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1950-09-19 第8回国会 衆議院 法務委員会 第11号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年九月十九日(火曜日)     午後一時二十六分開議  出席委員    委員長 安部 俊吾君    理事 田嶋 好文君 理事 中村 又一君    理事 猪俣 浩三君       角田 幸吉君    鍛冶 良作君       高橋 英吉君    花村 四郎君       古島 義英君    牧野 寛索君       眞鍋  勝君    大西 正男君       石井 繁丸君    高田 富之君       林  百郎君    佐竹 晴記君       世耕 弘一君  出席国務大臣         法 務 総 裁 大橋 武夫君  委員外出席者         国家地方警察本         部長官     斎藤  昇君         特別調達庁官房         長       辻村 義知君         特別調達庁労務         管財部次長   曽田  忠君         刑 政 長 官 草鹿淺之介君         検     事         (法務特別審         査局長)    吉河 光貞君         参  考  人         (警視総監)  田中 榮一君         労働事務官   阿佐美弘道君         專  門  員 村  教三君         專  門  員 小木 貞一君 九月十九日  委員上村進君及び今野武雄君辞任につき、その  補欠として林百郎君及び高田富之君が議長の指  名で委員に選任された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した事件  検察行政及びこれと関連する国内治安に関する  件     ―――――――――――――
  2. 安部俊吾

    安部委員長 これより会議を開きます。  本日はすでにお知らせいたしておきました通り日共追放幹部逮捕に関する問題と、委員派遣報告であります。政府当局から大橋法務総裁特審局長国警長官、それに特に田中警視総監が来ておられます。この際あらかじめ御承認願つておきますが、警視総監政府ではないのでありますが、この問題については、相当関連しておりますので、御意見の開陳も多いかと思われますので、議事の建前上、あらかじめその御発言について御承認を願つておきます。  さて本件は、すでに御協議された問題ですが、その後の経過についてただしておきたいこともあり、また国民に対してもいまだ問題が未解決のまま残つてある現状にかんがみまして、ある程度事情を明白にするとともに、さらにわれわれ法務委員会としても、責任ある立場からこの際事情いかんによつては、政府と協力して問題の打開に盡力したいと思うものであります。 (「反対」と呼ぶ者あり)  なお本日は傍聽人方々も多いのでありますが、問題の性質上委員会審議はきわめて愼重にいたしたいと思います。どうかわれわれの審議に御協力を願いまして、念のために申しておきますが、この委員会秩序維持の支障となるような言動がありました際は、御退場を願わねばならぬことになりまするからして、さよう御承知をお願いいたします。  ただいま法務総裁は二時二十分ほどに関係方面とのお約束がありまして、それまでにおいでになるのでありまするが、最初大橋法務総裁緊急質問として発言があります。それは日発問題に関連し、追放該当者政治活動疑い発生問題について、猪俣浩三委員より発言を求めておられますので、これを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 電力編成問題に関しまして、とかくのうわさが出ておりまして、これは実に古い問題であります。これに対しましては考査委員会はすでに活動を開始しておるのでありまするが、検察庁におかれましては、いかなる処置をとられておりまするか、法務総裁はいかなる指揮を検察庁に対してなされているかをお答え願いたいと思うのであります。
  4. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日発問題につきましては、考査委員会におきまして近く御調査になるということを承知いたしております。しかしながら捜査当局並びに検察当局といたしましては、この問題につきましては何ら材料を持つておらないわけであります。また現在の段階におきまして、特にこの問題のために特別な行動に出るというには時期が熟しておらぬ、かように考えております。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 大橋総裁答弁でははなはだ私ども意に満たぬのであります。すでに事の有無にかかわらず天下の大問題といたしまして、天下の大新聞がみなこれを報道いたしております。国民もみな一齊に疑惑の念を持つておる。これを究明すべきものは、もちろん考査委員会がやるのでありますけれども考査委員会の職能は、総裁もよく御存じ通り、別にここに捜査権として刑事訴訟法上の権利を持つておるわけじやない。この裏づけはやはり検察庁がやらねばならぬと思う。これだけの疑惑がすでに起つておる以上は、事の有無につきましては、ここに強力なる検察陣活動をするということが、当を得たことじやないかと思うのでありますが、今これだけの時期に到達しましても、検察庁は何ら動くべき時期にあらずというような御見解は、私は当を得ないと思う。近時どうも検察庁政治的に動くというようなうわささえある際でありまして、次に質問いたしますけれども、たとえば肥料公団総裁、副総裁逮捕状が出て、これを検挙しておるにかかわらず検察庁では不起訴処分にするということが新聞に報道されておる。この裏には相当の政治献金があるがために、これを追究することは政治界に大波瀾を起すから、これにふたをしたのであるといううわさをする者さえあります。われわれは神聖なる法務庁がかような行動に出るとは信じませんけれども、さようなうわさのある際に、これだけの天下の大問題になつておるものに対して拱手傍観しておるというようなことはその意を得ないのであります。いま少しく検察庁が動かないということについての確たる理由があつたらお示し願いたいと思います。
  6. 大橋武夫

    大橋国務大臣 私の申し上げましたのは、その問題について特別に動くべき時期でないということを申し上げたのであります。もとより捜査当局並びに検察当局といたしましては、いかなる時期におきましても犯罪があれば、必ずこれに対して捜査をいたしているわけでありまして、特別にこの問題に対して、普通の犯罪に対して平素やつておりまするのとかわつた特別のことをやるべき時期ではない、こういうことを申し上げた次第であります。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 その時期にあらずということは、しからばその時期とはいかなる時期を言うのであるか。今最も活動しなければならぬ時期だとわれわれは考える。政党及び官庁、さような方面にいわゆる電力編成に関するところの運動が行われ、黄白がばらまかれたという疑いが出て、すでに衆議院は活動しているような現状におきまして、なおその時期にあらずということはいかなる理由であるか。われわれは犯罪疑いが多分にあると思う。たとえば国会議員に対し、あるいは官吏に対しまして、こういう政治運動資金がばらまかれたとするならば、公務員の贈收賄の問題が嫌疑として浮び上つているわけでありますが、かような大問題につきまして、いまだ時期にあらずということで拱手傍観されるという理由がわれわれわからぬ。何がゆえに時期でないのであるか。しからば時期とはいつが時期であるかをお答え願いたいと思う。
  8. 大橋武夫

    大橋国務大臣 捜査当局は今申し上げました通り、すべての犯罪につきましてすでに捜査をいたしているのであります。特にこの問題を捜査しないということはないのでありまして、この問題につきましてもひとしく捜査圏内に入つていることはもちろんであります。しかしそれ以上特別の行動に出るには何か確たる材料がなければなりませんが、まだその時期ではない、かように申し上げる次第であります。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすれば検察庁におきましては、いわゆる捜査権を発動するのには材料がない、その材料が出ればただちに活動する、かようなお答えであると承知してよろしゆうございますか。
  10. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りであります。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 やはり法務総裁監督下にありますところの特別審査局に関する問題でありますが、たとえば電力編成の問題、日発問題に関しまして、多数の追放関係者、中にはG項該当者もある。かような者どもが活躍をしていることは、ほとんど衆目の見るところ一致しているのでありますが、これはいわゆる追放令違反事件としてもやはり活動しなければならぬ事案ではないかと考えるのでありますが、かような点についても、やはりこれは活動する時期にあらずという御概念でありますか。
  12. 大橋武夫

    大橋国務大臣 特別審査局におきましても常に追放者行動監視しております。従いまして常に追放者動靜については注意をし、また調査もいたしているということを申し上げます。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 追放者監視の問題についてなおお伺いいたします。なお具体的の詳しいことは特審局長にお尋ねいたしますが、三浦義一という人があります。これはG項該当者だそうでありますが、この人が日発事件に相当関係しているということを聞き及んでおりますが、この人につきまして特審局においては捜査をしたとも聞いているのでありますが、この人を取調べたことがあるかないか、この点についてお答え願います。
  14. 大橋武夫

    大橋国務大臣 三浦義一につきましてはかつて特審局において調査いたしたる事実がございます。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 日発関係につきましてはこの程度にしておきます。  先ほど申しました肥料公団総裁、副総裁背任事件、さようなものにつきまして、東京検察庁の検事正はこれを不起訴処分にするはずであるというような新聞発表をやつているようでありますが、これはいかなる理由で不起訴に相なつたのでありますか。われわれは公団のあくなき不正につきましては、考査委員といたしましても実に茫然自失するような状態でありまして、これは総裁もつぶさに御存じのはずである。この肥料公団農民生活にも影響のありますところの公団でありまして、しかも総裁、副総裁とも逮捕状によつて逮捕せられるというような事態があるにかかわらず、これがうやむやの間に不起訴なつてしまうというようなことは、われわれ実に解せないのでありますが、いかなる理由で不起訴になつたのでありますかをお示し願いたいと思う。
  16. 大橋武夫

    大橋国務大臣 肥料公団総裁、副総裁東京検察庁におきまして、逮捕状請求いたしまして取調べをいたしたのでありまして、その逮捕状請求原因となりました容疑のあつた犯罪事実につきましては、すでに起訴をいたしております。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、不起訴処分にしたという新聞報道間違つてつて起訴なつているのでありますか。
  18. 大橋武夫

    大橋国務大臣 逮捕状請求原因となりました事実についての起訴はいたしております。その他の犯罪でこれらの人によつて行われたと見られる事実があるわけでございますが、この点については起訴、不起訴についてはまだ報告を受けておりません。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 私は法務総裁に対してはお急ぎのようでありますから、この点にとどめておきます。
  20. 安部俊吾

