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説明員(後藤譽之助君) 今政務次官から御
説明申上げました
通り、できるだけ数字を盛込むようにいたしましたことが特徴でございますが、そのために表の数なども
從来の白書よりも、今回は四回目でございますが、前の三回よりも大分多いように思
つておりますので、組立ては目次を見て頂きますとお分りになります
通り、安定
計画一ケ年の概観と申しまする前段と、
経済回復の現段階という後段とに分れております。そうして羊の前後に「はしがき」と「むすび」が付いておりまして、「はしがき」と「むすび」には多少主観的の文章も連ねてございますが、「はしがき」と「むすび」と安定
計画一ケ年の概観というところの一番終い、即ち第二段階に移ります前の第四、「はしがき」の目次二ページに書いてございます昭和二十四年度の意義という、この三つのところに、大体の白書の思想的な根幹ができております。内容は御覧の
通り、安定
計画の意図がどういうふうに進捗したか、安定
計画の意図がどういうふうに結実したかということを、安定
計画の進展というところのインフレの收束、自由
経済への移行、企業合理化の進捗、国際收支の改善という項目に分けて謳
つております。インフレ收束の段では、財政金融の動向、物価と賃金の安定して行く有様、それを叙述しております。それから第二の有効
需要と産業活動、結局昨年の
経済を振返りまして、一番大きいところでは、売手市場から買手市場に移りまして、購買力ということが問題にな
つて来た。その購買力ということが問題にな
つて来たということを頭に置きまして、購買力の大きな構成要素であります。財政及び民間投資、国民消費、それから貿易という
ものが、昨年一ケ年間に二十三年度に比べてどう動いたかということが書いてございます。それを分けまして、
需要の面と生産がどういうふうに動いたかということが書いてございまして、この二の有効
需要と産業活動という欄を見れば、
需要と供給のバランス・フートがここにできておるわけであります。その次に農業と雇用、生産の面も去ることながら、社会的な面への影響として、農業生産と、雇用面にどういう影響を安定
計画が持
つたろうかというということが書いてあるわけであります。それから前に申上げました
通り、昭和二十四年度の意義というところでは、この安定
計画という
ものが、それでは今見て来たような推移を辿りながら、結局白であ
つたか、黒であ
つたかということを一応反省しておるわけであります。その第一段階について、主なる数字と申しますか、内容だけを、今申上げました順序に
從つて注意して頂きたい個所だけを申上げて、非常に急いで参りますと、第一番目に三ページの第一表を見て頂きますと、つまり財政
資金の対民間收支が、二十三年度には七百二十四億であ
つたのが、二十四年度には六百五十二億に
なつた。この数、字が非常に安定
計画の性質を端的に物語
つておるではないかと思いまするそれに対比いたしまして、この第四表を見て頂きますと、財政の方は六百五十三億引上げたのに対しまして、金融機関に対しては、九百二十一億の追加信用の
供與があ
つた。これがいわゆる財政の引締めと金融の緩和で以てデイス・インフレの線を推持したというゆえんでございますが、その九百二十一億のうち、日銀の追加信用が八百六十六億、こういうふうな数字にな
つております。それから産業
資金の方は、それに伴
つて五千三百六十八億、第五表に出ております。これは前年度と比べまして、四〇%
程度の産業
資金供給の増加でございます。物価騰貴という
ものを考慮に入れましても、一五%の
資金供給の増加でございますが、これは主としていわば運転
資金の増加という
ものに賄われておるのでございまして、設備
資金は実質的には二十三年度より二十四年度の方が少少減
つて。おるという計算になるのでございます。九百二十一億の追加
資金の供給、それから六百五十二億の財政の引上、こういう
ものともう
一つ並びまして、昨年のデイス・インフレをうまくやりました原因とて、預金の増加がございますが、それが第六表の預金増加、その一番左の隅を御覧願
つて頂きますと、三千八百七十二億の金融機関の預金増加ということがございまして、当初の貯蓄目標二千五百億の五五%、目標をオーバーしておる。併しながらこれはよく申されます。るように、貸出しと再建の預金増加もあ
つたのでございますが 一応定根性預金の比率を見ましても、二十三年度より二十四年度の方がよくな
つておりますので、通貨安定に伴う貯蓄構成の増加ということは見逃し得ない点でないかと思います。
それから時間がございませんが、物価と賃金の推移の主なる表だけについて申上げますと、物価がどんなに、昨年、一昨年に比べて落着いて参
つたかは、十二ページ、十三ページの境の第九表を見て頂きますと分りますが、結局闇物価という
ものが一年に一六一%増加してお
つたのが、去年は三二、三%で落着いておる。実効物価の方と公認物価は生産財の方は補給金が削減されたので多少統制を続けておりますが、実効の方は消費財で見ると一〇%低下を示しております。同じように賃金が落着いて参りましたことが、十四ページの第十一表の一番左の方に書いてございますように、一年に一四%しか賃金が上らない、こういうことにな
