○
説明員(
木村三男君) 見返
資金の
全貌につきまして
お話申上げたいと思います。
今年の見返
資金の
支出できる
総額が千五百八十一億ございます。これは
アメリカからの対
日援助の額、それから前年からの
繰越などを合算して
歳入の方が先ず決まるわけであります。
一般会計と違いまして
祖税收入や借入金によらないで、結局大元が
アメリカからの対
日援助の額に左右されるという性質の金でございますので、これは御
承知のように
余り殖やしたり減したりできない、いわば機械的に出る
数字であります。
この千五百八十一億の
運用の
内容でございますが、これを大きく分けまして、先ず第一に
公企業という
科目がございます。この中には
国鉄とか
電通とか或いは
国有林野などのようないわゆる
公企業、それと
公共事業、この
二つが入るのでありまして、
名前はちよつとおかしいのでありますが、大きな柱としては
公企業という枠を最
つております。これが
予算上四百億円にな
つております。第二の柱としましては
債務償還費というものがございまするが、これは
一般会計などで法律上やらなければならない
債務償還の外に、新たに見返
資金の方から余計な
債務償還をするという金でありましてこれを五百億
予定しております。それから
電力、
海運その他の
重要産業に対しますところの投資又は融資、即ち
私企業という柱がございますが、これが
予算では四百億にな
つております。それから尚この外にいわば
予備費的な
経費、これを
予算上は
経済再建安定費と呼んでおりますが、これが二百八十一億にな
つております。合計しまして千五百八十一億というのが
予算上
各項に分けて入
つておるわけであります。そこで又
各項の中の
中身でありますが、この
中身を決めるのがいわゆる見返
資金の
運用計画を作るという
仕事でありまして、これは
経済再建の
見地から
安定本部が決めて行くという建前にな
つております。そこで
内訳の問題に更に帰りますが先ず
公企業の方から見ますと、
国有鉄道の
建設勘定の方に四十億ばかり持
つて行きます。これは
貸付でなく
国鉄に国が投資するという
関係で、御
承知のように
国鉄は
余り黒字が出ませんから当分は
利息が入
つて來ないわけであります。
つまり国鉄から見れは
利息のつかない金が四十億見返
資金からそちらに行くということになります。それから
電気通信事業、これは
特別会計にな
つておりますが、この方もやはり
建設工事勘定に百二十億円割振
つております。それから
国有林野事業、やはりこれも
建設的な
仕事なんでありますが、この方に三十億円。それから今年から始まりました住宅
金融公庫に対する
貸付、これが百億予備されております。そうして
残りました百十億、これが
公共事業の方に割振られろことにな
つております。
公共事業に割振られる百十億の
内容は後で申上げることにしまして、即ち
公企業の方の大きな
内容は以上のようなもので四百億ということにな
つているわけであります。次に
私企業の方に参りますとこれはまだ詳細決まらない点もでございますが、大きな分け方としまして
電力、これは
運営計画の
予定では本
年度分百五十億円。それから
海運、これはまあ
造船とお考え下されば結構ですが百三十五億円。それからその他の
重要産業鉄とか
石炭などに対する分でありますが、これが四十三億円。それから
金融機関の
優先株を引受けるという
運用の
項目がございましてこれに六十億引当てております。
つまり興銀とか
勧銀とか北海道拓殖銀行とかいうような
特定の
金融機関につきまして、見返
資金で増資の
優先株を引受ける、それによ
つて債券発行の限度も多くなるし
資本金も殖えるという
関係で、そういつた
金融機関が
余裕のある資力を以て必要な
方面に金を貸せるという
仕組を作るための
運用なんであります。それから特に問題の多い点でありますが、
中小企業に対して金を廻すというので
中小企業金融として十二億円、これは
同額市中銀行から抱合せて貸すことにな
つておりますから倍にな
つて動くということであります。それを合計しまして丁度四百億になるわけであります。
それから
債務償環の方は非常にこれは問題の多い点でありまして、一応見返
資金としましては五百億円予備しておりますが、実際
市中金融機関にどれだけ返すか、
預金部資金の持
つている
国債をどの
程度償還して行つたらいいか、要するに
相手に金を入れてその方から一般的な
金融がなされるという前提の下にや
つているのでありますが、御
承知のやうに
預金部には金は余
つておりますし、これ以上
国債を引受ける金を入れてや
つてもそこで糞詰りにな
つてはどうかというような
見通しもございますし、
かたがた市中金融機関に対しましても資産の
流動性を害する、
つまり国債というようなものを
余り買上げて裸にしてしまうと
残りは貨付ばかりで動けなくなるのではないかというようなこともありまして、なかなか
希望が出て来ないというので、
債務償還の面が今のところ