    安部委員長 それでは次に日共追放幹部逮捕に関する問題を議題にいたします。ただちに質疑に入ります。発言についてはすでに申込がありますので、順次これを許します。なお初め田嶋好文委員世耕弘一委員猪俣浩三委員の順でやつていただきますが、この問題は相当複雑多岐にわたります関係上、時間が長くかかることも予想されますので、大体一人につきまして二、三十分の程度にいたしたいと思うのであります。お互いに質問が重複しないようにお願いいたします。それでは田嶋好文君。
  21. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 委員長から先ほどお言葉がございましたように、この取上げました今回の事案につきましては、国民がひとしく関心を持つておる点であります。共産党徳田球一中央委員ほか八名に対しまして逮捕状請求せられましてから、今日まで三箇月の日にちが経過されておるのであります。にもかかわりませず、未だこれが逮捕されないということは政府国民が非難する因となり、捜査当局無能をなじることとなり、はては政治無能をも国民が叫ぶに至つておるとわれわれは考えなければならぬのであります。事ここに至りますれば、われわれ委員会といたしましても、いたずらに傍観することは許されないのでありまして、本日はその意味におきまして十分これが真相を糾明するとともに、国民の前にこれを明らかにいたしまして、政治責任をここに全ういたしたいというのが、私たち考えであります。従いまして御出席政府責任者方々におかれましても、その意味におきまして、十分なる責任のある御答弁をここにお願い申し上げる次第であります。  まず第一にお尋ねいたしたいと思いますことは、これは法務総裁に対してでありますが、日共幹部逮捕状を発しましたところの法的の根拠はどこにあるものでございましようか。それをお伺いいたします。
  22. 大橋武夫

    大橋国務大臣 日共幹部逮捕状請求いたしました原因は、団体等規正令に基きまする出頭義務の懈怠という容疑であります。
  23. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 次に逮捕状の出た者のうちで届出をしなかつた者と届出をした者があるかに聞いておりますが、その内容はどういうようになつておりましようか。
  24. 大橋武夫

    大橋国務大臣 団体等規正令によりまして正規の期限内に届出を全然いたしておりません者は徳田球一春日正一の二名であります。その他家族からかわつて届出をいたしました者は長谷川浩伊藤律紺野與次郎松本三益、野坂參三竹中恒三郎、この七名であります。
  25. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 次に規正令によつて先ほどお尋ねいたしましたように、出頭を求めておるのでありますが、これは何名に出頭を求めておるのであるか、続いてこの人たちが現在所在不明になつておるということでありますが、この人たちが所在不明になりました日はいつの日か、それをお尋ねいたします。
  26. 大橋武夫

    大橋国務大臣 二十名に対しまして出頭命令を出したわけであります。それから所在不明になりましたる日時を申し上げます。徳田球一は六月四日であります。これは六月六日に追放なつておりまするから、その二日以前から所在不明と相なつております。竹中が七月三日、志田七月二日、野坂六月三十日、松本三益、七月一日、長谷川七月三日、伊藤六月三十日、春日六月二十六日、紺野六月十日、松本一三七月十一日、こういうことになつております。なおこのほかに新宿委員会の役員として追放になりましたる岩崎、小林、奥野の三名はいずれも九月七日に所在不明と相なつております。
  27. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今回の旧共産党中央委員のみでなく、他にも団体等規正令によりまして出頭要求をいたして告発した事例がございましようか。
  28. 大橋武夫

    大橋国務大臣 団体等規正令による出頭要求に応じなかつたために告発いたした者は、ただいま御指摘の九名のほかにはございません。
  29. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 して見ますと私たちといたしましては、何らか共産党幹部だけにこれを適用したということは、共産党に対する彈圧というようにも見えるように思いますが、この点はいかがお考えになりましようか。
  30. 大橋武夫

    大橋国務大臣 追放者でありまして当局出頭要求に応じなかつた者は、ただいままで一名もなかつたのであります。むしろみずから進んで当局出頭し、自分はかようなふうな行動をしたいと思うが、これは追放令違反にならないかと言つて積極的に相談して来るような者が大部分でございました。当局出頭命令に応じなかつたというのは、これらの九人が初めての事例でございます。
  31. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そういたしますと、これは共産党員以外においても、こうした事例があれば、政府当局は同様な取扱いをすると、ここではつきりとさしていただいてよろしうございましようか。
  32. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御指摘通りでございます。
  33. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 次に不出頭者に対しまして警察署特審局が尾行する、監視をする、こうしたことは一体いかなる法律的な根拠によるのでございましようか。これを明確に……。
  34. 大橋武夫

    大橋国務大臣 追放者につきましては、昭和二十二年勅令第一号によりまして、特審局は常時その動靜を随時観察するという責任を負うておるのでありまして、この権限に基きまして、当局といたしましては当然の職務執行としていたしておる次第であります。
  35. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 追放者にはそうした理由が通るかもしれませんが、留守宅張込みをし、家族に対する尾行、こういうようなことになりますと、事は個人の自由並びに精神を束縛することになりまして、憲法違反というような目でもこれが見られる、また解釈されると思うのでありますが、この点に対しましてはいかようなお考えを持つて、いかようなお取扱いをいたしておりましようか。
  36. 大橋武夫

    大橋国務大臣 追放者動靜を観察いたしまする必要上、本人と特に密接な関係にあると思われる人に対しましては、あるいは参考人として出頭を求める場合もありますし、またその留守宅の出入に対しまして、外部から監視をするというような手段をとる場合もあるわけであります。しかしながらかような場合におきましても、関係者に対しては、できるだけ迷惑のかからないように、調査員に対して嚴重な指導をいたしておる次第でございます。
  37. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今の点は了承いたしましたので、十分この点は御注意をいたされまして、世間疑惑を招かないようにお願いをいたしたいと思うのであります。  次に、追放者も旅行の自由や居住地を離れる、また病気靜養をするというような自由は、法律上当然與えられておると私たち考えるのでありますが、もしもこの人たちが――共産党追放者諸君でありますが、この人たちが旅行しておる、それから單に居住地を離れておる、それから病気のために靜養しておるというようなことでありますと、逮捕状を出すことは不当であると考えるのでありますが、はたしてこうしたことがあつて、この人たちが出ないのではないか、この点に対する疑念はどういうように解けばよいのでございましようか。
  38. 大橋武夫

    大橋国務大臣 出頭要求をいたしましたときは、すでにこれらの者は不在であつたのであります。従いましてその後一両日の問は、あるいは本人が全然さような命令のあつたことを知らないということもあり得ると存ずるのでありますが、今日におきましては、新聞あるいはラジオにおいて報道されてもおりますし、また家人も、この命令を伝達するためにいろいろ手を盡しておられるわけでありますから、私どもの常識といたしましては、家人に行先を告げず長期にわたつてこれらの人が姿をくらましておるということは、すでにその行動によりまして、当局出頭命令を拒否したものと認めざるを得ないのであります。
  39. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 そうしますと、この人たちは拒否したものであつて病気靜養とか、旅行しているとか、そうした理由はないということに解釈してよろしゆうございましようか。
  40. 大橋武夫

    大橋国務大臣 さように考えております。
  41. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 これに共産党追放者の場合になりますが、もしも共産党以外の団体でこうした問題が起きました場合は、今お答えになりましたことについて、同様な取扱いをする、こう解釈してよろしいものでございましようか。
  42. 大橋武夫

    大橋国務大臣 すべて特審局行動は、法規によつてつておるのでありまして、共産党たると他の政党に属するとによつて、区別をいたすということは断じてございません。
  43. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 一応これによりまして法的な根拠、今までの状態は明らかになつたのでありますが、当委員といたしましては、このように考えるのであります。三箇月を経過した現在に至るまで、こうした追放者諸君が捕えられないということは、これはどこかに欠陥があるのではないか、その欠陷というのは、捜査当局なり、政府機関機構不備があるために、逮捕令状が出ておりながら逮捕することができないのである。いま一つは、世間に言い伝えられておりますように、こうした捜査当局なり、特審局なりの内部に、やはり意思を相通ずる分子または共産党員が存在いたしておりまして、そうしてこれらの逮捕を妨害しておる、こういうように当委員二つの場合から考えてみたいと思つておるのであります。特にこの内部の問題でございますが、一例をあげますと、私たちのところに入りました情報といたしまして、先般七月の二十一日に、新宿区の委員会解散がありました。この新宿委員会解散にあたりましては、当局上層部ばかりではなく、この解散当局下部方々にまでわかつてつたというために、解散の当日、警察官が乗り込んだ場合は、もはや委員会においてはこれを察知しておりまして、乗り込みました警察官に対しまして、「警察官の皆様へ」というガリ版を撒布いたしまして、そうして十分なる準備を整えて、この解散に備えておつたという事実が明らかになつておるようであります。それに対照いたしまして、八月三十日に解散を命ぜられました全労連解散にあたりましては、これは上層部のみの知るところであつて下部まで知れておらなかつたとか申しておるのでありますが、そのために全労連解散はまつたく寝耳に水と申しますか、解散される全労連は全然これを知らなくて解散に応じたという、二つの対照的事実がここにあるのであります。この事実を見ましても、私たちはやはり特審局なり警察検察庁内部に、そうした共産党分子意思を相通ずる分子が存在し、または共産党員としてその機関の中で活動する分子が存在するものである、こう断定せざるを得ないような状況でございますが、この点に対しまして政府当局は、内部共産党員があるのかないのか、それを認めておるのか認めてないのか、はつきりお答えを願いたいと思います。
  44. 大橋武夫

    大橋国務大臣 特別審査局におきましては、御指摘のような分子内部にはないということを確信いたしております。従来の機密漏洩は、さような赤色分子の手によるということよりは、むしろ係員の不注意による漏洩が多かつた、かように私ども考えております。     〔「赤色分子とは何か」と呼びその他発言する者多し〕
  45. 安部俊吾

    安部委員長 靜粛に願います。
  46. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今法務総裁お答えによりますと、特審局にはそうした分子はいないが、他にはというようなことでありましたが、私は特審局が、現在の調査状況をもつていたしますれば、警察なり検察庁なり、または他の官庁機構内の状態調査されているものと考える一人であります。もし調査されてないといたしますれば、事は重大でございまして、われわれといたしましても黙つていることはできないのであります。その点におきまして、調査されているものと信じますがために、はつきりとここで、現在調査した範囲においては、警察署の中においては共産党員はどういう状態であるか、何名ぐらいあるか、検察庁の中においてはどういう状態で、どういう活動をして、どういうふうになつておるか、また特審局の局員の状態はいかような状態にあるか、この点を具体的にはつきりと国民の前にお知らせを願いたい。もしもこれらの分子が、現在警察検察庁特審局あたりから追放され、清掃されておるといたしますれば、またこの点に対しましてもお答えを願いたいと思うのであります。     〔「分子とは何か」「共産党天下の公党だ」と呼び、その他発言する者多し〕
  47. 安部俊吾

