○
説明員(
岡田修一君)
海運関係のほうを御
説明させて頂きます。
先ず第一に
浩船金融でございまするが、
本年度の
造船計画につきまして
造船資金の問題が大変問題になります。御
承知の
通り造船金融は非常に現に問題がございまして、これを
市中銀行に頼るというところに非常に無理があるわけでございます。然るに現在までにすでに
市中銀行から二百数十億の金が
造船に出ておるのであります。これ以上
市中銀行に頼る余力というものは非常に少い。そこで
本年度の
造船につきましては、見返
資金からの
融資を七割にする、
市中からは三割にするという線で
関係方面に
折衝して来たのでございます。当初見返
資金七割
融資が認められそうな形勢であ
つたのでございますが、その後
関係方面において、七割を見返
資金から出すということは余りに
日本海運にフエーヴアーを與え過ぎるというふうな
理由からいたしまして、見返
資金五割、
市中銀行から五割というふうな
造船資金調達方法によらざるを得なく
なつたわけでございます。そういたしました場合に、
市中銀行から出しまする率と金額が非常に巨額になるわけです。本
年度造船に対する見返
資金は六十三億、そのうち漁船或いは戰標船の改造に約九割使いまして、五十四億が
貨物船の
建造に振向けられるわけでございます。この五十四億を七割といたしまして、
あとの三割を
市中銀行に頼ります場合に、
市中銀行から
本年度に出される額が二十四億
程度でございます。
市中銀行ではこの二十四億が
本年度に出し得る
最高限度であります。これ以上はどうしても出せない、こういうことであ
つたのです。これが五十四億を五割として更に
市中銀行から五割を出すとすると、これが五十四億になる、そこに三十億近くの増加に
なつております。これに到底出ない。そこで
政府は勿論、
民間のほうにおきましては、
船主協会、
造船工業会、特に
日銀総裁等が非常に骨を
折つて関係方面に
折衝されたのでありますが、どうしても
関係方面かそれを
承知されなか
つた。結局
市中銀行のほうでは
特別融資によ
つて最小限十六万
トンの船を作り得る
金融をつける。そういたしますと、
本年度に出し得る金が約四十億、四十億
程度の
市中銀行の
融資を出し得るようにしようというので、一応そういうことに
なつたわけであります。五十四億を五割々々の
融資にして、五十四億の見返
資金をそのまま使うといたしますと、約二十二万
トン余の船ができるわけであります。併し
市中のほうが四十億しか金が出ない、
従つて見返
資金も四十億、
合計本年度の
貨物船の
造船のために使う金を八十億といたしますと、約十六万
トンということに相成るわけであります。これは実際や
つて見ますると、果して十六万
トンになるのか、或いはそれ以上
市中が金をつけるのか、それは分りません。この十日から二十日までの間に
船主は
建造の申込を
運輸省にするようにということにいたし、
目下船主、
銀行相互間で
本年度の
造船融資についての
折衝が行われておるわけであります。結果は二十日の締切りによ
つて判明すると思います。尚この
造船金融につきましては、
本年度は一応そういうことで何とかやりくるといたしても、来
年度以降の
造船金融につきましては、根本的に
政府、
民間一緒に
なつて
考えなければならん。私共の
考えでは、来
年度以降少くとも三十万総
トン、
本年度も三十万総
トン建造の
考えでおりましたが、見返
資金の枠に
限度がございますために、或いは
市中調達力に
限度がありますために、今申し述べましたような
事情に落ち着かざるを得なか
つたのでございます。来
年度におきましては、何とか
造船金融の
特別方策を講じて
最小限三十万
トン、将来の
日本の
自立経済の姿を
考えますに当り、どうしても毎年三十五万
トンくらい造らなければならない
事情にあるわけでありますから、次の来
年度の
造船計画着手までにこの
造船金融の問題を根本的に解決する必要があると、かように
考える次第であります。
次に
造船用鋼材の価格の件でございますが、七月までの
造船用鋼材の価格が二万九千円、それが七月以降鋼材補給金が廃止になりまして、大体三万三千円から三万五千円という値段に相成
つたのであります。当時外国の
造船用鋼材の価格を見まする場合に、大体二万三、四千円というところで、
日本が非常に高い。
従つて、それから造られる
造船価格というものは非常に高い。何とかこの
造船用鋼材の値段を引下げるようにしたいというのでいろいろ方策を請じ、
運輸省に
造船合理化審議会を設けまして、
造船用鋼材の値段の問題を特に取上げて審議したわけでございます。私共といたしましては、
造船用鋼材の価格を二万七千円
程度にいたしまして、そういたしました場合には、
朝鮮事変の始まる当時における国際船価が大体七万三、四千円、
従つてそれから多少下廻
つた総
トン当り七万二千五百円、或いは七万三千円
程度の
造船価格に抑えることができる、一方
造船合理化方策を講ずることによりまして二万七千円の鋼材を使うことができまするならば、七万二、三千円の船価で
