○赤松
委員 私は日本社会党を代表いたしまして、継続
審査に反対をするものでございます。以下その理由を数点あげまして、簡單にわれわれの立場を明らかにしておきたいと思うものでございます。言うまでもなく労働條件を
決定する一つの條件として、労働の質と量の問題を除外することは、労働
関係を良好な状態に保とうとする者のやり方ではないのであります。日本国有鉄道の
従業員については、その従事する労働の
内容をつぶさに検討してみますると、これは先般もこの
労働委員会におきまして、
政府当局に質問をいたしました
裁定書の
賃金関係の第一項につきましては、
政府は明確にその通りであるという答弁をいただいておるのでございますが、
国鉄は一般行政機関とは異なる経済活動、あるいは生産活動を営むものでございます。労働の
内容は、質的に見ても量的に見ても、事務系統の国家公務員のそれとは相違のあることは明瞭でございます。これを私はなぜ言うかといいますならば、
政府は絶えず一般公務員との
賃金ベースの関連において、このことを問題にしておるからでございます。そのことは別にまた申すといたしまて、
従つてその
給與も、事務系統の国家公務員の
給與とは区別して、当然この
裁定の問題をば
考えなければならない、こういうふうにわれわれは
考えております。すでに昭和二十一年の秋の中労委における
国鉄争議調停のとき以来、このことは指摘されておるのでありまして、元来
国鉄従業員の
給與は、仲裁
委員会が仲裁
裁定を下す際も、その理由にも述べられているごとく、過去においては
民間同種
産業より上まわ
つた賃金水準にあ
つた時代もあ
つたのであります。しかるに現状においては、
民間賃金水準の上昇に対し、
国鉄の
賃金は六千三百七円ベース
実施当時のまますえ置かれている。しかも公共企業体に移行した後において、待遇條件が切り下げられていることは、すでに仲裁
委員会の
裁定書が明白にこれをうた
つているのでございます。
政府は
国鉄の労働
関係が良好なる状態に保持され、輸送の万全を期待をするならば、
国鉄に対する
監督者としての責任上、すみやかに労働條件の改善に着手するよう
努力すべきであります。
これに対して御
承知のように
国鉄労働組合は、その組合が背負
つております使命の重大なことをば認識いたしまして、できる限りいわゆる民主的に平和的な問題の解決を求めて参りまして、そういう民主的な労働組合の運動と相ま
つて、はなはだ不満足ではございましたが、八千二百円の基準
賃金その他に関する仲裁
裁定が下された。しかるに
政府はこの
裁定に対する金額について、財政上支出は不可能である、こういう一点の理由で、さきに
予算を明らかにしないで、
裁定について
国会の
議決を求めて参
つたのでございます。第七
国会におきましては、御
承知のように
政府はいわゆる公労法第十六條に基きまして、
予算上、資金上
実施不可能である。
従つて実施不可能であるということの
承認、不
承認を求めるということを
国会に言
つて参りました。しかるに今
国会におきましては、そういう点が明白にならないで、むしろ
予算も付さないで、これをいきなり
国会に出して、そうしてイエスかノーかを
決定しろ、こういうことにな
つておるのでございます。これは前の公労法の問題で本
会議で討議いたしました際においても、私は明らかにしておいた点でございますが、当然仲裁
委員会の
裁定が出されまするならば、その
裁定に対しまして
予算上、資金上可能な部分と不可能な部分、もし不可能であるといたしますならば、それに対する明確なる
予算書をば付して、このような理由から不可能であるということをば、
国会に提出することが当然であると思うのでございます。しかるに
政府はそういうような手続をやらないで、ただ財政上これが不可能である、こういうふうに言
つておる。はたして支出が不可能であるかどうかということをわれわれ検討してみますると、特別補充取替費百八十二億円は、帳簿価格による減価償却費十七億六千余万円と合せて、これは自己資金による工事費に充当しているのでございます。このほかに見返り資金によりまして
政府出資四十億円が工事費に充当されているのでありまして、戰後久しい間自己資金による工事の全然なか
つた時代に比べまして、昭和二十五
年度におきましては、一挙にこのような多額な自己資金による建設改良工事を計画いたしておるということは、これは
損益勘定における修繕費の総額三百五億円中、五十八億円は戰災復旧費の経費に属する点をもあわせ考慮いたしますと、資本的支出と人件費との間に権衡を得ているとは認めがたいのでございまして、このような