    安部委員長 私語を禁じます。
  48. 大橋武夫

    大橋国務大臣 法務府並びに検察庁におきましては、御指摘のような分子は存在いたしておりません。なお捜査当局でありまするところの警視庁につきましては、ちようど警視総監がお見えになつておられますから、そちらにお聞きを願いたいと存じます。
  49. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは警察の問題につきましては、警視総監国警長官お願いをいたします。
  50. 安部俊吾

    安部委員長 ちよつと田嶋委員に御相談しますが、大橋法務総裁は先ほど申しましたように、二時二十分までに他の方面に行かなければなりませんので、もし法務総裁に対する質問が終りましたならば、他の委員の方にお譲り願いたいと思います。
  51. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 それでは御注意がございましたので、法務総裁に対する質問だけを終えさせていただきます。  次に機構不備でございますが、この点も私は内部の問題と同様に重大な問題だと思うのであります。一例をあげますと、野坂參三氏に対する逮捕状を執行するがために、捜査当局であるところの国警本部がそこに張り込んだ。ところがもう張込みの必要がないというので、その張込みを中止いたしました。いたしますと、その後また市警の方があとを追つて張込みをした。また特審局もこれに対して張込みをしたというようなことが、新聞紙上に言い伝えられておるのであります。そういたしますと、特審局警察検察庁という機構において、まつたく不連絡な状態はつきりとここに出現いたしておりますし、ここに機構不備な点から逮捕が困難という問題も起きているように思いますが、この点はいかようなる取扱いをいたしておりましようか、法務総裁にお尋ねいたしておきます。
  52. 大橋武夫

    大橋国務大臣 御指摘関係機関の連絡の不十分というような点につきましては、私ども過去数箇月の実績を考えまして、さような点を反省しなければならぬ、かように考えております。つきましては、今後におきましてはこの連絡について特別なる用意を準備いたしております。
  53. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 その点と関連いたしまして、私たちが情報なり新聞紙上の報道なりで、非常に懸念をいたしておる問題がございます。それは最近の共産党活動と申しますのは、いわゆる交接点というところをねらいまして、たとえば国警、自治警、それから県境というように、捜査当局の混線した地帶をねらいまして、そこに一つの拠点をきめ活動している。これはうわさ新聞紙上――しかしこのうわさが單なるうわさでないというふうに想像されますのも、今まで起りました三鷹を考え、また今まで起りました平を考え、高萩炭鉱等の問題を考えますと、私が申し上げましたことは、單なる新聞紙上のうわさではなく、單なる世間うわさではないというような考えが起るのでございますが、こうした交錯点をねらつた共産党活動行為に対しましては、政行当局はいかように考え、またこれらに対していかような手を現在考慮しているか、この点を詳細に承りたいと思います。
  54. 大橋武夫

    大橋国務大臣 田嶋委員の御指摘になりました点は、私どもといたしましても、これは重要な捜査注意すべき点である、かように考えまして、特に最近におきましてかようなる部分に対しまする連絡上の緊密を保つようなくふうをいたしておるような次第でございます。
  55. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今申しました点は私は重要なことと思いますので、御答弁において満足はいたしますが、御答弁以上に御注意をお拂いくださいまして御対処を誤らないようお願いいたしておく次第であります。  最後に最近共産党のまた反税闘争が世間うわさに上つているようであります。たとえば九月二十日を期してやるとか、十月を期してやるとかいうことになつておりますが、この点に対してはどういうような調査をされ、どういうような結論に到達いたしておりましようか、法務総裁からお答え願います。
  56. 大橋武夫

    大橋国務大臣 反税闘争につきましても種々な情報によりまして、さような計画があるものという考えのもとに、これに対処いたしつつあります。
  57. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私の法務総裁に対する質問はこれで終ります。
  58. 古島義英

    ○古島委員 法務総裁は今徳田君が行方不明になつたのは六月四日だと御答弁なさつたようであります。徳田君に対する逮捕状はいつ出ているのでありますか。
  59. 大橋武夫

    大橋国務大臣 すべての者に対しまする逮捕状は、七月十五日に発付になつております。
  60. 古島義英

    ○古島委員 われわれは一般の国民として何人からも追跡をされたり、あるいは尾行されるはずはないのであります。しかるに七月の十五日に逮捕状が出て逮捕状執行のために徳田君が行方不明になつたということが発見できたと思うのでありますが、もしその前の六月四日に行方不明になつたというならば、六月四日後の徳田君に尾行でもしておつたからわかつたのですか、わかつた理由お答え願います。
  61. 大橋武夫

    大橋国務大臣 逮捕状の発行されましたる後におきまする調査によつて明らかになつたのであります。その以前におきまして尾行、監視等の措置はとつてはおりません。
  62. 古島義英

    ○古島委員 総裁は数字を間違つているのではないですか。徳田君に対する逮捕状の発行をいたしたのは七月の十五日だとあなたは言つている。しかるに行方不明になつたのは六日四日だと言つている。七月十五日後に行方不明になつたというならば、逮捕状の執行上発見したというのでよろしいが、それより一箇月以前に行方不明になつたということはどうしてわかりますか。それは尾行でもしたからわかつたのかどうか、こういうわけであります。
  63. 大橋武夫

    大橋国務大臣 行方不明という言葉の意味でございますが、これは追放者として監視をする、その監視者に対して行方不明であるという意味ではなく、六月四日に徳田球一が行方不明になつたということを申し上げましたる趣旨は、七月の十五日に逮捕状が出ましたが、その逮捕状を執行することはできませんでした。その後当局といたしましては逮捕状を執行いたしまするために、徳田の行方を捜索いたしておつたのであります。その捜索の過程におきまして、いろいろとそれ以前の行方を探索いたしておりましたるところ、六月四日に自宅を出たのちは杳として消息がない、こういうことが明らかになつた、かような意味でございます。
  64. 古島義英

    ○古島委員 おそらく逮捕状は刑事訟訴の百九十九條に基いての逮捕状だと思うのでありますが、もしそういう逮捕状であるならば、十五日に出して何日までが有効期間になつておりますか。
  65. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これは正規の期間になつておりまして、ただいまにおきましては期間を切りかえております。
  66. 古島義英

    ○古島委員 何回切りかえをいたしましたか。正規の期間というのならば、正規は正規で、わずかに三日か四日であろうと思うが、今日まで九十日も行方不明になつたとか、逮捕状を執行できなかつたというのであるが、今日まで何回切りかえたか。  重ねて一緒に聞いておきますが、そこで逮捕状をさようなときに出して、逮捕状を出した罪名は、おそらく団体等規正令に基く出頭義務違反だと思いますが、何日までに出て来いということを言つて、何日までに出て来なくんば、それは出頭義務違反ということになるのか、それともその期間後でも出頭せねばならぬという義務が継続しておるかどうか、この点はどうでありますか。
  67. 大橋武夫

    大橋国務大臣 出頭義務の期限は七月五日でございます。それから逮捕状の有効期間でございますが、これは一箇月ということになつておりまして、ただいままでに一回切りかえをいたしております。
  68. 古島義英

    ○古島委員 そうすれば、三十日後になつてももちろん出頭義務が継続しておるのでありますから、現に出頭義務違反をしておるということになりまして、その出頭義務違反をしている間は、これは刑事訴訟法の二百十二條ですか、この現行犯の規定に基いて、何人といえども逮捕できるのじやないか。出頭義務違反というのは、すでに既遂になつてしまつたのだから、今出頭義務がないというならばともかく、今でも出頭義務があるというならば、少くとも刑事訴訟法の二百十二條のあの現行犯になるわけである。そうして今でも出頭義務があるというならば、現行犯の続行中である。今現にその犯罪の続行中であるのだから、何人といえども逮捕ができるということに解釈できると思うが、どうですか。
  69. 大橋武夫

    大橋国務大臣 当局といたしましては、現行犯として逮捕することは困難である、かような見解を持つております。なおその理由につきましては、刑政長官からさらに申し上げます。
  70. 古島義英

    ○古島委員 私は困難なり、安易なりということを聞いておるのじやありません。非常に困難であるから、今日逮捕ができないのだろうが、今でも出頭義務違反を継続しておる以上は、現行犯と見てよろしいのではないか。もし現行犯と見てよろしいというならば、われわれがかりにそれを発見いたすならば、われわれにも逮捕することができるのだと思うが、現行犯と思うか、もう現行犯ではないという考えで取扱つておるかどうか、これを伺いたい。
  71. 大橋武夫

    大橋国務大臣 当局としては、現行犯ではないという考えを持つておるわけであります。
  72. 古島義英

    ○古島委員 私は総裁に対しては、まだ多数の質問があるのでありますが、この際総裁はこの二時三十分にお帰りになつたならば、いつこの委員会に出て来ますか、その点は委員長からよく言うて、もう少し時間を余裕を持つて出席を願いたいと思います。これで終ります。
  73. 安部俊吾

    安部委員長 古島委員の申出は了承いたしました。世耕弘一君。
  74. 世耕弘一

    世耕委員 時間がないそうですから、私は簡單に二、三点お尋ねいたします。結論だけお尋ねいたします。徳田君以下九名の逮捕がどうしてできないのか、その理由について……。
  75. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この逮捕が今日までできておらない理由につきましては、私どもはいろいろ研究をいたしましたる結果、まず人員の不足、それから機動力が足りない。もう一つは捜査に当る人たち捜査技術が不十分である。かようなことが主たる理由であると、こういう結論に到達いたしております。
  76. 世耕弘一

    世耕委員 さような欠点があれば、それに対して拡充する方法をその後おとりになつたかどうか、その点はいかがでございますか。
  77. 大橋武夫

    大橋国務大臣 これらの捜査上の隘路につきましては、目下鋭意その改善をはかつております。
  78. 世耕弘一

    世耕委員 この有名なる徳田君や野坂君が、追放にかけたら地下にもぐるんじやないかというような予感を持つておられませんでしたか。それとも後日逮捕状を出したら安易に逮捕できるというようなお見込みであつたかどうか、事前においてその点はどうでございますか。見込み違いでございましたか、それとも何か手違いがあつたか。
  79. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この点はまことに見込違いであつたわけであります。私どももまことに残念に存じておる次第であります。
  80. 世耕弘一