つております。
それから自由
経済への移行という点は、その次から書いてございますように、單一為替レートの設定、補給金制減、消費者価格と岳産者価格の鞘寄せ、閥との鞘寄せ、特に端的に自由
経済に移行しておることを示しておりますのは、十八ページの第十四表、指定生産資材指定項目数、指定配給物資指定項目数、公団数、価格統制件数という
ものが、この一年間どのように減
つて参
つたかを示しております。それから十九ページから書いてございますのが企業合理化の進捗状況でございまして、これは皆さん御
承知の
通りでありまするから、改めて申上げるまでもないと思います。それから二十三ページの十九表を御覧にな
つて頂きますと、生産量に対する
輸出量の比率で、いわゆるエクスポート・プレツシユアが高ま
つてきたので、昨年一年で以て二十三年度より
輸出で以て九八%、輸入で三三%しか殖えなか
つた。それで輸入を自分の自力の
輸出で賄える比率が第二十表の六行目のA対Bの比率については三三%、三八%、五六%というように高ま
つてきております。それからあとは方々に書いておりますようなことでありますから申上げませんが、先程御
説明いたしました
通り、二十五ページから有効
需要と産業活動、投資、消費、消費だけちよつと申上げて置きます。と、二十三表の「実質賃金の動き」というところに書いてございますように、耐乏生活と言いながらやはり昨年中に実質賃金というのは二八%上昇しておるということが、少くとも統計の上から窺われるということは注意して頂けると思います。但し二十三年度中には、実質賃金の上昇は七七%であることがここに書いてございます。
それから時間の
関係でずつと飛ばしまして、生産の動きが三十六ページに書いてございますように、二十三年度より三十四年度が鉱工業生産で二五%ぐらい増加しております。それからあとはずつと飛びまして、先程申上げました昭和寸一十四年度の意義ということが五十一ページに書いてございます。から、それについて極く簡單に御
説明申しますと、ここでは安定
計画はこの
程度の社会的、
経済的影響で以て久しきに亘
つたインフレを止めることに成功したことは、何とい
つても安定
計画の成功ということができるのではないか、但し安定
計画の最終の目標という
ものが
経済の自立である。
経済の自立が最終の目標である以上、インフレだけが上
つたからとい
つて楽観することは許されないので、インフレーシヨンのヴエールによ
つて隠されていた
日本経済の構造と、それから回復の水準という
ものを直視すべき段階ではないだろうか、こういうふうな論理に從いまして、第二段階の
経済回復の現段階というところに入りまして、そうしてここでは、もう一度目次のところを見て頂きます。と、お分りになりますように、国民所得水準と資本蓄積力、国民の生活水準、貿易の規模と構成、生産及び企業面に現われた諸問題、価格構造の分析、こういうふうに五つに分けて分析しておるわけであります。第一に、分析に入ります前に、戰後において
日本経済の困難が起
つたのは、單にドツジ・ラインだけのせいではなくて、結局領土の四〇%の喪失、それから二五%の国富の戰争被害による喪失、人口の千百万の増加というような、いろいろな基本的な原因があるのだということを述べているのでございます。その次に書いてございますことは、国民所得水準という
ものは、実質的にすれば昭和九—十一年の大体九〇数%というところまで戻
つておりますが、人口はその間に一五%増加しておりますから、一人当りの国民所得としては、結肩七〇数%の回復に止ま
つている。その他資本の蓄積力も非常に落ちて、金利も戰]前に比べて大体二倍、
アメリカに比べて三倍の水準に止ま
つているということが、この五十七ページの四十五表に書いてございます。
それから生活水準につきましては、
安定本部の計算によりましては、大体七〇%から七四%、戰前昭和九—十一年に対しての生活水準であるということが帰結されまた。農村では戰前の生酒水準は低か
つたのですが、落ち方も緩くて八六%、両方総合いたしますと、七六%乃充七八%の生活水準ということに帰結されております。それは先程申上げました一人当り国民所得水準の低下という
ものと歩みを一にしているわけであります。家計收支の状況が四十七表に書いてございますが、戰前は例えば実收入が一〇〇ありますと、そのうち支出は九一だけで、あとの九%を貯蓄に廻し得たというのが、昭和二十四年度におきましては、一〇〇の收のうち一〇一を支出に当てて、マイナスの一、特に租税公課の比率が、ここに御覧になりますように、戰前より飛び抜けて多いということが目立
つております。それから項目別に消費水準を現わしますと、六十四ページの四十八表に書いてございますように、歓食費、主食費は大体一〇〇%に実質的に回復しておりますが、それは「いも」を入れてでございます。「いも」を抜きますと八五%、それから被服費の低下という
ものが非常に著しいように思います。住宅もこれは食い潰しによ
つてこの
程度の数年を保
つておりまして、今後の国民生活の水準の問題は住居と被服の問題にあるように思いまする。
