○井出一太郎君 私は、
国民民主党を代表いたしまして、
吉田総理大臣の
施政方針演説に関連し、
総理並びに
関係閣僚に対し若干の
質疑を開陳せんとするものであります。今や世界の視聽は、
わが国と一葦帯水の
朝鮮半島に集中せられ、同一民族が相互に殺戮しあう悲劇は、背後にある二つの世界の相剋を象徴するもりとして、その帰趨は第三次大戰の契機をはらむものとしてわれらの最大の関心事でございます。一方また占領五箇年にわたる
日本経済を顧みまするときに、その安定と
復興とはいまだ遅々として進まず、
経済自立の日なお遠きにもかかわらず、今や一大転換の時期に際会しておると申さねばなりません。終戰後最大の
危機であり難局であるこのときにあたりまして、わずか十数分にして終つた
総理の御
演説は、老宰相の気魂と熱情とに期待をいたしました私どもとして、いささか失望を禁じ得なかつたのであります。しかも示された諸施策につきましては、時期と方法とにおいて明確を欠くところ多く、具体性すこぶる乏しきうらみがありまするので、以下私は、これらに関し掘り下げてお尋ねいたしたいと思います。わが党がつとに提唱しておりまする超党派外交につきましては、今やあまねく輿論の支持するところと
なつて参りましたが、かかる点につきましては、一昨日、同僚川崎君から申し述べました
通りであります。国歩銀難なるときにあたりましては、強い国論の統一が望ましいのはもちろんでありまするが、国政の当面の
責任者たる
政府自身がまずイニシアチーブをとり、誠心誠意事に当るのでなければ、とうていでき上るものではございません。
総理は
演説の中で、
国民及び政党があげて一致協力、既往の行きがかりにとらわれることなく、小異を捨てて大同につくべきことを
要請せられました。しかしながら、その
答弁においては、苫米地委員長をして社会党を説得して来いというような放言をいたしております。首相は、自己の好みに合わざるものはことごとく曲学阿世であ
つて、全面講和や永世中立論は
危險思想である、かように心得ておられるのでありましよう。これらは驚くべき独善であり妄断であります。反対党といえども、別な角度から憂国の至情に燃えておりますることは、あえて巡庭がないはずであります。私はここに強い不満の意を表し、これに反省を促して
質問に入りたいと思うのであります。私は、主として
経済問題を
中心に、
農村対策、文教問題等に及んでお尋ねをいたしたいと思います。
今回の
朝鮮動乱の突発と、これが
長期膠着
状態を予想いたしまするときに
日本経済は著しく変貌を来すであろうことは容易に予想せられるところでございます。
占領下に欝屈しておりましたところの人心は、一つの刺激を與えられたもののごとく、中には奇貨おくべしとなす一旗組も騒動しておる気配でございます。
政府筋の言動も、
隣国のこの不幸なる事態が
日本経済に好
影響を與えるがごとき表現を用いちれ、その不謹愼さを野党によ
つて指摘せられたほどでございます。われわれは兜町
方面で、いわゆる金偏が急反撥をしたというようなことに対してさえも苦苦しく思
つておるのでございますが、この際
政府自体は、最も冷静にかつ沈着に事に当らねばならぬと思うのであります。かりにもしもこの
動乱が早期終結をなされずして、米国側の厖大なる物量が投入せられるというようなことに相なり、対韓援助が
巨額に上りまする場合には、
日本がその補給基地として好
條件を備えていることは考慮し得られることであります。このことは、ドツジ・プランによる安定
計画を別な
方面からゆすぶることになり、デフレ転じてインフレの誘発と相なるかもしれません。しかして軍需工業が復活せんとする様相は、
日本をめぐる国際間のトラブルを一瞬激発いたしまして、
わが国は戰争街道へ一歩接近することに相なるでありましよう。首相並びに蔵相は、この新たなる事態にあた
つて、
日本のこの
経済的
段階をどのような
見通しと決意で乗り切
つて行かれようとするか、この点をまず伺いたいのであります。
首相が述べられました、国連の行動に対する可能な限りの協力という表現はまことに抽象的でございますが、さらにこの内容を問われて、精神的云々という言葉で逃げておられます。私は、そんな生やさしいものではないと
考える。
朝鮮動乱はまことに不幸なことでありまして、短期終熄を願
