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1950-07-19 第8回国会 衆議院 大蔵委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和二十五年七月十九日(水曜日)     午前十時三十六分開議  出席委員    委員長 夏堀源三郎君    理事 奧村又十郎君 理事 小山 長規君  理事 早稻田柳エ右門君 理事 田中織之進君       淺香 忠雄君    有田 二郎君       鹿野 彦吉君    川野 芳滿君       佐久間 徹君    高間 松吉君       田中 啓一君    苫米地英俊君       中野 武雄君    西村 直己君       宮幡  靖君    武藤 嘉一君       宮腰 喜助君    中崎  敏君       高田 富之君    竹村奈良一君       羽田野次郎君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 池田 勇人君  出席政府委員         大蔵政務次官  西川甚五郎君         大蔵事務官         (大臣官房長) 森永貞一郎君         大蔵事務官         (管財局長)  吉田 晴二君         大蔵事務官         (銀行局長)  舟山 正吉君         大蔵事務官         (国税庁総務部         長)      正示啓次郎君  委員外出席者         大蔵事務官         (管財局公団清         算室長)    阿部 達一君         大蔵事務官         (船舶公団清算         人)      辻畑 泰輔君         專  門  員 椎木 文也君         專  門  員 黒田 久太君     ————————————— 七月十八日  委員高田富之辞任につき、その補欠として川  上貫一君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員川上貫一辞任につき、その補欠として高  田富之君が議長指名委員に選任された。     ————————————— 七月十七日  船舶公団共有持分処理等に関する法律案(  内閣提出第一〇号) 同月十九日  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出  第一二号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した事件  船舶公団共有特分処理等に関する法律案(  内閣提出第一〇号)  最近の財政及び金融状況に関する説明聽取     —————————————
  2. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより会議を開きます。  本日より付託議案審議に入りたいと存じます。去る十七日本委員会に付託されました船舶公団共有持分処理等に関する法律案を議題として、まず政府当局より提案趣旨説明を聽取いたします。西川政務次官。     —————————————
  3. 西川甚五郎

    ○西川政府委員 提案理由説明申し上げます。船舶公団は、本年四月一日をもつて解散いたしました。目下清算中でございまするが、本年九月三十日までに清算を結了しなければならないことになつております。しこうして船舶公団は、他の船舶所有者との共有契約によりまして、船舶共有しておるのでありまするが、この公団持分共有者たるところの船舶所有者が、十箇年以内に買い取ればよいことになつておるのでございます。しかしながら現在の海運界の現状では、船舶所有者公団持分をただちに買い取ることは困難でございまして、その処分は長期間にわたることが予想せられ、従つてその期間中には、船舶公団清算は結了しないことになるのであります。  以上申し述べましたところの理由によりまして、船舶公団の他の船舶所有者共有する船舶公団持分を国に引き継ぐことによりまして、船舶公団清算を短期間に結了させるとともに、船舶公団復興金融金庫に対するところの債務の弁済、並びに国の復興金融金庫及び船舶公団に対する出資減少につきまして、特別の措置を講ずる必要があるのでございます。  これがこの法律案を提出する理由でございます。何とぞ御審議の上、すみやかに御賛成あらんことを希望いたします。
  4. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 これより質疑に入ります。
  5. 宮幡靖

    宮幡委員 議事進行についてちよつと申し上げますが、速記をとめていただきたいと思います。
  6. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それではちよつと速記をとめて……。     〔速記中止
  7. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 速記を始めてください。  これより質疑に入ります。
  8. 奧村又十郎

    奧村委員 ただいま提案の御説明がありましたが、この船舶公団処理についての復金債務処理、それから政府出資減少について、もう少し数字についてこまかく御説明願いたい。御配付になりました資料貸借対照表に基いて、御説明をしていただきたいと思います。
  9. 阿部達一

    阿部説明員 御説明申し上げます。先般お手元にお届けいたしました一枚刷りの表がございますが、船舶持分につきましては、ここに書いてございます通り数字でございます。そもそも船舶公団共有持分、いわゆる乗出しというか、共有開始いたしましたときの船舶が、百三十五億三百二十三万七百二十六円八十七銭でございまして、それに十三億一千七万五千九百三十五円四銭というものが償却されまして、本年の三月三十一日に百二十一億九千三百万円、かように相なつておる次第でございます。この現在残つておりまする百二十一億九千三百万円の共有持分価格に対しまして、公団といたしましては復興金融金庫に七十億七千八百万円の長期借入金をいたしておるわけでございまして、これの各船舶ごとの当初の建造の際におきまして、復興金融公庫から借入れました船舶についての借入金総額と、その後の償却いたしまして、現在その船についての復興金融金庫からの借入金額というものが、別表として差上げてあるはずでございます。ただいままでお手元に差出しておりますのは、共有契約案と、貸借対照表一般会計工廠資材であります。それと船舶の内訳の表と、ただいま申しました復興金融金庫からの借入金明細書、そのようにお手元に差上げておるのであります。以上でよろしゆうございますか。
  10. 小山長規

    小山委員 ただいまの説明でまだよくわからないのでありますが、この債務継ぎをする場合には、どの債務が引継がれるかということは、この法律あるいはどこかに出ておるのでありますか。ただ総額においてこれだけの債務を引継ぐということは書いてあるけれども、どの債務を引継ぐかは、これはおそらく法律上も問題はあるだろうと思いますが、総括的に債務を引継ぐというような契約なんということはあり得ないと思います。どの債務をどういうように引継ぐかということは、法律のどこに書いてありますか。
  11. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。法律の面には金額をうたつておりません。御指摘通りでございます。それはその当初、償却引当てに相なります部分と申しますのは、本年の三月までは、船舶運営会に使用されておりまして、そこで船舶建造をいたしますと、船価は決定いたしますし、それの諸経費金利償却を見込みました傭船料が決定されまして、その上で支拂われて参ることになりますので、最近やつと全体の船につきまして、船価の決定が最終案まで済んだというふうな状態でございます。なおそのために使用料関係につきましては、まだ清算が済んでおりませんので、どれだけが償却せられるかということも、確定いたしておりませんでしたから、金額はつきりうたうわけには参らなかつたのであります。大体の見当といたしましては帳簿価格にいたしまして、百二十一億という見当がついておつたわけでございますが、それを数字としてうたうことのできませんでしたのは、ただいま申し上げましたような事情であります。この法律引継ぎ建前といたしましては、いわば債務引継ぎと申しますより、船舶持分を国が買い取るというふうにお考えいただきまして、これによつて船舶公団清算というものを結了せしめてしまう。こういう建前基本なつておりまして、ただその買い取りましたと申しますか、それの船価支拂方法を、復金に対します借入金肩がわり公団に出しておりました出資金減資という形において、決済いたすという趣旨法律でございます。
  12. 小山長規

    小山委員 趣旨はそれでわかりますけれども、ここにはこういうふうにいろいろの数字が出ておつて、しかもこういう公式には、どういうふうにこの財産が処分されるということは、どこにも載つていない。そうすると議会と政府との立場においてはどういうふうになるのでありますか。それをちよつとお伺いいたします。
  13. 阿部達一

    阿部説明員 これを公団より国家引取ります場合は、この船舶共有持分は、公団船主との間の共有契約によりまして所有いたしておるわけでありますが、これを引取る事によりまして、国が共有契約の当時者になりますという点と、それからただいま申し上げました共有契約を、国が引取りますそのための対価を支拂わなければならない。その関係になりまして、これを国が引継ぎましてから後は、国が船主共有者としての権利義務を行使しなければならないということになりまして、これにつきまして、法律案といたしまして買い取ると申しますか、債務を負担するという点で法律にいたしましたことと、これにつきまして復金借入金肩がわりと、それから出資金減資ということによりまして、国の経費と申しますか、予算の点につきましても、御承認をあわせていただきたい、かように考えております。
  14. 小山長規

    小山委員 私の質問趣旨はこういうことなんです。つまり船舶共有持分政府の所管に移す。移りました場合には、将来船主はこの持分を十年間以内に買い取るということは、依然として残るであろうと思うのでありますが、その場合に政府移つただけの持分が、はたしてその同額だけ船主が買うだけの財産なつておるか、どうかということであります。つまりそれをもう一つ裏から言いますと、政府が引受けるべき債務あるいは債権というものは、それだけの価値のあるものかどうか。そういうことから出発して行きませんと、法律には数字は書いてない。それからその財産なり債務はそれだけの値打があるのか。債務はむろん引受けるのでありますから、その通り債務減少されるのであります。しかしその引受けたところの共有持分は、将来船主が買い取る場合に、これより安い値段にしか売れないような持分であるというような事態に立至るおそれはないのか、こういうことを聞いておるわけであります。
  15. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。それはお手元に差上げております共有契約の裏面にございますが、これは共有契約そのもの国家使用の場合と、船舶運営会の運営いたしました場合と、本年の四月一日以降のごとく完全自営になりました場合と三つあるわけでございますが、裏にございますのが、完全自営になりましたときの場合が書いてございます。一般的に申しまして、表の方の第十二條でございますが、これにいつでも買い取ることができることになつておりまして、この場合の買取価格帳簿残額なつております。でございますから、償却いたされておりませんといたしますれば償却額、それから金利支拂いが延滯いたしておりますれば、その金利を加算した額でなければ買い取れないということになつております。なおこれを乙にいわゆる船主が買い取りません場合において、十年経過いたした場合でありますが、甲が処分いたすことができるわけであります。その際におきましても、大体十年間の償却ということを予定いたしておりますが、船の種類から申しまして、大体船の壽命は最低十四年から十八年、船の耐用年数につきましては、大蔵省の国有財産耐用年数の規定によつておりまして、現在までのところ公団所有分に対しまする価値というものが、帳簿価格より著しく下まわるということはなかろうと考えております。ただ金利あるいは償却等が著しく延滯いたされました場合におきましては、それに対する保証と申しますか担保と申しますか、その点につきましてはなお考慮すべき余地があるいはあろうかと思われることであります。船主の買い取るべき価格はただいまのでわかつたのでありますが、ここに書いてある数字は、これは確定した数字なのですか。それともこれから清算が進むにつれてこういう数字になるであろう、こういう仮定の数字でありますか。それを伺つておきたい。
  16. 阿部達一

    阿部説明員 ただいまお手元に差出しております数字は、三月三十一日のバランスによりましたものでありまして、その後の復金借入金返済等が行われて参りますれば、国が引取ります額はこれよりもやや下まわるのではないかということが考えられます。
  17. 小山長規

    小山委員 そういたしますと復金に対する政府出資金もこの数字とは違う、あるいは船舶公団に対する出資減少もこの数字とは違うということになつて来ると、非常に不確定金額を対象に置いて審議することになりますが、それとも、それは不確定でもいいというような根拠でもありますか。
  18. 阿部達一

    阿部説明員 お手元に差上げました数字から、現在のところ復興金融金庫に対しまする借入金返済は、たしか一億七千ほど行つたかと思つておりますが、大体現在のところはそれで打切りまして、そこで金額確定するものと考えております。
  19. 小山長規

    小山委員 つまり不確定と申しますか、そういう確定しないような状態で、この法律審議しても何ら弊害は起らないのかということなのです。
  20. 阿部達一

    阿部説明員 一応御審議をいただきます場合におきまして二つの面がございまして、国が引取ります部分がふえるということは、ある意味におきまして危險負担がふえるということが考えられるのであります。また反面、この引取額によりましては復興金融金庫整理が進捗し、また国の支出回收ができるという面と、競合いたすことになろうと思うのでございますが、まず復金整理ということは二の次といたしまして、国の出資回收ということにつきましては、一応持分の額が私どもが予想いたしておりますよりも、多少でも減少いたした方が好ましいのではないか、かように考えております。数字が不確定だという点のおしかりでありますが、これは最初御説明いたしましたように、当初におきまして償却引当て等の額がやや不定でございましたので、はつきりした数字法律にうたうということができなかつたのでございまして、この点は先ほどの説明で御了承いただきたいと思います。  なお蛇足かと存じますが、国に引取りました残りの基本金に対しまする引当て資産関係でございますが、これは現預金と未收船舶、それから造機資初代等で十分まかなえる見通しを持つております。
  21. 小山長規

    小山委員 この引継ぎの日は何日の予定でありますか。
  22. 阿部達一

    阿部説明員 引継ぎにつきましては、船舶公団の方から国に引継ぎますための事務整理と申しますか、その進捗状況と、それから国の受入れ態勢を準備いたさねばなりませんので、できるだけ早い機会に引取りたいと考えておりますが、準備の都合等で十月一日になるのではないかと考えております。一応船舶公団清算を九月末で打切つて参りたいと存じております。船舶公団といたしましてもこの持分以外は、大体九月末の打切りで大した残も残さないで済むのではないかと思われますので、おそくもそのころにはいたしたいと存じております。
  23. 奧村又十郎

    奧村委員 船舶共有契約共有開始の日はいつでありましたか。それから甲乙の持分はどういう比率でどういう内容でありますか。
  24. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。船舶共有開始の日時は、船舶建造ができ上りまして検査をいたしまして、その日において契約を結びまして、開始の期日と場所を決定いたしております。それから持分は、比率金額で表示してございまして、公団が七割持つておるのが多い方でございます。それから半々の場合あるいは四分六と、各船ごとに異なつております。ことに回收船の場合等におきましては、相当こまかなパーセンテージの差異を持つております。
  25. 奧村又十郎

    奧村委員 それではこの貸借対照表にある船舶数字は、すでに共有契約のできた分であるということになると思いますが、そこでなおお尋ねいたします。貸借対照表のこの百二十一億なるものは、公団持分である。これを政府が引継ぐということになるわけでありますが、今度これに対して共有契約をもつて、乙、すなわち船主が負担しておる分は金額において大体どのくらいであるか。それからこれは現金出資されておるのであるか。どういう形になつておるかお伺いいたします。
  26. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。船主持分は約八十億でございます。そのうち船主復興金融金庫から借り受けておりますのが、十三億七千万円であつたと思います。それから出資関係造船所への支拂いと現金の形になつております。ただ一部公団支出におきましては、造機類公団が別に発注いたしまして、その造機造船所に交付いたしましてつくらせる。ですから造船所に対しましては造機類等の官給と申しますか、公給なつております分はもちろん引くことになつております。そのかわりその製作費は他のメーカーに支拂つておるという形になつております。
  27. 宮幡靖

    宮幡委員 今後の審議にあたりまして非常に丁寧な資料をいただきまして、提案理由の御説明とともにあわせてある程度はつきりするわけでありますが、愚問を一つ二ついたしますと、なお簡單資料がほしいのであります。それはここにあります定款写しでありますが、この定款写しは前にたしかいただいて、探せばあるはずでありますが、ぜひこの際ひとつ写しをいただきたいと思います。  それから第一條の四項の関係でありますが、この四項の関係で、公団基本金減少するという規定がありますけれども、この四項の処理によりまして、御提示になりました貸借対照表を拜見いたしますと、基本金減少せしむる手続上若干の疑義がある。実際問題としてどういうふうな方法でもつて基本金減少手続ができるのか。復金債との相殺的な行いは簡單にできるわけでありますが、基本金減少するという手続が、どういう関係で行われるのであるか。この点事務的な問題でありますが、御説明をいただきたいのであります。こちらの方で考えますと、どうも基本金減少するということは、ないではなかろうかと思うのであります。債務を引続いでも、あるいはそれに対しまする財産権を失うというようなこととあわせまして、この貸借対照表の上から勘案いたしますと、四項の手続はしかく簡單にできないものではないかと思うのであります。実際にどういうふうにおやりくださるのですか。事務的で恐縮でありますが、ちよつと御説明をいただきたいと思うのであります。
  28. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。減資関係につきましては船舶公団に対する問題、それから復興金融金庫に対する問題と二つありまして、予算的にいかなる方法によるかという問題につきましては、現在主計、銀行局研究中でございまして、今この方法によるということをお答えいたしかねます。
  29. 宮幡靖

    宮幡委員 御研究もとよりけつこうでありますが、一体基本金を減らさなければならないという方法にはなりにくいのだと思つております。復興金融金庫債務関係処理はよくわかるのでありますが、基本金をかりに共有持分の五〇%こちらに引継いだとするならば、それに対しまするものは單純に公団債権消滅として取扱うのか、あるいはそれに対しまする何らかの債権として、保有して参るということになりますれば、貸借対照表の上の資産構成は、内容は別といたしますれば、これはバランスいたしまして、一向基本金を修正する必要がないというのが、常識的な考え方であります。しかしながら持分を承継して、いわゆる混同による消滅だというような考え方から基本金を減とするならば、一応考えられない筋もないのであります。混同により消滅というよなう手続をいたしますと、一種の国の債権の放棄という形になつて現われて来るのではなかろうか。この点実際の方法としては、まだ御研究余地があろうと思いますが、大体の方針をひとつお示しいただければけつこうであります。
  30. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。あるいはお答えいたしますことが、ぴつたり当りますかどうかを心配いたしますが、御指摘のように、ただちに五十一億というものを減資しなくてもいいのじやないかという考え方もできるわけでありまして、そのかわりに公団清算を全部済ました場合に、国として五十六億九千七百万円の出資金回收をいたします。なお残金があればとるわけでありますが、その際の出資金の見返りと言いますか、それの資産として五十一億何がしを、船舶共有という形で国に引取るということに相なるわけでありますが、それを共有関係だけは少しでも早く引取つて減資いたしておきますれば、清算事務がそれだけ早く済むということで進んでおるわけでありまして、出資減少ということも、お互いの債権債務混同という考え方もございますし、その点につきましては、なお手続の問題について研究いたしたいと考えております。
  31. 田中織之進

    田中(織)委員 ただいまの問題に関連するのでありますが、公団の所有する共有分を国が引継いだ場合においても、十年間の他の船舶所有者買取権と言いますか、それはそのまま存続するわけですね。
  32. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。この法律によりまして共有持分引継ぎます場合には、先ほどもお答えいたしましたように、共有契約の当事者とも相なるわけであります。それで一応私法上の契約でございますので、やはり根本的にはこれを尊重して行かねばならない、かように存じております。
  33. 田中織之進

    田中(織)委員 これは公団清算事務をすみやかに完了するという意味で、今回この立法をされたという趣旨には私も賛成でありますが、その場合にやはり従来船舶公団の船につきましては、公団以外のいわゆる民間船舶所有者との共有関係に立つた関係から、しかもこれは提案説明のときにもありますように、十年間に買い取ればいいということになつておりますが、従来の公団に対する買取権を国に肩がわりするわけでありますから、その関係のものをはつきり残しくおくということは、民間業者のために絶対に確保しておかなければならない権利だと思います。ただいまの御答弁でその点がややはつきりしたようでありますが、明確でないところがあるように思うので、その点について、公団に対して十年間で買い取ればいいことになつておつた部分が、国にかわつてもそれは存続すると、はつきりこういうように了解してよろしいわけですね。
  34. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。原則的にはさように参りたいと思つております。ただ考えれますことは、契約内容あるいは條項等につきまして、相対の話合いで変更し得るものがありますれば、変更いたしたい。たとえば十年間の買取りの問題でありますが、これを今すぐ買い取ることも船主の方ではしておるわけでございます。ただ十年間は、利益を生じない場合は、たな上げと申しますか、次の補填できるまでは繰延べができるということになつておるだけでありまして、いつでも買い取ろうとすれば買い取れるわけでございますので、国といたしましては、條件によつてはただいま買い取つてもらうという交渉もいたしたいと思つております。
  35. 田中織之進

