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大橋国務
大臣 警察予備隊につきまして、その後の
経過を御
報告申し上げます。
警察予備隊の設置に関しましては、前
国会の会期中には
準備の完了ができませんでしたために、遂に
国会後に持ち越すに至りましたが、去る十日、
関係方面との了解を得ましたので、ポ政令によりまして
警察予備隊令を
制定いたした次第でございます。この
内容といたしましては、第一には
警察予備隊の目的を明らかにいたしておりまするが、すなわち「わが国の平和と秩序を維持し、公共の福祉を保障するのに必要な限度内で、国家
地方警察及び
自治体警察の
警察力を補う。」これが
警察予備隊の目的と相
なつております。私
どもといたしましては、この
警察予備隊の目的を明らかにすることによりまして、現在の
警察制度との
関連を明確にいたしますると同時に、この
警察予備隊に対するいわゆる再軍備ではないかというような懸念を、一掃するに努めた次第であります。
この
警察予備隊は総理府の機関として設けられておりまするので、従いまして内閣総理
大臣の命を受けて行動をいたすことと相
なつておるのであります。いかなる場合において行動をするかということにつきましては、ポツダム政令自体においては、格別の制限を設けておりません。あるいは公安
委員会が今日普通
警察の運営をいたしておりまするから、この公安
委員会の請求を待
つて出動をすべきじやないかというような考え方もあ
つたのでございましたが、しかしながら、いろいろ
事態を想定いたしますると、公安
委員会がその機能を喪失したというような場合において、むしろこの
警察予備隊の発動を要請される場合が多かろうと考えまして、この発動につきましては法規上一切の拘束を設けず、総理
大臣の命令によ
つて出動するということにいたしたのであります。しかしもとよりこれが運営に当りましては、現在の
自治体警察あるいは国家
地方警察との無用な摩擦を避けるように注意することは、もとより言うまでもないのでございます。これが運用に当りましては十分これらの点に注意しなければならない、かように考えておる次第であります。もとより
警察予備隊は、これはいわゆる軍隊ではないのでありまして、あくまでも
警察力でございまするから、この活動の範囲は、
警察の任務の範囲に限らるべきはもちろんでありまして、いやしくも
日本国憲法の保障いたしまする個人の自由及び権利の干渉にわたるというような、その権能の濫用は嚴に戒めなければならないので、この点もポツダム政令に明らかにいたしておるのであります。なお
警察予備隊の定員は、マッカーサー元帥の書簡により七万五千と定められたのでありますが、これが管理に当りまする機構を
警察隊員以外のものによ
つて構成せしむる必要がありまするので、この定員は百名というきわめて少数にして能率的なる官庁機構を設けることによ
つて運用いたして参りたい、こういう趣旨と相
なつております。この
警察予備隊の機構は、まず中央に本部が設けられております。この本部は
警察予備隊を運用するための本部でありまして、
予備隊自体とは別箇に
なつております。従いましてこの
予備隊に勤務いたしまする者は
警察官たる身分を持たない人々でありまして、いわばセビロを来た人
たちである。これが百名から構成せられまして、本部をつく
つているわけであります。この本部には長官及び次長のほかに五名の
局長を置くことに相
なつているわけであります。この本部に隷属いたしまする
警察予備隊の本隊は、どういう機構になるかと申しますと、まず中央に全体の指揮に当るべき運用本部というようなものに
相当するものができるわけでありまして、これは先ほど申し上げましたるセビロの人
たちからできまする本部は行政の本部であり、ただいま申し上げました
予備隊自体の本部というものは、この
予備隊の運用についての行動を指揮するところの本部になる、こういうわけであります。この本部の要員は、およそ五百名ぐらいと考えられておりまするが、大体これは
予備隊全体の総司令部的機能を営むことになろうかと存ずるのであります。この
予備隊をかりに運用本部と名づけまするならば、この運用本部に隷属いたしまする部隊といたしましては、一個の補給部隊、それから四つの
相当な規模を持
つた部隊ができまするが、この部隊はいずれも約一万五千ぐらいの隊員を持つことになろうと思います。従いまして補給部隊は、一万三千あるいはその
程度ということにならうと思います。これらが各地に置かれることに相なりまするが、この部隊の隊員をどこにどれだけ置くかということにつきましては、ただいま言明をする
段階に至
つておりません。ただ北は北海道から、南は九州まで参ります。さらにその配置される箇所は、全国におきまして約三十数箇所と相
なつております。従いまして府県といたしましても、さしあたり部隊の置かれない府県が多く
なつておるのであります。しかしこれはあるいは将来変更があるかもしれませんが、ただいまのところでは、さような次第に相
なつております。これらの
警察予備隊の要員は、全部特別職ということに相
なつておるのでありまして、これらの給與等につきましても、一般公務員とは別個の規定を設けることにいたしておりまするし、また階級、任免、昇任給與、服制その他人事に関しましては、別の政令を定めることにいたしておるのであります。
なおこの
予備隊に要しまする経費といたしましては、二百億円を限りまして昭和二十五
年度におきましては、国債償還費のうちから移用いたすことと相なりまして、これもまたポツダム政令にその旨を規定いたした次第でありまして、この規定によりまして現行
