○富安説明員 ただいまのお尋ねに対しましてお答えを申し上げたいと存じたます。漁業無線のことにつきましては、この
委員会におきましても実はただいままで、特に詳しく御説明を申し上げる機会を持たなか
つたのでございますので、ただいまの御発言はごもつともと存ずるのであります。事柄がやや複雑しておりまするが、大要のところを一わたり私よりお答えをいなしまして、なおこまかくは他の当局側の者から補足することにいたしまして、詳しく
実情をお知りいただきたいと思うのでございます。
漁業無線の問題は、やや数年前にさかのぼるのでありまして、問題がだんだんと表に浮び上りましたのは、戰争の終りましたじき後かと聞いております。水産が日本にと
つて大切でございますために、水産に
電波を利用し、
電波波長をほしいという要求を
関係の向きに対しまして持
つて参りましたところが、だんだん
関係の向きにおきましてもその要求を聞いて、いろいろつまびらかにいたしてみますと、ずいぶん今日の漁業が無線を利用している
状態は合理的でない。錯綜していて、これでは何らかの規制をこの際加えなければならないという結論に到達いたして、
関係当局の示唆を受けるに至
つたのであります。それでどういうことに
なつたかと申しますと、これは問題を
検討するために、
関係の向き向きの者が知識経験を持ち寄
つて、適当な妥結点を見出すように
委員会を持つたらどうかというので、名前は水産
通信委員会というのでございますが、十数名の
関係の人が集まつた
委員会をつくりました。そして二十三年の春ごろだつたと思いますが、そこにおいて数十回の会合をいたしまして、つぶさに日本の漁業無線利用の
状況を調べたのでありますが、あるいは
経済上の点から申しまして、また法律上の点から申しまして、漁業者の利益の点から申しましても、いろいろな
方面から合理的ではない、これに対して是正を加えなければならない、かような点、かような点、かような点に欠点がある。これに対してはかようにしたらどうだ、かようにすべきではないかと、数十
項目にわたり示唆を含んだところの水産
通信委員会の結論ができ上
つたのであります。それは勧告書と申しておりますけれ
ども、水産
通信委員会の勧告書というものが一応できたのであります。その審議の一面において、それと並行いたしまして、新しき
電波関係の三つの法律も、だんだん成熟の機運にな
つて参
つたのであります。六月一日に
電波関係の三つの法律ができ上りまする一面におきまして、それともにらみ合せまして、水産
通信委員会は一応そこまでの
調査の結果に基いた勧告書というものをも
つて委員会を解散いたしまして、その勧告書は
関係の各
方面に配られました。
委員会もまたその勧告書を受継いだのでありまして、その勧告書に基きして、
委員会は発足するやただちにこの問題を取上げて、
検討を加えることにいたしたのであります。その勧告書の趣旨をくみつつ
関係の当局——農林省、水産庁とずいぶん頻繁に
折衝を重ねたのであります。お互いにこちらからも参り、向うからも参るというような方法を重ねながら、愼重に
検討を加え、その勧告の趣旨をもくみ、一面新たに制定せられました法律の趣旨を、正しく漁業無線の利用の上にそのまま反映させるという
見地から、そういう目途をもちまして到達いたしました結論が、ただいまおつしやいました九月十一日に公布になりました
電波監理委員会の規則の第十二号というものなのであります。これによりまして現在におきまする漁業無線の利用の不合理を、
合理化しようということを企図いたしたのであります。漁業の無線というものは今までの
状況から考えますと、ある
計画に基きまして、その
計画にあてはめて、合理的に、規則的にだんだんとある定められたわくに
従つて許して行くという方向でなく、自然発生的に実際の事情に応じて、ぼつぼつ許して
行つたという事情でありましたために、結果から見ますと、だんだんそれが合理的という
方面から見て、遺憾な点が多いのであります。これは少し抽象的な言い方でありましたが、これを例をと
つて、具体的に申しますと、県で施設をいたしております漁業無線、海岸局というものを、県で施設を許可せられたる
目的を逸脱して、県の水産指導ということの
目的よりほかに、その施設を漁撈のために漁業者が使うというような実際上の事実が、必要に応じて生じて来ているのであります。しかしながらそれはこの漁業に対して專用
通信を認めた
目的を逸脱して、公衆
通信であるべきものを、專用
通信のために許されたる施設を使うということであ
つて、これは法律の画から見まして是正を加えられなければならない
状態なのでります。また他の例をも
つて申しますと、海岸局の六十一もありますうちの三分の二ぐらいが、漁業協同
