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1950-10-24 第8回国会 衆議院 通商産業委員会 第17号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年十月二十四日(火曜日)     午後一時四十六分開議  出席委員    委員長 小金 義照君    理事 阿左美廣治君 理事 多武良哲三君    理事 今澄  勇君       江田斗米吉君    高木吉之助君       永井 要造君    中村 幸八君       福田  一君    南  好雄君       高橋清治郎君    加藤 鐐造君       風早八十二君    田代 文久君       小平  忠君  委員外出席者         通商産業政務次         官       首藤 新八君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         長)      徳永 久次君         通商産業事務官         (資源庁鉱山局         鉱政課長)   讃岐 喜八君         通商産業事務官 小林 健夫君         專  門  員 谷崎  明君         專  門  員 大石 主計君         專  門  員 越田 清七君     ————————————— 本日の会議に付した事件  鉱業法案内閣提出第一九号)  採石法案内閣提出第二〇号)     —————————————
  2. 小金義照

    小金委員長 それではこれから通商産業委員会を開会いたします。  昨日に引続き質疑を継続いたします。中村幸八君。
  3. 中村幸八

    中村(幸)委員 私は昨日、鉱業法案並びに採石法案の全般につきまして御質問いたしたのでありまするが、他に同僚委員からもいろいろ御質問があろうと思いますので、一応この程度にしておきまして、いずれまた機会をあらためて御質問したいと思います。留保したいと思います。
  4. 小金義照

  5. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 今度の新たな鉱業法は、その根本において改善されたという点は、ただ追加鉱物鉱物に繰入れられた点だけで、あとは大した改善はされたように思われないのであります。むしろある点のごときは改悪されたようなふうに私は思われるのであります。たとえて言うならば、この追加鉱物のうちに、中村委員も申されました通りベントナイトとか酸性白土とか雲母、こういうものは、一体鉱業法採石法をどういうような見解のもとに区別したのであるか。こういう点、ひとつ政府当局の御意向を承りたいと思います。これが質問の第一。  まとめて私は質問いたしますが、次には、あまり皆様もお気づきがないと思いますが、これは実際問題でありますが、沼の鉱区であります。沼の鉱区が異なる鉱業権者によつて二つ設定されておる。たとえば周回一里であつたならば、そのうちのごくわずか五、六町だけが甲なら甲という鉱業権者鉱区に入る。あとの大半の沼は別な鉱業権者に入る。こういうような点において、今実際に係争問題が実例として宮城県の潟沼という沼において、お互い境界線のような争いが起つておる。ゆえにこの新鉱業法を完璧ならしめるためにも、沼は一鉱業権者だけにして設定されるような、鉱業法にそういうような新しい條項を設けた方がいいじやないかと私は思うのです。これに対する当局の御意向を伺いたい。  いろいろな問題につきまして、昨日来中村委員からいろいろ述べられておりますから、私は申し上げませんが、その次は、厚生省であるか、経済安定本部であるか、どつちだかその所管が不明でありますけれども水質汚濁防止法案なるものが、今度議会に提出さされるという内示がされてあるようであります。もしこの法案が通過した際において、多くの鉱業権者はほとんど非常なるさしつかえをする。これに対して一体通産当局においてはどのような対策と、そしてこれに対する調整の道を開こうとしておるか、またどういうような方法を講じつつあるか、その点に対してお聞きしたいのであります。それからこれを起案した方面に対しましては、私の質問は留保しておきまするが、以上三点の質問をいたす次第であります。ただ後に希望といたしまして、いわゆる鉱業権試掘権存続期間二箇年というものは、われわれ東北のごとき寒冷地帶においては半年間は冬眠時代でありますから、この点につきましては十分修正するように善処していただきたいと思うのであります。それから鉱区出願、これは南委員からもしきりに申し述べられました通り、鉱夫が鉱山を発見する、鉱脈を発見するというところに非常なる誇りを持ち、そうして経済的の発見料をもらう、そういうような欲望、野心から日本鉱区というものは大半発見されたものと思うのであります。そこでこの鉱業権出願移転ということを認めなかつたならば、将来の鉱山発展に非常な支障を来すのではないか、この点もひとつ御考慮していただきたいという希望を述べて、私の質問は終りたいと思います。あとつたのほ留保しておきます。
  6. 徳永久次

