを免れないように思われます。特に経済力の不均衡から生ずる
地方差が、この施設の上に甚しいということを認めざるを得ないのでごさいました。その一例といたしまして、その
地方差に対する国家の
対策としまして見ました場合に、
一つの例をとりますると、国立結核療養所のごとき、高知県には二百床、大分県では約七百床あるに対しまして、愛媛県には約一千床の用意があるのであります。これを人口一万に対しますると、高知県は二・三となり、大分県は五・七となり、愛媛県は六・八となるのであります。で八十六万の人口を持つ高知県に二百床、百四十八万の人口のある愛媛県に一千床、百二十三万の大分県に約七百床というのは、国の施設としては誠に不均衡である。概して高知県は
一般の施設の上に貧弱でありますが、これは経済力が副わないのでありますから、さような府県におきましては、特に国家の施設において考慮を加えて、これを充実することか緊急であると認めたのであります。
〔
委員長退席、理事有馬英二君
委員長席に着く〕
これを充実いたしますることによ
つて地方差を除き、そうして目下の急務である結核撲滅の上に大きな効果を挙げることは、現に愛媛県が昭和十七年に二十四人の死亡率を出しておりた結核者に対して、今日は十四人、半分に近いところまで減
つておる事実においても、これを証明することができると思うのであります。更に官公県立の名を冠するものがどうもお役所
仕事に堕してお
つて、国民の尊嚴とその自由と福祉のために情熱を傾けて平等に奉仕しなければならない態度に欠けておるところが多い。これは誠に遺憾であります。却
つて私立の保育園、養老院等の中に異彩を放つものが多く、それが宗教家の
熱意のある奉仕の下に行われておる事実に比べて見ましても、この種の厚生施設は指導任務に当る当面の
責任者福祉司は勿論、保健婦等に至るまで、一にその人によ
つて成敗おのずから定まるものだと思いますが、施設を生かすためにも適材を選んで養成して、情熱を以てこの
仕事に奉仕するという態度が今後一層高まらなければならないということを痛感いたしました。医療
衛生の施設におきましても、国立病院の多くが旧軍事施設の転用であるために、従
つて大規模なものもありますが、不備であることも免かれません。松山、別府等の療養所や病院は一通りの設備を持
つております。且つ成績も挙げておるように思われますが、軍の施設であるために別府の病院が外来者の診察設備に欠けてお
つたり、或いは高知の病院が兵舎をそのまま病室としておるために、採光や安静を欠き、大部屋式のものが多くある等、これは誠に遺憾であります。特に高知の国立病院では、結核病棟と並んで構内に職員家族の
住宅をその設備の中に持
つておるというごときは、緊急止むを得ぬものとしましても誠に遺憾であります。これは危險であります。看護婦の宿舎は
一般に用意がありません。そのために甚だしい欠陷を持
つております。只今も御
報告がありましたが、看護婦に定員を欠くものが多く、その定員の中から雑仕婦を雇入れて、これを看護婦の代りではないけれども使
つているものが多くあり、看護婦の中に公務から感梁して疾病治療中の者も少くないことも誠に遺憾であります。看護婦の資質の向上につきましては、同行の藤原
委員から痛切な後からの追加の御
報告もあると思いますが、これは皆様の御観察の通りに、今この定員の不足している際に試験を迫るごときは、私はよい政策とは思われません。過労に陷らしめることのないように定員の増加を図り、そうして徐々に資質の向上を図らしむるように仕向けることが、私は政治の要諦だと思うのであります。私共の見ました
衛生上の施設としまして、別府病院には豊富な温泉があ
つて、これを利用することによ
つて積極的な研究、効果を挙げるものがあるように思われる。又別府病院の中に義肢の製作並びに身体障害者の職業的な指導のあることも
一つの特色であると思いました。高知病院の中でも自家用の
注射薬を自家製造をや
つております。これは経費の点からは非常に助かるそうでありますが、果して適当なものであるかどうか、これは專門的研究を要するものだと認めました。別府の郊外にある光の園という小さい病院が
婦人のみの管理で以て行われておりますが、それが小さいながらも明朗な家庭的な気持を以て、結核治療には誠によい実績を挙げておるように見受けられたのであります。ここでは隣接地域の緑林地帶をば今のうちに取入れたいという希望をば切に述べておりましたが、尤もなことだと思