予算措置を見まするとき、労働
関係に関する当局の真意は奈辺にあるかということを、われわれは了解しがたいのであります。
私の見解といたしましては、この
国鉄第二次
裁定の履行に必要な
措置については、今
国会に提出さるべきであ
つて、これを今日に至るまで放棄したということは、
政府にその誠意がなか
つたためである。しかして
予算の執行についても、すでに第一・四半期が終り、次期
国会が十月に開かれると仮定いたしましても、そのときまでには第二・四半期の
予算についても、その過不足が明らかになるはずでありますから、この間において
国鉄総裁限りにおいて、流用支出のなし得るものについては、すみやかにこれを支出する。ところがただいま
国鉄の
齋藤委員長の御証言を聞きますと、
国鉄当局において可能な部分の支出について、いろいろ
努力をしておりましても、これを
政府当局はいろいろな理由で抑圧するという事実もあるのでございます。私
どもはもとより本
委員会におきましては、すでにその数は明瞭でございまして、当然私
ども野党側の
意見は、葬り去られると思うのでございますけれ
ども、要するに従来までは
運輸大臣または大蔵大臣の裁量によ
つてなし得る部分についても、法規裁量によ
つてこれを支出しない、こういう事実がしばしばあるのでございます。御
承知のように先般私
どもは、国家公務員法第二十八條の人事官に課せられた、いわゆる年間を通じて五%以上の増減のあ
つた場合には、当然人事宮として
国会及び
政府にベース改訂の勧告をすべきである。その義務が課せられておる。その義務を果さないということで、人事官彈劾訴追の手続をと
つたことは、御
承知の通りであります。これと同じような意味におきまして、私は公労法の
規定いたしまする、それは国家公務員法でもそうでございますが、財政上不可能である。いわゆる
予算上不可能であるということが前提條件になるといたしまするならば、
——この
裁定が二十五
年度予算編成前に出ておるのでございまするから、当然これは二十五
年度予算の中におきまして、このような不可能であるということが明瞭に示さればなけれなりません。国家公務員法の二十八條の人事官の勧告の義務につきましても、これは
予算もしくは
政府の財政上の御都合によ
つて勧告がなされたり、あるいは勧告が遅れたりするのではなくて、二十八條が明確に
規定しておりまする、年間を通じて五%以上の増減のあ
つた場合には、当然これを行わなければならない。こういうことにな
つておるのでございまして、
従つて私は公労法に
規定いたしまする仲裁
委員会の権威を守る、民主的にして平和的な方法で労働問題を解決するという、いわゆる労働運動の民主的な立場に立
つて考えて参りましても、この際仲裁
委員会の権威を保持し、かつ
政府はすみやかにこの仲裁
委員会の
決定いたしました
——われわれはきわめて不満足でございまするが、この仲裁
委員会の
決定いたしました
裁定を完全
実施するための諸般の手続を、まず何よりもなさなければならぬと思うのでございます。早川君の御討論にもございましたように、第七
国会においてすでにこれは審議が十分にできないというのではなく、
政府にその誠意がないために、第七
国会におきましては継続審議にな
つた。今度第八
国会におきましても、やはりこれまた継続審議
——先ほど愼重審議ということがございましたが、本
委員会におきましてこの問題が取上げられましたのは、わずか三回の
委員会でございます。第一回におきましては、参考人の御証言がございました。第二回目の
委員会におきましては、私一人が質問をいたしました。本日はその第三回目であるのでございます。しかもきわめて時間的な制約を受けておりまして、本
委員会におきまして、この
裁定に基くところの諸般の問題を愼重審議できるわけはございませんし、またしたということは義理にも言えないのでございます。
従つて私
どもといたしましては、本
国会においてこれを十分に審議して、そしてこの問題を一挙に解決するという方法をとらなか
つた国会側にも責任はございましようが、本来これは
国会に
議決を求めるべき性質のものではないと信じます。いわゆる公労法第三十五條に基いて、
国鉄公社と
政府とそれから
国鉄労組間において、いかにして仲裁
委員会の
裁定を実現するかということについて、真劍に協議協力すべき問題である。われわれはかような
考え方の上に立
つておるのでございます。従いましてただいまの
島田君のせつかくの動議でございますが、われわれといたしましては以上のような観点から、この継続
審査の御
要求に対しましては、反対の意思表示をいたします。