    世耕委員 共産党の諸君はなかなか敏活なんだから、こういう点はよほど捜査当局において緻密な活動をなされないと、ちよつとつかまらないのではないかと思います。ことに逮捕状が出たから、よけいなおもぐつてしまつたのだろうから、この際むしろ逮捕状を解いてやれば、出て来はせぬかとも考えられる。第一、天下政治家とみずから任ずる徳田君、野坂君のごときが、私はもぐるという言葉は使いたくないのだが、世間では地下にもぐつたなどという、まことに不吉な言葉を用いている。なろうことならば、この際堂々と名乗つて出て、自分はかくのごとき意味においてしばらく休養をしていたと、出て来て欲しい。そういう機会を法務総裁はむしろ與えてやるべきじやないか。この点はどうですか。だからしばらく逮捕状を控えて、出る機会を待つというようなことも、これも大乗的見地からの共産党対策じやないかと思う。  それからもう一つ、新聞にすでに報道されておりましたが、確実な情報提供者に対して、十万円の懸賞金を與えると出ておりましたが、あれはうそですか、事実ですか。
  81. 大橋武夫

    大橋国務大臣 世耕委員のおつしやいました、逮捕状を取消したならば、これらの者が出て来はしないか、この点につきましては私どもはさように考えておりません。もう一つ、特に逮捕状の取消しが困難であります理由は、逮捕状が出ておりますから、司法警察官としてはこの逮捕状を執行するために、鋭意捜査をいたしておるわけであります。この逮捕状が出ておることが、国警、自治警を通じて捜査活動を促進をいたしておる。かように私ども考えております。  それから懸賞金でございますが、さようなことは当局といたしましては、ただいままでに考えたことはございません。
  82. 世耕弘一

    世耕委員 それから問題になつている日共の幹部諸君の追放された人たちが逃亡した理由は、どういうところにあるか、どこに根拠があるかということを御研究になりましたか。
  83. 大橋武夫

    大橋国務大臣 九名の潜行いたしました動機目的は、何であるかということは、これは捜査の方法と密接な関係を持つ問題でございまするので、当局におきましてはこの点も引続き研究をいたしておる次第であります。
  84. 世耕弘一

    世耕委員 研究されていると言うけれども、二箇月以上たつているので、もう結論が出ていいと思うのです。これは非常に大切なことではないかと思います。何ゆえに彼らが逃亡しておるか、逃亡による利益、逃亡による損失等を比較対照してみなくちやならぬと私は思う。この根本的な捜査方針並びにその根本をつかまなければ、いかに警察官をふやしても、検事の方々活動しても意味をなさぬのではないか。これがもし調査研究中であるとするならば、すみやかに御善処願いたい。それからこの捜査に当つて、これまでにどれくらい費用をお使いになりましたか。
  85. 大橋武夫

    大橋国務大臣 政府当局は経営費として頂戴いたしてありまする予算によつて捜査をいたしております。特にこの事件のために相当な費用が用いられておると考えておりまするが、ただいままで計算をいたしたことはございません。
  86. 世耕弘一

    世耕委員 捜査責任者はどなたでございますか。
  87. 大橋武夫

    大橋国務大臣 この問題につきましては、国警及び自治警がそれぞれ管轄区域内において捜査をいたしておるわけであります。このほか法務府の特別審査局におきましても、並行的に調査をいたしております。こういう建前に相なつております。
  88. 世耕弘一

    世耕委員 その点に関しまして重ねてお尋ねいたしますが、いわゆる総指揮者、総責任者は法務総裁と思つてさしつかえございませんか。
  89. 大橋武夫

    大橋国務大臣 実際上は私が中心になつて連絡をとりつつやつておるようなわけであります。
  90. 安部俊吾

    安部委員長 世耕委員に御相談申し上げます。約束の時間が参りましたが……。
  91. 世耕弘一

    世耕委員 私は三十分與えられておるのですが……。
  92. 安部俊吾

    安部委員長 大橋総裁に対する質問の点は……。
  93. 世耕弘一

    世耕委員 ではもう一点だけ、団体等規正令第十三條によりますと、「左に掲げる者は、十年以下の懲役又は禁錮に処する。但し、情状により、七万五千円以下の罰金に処することができる。」と書いてあるのですが、徳田、野坂君はこういう重い処刑を受けるような容疑になるのでございますか。
  94. 大橋武夫

    大橋国務大臣 その通りでございます。
  95. 安部俊吾

    安部委員長 ほかに政府委員への御質問がありますれば、継続してよろしゆうございます。
  96. 世耕弘一

    世耕委員 委員長にお尋ねします。追放関係してなお二、三点重要な点をお尋ねいたしたいと思うのでありますが、関係当局の御出席はございますか。
  97. 安部俊吾

    安部委員長 ございます。
  98. 世耕弘一

    世耕委員 追放に関してなおお尋ねいたしたい。追放解除の問題が最近発表されるごとく世間に伝えられておるので、この機会にその経過等に関して御報告が願えたらお伺いいたしたいと思います。
  99. 安部俊吾

    安部委員長 世耕委員に御相談します。法務府におきましては、追放解除に関する権限がないそうであります。従つてその質問については答え得ないと思います。
  100. 世耕弘一

    世耕委員 刑政関係について、特に刑務所関係の所管の長官はおいででございますか。
  101. 安部俊吾

    安部委員長 刑政長官がお見えになつております。
  102. 世耕弘一

    世耕委員 緊急なことをお願いしたりお尋ねしたりしたいと思います。実は関西地方の風水害のために視察に参りましたが、特に和歌山市近郊にあります刑務所が倒壊して、あそこの工場に收容されている女囚五百名ばかりの者が満足な作業につけないような状態なつております。それに対して何か急な対策をなさつておられるかどうか。私どもの見込みでは復旧に千四百万円かかるではないかと考えましたことと、それから刑務所内の服役者の頭の上に雨漏りしているというような状況を刑務所で見受けられたので、行刑上将来いろいろな点に支障を来しはしないかと思います。つきましては、至急に対策をとられる必要があるではないかと思いますので、この点についてちよつと御意見を伺つておきたいと思います。
  103. 草鹿淺之介

    ○草鹿説明員 先般の風水害によりまして、そういつたような刑務所が方々に出ております。そのことにつきましては、現在刑政当局法務府の営繕関係と協力いたしまして、大至急実情を調査してこの対策を考えるようにしております。詳細な報告はまだ参つておりませんが、現地に人を出して応急の調査をやらしております。
  104. 世耕弘一

    世耕委員 これは緊急を要すると思います。コンクリートの廊下で作業をしているというようなありさまでありまして、特に雨漏りがしてはなはだしいというのや、その他の点において行刑上支障あるやに私は見受けて参りました。臨時対策費等も政府要求なされて、善処されんことを特に要望いたします。
  105. 安部俊吾

    安部委員長 林百郎君
  106. 林百郎

    ○林(百)委員 私は日本共産党の幹部の追放の問題について、実は質問したい点が四点ほどありました。これは政府責任と、政府の所信について私は尋ねたいと思つていたのでありますが、それにはやはり国務大臣としての大橋法務総裁に聞かなくては、責任のある回答が得られないので、私としては法務総裁が来る次の機会まで譲ることにいたします。  もう一つの問題が実はありますので、これは專門員の方へも要求しておいたのでありますが、実は労働省で職業安定所の失業者の諸君を全国的に募集しまして、日雇労働者を朝鮮の事変の軍夫として使つておるのであります。この点について募集されて来た人たちに全然そういうことを知らなくて、応募して来ておる。横浜に来ると、とたんにお前たちは朝鮮に行くのだということで、大分問題が起きて来ておるのであります。たとえばここにはがきが一つ来ておるのでありますが、こういうように書いてあります。「父上は五日の日に船にて朝鮮へ行きますから、家のことは頼んでおきますよ。二月目には帰りますから、子供たちのせわ、家のことは頼んだ。折田君にも頼む。月の金は前借りできれば借りて送ります。できなければよろしく頼む。折田君にもよくいつて、金をつくつてもらいなさい。やりくりをうまくやつて行かないとできませんよ。父のことは心配ない。」といつて急に朝鮮に行くことになつた父親が、子供に横浜の船より出すというはがきが来ておるのであります。あたかも召集令状が来て、急に外地へ出征するときと同じような状態が出て来ておるのであります。この問題について、私は法務総裁に占領政策の問題と国連軍の――朝鮮事変に関する日本人の協力の問題について、この両者の関係をただしたいと思つたのであります。これも法務総裁がいないことにはどうにもしかたがないと思います。なお職安関係当局責任者にきようここへ来てもらうことになつておりますが、もしその人がお出でになればその人にとりあえず質問したいと思いますけれども、その人が見えないことにはどうにも私の質問はできませんので、しばらく保留いたします。
  107. 安部俊吾

    安部委員長 了承いたしました。
  108. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私は先ほど法務総裁に対する質問はいたしましたので、今度は先ほど法務総裁にいたしました質問に関連をいたしまして、御出席なつておりますところの国警長官、並びに警視総監にお尋ねをいたしたいと思います。先ほど私が法務総裁にお尋ねをいたしました捜査当局機構不備という点でございますが、この点に対しましては、国警長官警視総監はいかようなお考えをお持ちでございましようか。具体的に申し上げますと、捜査が二重になつておるという点であります。
  109. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいまお尋ねの捜査機構として現在の機構はどうであるか、また捜査が二重になつたりあるいは両方ともやらなかつたりというようなことがないかというお尋ねだと思うのであります。新しい警察法施行後、これが捜査面における状況はすでに御承知の通りだと思うのでございます。捜査面自身から申しまするならば、以前のような統一的な機構が最も望ましいことはもちろんでございます。今日二千に上る自治体警察ができ、また国家地方警察が別個の系統であるわけであります。従いまして、捜査面における苦労の点は、従前の比でないことはもちろんであります。しかしながら現行法のもとにおきまして、ただいま御指摘になりましたような捜査の重複、あるいは消極的な調査というような面におきましては、できるだけ連絡を密にいたしまして、ことに本件の調査の問題等につきましても、特別の連絡の方法をとりまして、そういうことのないように全力を注いでおるような次第であります。
  110. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 これも先ほど法務総裁にお尋ねいたしたのでありますが、今後の共産党活動というものは、交接点というようなものを中心にして行われるといううわさ、そして報道、これらは現在までの三鷹、平、高萩炭鉱等の実情と照し合せまして、真実性を持つものというように考えまして、私たちはこの交接点の共産党活動というものを重視するものであります。この点に対しましてやはり不備があつては――機構の連絡の不備、重複、また消極的な協力というような面がありましては、非常に遺憾の状態が今後招来されるおそれがあると思うのでございますが、これに対しましていかようなお考えをお持ちになり、またいかような対策を御考慮されておるか、ひとつ承りたいと思います。
  111. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ただいま指摘せられましたような事柄を、われわれの方もうわさとして聞くのであります。われわれの方といたしましては、従つてさような交接点というようなところにおける捜査あるいは警備の盲点のないように十分注意をいたしておる次第であります。
  112. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今の交接点のことでありますが、うわさということを中心にいたしまして、国警当局におきましては、これらを調査したことがあるか、この点をできればお答えを願いたいと思います。
  113. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 ことさら調査をいたしませんでも、そういうような報道は私の方から十分調べておりますので、それらの面における警戒を怠らない次第であります。
  114. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 次にこれも法務総裁にお尋ねをいたした点でありますが、警察機構内部共産党と意見を通ずる分子、または共産党分子がおつて、事前にその活動の秘密を漏らすというようなことが、われわれには事実として考えられるのであります。この点に対しましては、国警といたしまして、また御出席警視総監といたしまして、思想の立場からでございますが、いかようにお考えなつておるでしようか。
  115. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 国家地方警察内部におきましては、捜査その他の秘密の事項を、特に故意に一党一派の者に漏らしたり、あるいは部内の秩序を乱したりするような団体員というような者は、現在ないと確信をいたしております。しかしながら、いつどうしてそういう者ができるか、これはできないということを保障しがたいので、われわれ絶えずそういう点には細心の注意を拂いまして、そういう事実行為を行つた者は、確認できればただちに処分をいたす所存であります。
  116. 林百郎