    徳永説明員 ただいまのお尋ねにお答えいたします。第一点のベントナイトあるいは酸性白土、同じく鉱物であるものを鉱業法の七種の中に加えないで、採石法に入れたということの理由はどういう理由であるかというお尋ねでございますが、昨日もお答えいたしましたごとく、鉱業法適用を受けます場合には、俗に申しまして必ずしもよいことばかりではございませんで、手続その他監督も鉱業法鉱物になりますと、ずいぶんめんどうに相なりまするし、たとえば鉱山保安法という非常に專門技術的な、責任の重い法規の適用を受けるというような点もあるわけでございまして、私どもとしましては、根本的にはこの鉱物の、日本国民経済上におきまする有用度と申しますか、重要度と申しますか、そういう点と、それから事業そのもの日本の現状における発展の状況、俗に言いますれば鉱山らしい段階に来ておるかどうかというようなこと、第二の今申しました鉱山らしい段階に来ておるかどうかということが、保安法適用するというような点から彼此考慮されなければならない問題であると思われるのでありますが、さような点をいろいろと考慮いたしまして、今回の改正の際には全部鉱物と認められるものを一々どの扱いにすることが適当であろうかというぐあいに、鉱業法改正審議会で詳細にわたりまして御検討いただいたのでありますが、ただいま申しました国民経済上のウエイト、あるいは日本におけるその鉱物発展技術的あるいは操業の経営の段階というような点から行きまして、ただいまのところとしてはひとまず新法に織り込みました七つの鉱種に限定することが、むしろ適当ではなかろうかというような結論に到達いたしたわけでございます。  それから第二の沼地における鉱業権鉱区設定の際に、一つの沼を二つ鉱区になるようなやり方はまぎれが起りやすいので、むしろ一つにした方がよいではないかというお尋ねでございますが、この点は私今一概に申しかねるのではないかと思われるのであります。と申しますのほ鉱物沼そのもの採掘対象にするわけではございませんで、沼の下にございます鉱床中の鉱物を掘採するということでございますし、その境界線そのものにつきましては、沼の中に三角地点を求めるというわけには参りませんが、附近の三角地点から正確に測量いたしますならば、どの地点とどの地点を結ぶ線が境であるかということは、地形及び図面において明確に表示し得るのではないかというぐあいに考えるわけであります。従いまして鉱床関係等もございまして、沼全体が一帶になることもございましようが、鉱床関係から必ずしも沼全面を一鉱区にするということにいたさないことにいたしましても、現実問題としてその限界点を探り出すということは必ずしも不可能ではないのではなかろうかというぐあいに考えておるわけでございます。新法におきましても鉱区境界は、原則といたしまして直線をもつて定めるというような仕組みにしてございまして、これは同時に測量の関係から明確に鉱業権鉱区境界線というものは図面にも表示し得るし、現地においても表示し得るという前提でできておるわけであります。ただ現実問題といたしまして、縮図の何千分の一か何百分の一か、あるいは何万分の一に表示してありまする地図と、現実実地につきましての境界というものが紛争対象になることは、沼に限らずままあることでございまして、たとえば広い平野のたんぼが鉱区設定されております場合に、その境界線がどこであるかというようなことはまま紛争が起る事項でございますが、その際にはそれぞれの通産局鉱山部保安関係の者が実地に参りまして、現地につきましてこの点とこの点を結ぶ直線境界であるということを定めることによりまして、紛争を解決いたして参つておるようなわけでございまして、沼の場合には、場合によりまして紛争が起ることも予想されますが、さような従来のあり方によりまして、十分に具体的には解決可能ではなかろうかというぐあいに考えておるわけであります。  それから第三点の水質汚濁防止法というものが政府において考えられており、もしそれが実現する場合には、鉱業に対して、重大な影響を及ぼし、場合によつて鉱業そのもの存立基礎を脅かすおそれがあるが、その法案についてどう考えているかというお尋ねでございます。実はこの問題につきましては、ただいまのところではまだ法案ができる段階には至つておりません。しかし今高橋委員から御指摘がございましたごとく、水質汚濁防止法というものをつくろうという議は政府部内に出ておるのでありまして、私ども鉱山行政を担当いたしておる者としましては、その内容鉱業に及ぼしまする影響から、その案の内容を詳細に検討いたしておるわけであります。私どもの関知いたしております段階を御参考までに申し上げますると、現在立案されておりまする内容というものは、一口に申しますならば、鉱業に伴いまする坑内の廃水処理その他につきまして、非常に嚴格にそれを清めることを要求しておるものでありまして、現在の技術段階から申しますならば、ほとんど不可能に近いことを要求しておるような案が現在つくられておるわけであります。従いまして私どもとしましては、こういう法案がかりに実施される場合には、鉱業そのもの存立がほとんど大鉱山においても不可能であり、ましてや中小鉱山におきましては、山そのものを締めざるを得ないというような影響が生ずるというふうに考えておりまして、水質汚濁防止という趣旨はまことにけつこうでありますけれども、しかし日本鉱業がつぶれて、ただ水が清く空気がきれいになつたとしましても、国民生活というものは安定するわけじやございませんので、その程度というものは、鉱業国民経済上の重要度と、それから水を清め空気を澄ますことによる効果とを彼此勘案し、かたがた技術の進歩の段階に応じてほどほどになさるべきものではないかというような観点から、現在といたしましては、原案通り法案のできることは絶対に賛成いたしがたいということで、私どももさような意見をしかるところに申し述べておりますし、また業界からも猛烈なる陳情及び実情の披瀝が行われておるわけでおりまして、私ども、今用意されております原案通り実施されることは、万々ないものだというぐあいに考えておるわけでございます。ただこの法案趣旨は必ずしも排斥すべきことではございませんので、私どもとしましては、現在の段階は、少くとも、そういう目的に到達するのに技術的にどういうふうにやれば経済的な負担が少くて済むかということを研究し、その結果が出た場合に、それを各事業者に対して実施することを求めるというのが事の順序ではなかろうかというようなことも、あわせて意見を出しておるようなわけであります。さらに鉱山につきましては御承知の通り鉱山保安法というものがございまして、公益と鉱業との調整につきまして、現在の科学と経済段階というものを照し合せながら、ほどほどのところを嚴重に監督いたしておるわけでありまして、その面からも、水質汚濁防止法というものが鉱山適用になることは若干の疑問があるということも申し述べておるわけであります。繰返して申しますが、ただいま高橋委員から御心配のありました水質汚濁防止は、小くとも現在私どもの賛成いたしかねる内容のまま、法案として成立することは万々ないものと私ども確信をいたしておりますし、また今後その努力を続けたいと思つておりますことをお答えいたしたいと思います。     〔委員長退席中村(幸)委員長代理着席〕  それから第四番目のお尋ねにございました——お尋ねと申しますか、希望としてお出しになりました試掘権期間が、原案の年限というのが短か過ぎるということにつきましては、昨日も中村委員その他からこもごも御指摘に相なりましたことでございまするし、また私自身、この通産委員会あるいは参議院の通産委員会現地につきましていろいろとヤリングをやられました結果に照らし合せましても、再検討することが適当ではなかろうかというぐあいに考えておるところでございまして、ただその期間をどの程度にしたらよろしいかということににつきましては、この委員会としましての御結論も聞かせていただきまして、私どもとして今の鉱業実情に会わないものをむりに強行するという執拗な意思は持つていないことをこの際申し上げておきたいと思います。  それから第五にございました、きのうも出ておりました出願中の権利移転の問題でございまするが、原案は、御指摘ございましたごとく、出願中の権利そのものが非常に不安定なものであるからという趣旨のもとに、現行法と異なつた扱い考えておるわけであります。しかしただいまなりあるいは昨日御指摘がございましたように、出願中の権利移転というものが、第三者に大した不利益なり危險を與えることなく平穏に移転され、またそのことによつて、この奥深い山をみずから目と足によりまして探し求められる鉱物発見者の目に見えない縁の下の力持の御努力に報いる唯一の方法であるというようなお話もあつたのでありますが、それも確かにその通りでございまして、私ども鉱業法をつくりますゆえんのものは、鉱業合理的発展のためによりよき法律をつくるということを念願いたしておるわけでございまして、その点につきましてもこの委員会としてのまとまつた御議論も聞かせていただきまして、私どもとしても十分の再検討をさせていただきたいというぐあいに考えておる次第であります。
  7. 高橋清治郎

    高橋(清)委員 大体局長お話でよく御趣意のほどはわかりましたが、ただこういう実例があるのでございます。この酸性白土ベントナイトの山を契約しましてやつておるところに——ある一部しか採掘していないとき、その山に鉱区設定されたために、せつかく最初目的である酸性白土なりベントナイトなりというものはただ一部に採掘することができるだけで、あと採掘ができなくなつたというような実際問題があるのです。そういうときに、そういうような問題を起さないようにする意味において、これらの問題は鉱区にした方がいいじやないかということを私の実際の問題として申し上げたのであります。なお御考慮くだされば幸いだと存じます。  それから沼の鉱区設定でございます。現在これは係争中の問題になつて、今お互いに争つている問題でありまするが、ある沼の——潟沼という沼の五十分の一ぐらいの鉱区が他の鉱区にかかつておるわけであります。あとはみな別の鉱業権者になつておる。そのわずかばかりかかつているところを、夜なりなんかに相当底さらつて鉱物をたくさん出しておるわけであります。ところが表面であるならば採掘したあとはすぐ痕跡が残るからわかるけれども、沼なるがゆえにわからないのです。それで鉱業権侵害訴訟が現に起つているわけなんです。しかるにこれに対しまして、仙台の通産局ではこれがどうこうといつて、まだ実地境界もはつきりさしておかないというような現在実例が起つているのです。こういうようなことの争いを起らないようにするためには、そういうわずかばかりの五十分の一や三十分の一というような小さいものならば、沼というものは同一鉱業権者の一人に與えるようにした方がいいのじやないかという私の聞えを実際問題からして申し述べたのであります。この点よくお考えを願いたいと思います。  それから第三の問題の水質汚濁防止等については、鉱山局長確信のある、いわゆる鉱業にさしつかえるようなことは万ないという確信を持つておるということで、非常にこれは安心をいたしました。あとのことは希望條件ですからこのぐらいにして、私もちよつと用件がありますから、私の質問あと留保しておきたいと思います。
  8. 中村幸八

  9. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私の質問はなるべく他の諸君の質問と重複しない点について質問したいと思いまするが、まず最初鉱害賠償の問題についてお伺いいたします。鉱害賠償の問題については、第百十一條金銭をもつて損害賠償をすることになつております。私ども鉱害賠償原状回復するということが原則でなければならないと思うのでありまするが、かりに金銭賠償をもつてするということにいたしましても、この但書によつて見ますると、「損害賠償金額に比して著しく多額費用を要しないで原状回復をすることができるときは、被害者は、原状回復請求することができる。」こういうふうになつております。ここで被害者原状に復帰することを請求する権利を認めておりますが、しかし多額費用を要しないで原状回復することができるという制約が設けられている。そうすると、逆に言いますと、著しく多額費用を要するときは原状回復請求をすることはできないというふうに考えられるが、そういう趣旨であるかどうかお伺いいたします。
  10. 徳永久次

