○
田代委員 私は
日本共産党を代表いたしまして、
本案に
反対するものであります。その
反対の
理由は、單に条文上の問題ではなくして、
日本の
鉄鋼生産というものが、
日本の全
国民経済の
立場から、実際にわれわれが希望しておる
方向から、そうされつつあるということが根本的な
反対の
理由でありまして、今までの
委員会で
質問いたしまして、それに対する
政府側の
答弁によりましても、それが
はつきりいたしておるのであります。
すなわち繰返して申しますと、この
鉄鋼産業の
発展というものは、あくまでもこれは
平和産業の
発展という
観点が第一。それから第二は、あくまでもこれは
日本の
自主経済、これが根本でなくてはならない。
外国の
資本からリードされるという
立場に立つ場合においては、
日本の
経済を非常に危機に瀕せしむる。
鉄鋼産業のごとき
重要産業が、そういう事態になるということは、
日本の
立場から非常に危険であるということから、この二つの大きな柱というものを徹頭徹尾堅持するのが、
鉄鋼政策の
基本であるはずであります。しかも
鉄鋼産業の
発展過程から申しましても、これはある
民間の財閥が長年の苦労によ
つてこれを
発展し育成したというようなものではなくして、
日本全
国民の血税によりましてこれが保護育成され、とにもかくにも現在までの
段階に
発展して来たのであります。そういう歴史的な
特殊事情を持
つておる。従いましてこれは
アメリカの
鉄鋼産業、あるいは
ベルギーやイギリスなどの
鉄鋼産業とは違
つておるのであります。そういう
事情を考慮することが、われわれにとりましては決定的に重要な
意味を持つのであります。しかるに現在の
政府のと
つておる
鉄鋼産業に対する
政策というものは、この
基本線からはるかにそれつつあるのである。たとえば
委員会の
答弁によりましても、
開らん炭のような非常に安い超粘
結炭を輸入することは、これを押える。
答弁によりますと、それは質が落ちるということを言われたのでありますけれども、私
たちが調査したところによりますと、必ずしもそうではないのでありまして、一トン十一ドルで入るような安い
開らん炭を押えて、それよりも五割も八割も高いような
外国の石炭をなぜわざわざ入れねばならないのか。この点におきましても私
たちは非常に
理解ができない。あるいはまた
鉄鉱石においてもそうであります。
鉄鉱石の輸入などにおいても、これは近い中国には非常に安い
鉄鉱石があるのでありまして、そういう
意味から申しましても
中日貿易ができるだけ早く成就するように持
つて行き、そうしてそういう原鉱を入れるという
労策に持
つて行くのが
政府の
政策であるにもかかわらず、そういう
努力が十分なされているということは言えないのであります。また、第二番目におきましては、第六
国会におきまして
日鉄法の一部を改正するということになりまして、
政府手持の株を全部
民間に放出するという形をとり、先ほど申しました
日本の自主的なそういう歴史的な性格を持
つている
鉄鋼産業というものをそういう形に野放しにする、同時にそれは
外国資本がどんどん
日本の
鉄鋼産業に入
つて来る道を開いたのであるということを私
たちは主張し、警告を発したのでありますが、今やこの
日鉄法が
廃止されるということになりますと、
名実ともに
外国の
資本家が
日本の
鉄鋼産業の
株式を自由自在に持
つていいということにな
つて来たのであり、また
技術の
導入にいたしましても、あるいは外資の
導入にいたしましても、それには明らかに
自主性のないひものついた形で、これがなされて来つつあるという危険が明らかに出ているのでありまして、こういう点から申しましても、私
たちは
日本の正常なる
鉄鋼産業の
発展から申しましても、
政府の
政策が非常に
間違つているということを断言せざるを得ないのである。結局いろいろ
質問いたしますと、この
鉄鋼産業の
合理化によ
つて日本の
鉄鋼産業を
発展させる。一体どこに
コストを下げるというようなねらいを持
つて来るかというような問題におきましても、一番
はつきり言えることは
労働者の首を切る、あるいはまた
労働賃金を安くする、
労働強化をやるというようなことが端的に現在なされつつある、これが