    ○林(百)委員 議事進行について。私たちは先ほどから実は注意申し上げているのですが、自由党の田嶋委員そのほかの政府委員答弁の中にも、赤色分子という言葉があります。われわれの通例の観念から言いまして、分子という言葉は、一種特別なグループ、あるいは人種を指して言う一種特異な言い方だろうと思うのです。ところが宗教あるいは信教の自由、思想及び良心の自由はこれは侵してはならないということが憲法の十九條にあります。またポツダム宣言には、明らかに宗教、思想の自由並びに基本的人権の尊重は確立せらるべしとあります。公務員あるいは政府の職員の中に、共産主義を信奉する者があつても、それは何らの違法性はない。それが職務規律に違反して来るとか、あるいは現行法律を侵すということになれば別問題でありますが、その人の持つている信教の自由は絶対に侵してはならないと思います。ところが先ほどからの質問を聞いていますと、共産主義者に対して、赤色分子という言葉をもつて一種特別な扱い方をしております。そういうことは明らかに国会の中で使うべき言葉ではないと思いますが、今後そういう言葉は愼んでもらいたい。あたかも犯罪人か、あるいは特別な人種を指すような言葉を使つておりますから、委員長からもよくこの点は注意していただきたいと思います。
  117. 安部俊吾

    安部委員長 委員長から申し上げます。速記録を見まして、もし不穏当な言葉があればこれを是正することを申し上げます。
  118. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 今の点に対しまして警視総監からお答えを願いたい。
  119. 田中榮一

    田中参考人 田嶋委員の御質問に対しまして、私から警視庁に関する点につきましてのみお答えを申し上げたいと思います。警察官の中に、共産党的な思想を持ち、またそれがためにことさら警察官としての職務執行をゆがめるというような者があつたか、あるいはまた警察内部におきまする秘密を他へ漏洩する者があるかどうかというような御杞憂のようでございまするが、終戰直後におきましては、警察機構そのものがいまだ十分に確立をいたしておりません。また国家の前途に対しましても、十分なる警察官としての信念を持ち得なかつた者も若干ありまして、思想的にも相当動揺いたした者があつたやに聞いているのでありますが、その後警察機構も確立をいたしまして、警察官としての信念も完全に強固になつて参りまして以来、警察官としての本分を十分に認識いたしまして、ただいまは、そうしたことに何らかかわらず、專心警察の使命達成に努力をいたしておるのであります。ただやはり思想は自由でありますので、いささかかかる傾向に対して興味を持つという者があるかも存じません。しかしそれがありましたからといつて、ただちに警察の基礎を危うくするというような者は絶対ないのであります。またかかる者に対しましては、十分に指導をいたしまして、警察の本然に復帰して、その職務遂行に万全を期するように、鋭意努力をいたしておりまするので、警察の将来に対しましては、絶対にかかる杞憂はないものと考えております。ただ外部より、いわゆる親警運動と称しまして、いろいろ警察官の思想に対しまして、誘惑する者も相当あるのでありまするが、この点につきましては、十分に警察官自身の教養を徹底し、またみずからの本分を認識させまして、かかる点につきましては十分に防止いたしたい、かように考えている次第であります。
  120. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 もう一度重ねて国警長官にお尋ねいたしたいのでありますが、国警長官の今のお言葉では、何だか抽象的でわからないお答えでありました。一体国警といたしまして、国警の内部共産党員のあること、そうした活動的な人間のあることを御調査したことがありましようか。その結果による今のお言葉でありましようか。この点を承りたい。
  121. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 私の方といたしましては、規律保持の観点からいたしまして、さような機密を漏洩したり、あるいは規律に違反したりする者の有無は、常時嚴重に調査をいたしておる次第であります。
  122. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 私は国警長官警視総監の二人にお尋ねをいたすのでありますが、新聞紙上の報道を見ますと、警察内部に中央グループというようなものが存在し、また官庁内部警察内部に火曜会というようなものが存在いたし、今申し上げましたような共産党活動を続けておるというようなことが報道されておるのでありますが、これらの点に対して御調査をされたことがありましようか、お尋ねをいたします。
  123. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 国家地方警察といたしましては、われわれの内部の規律の問題としまして、さようなうわさをよく聞くのであります。従いまして、さような火曜会でありまするとか、あるいは何グループでありますとかいうようなものが、はたして存在するものかどうか、われわれの内部にあるのかどうかは調査をいたしておるのでありますが、われわれの内部におきましては、さようなことは確認をいたしておりません。
  124. 田中榮一

    田中参考人 ただいま齋藤国警長官からお答え申したのと同じ趣旨でございまするが、最近中央グループもしくは官庁グループ、火曜会、いろいろな会が新聞紙上にはなやかに報道されているのでありますが、私たちの見方といたしましては、あるいは多少宣伝的にそうした事実が取扱われているのではないかと思うこともあるのでありますが、実際問題といたしまして、警視庁内部におきましても、嚴重に調査をいたしました結果、かかるグループの者は全然おりません。ただあるいはもしかりにこうしたグループがあるといたしましたならば、また警察官がそれに関係しておるということになりまするならば、それはかつて警視庁もしくは他の警察、国警その他に就職をしておつた者で、退職をいたしまして、その後その方面に興味を持つてもつぱら一身を奉じて、その方面に活躍をしておる者があるいは関係しておつたのではないかということも一応考えられるのでありますが、現職の警察官としてはかかるグループには全然関係しておりません。
  125. 田嶋好文

    田嶋(好)委員 最後にやはり国警長官警視総監にお尋ねをいたしたいのでありますが、現在までに国警の内部において、警視庁の内部において、共産党員と確認されて追放された者があるかないか、あるとすれば幾人くらいそういうことになつておるか、これをお尋ねいたします。
  126. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 全国の国警を通じまして、私は正確な数字は記憶いたしておりませんが、先ほどから申しますような意味におきまして、規律に違反をしたり、あるいは機密を漏洩したということによつて退職せしめました者は数十名に上つておると考えております。
  127. 田中榮一

    田中参考人 警視庁関係といたしましては、共産党員理由をもつて解職したというのはございません。ただ勤務を乱し、あるいは規律を乱しまして、警察官として不適格者である、あるいは警察官として将来職務を忠実に執行するの可能性なしと認定した者は、諭旨解職をいたしておるのでありますが、あるいはみずから願い出て退職をいたしておる者もございます。それが退職してから正式に党に入党したというものも若干あるやにも聞いておりまするが、ただいま数字の点についてははつきり記憶がございませんのでちよつとこの際御答弁できかねます。
  128. 林百郎

    ○林(百)委員 私は事務的なことだけを吉河特審局長と齋藤国警長官並びに田中警視総監に聞きたいと思います。それは最近の共産党員に対する検察当局並びに警察当局の態度でありますが、明らかにこれはかつての秘密警察の復活を間違いないと思わせる行動が非常に多いのであります。これは対日政策にも、日本政府は陸軍、海軍、空軍秘密警察組織または民間航空または憲兵を保持してはならないということは、降伏後の対日基本政策の第三政治関係に明らかに規定してあるところであります。ところが最近共産党員に対する警察の態度あるいは特審局の態度については、まつたく目に余るものがあるのであります。現にわれわれ国会議員に対しましても地方へ帰りますと必ず家庭には警察官が尋ねて来る、これは御高見を承りたいという名目のもとで毎日尋ねて来る。そう毎日御高見を承らなくてもいいと思うのですが、こういう名目で尋ねて来る。それにしても、われわれ国会議員に対しては、ある程度儀礼を盡して来るのでありますが、しかし一般の党員諸君に対してはどういう形でこの取調べが行われておるかというと、第一には不当尋問、これは窃盗の容疑がある、お前の顔つきは窃盗の顔つきをしているからちよつと来てくれというわけで、持物を全部検査する。その中にたとえば民主日本そのほかの進歩的な出版物やいろいろあるとそれを取上げる。それから不当尾行をつける。婦人に対してのごときは、明らかに軽犯罪になるような尾行の方法をしてなかなか離れない。それから不当逮捕、これは窃盗の容疑という形で逮捕します。こちらの方から、一体窃盗の容疑だと言いますが、何をとられた窃盗の容疑ですかと聞くと、薄笑いをしながら、そんなことはおわかりでしよう。あなたはどこに勤め、どうしているかひとつ証明書を書いてもらいたい、また持つている物をぜひ見せてもらいたいというような形で、いわゆる破廉恥的た犯罪容疑者として尋問、逮捕しておるのであります。また家宅侵入に対しましても、たとえばある共産党員に対しては、塀を乗り越えて来まして、庭に新聞紙を敷いて一日中警察官がすわり込んでいる。うるさいから出て行つてくれと言うと出て行く。またしばらくたつと塀を乗り越えて来て新聞紙を敷いてすわり込む。上の電柱に上つて写真をとる。夜中に忍び込んで来て窓からのぞき込んでいる。隣の家を一室借り切つてそこへ入り込んで行つて、もう二六時中監視をしている。これは明らかに基本的人権の侵害だと思う。われわれの居住と生活の安定を侵していると思う。一体こういう根拠がどこにあるのか。まだわれわれ共産党解散も命ぜられていない。非合法の存在にもなつておらない。信教の自由は十分保障されております。それにもかかわらずわれわれはなぜ共産党員なるがゆえにこうして非行が加えられ、われわれの家宅には毎日警察官が訪れて来、電柱から写真をとられ、夜中に忍び込んでのぞかれなければならないか。これは明らかに秘密警察だと思う。特審局のこうした共産党員に対する態度に対してどういう考えを持つておるか。もし秘密警察的な行動特審局がとるとすれば、解散を命ぜられなければならないのはまず特審局だというようにわれわれは考えます。これに対して吉河特審局長はどう考えられるか。また齋藤国警長官、並びに田中警視総官もこうした態度に対してどう考えられるかということをお聞きしたいと思うのであります。
  129. 吉河光貞