    徳永説明員 ただいまのお尋ねにお答えいたします。ただいま御指摘ございましたように、新法現行法と同じような原則をとつておりますが、この百十一條二項にございます條文現行法とほとんど同じ句であります。その意味は、今御指摘ございましたように、原状回復被害者請求できますのは、著しく多額費用を要しない場合ということでございまして、従いまして著しく多額費用を要します場合には、原状回復請求はできないという原則になつておるわけであります。どの程度が著しく多額であるかどうかということは、個々具体的事情によりまして、訴訟なりによりまして、合理的な線が引かれるというぐあいに了解いたしておるわけであります。  ただこの際、私お尋ね範囲を若干越えるかもしれませんが、この鉱害賠償鉱業法の中に入れました鉱害賠償考え方につきまして、なぜこういう金銭賠償原則をとり、原状回復原則をとらなかつたかということにつきまして、私ども考えを申し上げさしていただきたいと思います。実はこの問題は委員会でも、鉱業法改正審議会でもいろいろと問題になつたわけでありますが、鉱業をやりました結果としまして、他の人にいろいろな損害をおかけするというようなことがあることは、現実に目にも見えることでもありまするし、一般的に確かに言えるところであるわけであります。しかし同時に鉱業そのもの存立ということも考えなければ相ならぬわけでありますが、その際に鉱業権者にどの程度範囲において責任を課することが適当であろうかということがずいぶん熱心に議論されたわけでありますが、その結論を申しますると、鉱業を行いました結果としまして、他人に損害を與えました場合に、その損害の額を補うことは当然鉱業権者責任であろうということが皆の意見の一致したところであり、この法律に現われている通りでございます。ただその損害を與えました程度原状回復ということを考えてみますと、その間に非常な開きのある場合がまま起るのであります。たとえて申しますれば、ある田地なり田畑につきまして、その土地がその地下を掘採しました結果といたしまして收穫が減つたというような場合を考えてみますと、かりに一反歩当り十俵とれる土地が、土地が沈下した結果としまして二俵分減收するということになりました際を考えてみますと、農業を営んでいる人の受けました経済的な損害限度というものは、今まで十俵とれておつたものが八俵しかとれなくなつた。すなわち差額の二俵が農民のこうむりました被害というものの限度ではなかろうか。その二俵の限度においては鉱業権者賠償する責任がある。ところが、その二俵減收するようになりました土地を元通りに土盛りいたしまして、昔通り十俵とれるというようにいたすためには、その二俵の金額に相当する金額を何年分か注ぎ込みましてやつても、とうてい及びもつかない程度の額を要することが通例起ると考えらるれわけであります。そうなりますと、原状回復そのものは、その責任鉱業権者に負わしますならば、鉱業権者に非常に莫大な担負を負わすことになりまして、そのために鉱業がほとんど実施不可能になります。もちろん鉱業権者農民に與えました経済的の損失限度だけは補償をする責任は持たせますけれども農民としては一応それによつてこうむつた損害回復できるということになるわけであります。そういたしますと、国全体として見まして十俵とれておつた場所が八俵しかとれなくなつたということは、これはいわば農民個人の問題といいますよりも、国全体としての土地生産力の低と下いうようなことに相なるのではなかろうかというふうに考えられるわけであります。そうなりますれば、その八俵の收穫しか上らなくなつた土地を、昔通り九俵の收穫の上るような土地回復するということは、農民個々の問題といいますよりも、国全体の国土の造成なり、生産力の増大の問題に関連するんではなかろうかというぐあいに考えるのが適当ではないかというふうに考えておるわけでございます。従いましてその土地が国の農業食糧自給関係等から見まして、どうしても再び十俵とれるような土地にする価値の十分にある土地であるということになりました場合に、その十俵とれるようにするためには国がたとえばただいまも行われておりますごとく、農林省で主として行われておりまするが、いわゆる農地造成というような見地おつきまして鉱害地対象考えて、原状回復のための予算というものを見ておるわけでございますが、さような扱いにいたすことが適当ではなかろうか、かいつまんで申し上げますれば、鉱業権者はその被害者に與えた経済的な損失限度においては賠償する責任がある。さらに鉱業によりまして国のある生産力その他が減耗いたしました場合に、それを原状に復原する必要があるということになりました場合には、その限度につきましては、国全体の問題として国が何がしかの力を出して、国の生産力というものを復元するというような考え方をとることが妥当ではないか、さような見地からこの鉱業法の中には鉱業権者に課し得る賠償の義務の限度というものを考えまして、ここにありますような限度にとどめたというわけであります。
  11. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 今お話の、耕地減收状態を来して、それを原状回復することは不可能である場合をお話になりましたが、そういうことは私は例外ではないかと思うわけであります。耕地原状回復が不可能だということは例外であつて耕地原状回復することは私は可能であるということが大体通常な状態ではないかと思うわけです。またそういうふうに耕地原状回復することが不可能である地方において多く鉱業権者採掘を許すということは、私はまた大きく食糧問題から考えなければならぬというふうに思うわけで、従つてそういう場合もあるから、原状回復原則をとらないということは、私は成立たないのじやないかと思う。そういう意味において、私は今お話になりましたような、それだけの減收があるものに対して、将来長きにわたつて、年々それだけの減收する部分の補償をするということは、とうてい負担にたえられないこういうことをおつしやいました。しかし私はこの法案の中にもあります賠償を予定するところの担保の供託の問題の精神というものは、やはりそういう問題を考慮して、将来の災害をできるだけ、この百十一條の冒頭にありますように、公正かつ適切に賠償しなければならないという精神から、この供託が行われるのではないかと思つてつたのであまするが、今の御答弁によりますると、そういう将来の長きにわたつて生ずるところの損害補償はとうてい不可能だ、こういう精神になりますると、大分私はこの法の精神とも違つて来はしないか。特に公正かつ適切に賠償されなければならないという冒頭にうたつてありまするところの法の精神とはなはだ遠くなりはしないかというふうに思うわけです。その点どういうふうにお考えになりますか。
  12. 徳永久次

    徳永説明員 ただいま私のお答えいたしました趣旨が少しはつきりいたさなくて、誤解をお招きしたかと思いますが、私申し上げましたのは、ただいまの例で申しますれば、十俵とれております耕地が八俵しかとれなくなつたというような場合には、農民に対しましてはニ俵の減收だけの損害を與えたのであります。その二俵の限度においては鉱業権者は何年でも損害賠償をする責任があるという前提でこの法案ができておるわけであります。ただ原状回復になりますと、二俵分を年々お拂いする金額を——幾らになりまするか、それをかりに予定賠償というような形で、ある種の金額を出したといたしまして、その金額よりもはるかに厖大なる金額原状回復のために必要とするという場合があるわけでありまして、むしろそういうことが多いと考えられますので、原状回復責任鉱業権者に、負わすということは、鉱業権者に苛酷ではないか。被害を與えました農民には農民にその損害を與えました限度は、先ほどからの例で申し上げますれば、二俵分に相当する損害鉱業権者に拂わせるか、かような趣旨でこの法案ができております。
  13. 田代文久