つてやまないのでありますけれども、戰局の実相はむしろ逆な方向へとおもむきつつあります。
いわゆる特別
需要を
見通しての
産業界は、今活発化せんとしておる。一旦冷静に復しました証券界も、ここ両三日、また熱況相場を現出しておる。海運界などは、もちろん直接好
影響のもとに入
つて来ております。
食糧関係におきましても、米のやみ値がはね上つたり、カン詰等が備蓄せられるというようなことも伝えられております。戰争という要因が
経済に向
つて作用するときには、当然インフレと
なつて現われまするが、一方現内閣の安定
政策はデフレ傾向の強いものであります。
日本経済は、この相反するところの二つの方向をいかに調和するか。
池田さんは、一昨日の
答弁におかれまして、ドツジ・ラインはさほどにきゆうくつなものではない、彈力性を持つた
考え方をしてほしいと述べられました。君子豹変と申しましようか、強情がまんの
大蔵大臣も、速に客観
情勢の前に屈服したと申すべきでありましよう。(
拍手)私は後ほど詳しく触れるつもりでありまするが、ドツジ・ラインは、
朝鮮動乱というこの
経済外的要因が生れなくとも、それは本質的に内在する矛盾が今やおおいきれず、当然修正を余儀なくされる
段階に入つたと思うのであります。かてて加えて今回の
動乱という材料が出ましたために、
日本経済は現事態に適合するところの再調整が必要と相なります。少くとも企業の自由放任に対しては何らかの
計画性が必要と
なつて来るのでありましよう。このような点に対する
大蔵大臣の御
見解を伺いたい。
また一昨日の
答弁の中で、
大蔵大臣は、財政
金融に関して相談相手を設けるというような意向を表明せられましたが、わが川崎君の
質問の趣旨はそうではなくして、現下のごときこの財政
経済の転換期にあたりましては、政界、官界あるいは
金融界、
産業界、学識経験者、かようなものを網羅したところの、もつと大きな機関を設置して
金融、
産業施策の調整をはかるべきである、こういう主張であつたはずであります。決して蔵相のプライベートな機関ではなかつたはずである。これに対する御
答弁を、もう一度煩わしたいと思うのであります。
政府並びに
與党は、先般の参議
院議員選挙において形勢が一たび不利を伝えられまするや、投票直前に相なりまして、新たなる公約五項目を発表して選挙民に媚態を呈しました。
国民は、さきに一たび公約不履行の苦杯をなめさせられておりますので、今や眉に唾をつけて、これらの公約を監視いたしておる。ところが、現にこれらの新公約の中には、野党の意見に完全屈服をいたしたところの
地方税の修正もある。あるいは債務償還の停止もある。この上予算の改定などは、鬼も笑うところの来
年度分でようやく行おうとしておるのであります。さらにまた国際
小麦協定参加のごときは、その後において英国や涙淵側から一蹴せられまして、国際感覚の喪失を暴露いたしたのであります。従
つて、これら公約は大分虫が食
つておりますけれども、当面の
政府施策はこれに基くはずであり、私はこれに対して二、三お尋ねをいたした
公約の第一点には予算の
削減がうたわれておりまするが、
政府は先ほどの御
答弁にも、この
国会には予算を提出しないと言うておられる。しかしながら、公務員の給與ベースの改訂は、前
国会におけるところの人事院勧告のいきさつにもかんがみまして、すみやかにこれを実施すべきが当然であります。従
つて、これは予算補正に響いて参る。あるいはまた最近の警察力増強の問題をとりましても、これに対する予算
措置は、当然
国会にその費用を計上しなければならない。なるほどこの基本法は、あるいは法的基礎をポツダム政令にゆだねるということもありましようけれども、予算は、
国会開会中である以上、当然この議場において審議せられなければならない。こういう違法をあえて現内閣は犯そうとされるのであるか。法務総裁はおられませんが、これに対する
大蔵大臣の御
答弁を煩わしたいのであります。
すでに債務償還費の一部はこれを流用してもよろしいというようなマ指令が発表せられております以上、現内閣がこの予算において鉄則として守
つて参つたところのこのドツジ・ラインの一角は今や崩壞したとわれわれは認識いたし、われわれは
地方税の軽減を叫び、これが補填を平衡交付金の増額に求めまして、その財源としては債務償還費を減額してこれに計上せよ、かように提唱いたしまして、今回の
