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大月説明員 ただいまお手元に配付いたしました
銀行及び
金融業務等に関する
法律案について、あらましの
お話を申し上げます。
この案は、実はここに日付が入
つておりますように、七月に一応成案としてこしらえたものでございまして、その後も連日
関係方面と
折衝を続けております。現在の
考え方はまたこれから
相当の変化を示しておりますので、あるいは不満の点が多分にあるのではないかと思うのでありますが、その当時から問題にな
つておりました点は、依然として重要な問題でございますので、この
法案をごらん願いますについて、
ポイントとも申すべき点について御
説明申し上げたいと思います。
この第三次案に入
つております
考え方は、
簡單に
銀行だけについての
法規ということでなくて、
信託会社、
相互銀行、
信用組合、これらの
金融機関を一括いたしまして、なおかつそのほかに
信用の
調整に関する
事項を加えてあるのであります。そこを一貫して
流れでおります
考えといたしましては、
銀行というものは、
預金を受入れてこれを貸すものである。資金の受入れとこれの融通、こういう
流れで一貫いたしまして、そういう
仕事をいたします
金融機関を、この
法規で全部総括いたしたいという
考えでできておるのでございます。ただその後の交渉の結果といたしまして、ここにございます
相互銀行及び
信用組合は、場合によ
つては別の
法律にした方がいいのではなかろうか。これは
事務上の手続、
法案の体裁その他の面からそういう
考えもございまして、今
考えておりますところは、
銀行と
信託会社及び
信用の
調整に関する問題を、とりあえず
銀行法としてまとめるという
方向に向
つております。ただ
相互銀行及び
信用組合の問題も、当然並行して御審議願う別の
法律になることかと存じます。この新しい
考えといたしましては、最近
財政の
関係におきましては
財政法、
会計法ができまして、税の
関係におきましては、
シヤウプ勧告に基く税制の
改正がございまして、
財政金融の面では、
金融関係の
法規がまだ残
つておるわけでございますが、御存じのようにインフレーションの
段階でもありましたし、
健全財政に伴う
健全金融というような点も、なかなか貫きがたか
つた情勢でございます。最近インフレもとまりまして、
外資導入というような
観点から、
金融機関を
考える
段階にな
つたのでございますが、諸
外国のいろいろな観測をもとにして
考えますと、
日本の
銀行のオーバー・ローンの問題、
資産構成が堅実でないという問題にくわえまして、
日本の
法制がまだ遅れておる。
従つて日本の
銀行に対する諸
外国の
信用がまだ不十分であるというところが、
外資導入の
一つの障害にな
つておる、こういうことなんであります。従いまして新しい
法案といたしましては、
国際的基準にのつ
とつた新しい
意味の
銀行をつくり上げるということを、
ポイントにしておるわけでございます。ただ
日本の現状といたしまして、
先進資本主義国アメリカ、
イギリス並の
制度をすぐに採用することは、はなはだ困難な点がございますので、それを
日本の実情に応じて若干修正をしつつ、新しいレベルの高いところに持
つて行くというところをねら
つておるわけでございます。
この
法律のおもな
目的は、近代的な
商業銀行というものを主眼といたしまして、その
銀行は
預金を預かり、貸出しをするという面から、
預金者を保護するという点に一貫しているわけでございます。第一條の
目的がその点をはつきりいたしておるわけでございまして、最近問題になりました大
銀行の
産業支配という
観点から、
独禁法的な
不当競争を排除するという
意味をそこに盛りまして、あわせて
信用の維持、広い
意味の
金融の秩序を維持するということをそこに織り込んだわけであります。この
條文は
相当條数において多いのでございますが、おもな点だけについて申し上げます。
一つの問題は
銀行の
資本金でございます。この案では最低三千万円ということにな
つております、現在のところでは、これでは若干低いので、あるいは五千万円を最低にしたらよかろうかということも検討いたしておりますが、かりに三千万円といたしますと、現在の