    ○田代委員 関連して……。ただいまの説明によりますと、かりに鉱業権者が永劫末代までこれをやればよいのでありますが、地下資源が掘採されてなくなつた場合——必ずこれはなくなるわけでありますが、そういう場合に、たとえば田面が非常に陷落しておる場合に、その土地を使用しておる農民諸君は非常に不安を感ずる。しかも確固たる賠償能力を持つておる鉱業権者がずつと永続するという見通しのつく場合は別ですけれども、そういうふうに掘採してしまつてから鉱業権者がいなくなり、原状回復などということになれば、その賠償はだれがやつてくれるかということになつて来るし、絶えずそういう田面の使用者に対しましては不安を継続的に持たせるということになります。また食糧問題からいいましても、そういう農地保存という意味から申しましても、私は金銭賠償という点は納得できない。加藤君が御質問されましたように、私は現在の政府の立案者の意見というものは非常に片寄つておるということがはつきり言えると思いますが、その点の見解はいかがでしようか。
  14. 徳永久次

    徳永説明員 ただいまのお尋ねにお答えいたします。鉱業権者農民損害を與えました場合に、その損害限度を年々賠償させるというふうに私がお答え申し上げたわけであります。その通り法案はできておるわけであります。ただお尋ね趣旨は、そうは言つて鉱業というものは地下資源を掘採する限りにおいて存続する事業であるので、永久に何十年、何百年とわたつて事業を継続することはできない場合があるではないかというお尋ねつたと思います。お説の通りその鉱業権者はその鉱区につきましてはある限度壽命というものもありまして、拂えないという場合も確かにあるわけであります。しかしながらそれが同時に農民の不安であると同様に、農民としましては被害者としてその不安を除去する道というものも法案の中に講ぜられておるわけであります。それは現に行われておることでございますが、予定賠償という道も開かれておるわけであります。もしその点に被害者として不安があります際は、当然にさような道が選ばれることに相なろうかと思うわけでありますが、たとえて申しますれば、米二俵の減收というものが、金額に換算して幾らになるか、それをその当時の経済的な金利水準で割りました元金と申しますか、そういうものが一つの予定賠償の目安になるのではないかと考えますが、そういう元金そのものを、被害者の方では鉱業権者から賠償としてお受取りになりますれば、結果といたしまして年々賠償できると同じような契約上の効果があるわけであります。さようなことが現に慣行として行われております。この法案では、この種の予定賠償が合理的に片づくように、現行法よりも若干の改善を加えたつもりであります。
  15. 田代文久

    ○田代委員 予定賠償の件ですが、これは一応出ておりますが、実際問題としてこれが実際に実施せられることは、農民にしましても、その他の被害者にとりましても依然として不安が続きます。実際に私は実情をよく知つておるのですが、こういうことによつて実際の被害が十分賠償されてはいないのです。実際に予定賠償といえば、とにかく百年も二百年もそういう土地が陷落のまま放置されて、それが年々歳歳金銭賠償されて続けて行かれるという場合に、十分復旧費に当る、原状回復に値するくらいの額まで予定賠償の金が積み立ててあるということであれば別ですが、実險においてそういうことはほとんどありません。どうしてもこういう点は弱いのであつて原状回復は反対だという見解に対しましては十分な根拠がないといわざるを得ないと思いますが、その点はどうですか。
  16. 徳永久次

    徳永説明員 私今一つの例について申し上げたのでありますが、予定賠償になります際の金額を幾ばくにするのが妥当であるかということは、当事者相対でおのずから合理的にきまると思いますが、田代委員お話は、その金額原状回復をするに適当な金額でなければ満足できないという御意見のように拜聽いたしたのでありますが、これは私どもといたしましては、鉱業との関連から考えますれば、先ほどの例で申しましたごとく、かりに年々二俵の收穫が減少したとしますれば、二俵の收穫減少の額が損害の額でありますが、その額が年々入るに相当するだけの元金と申しますか、そういうものが與えられれば、農民それ自身としては自分がこうむりました損害は十分に賠償されたというふうに見てしかるべきではないかと考えるわけであります。ただ御指摘のございましたごとく、農民自身の経済的な損失というものは経済的に回復されたといたしましても、国土の生産力の低下と申しますか、この点は国が何らかの原状回復の措置を講じない限り残るということは確かにあるわけであります。この点は先ほども申しましたごとく、鉱業というものは国の存立にきわめて基本的な重要な産業でありますし、またそれは有限なものでありまして、どこを掘つても出るというわけのものでもありませんし、その鉱業存立させるということを考えました場合に、原状回復原則にするということにいたしますれば、先ほどの例で申しましたごとく、経済的な損失は十分カバーし得るが、それよりはるかに多額金額を要する原状回復鉱業権者の義務にいたしました場合に、鉱業がはたして成立ち得るかどうかということに非常な疑問があり得るわけでありまして、その間のギヤツプは結局国全体の問題として国土を今後いかに安定させるかという問題として解決されるのが妥当な道ではないかと考えておるわけであります。
  17. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そうするとこの法の精神は完全賠償というふうに解してもよかろうと思います。そういうふうに解釈しますと、結局原状回復原則とすることが正しいのではないかと思うのであります。もしそうでなくして、あくまで金銭賠償原則としなければならぬということになりますと相当大きな問題が出て来る。たとえば耕地の荒廃を来すような場合でも、金銭賠償さえすればいいということになりますが。そういう点はどういうふうにお考えになりますか。鉱業開発の見地から、広範囲耕地の荒廃を来しても、金銭賠償をすればいいということになろうと思います。私はそういう観点でなくして、あくまで耕地は尊重するという建前で行きますならば、原状回復をもつて原則とする。そうして費用の超過した部分は、今おつしやつたように国庫の補助なり何らかの補助によつて補填すればいいというふうになるのではないかと思いますが、この点はどういうふうにお考えになりますか。
  18. 徳永久次

    徳永説明員 若干立案の趣旨と見解を異にいたしますので、重ねて申し上げたいと思います。鉱業権者被害者に與えました経済的な損失限度は、完全賠償——加藤委員のおつしやいました完全賠償という言葉には相違ございませんが、その賠償範囲内容は、與えました経済損失限度ということでございまして、それは完全賠償責任鉱業権者にある。しかし原状回復をするかどうかという問題は、これは方法の問題でありまして、そこに若干の食い違いがあると思うのでございます。原状回復をすれば、まさしく結果としても完全賠償になることは明らかでございます。しかしそれは今の例で申しますれば、被害者である農民が受けました経済的な損失金銭賠償で十分に解決されておるというぐあいに考え得ると思われるわけでございます。従いまして金銭賠償被害者の受けました経済損失は十分にカバーし得る。ただ原状回復をするかしないかということは、ここにございますごとく、その賠償金額が著しく多額でない場合には、鉱業権者には義務を負わす、著しく多額である場合には。鉱業権者はそこまでは義務はないというふうな建前をとつておるわけでございます。それからさらにお尋ねがございましたが、それならば鉱業権者は地方の耕地なりその他がいかように相なろうとも、金銭賠償さえすれば掘つてよろしいというふうに考えておるのかというお尋ねの点でありますが、この点につきましては、私ども考えなり、この法案のできております趣旨を御説明申し上げますと、たとえて申しますれば、東京のまん中にかりに石炭があるといたしまして、その石炭を掘つた場合に、東京の町全体ががちやがちやになるというようなことを想像いたしました場合、石炭を掘るために町はどうなつてもよいかということでございますが、これはそもそも私ども考えといたしまてしは、それだけの損害を拂つて鉱業そのもの存立し得ないというふうに考えるわけであります。抽象的に申しますれば、その鉱業の実施によつて得る国民経済上の価値いかんということと、それからその鉱業をやることによりまして、国に與える損害程度いかんということを彼此較量いたしまして、鉱業を認める場合と禁止する場合とを定めるべきものであろうかと考えるわけであります。現行法によりましても、実際上さようなある程度の運用はいたしておるわけでありますが、新法によりましては、その点をより公平な第三者的な見地から、大所高所から適正に判断するという仕組みを考えることがより合理的であろうという趣旨のもとに、御案内のごとく土地調整委員会というような制度を設けまして、かりに通産局長が鉱業の実施を認めた地区につきましても、場合によりましては、土地調整委員会に、鉱業を許すべからずというような訴えができるように相なつておりまするし、またさらに進んで、土地調整委員会は、最初からこういう地域に鉱業をやることは国全体の見地から適当でないという地域につきましては、鉱害地という形によりまして鉱業を禁止する区域を指定し得る道も開かれているわけでありますので、法の運用によりまして、個々実情につきまして適正な処置がとられるものと考えているわけであります。
  19. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 今までの御答弁を聞いておりますると、結局現状回復原則としてもさしつかえないということになるように思います。特に耕地の場合をしばしば引例されましたが、農民の気持というものは、その減收の部分だけを金銭補償すれば満足するというものではないと私は思う。局長金銭でその対価を補償すればそれで済むとおつしやいましたが、農民というものはそういうものではない。自分の土地を失うということはやはり非常な苦痛であるわけであります。それから上る收穫の対価だけ補償してやれば、遊んでおつて金がとれるというふうに考えられるかもしれませんが、そういうものではないのであります。今までの御説明を聞いておると、現状回復原則としても一向さしつかえないというふうに結論はなつて来ると私は思うのであります。それをあくまで現状回復でなくして、それを申請をして、ことに多額費用を要しない場合にのみ限るということになりまする根拠が、私にはどうしてもわからない。これに要するにできるだけ少額の金銭をもつて賠償に充てるという鉱業権者の利益の立場からのみ考えられたことに帰着すると思うわけであります。その点をもう一ぺん、ひとつ明確にお答え願いたいと思います。
  20. 徳永久次