つておりました。かような特色のあるものは私共は将来伸ばして行きたいと思うのであります。高知市の国立療養所が敷地十三万坪を以て将来治療者のためのコロニー等の施設も計画されておるに拘わらず、現在この敷地が大蔵省の所管に属して、その帰属を解決していないということは遺憾であります。至急にこれは解決し、そうしてあのよい広い地域をば十二分に利用するように助成いたしたい。高知県の結核施設は最も不足しておるのでありますから、幸いにこの広い地域と、それから施設を充実して高知県の結核療養
対策を急ぎたいと思うのであります。特にこの高知療養所は敷地に一部非常に濕潤なところがありまして、その上下水を至急に設置しなければならないという
感じを持ちました。
愛媛県からこういう希望が出ておりますが、これは皆様に御研究を願いたいのであります。結核予防は県の責任であり、県はもつと力を入れてこの予防に努め、今実績を挙げつつあるが、できるならばその療養所も国から県へ移管されたい、こういう希望であります。これはどういうものでありましようか、私共にはまだこの点についてはつきりした判断を下し得られませんが、賢明なる各位の御考慮を煩わしたいと思います。
保健所の施設は大変進んで参
つておるという皆様の御
報告、同様に
感じます。且つこれが将来結核、性病の予防治療から集団の検診、妊娠調節等に進んで行
つたならば非常に大きな効果を挙げ得るものと思いますが、共通する欠陷は医師の不足であります。これは待遇の足りない点もありましよう。又施設の上においても不便であるというようなところから避けるものもあるのでありましようけれども、将来これは完全配置を至急にいたすように希望するものであります。
保健所につきましても、高知県は人口八十六万に対して
保健所数が五つ、本年二ケ所新設中でありますが、これは不足であります。高知市に
一つ中央
保健所というモデル的なものがありますが、余りに地域が広過ぎて効果が薄い。愛媛県では、人口百四十八万に対して
保健所数が十五、この外八幡浜、新居浜二市を結核予防特別都市に指定し、宇和島、八幡浜両都市に特別
保健所を設くる等、結核の予防、早期診断等に格別の努力を拂
つております。その効果ははつきり現われて、前にも申しましたように昭和十七年の死亡が二七・五に対して、一万單位でありますが、同じく二十四平には一四・四と激減の傾向を辿
つている。全国平均よりも遥かに下廻るに至
つたという実績を多としなければならんと思います。
国民健康保險の
状況につきましては、他の
委員からの御
報告と違
つて、この三県は非常に今減りつつある状態であります。各県とも一時は殆んど全県的普及を見たのでありますが、最近農村の金詰りの影響からと、公営本位とな
つたために休止又は解消するものが多く、これは将来
社会保障制度実施の上からも重大な影響のあるものと思われますが、大分県では県営移管を希望する声が我々の懇談会では随分高か
つたのでありますけれどもが、国から二割、県から一割の
補助があれば、今のままに継続したいというのが、本心のようであります。この国民健康保險施設が高知県におきましては、全市町村百七十に対して、一時は百六十四まで参
つたものが、今日は僅かに三十七残
つているだげで、休止小というものが百二十七とな
つております。又愛媛県では二百三十九市町村中に現在残
つているものが八十、休止中のものが百五十三、大分県では二百十五ケ町村の中に、一時は全部実施いたしましたが、今日は辛うじて八十程残り、休止中のものは百三四、再興しようというものが十三に過ぎない状態であります。これを保險料について見ますというと、高知県は最高が一千六百八十八円、最低が五百九十九円、干均一千百三十三円、一部負担は五〇%であります。愛媛県は非常に小くて最高が六百円、最低が五十円、平均二百十円、但し一部負担は五五%から六七%とな
つている。大分県は平均一千五百円、一部負担が五〇%、かような状態でありまして……。
〔理事有馬英二君退席、
委員長着席〕
各県とも滯納が多く、経営が困難だと共通に申しております。特に大分県からは、国庫から国民健康保険経営のために短期融資ができると
厚生省からの通知があ
つたのに拘わらず、大蔵省はこれを出し澁
つて大いに困
つている。是非この矛盾を解いて、短期融資のできるようにせられたいとの
要望が強く出ております。これは往復書類も提出されておりますから、ここに添えて置きます。至急解決せられたいのであります。
生活保護法の実施
状況につきましては、これは一時の濫給から減
つて参
つたのでありますが、最近は潜在失業者の表面化、或いは小企業の崩壊、経済事情の
一般的な窮迫等に伴いまして急増いたしている事実があります。この被
保護者の歩合は、高知県では