銀行のうちで八行ばかりがそれに不足いたしておりますので、いずれ増資の必要があろうかと思います。五千万円で十四、五行それに欠けております。これも増資その他によ
つてまかなえる。必ずしも
資本金によ
つてふるいをかけるという意図は蔵されておりません。
それからこの
銀行法の問題で最も重要な点は、
銀行の資産の流動性を確保するという問題でございます。その
観点から種々な規定が置かれておるわけでありまして、たとえば不動産融資の制限、あるいは
銀行が持ち得る不動産の額の制限、あるいは一人に対する貸出しの制限、そういう新しい規定が入
つております。逐次申し上げますと不動産融資の制限でございます。不動産融資は御存じのように、最近不動産融資の面が非常に欠けておると言われておりまして、そのために最近発行法をつくりまして興銀、勧銀その他に債券を発行さすことによりまして、若干不動産
金融に寄與しておるわけでございますが、商業
金融機関といたしましては、不動産担保というような流動性の少い面に貸出しをするということは、本来は好ましからぬ点でございます。
従つて不動産担保貸出しに
銀行の金が行
つてしまうということを制限しようというのが、
一つのねらいでございまして、この
法律におきましては第五十六條の不動産担保貸出しの制限でございまして、「不動産を担保として貸出をする場合においては、当該不動産の評価額の百分の七十に
相当する金額を越えてこれをしてはならない。」それから第二項が不動産担保貸出しの総額の制限でございまして、「
銀行は、その定期的
預金の総額の百分の六十に
相当する金額と実質資本の金額とのいずれか高い金額をこえて不動産を担保とする貸出をしてはならない。」こういう二つの項目がございます。これによ
つて不動産担保貸出しが無制限に行くことを、制限しようとしたわけでございます。ただ不動産担保貸出とには問題がございまして、いたずらに不動産担保貸出しを制約することが
趣旨ではございません。地方の要望に応ずるという点もございます。従いましてこの案ができましたあと、今
考えられております点は、掛値の七〇%という問題、それから総額を制限するという点は、かわ
つておらないのでございますが、ほかに第三点といたしまして、
銀行の不動産担保貸出しの期限を原則として五年に限定する。これはこの
條文には出ておりません。その後の経過でございます。ただ元勧業
銀行がや
つておりましたような割賦償還の貸出しにつきましては、毎月あるいは毎年定期に返
つて来る貸出しでございまして、必ずしも確実性に乏しいわけではないということで、割賦償還貸出しに限りまして、二十年以内の割賦償還貸出しは認めよう。ただそれのもう
一つの制限といたしましては、十年以内に貸出し金額の百分の六十は確実に返済される。そしてその残額が二十年以内に返る。こういう條件のついた割賦償還貸出しならばいい。これによ
つて本来の不動産貸出しの道を開いたわけでございます。それから不動産抵当と申しましても、
日本の現状におきましては、まだ有価証券も十分に流通しておりませんので、大体担保に入れるといえば、土地とか建物とかいうことになりますので、たとえば根抵当というようなもの、当座貸越し契約をするとか、あるいは商業手形等で金を借りる場合に、一般的に入
つておる不動産、これは本條の
適用外にするということにいたしまして、個々の貸出しについて、不動産または不動産の権利を表示する。それから不動産を担保とする貸出しだけを、この規定で縛るということに緩和いたしております。それからわが国で不動産と申しましても、広い
意味がございまして、たとえば船舶とか、あるいは工場財団、工業財団、鉄道財団、あるいは立木というようなものにつきましては、これは不動産とみなされる、あるいは物とみなされることにな
つております。物を担保とする
金融は、いわば近代的な
金融でございまして、本来
銀行が確実に担保としてとるならば、必ずしも制限する必要はないということで、ここの
意味の不動産は、土地及び土地の定着物という狭い
意味にな
つております。これによりまして、家を抵当に入れるから金を貸してくれ、土地を抵当に入れるから金を貸してくれ、そういう個々的な結びつきのある不動産
