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猪俣委員 この辻政信なんという人物がいろいろな本を書いている。ばかばかしいから私は読みませんが、これが相当売れておる。読みませんが改造の五月号に「流転」という寄稿が載
つておる。「我等の人生観」という副題であります。ところが改造の編集局はこれを全部載つけることができなくて、その所々を載つけておる。その所々載つけるようなことをやるこの改造の頭も疑うのでありますが、この全文を見ました戒能通孝という早稲田の教授だと思いますが、この人が「恐るべき子供達」「流転を読みて」という感想文を出しておる。これなどは日本の思想あるいは
政治の動向に対して、かれが指導者的な顔をして述べているま
つたくのフアツシヨ思想そのもので、恐るべきフアツシヨ思想であります。そうして述べてある文句なるものが実に驚くべきもので、東條内閣時代の思想そのものを現在まだ持
つておる。こういう人物が一体新潟に現われたり、どこかに現われたりしまして、士官学校の生徒なんかであ
つた者を集めて何か話合うなどということは、私は危險千万だと思う。こういうことに対しては十二分なる御
注意を願いたいと思うのでありますが、何だか野放しにしておるようにわれわれには見える。
法務総裁に
質問すると、どこにいるのだかわからないような
答弁をしているのに、本はどんどん出ておる。雑誌には論文が出る。そんなばかげたことはないと思う。今
共産党の諸君はもぐ
つておるが、なかなか
徳田球一の本などは出ないだろうと思う。かように私はどうも野放しにしているのではないかと思う。われわれの耳に入りますものは、田舎におきましてのささやかな寒村、ここにおきましていわゆる翼賛壯年団の何か支部長をしてお
つたとか何とかいうようなことで、一齊にみな
追放に
なつた人間、この人間
どもが農地
委員会の選挙のときに
ちよつと顔を出したとか、学校の村民大会のときに反対の意見を述べたということで、みんなひつくくられ、そうして宮城県下におきまするところの宮城県名取郡玉浦村の櫻井清一郎という人物、これは農民組合に入
つておる農民であります。これがあまり高い学校の経費であるので、村民大会で反対だと言
つたときに、ただちに――これは翼賛壯年団か何かに
関係して
追放なんでありますが、
追放令違反として検挙せられ、懲役六箇月に処せられて、とうとう服役をさせられた。なお新潟県南蒲原郡新潟村の三本勇藏、これも農民組合の耕作農民であります。これも何か壯年団だか何かに
関係したということで
追放の身である。これが農地
委員会の選挙のときに、その字のみんなが集ま
つて寄合いのところへ顔を出したということだけで検挙せられて、これが今
起訴せられて裁判中である。かようなささやかなる
事件に対してはなはだ峻嚴にや
つておる。これも私はやむを得ないかと
考えるのでありますが、しかるにかかわらず今私が申し上げましたる
天下を動かすようなこういう辻政信とか、なおまた経済界に蟠居いたしまして、そうして
電力再
編成問題というような
天下の大
政治問題に容喙いたしておりまする連中に対しましては、はなはだぼくは
特審局のやり方が緩慢すぎると思う。それがために幾多の弊害を起しておる。そうして民主化された日本におきましても、まだ何かフアツシヨ的な反動
団体というものが存在してお
つて、それが
政治界にも影響する。こういうようなことは実に民主化のために私は大なる弊害があると思う。まさに
特審局が設けられたのはこういう
調査をすることが眼目なんです。ところがどうも近ごろの
特審局の
活動というものはけたがはずれているのじやないか。なお本朝の毎日
新聞を見ますると、密貿易の背後には元海軍大将であ
つた小林省三郎、それから励志社の社長である川口忠篤、こういうものがひそんでおる。これの背後にはなお野坂さんがあるのじやないかというような
新聞が出ておる。こういう大物につきまして、私に特番局の
調査が手ぬるいと思う、
三浦義一氏のごときに至りましては
天下公知の人物でありまして、
追放該当者として大胆きわまる
政治活動をや
つておるのじやないかと思われるにかかわらず、今日に至るまでこれに対しまして何らの手を下していないというようなことは、何らかの
政治権力によ
つて押えられているのであるか、その事実がないと
特審局は言うのであるか、確たる御
答弁を伺いたい。