余り進捗しておりませんが、
会計年度の終りも近付いて参りますし、第三
四半期及び第四
四半期の
金融事情などから眺めまして、いわゆるマーケット、オペレーシヨンの
やり方をどうするかということが今後の問題でありますから、これはとつときの種とな
つているわけであります。それからおしまいに
経済再建安定費というのが二百八十一億ございますがこれは漠然とした
予備費ではなくて、大体特色としては
二つの
意味を持
つております、
一つは
連合国関係で必要とする若干の
仕事があるのであります。これはヨーロツパの例などによりますと、
援助資金のうち若干
パーセント先方で留保して置きまして、自分の
関係の深い
仕事に使うというので留保を置いておるようでありますが、
日本の場合はそういう差引はしないで
日本の
会計の申に入れて置く、併し
占領政策、その他の
見地からやらなければならんというような
仕事につきまして、この方から出る
科目が相当あるわけであります。
内容を二三申上げますと、例の
連合国軍人の
住宅建設の問題があります。枠としましては八十億円ばかりリザーヴして置けということでありますし、実際もすでに六十九億くらいの
支出の
予定が付いておるのであります。それから
民間教育事業いわゆるCIEのフイルムなどの
関係の費用でありますが、これは二億五千万円くらいの
予定をしているのであります。それから
学童給食の
学童に無料で給食するという
関係で、必要な金をここから出すというのが十三億五千万
予定しております。尚余るのでありますが、これは見返
資金としては常に若干の
余裕を置かなければならない、それから又
期待通りに
援助が入
つて来なかつた、或いは入り方がずれて来るというような場合もあるので、或いはこの二百八十一億円の中の
相当部分が
現金收入がないことも
予想されるということもありますのであまりこれには手を付けられない。いわゆる第二の
意味としては
歳入の過不足を調整する
科目として若干の
金額を留保して置かなければならん、いわゆる
連合国関係の
特定の
経費とそれから
相手さんのものの入れ方によ
つて大分金の入り方が違いますか、その辺の安全弁として置くというのが
経済再建安定費なのであります。
そこで千五百八十一億のやや細い
内訳が出たわけなのでありますが、更に問題になりそうな点としては、
国鉄、
電通、
林野などはそれぞれ
予算のときに
特別会計として決
つておりますから、いわば機械的に出て行くわけであります。それから
公共事業の
関係なのでありますが、細くなりますると非常にきりがないのでありますが、
公共事業の中の今度は
建設省関係だけでなくて
農林省関係とか
運輸省関係などもありますから、その辺の
割振りか
事業別にどな
つているかということを申上げます。
総額は先程申上げましたように百十億でありますが、それの
内訳配分計画を
事業の
種類別に見ますと
河川関係が二十五億あります。それから砂防が九億。それから
道路、これは橋などを含んでおりますが三十九億一千万。それから
道路の中に別掲しまして
道路改修費、これは
大分田舎の方の
道路を直すような
仕事が後から入
つて参つたわけであります。それから広島、長崎、東京の環状六号線などというものも入
つておりますが、その方に八億二百九十万円。それから今度は
農林省関係になりまして、
農業水利が二十七億五百万円、それから漁港、これが二億三千万円。それから
運輸省、海上保安庁の
関係ですが、
航路標識、燈台、
無線標識なんというやつが入
つておりますが、
航路標識としまして三億三千五百万円、それから
海上保安通信施設費、
海難救護の
無線関係のやつでありますが一億五千万円。それから
厚生省所管の
仕事としまして国立の
結核病院を建てるという命が二億七千万円。それで合計しまして百十億、
ちよつと手持ちの資料が見にくいものですから、なんですがそれで確か百十億になる
予定であります。そこで
公共事業関係の
経費の金の
出方の問題でありますが、これは全部が
直轄事業でありますので見返
資金の
特別会計としては
大蔵省が
支出する、
仕事は
各省でするという
関係にな
つておりますので、その辺をうまくやらないと、
仕事に着手したが金が出ないというような問題が起
つてはいけないというので、この辺の調整はやはり
運営計画を決めると同じような
意味で必要だろうというので、
安定本部としましても
大蔵省及び
関係各省常に協議しまして、大体
安定本部でこの期にはこのくらい金が要るということになりますと、それは直ぐに
大蔵省の方に通知しまして
予算がいつでも出せるように手配をする。
大蔵省から見ますと
支出を
各省に委任する、
各省で
支出を委任されますと、今度は一々
大蔵省に相談しなくても
仕事の
進捗状況に
従つて小切手が切れるという
仕組を作
つてあります。恐らく
見通しとしましては、
公共事業の金の
出方が一番円滑に而も早く出るようなことになりやしないかというふうに考えております。
それから