予算から移用の
手続によ
つて必要なる経費を支弁いたして参ることに相
なつておるのであります。なおこのポツダム政令
施行に必要なる
施行令といたしましては、八月二十四日に職員の任命方法、それから職員の種類また
予備隊の
警察官の階級、これは十三の階級にわかれております。それから職員の採用方法、また
警察官の任用期間、これは一応は二箇年ということに相
なつております。それから職員の昇任、あるいは欠格條項その他人事に関するものを規定いたしますると同時に、特にこの
警察隊員が実施することを認められておりまする司法
警察官としての職務についても規定をいたしてございまするが、司法
警察官といたしまして
予備隊警察官が職務を行いまする場合は、第一には
警察予備隊の部内の秩序を維持するために、
警察官の一部が内部の
警察を行うのでございます。これはちようどか
つて軍隊におきまして、憲兵が軍隊内の司法
警察事務を行
つたと同様でございます。これはきわめて少数の秩序保持に当る特別の
警察官を任命いたしまして、これらの者によ
つて部隊内の犯罪あるいは部隊に関する犯罪につきまして、搜査その他司法
警察官としての職務を行わしめることに相
なつております。
警察予備隊の一般国民に対しまする司法
警察権といたしましては、ただいま申し上げましたる部隊に対する犯罪以外におきましては、通常の場合にはこれを行わないことが例でございます。ただ特別の例外といたしまして、
警察予備隊が出動いたしましたる場合に、その出動中に検挙いたしましたる犯罪に対して、引続き搜査をする。しかしこれも出動箇所より引揚げまする際は、でき得る限りすみやかにこの犯人を当該の
自治体警察あるいは国家
地方警察に引渡しまして、そして引揚げて来るのが建前でございますが、いろいろな事情のために引渡すことのできない場合に限りましては、引続き搜査取調べ等を行うことを認めておる。かような次第でございまして、この
警察予備隊は通常の場合におきましては、司法
警察権を行わない建前と相
なつておるのであります。従いましてこれがいわゆる特高精神あるいは憲兵精神その他今日のわが国を
警察化するというような懸念に対しましては、私
どもといたしましても万全の注意を拂いまして、これらの規定を定めたる次第であるということを御了承願いたいと存ずるのでございます。
なおこの職員の採用の
状況を申し上げますると、ポツダム政令
制定に引続きまして、長官及び次長を任命をいたしております。しかしその他の幹部につきましては、いまなお選考中に相
なつております。一方
警察予備隊の主力をなしまする
警察官の一般採用、これにつきましては去る十三日より全国的に募集を開始いたしております。そして急速に全国各府県におきまして試験をいたしまして、採用を決定いたしておるのでございますが、去る二十三日には全国六箇所の
警察管区学校に第一次採用のものを召集いたしております。すなわち一昨日約七千名を全国におきまして召集いたしまして、これを部隊に編成をいたした次第であります。これらの隊員は従来の
警察に比べまして、すこぶる優秀なる者も
相当入
つておるのでありまして、これら一般募集の隊員の年齢は、三十五歳から下は二十歳までと相
なつておりまするが、これら優秀なるものは今後数箇月の訓練によりまして、その能力に応じて幹部に採用する
予定と相
なつておるのであります。かくして
警察管区学校に集合いたしましたるこれらの隊員は、明日、明後日あたりから、それぞれ勤務地に向
つて出発をいたします。そして引続き二十八日には第二回の募集をいたしまして、ここでまた新しく編成をしてこれを送
つて行く。大体九月中には募集が完了するものと思
つておるのであります。今日この任用にあたりまして、私
どもの最も苦慮いたしておりまするのは、この
警察隊の幹部要員たるべき者をいかにして任用するかという点でございます。これらの点につきましては、私
どもといたしましては大部隊の指揮に当るというその職務の性質から考えまして、か
つて陸軍あるいは海軍の部隊において
相当なる地位を持
つてお
つた人々が適当ではないかということも考えたのでございますが、不幸にいたしまして、これらの人々は多く追放に
なつておりまするので、これが追放の解除というような問題も考慮いたした次第でございます。しかしながら今日の
段階におきまして、追放の解除によ
つてこの
警察予備隊の幹部要員を採用いたすということは好ましくないという
結論に到達いたしました。一切これらの追放者を幹部に用いるという企図を捨てる、かような
方針によ
つて追放者以外の者によ
つて全部の幹部をとるということにいたした次第であります。幸いにいたしまして一般応募者の中では
相当優秀な人
たちがございまして、これらをその能力において幹部に任用いたすことも必要でありまするが、先に申し上げましたる
通り、ただいま募集中のこれらの人々は年齢が三十五歳と限定をしてございまするので、高級の幹部等につきましては、その年齢をいま少し上げなければむりではないか、ことに一万、二万というような大部隊の指揮に当るべき幹部、あるいはこの
警察予備隊七万五千の全体の指揮に当るべき幹部、こういうような人につきましては、別途の採用の方法を考えなければならないし、また年齢においても別な
わくを考えなければならぬという考えのもとに、ただいまなお
関係方面と
折衝しつつ研究をいたしておる次第でございます。一応御
報告をこの
程度にいたしまして、なお御
質問によ
つて申し上げるようにいたしたいと存じます。