○近藤
政府委員 ただいまお話の、綿に関しましての今後の需給の見通し、それから朝鮮問題に関する特需の
関係、あるいはそのほかに最近御承知のように、警察予備隊の
設置によりまして、ある程度の数量の衣料が必要となるというような問題がございまして、これらの事情がどうなるかというお尋ねでございます。
それで最初に綿花の今後の需給の概要を申し上げますと、御承知のように、綿花につきましては、昨年以来相当輸出が
増進いたしております
関係もございまして、輸入の数量が画期的に
増加いたしております。ただいまの見通しで申しますと、昨
昭和二十四年度は約八十八万俵の輸入でございましたが、
昭和二十五年度におきましては百三十二、三万俵、場合によりましては百四十五万俵までの輸入をいたしたいと考えておるのでございますが、この最初の予定よりも約二十万俵近く
増加する傾向にな
つておりますのは、御承知のように最近の輸出
増加というような問題に関連いたしまして、ドル資金の手当がかなり潤沢にな
つて参
つておりますので、この際できるだけ多量の綿花を買いつけたということから、当初の予定計画よりは二十万俵程度の数字が
増加することに相な
つておるのであります。この綿につきましては、先般四百万錘の紡績の生産
設備の制限が撤廃になりまして、大体本年の末におきましては、実際の錘数といたしましては約四百三十万錘程度、来年の末になりますならば、四百八十万錘くらいの
設備が完了する予定になると思うのであります。それらの
増加いたしました
設備によりまして、増大いたしました綿花の輸入を消化いたすという計画に相な
つておるのでありまして、今後七—九月から先相当の
増産を見込んでおるわけであります。
そこでただいま問題にな
つております特需の
関係がどういうことにな
つておるかと申し上げますと、実はただいままでのところでは、朝鮮問題に関連いたしましての特殊需要というのは、綿につきましてはまだほとんど起
つておりません。いろいろ新聞紙等に報道されております事項で多少誤解されておる点もあるようでございますので、具体的にどういうことにな
つておるかということを申し上げますと、現在特別の需要として私の方に話のありますのは、電線の被覆の生地を多少急速の需要として言うて参
つておりますが、これは数量にいたしましてわずか千五百反であります。なお朝鮮の需要の問題に関連いたしまして、先般新聞紙上で五万こうりの綿糸の生産命令をするというような記事が載
つておつたのでございますが、これはまつたく事実無根の記事でございます。この事情は、実はこの朝鮮問題がどうなるかは別にいたしまして、将来朝鮮の問題が片づきました際には、いろいろいわゆる宣撫工作用物資と申しますか、あるいは難民救済用の物資と申しますか、そういつたものの衣料の供給がある程度必要であるかもしれない。その場合に一体
アメリカ本国から直接朝鮮に製品を持
つて来た方がよろしいか、あるいは綿花を日本に持
つて参りまして、日本でそれらの加工をいたしまして、朝鮮に持
つて行つた方がよいかというような問題の検討が現在行われつつあるようでございまして、これは日本側にも何も話はございません。おそらく司令部内部でそういつたような将来の検討をされておることだろうと思うのであります。これが具体的に五万こうりの生産命令になるというような記事として載
つておりますが、まつたくそういうことはないのであります。ただいまの状況からいたしますと、朝鮮問題に関連いたしまして、綿製品の需要が大幅に起るということはちよつと想像がつかないのであります。現在韓国軍に與えております被服その他はすべて米国製の品物でございまして、規格その他の違いから多少改造をしておりますけれども、日本から調達しておるものは一つもございません。おそらく今の情勢で参りますれば、あまり大きな数量は特需としては出て参らないというふうに考えております。ただ先般
決定をいたしました警察予備隊、海上保安庁の
関係で人員が相当
増加することにな
つておるのであります。これは両方合計いたしまして八万三千名程度のものになるのでありますが、急速に全員が整備されるわけでございません。現在私の方に警察予備隊の
関係において制服、下着、作業着、そういつたものを言
つて参