金融を縛る。それからもちろん
商業銀行の性格といたしまして、短期の貸出しを縛る
趣旨はございませんので、この期限が六箇月を越えない貸出しについては、不動産が担保に入
つてお
つても、やはりこの制約の中には入れない。
それから最後に、無担保で金を貸しておりまして、その貸出しがあぶなく
なつた。その債権を保全するために、急に不動滝を担保に
とつたというような場合には、やはりこの不動産抵当の制限からはずす。こういうことにいたしまして、現実には
銀行として正常なる
金融活動をやるについて、支障がないというように例外を設けて参
つております。今の
段階はこういうところでございまして、多分この辺のところで成案になると
考えてよろしいかと思います。
それから資産の流動性の面におきまして、
銀行の不動産の所有を制限しておるわけであります。
銀行は少くとも金を借りてこれを貸すという建前でありますので、なるべく不動産は持たさない。最小限必要な不動産はいわゆる店舖でございます。業務用の必要な店舗以外のものは持たさないのだという原則を、はつきりいたしております。六十二條及び六十三條でございます。六十三條では、担保
流れその他やむを得ない
事情で不動産を取得する以外は、不動産を持
つてはいけない。たとえば森林を持つとか、田畑を持つということは絶対に禁止いたすつもりであります。そういたしまして、必要な業務用の不動産につきましても、いたずらに大きな支店をつくるとか、あるいは高層建築をつくるということで、みえを張るのでは弊害がございますので、店舗その他の業務用の不動産についても、
資本金額の百分の七十以内で業務用の不動産を持つという制限を、ここに置いておるわけであります。現在のところ、この制限にかかる
銀行は数行しかございませんが、これも増資をしてこの制限を免れるということにな
つております。
それから
銀行の貸出しが
一つの面に固定しないということを、非常にやかましく言
つておるわけでございまして、第五十七條の問題でございますが、これに対する貸出しの制限の規定が置かれております。これは非常に重要な規定でありまして、従前からも
関係者の間で、いかにしてこの規定を妥当に
適用し、あるいは規制すべきかということを、熱心に
研究して参
つたのでございますが、現行法においては、一人に対する貸出しについては、何ら
法律上の制限はございません。ただこの一人の人に貸出しが固定するということは、嚴に戒むべきことでありますので、
銀行局に対する報告の中では、
資本金の十分の一以上の金額をも
つてする貸出しは、これを報告しろということにな
つております。しかしただ報告
事項でありますので、
相当一つの
会社についてつぎ込んでいる
銀行でございまして、
資本金の二倍、三倍、あるいは数倍に達する貸出しを持
つておる
銀行も現にあるわけでございます。そういうことになりますと、か
つての台湾
銀行と鈴木商店というような、ああいうことになりまして、いわば
会社と
銀行が心中するということになることも適当でありませんので、今回の案におきましては、一人に対する貸出しが、当該
銀行の実質
資本金額の百分の二十五に
相当する金額を越えてはならないというように、規定したわけであります。ただ本来の
商業銀行としての機能から申しますと、普通の商
取引に基く貸出しはどんどんやるべきものでございます。たとえばある商人が品物を買
つて、それを売るというような商売をや
つている場合に、それがための
金融は当然無制限にやらすべきでございます。その商人が品物を買
つて売れば、すぐにその貸した金は返さるべき建前のものでございます。
銀行としてもあまり危險もございませんし、本来大いにやるべきものでございまして、そういう安全確実であり、しかも
商業銀行としての性格として当然やるべきことは、制限外としてはずそういうのが例外の規定でございます。第二項にあります表現は、今のところ若干かわ
つて来ておりますけれども、
考え方はかわ
つておりません。今この案ができまして以降、
考えられておりますところは、
一つは制限外に置くべき貸出しといたしまして、地方公共団体に対する貸出しを、制限外に置こうということを
考えておりますが、ここには入