世帶数に対しては六・一%、人員におきまして、三・七%、愛媛県では
世帶において六・九%、その人員では三・四%、大分県では五・三%、人員では二・七%、これは大分県が一番低うございます。特殊事情として、高知県から漁業者等の季節的だ非常な不漁等によ
つて困窮する者がある。かような一時的又は季節的の
生活困窮者に対する扶助の方途を開かれたい、こういう切なる希望がございます。これは考えねばならない現実だと思うのであります。
兒童福祉施設につきましては、全く一応の形式は整
つたというに過ぎないような感が深いのであります。法に対する
一般社会の
人々の理解の不足もあります。当事者に適材を得られないということもあります。経費難もありますが、未だただ見本的に端緒を開いたというに過ぎない感の深いことを認めたのであります。但しこの中には兒童相談所として、愛媛県松山市所在の相談所のごときは、設備も殆んど完備し、所長に科学的素養のある適材を得、
地方における範とするに足るものがあると認めました。高知県はやや備わ
つておるが、大分県では不便の地にあ
つて殆んで体をなさないという感がいたします。この兒童相談に対しては本質的に
地方の
人々の理解を推めなければなりませんと同時に、施設においてももつと適切な方法を講じなければ意味をなさないものがあります。兒童福祉、身体障出者の福祉同等の人選にも各府県共に適材を得ないことを悩んでおります。これは悩むのが本当だと思うのであります。そういうふうな人的な用意が今日まで足りなか
つたのであります。設備施設を急いだところでは人の用意がないので、ありますからして、振わないことも又当然だと思います。乳兒も、保育児童には、先刻も申上げましたように、出色のものかあります。例えば高知市にある旭愛育会のごとき、別府市にあるカソリック教経営の小百合保育園等のごときは全く出色なものであります。保姆にも教養があり、又熟練した者があり、高知の旭愛育会は
工場街にあ
つて歴史も古く、誠に行き届いた
婦人会の経営でありますが、立派な実績があるのを認めました。小百合保育園は、これは天皇のおいでもあ
つて有名にな
つておりますが、さすがにキリスト教徒の博愛的な、献身的な管理の下に、誠に清潔周到、範とする見事なものがあ
つたのであります。精神薄弱兒に対する施設は、四国四県には
一つもない。大分県にもないということであります。これは誠に残念でございます。但し昨日大分県から篤志者が、是非精神薄弱兒を收容する施設を持ちたいという申出があ
つた。調べて見ますと、それは子供を失
つてしま
つた僧侶の夫婦が、せめて晩年をこの寺を利用して自分の子として精神薄弱児をば預りたいというのだそうでありますが、
厚生省では予算がないからというので、これを扶助を受付けないということを昨日訴えて参
つております。こういうものは、先ず
仕事を始めろ、扶助はいずれ
あとから行く、その実績に持
つて行くからと私は激励いたして置きました。
地方の希望としましては、保育所に対する国費
補助の増額、
生活保護法の適用を受ける者も、母のみの家庭で勤労せねばならぬ者の乳兒が乳兒院に預けられる便法を図
つて貰いたい。兒童福祉法の一部に親権を入れたい。教育費扶助の増額をせられたいとの希望が
沢山ございます。
一般に
生活保護法には、教育扶助と、それから
生活扶助法が加わりましたので、これは非常に喜ばれております。
母子保護の実態につきましては、高知県では母子のみの
世帶数が総
世帶の四・五%、
生活保護法の適用を受けておる者が二千二百三十九、そのパーセントは
生活保護法を受けておる者の中で、今どこか半分とおつしやいましたが、高知県などでは二六・八%という程度にな
つておりまして、それに対して母子寮か三、母子寮收容人員僅かに六十一人という貧弱な保護施設であります。愛媛県の母子收容施設は、これ又母子寮の数が極めて少く、收容中の者が四十三
世帶、百五十九人、大分県においても收容者が百五
世帶、三百二十人というような状態で、洩れておるものか非常に多い、何とかこの收容施設は今日の戰後における母子の窮迫状態に顧みて急いで頂きたい。かような切望が至るところから出ております。
国立公園は瀬戸内海の波止浜海岸、国定公園としましては英彦山、日田、耶馬渓を
視察したに過ぎませんでした。阿蘇山が予定の中にありましたが、
台風に遮ぎられまして、私共の
視察班は遂にこれを見ることかできなか
つたのでございます。国定公園につきましては、ただ名前が付いたというだけのような、極めて予算の伴わないものが多いために、先刻もお話がありましたが、
道路、観光
