○神田委員 島村政務次官の私見を承る機会に惠まれて、はなはだ不幸に感ずる
ようなわけであります。これは意見でありますからいろいろ
議論もあろうかと思いますが、大分前に、新聞を見ておりますと、これは
農林大臣というか
行政管理庁長官というか、どつちかの意見だと思いますが、天然
資源省をつく
つて、
農林省の中に建設省を持
つて来る。
通産省の中の何かを持
つて行く。何だか役人の勢力拡張をや
つておる
ように私は見ております。
肥料の問題もそういう
ような
考え方から出発しておるのじやないか。
肥料の
行政担当、ことに
生産部門を担当するにあた
つて、
農林省がそういう
ようなお
考えをお持ちになることは、これは
農林省としていろいろの御
関係もありまし
ようが、われわれ国民の常識から
考えますとき、役人のなわ張り争いではないか。もちろん四千万の食糧
増産に携わ
つておる農家の協力なくして、
わが国経済の自給度を高めるわけに参らないことは当然でありますが、貿易に依存して、そして世界の仲間入りができる
ような国柄に国民の富を増して行きたい。いやしくも政府がこういう
考えのもとに通商
産業省というものをつく
つた。私はこの通商
産業省というものが、はたして適当な名前であるかどうかということについては非常な疑いを持
つておりまして、当時も当
委員会におきまして商工省でもいいんじやないか。何だか戒名が長くなると院号が居士よりもいいのだという
ようなことで、坊主らしいばかに長い名前をつけたんじやないかということまで
議論が出たのであります。やはり
農林省も、通商
農林省という
ようなことを
考えてなわ張り争いをしておるのじやないかという
ような
考えを持つのでありますが、農家が必要とするのは
肥料の
生産じやないと思う。農業
生産に必要な
肥料を豊富に、しかも低廉に、しかもその時期を誤たずに
供給されたいということが念願だろうと思います。ことに今日
わが国のアジアにおける地位、また
日本の
肥料界がアジアに占めておる地位という
ようなことを
考えまするならば、
わが国の農業の自給度を高めるための
肥料の
増産、また質的向上、同時にアジア諸国への
市場としての
肥料輸出を
考えなければならないのじやないか。か
ように
考えて参りますると、
肥料を一体どこが持
つたならば、一番そうい
つた線に沿うかということが私は問題であろうと思う。私
どもいろいろ新聞等を見たり、農業に御熱心な方方の御意見を拜聽するのでありますが、何だか自分で抱き込んでしまわないと安心ができない、こういうふうな根性で物事が処理されておる
ように思う。もつと
日本も大きな
考え方を持
つて——国が小さくな
つたのだからせめて構想ぐらいは大きく持
つて、いかにしたならば
わが国の
産業が栄えて、世界の仲間入りした場合の片棒をかついで行けるかということを見せなければならぬであろうと思う。役人が机上で何かの陳情をひね繰りまわして、時によるとその陳情も自分で火をつけてあお
つておいて、そうしてこういう輿論であるという
ようなえせ政治であ
つてはならないと思う。ただいま島村政務次官の私見を聞いて、もう少し視野を広くして、
肥料工業というものは幾多の関連
産業を持
つておる。
電力工業も必要であれば、また
石炭も必要とする。ことに鉱山との
関係においては密接なものがある。また
原料として輸入しなければならない問題もあるし、また
国内資源の開発によ
つて肥料の
増産をしなければならぬ。ことに
肥料工業は大きな
化学工業の一面をなしておるわけであります。今日私
ども、先般東大の金森博士でありましたか、将来の
肥料工業というものは製鉄事業とあわせて行うものである。
肥料工業をやる場合に、製鉄
工業をあわせて
考えなければならぬ。製鉄事業を起す場合も、
肥料事情を
考えなければいけない。それはどういうことかというならば、すなわちこの金森博士の研究によると、
わが国の今日の製鉄事業というものはアメリカ依存であり、あるいは大陸依存であ
つて、模倣の製鉄方法だ。しかるに
わが国の
原料面を
考えて見れば、鉄鉱石においても貧鉱であり、また海外にも依存しなければならない
状態である。
従つて優良な鉱石を入れるということは至難である。ことにその
原料であるところの原発炭においては、ほとんど輸入にこれを依存しなければならないという