    田中(織)委員 これは今私ちよつと中座している間に、ほかの方から多分質問が出たことと思うのでありますが、この法律によつて国が引継ぐことになる共有分というか、それは大体どの程度なつておりますか。その関係で、復興金融金庫債務と申しますか、それを引継ぐ分がどの程度になりますか。その数字的な点を、これはダブルかと思いますけれども、お示しを願いたいと思います。
  36. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします。船舶公団共有いたしております船舶の数が三百十三隻、総トン数で六十六万トンございます。それの船価といたしましては百二十一億九千三百万円、船会社の数は百二十四社でございます。それからこの百二十一億九千三百万円の持分を取得いたしますために、公団復興金融金庫から借入れております長期債は七十億七千八百万円であります。
  37. 田中織之進

    田中(織)委員 三百十三隻で公団持分が百二十一億九千三百万円というわけですね。そういたしますと、その中で、この法律の第一條の第三項によりまして、七十億七千万円の復興金融金庫から借りておる分につきましては、これを国が引継いだ場合には、それだけ復金の資本減少を行うという形になるわけですが、その差額の部分はどういうように処理される方針ですか。
  38. 阿部達一

    阿部説明員 お答えいたします前に、この前お答えいたしましたことを補足いたしますと、六十六万トンと申しますのは、共有いたしておる全船舶でございまして、それの公団持分が百二十九億三千万円、民間持分が約八十億円で、約二百億というものが総船価になります。それからただいま御質問の、復興金融金庫借入金肩がわりによります資本の減少の残額が、五十一億一千五百万円ということになりまして、これは国が船舶公団に五十六億九千七百万円というものを現在出資いたしておりますので、そのうち五十一億一千五百万円に相当いたします分を減資いたします。それで持分取得のいわゆる対価の支拂いに充てるという考えでございます。
  39. 田中織之進

    田中(織)委員 これでややはつきりして参つたのでありますが、大体船舶公団清算事務もその後進んでおると思うのでありますが、大体この種公団の通弊といたしまして、従来の運営上の欠点というようなものが、清算事務の過程においてものすごい赤字の形をもつて現われておるのであります。船舶公団清算事務の過程において、船舶公団としてのこういう処置を通じて、最終的に赤字が相当残るということが懸念せられるのではないかと思いますが、その清算事務の進行状況過程においてどの程度の赤字が残るか。赤字が出なければ幸いでありますが、そういうようなことについてお示しを願いたいと思います。
  40. 阿部達一

    阿部説明員 お答え致します。船舶公団清算結了期を大体九月末と予想いたしております。その際におきまする大体資産、負債の状況でございますが、この法律によりまして、出資減少いたしました残りが、五億八千二百万円に相なるのでございまして、これに見合います資産といたしましては、預金、現金、未收の船舶使用料、それから造機資材の売却代、それに今年度に入ります予定の未收船舶—最初申しましたのは二十四年度の清算のしりであります。そういつたものを考えまして、大体五千万円は一応黒字として残るのではないか、こういつた見通しを持つております。
  41. 有田二郎

    ○有田(二)委員 議事進行について……。田中さんの質問のまん中でちよつと入れていただきたいと思いますが、阿部さんは説明員であるし、特に清算人であります。消えてなくなる存在の人であります。しかもこの法案に対して吉田管財局長が来ているにもかかわらず、吉田管財局長がそれに対する答弁をしない。吉田管財局長でわからないことを、清算人が説明員として説明をするならばわかりますが、一体初めから説明員である阿部清算人が答弁に当つている。それが政府代表としての答弁であるとは聞きとりにくいのであります。さらに船舶公団に関しては、運輸省から出てこられまたわれわれの質問に答えるべきである。本法案は通さぬでいいというお考えならば、これは別でありますが、この会期の短いさ中に、この法案を通さなければならぬお考えであるならば、政府としてもつと愼重にお考えになるべきである。今の質疑応答をずつと聞いていると、ほとんど消えてなくなる清算人が政府を代表して説明に当つている。しかも船舶公団に最も関係の深い運輸省の海運関係から、だれも責任者が出て来ていない、かような考え方でこの法案を通そうとされることは、われわれまことに本委員会を侮辱されるものだという感じを持つのであります。ひとつ管財局長の御所見を伺いたいと思います。
  42. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいまの有田委員からのお話、はなはだ私恐縮に存ずる次第でありまして、今説明いたしました阿部説明員は、清算担当者といたしまして、この事務に專念しておられまして、数字等の点につきましては非常に詳細に承知しているわけであります。最初の御質問が、実は貸借対照表数字の点でございましたので、説明員に説明をしていただいたわけであります。その後の御質問の点につきまして、私から御答弁すべき点があつたのでありますが、機会を失しまして、あとずつと阿部説明員の方から説明申し上げて、はなはだ遺憾でありまして、今後の質問の点はできるだけ私から説明いたします。私でわかりません点につきましては、説明員から説明いたします。
  43. 有田二郎

    ○有田(二)委員 吉田管財局長の御趣旨はよくわかつたのでありますが、海運関係がお出ましになつていないのは、一体どういうわけでありますか。これは大蔵委員会だから運輸省が出なくてもよいと、しかく簡單にお考えになつているのか、承りたい。
  44. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 実はこれはやはり運輸省の方から出ていただく方がいいと考えているわけでありますが、ただ実はきようは最初の質疑でもあり、事が清算の過程に入りました後の引継ぎの問題でございますので、特に運輸省の方に御連絡をお願いしなかつたわけであります。私どもは御必要によりまして、すぐ運輸省の方に連絡いたします。
  45. 有田二郎

    ○有田(二)委員 会期が非常に長ければけつこうでありますが、会期が非常に短いところ、法案が次から次へと出て来るのであります。これはひとつ西川政務次官にお願いしたいのでありますが、大蔵委員会に出る大蔵省関係の法案でありましても、各省と関係のあるものなどは、各省の担当官をいずれも本委員会に出席させる。由来大蔵委員会はどうもうわさに聞くと、大蔵省からなめられているというようなうわさを聞いているのであります。そういうことのないように、本委員会に法案を出されるときに、関係各省の係官を出席させていただきたい。船舶公団にいたしましても、かくなるまでのいろいろな海運関係のことを、本委員会としては聞きたいことがたくさんあるわけであります。船舶公団がどうであつたかというようなことは、大蔵省では全部おわかりにならぬはずであります。先般の公団問題でいろいろと国民に迷惑をかけている点から考えても、大蔵省の監督不行届きという点、経理の面その他の点については全然御存じないのであります。ひとつ十分お考えを願いまして、将来こういうことのないように、本委員会をなめないように、十分御協力を願いたいと存じます。西川政務次官のお考えを伺いたいと思います。
  46. 西川甚五郎

    ○西川政府委員 有田委員からおしかりと御注意をいただきまして、たいへん恐縮に存じます。私も新米で、この大蔵委員会に出まして、たいへんよいお言葉と存じます。今後大蔵委員会の運営につきましては、最善の努力をいたしまして、各省との連絡なり、皆さんの十分なる御審議ができるように手配いたしたいと存じます。どうか御了承願います。
  47. 田中織之進

    田中(織)委員 先ほどの御答弁によりますと、大体政府出資の五十六億と、今申します五十一億一千五百万円ですか、この共有分引継ぎ関係で、復金債務を相殺した分の差額の五億何がしに対しまして、預金残及び二十四年度の未收船舶使用料、二十五年度の收入というようなもので差引すると、五千万円の黒字になるだろうという御答弁のように承つたのでありますが、大体船舶公団の従来からの運用の結果によるところの、いろいろの債務の累積されたものがあろうかと思うのであります。政府出資と、今申します持分関係で、今度国が引継いで相殺した関係の、差額だけに見合うものから出るバランスの五千万円が黒字だというような、そういう單純なものではないように、われわれは推察しておりますが、いわゆる船舶公団清算事務に伴います赤字、黒字の関係その他の残は、先ほどの御説明通りとわれわれは承つてよろしいのでしようか。
  48. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいまの御質問の点は、まことにごもつともな点でございまして、あれだけ大きな仕事をしておつた公団が、最後になつてそんな小さな数字でいろいろつじつまが合うのかというふうな御疑問が起るのは、当然だと思うのであります。ただ船舶公団のやつておりました仕事と申しますのは、御承知の通り船舶公団が、船主が船をつくりますときに、政府出資と国から借りました金を船主に出しまして、自分は共有持分をとる、こういう関係が主なる仕事であります。従つてその仕事のほかには、わずかに今の裝備資材でありますとか何とかを、配給することをやつておりますから見合いになりますが、資産というものは、大きなものは今問題になつております共有持分であります。従つてその共有持分が将来どういうように処分されるかということによつて、その公団全体の最後の姿がどうなるということになると思います。ところがこれについては最初に申し上げましたように、十年間船主がこれを買い取らなくてもいい。また公団がこれを船主の承諾なしに、他に売ることもできないというような特別の契約もありますのでその共有持分を早急に処分することができない。従つてこれを薄価のままで政府に引継いで参りますので、そこに損益の問題が起つて来ないわけであります。従つて船舶公団がただいまの状態のような清算をやつておりますれば、割合に大きな数字は動かない。共有持分を処分した場合には、あるいは非常な黒字になるか、多少の赤字が出るかという問題があるかと思うのでありますが、これはまだこの現状では結論が出て来ない、こういうことになると思うのであります。
  49. 田中織之進

    田中(織)委員 それは船舶公団が他の公団と違う性格から見て、ただいまの吉田局長の御説明を一応了解いたしますが、そういたしますと、ただいまの御答弁の中にありました共有分の処分の問題で、結局、債務の問題についても異論が生じて来る、こういうことでございますが、当然国が共有分を持つておるその船が、こういうような緊迫した国際情勢下に海洋を航行するわけなんですから、そういう関係から出て来る危險というものも、考えなければならないと思うのであります。しかし問題は私が先ほど一番初めに念を押しましたところの、国が公団清算事務をすみやかに結了するという建前から、便宜上公団が持つておる共有分を国が引継ぐわけなんでありますけれども、やはりその共有分に対するいわゆる民間船舶所有者買取権というものは、そのまま私は存続させるということでなければならぬと思います。そういう観点から見ますると、大体共有分のうち、今度国が取得する部分は当然これは国有財産と同一のものでありますが、その関係から処分するときの価格の問題が、いわゆる国有財産の処分の原則でありまする時価主義というようなものによりますと、いわゆる買取り期待権と申しますか、民間船舶所有者が持つておる買取権の場合の一つの価格ですね。それとそのときどきの——これは安くなる場合も考えられると思いますけれども、高くなる場合、民間業者の期待権とは違つて来ると思います。その間に、今申しましたように、これが実際に稼働するわけでありますから、その点から来る危險というものも考えなければならぬと思うのでありますが、そういう点についても、この法律を策定するについてはお考えになつておるかどうか、その点を伺いたい。
  50. 吉田晴二

    ○吉田政府委員 ただいまの御質問の点は、結局公団船主との間の契約を、そのまま国の方で引継ぐわけでありますから、従つてこの契約の存続期間中は、かりに国が買い取るといたしましても、船主の方に売るにいたしましても、それは簿価で船主が買い取る権利がある。従つて一般の国有財産とは全然違つたものでありまして、この契約従つて処理されなければならぬ。この契約が切れますれば、これはまた別の問題になつて来るのでありますが、少くともこの契約の存続中は、この契約従つてやることになります。その点は別に船主権利を害することはないと思います。     —————————————
  51. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 田中君にちよつとお諮りいたしますが、大蔵大臣がお見えになりましたから、この質疑はあとにまわして、大蔵大臣にいろいろ金融関係質問を願うことにいたします。
  52. 有田二郎

    ○有田(二)委員 この際委員長に御質問申し上げたいと思いますが、本大蔵委員会が院外において、また院内において大蔵大臣になめられておる。なめられておるという言葉が当らないならば、軽視されておるというようなうわさがあるのであります。というのは、大体大蔵委員会は非常に紳士的な方が多いのでありまして、そのために大蔵委員会はどうでもいいというように、大臣はお考えであるやのうわさがあるのでありますが、委員長としてはこれに対してどういうお考えを持つておるか、御所見を承りたいと思います。
  53. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 有田委員より、ただいま大蔵側が委員会をなめておるとかいうことでありますが、何かなめておるということが無視しておるということであれば、それは国会の権威を保持するために、委員長は今後あらゆる方法をもつて、これに対して何かの方法に出なければならない。しかし私はそうは考えておりませんが、どこまでも国会の権威を保持するために、もしそういうあり方があつたとすれば、大蔵大臣初め大蔵関係の公務員に対しては、反省を求めることを私よりお願いしたい、こう考えております。これまでの大蔵委員会は非常に法案が多いのでありまして、その法案の審議にあたつても、国会に提出になる三分の一以上の法案を、短期間のうちに審議するのでありまして、特に会期の終り間際になつてから、じやんじやん法案が出るというような実情にあるようであります。そのために、あらかじめ委員会及び專門員との十分緊密な連絡は必要じやなかつたか、この連絡が欠けておつたのじやないだろうかと私は感じております。今後のあり方としては、そういう方法を是正するために、委員会及び專門員と大蔵省との間で、法案の内容についてできる程度の——これは祕密の場合もありましようが、ここは内輪同志ですから、できる程度に、あらかじめこの内容をお互いに打明けて御説明を求め、また御相談をし、協力するという方法に参りますと、なめるとか何とかいうことが解消されるのじやないだろうか、こう私は考えております。大蔵省の方では各部門によつて司令部方面に直接接触し、内容も十分わかつておることであつて委員会及び專門員の方ではその内容はわからぬのであつて、そのために法案の審議にあたつて、わからぬことであるから、結局結果においては無視とかなめるとかいう結果になりはせぬか、こういうふうに私は考えておりますので、これを是正するために、大蔵当局は委員会及び專門員と十分緊密な連絡をとつて、そういう誤解のないように、これから持つて行くべきものである、こう私は考えております。委員長としては今申し上げたように、非常に法案も多いことでありますし、何やかやでこの連絡が大分欠けておると私は考えておりますので、今後はそういうことのないようにいたしたい。今日は大蔵大臣もお見えになつておりますので、委員会が大蔵省に協力する意味において、できる程度のことは私どもも十分に協力の方法を考えたいと存じますので、どうぞそのようにお願いしたいということを、委員長からこの際あらためて申入れをしておく次第であります。
  54. 有田二郎

    ○有田(二)委員 大体われわれは占領下にあるわけでありまするし、特にこの財政面については関係方面の了解を得なければ、何もできないということもわれわれはよくわかつております。かかるがゆえに大蔵当局では、国会で、衆議院でいいかげんなことをいつたつてこれはだめじやないか。どうしても関係方面の決裁がいる。大蔵委員会あたりで何といおうとそんなことは問題じやない。かようなお考えを持つておいでになるのじやないか。従つてそこに国会軽視という考え方がなされておると私は思います。占領下であるから関係方面の了解を得ることはもちろんである。しかし国会は国権の最高機関であります。従つて国民の代表であるわれわれに対して、十分なる尊敬の念を大蔵大臣は持つべきが当然であつて、しかもまた大蔵当局全体がその考えを持つて行くべきである、かように考えております。もちろんさような考えをお持ちになつておられると思うけれども、さらに私は十分本委員会に対する考え方をよく考えていただいて、そうして今委員長がおつしやられた通りに十分な連絡を願いたい。ただいまの本委員会のいわゆる船舶公団の問題にしても、運輸省の海運関係を呼んでいない。しかも先般説明会をすでにやりまして、きよう第二回の委員会であります。しかも運輸省の海運関係の者を本委員会に呼んでいないということは、大蔵委員会がなめられておる一つの実例であります。すべての法案について関係各省の政府委員を一堂に集めて、しかも今国会は非常に会期が短かいのでありますから、短時日の間に愼重に法案を審議して行かなければならぬという建前からいつても、私はこの一つの例を見ても、どうも本委員会は大蔵当局になめられておるというような感を深くするのであります。どうかひとつ大蔵大臣からもこれに対する御所見を伺いたいと思います。
  55. 池田勇人

    ○池田國務大臣 有田君のお言葉は、私は閣員であり、何かの誤解に基くものではないかと思います。決して国会を軽く見て、大蔵委員会をなめておるというような気持は持つておりません。私もまた及ばずながら国会議員であり、そんな自家撞着のような気持を持つておるはずはないのであります。ただ通常国会におきましては予算委員会に出ることが多い。また先般は通産大臣を兼ねておりました関係上、本委員会に出る機会が割に少かつたということはこれは事実でございます。しかしこれはなめておるためではないので、一人で仕事が多過ぎたという点があるのでございます。自分の関係委員でございますから、つとめて出るようにいたしたいと考えております。なおまた審議の状況によりまして、仕事柄各省に関係のあることが非常に多いのでございます。そういう場合におきましては、つとめて各省の方々にも御協力を願うようにして、審議に支障のないように進めて行きたいと考えております。
  56. 有田二郎

    ○有田(二)委員 大蔵大臣から誤解ではないかというお話がありましたが、誤解であればまことにけつこうであります。これが誤解で終るようにわれわれは念願したいのであります。大蔵大臣は私も主税局長時代からの知合いであり、同県人である関係から、個人的にはよく存じ上げております。しかしわれわれは国民の代表として、しかもこの非常なる金詰まりに再会して、中小企業は日に日につぶれて行く今日の段階において、私は大蔵大臣の非常なる決意をお願いしたい。  さらに私はここで二、三点大蔵大臣に御質問いたしたいと思いますが、財政收支についてドツジラインで行けば金の引上げ超過になる。こういわれておるそうでありますが、大蔵大臣としてどういうようにお考えになつておりますか。御所見を承りたい。
  57. 池田勇人