    ○吉河説明員 事務当局でありますけれども、私から特審につきまして簡單にお答えいたします。御承知でもございましようが、団体等規正令第一條第二項におきましては、この政令を運用するにあたりましては、政令に定められた目的、行為に反する場合を除いては、基本的人権を尊重しなければならぬというように規定せられておるのであります。私どもは平素部下の調査員を指導いたします際にも、必ずこの信條に基いて調査指導をいたしておる次第であります。いまだかつて質問のような秘密警察的な行動をとらしめるような指導をした覚えはないのであります。また数ある職員の中でありますから、調査技術の未熟のために思わぬ失態を演ずる場合もなきにしもあらずと思われるのであります。どうぞ遠慮なく御指摘を願いまして、改善、指導して行きたいと考えるわけであります。
  130. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 国家地方警察におきましても、ただいま特審局長から答弁をしたところと同様であります。われわれは決して秘密警察を持つてはおりません。警察の職務に従事しておりまする者は、すべてその姓名なりこれを全部明らかにいたしております。ゲー・ペー・ウーのやるようなやり方は絶対にいたしておりません。張り込みとかあるいは尾行は、これは犯罪容疑のありまする場合には、普通刑事犯におきましても、やつておるのであります、そのやり方が程度を過ぎれば人権蹂躙になるおそれのあることは御指摘通りでありますが、さようなことのないように十分注意をしながらいたしておるのであります。張込みや尾行そのものは、これは犯罪捜査手段として私は許されるべきものと考えております。
  131. 田中榮一

    田中参考人 ただいまのことにつきましては、特審局長並びに齋藤国警長官からお答えいたしましたことと大体同様の趣旨であります。
  132. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、もしこういう事実があるとするならば、将来特審局長並びに国警長官田中総監もその部下に対しては、たとえば涜職とかその他の該当事項によつて嚴重なる処罰をされるかどうか、それをお聞きしておきたいと思います。
  133. 斎藤昇

    ○斎藤説明員 もしこれが警察官の職務を濫用しておる、あるいは人権蹂躙になるということであれば、それぞれ警察官といえども訴追を受けることだと思います。
  134. 林百郎

    ○林(百)委員 吉河特審局長にお尋ねいたしたいのでありますが、そうするとあなたの話に先ほどあつたように、特審局としては共産党員に対する特別な調査監視、そうした方針はとらないのか。もちろん追放あるいはその他の者に対する団体等規正令による処置ということは別として、一般の共産党員あるいは共産主義者、こういう者に対する特別な特審局監視あるいは調査、あるいは尋問、尾行、逮捕というような方針はとらないというように解釈してよいですか。
  135. 吉河光貞

    ○吉河説明員 御質問の点につきましては、従来法務総裁からも、私からもしばしば申し上げておる通りであります。まことに御指摘通りであります。簡單でありますが、これをもつてお答えといたします。
  136. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、現にたとえばわれわれ国会議員に対してすら、特別な警察官が毎日訪問して来るというようなことは、将来そういうことのないように、指示なり適当な処置を講ぜられますか。
  137. 吉河光貞

    ○吉河説明員 特別審査局調査班がそうのべつ幕なしに林さんの身辺につきまとつて、いろいろの質問をしておりますか、おそらくそうではないのじやないかと思いますが……。
  138. 林百郎

    ○林(百)委員 明らかに特審局関係を持つた警察官が、毎日来るわけです。あるとすれば、そういう処置はしないのですか。
  139. 吉河光貞

    ○吉河説明員 具体的によく事実をお申出を願いまして、指導改善したいと思つております。
  140. 猪俣浩三

    猪俣委員 特審局長ちよつとお尋ねいたしたいのであります。先ほども法務総裁ちよつとお尋ねしたのでありますが、日発事件その他につきまして、必ず名前の出て来る三浦義一という人物がおります。日発の電力編成問題などというものは、大きな政治問題であります。かようなことにつきまして、黒幕的な存在として活動するというようなことは、追放者としてはやるまじきことでありますが、さつき法務総裁捜査をした、調査した、こう言うのでありますが、その調査はいつなされ、どういう結果が生れておりますか。御報告願いたいと思うのであります。
  141. 吉河光貞

    ○吉河説明員 三浦義一と申す追放者につきましては、昨今の問題ではございませんので、よほど前からその動向につきましては、いろいろうわさが飛んでおりましたので、注意して参つておるのであります。特に昨年来ある新聞の買收問題などにからみまして、いろいろ暗躍したとかいうようなことが雑誌や新聞などにも伝えられまして、その他種々なるうわさが出ております。私どもといたしましては、かような追放者の動きに対しまして、ことにそういううわさに対しましては、非常な関心をもちまして、これらの情報について具体的に調査検討をしたのであります。現在までのところ何らの確証を得るに至つてはいないのであります。なお御質問でもありましたが、日発の問題に三浦義一なる人物が介入しておるというようなうわさが昨今新聞紙上その他ににぎにぎしく論ぜられておるのであります。もとよりそういううわさの中に追放者が現われるということにつきましては非常な関心を拂つて、そういう情報の出所、虚実等について非常な関心を持つておる程度でありまして、何らまだ具体的な調査の段階には至つていないのであります。御了承願いたいのであります。
  142. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお日発問題にからみまして、われわれの調査したところによりますれば、いわゆる電力編成委員長であります松永安左衛門をとりかこみまして、いわゆる松永機関及び番町会というものが活動したということを聞いておるのでありますが、その中には幾多追放関係者がある。小林一三あるいは永野護というような人物の名前も上つておるのでありますが、この小林一三、永野護、あるいは前田米藏、大麻唯男、こういうような人たちについての政治活動禁止に関する問題につきまして御調査なさつたかどうか、なさつたとすればその結果の御報告を願いたい。
  143. 吉河光貞

    ○吉河説明員 ただいま申しました通り、これらの人物につきましても、目下各般の情報を鋭意收集中でございます。しかしながら御報告申し上げるような段階に至つておりません。
  144. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお戰時中の参謀をやつたと称します辻政信という元陸軍大佐でありますが、「潜行三千里」という本を書いてベスト・セラーになつたということであります。今から一週間ほど前に新潟県下におきまして、最も刊行部数の多い新潟日報のトツプ記事に、この人物が朝鮮事変の起る前に新潟にやつて来て、陸軍士官学校の卒業生を集めて何か一大相談会を催した。そうして今こそわれらの立つべきときが来たとか、あるいは共産党撲滅に結合しなければならぬとかいうような相談をやつておるというようなことが、やはり士官学校卒業生の一人で出席を慫慂されたる県庁の職員から漏れたということが新聞記事に出ておりますが、かような点について特審局に情報が入つておるか、入つたとすればそれに対していかなる調査をしたか、御報告願います。
  145. 吉河光貞

    ○吉河説明員 辻政信氏につきましては、昨年来から同氏が所在不明のまま、先般の議会中も猪俣委員から御質問がありました根本博元中将らの台湾渡航問題に関係しておるやのうわさもありまして、鋭意当局において調査したところが、その所在も発見いたしました。本年四月十五日追放者として正式の届出を完了いたしました。台湾渡航問題につきまして詳細調査したところ、辻氏はまつたくこれに関係ないという事実が判明したのであります。現在同氏は軍参謀であつた時代の体験記として「潜行三千里」「ノモンハン」「ガダルカナル」「十五対一」などの書物を執筆して、その印税によつて生活しておるというように聞いておるのでありますが、同氏の動向については十分注意しております。  ただいま御質問になりました新潟日報の檄の情報につきましても、目下調査中でありまして、まだ結果につきまして御報告する段階に至つておりません。
  146. 猪俣浩三

