○高辻
説明員
土地調整委員会設置法案が、前
国会におきまして提出の運びに至りませんわけでございまして、ただいま立案の過程にあるわけでございますが、仰せのごとく
鉱業法案なり、
採石法案なりと非常に密接な
関係がございます。その概略についてお話を申し上げたいと思います。
この
法律案は今申し上げます
通りに、
鉱業法案なり、
採石法案と密接な
関係のあるものでございますが、この
鉱業なり、採石業なりは、一方におきまして公共の福祉のために重要な企業でありますから、大いにその開発を獎励しなければならないことはもちろんでありますが、他方におきまして、農業、林業、その他の
産業、それから
一般公益に重大な影響を及ぼすことも否定することができないのでございます。そこで一定の
土地をいかなる目的に用いることが最も適当であるかという判断が重要となるのでありますが、このような判断は、一
産業の
保護助成あるいは
土地の自然美の維持保存というような、一方的な
立場からのみなされるべきではなく、全
産業または
一般公益との総合
調整という広い
立場から、公正妥当になされなければならないというふうに考えられるのであります。こういう観点からしまして、
土地調整委員会を設置しまして、
土地に関して
鉱業、採石業、農業その他の
産業、それから
一般公益との間の
調整をはかることを主眼といたしまして、ただいま御指摘のようないろいろな許可認可等について、一定の事務をつかさどらせることを、この
法律案の
内容に盛つたわけでございます。
ごく概要を系統的に申し上げますと、まず第一は
土地調整委員会の組織とその権限でございます。
土地調整委員会は前に申し上げましたような見地から、その独立性を保障いたしますために、これを総理府の外局とするようなことに
なつております。
土地調整委員会は
委員長、それから
委員四人で組織することに
なつております。
委員長及び
委員の資格といたしましては、人格が高潔であ
つて、公共の福祉に関し公正なる判断をすることができ、しかも
法律または
経済に関する学識、経験を有することを必要といたしまして、その任命につきましては
国民的信望のある人が選ばれるよう、両議院の同意を得ることにいたしてございます。また
委員長及び
委員は裁判官に準じまして、
法律に
定められました特別の事由がない限りは在任中その意思に反して罷免されることがないことにしておるのでございます。
なお
土地調整委員会の事務を処理させるために、事務局を設けることといたしております。
土地調整委員会は、前に述べましたような所掌事務を遂行するために、主として鉱区禁止区域の指定及びその解除をなす権限、
鉱業権の
設定または取消しに関する
異議、鉱区の増減に関する
異議、採石権の
設定に関する
異議及び
鉱業または採石業のための
土地の使用または收用に関する
異議の裁定を行う権限、それから採石権の
設定に関する
決定を承認する権限を有するほかに、
法律に基いて
土地調整委員会に属せられた権限を有するのでありますが、その所掌事務につきましては、多くの
委員会に認められておりますように、
土地調整委員会規則を制定することができるように
なつております。
第二は鉱区禁止地域の指定なり、その解除を行う場合の
手続でございますが、この指定なり、解除が当該地域の
土地所有者その他の利害
関係人の
権利に重大な影響を與えることを考慮いたしまして、この指定または解除を行います場合には、通商
産業大臣の意見を聞くほか、特に聽聞会を開きまして、
一般の意見をも求め、場合によ
つては利害
関係人を審問することといたしまして、指定または解除の妥当で適切なことを確保するための用意をいたしておるのでございます。
第三は、
土地調整委員会の裁定に関する
手続でございますが、裁定は
土地調整委員会の行いまする司法的な処分でありますので、この裁定が公正に行われますために、裁定になるまでの審理
手続につきましては、裁定を申請しましたものと、それから処分庁の両方を事件の
関係人といたしまして、相対立せしめるような訴訟的な
形式をとることに
なつておるのでございます。そうして審理のために必要な資料の
調査收集につきましては、
土地調整委員会は行政機関に対しまして、報告なり、資料の提出を求めることができます。あるいは申立により、または職権によりまして、事件
関係人または参考人の審問、鑑定、物件の提出、立入り検査等の処分を行うことができることと一応考えておるのでございます。
第四は、
土地調整委員会の裁定に対する訴訟でありますが、
土地調整委員会の裁定、それから裁定の申請を却下する
決定に不服のあります者は、
土地調整委員会を被告といたしまして、訴えを提起することができるのでありますけれ
ども、裁定の目的となります事項を取
扱いますには、高度の專門的、技術的な知識経験が要求されるのでありますから、裁定を申請し得る事項につきましては、特に
土地調整委員会の裁定を経た後でなければ訴えを提起することができないものといたしました。また
土地調整委員会の技術認定に一応の信頼を置きまして、
土地調整委員会の認定した事実は裁判所においてこれを立証する実地的な証拠があると認めた場合におきましては、裁判所を拘束するということが考えられておるのでございます。さらに
土地調整委員会を尊重する
趣旨に従いまして、訴えの当事者が裁判所に対し新しい証拠を申し立てることができる場合、裁判所の裁定の取消しまたは変更をなし得る場合をかなり制限すると同時に、裁定を変更することができる場合には、裁判所の裁量により、事件を
土地調整委員会にさしもどすということもできるようにしてあるのでございます。
第五は罰則の点でありますが、
土地調整委員会の行う事件
関係人及び参考人の審問、鑑定、物件の提出または検査等の処分の執行を確保いたしますために、これらの処分の違法を罰することといたしております。
以上がこの
法案の大綱でございますが、ただ
関係方面との完全なる了解にはまだ達しておりませんので、ただいま御
説明したもの以外に若干の相違が出るかもしれませんが、大綱としましては、今申し上げたことにかわりはないと存ずる次第でございます。