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最上政府委員 生糸の
需給の問題でございますが、これは何と申しますか、非常に浮き沈みがありまして、
生糸が国際的な
商品であるという性質上、非常に
変動がはげしいことは御
承知の
通りであります。従いまして、何かいいとなると、一番先に上るのが
生糸であり、何か悪いことがあると、一番先に下るのも
生糸であるという
ような
傾向を持
つておるのでございますが、
需給の
関係から申しますならば、本年、
歴年の状態を、これは結局見込みという
予想にとどまるのではありますが、申し上げますならば、
生産といたしましては大体十五万俵ないし十六万俵くらいのものが、
生産される
予想であります。それから今年初めの
ストツクが五万四千俵くらいございましたので、
歴年の供給は約二十万俵という
予想をいたしておるのであります。これに対しまして、
輸出が約九万俵
程度、それから国内の消費が
輸出の絹織物も含めまして九万五千俵
程度といたしますと、約十八万五千俵にたりますので、結局本年の
生産量と
ストツクを加えました二十万六千俵から十八万五千俵ないし十九万俵くらいを差引きますと、一万五千俵から二万俵というものが年末の在庫になる、か
ような
需給の
予想をいたしておるのであります。しかしながらこれは現在の
ような
需給の
関係の
変動が非常にはげしいときには、将来の問題を予測することは困難でありまするけれども、一応か
ような
予想をいたしておるのであります。なお今後の問題といたしましては、海外の市場はアメリカにおきましてもまたフランス、
イギリス等におきましても、昨年よりも非常に
増加する予定であります。従いまして、本年ここ一年くらいの
予想を立てます場合には、
生糸が非常に足りないという
ような
状況になるのではないかという
予想をいたしておるのであります。しかしながら、目先の問題はか
ようにアメリカの軍需
予算その他のインフレ気分等により、予期せざる需要が起きている町もあるのでありますが、長い将来のことを
考えました場合には、やはりそれ
相当の
対策をつく
つておくということが必要でありますので、そのためには、やはり今後とも海外に大いに
輸出を増進する
ような方針で、策を立てておるのでありますが、その一番大事なことは、まず品質の
改良をする。ことに戰前におきましては、細糸
中心で大部分が絹のくつ下に使われていたのでありますが、それが需要がかわりまして、戰争によりまして、くつ下に使われる
生糸というものは非常に少くなりまして、大部分が織物に使われることに
なつておるのであります。そういう新しい需要に対する品質の
改良ということを、今後は大いに努力いたしたい、か
ように
考えておるのであります。また海外に対しまして絹の宣伝をするという
ようなことも、需要増進のためには絶体に必要なことだ、か
ように
考えまして、海外における絹の宣伝につきましては、
相当具体的な
計画も立
つておりますので、今後とも大いに力を入れたい、か
ように
考えておる次第でございます。
それから懸案に
なつておりまする
糸価の安定という
ようなことも、
輸出の増進のために、また
蚕糸業の安定のためには、どうしてもこの懸案の解決をはか
つて、繭
糸価格を安定することが必要だと
考えます。
なお本年の
生糸の価格が昨年の秋と大してかわらないのに、ことしは昨年に比べて繭が非常に安いというお話でございますが、これは一応ごもつともでございますけれども、結局価格は自由になりました以上は、売手、買手が経済の原則に従
つてきめるべき問題でございまして、
政府が幾らという
ようなことを指示するわけにも参らないのでございますが、昨年の秋に繭が非常に高かつた、一万がけ前後いたしたことは特殊な現惑でございまして、本来製糸のかま数が非常に多いのに、繭が非常に足りないという
需給関係、それから為替のポンドの切下げがありましたために、円の切下げがあるのではないかといつた
ような思惑的
予想も加わりまして、採算を無視した高い価格が出たのであります。しかしながら、今年はそういうことにつきまして、非常に製糸業者自体も思惑的
予想を愼んでおりますし、それに現在の
糸価というものが、ほんとうにいつまでも続くものであるかどうかという
ようなことにつきましては、今後の物価の一般の経済界の
状況、あるいは他の競争纖維の
関係という
ようなものとにらみ合せねばわからないのでございまして、現在
糸価が高いからとい
つて、それを基準に買うという
ようなことは、製糸家としては、金融的の
関係から申しましてもなかなか困難ではないかと思うのであります。しかしながら、これは自由経済下におきましては、結局繭の価格というものは、そのときの
需給関係あるいは一般の経済界の現象、あるいは金融
関係という
ようなことできまるのでありますけれども、繭の相場というものは一度だけできまるのではないのでありまして、嚴密に申しますならば、繭の高いか安いかということは、それを買
つて糸にして売
つてみなければほんとうにはわからないのでありまして、繭が高くても糸が高く売れればそれでいいということになりますし、また繭を安く買いましても糸が安ければ、結局繭は高いということになりますので、長い間にはその間に自然に調整されるものだと
考えておるのであります。
なお昨年の繭の未拂いの問題でありますが、地方によりましては先ほどお話のありました
ようなことが
相当あ
つたのでございますが、その大部分は
春繭の前に問題は解決いたしておる
ように開いておるのであります。これは正確な
数字は目下
調査中でありますけれども、昨年の秋の繭の不拂い代金というものは、本年の
春繭のときに大体において解決いたしておるものと
考えるのでありますが、いずれにいたしましても、繭の不拂いがあるという
ようなことは、
養蚕家に対しまして、
養蚕家保護の立場から、最も警戒しなければならないことでございますので、農林省といたしましては、できるだけ団体協約ということを奬励いたしまして、その間にそういう繭の不拂いという
ような問題がない
ように、か
ように指導いたしておる次第でございます。