つておりません。それから国債あるいは地方債を担保とする貸出しも、全然あぶなげがないから、これを例外として置く。これはここに第二項の四号に書いてございます。それから政府が元利保証をする貸出し、あるいは政府が元利保証をしておる有価証券を担保とした貸出し、こういうものも十分
信用してしかるべきものでありますので、制限外にされることにな
つております。それから先ほど申し上げました商業手形、これは当然例外とすべき建前にありますので、真正な商
取引に基いて振り出された期限六箇月以内の手形の割引、あるいはそういう手形を担保とした貸出し、こういうものを例外として自由にやれる。それから担保がと
つてある貸出しであ
つて短期のもの、これは当然
銀行としてやるべきものでございますので、これを無制限にしよう。もちろんその担保は先ほど申し上げましたように、不動産では固定性がございますので、十分に市場性を持ち、滅失のおそれがない、いわゆる本来の
意味の商品を担保にした短期の貸付は全部この制限外とする。こういうように、本来の商
取引に関連する短期
金融を例外といたしますと、
銀行としても大した苦痛もなしに本来の姿において
金融ができる、こう
考えております。ただ
日本の現状といたしましては、二倍、三倍あるいは数倍にわたる貸出しをしておる向きも例外的にございますので、これとこの
精神とを調和いたしますために、五年間の経過規定を設けることにな
つております。そのうちの最初の三年はこの規定を
適用しない。あとの二年間は二五%、五〇%ということでひつぱ
つて行こう、そうして五年後に初めてこの理想の状態に入れる、こういう
考えでございます。これでほぼ
法律の運用としては妥当なところへ行くのではなかろうかと
考えております。
それから別の大きな問題といたしましては、
銀行の業務といたしまして債務保証をやらない。それから有価証券貸出しという業務をやめる。業務の問題は五十二條であります。これはやめる規定でございますので、ここに書かれてはおりません。従来
銀行がや
つておりまして、今後やらないようにしようということでございます。ここに書いてあるものは、大体において今や
つている業務を並べたのでございます。有価証券の貸出しをやらないことにする。それから
預金あるいは貸出しの
銀行間における代理をやめよう。この三つが大きな
ポイントにな
つております。
第一の債務保証をやめようという問題は、現在御承知のように、たとえば酒税の延納の担保であるとか、あるいは織物消費税の担保であるとか、あるいはアルコールの買受け代金の延納の場合であるとか、そういう場合には有価証券を担保に入れるか、あるいは
銀行の保証があればそれを認めよう、こういうことにな
つております。有価証券として国債がだんだん少くなりまして、その国債を担保に入れることもむずかしくな
つて参りましたので、
銀行保証に置きかえてあるわけでありますが、国債を担保に入れる場合も、
銀行から国債を借りまして、
銀行の側から言えば、その国債を貸して、その借り受けた人が政府にそれを担保に入れて、それで税金を待
つてもらう、こういう
制度でございます。それで債務の保証の問題は今のように税金の
関係で多いのでございますが、その他にも一般の
取引で
銀行が保証すれば金を貸してやろう、こういう問題がございまして、若干そういう事例がございますが、そういう例は多くはございません。その他現在では、たとえば手形を引受けるということも、実際はこれは保証に類することでございます。それから貿易
関係で
信用状を発行いたしますことも、将来金を拂
つてやろうということでありまして、保証の一種でございますが、そのうちで
信用状を発行し、あるいは手形を引受ける、こういう規定は、当然一般の商
取引としてやるべきものだということで認めることといたしまして、その他の債務の保証を禁ずるという
趣旨でございます。
銀行の本来の姿といたしまして、金を預か
つて、金を貸すべきものだ。ところが債務の保証ということは、金がなくても何億までは保証するということになりますと、手数料は入るわけでありますが、万一被保証人が弁済を怠ることになりますと、とたんに
銀行の方にかか