宣伝等が行届いておりません。併し名前が付いただけで忽ちに観光者等が二倍となり、五倍となる事実は、これははつきりいたしております。自然そういうところから、土地の人達はこの勝地に或いは国立公園の指定を頻りに運動いたしておりますが、この土地の
人々がただ人を釣り寄せて金が落ちるということだけに興味を持たず、どうか観光者に対する温い観光地としての
地方の
人々の心構え並びに折角の訓練等を進めるように私共は勧告して参
つた次第でございます。
最後に、特に周知県と愛媛県における南海大地震に伴う夥しい
災害が今日尚続いておるという事実をば申上げて置きたいと思います。これは参議院でも決議案とな
つてお取上げにな
つておるのでありますから、くどくどしいことはここにある参考資料によ
つて御覧を願
つて省略いたしまするが、高知市の陷没状態は満潮時において一メートル半乃至二メートルに及んでおります。そのために井戸水がすつかり塩辛くな
つてしまい、下水の自然流下ができず、
ポンプで以て排水せねばならん状態とな
つており、
高潮のときには高知
市内においてすらも
道路の上に水が上る。少し雨でも降るというと、井戸と便所とが
一つにな
つてしまつということをたびたび繰返しておるのであります。これに対する
対策として、高知市では逸早く簡易
水道、上
水道の創設等を行いました結果、禍いを転じて、あの浦戸湾に面する漁村の
人々か良い水を得て非常な仕合せをしておる現実を見て参りました。但し下水におきましては到底解決の途がございません。動力
ポンプによる排水以外に途がない。これは大きな問題だと思います。
衛生面から見ましても、井戸と便所が
一つになる、これは何とか至急に
対策を講じなければならないものであり、愛媛県の全海岸沿いの各町村が、五十センチ乃至一メートルの沈下によ
つて井戸水に海水が滲透し、自然排水が不可能に陷
つておるということは、その当時からもあ
つたそうですが、四年を経た今日尚それが除々にその度を増して参り、海岸から数百メートル離れておるところまでも及んで来ておる。私共の
視察いたしました町並で、今年の夏にな
つて井戸水が急に塩辛くな
つて来たというので、汲んで飲まして呉れたアイスケーキ屋などもございましたが、この花崗岩の細片、あの砂土質は赤土がないために漸次海水を広域に浸透さしておるものかと思われます。果してこれが南海大震災の四年後の現象であるかどうかは、專門家でないから私共断定はできませんが、原因の如何に拘わらず、この際上水、下水に対して大きな手を打たなければならないことだけは迫られておる急務であります。どうかこれはそれぞれ陳情、請願等も参
つており、参議院でも決議もしておいでになることでございますので、政府を促して至急に
対策を講ずるようにいたしたいものだと思います。調べましたところによりますというと、高知市では下
水道の
工事に対して八億一千五百万円、愛媛県では海岸島嶼並びに
被害地八十四ケ町村、戸数二万二千三百二十二戸、人口十一万八千四人に対して、簡易上
水道四億六千二百八十七万円、排水施設費一億七千九百七十二万円を要求いたしております。政府におきましても專門技術家等を派遣して正確なる
調査の上に
応急対策を立てられたい。この際附加えて申して置きますが、私共が
現地を見ました際に、土地の有力なる人から、中央はしばしば多数の
調査員や国会議員等を派遣するが何
一つや
つて呉れないという大きな不満が発表せられておりました。これは暗に我々
調査班の出張を忌避するかのような言葉に聞かれましたけれども、これは御
承知の通り
災害地
一般に生ずる心理であ
つて、必ずしも不遜の言葉とも思われませんが、併し一方国会議員その他の実地
調査には余程反省せねばならん過去もあ
つたのではないかということを私は懸念いたすのであります。資料の準備、案内者、説明者、
自動車等の要求は当然のことでございますが、過分の接待とか、饗応とか、土産物とかに公費が濫費せられておるというこの近代的な悪弊に顧みまして、
調査に出る者は余程愼重に
地方に浪費をさせないように、無駄な接待等は極力避けて、そうして本質的な
調査をした以上は、これはどこまでも実現するか否かについての跡始末が大切だということを痛感して参
つたのでございます。
以上簡單でございますが、概況のみ申上げます。詳しいことはここに專門家である山下
委員長が同行下さ
つておりますし、藤原
委員は特に
衛生方面には精通しておられますから、
あとで補な
つて頂きたいと思います。材料は持
つて参りましたから、いずれ
報告書は整備して提出するつもりでおります。