    猪俣委員 この辻政信なんという人物がいろいろな本を書いている。ばかばかしいから私は読みませんが、これが相当売れておる。読みませんが改造の五月号に「流転」という寄稿が載つておる。「我等の人生観」という副題であります。ところが改造の編集局はこれを全部載つけることができなくて、その所々を載つけておる。その所々載つけるようなことをやるこの改造の頭も疑うのでありますが、この全文を見ました戒能通孝という早稲田の教授だと思いますが、この人が「恐るべき子供達」「流転を読みて」という感想文を出しておる。これなどは日本の思想あるいは政治の動向に対して、かれが指導者的な顔をして述べているまつたくのフアツシヨ思想そのもので、恐るべきフアツシヨ思想であります。そうして述べてある文句なるものが実に驚くべきもので、東條内閣時代の思想そのものを現在まだ持つておる。こういう人物が一体新潟に現われたり、どこかに現われたりしまして、士官学校の生徒なんかであつた者を集めて何か話合うなどということは、私は危險千万だと思う。こういうことに対しては十二分なる御注意を願いたいと思うのでありますが、何だか野放しにしておるようにわれわれには見える。法務総裁質問すると、どこにいるのだかわからないような答弁をしているのに、本はどんどん出ておる。雑誌には論文が出る。そんなばかげたことはないと思う。今共産党の諸君はもぐつておるが、なかなか徳田球一の本などは出ないだろうと思う。かように私はどうも野放しにしているのではないかと思う。われわれの耳に入りますものは、田舎におきましてのささやかな寒村、ここにおきましていわゆる翼賛壯年団の何か支部長をしておつたとか何とかいうようなことで、一齊にみな追放なつた人間、この人間どもが農地委員会の選挙のときにちよつと顔を出したとか、学校の村民大会のときに反対の意見を述べたということで、みんなひつくくられ、そうして宮城県下におきまするところの宮城県名取郡玉浦村の櫻井清一郎という人物、これは農民組合に入つておる農民であります。これがあまり高い学校の経費であるので、村民大会で反対だと言つたときに、ただちに――これは翼賛壯年団か何かに関係して追放なんでありますが、追放令違反として検挙せられ、懲役六箇月に処せられて、とうとう服役をさせられた。なお新潟県南蒲原郡新潟村の三本勇藏、これも農民組合の耕作農民であります。これも何か壯年団だか何かに関係したということで追放の身である。これが農地委員会の選挙のときに、その字のみんなが集まつて寄合いのところへ顔を出したということだけで検挙せられて、これが今起訴せられて裁判中である。かようなささやかなる事件に対してはなはだ峻嚴にやつておる。これも私はやむを得ないかと考えるのでありますが、しかるにかかわらず今私が申し上げましたる天下を動かすようなこういう辻政信とか、なおまた経済界に蟠居いたしまして、そうして電力編成問題というような天下の大政治問題に容喙いたしておりまする連中に対しましては、はなはだぼくは特審局のやり方が緩慢すぎると思う。それがために幾多の弊害を起しておる。そうして民主化された日本におきましても、まだ何かフアツシヨ的な反動団体というものが存在しておつて、それが政治界にも影響する。こういうようなことは実に民主化のために私は大なる弊害があると思う。まさに特審局が設けられたのはこういう調査をすることが眼目なんです。ところがどうも近ごろの特審局活動というものはけたがはずれているのじやないか。なお本朝の毎日新聞を見ますると、密貿易の背後には元海軍大将であつた小林省三郎、それから励志社の社長である川口忠篤、こういうものがひそんでおる。これの背後にはなお野坂さんがあるのじやないかというような新聞が出ておる。こういう大物につきまして、私に特番局の調査が手ぬるいと思う、三浦義一氏のごときに至りましては天下公知の人物でありまして、追放該当者として大胆きわまる政治活動をやつておるのじやないかと思われるにかかわらず、今日に至るまでこれに対しまして何らの手を下していないというようなことは、何らかの政治権力によつて押えられているのであるか、その事実がないと特審局は言うのであるか、確たる御答弁を伺いたい。
  147. 吉河光貞

    ○吉河説明員 いらいろ御鞭撻を賜わりまして、鋭意追放者の悪質なる違反につきましては、調査する方針でございます。またただいま御質問に現われました小林省三郎氏の動靜につきまして、同氏は元海軍中将でありましたために追放なつているのであります。鎌倉市雪ノ下五百八十一番地において余生を送られておる。最近同氏をめぐつて、台湾募兵問題に関連した密航船のバツクになつたのではないかというような情報が飛んでおるのでありますが、これらの点につきまして調査の結果、現在のところ小林氏がこれに積極的に關與したという事実は認められないのであります。私どもとしましては、これらの著名な追放者方々につきましては、その動靜を逐一監視するように及ばずながら努力している次第でございます。
  148. 猪俣浩三

    猪俣委員 人に尾行するというようなことは私も不賛成であります。しかしもし左の方にさようなことをなさるならば、右の方にもやつてもらいたい。右左ともやつてもらわないと不平等だと思う。辻政信は聞くところによれば今朝鮮へ行つているというような話をする者もある。かような形勢があるのかないのか。さようなことに対して特審局調査しておるかどうか御答弁願いたいと思います。
  149. 吉河光貞

    ○吉河説明員 実は尾行監視はすでに終戰前から一般の悪質なパージ違反方々につきましては、励行しております。また辻氏が朝鮮に行つたとの点につきましての御質問でありますが、当局といたしましては、さような事実は全然確認しておりません。
  150. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお最後に今年の六月二十日前後に三浦義一氏の政治活動問題に対して自由党の本部を調査なされたことがあるかないか、ちよつとお伺いしたいと思います。
  151. 吉河光貞

    ○吉河説明員 御質問の点につきましては、まだ報告を聞いておりません。さらに詳細に調べて申し上げます。
  152. 猪俣浩三

    猪俣委員 特審局とあるいは国警本部、あるいは自治体警察が知らぬかと言つて、自由党本部を調査したことがあるのかないのか。報告を聞いている、聞いていないの問題ではない。したことがあるのかないのか御答弁願いたい。
  153. 吉河光貞

    ○吉河説明員 特審局員が自由党本部に行つて調査したという報告をまだ聞いておりません。
  154. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすれば、局長としては、さような調査を命じたことはないわけですか。
  155. 吉河光貞

    ○吉河説明員 御質問通りであります。なお調査班がさような御質問のような行動をしたかということについては、よく調査して後日お答えいたします。
  156. 安部俊吾

    安部委員長 特別調達庁官房長並びに労務管財部次長、労働市場調査課長並びに同課員が見えておられます。  先ほどより林百郎君より朝鮮事変に際して日本人が軍夫に就役するという問題に関して発言を求められております。これを許します。
  157. 林百郎

    ○林(百)委員 これは非常にわれわれ日本人にとつて重大な問題だと思います。事は職安の労務者に関係する問題でありまするが、これが発展して行きますると、国際的な問題になつて、日本の国が朝鮮事変に関連を持つということまで発展する国家的な問題に及ぼす事態だと考えますので、私は本日次のごとき質問をするのでありますが、実は職業安定所で募集された労務者を、朝鮮事変の船乗りあるいは軍夫として用いられている事実があるということでありますが、そのことについてのまず報告をお聞きしたいと思います。
  158. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 私たち職業安定局といたしましては、一応現在の軍の要求といたしまして、LRと称しますレーバー・レクイジイツシヨン、これは労務要求書ということでありますが、これは占領軍が進駐いたしました当時から、その要求に基きまして、労務を提供しておるのであります。その要求については、われわれとしてはそれを充足する責任を負わされておるわけであります。従いまして、朝鮮事変に関連するか、あるいはそういうものでないかということは、私たちのところではわからないわけであります。
  159. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、占領軍関係の労務者として募集した人夫を、ただちに、本人意思いかんにかかわらず朝鮮に軍夫として持つて行くことは許されるのですか。
  160. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 前に申し上げました通り、それが朝鮮事変に関連するかどうかということは、私たち先のことはわからないのであります。従いまして応募される労務者の就業場所については、本人の了解を得るというような方法になつております。今のところ強制的に本人意思を問わずに就労させるということは聞いておりません。
  161. 林百郎

    ○林(百)委員 たとえば、富山県の職安あたりから月收一百二、三千円、仕事は横浜港内の荷役夫、寝具、住居は船内宿泊として心配はない、手持ちの金は一銭もいらない、ということで横浜へつれて行きまして、そこで突然君たちは朝鮮行きだということを言い渡されている事例が多いのでありますが、こういう場合、しからば労務者は自由に拒否することができますか。
  162. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 もちろん拒否することはできることになつてます。
  163. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると富山県から横浜まで連れて来るときには、別に朝鮮行きだということは通知しないのですか。
  164. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 これはその筋からやはり極秘ということになつて、私たちの立場としましてはそれ以上聞いておりませんでした。
  165. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、募集労務者としては朝鮮事変に動員されるという場合には、自由に拒否することができるということは、先ほどの回答の通りと思います。そこでもし本人がこの朝鮮行きの人夫として用いられ、あるいは軍夫として用いられる場合の條件は、どういう條件ですか。
  166. 曽田忠

    ○曽田説明員 一般の基本給あるいは手当、そういうようなものは一般のLRと同様であります。ただわれわれとしましては、あるいは危險区域内にある特殊な者が行かれるかもしれないということをおもんぱかりまして、一般船員が危險区域を航行する場合に、いろいろ危險区域手当とかあるいはその他の手当をもらつておりますが、それを支給できるように現在手続中であります。
  167. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると一般のLR関係の労務者と今のところは同じであつて、特別の危險区域に行くからといつて特別な手当などはまだ出していないのですか。
  168. 曽田忠

    ○曽田説明員 現在のところは出しておりません。ただあの問題が起りましてから、大蔵省あるいはGHQ関係と打合せておりまして、一応大蔵省の方は終わりました。それでああいう特殊な手当は、大体七月二日からさかのぼつて適用されることにしております。
  169. 安部俊吾

    安部委員長 林委員にお諮りいたしますが、ただいまの御質問の範囲は、多く労働問題に関しているように承りますが、できるだけ本委員会の趣旨に沿うて御質問願います。
  170. 林百郎

    ○林(百)委員 実は私のお聞きしたいことは、国連の軍事行動に協力するということと、占領軍に協力するということの限界でありますが、われわれもちろん占領下にある以上、占領軍の政策に協力することは必要でありますが、国連軍の朝鮮事変に対してわれわれが動員される場合には、自由な行動がとり得るというように思うのであつて、その点を実ははつきりとさしたいわけであります。そこで問題は、そうした労務者が使われる場合には契約の当事者はだれが使うことになるのですか。
  171. 辻村義知

    ○辻村説明員 ただいま御質問の点でございますが、特別調達庁の権限として與えられておりますのは、連合軍に対する御用だけでありまして、その他の関係に対する何らの権限も有しておらない次第でございます。従いましてただいまのところ連合軍からの命令以外の命令によつて、われわれ何ら仕事をいたしておらぬような次第でございます。従いまして、先ほどから話題になつておりますLRにつきましても、特別調達庁といたしましては、直接には連合軍の要求として受けておる次第でございまして、従いましてこの契約の当事者は、当然特別調達庁でございます。
  172. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、特別調達庁と連合軍との間の契約関係になるというように解釈してよいでしようか。
  173. 辻村義知

    ○辻村説明員 契約は特別調達庁と労務者との関係でございます。
  174. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、特別調達庁は今度はどこに対して義務を負うのですか。もし連合軍だとすれば、朝鮮事変とは全然関係ないことなのだ。連合軍は日本の国の占領のためにある。朝鮮事変のためにあるわけではないから。そうするとそれが朝鮮事変に動員されることになるのはおかしい。最初の契約目的とかわつて来ると思う。そういう場合はどうなるのです。
  175. 辻村義知