    ○池田國務大臣 今回の予算では、御承知の通り均衡予算でございまして、引上げ超過ということにはなりません。ただ一年を通じては引上げ超過にはならないのでありますが、時期的には相当引上げ超過の場合が出て来るのであります。ことに今年度の第一・四半期におきましては、大体三百四億円の引上げ超過になりました。これは今年度予算につきましては八十数億円の散布超過でございますが、前年度予算のしりが非常な引上げ超過になつ関係上、全般から申しますと三百四億円になつておるのであります。これは第一・四半期は、散布超過になるのが例年の常態であります。昨年も一昨年も散布超過であつたのが、本年は異例な状況として、三百四億円の引上げ超過ということになり、その原因はどこにあるかと申しますと、やはり地方公共団体の仕事が、地方税法の不成立によりまして十分はかどつていないという点もありましようし、また国の仕事にいたしましても少し遅れたというなことで、政府から出る金、地方団体の事業がある程度足ぶみしたというのが一つの原因であります。  また第二の原因は、税の徴收、ことに法人税なんか例年よりもよくなりました。こういうことが收入面での引上げ超過の原因になつておるのであります。しかしこういう状態を緩和いたしますために、日本銀行におきましては、この間において三百二億円ほどの散布超過と申しますか、信用供與をいたしておりますが、全般といたしましては大体通貨も横ばいであり、さしたる支障を見ていないのであります。第二・四半期に至りましては、大体引上げ超過というものはとんとんで行つておる。ことに七月におきましてはただいまのところ三、四十億円程度の散布超過になつております。しかし八月、九月は税その他の関係で引上げ超過になる見込みでありますので、七月におきましてはできるだけ散布超過額を多くしようと努力いたしておるのであります。
  58. 有田二郎

    ○有田(二)委員 大蔵大臣の御答弁を承つておると、何でもないというような感じを受けるのであります。私の聞くところによると、昨年度は引上げ超過が約六百億ということに聞いておるのでありますが、さらに本年はこのままで行けば、対民間收支が約一千億ほどの引上げ超過になるのじやないか、かようなことが言われておる。今の大蔵大臣の御答弁のとんとんで行くというのと非常に違うのでありますが、大蔵大臣としてどうお考えになりますか。
  59. 池田勇人

    ○池田國務大臣 一千億の引上超過になるということは第一義的には言われないのであります。ただ政府の收支全体といたしますと、預金部の金が相当増加いたします。すなわち郵便貯金、厚生年金、簡易保險等によつて預金部の金が相当ふえるということになるのであります。これは金融的の問題でございまして、預金部の金の使い方につきましては、入つた金はできるだけ出すような方法を今検討中であるのであります。予算面におきましては、大体とんとんで行く考えでおります。ただ昨年御承知の通りに引上げ超過になつたというのは、不用額その他がございまして、ただいま正確な数字はわかりませんが、大体百七、八十億ぐらいの剩余金が出るのではないか。この分が引上げ超過になる、こういうことに相なるのでありますが、これがまた前年度剩余金を使うか、あるいは国債償還に充てるということにいたしまして、ずれは来しますが、その計画をいたしております。
  60. 有田二郎

    ○有田(二)委員 今大蔵大臣が、日本銀行から信用供與で三百二億ほど、一期の三百四億に対してそういうものが出ておるというお話でありますが、大蔵大臣は、日本銀行で貸出しをやつて金詰まりを打開すべきだ、かようなお考えを持つておられたやに聞いておりましたが、今日でもさようなお考を持つておられるか承りたい。
  61. 池田勇人

    ○池田國務大臣 新聞紙上で、金融操作がいやだとかいいとかいうような議論があるようですが、これは財政の時期的ずれの調整にできるだけ努めることはもちろんでありますが、今言つたようないろいろな原因で引き上げ超過になり、金詰まりの状態を呈しまする場合は、やはり金融操作によつてピークを乘り切らねばならぬ。これは原則で、一国の財政経済を担当する人はどうしてもそうせざるを得ない。この点につきましては、日本銀行と大蔵省とは緊密な連絡をとつてつております。各財政の立場、金融の立場、こういう立場にとじこもつてそのことだけを考えては、かんじんの経済というものは動かない。金融も財政も一体となつて運営しなければならない。これは動かすべからざる真理である。この方向に基いて大蔵省なり日本銀行はやつておりまして、その間に何ら間隙はありませんから、御安心を願いたいと思います。
  62. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 ちよつと有田君にお諮りいたしますが、大蔵大臣は幾らも時間がありませんから、金融全体に対する説明を一応聽取いたしたいと思います。それでそれによつて委員からいろいろ御質問を願います。大蔵大臣にちよつとお伺いいたしますが、きようの午後の時間はおあきでしようか。
  63. 池田勇人

    ○池田國務大臣 あいております。
  64. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 それでは午後の委員会において続行いたしましよう。
  65. 有田二郎

    ○有田(二)委員 それでは午後に私の質問をお願いいたします。国税庁の総務部長と検査部の審査課長がお越しになつておりますから、二点だけちよつとお願いしたいのです。約二箇月ほど前に銀行局の検査部で興銀を検査された結果、日銀の貸出しを締めろ、かような指示が検査部からあつたやに聞いております。そうすると、大蔵大臣の方針と銀行局検査部の方針が違うのであります。大体銀行局としては、大蔵大臣の方針を何とも考えていないのか。私どもは銀行局というものは、大蔵大臣の方針のもとにやつておるのではないかというように考えておるのですが、実際の面として、銀行局と大蔵大臣とが汽車のレールのように並行線である。大蔵大臣の国民に対する親心を無視しておるのではないか、かように考えるのですが、銀行局長の御所見をひとつ伺いたい。
  66. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 興業銀行につきまして、銀行の定期検査の関係といたしまして、最近検査を大いにやつていることは事実であります。その際の検査官の意見等は、まだ大蔵省においてはとりまとめて検討いたしておりません。御承知の通り検査の結果につきましては、大蔵省として態度を決定いたしまして、委員長に示達するのでありますが、その段階に達しておりません。いずれ検査官の意見を検討するのであります。しかし有田委員のお尋ねのように、決して経済界の実情を無視した結論をしいるというようなことは、ないものと確信いたすのであります。ただ一面銀行のあり方の健全性、公共性というようなことも加味しまして、御懸念のようなことはないと信じます。
  67. 有田二郎

    ○有田(二)委員 それでは銀行局としては、大蔵大臣の指示を受けて忠実に全員がやつて行くものである、かように解釈してけつこうでありますか。
  68. 舟山正吉

    ○舟山政府委員 大蔵大臣の政策に十分従つて行くということは、申すまでもないわけであります。
  69. 有田二郎

    ○有田(二)委員 銀行局関係では大蔵大臣は浮き上つていない、かように解釈します。さらに国税庁関係では、先般ちようどわれわれと同じく委員をしている宮幡通産政務次官がおられた当時において、私の選挙区である大阪西成の税務署長が、当時大蔵大臣としてまた兼任通産大臣としての池田氏から、差押えをした物件を競売するということだけは今しばらくやめて、そうしてなるべく税金を納める線でやるべきだと言われたという大臣の談話が本国会においてあつたのであります。それがたまたま新聞に載つたのでありますが、私がその新聞を持つて西成税務署長に会いましたときには西成税務署長は、大臣が何と言おうとどんどん競売をやると言つて、私の目の前で命令をしたのであります。帰つて参りまして、私は当時大蔵兼通産大臣である池田氏に、池田君がいくらえらそうに言つたつてだめじやないか。一般税務員は大蔵大臣の言うことを聞かない。しかも税務署長はこういうようなことを言つているというようなことを話しましたら、池田君はさつそく当時の通産次官の宮幡君に命令して、大阪の方に通牒を出した。私もそのことを大阪の窪谷国税局長にお話して、その人事については十分考慮してもらうように意見を具申しておいた。しかるに今回の人事発表によりまして、西成から淀川税務署長に栄転した。すなわち大蔵大臣の悪口を言うところの税務署長はいずれも栄転である。特に人事を扱つている国税庁の正示総務部長は、先般私は本委員会質疑したのでありますが、国税庁は大蔵大臣というものは税務署では浮き上つているのだ、かようにわれわれ解釈していいか。またこの人事についての御所見を伺いたい。
  70. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 お答え申し上げます。国税庁は大蔵大臣の管理下に仕事をいたしております。大臣の御命令は十分これを承りまして、その趣旨によつて仕事をいたしますことはもとよりでございます。ただいま御指摘の大阪の税務署長の人事の問題でございますが、先般もこの委員会において有田委員より御指摘があつたのであります。人事につきましては、もちろんこれまた大臣の趣旨によつていたすものでありますが、先ほどお話のような点については、そのときの情勢を詳しく承知しておりませんが、人事は署長の行政全般につきまして、総合的に判断をしてやります。個々の問題、特に言語、動作等におきまして、不注意の点がございますような場合には、大臣から特に言われておりまして、われわれは十分その点注意を加えております。ただいま御指摘のような事実があるとしますならば、その点については十分注意いたしますが、丹羽署長は非常に全体としての成績もよかつたのでありまして、先般のような異動になつたのであります。ただお話のように、西成と淀川、これはまあ正常の観念から栄転というふうにお話でございますが、われわれとしては西成は非常にむずかしい署でありまして、こういうところにこそやはり有能な士を置くべきである。こういう判断を持つているのでありまして、必ずしも西成から淀川が栄転であるというふうにも、実は考えておらぬのであります。西成もまた非常に重要な署である、こういうふうに考えていることを申し上げます。
  71. 有田二郎

    ○有田(二)委員 なかなか正示総務部長の御答弁は闊達であり、敬服に値するのであります。しかしながらこの丹羽署長というのは、いいところはわれわれ認めるのであります。しかし西成税務署の納税協会の役員が全部総辞職した。しかもただ一人としてなり手がない。かような税務署長であつたのであります。国税庁の人事というものは、国民がどうなろうとこうなろうと、税金さえ吸い上げるのが成績がいいのだとお考えになつているのか。しかもただいま申し上げました大蔵大臣を侮辱した言辞を、しかも国会議員の前で平気で言うような男、さらにまた区民の協力を一人も得られないような男、しかも納税協会の役員が総辞職して、私が代理人としてあらゆる方面をまわりまして、何とか税務署に協力して納税の実をあげてもらいたいということを懇願しても、なかなか聞き入れない。しかもようやく話合いができて税務署長に会うと、丹羽署長は何と言うか。私は元帝国軍人でありました、かかるがゆえに断固としてやります。こう言うのです。かような非常識な者が、国税庁の人事においては最も有能な者とお考えになるかどうか。人事を所管しておられます正示総務部長の御所見を伺いたいのであります。
  72. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 先ほども申しましたように、西成は非常にむずかしいところでありますだけに、仕事が多くてついああいうような不注意なことがあつたかもしれませんが、その点については十分注意をいたしたいと思います。われわれとしては、納税者の方々に対して、いたずらにさような刺激を與えて摩擬混乱を起すようなことのないようにということを、常に十分注意をいたしてやつているわけであります。従いましてその指令に従わないような場合には、嚴重に注意を與えているわけであります。そういうふうな場合もあろうかと存じますので、お気づきの点はよく申し出てくださいますれば、注意をいたして参りたいと考えております。
  73. 有田二郎

    ○有田(二)委員 国税庁の人事でありますから、われわれとしてはなるべく意見を述べたくないのであります。しかしながらかような方針でおやりになつていると思いますがゆえに、非常によい税務吏員もおられますが、全国の若僧の税務吏員の中には、悪い税務吏員もおつて、その調査にあたつての態度には、言語同断の点が非常に多いのであります。しかも今日は非常な金詰まりで、この非常な事態のために中小企業者はまつたく塗炭の苦しみにあえいでいる。西成の税務署長の丹羽氏が栄転をされた一例を見ても、こんなふうなめちやくちやな人間であれば栄転する。何でもかんでも税金をとつて、税金の額があがれば、それが税務署の成績であるというような、国税庁の根本的な誤つた考え方のもとに人事が行われるから、今日全国的に非常な問題をかもしているわけであります。全国の税務吏員の中には非常によい人もあるが、はなはだよくない考えを持ち、よくない態度をとつている人がある。鶏を殺したのでは卵は出ないのであります。気息えんえんたる鶏を育成しながら、少しでもよけいな卵を生ませるというのが国税庁の行くべき道であり、またそうすることが国税庁の人事であろうと考えておるのであります。私はこのために一番困るのは大蔵大臣であると思います。池田さんは国会ではわれわれにいじめられ、税務吏員はさつぱり言うことを聞かない。全国の税務吏員の中には非常によい人もあり、私どもの接した中でわれわれの感心する税務吏員もおられますけれども、親心を持つたところの税務吏員は少い。これは非常に私は遺憾に思う。どうか私は大蔵大臣の立場を悪くしないように、特に今度の場合において十分御調査になつて、大蔵大臣の悪口を言つた丹羽氏に対しては、国税庁として断固たる方針で臨んでいただきたいと思う。またわれわれは、よく地方の税務署の若い人たちが、何か言うとすぐ代議士が悪いのだというような罵詈雑言を聞くのでありますが、おそらくこれは私だけではないと思う。こういうような問題についても、いやしくも国権の最高機関であり、国民の選良であるわれわれに対する税務吏員の考え方なども、根本的に是正をしてもらいたいと考えておりますので、大蔵大臣の御所見を承りたいと思います。
  74. 池田勇人

    ○池田國務大臣 今お話しになりました丹羽署長は、私は十数年来知つている男でありますが、もともと徴收出身であります。徴收に関する判定書をこしらえたり、徴收專門の男であります。專門の男ならよほどうまくやりそうなものでありますが、どうも人間のあさましさと申しますか、徴收で育つておると、徴收これ万事であるというような考え方で、不穏当な言辞を弄したものと思うのでありますが、こういう点は将来十分戒告いたしたいと思います。また今の税務官吏の中には、相当教養もあり、りつぱな者も数多いのでありますが、それと同時に非常に非常識な言動をとる人もなきにしもあらずということも、私はよく耳にいたしておるのでありますが、税務行政というものは国の行政の中枢をなしているものですから、これがうまく行かないと全般の行政がうまく行かないというような考え考えをもつて、税務職員の素質の向上をはかると同時に、言動その他につきましても、機会あるごとに注意をいたしておるのであります。皆様方は一般民衆に接せられる機会が多いのでありますから、そういう税務官吏の言動その他につきまして、非違の点がありましたならば、どしどし申し入れていただきたいと思います。ことに今の制度では、監督官等を置きまして、そうしてある程度犯罪捜査権も持たせまして、非違のないようにさすと同時に、民間の忠言を聞くような機関を設けまして、内外ともにりつぱな税務官吏を育成するようにやつておるのであります。われわれ内部の者でいろいろやりましても、これはあまり効果はございません。やはり外部の方からいろいろのことを申し入れていただきますと、これが是正できるのでありますから、私の力の及ばないところは、ひとつどしどし申し入れていただきたいと思います。私も二十何年間税務におりまして、今の幹部連中はたいがい昔から知つておりますが、新しく入つた人は、私の気持のわからぬ連中も相当多かろうと思います。今後はあなた方の助言によつて是正して行きたいと思いますから、どうぞ遠慮なく私なり、国税庁長官なり、あるいはその他の関係者に、御意見なりお考えをどしどし申し出てください。そしてあなた方と私と相ともに、税務行政の刷新向上に邁進いたしたいと思つておりますから、よろしくお願いいたします。
  75. 有田二郎

    ○有田(二)委員 池田大蔵大臣の御趣旨はよくわかつておりますが、税務吏員の中には、まじめな税務吏員に対してまことに申訳ないような、よくない税務吏員がおる。たとえば宴会に行くとか、酒を飲みに行くとか、あるいは女を抱くとか、かような税務吏員をわれわれはよく耳にするのであります。どうかこの点をひとつ十分お考え願つて、まじめな税務吏員の名誉のために、不良な税務吏員に対しては断固たる処置をもつて臨んでいただきたいと思います。特に私は委員長にお願いしたのですが、この税務関係につきまして、今日は国民あげて非常なる苦しみにあるときでありますから、税務吏員の行動いかんが影響するところは非常に大きいのであります。従つて悪い税務吏員の是正のために、本委員会としてはできる限りの協力あらんことをお願いして、いずれ私の質疑を後日に讓りたいと思います。
  76. 奧村又十郎

    奧村委員 資料要求に関して発言いたします。特に国税庁関係に対して先般来資料の要求をしてありますが、いまだに出されておりません。もうすでに会期も十日余りであります。そこでわれわれ大蔵委員会としては、財政金融を審議するにあたつて数字の根拠がなければすべて抽象論になり、水かけ論になりますから、まず資料を先に出していただきたいのですが、いつごろわれわれの要求した資料が出されるか、御答弁を願います。
  77. 正示啓次郎

    ○正示政府委員 前回の本委員会におきまして資料の御要求がございましたので、さつそく今調製いたしております。大体きようでき上ると思つておりますが、部数の関係もございまして、今増刷をいたしておりますが、御要求の資料のうち、できましたものから順次早く出したいと思つております。
  78. 奧村又十郎

    奧村委員 それにつけ加えてなお資料をお願いいたします。見返り資金のごく最近における公企業及び私企業の投資に対する実際放出金額、及びただいまの計画を業種別に、なるべく明細なものをひとつ出していただきたいと思います。  なお同じく預金部資金の運用状況、これもごく最近のものをお示し願います。  それからもう一つ委員長にお願いいたしたいと思いますが、今国会は大蔵大臣の財政演説はありません。しかし前国会後かなり諸般の状況がかわつて来ております。また近いうちにシヤウプ博士も見えられるについて、税制の改正についても何かの腹案があるようにも考えられます。財政演説にかわりわれわれ大蔵委員会におきまして、大蔵大臣のこの現在における施政に対する御意見を承りたいと思いますので、午後においても御善処願いたいと思います。
  79. 田中織之進