つておりますが、これは綿糸の数量で計算いたしますと約千こうりでございます。現在国内用の綿糸の供給量は一箇月四万こうりという数字にな
つておりますから、一月分の四十分の一程度の需要でありまして、数量から申しますとわずかなものでございます。また海上保安庁の方はわずかに八千名の人員でございますので、ほとんど問題にするに足らぬような数字でございます。将来警察予備隊、海上保安庁が冬の
関係で毛のものを、必要とするということで、私の方で概算見込みを立ててみたのでございますが、その場合に必要な羊毛の数量は合計いたしまして大体四千俵程度になると思われます。現在一・四半期に約五万俵の羊毛を国民衣料用として充てておりますが、それから考えてみますと一・四半期分の十分の一以下の数字でございまして、これは調達上もあまり困難がないというふうに考えておるわけであります。
なお、こういう事情にな
つておりますが、今後統制の
関係はどうなるかという問題でございます。現在綿につきましては、輸出
関係は自由にな
つておるわけでございまして、
契約によ
つて輸出向けの品物をどんどん出すことができるようにな
つておりますが、国内向けの方は現在でも統制が依然として残
つておるわけであります。正確に申し上げますと、現在衣料品配給規則というのがございますが、それによりまして、従来は衣料切符を国民一人々々に與えて、その切符の点数によ
つて衣料を調達するということにな
つておつたのでありますが、これはことしの四月以降八月一ぱいまで一時停止をすることに相な
つております。
従つて国内向けの綿の統制は、末端の消費者に対しては現在撤廃されておるのと同様でございますが、それ以外の綿につきましては、従来通り統制が行われておるのであります。ただ従来と違
つておりますのは、その
内容におきまして、今までは
政府において品種、規格を全部
規定いたし、それによ
つて強制的な生産をさせ、それをひもつき等によりまして配給するという形をと
つておつたのでございますが、そういつた規格的な生産、強制的なひもつきということを排除いたしまして、生産配給段階におきましては、その段階に応じてそれぞれ法規に従つた取引をするということにな
つておるわけでございます。この八月末で衣料切符の一時的停止の問題は満了になりますので、九月以降綿の統制をどういう方向に持
つて行くかということでございますが、これはただいま
関係方面といろいろ折衝中でございます。
なお国内
関係におきましても、生産資材の
関係、国民衣料の
関係等の
調整の問題がございまして、最後的な結論はまだ出ておらないのでございますが、大体の方向といたしましては、衣料切符をもう一度復活するというようなことはないのではないかと考えられますし、また配給等も今の段階よりもう少し彈力のある機構にかわ
つて参るのではないか。ただ綿糸の配給あるいは綿糸の生産配給の段階につきましては、依然として相当嚴重な統制を継続しなければならぬというように考えるのであります。なお今申し上げましたような、綿花の事情なりその他特殊需要の
関係について今後の見通しはどうなるかということでございますが、これは従来から見ますと輸出が非常に伸びて参ります。しかも現在輸出価格が国内価格より割高にな
つておりますので、内地の糸の確保が非常に困難であるというような事情がございまして、ある程度国内向の糸の配給が遅れて行くという実情にあるのでありますが、この点につきまして、最小限度の国内需要というものをはつきり確定いたしまして、それだけの数量を優先的に紡績から出荷させまして、残りを全部輸出に向ける。従いまして、
一定の数量、これは現在月別に配給されております数量とほぼ同じとお考えくだす
つてけつこうだと思います。最終的にはまだ
関係方面との打合せが完了しておりませんのではつきりいたしませんが、大体国内向に予定いたしております数字とほとんど同じものを最終的に国内で確保する、こういう手段をとることにな
つておりまして、現に国内向のものにつきましては、
電力割当あるいは為替資金の割当等によりまして、出荷の遅れているものに対してそういうペナルテイの
方法を実行中でありますので、一層それが強化されることになると思うのであります。
簡單でございますが、大体そういう見通しであります。