合理化の実情であり、実際において
政府が説明されましたような形におきましての
合理化というものは現実上の問題からして大して進んでおらない、行き悩んでいるということが
はつきり言えるのである。そのことが非常に
日本の
鉄鋼産業が
製品の
コスト高とな
つて現われている。昨日の
答弁によりますと、
日本の
鉄鋼産業というものは十分一本立できる、
ベルギーあるいはドイツその他
外国のあらゆる
鉄鋼産業と太刀打できるような
状態にもう三年もすればなるように確信するという御
答弁がありましたけれども、それは何らの具体的な根拠はないのでありまして、事案は
日本の
鉄鋼産業はごく最近まで頭打ちにな
つてお
つて、四苦八苦の
状態にな
つてお
つたのであります。
日鉄法の一部
改正法にありましたその
提案理由といたしましても、
政府がそういう
株式をたくさん持
つているということは非常に財政的に困難するということが
理由にな
つてお
つたのでありますが、そういう点からいたしましても、これを十分育成し助長するという線からではなくして、もてあましてお
つたというような形が出てお
つたのでありまして、いわゆる
鉄鋼政策に対する
政府の方策というものはま
つたく失敗している。ところが、
朝鮮事変というものが勃発いたしまして、そうしてこれによりまして
政府はほつと息をついたような形にな
つているのであります。すなわち
基本的なそういう
政策が終始一貫なされたがために、
鉄鋼産業が
発展しつつあるというのではなくして、そういう
朝鮮事変の勃発というようなことを契機にして、それに便乗して
鉄鋼産業が息を吹き返さんとしつつある。またこれをさせようとしておるというようにも言えるのでありまして、これは明らかに先ほど申しました
日本の
鉄鋼産業の
基本政策、これに反するものであり、またはなはだ危険なものであるといわざるを得ないのであります。昨日の
答弁によりましても、首相は今度の
朝鮮事変に対しまして、この
連合国に協力する。それは精神的な形であるということを言われましたけれども、実際上におきまして、昨日も
首藤次官の説明によりますと、そういう特需に対しましては、
鉄鋼産業がどんどん応じて行くような
緊急措置をとるというのが現在の手であるということを
はつきり
答弁されたのでありまして、あくまで
平和産業で行かなければならないこの
鉄鋼産業というものが、今や
戦時経済態勢へ
はつきり切りかえられたということが言えるのであります。すなわち
戦争をやめねばならない、
戦争反対という
立場を強調しなければならぬにもかかわらず、むしろ実際的に
経済面からこれに具体的な裏づけとして、どんどん参加して行くという手が打たれつつあるということが言えるのでありまして、これは、私
たちははなはだ危険であると言わなければならないのであります。
以上の点から申しまして、すなわち
日本の
鉄鋼産業の
自主性という問題、あるいはまた
平和産業の
育成発展という、その
基本的な面から申しまして、
政府のこの施策、また
日鉄を
廃止するというこの
行き方そのものが、こういう重要なる
政策に対する
反対の
方向をとりつつあるということが
はつきり言えるのであります。また
従業員の
退職金の問題でありますが、こういう手を打つことは当然でありますけれども、その
金額はきわめて微々たるものであり、またそういう問題がこういう形をとること
自体が
政府の
政策としましてこういう
方向へ持
つて行つた結果であり、事実この
鉄鋼産業の
日鉄、
八幡などの
労働者の
退職金なるものは、二十五箇年間からだを骨にして働いて、その得る
退職金というものが現行ではわずかに十一万五千円余りであります。二十五年間働いて十一万五千円、このインフレの
時代に、二十五年間働きまして十一万五千円余りもら
つている。これで生活ができるかどうか。これがその多年の
労働に対する報酬と言うことができましようか。少くとも現
在日鉄の
労働者諸君は、三十万円から三十六万円見当二十五箇年間の勤務に対しまして要求されておりますけれども、私はこれすら少きに失するのではないかと思う次第でありまして、そういうあらゆる面から申しまして、
日本共産党はこの案に対しまして徹底的に
反対する次第であります。