地方税の修正を主張いたしつつあるのでございます。この観点からも現行予算は大幅に修正を要求せられるのでありますが、その意図
政府にありやいなやを伺いたい。
補正の問題は單に歳出の面ばかりでなくしに、私は歳入の面からも非常な欠陷が出て来ておると思うのであります。たとえば本年の税收入のごとき、はたしてあれだけの額を
確保できるかどうかということになりますると、すこぶる心もとないのであります。一例を申しますれば、所得税に次いで国税の大宗である酒税のごときは、
昭和十五年に比較しまして、税率は千倍以上に上るものもございます。その高率なるあまり、本年第一・四半期の庫出し状況を見ますと、一前年同期から見ますと非常な激減であります。シヤウプ勧告では八百億を予定したというものを千三十億計上しました。この机の上の苛斂誅求は大衆のボイコツトを食いまして、現在の酒価というものが
消費者の購買力の限界外に置かれておるということを意味するのであります。一方において密造や脱税はとうとうとして
全国を風磨いたし、法秩序の軽視は目にあまる
状態であります。蔵相は近き機会において酒税の値下げを実行するお
考えがあるか。現在国税の滞納が一千億にも上
つておる状況でありまするが、これら現行税法の欠陷に対しまして、シヤウプ税制全体を再検討する
意思がおありであるがどうか、この点をあわせ伺わんとするものであります。
地方税につきましては、本
国会におけるところの最大の法案でありまするが、前
国会以来の経過にかんがみまして、
政府は附加価値税の一年延期と、固定資産税の税率軽減とをも
つて本
国会に臨んでおられます、先程私は、これを野党側の主張に屈服したと申しましたが、誤
つてはすなわち改むるにはばかることなかれ、虚心坦懐に
政府は輿論に聞いたものと
考えます。但し、われわれの主張とは、いまだ相当の距離があるのでありまして、かかる点は漸を追うて審議が展開せられるはずであります。
しかして私がここで伺
つておきたいことは、もしも万一前
国会同様に本案が不成立に終つた場合には、一体
政府はいかなる
措置を
考えておられるか、これをまず岡野国務相にお伺いをしたい。また岡野さんは、附加価値税を廃止した理由につきまして、これは時期的なずれによ
つて、今日に至
つては一月までさかのぼ
つて徴収することは不可能である、かような純徴税技術的な見地から
答弁をせられておりまするが、しかしながら
総理の
演説の中には、明らかに各
方面の意見を尊重したと、こう率直に述べられておる。本税延胡の積極的意義を
総理は述べられておりまするが、岡野国務相は、一体このような事務官僚的な
答弁でよろしいのかどうか。また同時に岡野さんは、一昨日のこの議場において、附加価値税は流通税であるということを言い切
つておられる。私どもは、従来の学説からいたしましても、流通税的性格と収益税的性格とを兼ね備えておるというふうに了解をいたしておりますが、この点、専管国務相たるあなたが、ほんとうに流通税であると、こうの入込んでかか
つておられるのかどうか。一年延期の理由とともに、この点をお答え願いたいのであります。先ほど私は、新たなる極東の軍事
段階に処してドツジ・ラインの修正が余儀なくせらるべきことを申し述べましたが、かかる新事態によらずとも、
日本経済は大きな
危機に直面いたしておるのであります。過去一年余りにわた
つて指導原理と
なつて参つたところのドツジ安定
計画が、今や一応限界点に達しました。各
方面から
政策転換の要望が生れつつあるのであります。先刻申しましたところのこの五つの公約も、
政府側における苦悶の象徴であると
考えられるわけであります。なるほど、ドツジ氏によるところの
日本経済起死回生のプログラムは、均衡予算、健全
金融の線を貫きながら、
経済の自動的調整による資本主義的合理化を敢行し、三百六十円レートを設定することによ
つて国際
価格にさや寄せし、
国内価格体系を正常化した、こういうことは、まさに当時にあ
つてはオーソドツクスな行き方であつた。こう
考えてよろしいでありましよう。しかし問題は、
日本経済の脆弱な基盤に対して單なる貨幣的安定だけを施して、実体的安定を顧みない処方というものは、真の意味の対症療法ではないということを、私はか
つてこの議場で強調したことがございます。過去一箇