    田中(織)委員 大分時間が来ましたが、実は私きよう午後大蔵大臣が出られて最近の金融事情、金融政策についてお話くださるということでありますが、であるならばこれを午前中に承つておきたい。午後の休憩の時間中に、私も実はその問題で大臣が出るというので、相当質問の事項も持つて来ておるのでありますが、大蔵大臣のお述べになるところと私の質問せんとするところをさらに調整して、午後質問したいと実は思つてつたわけであります。(「われわれの基本的人権を尊重せよ、腹が減つてる」と呼ぶ者あり)そういうことであるならば午後その説明を聽取いたしたいと思いますが、午後でき得れば安本長官にも御出席願いたいと思いますので委員長においておとりはからい願いたいと思います。  なおただいま與党の有田委員から、われわれも同感するとこの委員会の運営についての発言があつたのでありますが、この点は私委員長に対して遺憾に思うのは、先般の閉会中、ことに参議院議員の選挙中はやむを得ないといたしましても、参議院の選挙終了後今国会召集までの間において、われわれ閉会中の国政調査の件も運営委員会で決定を見ておるのでありますから、本委員会の招集を実は委員部を通じて要望をいたしたのでありますが、閉会中に委員会を持たれなかつたということは遺憾に思うのであります。なお従来から大蔵委員会には大蔵省からの提案事項が多いのでありますが、そういう問題について、たとい閉会中であろうと、大蔵当局としては委員長を通じて委員会を開会してもらつて、事前にいろいろな資料説明等の準備をやつていただきたいと思うのでありますが、どうも従来そういう点が欠けておる点をわれわれ非常に遺憾に思つてつたのであります。今日は與党の有田委員から、われわれ大蔵委員の要望を端的に表現されたのでありますが、なお本日いただいた資料によりますと、本国会提出予定法律案も七件ばかりあるようであります。そのうちで第三番目の船舶公団共有持分処理等に関する法律案だけが提出されておるだけで、会期もあと十日という段階に、まだ司令部関係の連絡中、交渉中で、了承が一件だけであります。これは七月五日現在だそうでありますが、こういうことでは、今日出してその日のうちに上げてくれというような、従来からむりを大分聞いて来ておるのでありますが、たとい会期が短かくても、われわれは審議すべきものは十分審議しなければならぬ。そういう観点から大蔵事務当局におきましても、特に大蔵省関係の本委員会との連絡を特に緊密にするように、私からも要請をしておきたいと思います。
  80. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 委員長として申し述べておきます。各委員から御発言になつた金融問題、税の徴收問題、これは現下わが国の経済情勢から見て、非常に重大な問題でありますので、この国会を通じて、あるいは休会中、あらゆる機会にこの問題を調査いたしまして、大蔵当局ともいろいろ御協力の意味において、大きくこの問題を取上げて、解決点を見出したいと考えておるものであります。  なお今日は午前の会議はこれで休憩いたしまして午後一時から会議を開きます。  なお大蔵大臣は午後の会議にも御出席だそうでありますから、午後の会議は、金融全般に対して説明を聽取して、各委員の御質疑に移りたいと存じます。     午後零時十六分休憩     —————————————     午後二時七分開議
  81. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  大蔵大臣より財政金融全般についての説明を聽取いたします。池田大蔵大臣。
  82. 池田勇人

    ○池田國務大臣 皆様より財政金融の今の状況等につきまして御要求がございましたので、最近の状況を申し上げまして御参考に資したいと思うのであります。  まず第一に財政の状況でありますが、さきの国会で御審議願いました予算は、その趣旨に基きまして着々実行いたしております。公共事業費の支出にいたしましても、歳出面全般にわたつて大体順調なる経過をたどつてつております。ただ問題は地方税が成立しなかつたために、国と地方との関係しております公共事業費の支出が少し遅れぎみでございます。これは先ほど申しましたように、金詰まりの一つの原因をなしておると思うのでございます。  なお予算上重要な地位を占めておりまする補給金の状況は、外国の小麦あるいは米の値段がある程度予算より下つて参りました関係上、このままで推移いたしますと相当の不用額が出るのではないかと思つております。輸入の状況は、大体第一・四半期は三百十四万トンの四分の一入り、輸入の状況は予定通りに行つております。従いまして今年度の見込みといたしましては、歳出は補給金その他不用額はある程度出ると思いまするが、又一方歳入の面におきましては、租税徴收状況が、かなり心配であるのであります。われわれとしては予算通り收入いたしたいと鋭意努力をいたしております。法人税とかあるいは酒造税につきましては、予想以上の收入を上げておりまするが、申告納税の部分につきましては、最近の状況を見ますと少し困難な点があるのであります。一般の市況を調査してみますと、営業面では昨年に比べまして、大体一割程度の売上げの増加を示しておるようであります。そういう統計から見ますと好況のようでありますが、やはり事業分量がふえ、ストツクがふえたために金には困つておるようであります。しかし收支計算は幾分初めよりいいというような報告を受けております。いずれにしても今の状態から申しますると、他と比べまして申告納税の方はなかなか徴收困難ではないか。先般も問題になりました滯納の千二百数十億円につきましては、適時適当な方法で滯納の整理をはかつておるのであります。これがどのくらい入つて来るかによりまして、今年度の歳入にも影響するのでありますが、金詰まりの現況等にかんがみまして、あまりむりはいたしたくない。二十五年度の予算は、今申し上げましたような状況で、大した心配もなく行くのではないかというふうに思つております。  二十六年度の予算につきまして、先般閣議で編成方針を決定いたしまして、今月一ぱいに各省から要求が出そろうことに相なつております。八月、九月とわれわれのところで調査いたしまして、十月には関係方面と折衝いたし、今の考えでは本年も同様十五箇月予算をつくつて、来年度の予算編成と同時に、本年度におきまして補正する必要がある分を考える十五箇月予算をつくり、十二月初めにおいて国会の御審議を願うという考えでおるのであります。大体来年度の経費といたしましては、債務償還費がよほど減つて参ります。御承知のように一般会計においては、今年七百数十億円やつております。見返り資金の分は五百億で、前年度の剩余金が二百六億円、その他が五十六億円であります。二十四年度の剩余金の見込みはまだ清算中でございますが、大体百八、九十億ぐらい剩余金が出るのではないかと思います。百八十億出るといたしますと、九十億は一般財源として使用できます。残りの九十億は財政法に基くものでありますから、二十六年度において債務償還をいたしますが、本年のような一般会計からする特別の債務償還は、来年はしないということになます。そしてまた価格補給金は本年度に九百億円を計上しておりましたが、来年度におきましては、肥料、鉄綱補給金を廃しますので、半分ぐらいになると思います。それから米の値段をどうするかによりましてよほど違いますが、今後きめらるべき本年の新しい麦類は、大体国際価格にさや寄せて参ります。今小麦の分は小麦協定に入りますと、六十八ドルないし六十九ドルでありますが、小麦はこの金額程度なつて来るのであります。ただ米の方は御承知の通り四千二百五十円と申しますと、七十五、六ドルから八十ドル足らず、朝鮮米を輸入いたしますと、百四十三ドル、ビルマ、シヤム米でも百二十五ドル、こういうふうで国際物価に比べまして非常に安い。これをいかなる程度にするかということによりまして、輸入補給金が動いて来るのであります。相当米の値が上つて来るということになりますと、九百億円の価格補給金の今年度の計上額が半分以下になる、あるいは三分の一ぐらいになるのではないか、こういうふうな計算をしておるのであります。そうすると価格補給金で五、六百億少くなります。債務償還をやめるということになりますると、千億余りの財源が出て来るわけであります。私はこれを七百億円ぐらい減税に充て、その他の分を公務員給與の引上げ、あるいは社会政策的施設に使おうという計画を立てておつたのでありますが、今回国家警察予備隊をつくる、あるいは海上保安庁を完備するということになりますると、この金が私の予定しております一千億円余りの上に入り込んで来る。そうすると給與の引上げあるいは減税に、ある程度の影響が来るのではないかという気持を持つておりまするが、大体といたしましては、本年の六千六百億円の歳出がかなり減つて、千億円余りいわゆる財政支出として減つて来るのではないかという見通しを持つておるのであります。  以上が大体でありますが、国庫の概況について申し上げますと、国庫の状況は先ほどお話いたしました通り、一、三月と四、六月の分は三百億円程度の上げ超になつておりますが、本年度の分といたしましては十億円ばかり散布超過になつております。七月から九月の分、第二・四半期につきましては、大体とんとんのつもりでおります、十月かに十二月の分は供米代金の支拂い、また年末にかけての資金需要のために、相当の散布超過になることを予定しております。その散布超過になつた第三・四半期の分は、第四・四半期の税の徴收その他で埋合せをする、こういうことで行つております。国庫にも大体百億余りの当座預金を持ち、別に百五十億円の各銀行への指定預金をいたしております。この指定預金も状況によりましては引上げてもいいのでありまするが、ただいまのところでは、銀行も相当金詰まりのようでございますので、今しばらくやはり指定預金のまま続けて行く。それでも国庫の方は相当のやり繰りがついて参ります。見返り資金につきましても、今年度できるだけ適時に、適当な金を出すように努力いたしておりまするが、御承知の通りこれは一々関係方面の許可がなければできないことでありますので、ただいまのところあまり出方が芳ばしくございません。今年度になりまして大体二百三十六億円ぐらい出ておりましよう。その内訳は通信関係へ四十億円、全体の予算百二十億円の分が四十億円出ております。それから国有林野の方に、これは全体三十億のものが六億円ばかり出ておると思います。それから私企業の方には、御承知の通り四つの金融機関のいわゆる優先株式引受けというので、五十二億円出ております。その内訳は勧銀が十億、興銀が十億、農林中金が二十二億、それから商工中金、北海道拓殖銀行が十億、合計五十二億円がただいまのところ出ております。それから船舶の方へ五億余り出ております。中小企業に一、三月の分と四、六月の分として三億円出ております。従いまして大体六十億が私企業の方に出ております。なおまた進駐軍住宅を建てまするあの五十億円前後の金額のうち、ただいま二十六億円ほど出ております。結局使い得る金はただいまのところ四百八十億円ぐらいございましよう。これを遊ばしておくといえば遊ばしておく、動かしておるといえば動かしておりますが、食糧証券をほとんど引受けて、食糧証券の方にまわしておる状況であります。従つて私としては四百八十億円の見返り資金を置いておくということは、金詰まりを激化するものであるという考え方のもとに、早急にこれを出そうということで折衝を重ねております。私としては大体二百億円程度常にあればいいじやないか、二、三百億円はこの際使いたいという強い希望を申し出ておりますが、なかなかそういうふうには至つておりません。しかしこれがいわゆる引上げ超過、金詰まりの大きなフアクターをなしておりますので、極力この方面の金を出すようにいたしたいと努力しておるのであります。  この機会に、この見返り資金を使う方法として、私は輸出金融公庫というものを設立して、外国の者に信用を與え、日本の品物を買つてもらう、こういう計画を立てておるのであります。これもいろいろ議論があるのでありまするが、私はそうりつぱなものでなくても、早くスタートしなければいかぬという考え方のもとに、毎日のように向うに人を派して交渉をしておりまして、本国会にぜひとも出したいという努力を重ねておるのであります。電気関係の方、あるいは造船関係の方へ出したいという希望を申し述べておるのでありますが、電気の再編成の問題等があるためかどうかわかりませんが、こういうものになかなか早急に出すという段取りに至つておりません。まあ、輸出金融公庫よりひとつやろうというので進んでおります。  債務償還の問題につきましては、これも昨日だつたか申し上げたかと思うのでありますが、大体ただいまのところ百七十億ばかり四、六の間に償還いたしました。償還先は農地証券とか電話公債、こういうものに七十億円ばかり償還しております。金融関係の方へ八十億ばかり償還いたしております。これは日本銀行をして国債を買上げさせて、日本銀行で扱つておるわけであります。買い上げるにつきましても、三分五厘の国債もあるし、四分の国債、五分の国債もあります。これはわれわれの方といたしましては、高い利率のものから早く償還して行くのが本意でありますけれども、やはり銀行側から見れば、安い利率の三分五厘というのが金利水準に乘らないから、それから先に償還してくれという希望もありまするが、現在高に按分して各利率の分を適当に償還する。そうして八十億円の償還は、これはあとでお話申し上げますが、一般貸付あるいは金融債の引受けにしておるようです。今の百七十億円の償還は、一般会計から債務償還しておるのであります。今後は見返り資金にそういうのがありますから、見返り資金から償還しようという計画で行つておりますが、まだオーケーが参つておりません。  一般の資本市場の問題でございまするが、昨年は七百七、八十億の株式の発行がございました。そのために株もたれがしたというので、今年になりましてから、株式の発行は非常に困難で、すなわち相当の会社が拂込みをはるかに割つておるという状態で、株式の発行は非常に困難である。一、三月の間におきましては、月に二十億程度の増資株の発行だつたんであります。本年度に至りましても、大体四、五月が三十億円余りの株式の発行になつておるのであります。株式の発行にかわりまするために、会社の長期資金獲得の方法として、社債の発行がかなり円滑に行われておりまして、株式発行の五割増あるいは月によつて倍額ぐらいの約五、六十億の社債の発行が見られるようになりました。非常にきゆうくつではございますが、やはり除々に資本市場の方も活況を呈して来つつあるのであります。御承知の通り、最近株価は相当変動がございまして、きのうは下りました。またきようの前場などは下つておりますが、おとといまでは——七月三日が最近の最低の相場でございまして、東京の取引所に上場しております株の平均は六十二円何ぼであつたのが、おとといは七十九円八十九銭、八十円近くまで、二割五分から三割程度の上昇を見たのでありますが、きのうと、きようの前場はちよつと下つて四、五円から大ものについては二十円くらいの下りがあるのであります。過去十日間相当の取引が行われまして、最高九百万株というレコードをつくつたりしておりますので、取引員の手元は少しよくなつた。しかし私はこの証券対策といたしましては、まず取引員の資産内容をよくするということが第一であるという方針のもとに、取引員につきまして資産の再検制度をやるように、勧奬いたしておるのであります。本国会におきまして、証券業者のいわゆる信用を高める手段として、今までの届出制度を少し改正しでみたいという考えで、今法案を練つておりますが、いずれ不日御審議願うことと思うのであります。大体株式市場も底をついたようでございますから、今度は除々に上りぎみになつて来るのではないかと考えております。  次に一般市中の金融につきまして申し上げてみたいと思います。御承知の通りに、通貨は昨年来横ばいの状況を来しておるのであります。一昨日は三千八十億程度にとどまつておるのであります。月末にかけましては少し増加いたしますので、本月末は多分三千百五十億、あるいは三千二百億近く出るのではないかという気がいたしておりますが、大体横ばいの状況を呈しておるのであります。金詰りという声を聞くのでありまするが、最近一週間の状況では、金詰まりも一時よりはかなり緩和しまして、東京のコール市場は六、七十億円のコールがある状態で、日歩も下りまして一銭六、七厘になつております。先月の初めころから今月にかけまして、かなり金詰まりの声が大きかつたのは、これはいろいろな事情が一度に来たからであります。すなわち、政府の引上げ超過というのもございましたし、また預金が五月、六月は相当ふえるのが常態であります。もちろん、四月は三月の決算で年度決済があるので、ある程度実質的にふえましても、形式的には預金はいつも減るのでありますが、五月は、昨年は一般の銀行の預金増加が二百数十億円あり、毎年ふえるからというので、銀行はそれを予定して貸出しをやつた。しかるところ二百七、八十億円くらいしか預金がふえない。二、三百億円預金がふえる予定であつたところが、預金が入つて来ない。それで銀行が非常な金詰まりの状態を惹起しました。そうして日本銀行にかけ込んだわけでございますが、日本銀行もその急に応ずるために相当貸出しをやりました。六月におきましては、最高千四百六十億円ばかりであつたのであります。千四百六十億円の日本銀行貸出しと申しますと、これはいまだかつて例のない貸出し増加であります。昨年の六月は七百九十億円程度の貸出しだつたのが、ほとんど倍近くの千四百六十億、こうなつたものですから、日本銀行があまり貸し過ぎた、こういう一般の声もあつたのでしよう。またいろいろなところからそういう声が入つて来たのでしようが、そこで日銀はある程度引締めた方がいいのじやないかという気持を起したと思うのであります。通牒が出たとかどうとかいいますが、一万田総裁としてはそう引締める気持はなかつたのでありますが、外部には非常に引締めたようなかつこうになつております。その現われがいわゆる工業手形の再割引停止、こういうことになつたり、あるいは貿易手形の割引を押える、こういうふうなことになつて現われたのでありますが、原因は預金がふえなかつたのに、貸出しは予定通りつたというところで、日銀の貸出しがふえたのであります。私は六月の銀行大会で申し上げましたように、日銀の貸出しがふえる、こう申しましても、政府の方に引上げ超過によつて相当の金があるのだから、それを埋め合すのに日銀の貸出しがふえても何ら心配ない。千四百億をずつと続けるというのではいけないけれども、政府が散布超過した。あるいは見返り資金を出した。見返り資金を活用するということになりますれば、それが日銀へ返るのであるから、日銀の貸出しが増加した分は政府が預金として持つておるのだから、何ら心配はない。千四百億円の貸出しがあつてもいいじやないか。通貨が三千億円になり、日銀の貸出しが千四百億になつても何ら異常な状態ではない。日本としては今までの状態に比べて異常だけれども、外国その他の状況を見ますと、アメリカの連邦準備銀行の状況は、通貨に対しましては大体七〇%余りの貸出しをやつておる。英蘭銀行にしましても、フランス銀行にしましても、通貨に対して四割程度以上の貸出しがある。三千億円の通貨に対しまして、千四百億円ということになれば、何もそう大して心配する必要はないのだ、そう引締めるべきではないというので、私は日銀総裁にも意見を申し述べまして、協力さしておるのであります。ただいまのところ、日銀の貸出しは千三百四、五十億であつたと思いまするが、とにかく財政と金融とは一体をなして、そうして経済の運営をやつて行かなければなりません。貸出しが多くなつた原因がはつきりわかつておるのだから、心配はないという方向でやつておるのであります。  貿易手形なども非常に困つたという話を聞きまして、さつそく調べましたところ、いろいろな事情がある。ある特定の銀行が預金は少くして、日本銀行からうんと借り出し、そうして貿易手形は自分のところでやるのだという態勢をとる。そうすると日銀では、普通の銀行—昔の特別銀行はないのでございますから、特定の銀行が為替銀行專門で、しかも自分に資金がないのに、日本銀行から借りて行つて、自分のところだけ貿易手形の割引をしようということはあまりよくない。各銀行がやるべきであるというような意見がある。そして日本銀行が貸出しを少く押えますと、その銀行は貿易手形の割引を停止する。そうすると貿易手形の所有者は、他のB銀行なりC銀行なりへ持つて行く。そうすると銀行Aで割引を断わられたという悪い條件がありますから、B銀行、C銀行にも断わられる。通産省ではそういうものを全部合計いたしまして、貿易手形の六割とか七割しか割引ができないと言つているが、一枚の手形が三つも四つもの銀行に行くからそういうことになる。よく実際に調べますと、大体八割余りは割引をいたしております。借りる方の会社を八十何社につき調査してみましたが、そのうち六十六社はほとんどフリーに貿易手形を割引いておる。十会社くらいは信用状態がいかがわしいので割引が思うように行かない。割引いてもらつておるけれども、全部割引いてもらつてないような状況です。あと十社くらいが割引が不可能、こういう状況なのであります。何と申しましても、一応輸出はあるのですが、やはりその裏を見るとあまりうまくないような輸出業者もありますし、信用状態が非常によくないというようなものがありまして、八割余りしか割引いておりません。しかしこれは実際に取引が行われることが確実であり、輸出入ができるならば、貿易手形でありますから、とにかく融通するような方針で行つているのであります。  工業手形の再割はただいま停止しておりますが、工業手形は全然だめだというのではない。担保手形としては相当優遇して貸し出しているのであります。今後金融の情勢を見まして、やはり工業手形に対してもできるだけのことはやつて行きたいという考えでいるのであります。  金融問題で今最も大きい問題になるのは、預金部資金の百億円の一般金融機関への貸出し、あるいはさきに申し上げました百五十億円の政府の指定預金、これもただいま引上げなければならぬ状態なつているのでありますが、政府の資金散布が遅れておりますので、政府指定預金もしばらくそのままに置いて、金融の緩和に努めようとしているであります。  なお特殊の問題で復興金融金庫回收状況が問題になるのでありますが、復興金融金庫もただいまのところ八十億ばかり返つております。予算は御承知の通り本年度百八十億円取るのであります。この八十億円のうち三十億円は前年度からの繰越し分であります。また十八億円は農林中金から返つている。通常の回收のものは三十億程度で、そう特に回收を急いでいるというわけのものでもないのであります。  銀行の預金貸出しにつきましては、ただいま申し上げましたように、五月には八十億余りの預金の増加しかございませんでしたが、六月には百八十億二百億近くの銀行預金の増加がありました。農林関係機関の預金は、やはり農村の不況を反映してか、思わしくございません。また農業協同組合のうちに預金の支拂いを停止したところも、ちよちよいあるというようなことがあつたりして、農業関係機関の預金は伸びておりません。ただ預金部の資金、郵便貯金は非常な伸びようであります。大体月に五十億程度郵便貯金は伸びております。銀行の連中に言わせますと、御承知の通り無記名預金なくしたり、あるいは税務署の方で預金調査に来たりするので、預金がふえない。郵便貯金をすれば税もかからないし、税務署も調べない、こういうので郵便貯金へ行くんだ、こういうことを言つております。そういう原因もある程度あるでしようが、銀行の預金もそう銀行家が言うように、非常に伸びが落ちたということでもないと思います。六月は二百億ふえた。今後も預金はだんだんふえて行くことと考えておりますが、貸出しの方も預金の増加と同様にだんだんふえて行くことになると思います。ただいま銀行の預金は、これは市中銀行だけでありますが、八千六百六十億くらいでありまして、貸出しは七千九百億、まあ八千億くらいで、預金に対しまして九十何パーセントの貸出しで、これはオーバー・ローンだという声が内外ともにあるのでありますが、しかし今日本では銀行が証券の方に金をまわそうと申しましても、国債はだんだん償還されるということで運用先がない。従つてやはり預かつた預金は貸し出さざるを得ない。そうして日本銀行はいまだかつてない貸出しをしておる。それから銀行も内外ともにオーバー・ローンだと非難されるほど貸しておる。どこに金詰まりがあるのだ。こういうふうに貸し過ぎるほど、日本銀行も市中銀行もやつておるというのでありますから、それではどこに金詰まりがあるのか。やはり日本の企業においては資本の蓄積が少い。どうしてもわれわれが努力して貯蓄してそれを運用しなければならぬ。一般の人は今までのインフレ時代には物をつくればもうかる、物を買い込んでおけばもうかるという観念でどんどん金をほしがるのですが、われわれとしては貸し出す金がない。八千六百億円の預金があつて、八千億円貸し出してオーバー・ローンとなつている。それくらい銀行は貸し出しておる。日本銀行も去年の六月は相当多くて、七百九十億円かあつたのですが、普通ならば、去年の平均は貸出額は五百億くらいの平均だつたと思う。日本銀行も去年の倍くらい貸し出しておる。これは結局やはり日本における資金の蓄積が十分に行つてないのでありまして、これはわれわれは一方においてできるだけ資金を蓄積して、また運用の万全を期して、経済再建に必要な方面に重点的に貸すということ以外に、切り拔ける道はないと思います。  しからば通貨は今の状態で三千八十億でどうだという問題でありますが、昨年の七月は大体二千九百九十億くらであつたと思いますが、昨年よりは大体九十億程度ふえておるのであります。物価はあまり上りませんが、生産もふえ、輸出が伸びて行つておりますから、八十億円くらいふえるのは当然である。私どもとしてももう少しふえていいくらいである。五十億、百億くらいふえてもいいのではないかと思つておりますが、なかなか思うように行かないけれども、自分の政策としてはできるだけ通貨も三千百億から二百億の現状を維持して行く。場合によつては三千四百億くらいにとどめるような考えのもとに進んでおります。  輸出の問題でありますが、四、五月ごろから相当輸出が伸びて参りまして、五月は六千六百万ドルで終戰後最高の記録を示したわけであります。今後におきましても私は相当輸出が伸びて行くのではないかと思う。ことに輸出金融金庫を設けまして、外国にクレジツトをやるということになりますと、相当伸びて行くように考えております。ことにアメリカの方では東南アジアの開発計画を立てておるようであります。輸出金融金庫の目的は、東南アジア開発計画に乘つかつてつて、ドル資金と円資金とをもつて東南アジアの諸民族の生活水準を上げ、輸入力をふやし、日本の経済発展に資しようという考えでおるのであります。なお輸出の問題につきましては朝鮮事変が起きまして、朝鮮の第八軍の需要物資が相当にあるのでありますが、この面に対しましては、向うが直接にドルを拂います。セメントを出しましてもセメント業者はドル資金をとる。そして今為替は集中制度をとつておりますから、ドルの小切手を外国為替銀行にまわしまして、それから外国為替特別会計に入れまして、外貨の対価として円を受取ることになるのであります。そういう制度でやるのであります。朝鮮事変のために実質上相当輸出がふえると思いますが、そうしますとドル資金が入り、それが円にかわる。すると円の金がだぶつくということになりますので、インフレの危險性もなきにしもあらず。そういうことでありますから、私は必要の物資を早急に輸入して、民間に輸入物資を拂い下げて、なるべく円資金を引上げ、そうして経済再建をして行く。朝鮮とのバーター貿易は六千万ドル程度でありまして、主として米が大部分、それから石炭、機械等がありますが、これらはとまりますが、それにもまして、国内での軍関係物資調弁があるので、実質上輸出は増加する、こういうふうになると思います。  次に中小金融の問題でありまするが、一時新聞にも、日銀は別わく融資をやめたということが出ておりました。しかしやめてはおりません。ああいう新聞が出たけれども、やめたと思われては困るから、ただちに二億円ふやせということで、三十九億を四十一億円にしたのであります。別わく融資もだんだん拡張して参りました。それから見返り資金から出す三億円も、私はこの前の議会で五億円にふやすように言つてつたのでありますが、なかなか解決がつきません。しかし努力を続けて、オーケーが来たら五億円なり十億円くらいにいたしたいと思つております。今までの中小金融対策を続けますと、同時に、私は新しい制度として中小企業に対しまする貸出しについて、保証制度を全国的にしたらどうか。これはあるA銀行ならA銀行が貸しまして、それが回收不能になつたならば、それの相当の金額、七割五分とかいうくらいの分は保証する。保証料として一定の金額、たとえば二%くらいを金利に加算するわけである。こういうような制度を今設けようと思つて、われわれとして案ができております。これまた今国会に出したいというので努力しておりますが、こつちの方は間に合うか間に合わないか、とにかく私どもとしてはできるだけの努力を今この方面に佛つております。御承知の新しい金融機関をつくる、新しい銀行をつくるという問題は、十箇所くらい出ておりますが、今認可になつたのは盛岡の東北銀行一つだと思います。考え方としてはできるだけ適当なものであれば銀行を認可する方針でおりますが、何分にも見込みの立たぬ銀行は、あとで預金者に迷惑を與えても困りますので、選択しなければなりませんけれども、考えとしては適当であれば認めて行きたい。それから御承知の中小企業金融の專門の銀行も、六大都市及び福岡市の七大都市に六十四の店舗ができまして、中小企業金融に力を入れるようにしております。この前御審議を願いましたこの金融債の問題も、もう見返り資金からの出資が終りまして、六月には、勧銀に十三億円、それから商工中金も四億円、それから農林中金も十億円、こういうふうに金融債を発行いたしまして全額償還済みであります。これはやはり国債の償還した部分の一部が金融債にかわつて来ておるのであります。今月も今申し上げました金融債以外に、北拓に七、八億の金融債を出そうとしております。金融債によりまする資金は長期資金でございますので、私の考えとしてはできるだけ金融債の分は中小企業の方に向くように、指導をしておるのであります。なかなか戰争によつて非常な痛手をこうむり、かつ終戰後三年余りの間インフレの危機に直面したような経済を営んでおるものを、安定から自立に持つて行く場合におきましては、各方面からいろいろな摩擦、困難があることは覚悟しなければならぬ。どこに支障がある、どこをどうしたかという議論がありますが、インフレをやめて安定経済に行く場合には非常な困難があります。その困難をたやすく見ておる国民が多いのではないか。インフレを安定から自立へ持つて行くということは並たいていの仕事ではない。これは世界の歴史でほとんど全部失敗に終つておる。これを日本は失敗せずにようやくここまで乗り切つて来たのを、わが国一般に楽にできるとか、金詰まりとかいろいろな問題が出て来るのでありますが、いまだかつてほとんど歴史上ないような大事業をして行こうとしておるのでありますから、非常な困難があると思います。しかしこれはどうしてもわれわれは石にかじりついてもやらなければならぬ。できるだけその困難を少くするように、われわれ日夜苦労いたしておるのであります。今後なおかなりむずかしい問題が起つて来ることは覚悟しなければなりません。私は決して楽観しているのではありませんが、とにかく努力するよりほかしようがない。あまり先々の取越し苦労をするよりは、努力でこれを越えるという考えのもとにやつておるのでありますが、皆さん方の御支持によりまして、大体順調な経過をとりつつあると思うのであります。今後も一そうの御援助をいただきまして、とにかく世界の歴史上まれに見るインフレから安定、自立への道をなし遂げたいという覚悟のもとにやつておるのであります。至らぬところがございますれば、国会を通じましてできるだけ御鞭撻をお願いしまして、最近の財政経済の事情のお話を終りたいと存じます。(拍手)
  83. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 質疑を許します。小山君。
  84. 小山長規