つて来る思わぬ損失を招く。こういうことでありまして、非常に危險性が多い。しかも自分の金を持たないで貸したようなかつこうになるということで、禁止するわけであります。現に最近も債務の保証をしたために、いろいろな損害をこうむ
つておる事例もございまして、当然禁止してしかるべきものと思うのであります。ただ国税の
関係その他につきましては、たとえばその
制度を
保險会社に
保險させるとか、あるいはその他国国税
関係についてだけ例外を認めるか、その辺のところはむりがないように、過渡的な措置を講ずる必要があろうと
考えられております。有価証券の貸付につきましても、数量は次第に減
つておりますが、若干残
つております。これも
銀行は金を預か
つて、金を貸すべきものだという本来の姿から言
つておかしいということで、やらない。それから
預金の代理とか、あるいは貸付の代理ということも非常に不見識な話だ。たとえば現在勧業
銀行と地方
銀行の間に行われております貸付の代理というようなものがございます。それからたとえば住宅
金融公庫の金を
銀行を通じて貸す。それからか
つては復興
金融金庫の代理貸しというようなこともございました。こういうような復興
金融金庫とか、あるいは住宅
金融公庫とかいうような政府機関の貸出しの代理は、これは当然といたしまして、市中
銀行相互間で代理貸しをやるということは非常に不見識だ。たとえば先ほど申しました勧業
銀行と地方
銀行の
関係はどうな
つておるかと申しますと、地方
銀行で勧業債券を引受ける。そういたしますと、その引受けた金額の二五%の範囲内で、地方
銀行は勧業
銀行の名前で不動産抵当貸しをやるわけです。そうしておいて地方
銀行がその貸出しを保証するというかつこうをと
つております。これは裏から申しますと、人の名前で金を貸しておいて、その判断は地方
銀行がやるわけでありますが、勧業
銀行といたしましては、自分で判断を加えておらない。しかも責任を負うという態勢であります。しかも地方
銀行といたしましては人の名前で貸すということでありまして、非常に無責任になる。もちろん保証はしておるわけであります。そういう
意味で保証が濫用される面もありまして、そういう
制度を禁じておる。ただそれと同じような
法律的効果は、今の勧業
銀行の場合で申しますれば、二五%に
相当する金を勧業
銀行が地方
銀行に預託してや
つて、そして地方
銀行の責任において貸すということになれば、おのおのその間に責任の分界ははつきりいたしまして経済的な効果は同じであろう、そういうような責任態勢をはつきりするわけであります。こういうお互いの
銀行の間の
関係をつけよう、こういう
意味でございます。これらにつきましても具体的には非常な摩擦が起きないように、経過的なことは
考えなくてはいけないと
考えられておりますけれども、
方向としてはそういう問題が大きな問題でございます。
それから少額
預金者の保護という問題がございます。百二十九條によりますと、
銀行の破産の場合における少額
預金の優先という規定にな
つておりまして、現在アメリカの
制度におきましては、少額
預金者を保護いたしますために、
預金保險の
制度が立
つております。この場合には
預金保險に加入いたしております
銀行がかりに破産いたしますと、
預金保險会社でそれを拂
つてやる。多分五千ドルにな
つてお
つたかと思いますが、五千ドルまでは全額拂
つてやる。そのかわり
銀行としては
保險料を
預金保險会社に拂
つてやるという
関係でございます。
日本の
制度といたしましては、やはり
保險料の負担ということだけでも、
銀行に負担をかけるということでありまして、かわりの
制度として優先権を認めたわけでございます。
預金につきましては、十万円以下の部分につきまして優先権を與えまして、その他の十万円以上の部分を遅らす。これによ
つて少くとも
銀行に事故がございましても、十万円までは確実に返
つて来るという方法で、
預金保險と同じ効果をこれで期待いたしておるわけであります。
それからこの
法律の大きな問題といたしましては、
信用の
調整の問題でありまして、ここに規定されておりますところは、第七章
信用の
調整というところ、第七百一條から七百十一條に出ておるところでございますが、三点ございまして、
一つは連邦準備
制度と同じ支拂い準備