年間において通貨の増発は停止せられ、物価はむしろ低落ぎみに
なつて参つた。表面上のいわゆる
経済誌指標の上に表われた安定の
條件というものは、なるほど実現したでありましよう。それゆえに
大蔵大臣は、得意満面を
通り越して、ますます傲岸さを加えて来られたようであります。しかるに
現状は、購売力は低下し、
滞貨は激増し、失業は増大いたしまして、あらゆる面に副作用が顯著に
なつて出て参
つております。今まではインフレというカーテンに隠されておつたところの
日本経済の本質的な弱体性が赤裸々に露呈をして参つたのであります。
日本が、資源や人口の点に内在しておるところの宿命的な悪
條件のもとに、この八千万の
国民を、ある程度の生活水準と雇用機会とにおいて維持するためには、
海外貿易によるのほかはないのであります。しかるに、戰時中のこの
貿易の空白は、技術水準をまつたく国際的レベルから立遅れさせてしま
つております。
生産設備は、戰災をこうむるか、あるいは老朽化してしま
つております。さらに
海外のマーケツトや保有海運力の問題を
考えまするときに、まことに容易ならぬものがあるのであります。
総理は
貿易振興を特に強調せられましたが、三十四
年度五億一千万ドルの
輸出実績は決して芳ばしいものではございません。
かくいたしまして、ドツジ・ラインの目標とする
経済の自然的均衡は、このような基盤の上に急速なスピードをも
つて実施されまするときに、そのしわを寄せられる部分に対しては猛烈な社会、
経済的
犠牲が生じて来るのは必然であります。
朝鮮動乱をしばらく別問題と
考えましても、ドツジ・ラインのこれ以上の強行は、
わが国の
経済基盤や
産業構造がとうてい耐え得られるものではないとわれわれは
考えておるのであります。その目的とするオートマテイツクな
経済的均衡が達成せられないうちに、デフレの拡大深化のために、内包しているもろもろの矛盾が激発する
危機に遭遇をいたしております。
総理大臣は、この期に及んでもなおかつ
国民全体が誇るに足る安定
計画の成功であると呼号せられております
大蔵大臣は
総理よりも
経済については明るいと存じますが、あなたは相かわらずドツジ・ラインを金科玉條と
考えておられるかどうか、現在の
危機を
危機として認識せられないか、この点をただしておきたいと思うのであります。(
拍手)ドツジ・プランによるところの
影響を最も深刻に受けつつあるものは
農民である。中小商工業者である。また勤労者でありまするが、それのみにはとどまらずしてたとえば
重工業の面などにおきましても、今や非常に悲鳴をあげつつある。銑鉄、鋼材に対する
補給金の撤廃によりまして、国産コストは国際
価格の二五%高にも及び、せつ
かく回復しつつあるところの機械工業、造船業等を窮地に追い込んでおります。ソーダ工業などもまたしかりであります。これでは勢い、戰後
日本の
産業構造は再び軽工業を
中心とする方向へ逆転をするでありましよう。しかしながら、今日
アジアの諸地域は、
日本の軽工業
製品のマーケツトとして昔の比でばございません。それぞれの地域に紡績、雑貨工業等が勃興しておるのでありまして、
日本の
産業を重化学工業
中心に再編成すべきことが
経済発展の当然の方向でございます。これをはばむものがドツジ・ラインであるという結果に相なるのであります。横尾通産相はその
方面のエキスパートと聞き及んでおりますが、
日本の
産業構造について、いかように
考えておられるか。かつまた、あなたが直接タツチされるところの
重工業振興策にどのような経綸をお持ちに
なつているか、お伺いをいたしたい。もう一つ、ついでに私は海運問題について伺いたいのでありますが、多分これも
通産大臣の管轄であると思います。
わが国の海運は、現在内航においては多数の低能率船が
市場を圧迫している。激烈なる集荷競争の結果、運賃は不当に低落をいたしておりまして、一つ方外航におきましては、新造船の竣工、戰時標準型の改造等によりまして、漸次船体が整備せられつつありますが、配船上の諾制約によ
つて、いまだ十分なる活動に至
つておりませんそこで、この海運業は申すまでもなく国際的な企業であり、各国ともに、これに対しては相当の補助
政策を行
つております。
政府は現在、この海運業の
危機に対しまして低能率船を整理するということをお
考えに
なつておるか、あるいは新造船に対してどのような助成のお