    小山委員 大臣に質問いたしますが、ただいまのお話の中で触れていなかつた点があると思いますので、このお見込みをお聞かせ願いたい。朝鮮事変が勃発しましてから以後において、金融あるいは日本の経済界は、今後においていろいろ変動するのであろうと思うのでありますが、その見通しについて概略の御説明をいただきまして、あと質問を続けたいと思います。
  85. 池田勇人

    ○池田國務大臣 ただいまも触れたのでありますが、この朝鮮事変がいつまで続くか、どういう形態をとるかということにつきましては予断を許しません。ただいまの問題といたしましては、相当の輸出があるのではないか、その輸出によりまして円資金がだぶつきますから、できるだけ必要物資の輸入をはかりまして円資金を吸收して、経済の再建とインフレの防止に充てたい。この程度しか申し上げられないのじやないかと思います。資本の拡大性は、今後の状況によほど違つて来ると思うのでありますが、これがわが国の経済に悪い影響を及ぼさないよう、私はいかなる場合にも万全の準備をして処し得るように態勢をとつております。
  86. 小山長規

    小山委員 朝鮮事件については、将来の見通しということが一つの前提となつて参りますので、詳しい的確なことは、大臣として言われることはできないであろうと思いますが、さしあたりの問題としてお聞きしたいのは、きようの新聞によりますと、外貨予算を一億ドル別に組んだということが載つておりますが、そうしますと、朝鮮事変によつて外貨が一億ドルふえる見込みがついたわけでありますか。
  87. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止
  88. 有田二郎

    ○有田(二)委員 今の大臣のお話の中で、わが党が選挙のときに公約しました公務員の賃上げの問題でありますが、警察予備隊ができるために、公務員の賃上げが遅れておるような意味に私はお聞きしたのでありますが、公務員の賃上げはわが党としても重大な関心を持つておりますので、いつごろできるのか、あるいはできないのか、できるならいつごろできるのであろうかという見通しがおわかりでありましたら伺いたい。
  89. 池田勇人

    ○池田國務大臣 公務員の給與の引上げにつきましては、先般わが党の総裁から発表いたしましたように、来年度におきましては何でありますが、本年度におきましても、施政演説で総理が言われたように、できるだけ早い機会にやりたいというので、話を進めておるのであります。なかなか困難な状況に立ち至つておりますが、私としてはできるだけ早い機会にやりたいというので努力いたしております。見通しはどうもはつきり申し上げられぬ状況で、初めは相当有望だつたのでありますが、だんだん有望さが消えて来まして、困つておるような状況であります。しかしできるだけ早い機会に上げたいということは、内閣全体の意向でありますが、関係大臣としまして、極力努力をいたします。
  90. 高間松吉

    ○高間委員 大蔵大臣に一、二お聞きしたいのでありますが、朝鮮問題で各地のいろいろな業者が、六月の末日ごろに品物を納めて金をもらうことになつておつたのですが、急に停止されたので、非常に困つておる業者がたくさんありますので、この決済をどういうふうな方式によつてやられる見通しでありますか。  それから先ほど大蔵大臣のお話を聞いておりますと、手形の引きかえについて、六十日間の借入れをいたしますと、大蔵省の銀行監察官の検査がやかましいので、一応本店の手を経なければだめだというので、そこにどうしても十日間くらいのずれは必ずあるのです。その間に業者は高い利息の金を借りて使うとか、あるいは持金をやりくりして、それによつて借りた金の決済をするというような、非常に業者としては耐えられないほどの苦痛があるのでございます。その点何らかの方策はないものかどうか。  もう一つは前々国会からも盛んに言われておる株式の長期清算取引の問題でありますが、これはだれに聞いてみても、なかなか認可にならないのだというお話を聞きますが、大蔵大臣の行政力によつて、適当の機会にこれが許されるものであるかどうかということの三点をお伺いいたします。
  91. 池田勇人

    ○池田國務大臣 一番初めの問題は輸出信用保險制度で解決いたしたいと思います。今措置をとつております。  それから第二の問題の銀行の貸付状況ですが、これは手形の割引というかつこうで行つておりますので、二箇月切りかえになつております。それが実質上はいわゆる商業手形でなしに、長期の運転資金というふうなものをもつて一諸にやつているとか、そういう例は聞いておるのでありますが、これはやはり相手方の信用その他によつてかわつて来ると思います。私どもとしましても、單なる商業手形ならよろしゆうございますが、実際は商業手形でないという場合におきましては、半年とか、あるいは長期資金の貸付をしたらどうかというので行つておるのであります。何分にも今の銀行制度は商業金融ということが一つ、それを緩和するためにはやはり金融債を発行して、長期資金を銀行にまわすことが適当だという考えのもとに、長期資金調達の方法として金融債をやることにしたのであります。  第三番目に長期清算取引の点は、これは私のただいまの見通しでは困難ではないかと思います。アメリカその他ではやつていないので、そしてまた今の清算取引というのは過当投機になりやすい制度ですから、今の場合はちよつとむずかしいのではないかという見通しを持つております。
  92. 小山長規

    小山委員 今度方面をかえてちよつとお伺いしたいのでありますが、先国会で例の金融債の法律案審議しました際には、あの金融債は大体まだきまつてはいないが、預金部で引受ける予定である、こういうことでわれわれは非常に喜んでおつた。預金部にたまつておる金、あるいはこれからたまろうとする金で消化したら国内産業にまわつて行く、こういうことで実は非常に喜んでおつたのですが、会期が終つたあたりから非常にそれがむずかしくなつて、最近は何だかまるでもう見通しがつかなくなつているようなことを、新聞その他で見るのでありますが、どういう経過でそういうふうになりましたのか伝え聞くところによると、預金部資金は財政資金だというような話があるそうでありますが、これが財政資金だというのは、一体どういうことで財政資金になるのかということも、大臣のお考えをあわせてお聞かせ願いたいと思います。  それからもう一つは、現在の金詰まりの最大の原因は、当面の問題としては、預金部あるいは政府当座の方はそう大した金額ではないのでありますが、先ほど大臣の説明にもありましたように、見返り資金に相当巨額の金がたまつておる。これがまたどうして一向出て行かないのか、また向うは解放しようとしないのか、この辺のところもお聞かせ願いたいのでありますが、そのついでにひとつ伺つておきたいのは、見返り資金は、たしか国内放出が済みました場合には、自動的に金が入つて行くような制度になつておつたかと記憶するのでありますけれども、これをひとつ改正しまして、しばらく見返り資金を使う見込みが立つまでは、政府当座なら政府当座に残しておいて、政府当座預金をしばらく民間の銀行に預託するというような制度に改めたならば、この問題は起らないのじやないかというようなことも考えられるのでありますが、これらについての大臣の所見も伺つておきたいと思います。
  93. 池田勇人

    ○池田國務大臣 預金部資金は二十四年の三月末は千百億円余りで、六百四十四億昨年中に増加しました。今年に至りまして月五、六十億の増加であります。ただいまは千九百八十億、ちよつと二千億になんなんとしております。これをうまく使いたいという考えで、お話の通り金融債の引受け等に充てるつもりであつたのでありますが、なかなか微力でそういうぐあいに行かぬのであります。ただいまのところ覚書が出ておりまして、預金部資金は国債、地方債、そして食糧関係公団以外には運用すべからず、こうなつておるのであります。この例外は、昨年の暮れに金融機関のために、とにかく百億円だけ充てることを認めてもらつただけであります。こういうことから、どうも皆さんによく伝わつていないのか、われわれの話がいけないのか、たとえば簡易保險とか郵便年金、これを郵政省の方へ持つてつたならば、昔郵政省がやつていたように、家を建てたり、株式へ投資したり、社債へ投資したり、こういうことができるのだ、そういう考えが相当強いと思うのでありますが、実際向うと折衝いたしましたが、なかなか困難で、この郵便貯金というのは大衆の零細資金だから、信託預金のような考え方で運用すべきだ、こういう原則があるようでございます。昨年百億円のわくをこわしたのですけれども、その後なかなかこわれません。向うへ参りましても盛んに話したのですが、どうも向うも、ワシントンの口も強いようでございまして、ただいまのところでは国債に使うのだ、地方債に使うのだということで、今まで見返り資金から使つておる特別会計、あるいは公社への貸付というものは肩がわりして、見返り資金をふやそうという計画も私は持つておるのでありますが、まだ発表する段階に至つておりません。  見返り資金の方の繰入れは、援助資金の流入の価額と補給金と合せて、一月ごとに見返り資金へ繰入れることになつております。四、五日前百三十億入れまして、今四百八十何億になつておる。これをかえるということはなかなか困難だろうと思います。これをかえて、繰入れずに、政府の当座預金としておいてもいいのでありますが、その当座預金をまた銀行へ還元するということも、なかなか許可がいることですし、そのわくがなかなかこわれそうにもない。あの手、この手でやつておりまするが、微力でございましてなかなかうまく行きません。それよりもやはり見返り資金を早く何とか使う方向へ行きたい。さしむきの問題としましても、昨年百億出して水力発電をやりました。これが七月から八月の中ごろでこの金が切れて、今までやつている工事を休むということもとても耐えられない。何とかして発電関係に使いたいと思つたのでございますが、まだ電気関係に今年度の見返り資金を出すことについての許可が来ておりません。私はもうこういうことばかりに、実は神経衰弱になるくらい苦労しておるのですが、なかなかうまく行かないのを遺憾としております。しかし何としても経済の復興は大事でありますから、できるだけ有効にこの金を使いたいというので、ほとんど毎日のようにやつております。大体本年の資金計画を立てまして、予算のときにごらんに入れました資金計画は、一年間全体の輪郭かけでございますが、今年度に入りまして、今までの状況、これから三月までの預金部、見返り資金あるいは国庫の歳入歳出、そして各特別会計の状況を一表にしまして、絵にして、産業資金なんかにしましても、安本と協力しまして計画を立てて、向うの了解を得るように極力努力しておりまするが、ただいまのところまだ努力中で、結果が出ておりませんことはまことに申訳ないことであります。今後とも努力いたしたいと思います。
  94. 小山長規