制度をとる。第二点といたしましては有価証券担保の貸出しにつきまして、
大蔵大臣ないし
日本銀行政策
委員会において、
信用調整の手段を講ずる。第三点といたしまして金利の
調整の権能を規定するということでございます。支拂い準備の
制度は御存じのようにアメリカの連邦準備
制度の本質をなしておりまして、各加盟
銀行は、連邦準備
銀行に一定限度の
預金をする義務を持
つております。その義務とな
つております
預金の額を、連邦準備
銀行が上げたり下げたりすることによりまして、ある場合には
金融を締め、ある場合にはこれをゆるめるという
信用の
調整の手段に使う。そのほか
預金の引出し等がありました場合、この連邦準備
銀行に対する
預金を引出して使うという支拂い準備の機能、この二つを兼ねておるわけであります。
日本の現状といたしまして
日本銀行の貸出しが千四百億、五百億と言われておる場合には、逆に
日本銀行に預けさすということは、いわば両建になる勘定でありまして、
銀行としては日銀への
預金は無利息であるし、貸出しを受ける部分が幾らかの金利を拂うということになりますけれども、金利の負担になるだけであ
つて、効果はあるまいという意見もありますし、本来
金融がだぶついて来る場合のいわば
金融引締めの
一つの手段とも
考えられるわけでございますので、
日本にただちに採用することがよいかどうかという根本的な議論もあるわけでございますが、この
法案の中には経過規定を入れることといたしまして、
制度としてしいておこうというわけでございます。その
制度のあらましといたしましては、
銀行を大
銀行と小さい
銀行との二つの種類にわけて、大
銀行の預け金の割合を強くいたしまして、小
銀行の預け金の割合を若干軽くする。第七百一條の規定でございます。「定期的
預金の総額の百分の一に
相当する金額と
要求拂
預金の総額の百分の五に
相当する金額との合計額以上の
日本銀行預け金」というのが大
銀行の場合でございまして、小さい
銀行は「定期的
預金の総額の百分の一に
相当する金額と
要求拂
預金の総額の百分の三」その合計額を
日本銀行に預けて置く。そして通貨
金融の情勢によりまして、必要がある場合にはこの率を
大蔵大臣が上げる。上げる限度は今申し上げました数の三倍以内で適宜運用する、こういう建前でございまして、もしこの義務に違反いたしますときには、その不足額に
相当する金額に若干の過怠金を課することにいたしまして、その
制度の運用をはかる。それから意識的にこの義務を守らないというような場合には、
大蔵大臣は警告を発して、さらに役員を解任し、あるいは営業の停止をするというような
制度を
考えておるわけであります。
それから第二点といたしましては、有価証券を取得及びこれを保有するための
金融の制限でございまして、七百七條に規定してあるところでございます。七百七條は、
大蔵大臣は通貨
金融の情勢に顧み必要があると認めるときは、
日本銀行政策
委員会の議決に基き、
銀行、
信託会社、その他の
金融機関が貸出しをする場合には、担保としてとる有価証券の種類及び担保額の限度を定め、または変更することができる、こういうことにな
つております。この案ができましたあと、いろいろ
研究いたしました結果によりまして、この七百七條では、有価証券担保の貸出しのあらゆる場合にこれを
適用するようにな
つておりますが、今のところでは
銀行は有価証券の取得または保有のために必要な資金の貸出しをなす場合に、担保としてとる有価証券の掛値を決定したり、変更したりすることができる。つまり株式市場のブームと申しますか、騰貴によりましてどんどん株なら株が上る。その上
つた株を担保にして金を借りる。そしてまたそれで買う。その結果株が上る。またそれで貸出しを余分に受けるということで、順順に循還的に買いあおるということがないように押えようとする規定でございまして、その必要な限度において制限すればいいのではなかろうか。アメリカではマージン・リクワイヤメントと申しておりますが、いわゆる掛値の制限という
意味で、
信用調節の
一つの手段として
考えております。
第三点は第七百八條以下でございまして、現在臨時金利
調整法に規定されておりますところの金利の