組合の施設にな
つておる
実情でありますが、協同
組合というものはその性質から言いまして、協同
組合の
組合員たり得る者は制限を加えられておるのでありまして、この協同
組合に資格上入ることのできないような漁業者が無線を利用することは、協同
組合の
経営形態をとる場合においてはできないのであります。そういうような、入りたくても入ることのできないような漁業者があるということは、これは
電波法の第一條から考えて、どうしても救済をしなければならぬということが考えられるのであります。第一條というのは、申すまでもなく、無線というものは最も能率的にかつ公平に使わなければならない。何人でもこれを利用した者は利用ができるようなふうにあらねばならない。そういうような
電波の利用を考えられなければならないということが、法律の第一精神としてうた
つてあるのでありまして、ただいまのように、協同
組合の施設というものでは、これを利用したいと思
つても資格が欠けるために、使うことができないというような者があ
つたのでは、その精神に反するのであります。こういうものをもどうしてもそのままには放置することができないので、これをも救済しなければならないのであります。そういうような、実際上は使うことができないのにかかわらず、もし新しい法に照して、法をくぐ
つて使
つておるというようなことの
実情であるといたしますならば、その法にそむいている者は、そうでないようにこれを
合理化する。法制の面においてもこれを正しい使い方であるというに改めなければ、私
どもの方は
電波の主管庁として、
電波の行政を統一する、
電波の法律を正しくその通りに守
つて行くということにつきまして、責任がとれないのであります。これは具体的な例をも
つて申したのでありますけれ
ども、そういうような趣旨から考えまして、いかにしたならば漁業無線の
免許人が、法律の面におきましても少しも抵触しないようになるのであるか、またいかにしたならば法律にうた
つている、だれでも使おうと思えば使えるといういうような、
電波の公平な活用になるのであるか、また漁業無線がだんだんと需要が多くなり、ほ
つておけばか
つてに自分で無線を持ちたがるという結果、濫設に陷る弊を防ぎ得るのであるか、またどういうような分布
状態にこれを導いたならば、漁業無線の混乱を防ぎ、結局それが漁業者のためになるのであるかというような点をいろいろ考慮いたしまして、この
免許の主体であるとか、あるいはその
免許すべき海岸局の立地
條件とかいうような、いろいろな点を考慮いたしましたその結果が、現定の文句にいたしますると、何かたいへん抽象的でもあり、むずかしくもあり、くどいような言葉にも自然なるのでありますが、趣旨はただいまのようなことを是正するということが、規則の文句といたしましては、こういうようなむずかしい文句になるのでありまして、趣旨は、
電波法に従つた
電波の利用を正しく合理的にする、そして今日公衆
通信と專用
通信との限界を乱しておるものを正しくする。あるいは法律的にいえば、正しくない使い方にな
つているものを、正しい形になるようにかえて行くということを考えるにほかならなか
つたのであります。それで、もちろんこの規則をつくりますには、公聽会を開きまして、法律によ
つて定められたる所定の手続を経、
関係の向きとも完全な了解のもとに、こういう規則として公布をいたした次第であります。この規則を公布いたしますと同時に、
地方の監理局におかれましては、かねての懸案であつたけれ
ども、こういうふうにきまつたから、この趣旨に
従つてやるように、そしてこれを
実行する上におきましては、
地方の道府県の知事のあつせんを待ち、その仲介のもとに
関係の者が寄
つて相談をして、この趣旨をスムーズに
実現に移すようにという方法をと
つたのであります。これは九月十一日出たのでありますけれ
ども、その後の
状況は、私
どもの手元に集まりました資料によりますと、その方法に
従つて、順調に事柄は進んでいたと考えられるのであります。お話にもありましたように、御出張になりましても、
地方におきまして、特にその問題がお耳に入らなかつたというようなことも、スムーズに、順調に事柄が進んでいるためではなかつたかと思います。ただいまお話を承りまして、私はそのように存じておる次第であります。ところがしばらく時日を過ぎて後になりまして、ただいまもお話になりましたような、両院の水産
委員会におきまして、この問題が取上げられました。そして強き反対が業者の間にあるというようなことを聞きまして、私
どもといたしましては、むしろ意外に感じたくらいなのであります。しかしそういうような陳情があつた、需要がこういうようなことであるというようなことを伺