    小山委員 よくわかりましたが、ただ国会の意見として、ひとつ関係筋にも大蔵大臣を通じて、大蔵大臣の口から申入れをしていただきたいと思いますのは、預金部の資金は、地方公共団体あるいは政府機関でなければ使つてはいけないという覚書が来ておることは、われわれも承知しております。しかし地方公共団体に貸した金は必ず返つて来るというふうには、これは必ずしも言えない。地方の財政がつぶれれば税金は入らないのでありますから、当然これは入つて来ない。むしろそれよりは金融債にこれをまわして行つた方が、回收については、私は確実だと思う。銀行がつぶれるというような状態なつたときには税金もとれないのでありますし、どうも処置のしようがないのでありますから、ぜひこの点は金融債に投資下するということは、地方債に投資するのと何ら危險負担においてかわりはないのだ、むしろその方が国民経済を盛んならしめる意味においてよろしいのであるということを、よほど強く——これは大蔵委員会の皆さんも御異存のないところだと思いますので、ぜひこの線で押していただきまして、預金部の資金が地方公共団体以外にも、確実な産業資金であるならば、それが放出されるように一層の努力を、ひとつ大蔵大臣の手でやつていただきたい。これを希望として申し述べます。
  95. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 竹村君。
  96. 竹村奈良一

    ○竹村委員 今大臣の言われた中で、中小企業の金融の問題についての保証制度を考究するということでありましたが、この考究されておる保証制度と、それから現在ありますところの、各県における信用保証協会との関連性をどう考えておるか、あるいは無関係に別々に考えられておるかどうか、その点をひとつ……。
  97. 池田勇人

    ○池田國務大臣 各地におきまする信用保証の協会は五十程度つたと思いますが、これは各公共団体に独立しているので、十分の運用がうまく行つておらないのであります。私が今考えておりますのは全国的な問題でございます。国で出資するか、あるいは出資なしで行くか、今検討を続けておりますが、別個の考えで進んでおります。
  98. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一点お聞きしたいことがあるのです。現在中小工業の金詰まりの緩和は、そういう制度においてやられるという考えは了承いたしますが、その以外に、一番下のそういう保証協会なんかにも関係でき得ないような所に融通してやる。たとえば国民金融公庫というような制度を、もつと拡大される考えはないのか。これを拡大されないと、たとえばほんとうのごく小さい中小工業についての金融という道が、銀行からふさがれておるのでありますが、これの出資等を国家においてもつと増大する考えはないかどうか。この点をお伺いしたいと思います。
  99. 池田勇人

    ○池田國務大臣 ごもつともな御意見でございまして、今年度も十二億を計上いたしております。私はできれば来年度この倍以上をやりたい。そうしてまた国民金融公庫は、借入金ができないというふうになつておるのでありますが、これも法律を改正しまして、借入金ができるような方向へ持つて行きたい、こういうので折衝を続けております。
  100. 竹村奈良一

    ○竹村委員 もう一つお伺いしたいのは、大臣は先ほどのお話の中でもみずからお述べになつておるように、各地における農業協同組合というものは非常に預金が減少しておる。従つて今度肥料公団等の廃止によつて、たとえば肥料購入等におきまして、協同組合の自己資金によつてこれを運用するということは、困難性が伴うと思うのでありますが、これに対して当局はどういうような方法で、協同組合に対する肥料購入資金の道を考えておるか、あるいは農林中金等を通じて必要なだけお出しになる考えであるかどうか。
  101. 池田勇人

    ○池田國務大臣 肥料公団廃止に伴います金融措置といたしましては、まず第一には今あります肥料公団から買い上げてやる。そうしてこれからすぐ流す方法としては二通りあると思います。農業関係機関を通じて出す場合、それから一般製造から卸売、小売という一般商業関係で行つている場合と二通りあると思うのであります。農業の関係については御承知の通り農業手形でまかなう。農業協同組合の方に事業資金が相当あればよろしゆうございますが、ない場合、足りない場合におきましては農業手形でやる。それから卸売業者を通じてやるにつきましては、商業手形というかつこうで行く。そうしてその要する金は公団が持つておる以外に、来年の三月ぐらいが一番たくさん出るものとして、二百五、六十億ぐらいまで肥料に要する手配はつけております。
  102. 中崎敏

    ○中崎委員 ちよつと遅れて来ましたので、多少前後の関係がわかりませんから、あるいは重複するかもしれません。大体簡單質問するつもりです。ちよつと速記をとめてくださいませんか。
  103. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 速記をとめて……。     〔速記中止
  104. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 速記を始めてください。
  105. 田中織之進

    田中(織)委員 一昨日の連合審査会において、中崎委員からこの問題について大蔵大臣に御質問申し上げたことの答弁の内容と、ただいまの大蔵大臣の答弁とに、私のニユアンスの点ではありますけれども、どうも食い違いがあるように思う。一昨日はまだ関係方面と折衝中の過程のものであるから、たとえば予算案で出すか、予算以外の処置によるかということについては、まだ申し上げる段階には至つていないという意味に、われわれは了解したのであります。しかし大蔵大臣のただいまの御答弁によりますと、まだ予算の請求も何もないから、全然タツチしてないのだということは、吉田内閣の閣僚の一員として、大蔵大臣として無責任きわまるものだと思う。ことにこの問題については、大蔵大臣の答えられる範囲で御質問を申し上げたいと思いますが、マ書簡によりますと、債務償還その他のいわゆる財源によつて経費をまかなうということについて、財源を示唆した点があるのであります。その点から私大臣にお伺いしたいのでありますが、当然債務償還費をもつて今度の警察予備隊の経費に充てることとなりますと、これは財政法上どういう取扱いになるかという点について、まず大蔵大臣にお伺いしたいと思う。
  106. 池田勇人

    ○池田国務大臣 田中君にお答えしますが、私は一昨日お答えしたのと今のと何らかわりないと思う。たとえば中崎君の質問は、予算のスケールとか内容についてどうかと言われたから、その点はまだ連絡ありません、こう言つたのであります。一昨日の質問と今日の中崎君の質問とが違うから、答えが違うのであります。決して無責任と思つておりません。  次に債務償還費から出す場合において、三十三條の但書の問題がどうなるかということでありますが、三十三條の但書は、予算の流用につきましての制限を設けておるのでありますが、債務償還から出すときには、三十三條に抵触しないかという問題について研究を重ねておるので、はつきり申し上げられないのであります。
  107. 田中織之進

    田中(織)委員 前段の点でありますが、もちろん中崎君の質問は、予算のスケールその他について述べられる範囲で述べてくれということでありますが、少くとも一昨日の大蔵大臣の答弁から見ますならば、同じような答弁を繰返されるのがほんとうだと思う。しかしあなたはその点については全然タツチしないと言う。一昨日のやつは速記があります。今日のやつは速記がないからでありますけれども、現にわれわれが耳に聞いたところによると、一昨日のあなたの答弁と先ほどの答弁とは、先ほど断つたように、少くともニユアンスの点で、われわれの感じかもしれぬけれども、私は一昨日と本日の答弁とにおいて、どうも大蔵大臣がこの問題について、国務大臣として全然タツチしておらないというはずはないと思う。ことに財源の点で債務償還費による云々というような問題も、書簡の中には出ておるのでありますから、そういう点から申しまして、先ほどの答弁は一昨日お答えになつたと同じ意味だと言われるならば、私了解に決してやぶさかではございませんけれども、あくまでそういうようにつつぱられるということになると、先ほどの御答弁は一昨日と確かにニユアンスの点において違うものを、われわれ感じておるのであります。それは見解の相違と言えば別でありますが、重ねてその点を申し上げておきたいと思う。  それからただいまの財政法三十三條の但書との関係の問題で、ただいま研究中であるということでございますが、予算の流用の問題につきましては、たとえば国鉄裁定その他法に基く機関の裁定による予算の流用につきましても、きわめて嚴格なる態度をもつて、大蔵大臣は従来臨まれて来ておるのであります。従いまして問題は、今度の警察予備隊の経費につきましては、たとえばけさの読売新聞等によりますと、かなり決定的なものが出ておるかのごとき報導もいたしておるのでありまして、これは新聞の記事で責任は持てないと言えばそれまででありますが、少くとも天下の読売新聞ともあろうものが、全然何らの根拠のないところにああした報導をやるはずもあるまい。われわれは新聞紙の報導についても、ある程度の信用を感じておるものでございますが、そういう点から見まして、相当の額になると思う。それからこれも一昨日であつたかと思うのですが、政府と與党との連絡会議において、警察隊の設置に伴うと予算並びに法律手続きの関係から、たといこの会期中に間に合わないといたしましても、臨時国会はできるだけ早く開こうというような方針が決定されたやに、これまた昨日の新聞紙でありましたか、報導をいたしておるのでありますが、私、財政法の関係からお伺いしたいのは、先ほど中崎委員から御質問申し上げましたように、これは国民経済の上にもきわめて重大な影響を持つて来る問題でありまするから、われわれは当然この予備隊の設置に伴いまする法的な措置、これは政府の方でとられて、国会の審議を経べきであるという建前から、大臣にお伺いをするのでありますが、これまたそういう観点に立つての折衝が進められておるのかどうか。法律案並びに予算案を出して国会の審議を経る、こういう観点に立つて政府が折衝を進められているのかどうか。お答えのできる範囲でけつこうでありますが、伺いたいと思います。
  108. 池田勇人

    ○池田國務大臣 マ元帥の指令でございますが、閣僚の一員としてタツチしております。それはおととい申し上げた通りであります。きようの分は予算の内容でありますが、タツチしておりません。ニユアンスとか何とかという前提での話でございますが、私の心境に何らかわりございません。  それから警察予備隊創設等の予算関係につきましては、ただいま何も申し上げる段階に至つておりませんことを御了承願います。
  109. 高田富之

    高田(富)委員 ただいまの問題は非常に重大な問題でありまして、今、両委員から誠意を込めた御質問がありました。この前も連合審査会におきまして同様の御質問がありましたけれども、常にわれわれが満足する回答が得られないことを、非常に残念に思つております。私はせめてこれだけのことは言つていただけるのでははないかと思う。というのは、現在この財政経済を担当される大蔵大臣といたしまして、債務償還から相当額のものが出るということは、今の御説明の中にもあつたのでありまして、これが給與べースの引上げや減税にどういうように影響するかということからいたしまして、どの範囲までこれが可能であるかというような問題は、きわめて重大な問題でありますので、当然当局と折衝する。政府に対して御相談を受ける受けないにかかわらず、大臣としては大臣の意見、向うへ折衝してもらう希望條件というようなものは、参考意見として、当然総理なり官房長官なり、直接交渉に当られる大臣に対しまして、述べておられると思うのであります。新聞等ではいろいろ揣摩憶測をいたしまして、いろいろなことが出ますから、ますます国民は不安になるのであります。この国会におきまして、明確にそれらの希望する点、この範囲でこうであれば、こういう影響はあるけれども、この程度であればこういう影響にとどまるというような程度で、希望條件を述べておる。しかしまだ交渉中なので、結果はわからぬというように、はつきりと御答弁願えれば、われわれはそれ以上をあえて追究しようとするものではありません。従つて現在折衝に当られておる過程において、大臣としてどういう希望條件、また希望事項を持つて折衝に当つておられるかという点を、せめて明らかにしていただきたいと思うのであります。これが一点であります。  もう一つは、三十三條のことは、これが抵触しないかどうかを研究しておるというお答えでありました。そういたしますと、これは国会の議を経ずして、政令でやつてしまうということが前提となつて、三十三條に抵触することになるのだろうか、ならないのだろうかということを、研究しておるというふうにとれるのであります。これはちよつとおかしいのでありまして、必ず政令でやらなければならないという命令があちらからあつたのでありますか。必ず政令以外の方法でやつてはならぬ、国会にかけてはならぬという命令があつたんだということであれば、あるいはそういうようなことになるかもしれませんが、もしあの書簡に現われたことだとすれば、当然これは国会にかけることが前提になる。そうして一切の交渉も進めらるべきであると思うのであります。この二点についてひとつ明確な御答弁を願いたいと思います。
  110. 池田勇人

    ○池田國務大臣 まことにいかんながら、その二点につきましては申し上げることはできません。
  111. 中崎敏

    ○中崎委員 ちよつと速記をやめてください。     〔速記中止
  112. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 速記を始めてください。
  113. 中崎敏

    ○中崎委員 朝鮮問題を契機といたしまして、最近においてインフレがまた漸次進んで行くのではないか、こういう様相を帶びて来たような印象を持つておるのであります。一つには朝鮮問題だけでも長期のものであるというような予想、さらにこれが大きく発展するかもしれぬというふうな点をも、意識的、無意識的に考えられまして、すでに売惜しみ買いだめというふうな事態が、ひんぴんとしてあちらこちらに起つて来ておるのであります。最近における株式取引の市況を見ましても、そうした事情がこの面に強く反映しておるとも考えられるのでありますが、もしそうであるとすれば、せつかく今まで国民日経済安定のために、国民が忍ぶべからざるを忍んで来たところのものが、一朝一夕にしてひつくり返される。そして今度の段階において、もしインフレが高進するというようなことになれば、そのときこそドツジ・プランをもつてしても、とうてい食いとめることができないという事態になるのではないかとさえ、われわれは心配しておるのであります。こういうふうな問題に対して、大蔵大臣はいかなる見通しと、そうして今後の状況いかんによつては、いかなる対策を用意しておられるかということを聞きたいと思います。
  114. 池田勇人

    ○池田國務大臣 私は見通しとしてはインフレにはならない、またならないような施策をぜひとつて行かなければならない、こう考えておるのであります。こういう問題について、これがどうなつて行くかというようなことは、一国の大蔵大臣としては軽々しく言うべきではないと考えます。先ほど申しましたように、当座の問題としてはドル資金をかせぎます。通貨の膨脹がある。輸入をふやして行く。これを收縮する。この程度に施策をめぐらして行きます。
  115. 中崎敏

    ○中崎委員 一国の大蔵大臣として、今のような重大問題を軽々しく口にすべきではないというふうな意見もありますが、この点について一面においてはうなずかれる点もありますが、また一面においてはそういうことを口で言う言わぬにかかわらず、やはりこれに対する万全の策を講じなければならないということは明らかなことであります。それに対して一面、ドル資金の面において、一面金融問題の面において、通貨の増発を食いとめるというのでありますが、もともとインフレは通貨の面のみから起るのではないということは、明らかなことであります。結局物の面からまず今度は起るのではないかということを、われわれは心配しておるのであります。たとえば米の場合においても、かつては非常に高かつたものが、一時財界安定の見通しのもとに、一升当り百円程度であつたのが、最近においては、所によつて違いますが、百二十円なり、百五十円でもなおかつ百姓は売らない、こういうふうな状態に進んでおるようであります。さらにわれわれはあすの勤労大衆の生活の状態を心配しておる。これはただ米だけの問題ではなしに、スフ、人絹のような纎維の面にもこの傾向が現われておる。さらにこのほか重要物資の面において、すでに広くこうした考え方が具体的にもう行われつつある。これはきわめて憂慮すべき事態であるとわれわれは考える。そういう面におきまして、物の面において十分の対策をこの際講じられなければ、遂に取返しのつかないような状態になることをわれわれはおそれる。大蔵大臣は、ただ金融だけの問題だというふうな立場でなしに、一国の経済財政を担当しておるところの経済閣僚として、こうした問題についてさらに具体的に、まずどういう大きな手を打つかということをひとつお示しを願いたい。
  116. 池田勇人

    ○池田國務大臣 いろいろな問題につきましては万全の措置を考えております。
  117. 中崎敏

    ○中崎委員 もうこれ以上追求してもあまり苦しめるようですから、この問題はこれくらいにしておきます。次に見返り資金の性格についてお聞きしたいのでありますが、たとえば長期金融債は、この見返り資金を土台にしてまかなわれるというような一つの形が現われております。その場合におきましてたとえば農業協同組合においてさらに十億円の増資をする。これについては見返り資金をもつて引受ける。そうしてこれを土台にして農林中央金庫の本来の資本金十億円と、都合二十億円をもつて十倍の起債をして、二百億程度の融資をするということは、一応構想としては考えられると思いますが、その際における見返り資金の十億というものは、一体返すべきものであるのか。あるいはこれに対するところの発言権が一体どこにあるのか。将来日本の農村金融の元締めになるのでありますが、そういうふうなものに一つの圧力と言いますか、一つの力が加わるようなことになるのか。こういう問題についてはわれわれが国家、さらに農村というような問題を考える上においての、一つの大きな問題でもありますので、この際大蔵大臣からそれについての説明をお聞きしたいと思います。
  118. 池田勇人

    ○池田國務大臣 見返り資金からの出資につきましては、決議権を持つておりません。そうして一定計画のもとに償還することに相なつております。
  119. 中崎敏

    ○中崎委員 今決議権を持つておらないと言われましたが、決議権でなしにその性格を聞いたのであります。それは将来償還をする。そうして償還をすればそれで終りだというふうになるのだと、解釈をしていいものかどうかということであります。  次に伺いたいのでありますが、政府は来年度においては一千億円の減税だというようなことを言うておるのであります。また一面におきまして、債務の償還は来年度はないのだ、こういうふうに言うて、ことに大蔵大臣の委員会における説明もそうでありました。かりに今度国際償還費の多くの部分が、国警予備隊の費用等に充てられると思うのでありますが、これは国会の承認を得べきものであるとわれわれは主張するのであります。しかしその形いかんにかかわらず、現実にはそれだけ償還がされない。要するに去年と今年とで全額の償還がされないということに帰着すると思うのであります。もし今年度において未償還の金額は残つても、なおかつ来年度は国債の償還はやらないのかどうか。そしてまた今年の国債の償還に、当初予算において引当てられたものは千二百数十億のものであつたのでありますが、それについてかりに自由党の公約であります一千億の減税が実現したとしても、償還しないとすればなおかつ相当の余剩がある。こういうふうなものは一体どういうふうに引当てる方針であるか。大まかなところをひとつお聞かせ願いたい。
  120. 池田勇人