考え方を持
つておられるか。今
朝鮮問題等によ
つて、この注目を集めて参りましたところの海運界の
現状にかんがみまして、この急務に対する具体策をお示し願いたいと思うのであります。中小企業の問題につきましては、現内閣は黒星続きである。さきに蜷川長官罷免問題が起り、また池田通産相放言問題も、いまだ世人の記憶に新たなるところでございます。こうした事柄は、この内閣の性格にひそんでおるところの本質がしからしめておるのであ
つて、(
拍手)
政治が民衆の感情から遊離したところで、からまわりしておるからであります。今日、中小企業の賃金未拂いは、労働省基準監督署の調査を見ましても、四月末におきまして一十八億円余に上
つておる。ドツジ・ラインを貫く健全
金融の立場というものは、
資金の安全確実を本位とするときに、どうしても大企業
中心に相なる。
政府は従来とも中小企業に対し
つて金融措置などをその都度約束して参りましたし、今回の
政府の公約の中にも、これを大きくうた
つております。しからば私は、この公約を具体的にどのような構想をも
つて施そうとしておられるか、これを横尾通産相に伺
つておきたい。ドツジ・ラインの重圧が最も強く加わつたのは
農村である。戰前五百五十方
農家に対して六百万
町歩の
耕地がありましたものが、現在では六百二十五戸戸の
農家に対して五百万
町歩しか
耕地がありません。従来、
耕地面積は平均一町一反あつたのでありますが、今日はわずかに七反九畝である。そうして
国内人口の過半を占めておりながらも、
農民所得というものは、
国民所得全体の約二五%にしか及ばない。この
貧困な
日本農業に対して、
経済の合理性を追求するドツジ・プランというものが、いかにむりであるかということは、言をまたないのでございます。かかる
日本農業の本質からいたしまして、
農政は純粋な
経済政策の範疇に入るべきものではなくして、多分に社会
政策的意義を持たなければならぬと思うのでございます。国際的水準からかけ離れたところの低
価格を農産物にしいながら、しかも
供出制度をも
つて縛
つておるのが
現状であります。今日の
農家で
経済余剰の出ているようなものはきわめて少く、
農業恐慌は今や現実の声と
なつております。この際に、このときに、
政治力をも
つて天下に鳴るところの廣川新
農林大臣が、どのような構想を抱いて
農村の善男善女を済度されますか、けだし興味、刮目に値するところであります。(
拍手)以上私は、ドツジ・ラインを
中心に若干の批判を展開いたしたのでありますが、要するに自然的均衡を
計画的均衡へ切りかえるべき時期が来たと信ずるのであります。
経済安定本部が最近発表せられました
経済白書が、自画自讃の感もございまするが、その冒頭におきまして「インフレの収束と
国家保護の後退によ
つてあらわと
なつた
経済回復の現実の姿を直視すれば、窮極の目標たる
経済自立への途は決して平易なものではない。」、こううた
つております。賢明なる安本官僚諸子は、エチケツトを心得て表現をしておりまするが、周東安本長官もまたこのことを是認せられますかどうか。さきに安定本部がその知能を傾けて作業をいたした五箇年
計画のごときは、今いずこに姿をくらましたでありましよう。聞くところによれば、
経済復興審議会が再開される由でありまするが、これはいかなる構想と使命を持たるるものでありましよう。私どもは、資本主義の体制下においても資本主義に
計画性を付與することの可能なることは、米国のニユー・デイール以来歴史的事実と相
なつておると存じまするし、ソ連のヴアルが教授さえもこれを認めておる。單なる私企業的な観点からぺーイング・ベーシスを貫ごうとするのではなくして、基礎的な
経済計画を樹立し、その上に
資金の導入や設備の改善の
計画化が行われまするとき、
日本経済の合理的にして効率的なる再建があると
考えるのであります。この点、周東さんはいかようにお
考えになり、またドツジ・ラインの
政策転換の時期とおぼしめされるかどうか、この点を伺いたいのであります。
総理の
演説の中におきまして、
農業関係に対して一言も言及しておられませんでした。これはおそらく全
農村の失望と憤激とりを呼んでおると思いますが、
総理をしてあのような
演説をせしめたところに私は
農林大臣の怠慢があると
考えておる。(