段階にな
つている。そこでこの金森博士に、最近研究の完成しつつある
段階を聞いてみますると、
わが国の
資源をそのまま製鉄
工業に利用することが最も
わが国情に即した製鉄事業であり、そしてこれをやることによ
つて、
わが国の
経済を高めるのである。すなわち低品位の
石炭で高カロリーの
石炭と同じ
ような熱量をあげるくふうを
考えよう。そこでかれは空中から豊富な酸素をとらえて、そうしてこれを低品位炭に吹きつけると、高品位炭を用いると同じ
ような好結果を得る。そこで今日
肥料工業は室中から窒素をと
つており、酸素を逃しておる。そこで将来
わが国の製鉄事業というものは
肥料工業と結んで、一方においては窒素をと
つて肥料をつくる、反対側には酸素をどんどんと
つたものを低品位の
石炭につけて、相当のカロリーを上げて、外炭によらない、すなわち内炭によ
つて製鉄事業を起す。そこで初めて両方とも捨てているものを回收できるし、また炭質の粗悪なものを良質なカロリーに上げることができますから、
採算上も非常によくなる。だから今後製鉄事業というものは必ずこれを
肥料工場と両々相半ばしてつくるべきものである、こういうことをわれわれ聞いたのです。これは神戸製鋼が今度新しい方法によ
つておやりになる
ようでありまして、刮目しているわけなのですが、酸素をも
つて製鉄事業を起そう、低品位の
石炭をも
つて製鉄事業をやろう、こういうことは科学の進歩ということを
考えて参りますと、私は今後そう遠からざるうちに、幾多のそうしたものが出て来るのじやないかと思う。そういうことを
考えましても、関連
産業一つ持たない
肥料工業を
農林省が專管して、
肥料行政の一元化がよいのだといわれる。どうも一元化というとなかなかよさそうに聞えるのでありますが、今までは大体一元化ということは官僚
統制を強化するということだ。私の
考えから参りますと、そうした科学の日進月歩の今日、ことに世界
経済に入
つて大いに彼我文明の交流を盛んにし
ようという際に、
国内で、自分の方が
需要家であるからその担当をしなければならぬということになりましたならば、
工業の総合発展は私は期せられないと思う。
肥料の
生産の面に悪いところがあ
つたら、大いに
農林省としてはあらゆる機会に注意を促し、また不都合な点があ
つたならば、これの改良を促すべきものと思う。確信もなく、自信もなく、机上の
考え方で工
業界を混乱させ
ようという
ようなことを、今日の
日本のこの
段階においてとることははなはだ冒險だと思う。ことに先ほど申されました
ように、天然
資源省というものをつく
つて運輸省をのんでしまう、それから厚生省も国立公園ものんでしまう。あらゆるものをみな
農林省に集めてしまう。
農林省では集まらぬから天然
資源省、またこれは貿易をしなければならぬということにな
つて来ると、通商天然
資源省という
ようなことにな
つて来る。坊主のお経なら長く読めば大分お布施にも影響するかもしれぬが、政治というものはそんなものじやない。国民はばかじやない。私は島村君とは数十年来の知己なんです。また藤田君とは若い事務官時代からの仲間である。よもやあなた方はそういうお
考えを持
つておられぬと思う。私の意見を大いに御参考にしていただいて、こういう安定しつつ、さらに発展し
ようという
わが国の今日の
経済界の歩み方に多少でも混乱を起したり、
生産を阻止する
ようなことをなさらぬ方がけつこうじやないか。まだまだ
農林省としておやりにな
つていただくことはたくさんあると思う。私も
農林行政につきましては非常な関心と若干の抱負を持
つております。適当な機会がありましたならば、そういう立場に立ちまして、
わが国農林行政の根本問題、また当面の問題について意見を鬪わしてみたいと思う。また鬪
つてもみたいのでありますが、通産
委員会で
農林省関係のことをあまりやりますと、同僚諸君もあいて来るし、
委員会の紛淆を来すことになりますので、本日は申し上げませんが、私の常識的な意見は大いに御参考にされたい。私は新聞だけのことで
あと思
つたら、やはり政務次官もそういう
考えがあるということを聞いて驚いたので、あまりどろ沼に足を入れないうちに少し御注意申し上げたい、こういう
意味で申したのであります。