    ○辻村説明員 特別調達庁が義務を負つておりますのは、連合国軍に対してのみでございます。なお実際問題といたしまして、それがかりに国連の関係で使用されることがあるといたしましても、それは実は特別調達庁といたしましてはその使用目的は全然わかりませんので、ただわれわれといたしましては、連合軍から連合軍のためにこれだけの労務者を提供しろという命令を受けまして、その命に従つておるだけでございまして、それ以外のことはこの役所といたしましては存じません次第でございます。
  176. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると連合軍の占領目的のためといつて募集された日雇い労務者が、実際は朝鮮事変の方に動員されておる、結果的にはそう解釈していいのですか。
  177. 辻村義知

    ○辻村説明員 その辺のところは、実は私どもの役所でははつきりわからないのでございます。
  178. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、そうして募集された労務者が実際の仕事につく場合は、だれが監督することになるのですか。
  179. 辻村義知

    ○辻村説明員 連合国軍からレーバー・レクイジイツシヨンとして受けました命令によつて調達いたしました労務者に対する労務管理は、特別調達庁が責任を持つております。
  180. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、朝鮮事変に動員された場合の監督権はどこが持つのです。
  181. 辻村義知

    ○辻村説明員 ただいまの問題は、先ほど申し上げましたように、私どもが受けております命令は、連合軍からの調達命令でございまして、それは今までのところすべてそれ以外の命令にはなつておりません。われわれといたしましては、ただいまお話の点につきまして、私どもの方ではどういうふうに使われますか、はつきりわからないということを申し上げるほかはないかと存じます。
  182. 林百郎

    ○林(百)委員 非常にデリケートな問題ですが、そうするともしそれが、もちろん特別調達庁というのは連合軍の占領目的のための特別の調達をする機関だと思うのですが、その範囲を越した面に実際の労務者などが使われる場合には、特別調達庁としても、占領目的以外の範囲に対しては、たとえばこれだけ募集をしろと言われたが、これだけしか集まらないとか、これだけの者は断わつておるという、自由な意思表示をすることはむずかしいのですか。
  183. 辻村義知

    ○辻村説明員 ただいまの御質問の点も申し上げたかと思いますが、調達庁が受けております命令は連合軍からの命令、つまり占領目的に必要なものとしての命令を受けておるだけでございますので、それ以外のことはわかりません。
  184. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、労務者もそれを拒否することはできないと思うのです、労務者がそれを拒否すれば占領目的に協力しないということになる。先ほどお聞きしたら、それは自由だ、それは占領目的と直接関係ないから自由というのですが、占領軍が占領目的に必要だと言つて、労務者を募集して来る場合に、労務者がそれを拒否すれば、占領目的違反なつて自由に拒否できない。その点は食い違つておると思うのです。
  185. 辻村義知

    ○辻村説明員 特別調達庁と連合国軍との関係におきましては、連合国軍の命令に対しまして、われわれは選択権も拒否権もないと存じます。ただ軍と現実の労務者との直接の関係におきまして、これは私の忖度でございますが、内地以外のところで就労させる場合に、任意にその意思を聞きまして、外地へは強制的に連れては行かないという、実際上の軍の取扱いなつておるのではないかというふうに考えております。
  186. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 先ほど私が、就業場所について、拒否できるというのは、私が申し上げた範囲におきましては、私の方は募集に対して紹介をする、雇用條件をお互いにきめるというときにそういうような條件が明示された場合に、それは拒否できる、こういうことでございますから、その点を申し上げておきます。
  187. 林百郎

    ○林(百)委員 それが実際は今言うたうに、たとえば富山県とか、その他全国から募集して来て、募集するときは朝鮮に行くのではないということで、横浜に来てから、お前は朝鮮に行くのだという、そのときはもうすでに相当大きな、いろいろな圧力ができて、ほとんど拒否することができないという状態現状なのですが、そうすると、横浜に連れて来る前に、各地方で募集するときに、そういう趣旨は十分述べておるわけですか。
  188. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 これは私たち職業安定機関といたしましても、あらかじめどこへ行くというような問題は、全然言われてなかつた。結局出るときにはそういうことは全然漏らしておりません。本人も知らなかつたのであります。
  189. 林百郎

    ○林(百)委員 そうすると、そういうことがわかつた場合に、どこで拒否することができるのですか。
  190. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 私たちは、求人に対しては人を紹介する、こういう立場にあります。従いまして紹介をするときに求人者と会つて、雇用の締結をするとき、選衡という過程がありますが、その選衡の際に、本人から事情をいろいろ聞くと同時に、求人側としましても、こういうようなことをするのだということが明示されるわけであります。その際に行われるということであります。
  191. 林百郎

    ○林(百)委員 しかし実際上は、あなたの言われた通りPDの方では、どこで使うかということを何も明示しなくて募集するわけでしよう。そうして明示しないから明示しろということもできない。いよいよ雇用主に渡されてしまつたら、さて朝鮮に行くことになつたということになるのです。一体何で使われるか全然わからないで来て、来てみれば朝鮮に行くことになつたが、それは拒否することができない、実際はそうなるのではないのですか。先ほども読み上げましたが、ここにそういう葉書があるのです。「父上は五日の日に船に乗つて朝鮮へ行きますから、家のことは頼んでおきますよ。二月目には帰りますから、子供の世話、家のことは頼んだ。折田君にも頼む。月の金は前借ができれば送ります。できなければよろしく頼む。折田君にもよく言つて金をつくつてもらいなさい。やりくりをうまくやつて行かないとできませんよ。父のことは心配ない。」こんなことを横浜で船に乗つてから初めて、急に朝鮮に行くということを葉書で出しているのです。しかもこれは東京の人ですよ。これはその前に全然知らされていないと思うのです。そうすると、どこに行くのか全然わからないで、全国から労務者を募集しては、船に乗つてから初めて朝鮮に行くことになるということになれば、あなた方の言う、選衡の際に意思表示をする機会が事実上ない、実際はそうじやないですか。
  192. 阿佐美弘道

    ○阿佐美説明員 私たちとしまして、求人者からそういう最初どこへ行くか、どこで就業するかということは、非常に重要な問題になりますので、そういう点には安定機関といたしまして、特に関心を持つたわけであります。しかしながら就労に際してはあくまで本人の自由意思を尊重する、強制労働は絶対に行わない、こういうような求人者からの意思を私たちはつきり聞いております。それ以外のことは私たち受けておりません。
  193. 林百郎

    ○林(百)委員 そうするとその問題は幾ら押問答しても、実際はあなた方の言うようにはなつてないと思いますが、もしこういうような危險な作業に従事して、労務者が死んだ場合にはどうなるんです。家族に対する処置、本人に対する処置はどうするんですか。
  194. 曽田忠

    ○曽田説明員 これも先ほどちよつと申し上げましたように、一般船員に適用されておりますような加給率を認めてやりたいと思つております。
  195. 林百郎

    ○林(百)委員 そうしたいと思つているだけで、実際は死んでしまえばそれまでで、まだ何も特別な條件はないんでしよう。
  196. 曽田忠

    ○曽田説明員 先ほど申し上げましたように、手当の問題につきましては、一応大蔵省との協議を終りまして、今GHQに参つております。間もなく承認されるはずです。朝鮮関係の特別な手当につきましては、七月二日から全部適用されることになつておりまして、突然わかつた問題ですから手続が遅れて申訳ないと思つておりますが、さつきゆうにそういう線に向つて進んでおります。
  197. 林百郎

    ○林(百)委員 あと簡單に質問します。そうすると一体死んだ場合には具体的に幾らくらいの金が今来ることを交渉しておるのかということ、それから今大体どのくらいこの労務者がこういう形で動員されているかということ、これを聞きたいと思うのです。
  198. 曽田忠

    ○曽田説明員 今の手当につきましては、大体普通の場合の手当の一〇〇%加給になると思つております。
  199. 林百郎

    ○林(百)委員 倍ということですか。
  200. 曽田忠

    ○曽田説明員 二倍です。
  201. 林百郎

    ○林(百)委員 大体でいいんですが、死ねば幾らになるのですか。
  202. 曽田忠

    ○曽田説明員 ちよつとこまかい数字ははつきり申し上げにくいのですが、あとで書面で申し上げたいと思いますが失礼いたします。それからただいま御質問がありました、現在どの程度の数のものがあちらに行つておるかという点につきましては、われわれとしては全然予測ができない状況にあります。
  203. 林百郎

    ○林(百)委員 大体の数字もわかりませんか。
  204. 曽田忠

    ○曽田説明員 わかりません。
  205. 林百郎

    ○林(百)委員 すると何を聞いても大事な点はわからないことになつてしまうから聞いてもむだですが、結局われわれがこの問題を非常に重要に考えておることは、日本の国と関係ない戰争に日本の人たちがこういう苛酷な條件で動員されるということは重要な問題だと思う。だから日本政府も十分に考えて、日本は占領政策に対してはもちろん従わなければならぬが、占領政策以外のよその国との戰争に日本の国が介入される義務もないし、また必要もないと思う。そういうことがやがてはずるずるべつたりに行くことよつて日本の国が知らない間にまた第三次世界大戰に巻き込まれる、日本の国が戰場になることは明らかだと思う。日本の国に軍事基地ができて爆撃される場合、日本の国は許されるはずはないと思う。これは日本の将来の運命にとつても重大な問題だと思う。だから政府も十分愼重に考えて、日本の国が知らない間に第三次世界大戰の戰場に巻き込まれることのないように責任をもつてつてもらいたいと思う。私は国務大臣に聞きたいと思いますが、事務当局の諸君にも、血の出るようなはがきや手紙が毎日来ておる。横浜に来たらすぐ向うに行かなければならぬ、拒否しようと思つても、そこにはいろいろな圧力が加わつてどうにもできない。家族は心配しておる。笑いごとではない。重大な事態が起きておる。こういう点について私たちも十分国家の将来にこうした人たちの生活の安定、基本的な人権を考えて真劍にやつてつてもらいたいということを私は希望しておきます。
  206. 安部俊吾

    安部委員長 本日の議題に予定しておりました委員派遣報告は、時間等の関係もありまして次会に延期したいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  207. 安部俊吾

    安部委員長 それではさよう決定いたします。本委員会の次会の開会は追つて公報をもつて御通知申し上げます。  本日はこれにて散会いたします。     午後三時四十六分散会