拍手)そこで私は、
農村関係問題につきましていろいろ伺いたいのでありまするが、すでに社会党のエキスパート
井上さんが、今るる
農業関係問題に触れられました。そこで、きわめて
簡單に一、二点お伺いをいたしまするが、まず第一に
価格の問題、農産物の
価格政策でございます。何といたしましても、この四千二百五十円という低
米価を修正することが出発点でございます。給與ベースの
引上げを一方でやるということは、他方において
農村にバランスを合せるために
米麦の値段に考慮をめぐらさなければ、これは不均衡である。早場米の奨励金や、追加
供出に対する特別
価格を撤廃せんとするような方向に対して、われわれは承認するわけには参らない。
食糧価格のみが国際
価格に比べてはるかに下まわ
つておることは、
農民の大きな不満であります。現行パリテイ方式は、
農民に対しては著しいデイスハリテイに
なつておる、農相は、
米価を
引上げ、またパリテイ計算方式を改める意図をお持ちになるかどうか、これを伺いたい。第二点といたしましては、農林業に対する
国家資金の放出について伺いたい。現在こそ三百六十円の為替レートが防波堤の役をなして、国際
農業の重圧が、直接的ではありませんけれども、近き将来、必ず
日本農業には、農産物の流入によ
つて圧迫が加わるでありましよう。現在の低劣な労働
生産性を向上するためには、
日本農業の装備を強化して、そうして抵抗力を養わなければならない。これはもはや
農家個個人の私
経済の範囲の外の問題でございます。すなわち、
土地改良や
災害復旧や干拓や潅漑
排水等が大
規模な
国家事業として推進せられなければならないのでございます。さらにまた、戰時中あるいは戰後を通じて濫伐、過伐のために、山林資源等は極度に枯渇をいたしておる。近年の水害のごときも、その多くの
原因を林野の荒廃に求めなければなりません。この自然的
災害の脅威から国土を守るということは、
政治の最もプリミテイヴな
段階であるのでありまするが、これさえもできておらない。治山治水に対して
国家資金がもつと大
規模に投入せられることが必要であります。こういう点に関しまして、
廣川農林大臣のお
考えを伺いたいのであります。第三点として、私は
農業金融について申し上げたい。か
つてわれわれは農林漁業
復興金融といつたような特別
措置を施したことがございまするが、元来
農業金融は
長期低利を本則とするものであ
つて、ドツジ・ラインに基く健全
金融の線からは最もきらわれる性格のものであります。
見返り資金のごときは、ほとんど
農村方面には入
つておらない。ことに
農地改革の結果、
生産手段の主体である農地の担保力が完全に喪失してしま
つております。
政府は不動産抵当信用というようなものをどのように考慮しておられますか。さらに
農村に特別な
復興融資を
考えるつもりはないか。これを第三点として伺いたい。
肥料問題につきましては、
井上君がるる蘊蓄を傾けられましたので、これを省略いたします。そして私は、その次の問題として
農業協同組合の強化という点を特に
政府に対して
要請いたしたい。今
農村は、国際
農業の圧迫を外において受けようとしており、内においては販売品安、購買品高のシエーレ現象を通じて起りつつある
農村恐慌に際会いたしまして、
日本農業を守りまするためには、
農民の民主的
経済組織であるところの
農業協同組合の強化
発展をはかる以外にはないと思います。過去の
農業会から、新しい理念によるところの
農業協同組合に切りかえられましたものの、現在過渡的な困難に悩まされていまだ本格的な立上りをしておりません。それどころではなく、ドツジ・ラインの
影響は至るところに農協の破局的
危機を現出いたしております。これに対して筋金を入れまするためには、やはり財政
金融的援助を講ずるのほかないのであります。特に
生産指導面等につきましては強力な助成
政策があ
つてしかるべきであると
考えます。この点に対する農相の
見解を伺いたい。最後に私は、
総理が特に力をこめて述べられましたところの愛国心、独立心に関連をして、
国民精神の問題ないしは文教問題に及んで
総理並びに文相にお尋ねをいたしたい。あえて本問題を最後にまわしましたゆえんは、事柄がきわめて重大だからであります。首相が愛国心を振い起すようにと希望される御心情には、私もまつたく同感であります。しかしながら、