調整の規定を、恒久立法としてここに入れようという点でございます。金利は本来法定すべきものかどうかという本質論がございまして、あるがままにまかせればいいという問題もあるわけでございます。現在
独占禁止法との
関係によりまして、
銀行における
預金あるいは貸出しの協定が禁ぜられております。しかし、さればとい
つて自由放任にするということは、もちろん弊害が多いわけでございまして、本来
独占禁止法の
関係におきまして、当然きめるべき貸出しないし
預金の金利を、この
法律によ
つて法定しようというわけでありまして、これに伴いまして臨時金利
調整法は、これを廃止しようという
考え方でございます。
その他若干の
制度がかわ
つております。たとえば四十一條の監査役の
制度の規定でございまして、現在
改正商法の
精神によりまして、監査役の機能が次第にかわ
つて来ております。現在いわば並び大名的な役目を持
つておりますのを、公認会計士的な会計監査の嚴重な権能を與えるという
方向に進んでおるわけでありまして、公認会計士の
制度から申しますと、現在年に一回どういう
会社におきましても、公認会計士の監査を受けたくてはいかぬということにな
つておるわけでございます。
銀行は御承知のように、
銀行検査の
制度を持
つております経理のいわば專門の
会社でございますので、公認会計士の力を借りることなしに実行しようという
意味で、監査役を公認会計士的にかえるというところが重点でございます。ここにございますように、監査役の一人を主任監査役として、残りの監査役を補助監査役というようなかつこうにいたしまして、全責任をこの主任監査役に負わすほか、一般の商法に定められております権限のほかに、監査役が各営業所について業務の状況を監査し、あるいは
銀行の経理に関する
事項について取締り監督し、あるいは
銀行が
大蔵大臣に提出する経理に関する書類を監査するというような、特別の権限を與えることにいたしております。
最後に、新しい
制度として業務監理という
制度が設けられております。第十一節でございますが、たとえば
銀行の業務内容が悪く
なつたような場合には、すぐに営業停止をするなり、あるいは営業免許の取消しをすることなしに、一時
大蔵大臣の指名する業務監理
委員を任命いたしまして、できれば立直りを策してやる。そうしてうまく立直れば計画にのつと
つて再開いたしますし、どう見てもうまく動かないという場合には、これの営業停止なり営業免許の取消しに移る。今の規定にはその強行的な規定がございませんので、新しい規定として入れたいというわけでございます。
それから
銀行検査の
考え方でございますが、現在も
銀行法に基きまして
銀行の検査をいたします。しかし
銀行に対する
大蔵大臣の監督権といたしましては、個別的な業務に干渉することはなるべく避けまして、その運営を自主的にする。しかしその融資その他については厳重な検査をして、もしそこに非違があり、あるいは不健全なものがあれば、これを嚴重に取締るという態勢が、民主的な
銀行監督ということになるわけでありまして、
銀行検査の
制度は戰時中に比べて戰後格段に強化されております。アメリカの新しい検査の方式を取入れまして、
銀行その他
金融機関をまわ
つているわけでありますが、この
法律におきましても
銀行検査の回数を規定しまして、ここでは九十二條において、各
銀行につき毎年少くとも一回これを行うということに規定してございます。もちろん今の
銀行検査のスタッフとしてはとても手がまわりませんので、できるだけこの
趣旨に合うように、その後の
考え方としては二年に一回というようにしてございますけれども、本来の姿としてはぜひ年に一回は必ず見て、非違を正すべきものは正す、こういうことでございます。この
銀行検査官の人員の充実ということが非常な問題にな
つておりまして、現在も予算
折衝の過程において大いに努力しておるわけでございますが、
銀行検査の重要性というものについて特に規定があるわけであります。
大体大きな項目は今申し上げましたような点でございますが、あと若干こまごました決議規定等がございまして、あまり興味をお持ちにならない点もあるいはあるのではないかと思います。またお読み願いまして、御
質問でもありましたらお答えいたすことにしたらどうかと思います。