    ○池田國務大臣 自由党の選挙以来の一千億というのは、国税において七百億、地方税において三百億、こういうふうなことを総務会できめたのであります。私はアメリカから帰りまして、七百億の減税は多分できるだろう、そういうふうに努力する、こう言つて今まで進んで来ておるわけです。先ほどお話申し上げましたように、債務償還をやめ、そして米の値をできるだけ高くする。輸入補給金が非常に減つて参りますと、千億余りの財源ができます。そこで七百億円の減税をし、三百億余りで給與の引上げあるいは社会政策の施設、文教刷新の施設をする、こういう考えでおつたのであります。本年度から警察予備隊の費用がいるわけですが、本年度は債務償還費が五百億ありますから、これでまかなえると思います。来年度は新たに今までにおける私の予定よりもふえて来るわけでありますから、ほかの点はできるだけ節約いたしまして、また輸入補給金などもできるだけ少くして、七百億円の減税に全力をあげたいという考えでおるのであります。本年度一般会計で財政法その他の法令に基くもの以外の債務償還が五百億、警察予備隊の関係で若干減少しますが、そうすると、その分だけ来年度債務償還をするかという御質問でありますが、私は来年度は財政法等に基くもののほかは債務償還はしない考えでおります。
  121. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 まだほかに質問者もありますから、簡單に願います。
  122. 中崎敏

    ○中崎委員 質問者もありましようが、別に時間の制限をつけてやるという打合せもないのでありますから、その後において協議されるのは別でありますが、もうしばらくお願いします。
  123. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 簡單に願います。
  124. 中崎敏

    ○中崎委員 次に公団関係するものでありますが、最近あらゆる公団において忌まわしい問題が次から次へ起つて参りまして、公団末期におけるその行き方については、国民ひとしく忿懣を禁じ得ないものがあるのであります。これにつきましては直接当該の所属官庁の責任もあるのでありますが、一面において大蔵大臣の責任もまた重大だと考えておるのであります。これは同時に結局においてその始末、いわゆる金銭的な面における損失というものは国民全体にかかつて来るものである。一面におきまして、またこうしたこの腐敗、堕落の姿というものは、国民の精神的面においても非常に大きな影響力を持つものである。こうした点について大蔵大臣は、今日までこの許すべからざる公団の忌まわしい問題について、一体いかなる調査をされ、さらにまたいかなる対策をとられようとしておるのであるかということが一つ。  それから現在まで各公団別に大蔵省において知り得た公団の赤字、一面においてはその不正による損失、一面においてはまたやり方の悪い、いわゆる不当な扱いによる赤字、一面においてはやむを得ざる赤字、こういうものが一体各公団別にどの程度あるのか、こういう二つの問題をお聞きしたいと思います。
  125. 池田勇人

    ○池田國務大臣 公団の不始末が続々出て参りますことは、まことに遺憾しごくに存じておるのであります。われわれは先般来昨年の募れから経済調査庁に依頼しまして、各公団について大体の調査をいたしました。その中に相当赤字の公団もあつたのであります。そういうものにつきましては、早く在庫品を整理するとか、大蔵省としては赤字を引継ぐのがいやですから、公団がやまりますと、管理は大蔵省で引受けることになつておりますので、前々から注意をいたして、できるだけ公団の損失を少くしようと努力しておるのでございます。また不始末の原因なんかを探求いたしまして、一、二新聞にも載つておりましたが、それはそれとして、公団預金を一手に大蔵省預金部に集めることを考えていますが、これまた公団預金を市中銀行から全部引揚げてしまいますと、それだけ市中は金詰まりを生ずることになります。預金部資金をまた逆に銀行へ預けさせるようにしてくれればよいのでありますが、預金部へ預けた場合、これを産業方面へ貸し出すことができないということになるので、結局やぶへびになるおそれがありますから、公団は新規の預金は預金部へ預けることとするが、古いものはそのまま市中銀行へ置いておこうというような方向で検討をいたしておりまして、あの手この手で大蔵省としては注意を喚起して、公団別に大体の赤字を三、四箇月前に調べたことがございますが、総じてあまり赤字がないようでございます。ある一つの公団に三、四億くらい、この公団の名前は言わない方がいいと思いますが、三、四億くらいあるのがございますが、総じて大体赤字がないような状況でございます。この機会にこれは申し上げた方がよいと思いますが、配炭公団も大蔵省で整理を引受けまして、赤字の補填四十三億円を予算に計上したのでありますが、四十三億までいりません。ほとんど貯炭を処分いたしまして、この赤字が非常に減つて来ると思います。公団をやめますと、繰返して申し上げますが、大蔵省がみな引受けるのでございますから、主計局を通じまして、常に経済調査庁を督励して注意をいたしておるのであります。何分にも不心得者を全部監視するというわけには行かないので、ああいう不始末がどんどん出て来るということは遺憾でありますが、できるだけ注意をいたしまして、赤字を残さないような方法をとつて行きたいと存じております。
  126. 中崎敏

    ○中崎委員 総じて大して赤字がないということでありますが、これについては相当むりをして、今までの赤字を穴埋めしようとしておるのではないかということを、実際の問題としてわれわれは感じているものであります。これはすでに廃止となり、あるいは廃止となろうとするような公団の場合におきましては、手持品を不当に高く売りさばいておる。一面においてこれは国民に赤字を負わさないという意味においては、非常にけつこうであり、またそうあるべきだと思いますけれども、重要な物資について公団を設けて、国家的な仕事をこの公団に担当せしめるというところの、このそもそもの立法の精神並びに運用の場合においてもそうでありますが、その精神から言うならば、公団が廃止になつても、その重要物資について国民経済の上に大きなる変動がないということが、当然の帰結でなければならぬと思うのであります。それにもかかわらず、あるいは統制が撤廃になつたから今度は自由に売るのだ、そうして市場価格で売るのだというような意味において、市場に対して、非常に大きな影響を與えておる。一面において統制ははずれたとは言いながら、一面統制があるために、またこれがやまつても急に変化はないのだという見通しの上に立つて、この公団廃止の処置をとられ、公定価格廃止の処置をとられたのだと思いますが、実際にはその翌日からぽかつと、あるいはすでにその統制が廃止される前から重要物資の価格を引上げておる。これは明らかに公団法の違反だとわれわれは考えておりますが、そういう措置までして、むりをして不当に値段をつり上げてやつておるという事実も多々ある。いわんやもしこれが悪徳官吏あるいは業者と結託して穴を明けたその穴までも、こうしたもので埋めるというようなことになれば、国民に対して思わざるところの迷惑を及ぼすという結果ともなる。そこで大蔵大臣に対して特に要望することは、公団廃止後の措置として手持品をさばく場合においては、市場価格あるいはその公団の今日までの運営、あるいは実際におけるところの業務の正不正、当不当、こういうような問題も十分にひとつ検討した上で、これらの問題を処置していただきたい。これを希望すると同時に、もう一つには、こうした公団を打切りにするという場合においては、すみやかにその公団事務を各主務官庁においてこれを引受けるとかいうことにする。公団をして残りの仕事をやらせるというところに、非常に大きな不正が起り得る。今までの穴もそうしたところにできた。さらに莫大なものが、あるいは権利、あるいは金銭、あるいは物、こういうふうな形において不正に、あるいは不当に処分されると心配される。そこで関係主務大臣とも十分打合せの上で、こうした弊害のないように努力されるお考えがあるかどうか。この点をもう一つ聞いておきたい。
  127. 池田勇人

    ○池田國務大臣 先ほど申し上げましたように公団廃止になりますと、清算は今までの例から申しますと、大蔵省でやるのが例になつておるのでございます。従いまして清算人とかには、今お話のありましたような点は注意いたしまして、弊害のないように努力いたしておるのであります。今度の肥料公団の廃止につきましても、われわれはなるべく損をしたくないものですから、もつと買つてくれという非常な要望がありますが、私は通常の在庫品は買い上げない。こういうことでとにかく損をしないように、大蔵大臣としては万全の措置をとつておるのであります。
  128. 田中織之進

    田中(織)委員 きようの午後の大蔵大臣の金融問題に関する御説明で、朝鮮事変が日本の財政経済にどういう影響を及ぼしておるかということについて、実は相当具体的にお伺いしたかつたのでありますが、先ほど私中座中に大蔵大臣から御説明が若干あつたようでありまして、最近輸出が非常に伸びて、ドル資金が潤沢になつて来た。これは下手するとインフレの方向へ持つて行く危險性があるので、輸入することによつてそうしたとこを阻止したい、こういうような措置をとつておられるという御説明があつたやに承つたのでありますが、朝鮮事変が解決するまで、どのくらい日数がかかるということの見通しとの関連において見なければならないので、相当むずかしい問題であろうかと思うのであります。一面朝鮮事変が日本経済の上に、ある面における実力というか、そういうものを増大しておる関係が、たとえば最近における株式市場のブーム的なものに現われて来ておると思うのであります。政府の方では大体今月中に、明年度予算の編成の基本方針も御決定なさるように聞いておりますので、さらに朝鮮事変の現在の段階、またこれが相当長期化するという前提の上に立つて、大蔵大臣として予算編成の建前から、日本の財政経済の上にどういう影響を及ぼすとお見込みになつておるかこいうことについて、さらに具体的にまた詳細に承ればたいへんけつこうだと思います。
  129. 池田勇人

    ○池田國務大臣 直接財政面では警察予備隊等の予算以外に直接に影響はごごいません。ただいま政府は外国為替特別会計あるいは貿易会計等がございますので、この辺の予算についてはある程度の影響があるかと思います。これも既定予算でまかない得ると見込んでおります。経済的にはどうかと申しますと、ある程度ストツクが換価されるようになりまして、そこでまたある程度必要なものを生産するということになると思うのであります。これも日本経済全体から言つたらただいまのところそう大した問題ではないと思います。しかし大した問題でなくても特殊の需要が起つて参りますので、先ほど申し上げましたようにこれが解決策といたしましては、いろいろな手があるのであります。こういう突発的な事件でございますので、いかなることが起つてもそれに対応し得るような措置は、時々とるようにいたしておるのであります。
  130. 田中織之進

    田中(織)委員 大体現在の段階においては、大臣のお述べになりましたような状況だろうと思うのでありますが、かなり特殊需要が起つておると見ておるのであります。たとえばトラツク、セメント、カン詰というような面で、私の聞き得た範囲においても相当の何というか、注文というか、需要が起つておるようであります。そういうようなものは大体貿易関係を通じて、ドル資金の潤沢化という形になつて現われて来ておるのだろうと思うのですが、必らずしもそうでない面もあるのではないかということを、私は懸念するのであります。  そこでこの際伺つておきたいのでありますが、財政的な面におきましては、終戰処理費の最近における支出状況と申しますか、そういうような面には何らの変化が現われておらないかどうかということが、第一点であります。  それから第二点といたしましては相当堂局地的にかりに解決するといたしましても、多少の支出を要するし、下手をするとこれは第三次大戰への口火になりはせぬかというようなことすら、言われておるのでありますから、その面から見るところの特殊需要というものが、相当今後増大して行くということになりますと、何かこの関係から来る受注を、一括して受けるような機関を設けなければならないのじやないか。率直に言つて対華援助のドル資金も、先般朝鮮事件が起つてから三億ドルでありますか、決定されたような外電も聞いておるのでありましてそういうようなものがある意味において輸送関係上近いところで調達するということになりますと、勢いそういうようなものが日本のストツクをドル資金で持つて行く。これが貿易における活況という形になつて現わて来ておるのだろうと思うのでありますが、やはり今日生産が相当伸びまして、安定への方向をとつておるとはいうものの、やはりこういう特殊需要の面に相当のストツクなり、あるいは新らしい需要が起つて参りますと、国内の物資の需給関係をアンバランスにするおそれがあると思うのです。そういう意味でこの点は政府において、何らか国内の物資の需給にアンバランスを起さないような配慮を、実は今からしておかなければならないのじやないかと思うのですが、そういう点について大蔵大臣として、特にドル資金を確保するという見地から見ても、今からお考えになつてしかるべきじやないかと思うのですが、この点について大蔵大臣の御所見を伺いたいと思います。
  131. 池田勇人

    ○池田國務大臣 御質問の第一点の終戰処理費の使用状況は、別に異状はございません。朝鮮関係につきましての分は、八軍が向うのECA機関と相談して発注しております。原則として終戰処理費には関係はないのでございます。従いまして終戰処理費の使用状況は、どちらかといえば例年より出が悪いくらいでございます。  次に物資が朝鮮の方へ行くということになると、アンバランスが起きて物資不足、ドル資金の過多、円資金の供給過多という事態が起りはしないか、こういうお話でございます。これは先ほど来答弁したのでございますが、外貨予算をそれに対処するように組みまして、必要な物資を獲得したドルによつて輸入して、そして国内に置いておく。たとえば綿花にしてもあるいは機械器具にいたしましても、そういうものをどしどし輸入しよう。そうして外貨予算を早急に増額して輸入をはかる、こういう考えでおります。
  132. 田中織之進

    田中(織)委員 もう一点、最後の点の外貨資金の面の予算において、十分その点の対策を考えて行きたいという大蔵大臣の御答弁でございますが、最近日本の内地におきまして、連合軍の関係においてドル資金で日本の物資を調達しておるものは、やはり一応外資委員会と申しますか、外貨は国で買い取つてそれに見合うところの円資金を結局日銀から調達する、こういう形に相なつておりますが、そこをもしそういう形でかりに一億ドル程度のものが出るといたしましても、三百六十億というような、その面から来る通貨の膨脹ということを、われわれは考えなければならぬと思うのです。その点を操作する意味において、このふえたところのドル資金で輸入を増進して、国内でストツクを持とう、こういう御方針だと了解してよろしゆうございますか。
  133. 池田勇人

    ○池田國務大臣 その通りでございます。
  134. 奧村又十郎

    奧村委員 私は一点お伺いしたいと思います。先ほど同僚小山議員からの預金部資金の運用について、司令部とどういうふうに御折衝になつておるかという御質問に対して、非常に懇切に、また率直に御説明はありましたが、残念ながら大蔵大臣としての御答弁には、不満足な点があるように思いまするので、重ねて私からお尋ねをいたしたいと思うのであります。  それは先ほどの中崎議員からの御質問にもありましたように、自立性の問題でありますが、預金部資金の運用について司令部がなぜ指令を出して、非常に嚴格なことを言うて来ておるか。そうしてそれがわれわれ納得の行く話ならいいが、それが納得ができない。われわれ納得いかぬのであるから、大蔵大臣ももちろん納得は行かぬだろう、お困りだろうと思うそれをどの程度にどういうふうにお話になつたかということについて先ほどお話があつたが、まだ足らぬと私は思うのであります。それは財政の均衡あるいはまたドツジ・ラインの基本的な原則については、これは向うの指令も受けなければならぬと思う。しかし預金部資金の運用について、なぜ向うが嚴格にそこまで出て来るのか。一般銀行預金については、向うはそう指令あるいはその他制限はやつておらぬように思う。預金部資金だけである。預金部資金というものは、一般財政と切り離れております。これに対して向うがとやかく言うということは、單にこれは国民の零細預金であるからして、赤字その他で預金者に迷惑をかけてはならぬという建前から言うのであるとするならば、あまりに向うは立ち入り過ぎるのではないか。それから向うの指令によりますと、今日二千億に達するところの預金部資金が、全部満足に運用できるとは思わぬ。また預金部資金というものは最近だんだんかわつて参りまして、必ずしも零細預金とは言えない。これの運用が今日金融の面において一番重大な問題だ、これをわれわれとしては少くとも金融債くらいには運用するのが当然である。向うはその金融債に対しての運用をなぜ承知しないか。それをどこまで大蔵大臣はお話になつたか。これに対して大臣の思う通りにならぬとすれば、大臣として、場合によつて重大な決意をなさつてもしかるべきものである。またこれが実現せずして円滑な金融ができるとお考えになるか。その点を重ねてお尋ねをいたしたいと思います。私は過去にさかのぼつて考えてみまするのに、石橋大蔵大臣の当時—大臣はその当時主税局長であられたが、あのとき石橋大蔵大臣は相当重大なる司令部の指令、つまり戰争債務を全部打切れという指令に対しても、大蔵大臣の地位にかけても指令全部は受取れないと、非常に強硬な態度で出て、これはいいか悪いかはわからぬが、かなり自主性のある政治をとられたと思う。また今日、西ドイツにおける四月の税法改正における事情などを承つてみますると、これまた連合軍の弁務官に対して相当強硬な政治をやつておる。こういうことから考えて、たかが預金部資金の運用について、單に向うの指令をうのみにするこの態度は、どうしてもわれわれは納得が行かぬので、もう一度御苦心のあるところ、また決意のほどをお伺いしたいと思います。
  135. 池田勇人

    ○池田国務大臣 この問題につきましては、東京におきましても、またワシントンにおきましても、かなり論議いたしましたが、なかなかこちらの言うことが通りません。昨年の暮れはああいう状態で、指令以外に先ほど申し上げましたように、百億円の一般銀行に対する預託金が行われた。ただいまのところはなかなかできない。理由はどうかと申しますると、お話いたしましたように、これは信託預金の方で運用については考えなければならない、こういうことが主であるようであります。そこで金を遊ばせておくわけには行きませんから、ほかの方法でこの預金部の資金の活用をはかるように今折衡しております。これは先ほど申し上げましたように、見返り資金から出ている金を預金部へまわす、こういうことになつております。それで見返り資金をふやしてこれを産業資金へまわす、金融債へ出すという方法であれば、金はどの金でも同じであります。こういう方向へ行こうとしておるのであります。  次に思うように行かなければ、重大な決意をしたらいいじやないか。これはそういう考え方もありましよう。しかしここはよほど考えねばならぬことで、私は今預金部の金を自由に動かせぬから、やめるというような考え方を持つておりません。自分の一身上からいえば、私はいつでもやめる気持は持つております。しかしここは私はせつかく安定計画の仕事をやつておるときに、さしたる問題で短気を起すということはとりたくないと思うのであります。全体の問題として、決意をするのはいつでもやぶさかではございませんが、個々の問題で決意とか何とかいうようなことは申し上げたくないと思います。  自主性の回復につきましては、もとより西ドイツの例などもよく知つておりますが、これはやはり大局から見、日本国民の将来ということから考えまして、立つ腹もいつときと申しまするか、うまくやつて行くのが国のためだという気持を持つて、一挙手一投足についても注意をしておることはもちろんであります。それから預金部資金の問題ばかりではありませんで、いろいろな問題もあるのでありますが、やはり占領をされております場合におきましては、いろいろなことを考えて注意深くやらなければならぬことはもちろんでございます。ただいまお話のように、重大な決意をする気持は、ただいまのところありません。
  136. 奧村又十郎