つてみますげば、私
どもとしてはむろんそれを、どういうようなことであろうかと、よく調べなければならぬのでありまして、陳情の趣旨をも十分に伺いました。そしてまたその事柄について、
委員会といたしましても愼重に
検討を加えました。一面また念を入れまして、
地方の監理局長等をも東京に集めまして、
地方々々の
実情などにつきましても、つぶさに
聽取いたしたのであります。
地方々々によ
つてもちろん多少の相違はありますけれ
ども、大体におきまして、この趣旨を
実行に移すようなことは、都道府県知事のあつせんをも
つて、だんだんと順調に進みつつあ
つたのでありますが、ごく近く水産庁の方から、しばらくそういう方法で進めることを待てというような指示があ
つたので、そのために事態が停頓をしておるというようなことを、
地方の
実情として訴えられたのを聞きまして、私
どもはやや意外に思
つたのであります。しかしその事情を聞き、陳情の
内容をも
検討いたしました結果、私
どもはどのような結論に到達したかと申しますと、やはりいろいろ事情は聞いても、その聞いたものによ
つて、この出した規則を何らか変更を加えなければならない。いわんやその水産
委員会のある方の御発言のように、これを撤回するような意思はないかというような点に関しましては、撤回するなどと考えることは毛頭ありませんし、またこれをこの際かえなければならぬというような結論には、私
ども委員会の
検討の結果は到達していないのでありまして、やはりこの法通りに、この趣旨に
従つて実現を期したい、かように存じておる次第であります。もちろん私
どもは
法規の面を正す、正すと申しますけれ
ども、それが漁業界の
実情にいかに影響するか、具体的に申しまするならば、そのために、漁業者の
負担をひどく増加するようなことがないかなどというようなことにつきましては、十分に考慮を拂い、
調査を遂げたつもりであります。どの
方面におきましても、漁業者の
負担が増すという事実はないなどということは、これは言い過ぎでありましよう。そういうことはないにいたしましても、私
どもの調べました
程度におきまして、そういう
程度の
経済的な
負担のかわりがありましても、それはこの法律を正す、今まで打捨てられてあるところの違法を調整するということのために、つまり新しい法律の精神を通すがためには、やむを得ないのではないかということを、
委員会としては考えているのであります。もし現在ある
方面に若干の
負担が増すというようなことの事実のために、これをこのまま打捨てておくということになりますと、その結果はどういうことになるか、漁業の無線に対する需要はますます増す一方である。そしてこれに対して與え得べき
電波の数というもりは、もちろん制限せられておるのであります。制限せられておる
電波は、最も有効適切に使われなければならぬのに、このままに打捨てておいてだらだらと行く上におきましては、結局は混信を多くし、無線の利用の制限はますます加重を加えるばかりである。それでは決して漁業者のためにも親切な道ではないと思うのであります。そういう点から考えますれば、漁業者も広く、そして先のことも考えながら、この際に善処するという心持を持
つてもらわなければならぬと思うのであります。もしほんとうにこの案に協力しようという気持であるならば、私などの考えによりますと、この案の通りに
実現を見るのは、さして困難ではないということを信じているのでありまして、もしまたこれを阻止しようというような考えがかりにどこかにあつたといたしますならば、どういうあやまちが起らぬとも限らぬと思うのであります。さようなことはないと私は信じておりますけれ
ども、私
どもの得ました材料によりますならば、もしこの案を
実現しようという心持さえ持てば、それは決してむりをしいるものではないと確信をしておるのであります。私
ども委員会がいろいろ陳情を受けた後に、ただいま到達しておりまする結論から申しますれば、今申し上げた通りでありまして、この規則を
実現して参りまするように、そして漁業者のためにも考え、また
電波法を守り、
電波の規正ということにもかなうような事情のぜひ
実現できるように、こちらの
委員会の何かと御理解ある御援助を願いたい、かように存じておる次第であります。問題がこんがらが
つておりますし、そしてやや專門的にもわたりますので 私の話がお聞きづらくて、ただいま申し上げたことのみをもちまして、詳細の経緯が御納得がいただきかねたかと存ずる点もあると思いますが、なお私の言い漏らしました、そしてぜひお聞き取り願いたいというような点につきましては、他の当局、当
委員会側の者から補足をさせていただくということをお許し願いたいのであります。