造船できる、こういう
考えで進めてお
つたのであります。ところが、その後
朝鮮事変の影響がこの鋼材価格につきましても非常に顯著でありまして、これは国内だけではなしに、世界的にも非常に鋼材の価格が上
つて来ておるのであります。現在では、英国あたりの鋼材の価格が大体九十五ドル、三万四千円余といことに
なつております。アメリカでは百十ドルくらいに
なつておるようであります。
造船合理化審議会でこの価格を取上げられまして、いろいろ産業経済団体の石川さんの斡旋等によ
つて、
造船所とそれから鋼材のメーカーとの間にいろいろ
折衝がありまして、大体三万三千円
程度の価格に落ち着きそうでございます。
運輸省なり
造船業者が
考えてお
つた二万七千円に比べて多少上るわけであります。現在七月以降鋼材メーカーの売
つた建値に殆んど等しい価格でございまするが、三万三千円くらいで
本年度は供給しようという話合いができておるようであります。これは当初
考えました価格から多少上
つておりますけれども、現在の国際価格から比べますと非常に割安になるので、そこに鋼材メーカーの非常な勉強を私共も買わなければならん、かように
考えておるのであります。この三万三千円の鋼材を仮に
本年度三分の一使
つて、それから
あとの三分の二は来
年度に造られる鋼材を使う、大体来
年度になりますると、今後相互の交渉によ
つてきまるわけでありますが、まあ四万二千円くらいの価格になる、それを三分の二使い、三万三千円の鋼材を三分の一使う、両方の建値の鋼材を使
つた場合に幾らぐらいの船価になるかということでございまするが、大体私共は八万二、三千円くらいの総
トン当り船価になるのではないかという一応の推定をいたしております。併し実際の船価は
造船所と
船主の取りきめの結果きまるわけでありますので、或いはそれ以下にうんと下るかも知れません。又船によ
つては性能の非常に優秀なるものを選ぶ傾向がございますから、そういうものは相当高くなるわけでございます。大体鋼材についてはそういうふうなところに落ち着きつつある
状況でございまして、国際価格から比べて相当割安のところに落ち着き得るということが見込まれておるわけでございます。
機帆船の油につきましては、たびたび本
委員会にも問題にされ、私共も絶えず
関係方面に対する
折衝を続けて、その成果を見なか
つたことを遺憾に思
つてお
つたのでございます。この十、十一、十二月の三ケ月間につきまして、いわゆる関西
方面を襲いました台風の結果、大阪、神戸港における艀、その他が非常なる損害を蒙
つて、帆船の輸送では非常なる障害を起した。又仮に帆船を持
つて来た場合でも艀
不足のために荷揚げが十分できない。
従つて帆船輸送の障害を打破するためと、又艀
不足を機帆船で代用させるという両方の意味におきまして、燃料の特配を
要求いたしましたところ、大体毎月千七百キロ、三ケ月間で五千百キロの増配が認められたのでございます。これによ
つて機帆船業界がこの三ケ月間大分息をついたことと
考えるのでございます。機帆船業界の一般的な
状況を申述べますと、
朝鮮事変によりましてはつきりとした
数字は分りませんが、二、三百雙の機帆船が
使用されておるようでございます。それから更に又長い間油の割当
不足のために相当脱落した機帆船があるというふうなこと、それから
朝鮮事変以後相当の機帆船向きの荷物が動いて来た、こういうことで、現在ではこの業界もやや息をついた
状況であるということが申述べられると思うのであります。そこへ持
つて来て、この三ケ月間は毎月千七百キロの増配がありましたために、相当従来の窮状が緩和されておるものと、かように
考えるのでございます。然らば一月以降はどうなるかということでございますが、この油の特配が先般の台風のための特別の
措置であるということで、
関係方面では一月以降は元の少い数量に返えるのだということを申しております。併し私共は今日の輸送需要の変更等を
理由として、何とかこの分を継続するように持
つて行きたい、かように
考えておる次第でございます。
次に朝鮮動乱の
日本海運に及ぼす影響でございますが、四月以降民営になりまして
日本海運は一番不況のどん底に沈んでおる。先般も御
説明を申上げました
通りに、四月以降の繋船量が大体百万重量
トンあ
つた。
運賃も運営会当時の
運賃の四割も或いは五割も下がるというような
状況であ
つたのでございます。ところが
朝鮮事変を契機といたしまして、内航においても漸次荷物の量が殖えて来ております。四月内航の輸送量が四、五、六月は百万
トン全り、それが八月以降百二十万
トンから百三十万
トン程度に殖えて来た。最近におきましては、従来專ら鉄道で使
つております省炭も毎月約十万
トン程度海上のほうに移ることに
なつたような点もある。その他大分鉄道輸送の逼迫に伴
つて海上へ荷物を流す沿岸の荷物も相当量殖えて来ておるのであります。
運賃も大分回復いたしまして、はつきりとした
数字は、掴めませんが、大体二割方は回復しておるのではないか、かように