    徳永説明員 私の説明が不十分だつたかもしれませんが、私の答弁を聞いておると、現状回復でもさしつかえないというつもりで言つているのじやないかと思われるというお話加藤委員からしばしばございましたが、それは非常な間違いでございます。私は重ねて申し上げまするが、被害者に與えました損害限度金銭賠償鉱業権者に、完全に行わしめる。しかしその被害を現状回復するということになりますれば、その被害者がこうむりました経済的な損失よりはるかに大きく金銭を要するのは通例と申しますか、ままあるわけでありまして、それを鉱業権者の義務ということにいたしました場合には、鉱業はほとんど成立たないという危險が大きい。従つて現状回復原則とするということは適当でないというぐあいに考えるわけであります。ただ私が話の途中で、農民のこうむりましたところの損失について、たとえ話で、年々二斗減收した場合には二斗分を拂えばいいじやないかと言つたことに対しまして、加藤委員から、農民の立場というものは、ただ二斗の減收にとどまるわけではない。土地に対する執着、あるいは耕地を失うことにより、商売をかえなければならぬとか、その他の損失もあるではないかというお話がございましたが、その点は私もたとえ話で簡單に申し上げたわけでありますが、大筋としては、被害者の受けました経済損失鉱害賠償とは別であるというぐあいに考えまするけれども農民の例で申しますれば、たとえば農地を失うことによりまする商売がえのための移転料とか、その他というようなものも、現実鉱害賠償の場合にも計算に織り込まれておるようであります。これは個々の具体的な事情によりまして、裁判官がそのときの状況により妥当なさばきをつける問題である法はその基準になるところを明らかにしておけば、個々の具体的な運用は裁判官が適当にさばきをつけるものであるというぐあいに考えておるわけであります。
  21. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 見解の相違というような点もありまするから次に進みまするが、そうしますると、三十五條に鉱区を許可する場合鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるときは許可しない。こういうふうになつておりまするが、これは大体今までおつしやつたような完全賠償の精神でこの経済的価値というものが判断されるかどうかということをお伺いいたします。
  22. 徳永久次

    徳永説明員 この三十五條にございます「出願地における鉱物の掘採が経済的に価値がないと認めるとき」ということは、ただいま御指摘がありました点を全然排除したものではございません。むしろこの中の言葉に包含しておりますことは、多少違つたと申しまするか、たとえば具体的な例を申しまするとわかりやすいと思いますが、現在の経済採算で申しますれば、金鉱の場合は、山元に精錬所を持つております場合には、四、五グラムで百万分の四か五かあれば、そろばんに合うというぐあいに了解されております。また売鉱いたします場合には、一〇%かあるいはその程度以上のものがなければ成立たないというぐあいに、いろいろ了解されておるわけであります。もちろんその採算の前提としまして、鉱業によつてある種の鉱害を生じた場合には、その賠償を拂うということが織り込まれて、経済的な段階というものが、おのずからそのときどきによつてきまつておるわけであります。たとえば金につきまして、百万分の一以下しかないというようなケースを考えてみますと、現在の採鉱技術あるいは経営方式ということを前提として考えました場合に、とうてい鉱物としての価値がないのだという場合があるわけでさりまして、それはいわば金鉱でなしに、石ころにひとしいというものにつきまして、出願がなされるということがございますのでそういう際に、それは経済的価値がないという意味で、この條文は表現されたと思います。
  23. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そうすると、この三十五條の経済的価値云々ということは、主として品位、賦存状況に重点を置いてこのとであるとおつしやいましたが、たとえば現在の筑豊炭田のような、至るところ鉱害を生ずる危險の予定されるところにおいては、そういう点のみから許可するということは、非常に危險ではないか。大きな鉱害の危險が予想されるところにおいて、それを予定しないで、單に品位、賦存のみとはおつしやらなかつたけれども、そこに重点を置いて許可する場合には、鉱害が生じた場合に、その鉱業権者鉱害賠償の能力なしというような事態が生じはしないかと思うわけですが、その点の御見解はどうでありますか。
  24. 徳永久次

    徳永説明員 きわめて抽象論でお答えいたしますが、この三十五條をごらんいただければ、出願を許可しない場合というのは、経済的な価値ばかりではございませんで、「保健衛生上害があり、公共の用に供する施設を破壊し、若しくは農業、林業若しくはその他の産業の利益を損じ、公共の福祉に反すると認めるときは、その部分については、その出願を許可してはならない。」というのでありまして、ただいまお尋ねのございました品位とか、あるいは賦存の状況だけから判断するというわけのものではないように、條文はできておるわけでさります。
  25. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 この法文の條項によりますると、私が今申し上げたようなことを、十分考慮しなければならぬと思うわけです。そこで今申し上げました特に筑豊炭田のような場合は、相当そういう点を考慮されると、鉱業権出願の許可をする範囲が狭くなりはしないかと思うのです。そういう場合には、何か特殊な考慮を国家として拂う御構想を持つておられるかどうか。先ほど申された日本の産業構造の上から、あるいは国土計画の上から、総合的に何か国家が補償するような、何らかそうした鉱区に対しての助成というようなことを将来考える必要があると思うが、その点についての御見解を承りたいと思います。
  26. 徳永久次