国民に対しては、首相の御期待
通りはたして響いて参るかどうか。この点を私はおそれる。今日、世はまさにとうとうとして道義頽廃、敗戰とともに一切の権威は否定せられ、あらゆる価値の基準は転倒してしまいました。世の道学先生をして末世澆季であると嘆かしめるに十分であります。今日の青年の心理のごときは、私ども比較的世代が近いのでありまするけれども、とうてい了解に苦しむ。かの三鷹
事件の竹内景助のごとき、金閣寺放火の青年僧侶のごとき、これらは精神の分裂症という以外には了解に苦しむのであります。アフレ・ゲールとアヴアン・ゲールの相違であろうなどと
簡單に片づけるわけに参りません。私は、今日の青年の代表である大学生を例にと
つて、しばらく申し上げてみたい。この人々の大半が今日反米的な
考え方であるということは、容易に推測せられるところであります。天野先生が「今日に生きる倫理」を強調せられようとも、今日の青年はなかなか食いついて参りません。しかしながら、戰争中の青年学徒は、天野さん、あなたのお書きに
なつた「道理への意志」一巻を背嚢の中に納めながら、わだつみの奥深く沈んで行つた幾人かの若者がおりました。この相違を究明することが文教
政策の根本であらねばならないと私は信じます。今日の学生の多くはアルバイトをしております。父兄の
経済も楽ではありません。卒業はすなわち失業を意味するのであります。希望も理想も夢もない学園の生活こそ、思うに全学連の組織の温床たるに好個の
條件を備えております。レジスタンスの精神は、若者特有の正義観から出発しております。これをくみと
つて愛国心にまで昇華せしめなければならないというのが要諦であると私は信ずる。六・三制は、制度としては、なるほどりつぱなものであいましよう。しかしながら、その内容はきわめて不整備であります。学生の欲求は、校舎において輪突の美を欲するよりも、むしろ魂のアルト・ハイデルベルヒを求めてやまぬのであります。大学の先生の何人がよく今日学生にアツピールし、真理探求の情熱を堅持し、学生の尊敬を受くるに値する人でありましよう。
かく考えるときに、根本はやはり
政治の
貧困がその
責任を負わなければなりません。ちまたに歩む浮浪兒の姿に、また倫落一歩手前の女性に、はたまた一家心中の記事に、
政治がどれだけ直接手を差伸べておるでございましよう。
政治は冷厳なリアリズムであり、ときにはマキアベリズムである必要もありましようけれども、底を流れるものは愛情でなければなりません。はだ温かいヒユーマニズムでなければなりません。(
拍手)願わくは首相は、道学先生のような立場を捨てられ、
国民精神作興を命令する東條方式ではなくして民衆とともに憂い、ともに楽しまれる態度でも
つて臨まれたいのであります。(
拍手)
天野文部大臣に申し上げますが、今日、
日本の代表的知性であるあなたが入閣いたしましたことに寄せられた各界の期待はすこぶる大きかつたのであります。歴代文相は、いわゆる件食大臣として予算獲得においてその
政治力の底を見すかされるのが落ちでありました。あなたがあえて政界に入られ、泥まみれを覚悟せられました以上、私の申し上げたこの
国民的情熱の炎をいかにしてかき立てるか、それが文教の根本問題でありまするので、あえて御抱負を伺いたいのであります。(
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ついででありますから文相にお伺いいたしたいと思いますが、新制大学の制度の中で、シニア・コースとジユニア・コースをわけた旧制高等学校の構想を大臣はお持ちに
なつておられる由に伺いましたが、具体的な方針をお示し願いたい。さらにまた現在行われておりまする教員免許法による認定講習のごとき、実に愚劣きわまるものとして、各
方面の非難が高いのであります。これに対し何らかの修正の御用意をお持ちになるか、これを承りたい。
最後にもう一点、先ほど申しましたところのアルバイト学生などの現況にかんがみまして、能力を抱いて学窓に上り得ない青年のため、育英
資金制度の
確立と、その予算についてお尋ねをいたしたいのであります。
以上をもちまして私の
質問を終ります。(
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〔
国務大臣吉田茂君
登壇〕