私企業関係につきましては、先程若干問題があると申しましたのは、四百億の枠を持
つております、
内容も決
つておりますけれども、いろいろ
産業政策その他の面につきまして、
ちよつと俄かに最後の線まで決まり難いというものがあるので
出方の
実績は
余り芳しくないものがございます。例としましては
電力関係、先程百五十億と申上げましたが例の再編成の問題などとも関連しまして今のところ出ておりません。これは早晩手配しなければならん問題だと思
つております。それから
海運関係は
継続が七十二億、
新規つまり第六沈船が六十三億合わせて百五十億ということにな
つておりますが、
継続事業の七十二億の分につきましてはいつでも出せるという
仕組にな
つておりますのでこの方は問題ありません、第六次船の六十三億の方は、もう話は決
つておりますけれども、尚
実行上やや
出方が鈍るのじやないかいうことを懸念しておりますのでこの方の促進は大いにや
つております。それから
中小企業の十二億これも問題なく出ております。それから
重要産業としまして
石炭、鉄鋼、
化学肥料、
化学製品、
農林水産といつたような金がありますが、閣議の方では四十三億だけに限定しないで審査の対象として六十六億円の枠を見て置く、結局しめ上げる
数字は四十三億くらいにならないと全体の釣合が取れないのでありますが、その
関係もございますのでこれも去年に比べてさほど惡くはな
つておりませんが、あまりいばれた成績とはいえないのを遺憾とします。
それから
経済安定荷雑費の方は先程申上げましたように、いわば紐付き的のやつでありますのでこれは極めて順調に出ております。そこで最近の見返
資金に溜
つております金なんでありますが、八月末現在で五百四十七億ばかり
余裕金がございます。それをどういうふうに
運用しておるか、いずれは出る金でありますが、これは主として
食糧証券を買
つております。これはいつでも日銀に売戻して
支出の必要が生ずれば直ぐその方に金が廻る、短
期間の
運用として大
部分が
食糧証券に
運用されておるという形にな
つております。大体以上が本
年度の見返
資金の概略なんでありますが、尚見返
資金につきましては来年の問題もあるわけであります。そこで二十六
年度の見返
資金というものも早急に決めなければならないことにな
つておりますが、来年の問題を考えます場合に若干の
見通し困難な問題があるというので、今のところはかばかしく
進捗しておりませんが、第一に問題になりますのは、来年は基になる
アメリカの対
日援助費がどのくらいあるであろうかという予測の問題であります。仮に二億とした場合と一億とした場合ではどのくらい違うかといいますと三百六十億円違うというわけであります。そういう
関係もありまして
歳入の方の
見通しを如何にするかということを
司令部等と今打合せ中でありまして、細かいことは分らないにしても荒筋を立てたい、それによ
つて中味も決
つて行くということになるのであります。それから
政府の
方針として聞いておるところによりますと、
債務償還は今年は五百億やりましたが、来年もそれに近いような
金額を
債務償還に廻すとしますと、
中味が非常に痩せてしまうという
関係もございますので、
債務償還はやらないという
方針で、これを
公企業なり
私企業の方に余分に金を使うような算段をするというような考え方で進んでおります。これも来年の特に
金融方式、最近の通貨の
状況など来年の
資金の
計画がどうなるかという全般的な角度から見ましても、
関係方面とかなり深い
交渉をしなければならんような問題もあると存じております。いずれにしましても全然なくなるということはないのでありまして、今年からの引継、
繰越、
只今申上げました七百数十億の金が全部出拂うかどうか今のところ見当がつかないのでありますが、仮に若干残るとしますとこれは直ぐに四月からの見返
資金の
繰越歳入となります。それから今年の
援助費の分で
アメリカの
予算は
日本と違いまして少しずれておりますから、順によ
つて今年の
予算による
援助の
買付物資が来
年度において入
つて来るということもありますので、そういつた両面からの
繰越と、それから来
会計年度の
援助額のうち来
年度中に到着する
物資の量を換算しまして、見込を立てますと、今年千五百八十一億に対しまして大体千億
程度にはなるのじやないかという
予想をいたしておりますが、尚来年の
援助がどうなるかということによ
つて若干の
数字は動くであろう、こう考えております。そこでやはり
事務当局としましては、来年の
公共事業として拾い得る
科目はどのくらいあるか、それと今年やつた
仕事で来年に尾を引くものはどのくらいあるかということを確かめまして、例えば千百億の場合どうするか或いは千二百億円の場合はどうするかというようなことを総合的に勉強しなければならんというので、
関係各省と連絡をとりつつ今その案を
作成準備中であります。
以上甚だ漠然とした
説明で恐縮でありますが、見返
資金の大体の形と今までの
動き方のあらましを申述べた次第であります。