    徳永説明員 鉱害の適正な賠償のために、鉱業権者に一定の範囲責任を課するのみならず、国の産業構造あるいは国土の見地から鉱害地の適正な始末につきまして国が何らか考えるつもりがあるかというお尋ねでございますが、これは非常に重要なお尋でございまして、私ごとき末輩が責任をもつてお答えする範囲を越えておるかとも思うわけであります。しかしただ私指摘いたしまして御参考になりはしないかと考えますのは、一つは御承知のごとく若干特殊な原因に基くものでもございましたけれども、石炭の掘採によります鉱害賠償のために、特別鉱害法というものが前国会におきまして成立しまして、それがまさに発足せんとしつつあるということもお考え通りであります。またその以前からも、農林省が農地造成ということで、反当り農地の現状を確保するために数万円の金を投じてやろうとしておるということは、御案内の通りでございまして、それを将来どの程度の規模において行うかということは、私ごときのお答えする以上の問題かとも思いますけれども政府部内におきまして、そういうつもりで財政の許す範囲とも見合いながら行われておるという片鱗だけはおくみとりいただけるのじやないかと思つております。
  27. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私は鉱害賠償の問題は政府がよほど本腰を入れておやりにならないと、いろいろな法文の上の嚴重な規定をかりに設けましても、空文に帰すると思う。従来法の欠陷もありましたけれども、至るところに特別鉱害以外の鉱害を生じて、その賠償並びに復旧が行かれておらないという点から見ましても、この問題はよほど政府が本腰を入れられないと、いろいろな摩擦を生ずると思うわけであります。私はこれに関連して思い出しますのは、第七国会において本院において全会一致の決議をもつて鉱害復旧に関する特別決議が行われております。申し上げるまでもなく特別鉱害にあらざる百八十億に上る現在の一般鉱害に対して、国土保全の上から、あるいは民生安定の見地から、拔本塞源的な対策を講ずる必要があるという決議が行われております。この決議に従つて政府はいかなる処置をとられたか、その百八十億と見積られた鉱害の原因というものについて、その後調査せられたかどうか。もし調査せられたならば、その原因はいかなるところにあつたかということをお聞きしたい。
  28. 徳永久次

    徳永説明員 ただいまのお尋ねでございますけれども、非常に大きな問題でございまして、私の職掌柄お答えする範囲以上のものかと思いますので、別にまた大臣なりあるいは政務次官なり出席しました際にお答えさせていただきたいと思います。
  29. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 決議を尊重しなかつた責任鉱山局長にはない、こういうことをおつしやるわけですね。
  30. 徳永久次

    徳永説明員 重ねて追究されておりますが、決議は私も十分承知いたしております。しかしながらこの決議案は資源庁の所管ではございますが、私の鉱山局の所管ではございませんので申し上げかねます。
  31. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 資源庁の所営であるとおつしやると、実際が資源庁の責任になるわけですが、それでは鉱山局長が資源庁の長官にかわつてお答え願いたいのです。もし政府でこの衆議院における全会一致の決議が尊重されておつたならば、当然鉱山局においてもこの問題は十分調査しておらなければならない。特に地方の通産局鉱山部において調査されておらなければならないと思う。それを調査されておらないとすれば、これは政府の怠慢であつて、一鉱山局長責任ではないかもしれないが、しかしそれは資源庁の責任である、所管であると言つて逃げられるということは、私はおかしいと思う。そういう所管争いでなくして——所管違いの言葉で逃げられることははなはだ心外ですが、しかしお言葉から察すると、この決議に対しては何ら政府が適当なるところの調査対策を講じておらない。対策はまだ講じておらないことはわかつておりますが、調査すらもしておらないということに帰着するように思う。これははなはだ私は遺憾であると思います。この点について今後できるだけ早く原因の調査——いろいろな原因があるでありましよう。またあるいはこの百八十億という見積りは、何らかの行政当局等の一つの意図の上において出された数字かもしれません。そういう点はできるだけ早く調査してもらはなければならないと思うわけです。その点についての御見解を一応承つておきたいと思います。
  32. 徳永久次

    徳永説明員 重ねて所管外で逃げるわけでございませんが、要するに問題になつておりますのは、石炭鉱業に伴います鉱害の問題でございます。御案内のごとく、資源庁の鉱山局は石炭以外のものを扱つております。炭政局もございますし——もちろん資源庁の中ではございますが、私事情を詳細に存じませんけれども、いずれ長官なり次長なり、あるいは炭政局長が出席いたしまして御答弁申し上げることにいたします。
  33. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 それではなお二、三他の問題についてお伺いいたしますが、租鉱権の設定という新しくできました制度についての趣旨ですが、これは法案の中にはあまり説明が出ておりません。一体これはただ單に従来の斤先掘に対して法的根拠を與え、責任を持たせるという趣旨であるかどうかお伺いしたいと思います。
  34. 徳永久次

    徳永説明員 七十一條以下掲げております租鉱権の制度は、御承知の通り現行の鉱業法にはないのでございまして、ただこれと同精神と申しますか、類似の趣旨は石炭鉱業等臨時措置法あるいは戰時中ありました重要鉱物増産法の中に鉱業権の使用権という形で法制の中にあつたわけでございます。同時に日本鉱業の慣行としまして、ただいまもお話のございました斤先掘というような慣行もあつたわけでありますが、過去の法制はそれぞれ臨時立法の形において行われておりましたが、新法の中におきましては基礎法の中にそれを包攝することが妥当であろうということで、大体は従来の精神を使用権を生かしながら法制化することにいたしたわけでございます。
  35. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そうすると、従来試掘権の中に斤先業者というものがあつたわけですが、そういうものは今後なくなるわけですか。試掘権の中には租鉱権というものは設けられなくなるわけですか。
  36. 徳永久次

    徳永説明員 今お話がございました斤先掘と申しますのは、いわゆる俗語でございまして、鉱業法上は過去においても認められた制度ではないのでございます。鉱業法令上は基礎的な現行法ではなしに、ただいま申し上げたごとく、鉱業に関する臨時法としてつくられました戰時中の重要鉱物増産法あるいは終戰後の石炭鉱業等臨時措置法、その中に初めて認められたものであります。しかしてこれを試掘権に認めるかどうかというお話でございますが、それは試掘権には全然認められておらぬわけであります。ほかの既存の臨時立法の中にもないはずでございます。と申しますのは試掘権はあくまで鉱業をやります前提としての試掘行為のための認められましたかりの権利で、非常に幅の狭い内容を持つた鉱業権でございまして、鉱業権の本体はあくまで採掘権にあるわけでありますから、お話の斤先その他の権利、これも新法では租鉱権と申しておりますが、これは本来の鉱業権である採掘権に認めるだけで十分であり、またそれが適当であると考えております。
  37. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 鉱業権者が租鉱権をもつて、分割して鉱区を貸す場合に、多くの場合大体掘り盡した鉱区の、いわゆる残鉱を租鉱権者に貸すということになりはしないかと思われる。そういたしますと、鉱害がそういうところから頻発するというような事態が起ると思うのです。貧弱な租鉱権者に、いわゆる鉱害賠償責任を負わせておりますけれども、しかしそういう場合に実際には負担の能力がないということになりますが、その場合には鉱業権者にその責任を負わせるという明確な規定、私の見落しかもしれませんが、ないように思います。
  38. 徳永久次

    徳永説明員 お話のように租鉱権は残鉱その他の場合に行われるのが多いわけでありますが、その鉱害賠償責任につきましては、租鉱権のある間は租鉱権者が連帶して責任をとつておりますし、租鉱権がなくなりました場合には、鉱業権者責任を持つというような構成にできておるわけであります。
  39. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 それから八十六條ですが、租鉱権者は六箇月以上その事業を休止してはならないというようにうたつてあります。鉱業権者の場合は、一箇年以上休業したものは鉱区の取消しを命ずることがあるということになつて、ここに区別がありまするが、さらにその区別された理由と、休止してはならないというだけで、休止したらどうなるかという点まで明確になつておらぬが、その点をどうぞ……。
  40. 小林健夫