それから貿易の規模と構成におきましては、大体三割ぐらいの水準に止まるのではないだろうかというふうなことが、この六十二ページの五十表、五、十一表を見て頂きますと、昭和九—十一年に対して、実際の貿易数量という
ものがどの
程度に止まるかということが分るのでありまして、
輸出が非常に落ちている割に輸入の落ち方は相当ひどいですが、
輸出程ではないということは、その輸入を
外国援助によ
つて賄
つているということであります。
それから
輸出入商品構成、地域構成については御
承知の
通りでありまするから、改めて御
説明申上げるまでもありません。それから結局ドルとポンドの通貨交換の比重性の問題がありまして、結局昨年末の統計ではスターリング地域に出超にな
つておりまして、可なり超過しておるということが五千四表に書いてありますが、その超過しておるスターリング地域、ボンド地域の数ケ月分だけドル地域への入超は多くなるわけであります。
生産及び企業面に現われた諸問題では、御興味のありそうな表は五十五表でございまて、これを見て頂きますと、結局ここでは設備の稼動及び利用状況、持
つている設備の幾割を動かすかということと、使
つている設備の能力をどれだけフルに利用しているかということ、この
二つに分けて書いてございます。例えば高爐は百台あ
つたら三十台くらいしか使
つていないが、使
つている高爐一基々々につきましては、その能率一〇〇%以上に使
つておる。これはコスト低下に役立
つておる。それから五十六表に資本並びに資産構成の比較で、社
外資本という
ものが戰前に比べて多くな
つていることと、固定資産より流動資産の比率が多く
なつたということが、この両方から見て頂けるのではないかと思います。先程石炭のことについて
稻垣さんの御
質問がありましたが、結局地球を半周したり、或いは太平洋を渡
つて来たりするために、重
化学工業の原料取得の條件が小利にな
つているということは、六十八ページの五十七表を見て頂けば分るのでありまして、軽
化学工業におきましては、棉花などは
アメリカの業者の取得価格より一割増の
値段で買えるのでありますが、塩などの価格では
アメリカに比べて二十数倍という違いがある、その違いの大部分が運賃という
ものの違いに基いているのだということが、この表で見て頂けると思います。
それから価格構造の分析では六十九ページから七十ページの第五十入表でございまして、つまり生産物一單位当賃金が昭和九—一一年を一とした場合に、二十四年は三百十三倍、卸売物価においては二百三十三倍にもな
つておりまして、物価よりも賃金が高いように見えるけれども、それは決してそうではなくて、実質賃金の低下している割合よりも労働生産性の低下している割合の方が多いということであります。これを裏から申しますれば、工業の労働生産性は戰前の五〇%に低下している、工業の平均実質賃金は戰前の七〇%に低下している。実質賃金、一單位当りの住産力は戰前の七割にしか回復していないということが書いてあるわけでございます。それから物価構造のところで御注意願いたいのは、原料一局、生産安ということが言われておりますが、七十ページの五十九表を見て頂けば分りますように、原料と製品の物価構成に、原料がまだ安くて製品の方はまだ高いという割合に出ておるわけでございます。それは補納金が附いておるからということで
説明されます。補給金が次第に減廃されるに從いまして、その構成が構造変化をして来る、その構造変化の過程にあります現在、原料高で製品安だというようなことが感覚として
産業界に受取られているのだということになります。現在の状況、それから昭和九—一一年の物価構造に比較して見るに、原料安、製品高ということを御注意して頂きたい。それからもう
一つ、普通の常識と違
つておりますのは、七十二ページの六十一表でございまして、日米物価の比較、
日本の物価と
アメリカの物価を比較いたしましたところ、
日本の物価の方が安いという結論が出ました。これは
日本の物価の方が高いだろうというように一
考えてや
つた作業と違いましたのですが、いろいろや
つて見ますと、やはり世界中でも
アメリカの物価は高いわけですから、それと比べて
日本の物価が安いから、為替がどうこうというような問題になるのではなくて、一応ここでは重工業品と軽工業品に分げまして、そうして
アメリカの物価と比較している。この点も常識とは違いますが、
一つの資料になると思います。そういうような分析をいたしまして、結局たびたびこの
委員会におきましても、
大臣が
説明しております
通り、結局
経済の安定、若しくは財政金融的安定が一応貫かれたら、その次に実質的安定と申しますか、今申上げましたような
経済の水準の低さを正すとか、或いは構想のゆがみを正すとかいうところに、今後の問題を発展させて行かなければなりません。そのためには、海外及び岡内市場の拡大、資本の蓄積という
ものに一層直進すべき時期に直面しておる。そうして我々がとにかく安定
計画一年の成果という
ものを身に付けて、
経済の更に実質的な発展に向
つて行くということが、むしろ安定
計画の転換というよりも、むしろ更に一歩前進ということになるのではないかということで結んでおるわけであります。