○
早川崇君 私は、
国民民主党を代表いたしまして、
共産主義運動取締りに関する
緊急質問を試みたいと思うのであります。
現在の国際政治、国内政治の最大の問題は、共産主義に対する克服の問題であるのであります。言いかえれば、独裁的な全体主義と、自由を基調とした民主主義との闘争でございまして、これ以外の第三の
立場は、もはやなくな
つて来ているのであります。このことは、すでに毛沢東が新民主主義理論の中で明確に論じたところでありましで、われわれは、この問題に関して確固たる信念を持
つて鬪わなければならないと思うのであります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
かかる観点から最近の日本共産党の動向をながめてみますると、一月七日のコミンフオルムの野坂批判以来、か
つての愛される共産党の擬裝を一擲いたしまして、本来のマルクス、レーニン主義に逆もどりをいたしました。あらゆる暴力主義と破壞行為によるところの反米鬪争へその戰術を転換して参つたのであります。かかる観点からながめて、三鷹事件あるいは五月三十日事件、あるいは
質問書事件、あるいはまたイールズ講演妨害事件、さらには日立争議の暴動化、さらにはまた職よこせデモの暴力的行為、さらには発電所の破壞というような、きわめて不穏当な事件が枚挙にいとまなく起
つておるというこの実情は、言いかえれば共産党の本体を現わした真の経済破壞、反米鬪争の現われと見てさしつかえないと私は思うのであります。(
拍手)
さらに最近聞くところによりますれば、もはやすでに今の共産党の幹部は問題ではない、コミンフオルムにと
つては、むしろコミンフオルムの国際赤衛軍としての第二共産党のできつつあるというような報道を新聞に見るわけであります。われわれは、かくのごとき事態を観察いたしまして、いかに共産党の暴力行為を過大視するも過大視し過ぎることはないというような段階に到達していると私は思うのであります。
さて、かかる観点から第一に
大蔵大臣にお伺いいたしたいのは、反共
政策の根本は、共産主義の温床をわが国の経済
生活からなくするという点に第一の問題があるのであります。言いかえれば、いかに失業しておる者に反共理論を説いても、共産党の惡口を
言つても、職を失つた失業者にはむだであるということであります。言いかえれば、現在の
政府のと
つておるように、
ドツジ・ラインの自由経済的な解釈によりまして、中小企業、あるいは農民に対しては低
米価、あるいはまた勤労者に対しては低
賃金というように、かような弱肉強食的な自由経済を基調にした経済
政策をと
つておる以上、それは結局逆に共産主義の温床をわが国内につく
つて行くという、まことに困つた逆説の状況を生じておるということであります。われわれは、かかる観点から申しまして、かような
政策をこの際大幅に大転換をいたしまして、完全雇用を目的とし、さらにはまた社会保障、さらにはまた経済に対する国家的な干渉を増大して——中産階級の沒落をはか
つて行くというような、池田さんのか
つて持
つておられたような古典経済学による自由経済思想ではだめである。われわれのいうところのこのケインズ、ハンセンその他の新しい経済学によ
つてのみ初めてこの経済的危機が克服できると思うのであります。私は、経済
政策において共産主義の温床をなくするという目標以外には、経済
政策は日本に現在必要ないと思う。この点に関しまして、まず池田
大蔵大臣——これは
総理に
質問したいのでありますが、
総理はおられませんから、池田
大蔵大臣のその面に関する
所信をお伺いいたしたいと思うのであります。
第二の問題は、消極的な面におきまして警察力の治安
対策の問題であります。先ほど申し上げましたように、現在の
共産主義運動の段階は、日本共産党プラス朝連関係、あるいは中共関係という強力な力の結集がなされておる現状でございまするから、現在のような間拔けた警察の力では、一旦事件が起つた場合には、とても日本産業の麻痺、内乱の防止ということは不可能であると私は思
つておるものであります。さらにこの事実を裏書するものは、すでに官庁
政府内部においてすら共産党の勢力が浸潤しておるこの事実を法務
総裁は見のがしてはならない。言いかえれば、あらゆる機密の漏洩であります。先般アカハタの差押えが行われましたが、すでにそれは事前に漏れており、二台の輪転機は大阪に運ばれておつた。これは何を
意味するか。結局文化機関におけるところの情報の漏洩ということでありまして、私は、この際法務
総裁は官庁
職員の徹底的再調査と共産党員の粛清というような面において配慮する必要がないかということをお伺いいたしたい。
さらに
国家警察予備隊でございまするが、かかる
状態に即して、
マツカーサー元帥は日本に七万五千の予備隊の設置を命令したのでございまするが、私の伺いたいのは、この
国家警察予備隊は、軍隊のように事件が起つたときに初めて出て行くものであるか。あるいはそうではなくて、予防的な防衛の機能を果すのであるか。言いかえれば、情報網の整備、暴動の事前探知、そういつた予防的な面においてこの強力な七万五千の予備隊を行使するという方向に進んでおるのではないか。さらに重要なことは、重要産業をどうして守るかということ。御