    ○小林説明員 技術的な問題になりますので、かわつて御説明いたします。六箇月以上休止いたしました場合は取消しができるということに規定はなつておりまして、六箇月以上の休止はできないことに一応なつております。租鉱権は実際に例外的のこともありますし、現実にもこれを掘るということで始める作業でありますから、大体事業を継続することが当然であつて、そう長期間の休止はあり得ないというところから、そういうふうに規定されております。
  41. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 大分法文の條文外にわたつて、前後しましたので、今度は初めにかえつて二、三重要な点をお伺いしたいと思いますが、新たに追加された鉱物の中で、昨日も中村委員から御質問のありました耐火粘土の中で、非常に低品位のものが実際上鉱物に追加されるということになると、非常に困る面が出て来ます。昨日多治見地方と明確に御指摘がありましたから、多治見地方のことについて申し上げますると、大体多治見地方の耐火ゼーゲル錐の三十番以上の耐火粘土というものは、相当市場価値も高く、またその用途も従つて広いわけですが、それ以下の低品位の粘土というものは、主としてあの地方におきましては陶磁器の副原料として使つておるので、その使われる範囲は非常に低いけれども、価格はあまり高くなりますると、陶磁器の生産コストに非常に影響いたしまするので、これはどうしても価格が低いことが必要であります。従つて現在これをあまり大規模にはやつていません。できるだけ地表に近いところのものをきわめて小規模にやつておる程度で、これを大規模にやつておりまするものは、三十三番、四番、五番というような、きわめて高品位のものばかりです。そういう低品位の耐火粘土に対しましても、鉱業法適用を受けるということになりますると、実際問題といたしまして、採掘をする人が非常に少くなる、また価格が非常に高くなるという点から、陶磁器のコストの上に非常に影響するわけです。現在特に輸出陶磁のコストが引下げられなければ国外の需要に対して応じられない現状におきまして、この副原料の価格の騰貴のために輸出陶磁器のコストが上るということは、これは相当大きな問題であると思うわけですが、実際この地方で小規模に採掘しておりまする場合には、あまり大きな鉱害というものもございません。またその地方々々でその鉱害は山の持主あるいは市町村で処理をいたしております。これを一ヘクタール以上の鉱区設定されて、大規模にやらなければならないというふうになりますると、鉱害問題が非常に大きな問題となつて、また事実上その鉱害賠償の能力がない、また責任を負う人が従つてなくなる、こういうようなことになるわけです。それをあえて責任を負わせようといたしますると、これは実際問題として採掘できない。採掘できないことはさしつかえないようですけれども、陶磁器のどうしてもなくてはならない副原料が採掘できないということになりますると、非常に重大な問題であると思いまするが、この点についての御見解をもう一応承りたいと思います。
  42. 徳永久次

    徳永説明員 ただいま御指摘がございました多治見地区の耐火粘土につきまして、原案通りこのまま適用するかどうか、適用すれば非常にむずかしい問題が起るのじやないかというお尋ねでありますが、昨日もお答え申し上げましたごとく、多治見地区は特殊のケースだと考えておるわけであります。ただお話ございましたように、耐火度の低いものは除外するというわけにも必ずしも参りませんので、多治見地区におきましては耐火度の低いものは耐火粘土本来の用途に利用されないで、ほかの用途に利用されておるということも明らかでございますので、いやしくも耐火粘土でございますれば、他の地区では十分に耐火粘土として利用され得るケースのものであります。そういう耐火度によつて区別をつけますことは、国全体の耐火粘土の合理的な利用という意味から問題があるわけであります。ただ、しかし多治見地区につきまして、きのうもお答えしましたように、現行法の運用と申しまするか、多治見地区におきまする出願の処理等で解決が可能かどうか。もしそれが解決不可能だという場合に、多治見地区の耐火粘土につきまして、何らかむりのない方法を具体的に考える必要があるのじやなかろうかということは、十分私ども考えておるわけであります。それはなお法の運用の手続的な点も多少研究させていただきまして、その上でどういう方法を講じましたらよろしゆうございますか、この委員会にも十分御相談申し上げて善処いたしたいと考えておるわけであります。
  43. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そうした特殊な地域に対して、何らかの考慮を拂わなければならぬというお考えでありますれば、はなはだけつこうでございまして、これ以上申し上げませんが、ただ御参考のために申し上げておきますが、この低品位の耐火粘土というものは、実は陶磁器の副原料としてはなくてはならないもので、たとえば愛知県の瀬戸地方におきましても、大体瀬戸地方では賛成のようにいわれておりますけれども、これは大きな耐火粘土業者の主張が大きく現れたのでありまして、やはりそうした副原料の利用者側としては、そういうむずかしいことになつては困るという意見は相当強いのです。それからまた三重県におきましても同様でありますが、これは單に多治見地方のきわめて局限された地区の問題ではないということを御認識願いたいと思います。  次に第十五條の、土地調整委員会鉱区禁止区域を定めるということになつておりまするが、その場合單に鉱物を指定するということになつておりまするが、鉱物を指定するのみであつて、地域としての禁止区域を定めるということではないのでしようか。
  44. 徳永久次

    徳永説明員 この十五條の後段でございまするが、鉱物を指定して鉱業権設定を禁止した地域は、その鉱物について鉱区とすることができない地域も、もちろん明示するわけであります。
  45. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 そうすると、鉱物を指定して地域が禁止されるということになりますと、その指定以外の鉱物がある場合には鉱業権設定はできますか。
  46. 徳永久次

    徳永説明員 この條文は一般公益、農業、林業等のことでございます。たとえばさる地帶を考えまして、石炭ならぐあいが悪いが、石油ならば井戸を掘るだけでよいから大したことはないというような場合が鉱業の特殊性として当然にあるわけです。さような意見から鉱物を指定するというわけでありまして、指定された以外のものは掘つてもよいということになつております。
  47. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 それからの二十四條の通産局長と都道府県知事の協議の場合ですが、協議がととのわなかつたらどうするかということが明確でないのですが、この点はどういうことになりますか。  それからそれと同じような問題ですが、八十八條の勧告に応じなかつた場合、あるいはまた九十條にうたわれておりますところの八十九條の協議がととのわずして、しかも通産局長の決定を申請しなかつた場合にはどうなるのですか。
  48. 徳永久次

    徳永説明員 順を追つてお答えいたします。第二十四條の、出願の際に通産局長は都道府県知事に協議しなければならないという点でございますが、これは協議がととのわない場合には、解釈といたしましては通産局長が知事の意見と異なつた措置もできるというのが法文的な解釈でございます。ただ実情は、鉱業法の運用につきましては、古くから知事といろいろ協議を重ねましたが、意見の合わないものを強行したような例は、ほとんど私は耳にいたしておりませんので、御参考までに申し上げておきます。  それから八十八條でございますが、これは昨日も御指摘がございましたように、俗に申しますれば勧告のしつぱなしでございまして、勧告が当事者によつていれられなかつた場合の措置というものは、何ら規定がいたしてないわけであります。  それから九十條におきまして、決定を申請することはできると書いてあるが、しなかつた場合にはどうなるかということでございます。この條文鉱区の増減等に関することでございますが、当事者が決定を申請したが、その目的を実現することをあきらめました場合でございまして、その際には、そのケースはそのままに相なるわけでありまして、当事者があきらめた場合には、国としてどうこうするということは考えていないわけであります。
  49. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 二十四條の場合ですが、協議がととのわなかつた場合は通産局長の意見従つてやるという御趣旨のようです。そして今までそういう事実はないとおつしやいますが、しかし通産局長がそういう最後の決定権を持つているといたしますれば、府県知事の方でも結局折れなければならないということで、そういう事態に至らなかつたと思います。実は最近佐賀県の武雄温泉の近くに新しく鉱業権を一部買收して採掘するという申請をした場合に、知事の意見通産局長の意見が違つているわけです。大体知事はその地方の温泉地帶の住民の意思を尊重して、温泉に非常な損害を與えるという見地に立つて反対しておるのでありますが、局長は大体その意見に従うわけには行かないというような見解を持つておられたようです。この地方の住民のほとんど大多数の意向従つて、県知事がそうした通産局長の意見と対立しておつた場合に、最後の決定権を通産局長が持つているといたしますと、やはり相当重大ないろいろな問題を起すと思います。そういう協議がととのわなかつた場合に、ただ單に通産局長が知事の意向を無視して最後の決定をするということではなくて、他の何らかの方法をとる必要がありはしないかというふうに思うわけですが、この点はどうですか。
  50. 徳永久次