考えるのでございます。外国航路につきましても、この
朝鮮事変が世界的に海運市況に影響いたしまして、傭船料並びに
運賃の点におきましても非常なる顯著振りを示しておるのでございます。例えば傭船料は動乱発生前におきましては日立型は十二シリングか十三シリングであ
つたのが、今日では十七シリングぐらいであります。例えば
運賃についてみますると、フイリピンの鉄鉱石
運賃が事変前には二ドル六十五セント
程度であ
つたのが三ドル十セント、ズングン鉄鉱石が二十四シリングか、二十五シリングであ
つたのが三十四シリング、こういうふうに上
つて来でおります。この影響が
日本海運にも相当反映されておるわけでございます。
朝鮮事変前改E型船が漸次竣工し、或いは昨年着手いたしました第五次新造が竣工して、相当クラスボートが殖えている。これを如何に消化するかということが
一つの悩みであ
つたのでございますが、この朝鮮動乱後における世界
海運界の影響並びに八月十五日以後北米への
日本船の配船が認められまして、その
方面に相当量の
日本船が就航し得るというふうなことから現在では
日本海運は外航適格船の
不足に非常に悩んでおる。一日も早く外国船を獲得して、この漸次上りつつある市況に対処したいというふうな
状況にあるわけでございます。この
朝鮮事変は
日本海運に相当の好影響を與えつつあるということが言えるわけであります。現在の繋船量はこれは御
承知のごとく十月以降繋船補助金が廃止になりました結果もありまするが、約四十万
トンから五十万重量
トンの間のようであります。
それから次はいろいろ御心配に預りました低性能の船舶買上げの実績でございます。これは九月一ぱいに申込を
政府から取
つたわけであります。当初の計画は四十万総
トンで六十万重量
トン、金額として二十七億をこれに費すというような計画であ
つたのであります。ところが
朝鮮事変によりまして相当海運市況が好転したということと、もう
一つは従来A型船を改造いたしまして外航適格船にいたしまするためには二億円乃至二億五千万円の巨額の金額を要したのでございます。ところがその後においてフランスの船級協会であるビユーロー・ベリタスが相当簡易にそのクラスを出す、約五、六千万円の金額をかけなければビユーロー・ベリタス・クラスをと
つて、今大手を振
つて国際航海に従事し得るという
事情が出て参りまして、A型戰標船の所有者で相当その改造を進めたい、かような
考えを持つに至
つたものがあるのでございます。私共といたしましては低性船舶の買上げの目的が專ら沿岸しか就航できない船を減らそうというところにあるわけでございまして、かようにして国際航海に従事し得ることが可能でありまするならば、これは却
つて奬励すべきものであると
考えるのでございます。そういうふうなビユーロー・ベリタスの取得を予想される船等が出て参りまして、実際の申込は当時、或いは計画の半分
程度にはなるのじやないか、かように
考えられてお
つたのでございますが、
船主のほうにおきましては大局的な見地或いは長い目で見てみましてその当時の予想に反しまして出て参りましたのが約四十四万重量
トン、総
トン数で二十七万総
トンの申込があ
つたのでございます。
只今申上げましたような
事情を
考えまするときに、これは精一ぱいの
船主の御
希望である、かように
考えるのであります。これの所要の金額が十八億八千万円約十九億、その後申込の船を審査いたしましたところ、買上げに適当しない船が三隻一万一千重量
トンございます。従いまして実際買上げ予定に現在
なつておりますものは四十二万六千重量
トン余りございます。これは引渡しの一番終りの時期は来年の二月頃までというふうな一応の話合いをしておりまするがために、まあそれまでは
船主のほうで早く金を得たいものは売
つて参りますが、できるだけ船を使いたいというものは来年の二月頃までそのまま動かし得る話合いに
なつております。目下それぞれ契約を取進めておりまするが、未だその数量全部に契約が済んだというところまで参
つておりません。目下のところ約半分或いはそれ以上
ちよつと超えたかと思いますが まあ少くとも十一月、本月中には殆んど全部が契約を完了するということに相成るものと私共予想いたしております。
それから港湾運送業法でございまするが、これは目下
関係方面と
折衝いたしておるのであります。
関係方面では港湾運送業の
許可制、或いは
運賃の何と言いますか、認可制、それに艀の抵当財団を設定するということが主眼でございますが、これらについていろいろ難点を示しておるようでございます。今日の港湾運送業の現状を見ますと、どうしてもかかる
法律の
必要性が痛感されるのでございます。私共としては何とか
関係方面のより一層の了解を得て、この
法律を次の本
国会に提出するように持
つて行きたい、かように努力をいたしておるのであります。これにつきましては本
委員会の特別の御協力をお願いしなければならない、かように
考えておる次第でございます。よろしくお願いしたいと思います。以上。