承知のように発電所というものが破壞される。これは共産党とは言いませんけれども、猪苗代発電所あたりは、ほとんど共産党員が占めていると聞いている。このような重要産業に対して、これを防衛する任務をこの警察予備隊は持つべきであるかどうかという点が、われわれ
国民の最も聞きたいところであります。なるほど議会政治においては、共産党は少くて大した力はないけれども、背後に何だか暴力をやるのではないかという不安の
状態を
政府においては一掃いたしまして、議会主義に対する安全感を持たしめる必要があると思うのであるが、法務
総裁はこの点に対してどう
考えるか伺いたいと思うのであります。
さらにもう二点ほど、この問題に関連しまして御
質問いたしたいのであります。それは共産党の非合法化の問題でございます。六月七日の吉田
総理大臣の談話においては、共産党に対する非合法化を考慮中であるという明確な言明があつたのであります。爾来すでに一箇月以上になりまするが、この問題に対して何らの発表も
措置もとられておらないと私は
考える。検察当局といたしましては、非合法化することによ
つて、かえ
つて地下にもぐらせて、うるさくなるから、これは現状のままでよろしいと言う。警察当局は、非合法化した方が大規模の暴動を抑えるのに都合がよいと、意見が対立している。
私は、この問題に関しましては、もつと深い本質を持
つておると思うのである。なぜならば、民主主義というものの本質にひそむところの問題を持
つておるのであります。言いかえれば、民主主義は政治的自由、言論の自由を認めるわけでありますが、この民主主義の中にあ
つて、かような民主主義制度を破壞するという
一つの政治勢力が現われた場合、はたしてこれを合法的に保護するところの必要があるかどうか、これはまことに議論の多いところでありまして、イギリスの評論家のミユールトン・マリーなんかも、むしろ非合法化すべし、これこそほんとうの民主主義の防衛であるということを
言つておるのでありまするが、かかる問題は別といたしましても、すでに
マツカーサー元帥は、この問題に対して、賢明にも中道の道を歩まれた。言いかえれば、非合法的な、暴力的な、破壞的なものに対しては追放をも
つてこれを押えるが、平和的な、合法的なものには合法性を認めて行くというような、かような寛容のある中道の反共
政策を
とつたのでござまいす。
一体聞くところによれば、いまだに吉田
総理大臣は非合法化に対する
自己の
所信を曲げておらないと聞いておるのであるけれども、大橋法務
総裁は、この問題についてどう
考えるか。あるいはまた、そういう方向に進まないで、出たものをたたいて行くという、かような追放権によ
つて共産主義の暴力革命を押えて行くというような
方法をとられるのであるか。この際私は、この壇上で明確に御
答弁願いたい、かように思うのであります。
最後に、最も重要な問題に関して
政府の
責任を追究しなければならないことを私は遺憾に思うのであります。いかなる問題であるかと申しますると、追放共産党幹部の九名の行方不明事件であります。現下の
情勢下におきまして、徳田氏以下の九名の追放という、これほどの大物は終戰後追放されておりません。しかして追放者の行動に関しましては、この
マツカーサー元帥の追放指令によ
つて追放された者に対して、これを内偵監視する
責任は、ここにある法務
総裁の
責任である。しかるに、追放された者が何をや
つておるのかわからない。外国へ行
つているのか、地下
運動で政治の指導をや
つておるのか、さつぱりわからないような、かような
状態のままに放置するということでは、追放というものが有名無実になる。法務
総裁は、ちよつとした経済人の追放者が経済行為をやつたら、ただちにひつぱ
つておりますが、最も大事な問題に対してまことに怠慢である。
国民は
政府のこの無能を嘲笑し、共産党の地下
組織の巧妙さに実は驚嘆しておるわけであるけれども、私は、この問題に関しまして、かかる
政府の怠慢は、マツカーサ元帥に対する、意識的とは申しませんけれども、怠慢によるところの非協力という
責任は断じて免れ得ないと思います。
総裁は、聞くところによりますと、二百六十名になんなんとする自由党内切
つての反共理論家であり、反共実践家であるということを聞いておるのでありますが、現下の緊迫したところの国内
情勢下におきましては、反共理論よりも、迅速に共産党の実体を把握して、これに対して機宜の
措置をとる実践力が問題であるのであります。もし九名が依然として捕われないならば、まことに
責任感の強い大橋法務
総裁のことでありますから、いざぎよく
責任をとる腹ありやいなやということを、この壇上において御説明願いたいと思うのであります。
以上をも
つて私の
質問を終りたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣池田勇人君
登壇〕