    徳永説明員 ただいま具体的な問題としてお話のございました武雄の問題は、私詳細には存じませんが、この二十四條の問題ではございませんで、あれは設定されました鉱業権鉱業権者考えている計画通り施業を認めるかどうかという問題と温泉との調節の問題であるというふうに現在私は了解しておるのであります。いずれにいたしましても、出願を認めましたり、あるいは施業を認めました場合に、それがお話のごとく、通産局長が鉱業権者の立場に偏しまして、それを措置したきらいがあるという場合は、それによつて影響をこうむる人からその処置の適否について当然に疑問を持たれるわけですが、その際の救済の道といたしましては、第百八十七條の事案を土地調整委員会に持ち込んで、土地調整委員会において、第三者的立場において公平に措置されるという構成に相なつているわけであります。
  51. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 それから先ほどちよつと申しました百十七條の供託すべき金額の問題ですが、一トンにつき二十円というふうに規定されておりますが、私はこれでは少し低いのではないかと思うわけです。先ほどの耕地鉱害の現状復帰の場合の問題に関連して来ると思いますが、私は、耕地の場合におきましても、やはりできる限り現状回復を実行しなければならぬと思うわけですが、その趣旨からいいまして、損害賠償に充てるべき供託金額は、やはり、ある程度その賠償に充当し得るものでなければならぬと思うのであります。それにつきましては、二十円は少し低きに過ぎはしないかというふうに思うわけでありますが、その点はいかがでございますか。
  52. 徳永久次

    徳永説明員 この金額の適否の問題につきましては、昨日もお答え申し上げましたが、主要炭鉱における実際の賠償の平均の額がトン当り三十六円でございます。ただ会社、事業場によりまして、六、七十円になるケースもあるというようなことから、おおむね三分の一を目安にいたしまして、二十円という価格がきめられたのでございます。この三分の一というのは、でたらめに三分の一を選んだわけではございませんで、普通補償金という場合には、その金額の三分の一が補償金のわくに定められておる例が通例でございますので、鉱業法の場合におきましても、そのおおむね三分の一を目途といたしまして定めたということなんでございます。
  53. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 最後に、もう一つお伺いしたいことは、この法案によりますと、従来の法律に比較いたしまして、かなり期限というものが嚴重にされておるようであります。試掘権採掘権に六箇月であるとか、いろいろ期限が相当嚴重な建前において規定されておりまするが、しかし官庁側の取扱いにおける期限というものが一切規定されておりません。私はこれは非常に片手落ちではないかと思う。業者側に対しまして、嚴重な意味においていろいろな期限が付されるということは、やはり鉱業発展意味において必要なことであると思うわけですが、さらに一方において、官庁側のいろいろな事務の取扱いの上においても期限が付されなければならない。たとえば出願に対するところの許可というものは、何箇月以内において行わなければならない。何箇月以内に行われなかつたものは、自動的に許可されたものと認めるというような期限が付されてしかるべきである。従来、二年も三年ほもつておかれたようなことも間々あるようですが、私はこの点は、新しく生れましたこの法案趣旨から申しましても、官庁側もそうした事務的な処理の上におきましても、可能な範囲において期限が付せらるべきであると思うが、この点はいかがですか。
  54. 徳永久次

    徳永説明員 ごもつともなお尋ねでございまするが、ただこの法案の中に期限をつけましたのは、現行法に比べまして、鉱業権者に不利なようには必ずしもしてはないのでありまして、昨日来問題になつておりました試掘権の問題、あるいは採掘権に期限を置いたという問題には、いろいろ御批判を受ける余地があるのでありますが、たとえば採掘鉱区につきまして休業する場合に、許可、認可を受けなければならないという道を開いておるのでありますが、これは現行法から比べますと、むしろよりよくしたつもりでございます。現行法では、休んでおりますものは、法律の体系から申しますならば、ぽかりと鉱業権自体がいつでも取消される事態になるかもしれないというふうに規定されておるわけでありますが、休むには休むだけの法的な事由があるのでありますから、それを認可ということにすれば、かえつて安心して休めることになるという趣旨で、むしろ改善したつもりでおるわけであります。それからさらにお尋ねの、期限を付しておるならば、たとえば出願の際の役所側のそれを措置する期限を設けることが妥当ではないかというお尋ねでございますが、これは原則論として、私たちは異議がないわけでありますが、ただ御承知の通り鉱業権につきましては、ことにこの戰争によりまして原本をなくした地域が相当ありまして、その地域におきましては、昔の鉱業権の始末がつけかねるがために、その疑わしい地域につきまして新たに出されておりまする鉱業権の措置は、古いものの措置をつけなければできないという事態に当面しておるわけであります。こういうふうな問題を合理的に解決いたした上でなければ、お話のような趣旨に沿い得ないわけであります。その点につきましては、前々国会でございましたか、滅失鉱業原簿調製等臨時措置法という形で、その合理的な解決をはかるように努めているわけであります。そういう前提條件が確定いたしました際に、お話のような趣旨は当然に考えなければならないかと思うわけであります。現状におきましては、特殊の事情等から、さようにはかるのが、むしろ出願者に混乱を起しまして、無用の損害を與えるというような障害がありはしないかと思つておるのであります。
  55. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私は、いろいろな期限が設けられたことについて、業者側に不利な條件がつけられたというふうには考えておらない。その点は誤解しないように願いたいと思います。それから今原簿が滅失したために、そういう期限を設けることができないというお話でしたが、それでは原簿が整つた場合には、そういう期限を設けて、事務の敏捷化をはかるという考えを持つておられるというように解釈してよろしいのでありますか。  それから最後に一つ落しましたが、こういう場合があると思いますが、やはり追加鉱物の場合ですが、たとえば石灰岩であるとか、あるいはけい石、長石等、従来持主と長期の契約をして、賃貸料を長期にわたつて先拂いしている場合に、鉱業権設定したらどうなるか。その先拂いしたものを、拂いつぱなしで何ともならぬものであるかその点について伺いたい。
  56. 徳永久次

    徳永説明員 私の答弁は抽象的に相なるかと思いますが、この点につきましては、昨日まだ未定稿でございますけれども、お配り申し上げました施行法の中に、新たに新鉱物として追加されました鉱業鉱物を、過去において掘採しておつた人は、その土地所有者との間に、お話のようないろいろな掘料と申しますか、掘採料等のとりきめがあつたわけであります。それが鉱業法になつたからといつて、あしたから何も拂わないというようなことは穏当でございませんので、金額その他、はつきりいたしておりませんが、個々の事案によつて処理さるべき問題でございますから、法としましては、適当に支拂うべきものだという精神におきまして、相当の補償請求することができるというふうに相なつておるわけであります。この事例は、今回、事新しいことでございませんので、過去におきましても、新たに鉱業法鉱物として追加した事例が数回あつたわけでありますが、法体系の問題としましては、今度の施行法の中に織り込んでおりますのと同じ文句で織り込んでございまして、個々のケースの場合により、裁判所まで問題が持ち上げられまして、妥当に判定を見ておると思いますので、その例に従つたわけであります。
  57. 加藤鐐造

    加藤(鐐)委員 私はこの鉱業法に対する質問はこれで打ち切ります。採石法についての質問は留保いたしておきます。
  58. 中村幸八

    中村(幸)委員長代理 ほかに御質疑がございませんか。——御質疑なければ、本日はこの程度にて散会いたします。あすは午前十時から開会いたします。     午後三時四十一分散会