    奧村委員 預金部資金について向うがいろいろな指示あるいは制限を出すということは、いわゆる信託のためであると言われたが、私はそうじやないと思います。預金部資金の運用について、一体向ういつまでさしずをするのか。そうではない、私はこれはやはり経済安定政策の一環として向うが口出しをしておる。しかしこの預金部資金の運用について、何もドツジ・ラインを変更したりどうしたりするわけじやないので、この預金部資金についての向うの口出しに対して、大蔵大臣が反駁せられない。あるいはどういうふうに反駁をせられたか、そこをお尋ねしたいのです。それで理由がわかればこれはやむを得ぬが、向うの理由はつきりしないのでその点をお尋ねしたい。
  137. 池田勇人

    ○池田國務大臣 いろいろな点を言われておりますが、私の力の限りは盡しておるのでありますが、先ほど来申し上げたような状況でありまして、これは何と申しまするか、やはり金融政策でも各人各様の考え方があるので、一がいにこつちの方がいいということを押しつけるわけに行きません。預金部資金ばかりでなくいろいろな点もあるので、これは信託預金というようなものだから、運用について万全の措置をとらなければならぬ。こういう点が最も重大な向うの論拠であるのであります。
  138. 高田富之

    高田(富)委員 先ほどの田中委員の御質問ちよつと関連するのでありますがただいま事件が起りましてから第八軍の現地調弁というような形で、相当緊急の必要に応ずるために、どんどんやられているということを聞いている。当然またそういうことを予想されるのでありますが、その結果非常にこの支拂関係、あるいはこれに応ずる態勢の方で、混乱が起るような可能性はないかどうかということは、相当心配されるわけであります。先ほどの御説明で一億ドルとか幾らとか言われましたが、全然政府の管理しておつた外貨予算のわく外のものがあつてその方でというようなお話であつたようです。これは額はどのくらいあつて、そうして今後の見通しも相当これが長期化するというような見通しのもとにやつておられるようでありますが、そうなりますと、はたしてそれでまかない切れるものであるかどうか、そのあとどういうふうになるのか、こういう点についてひとつ御説明願いたい。
  139. 池田勇人

    ○池田國務大臣 御質問の御趣旨がわかりませんからもう一回……。
  140. 高田富之

    高田(富)委員 先ほどの御説明の中では、大臣がアメリカにおいでになつたところが大体わかつた。今までの決済じりで、外貨が日本政府の管理していた範囲外にもあつたというようなことで、大体その方面のが今度一億ドルでしたか、出されるようになつたというような御説明がありました。今後の軍の調弁関係の受取は、その方の勘定からドルで支拂つて行くというような御説明であつたように記憶しておるわけであります。そうとすれば、これはなおこの後も、今言われた一億ドル以外にも、そういう方法でまたできるものであるかどうか。現にそれがもしそれきりのものであるとすれば、その後どういうふうになるか。この点御説明願いたいと思います。
  141. 池田勇人

    ○池田國務大臣 一億ドルとかいう言葉は私は使つたことがありません。それは終戰後の輸出超過によつて、だんだん外資が日本政府所有のものがふえて参りました。従いまして政府貿易が始まつた場合、五千七百万ドルという運転資金もだんだんふえて参りました。そしてまた輸出も相当伸びておりますから、その伸びた金を有効に使おう、こういうことを申し上げたのでありまして、金高は言つておりません。一億ドルということは、質問者が外貨予算を一億ドルふやしてやるのじやないか、こういうお話だつたのでありますが、これは一億ドルかどうかわからぬ。明日閣僚審議会があつて外貨予算の問題が審議されるから、そのときの数字を見なければわかりません、こう答えたのであります。そしてその外貨予算のほかに日本政府の外資はどれだけあるか。これはただいま申し上げるわけには行きません。それから朝鮮関係で八軍の物資調達によつて金の支拂いはドル資金で拂われます。ドル資金は外国為替銀行を通じまして、外国為替管理特別会計に集まつて参ります。そこで外国為替管理特別会計がこれを円にして民間支拂う、こういうことになるわけであります。
  142. 高田富之

    高田(富)委員 そうすると将来はずつとこの関係で長引きまして、そういう関係の外貨の取得が相当増大する見通しであるが、その結果インフレになるというような御説明がありました。それを今度はインフレを抑止するために輸入をその外貨でやる。そしてそれを放出するというようなお話でありましたが、その場合にはたして自由にその外貨で入れたものを民間にどんどん出して、資金を吸收するというようなことが、こちらの自由に計画通りうまく行くとはちよつと考えられないのであります。ことにこの場合に入つて来るものが、いろいろな特殊な物資が入つて来るということになつて、多くの場合それを保管しておかなければならないというふうな性質のものが、ふえるのではないかという危險性も考えられるわけなのですが、その点確実にそういうふうなことで、インフレを輸入の方法で抑止できるという確かな見通しと、自信をもつておられるのかどうか。
  143. 池田勇人

    ○池田國務大臣 どうも御質問趣旨がわからないのであります。非常に悪い面ばかりを想像して御質問なさつておりますが、ドル資金が入つて来ますほど物が出て参ります。このドル資金を物にかえて日本経済の円滑なる運営、そうして日本経済の根底を強固なものにする、こういう考えで進んでおるのであります。私は少くともそれが最もよいと考えております。
  144. 高田富之

    高田(富)委員 はつきりと貿易の関係なつて、外貨を獲得して、それから輸入するということになれば、一応そういうことになると思いますが、他面非常にやはり急の場合でありますので、どこでどういうふうな調弁方法をとられておるかということも、なかなかつかみにくい面があるのではないかと思います。たとえば電通なら電通の関係などでも、やはり緊急の必要に応じて相当長距離の電話などを使うというようなことで、協力する場合も相当あるでありましよう。あるいはまた運輸の関係などは、むろんそういうような需要に応ずる輸送などが相当あるのではないか。現にあると思いますが、そういうようなものにつきましては、その決済はどういうふうになつておりますか。また現在相当程度にのぼつておるように想像されますが、大蔵省ではどの程度につかんでおりますか。
  145. 池田勇人

    ○池田國務大臣 これは各省でやりまして、第八軍の要求によりましてやつた分につきましては、別にドルで決済するようにいたしております。
  146. 小山長規

    小山委員 二点ばかり追加してお伺いしておきたいのは、中小企業金融についてであります。昨日偶然のことで聞きましたところによりますと、この国民金融公庫の資金がすでに枯渇してしまつて、八月でなくなつてしまうおそれがある。それでこれに対して預金部からでありましたか三十億ばかり金を借りたいという話が進んでおるそうでありますが、そういたしますと補正予算の問題が起る。この補正予算は組まないということを、何か閣議でおきめになつたようなことを、新聞で読んでおるのでありますけれども、このほかにまた輸出金融公庫の問題が出て参りますと、これまた補正予算の問題が出て来るが、はたしこの補正予算を出さないということは、閣議できまつておるのでありますか。それともこういう問題が起れば、この問題に関する限りは補正予算を組んでよろしいとお考えになつておりますか。
  147. 池田勇人

    ○池田國務大臣 補正予算は組まないということは閣議できまつておりません。
  148. 小山長規

    小山委員 それでは国民金融公庫の資金の問題等については、特別に御考慮願いたいと思うのであります。  その次はこれは明日の審議ちよつと関係しますので、大臣の心構えを伺つておきたいのでありますが、近ごろ納税について、徴税官の態度というものが非常にきびしいのであります。それでインフレの安定期に向つて、インフレ中の税を相当とつておられる。それはその当時の所得の状態としては適正な税であつたのかもしれませんが、現在の状態においては非常にそれは納税資金その他においても困る、あるいは再生産の資金すら奪われるという状態なつておりますときに、徴観官は、あえて私は法を逸脱しておるとは言わないのでありますが、法で許される最高限度をとろうとしておる傾向があると思うのであります。それで大臣としてのお考えとしては、産業の育成ということと徴税ということと、どういうふうな点で調和しようとお考えになつでおりますか。ごく一般的なことでけつこうなのでありますが、お考えを伺つておきまして、明日の審議に備えておきたいと思うのであります。
  149. 池田勇人

    ○池田國務大臣 産業の育成と徴税の問題は、これは税法の根本の問題であるのであります。先ほども鶏を殺しては卵がとれない。まことにごもつともなお説で、私もとにかく税法は産業政策ともマツチするようにしてやらなければならぬ。これは税の根本原則だと思います。ただ具体的の問題で個々の場合に産業を育成するからといつて、個々の人の税金をどうこうするということは、これは公平の原則に反します。これは公平の原則を保ちながら、産業をつぶさないようにして行く。こういうことで行くよりほかないと思います。
  150. 田中織之進

    田中(織)委員 もう一点だけ、先ほどちよつとお伺いしたのですが、お答えがなかつたようであります。これは朝鮮景気、朝鮮相場と言つておるのでありますが、最近の株式市場の活況の問題については、これは私らの立場から見ましても、必ずしもこれは過当投機というふうに見ておらないのであります。あるいは実際以上に下げ過ぎておつたものの一つのもどしであるとも思います。従来非常に低かつただけに、現在総体的に高いような感じを持つておるのでありますが、これが今後どう伸びて行くかということよつては、いわゆる過当投機抑制の見地から対策も考えなければならぬと思うのでありますが、現在の株式相場、株式市場の問題について大蔵大臣としてはどういうふうにお考えになつておられるか。このままでわれわれと同じように見ておつてよいものとお考えになつておられるか。このままでわれわれと同じように見ておつてよいものとお考えになつておるのかどうか。それから同時に、一般の金融問題と証券金融の問題とは別個の立場にありますけれども、こういうふうに株式市場が活況を呈して参りますと、結局一般大衆投資家と申しますか、そういうような人たちを保護する見地から、やはり証券金融の面についても特別の配慮をしなければ、下手をいたしますと、株価が上つたことに飛びついた大衆投資家が、結局ばかを見るような結果に相なると思うのであります。証券金融の問題については先国会にもいろいろ論議せられたのでありますが、最近の株式市場の活況等の関係において、大蔵省として何かお考えになつておるかどうか、この二点についてお伺いいたしたいと思います。
  151. 池田勇人

    ○池田國務大臣 最近十日間取引が非常な活況を呈しました。平均株価十七、八円ほど上つております。しかし一昨日の九百万株を境にいたしまして昨日から落ちております。きよう午後は知りませんが、前場も二、三円ないし十五、六円落ちております。まあこれらはお話の通り、一時非常に不況であつた、安過ぎた分の訂正くらいに考えております。朝鮮事変の関係もありましようが、これはアメリカとは反対の方向をとつております。アメリカはかなり株は暴落いたしております。日本は暴騰といつてもいいくらいであります。何といつても六百万株とか九百万株の取引も非常に値段が下つておりまして、半分以下になつておりますから、動く金としてはそう大したものではない。一昨々日くらいまでは一般大衆は来ておりません。一昨日くらいから一般大衆は出かけたようであります。きのうきようは落ちておりますが、私は健全な歩みをとつて行くのじやないかと思います。こういう問題でじたばたと申しますか、あまりやつたりすることはいかぬので、政府としてはそれが清算取引だとか過当取引にならないように注意をいたしますが、積極的にこの取引高の増加に対して行動をとるということは考えておりません。  次に証券金融の問題でありますが、株価対策というものは、私はほかの機会にも申し上げましたように、政府がどうこう出るものではない。ただいま考えておりますことは、取引員の数が非常に多く、最近取引の不況、株価低落によつて、かなり痛手をこうむつておるものもなきにしもあらずでありますので、この取引員の資産内容をよくするように勧奨して行きたいと思います。赤字のあるものにつきましては、赤字を減資で埋めさせるとか、また経営の見通しのつかないものにつきましては、やめてもらう、あるいは合同する、こういうふうに取引員の資産内容をよくし、自由に活動ができるような方向に持つて行くために、取引員の金融の道を考える、こういうふうに取引の強化に、今手を染めております。近いうちに何とか解決すると思うのでありますが、今度の取引の増加によりまして、相当の取引がありまして、手数料もかなり入つたと思います。これから少し株価が上つて来れば、取引員もだんだん明るくなつて来るのではないかと思つております。
  152. 川野芳滿

    ○川野委員 たいへん時間が遅くなりましたので、日を改めて御質問してもけつこうでありますが、また大臣の、御出席をお願いすることはかえつて御迷惑かと考えますので、この際簡單にお尋ね申し上げたいと存じます。今国会に酒類値下げの陳情がたくさん出ておるわけであります。さらに先日何百万の国民から、酒類値下げの陳情書が国会に提出されたわけであります。従いまして今日酒類値下げという問題は、天下の一大問題と相なつておるわけであります。先日本会議における大蔵大臣の演説を聞いたのでありますか、次の通常国会においては酒類値下げを実現する——とまではおつしやらなかつたのでございますが、考慮するような御答弁を実は承つたのであります。しかし現在の実情をつぶさに調べてみますと、実は消費者側におきましては、昔は酒一升というのは大体米三升をもつて定められておつたのでございますが、今日は米一斗五升出さなければ酒一升が買えないという実情でございます。従つて密造酒に依存するという現状になつておるのであります。酒類の値段からいたしましてこれは当然の帰結であると考えます。そこで消費者の側におきましては、高い政府の酒を飲むよりも、密造酒を飲んで暮しておる。こういう事実が今後さらに数を増して参るものと考えます。しかし一面酒をつくつております酒屋の実情を調べてみますと、ほとんど酒は売れないために、掛売りをやつておる。従いまして收支の面に現われておる点から見ますと、ある程度酒は売れておることになつておりますが、内容はただいま申しましたようにほとんど掛売りをやつておる。従つて税金は酒屋が立てかえておる。こういうのが現在の実情であります。そこでこういう状態が長く続くことになりますと、当然酒造家の中には破綻に瀕し、倒産するところの業者が出て参る、こういう結論に相なつて参るかと考えます。さらに現在の酒類卸機関であります甲機関、あるいは乙機関の内容を調査いたしますと、ある機関のごときは数億円の借金をいたしまして、その借金によつて現在酒の配給をやつておる。こういうのが現在の実情でございます。さらに今日のごとく甲機関、乙機関が競うて掛売りをやつておるこの実情が続きますならば、おそらく甲機関も乙機関もこれまた破産に瀕するものが出て参ると考えるわけであります。そこで先般大臣が答弁されましたように、次の通常国会、来年四月以降より値下げされるということになつて参りますと、相当数の酒造業者の破綻に瀕する者が出て参ると考えます。承りますとシヤウプ氏が今月の末に参られるということでありますので、シヤウプ氏が参られましたならば、この酒類の値上げはシヤウプ勧告によつて政府も実行されたものである、こう私は考えますので、シヤウプ氏に御相談に相なりまして、次の臨時国会に酒税の値下げをやられる決心はないか、その点をひとつ伺つてみたいと思います。
  153. 池田勇人

    ○池田國務大臣 酒類の売れ行きは、各酒類によりまして非常に異なつております。ビールは非常にいい。しようちゆうは一時よろしゆうございましたが、最近ちよつと頭打ちのかつこうにあつている。清配はまあ順調に行きつつあつたのでありますが、これは夏場で売れ行き不振でございます。従つてお話の通りに、強く減税の要望もあります。また業者の方でも掛売りをやる。それからまた甲機関、乙機関の方でも、昨年は非常によかつたものですから、その甘い夢をまだ忘れきらずに、経費の節約をはかつていない。そして今申しました掛売りをやる。こういう事情は私も十分知つております。従いまして酒税確保の上から、先般も国税庁を通じまして、配造家につとめて掛売りをするな、そのための金融はできるだけ主税局と銀行と相談の上見る、しばらく掛売りはしないように指導しろということを、実は申しているのであります。こういう関係で何とか当座を越えたいと思います。  減税の問題でございますが、私は先議本会議で申し上げましたように、まず所得税を減税し、次に酒税の方に手を伸ばして行きたいと考えております。これは来年度の問題で、今年度から酒造税を下げるということは、なかなか困難な問題ではないかと思います。なるべく早い機会に少しでも下げたいという気持はありますが、それよりも、やはり密造の取締りをもう少し嚴重にやるべきじやないかという考えを持つております。密造の取締りをやると同時に、酒屋さんは掛売りなどをしないように、しばらく減税の機会まで待つてもらいたい。それでは本年度減税をやるかといいますと、先ほど申しましたように、かなり困難な状況ではないかと思います。減税すれば、それだけ酒がたくさん売れるというのも、一つのりくつですが、そうばかり行かない場合もありますので、根本は、密造を取締るのが第一だと考えております。
  154. 川野芳滿

    ○川野委員 ただいま大臣の答弁を承りまして、非常に私悲観いたした一人であります。と申しますことは、ただいまの御答弁によりますと、金融の都合をつけるならば掛売りはまるであろう、こういうような安易なお考えのようであります。しかし現在の掛売りは、品が売れないから掛売りをするのである。こういう実情でございます。ゆえに品が売れないという理由は、どういう理由か。この点をひとつ深く掘り下げて御検討が願いたい。その一つの理由は、先ほど来私が申しました、酒類の値段が高い、こういう原因でございますので、その原因を早くなくしていただきたい。さらに第二の原因は、ただいま御説明になりました密造の取締りでございます。しかし政府は密造を取締る、取締るというお話を承るのでございますが、取締りにつきましては相当の予算がいります。昭和二十四年度の密造の取締費と二十五年度の密造取締費は、予算の面においては同額であります。そして昭和二十四年の酒税額は六百五十億でございましたが、本年は千三十億という莫大な酒税を確保しなければならない。こういう建前なつておりますので、従いまして密造取締まりというこの言葉で行くならば、当然予算が相当に増額の御計上を見なければならない。こういう結論に相なるかと考えるのでございます。予算を増さずして取締る、取締るとおつしやつても、実際面においては実行不可能である。こういうように私は考えられると存じますので、この点につきまして重ねて大臣の御答弁を願いたいと存じます。  なお実は今年の酒造税は千三十億が予定されております。しかし私の調査いたしましたところによりますと、おそらく本年度は配造税が千二、三百億は、現在のままで行くならば確保できるのではなかろうか、こういう見通しを実はいたしております。従いまして二、三百億は、政府の予定よりも財源をたくさん確保できる、こういう見通しでございますので、これらの点とにらみ合せまして、さらに減税の点において御検討される御意思はないかどうか、この点もお尋ね申し上げたいと存じます。
  155. 池田勇人

    ○池田國務大臣 酒造税を引下げることに、反対するものではございません。今の財政状況から申し上げまして、本年度中に酒造税を引下げることにつきましては、なかなか困難な点があるということを申し上げたのであります。  御質問の第二点の、密造の取締費をふやしていないから、取締りができない、こういうお話でございますが、税の実際から申しますと、私は人のやりくりによつて相当の取締りができるのではないか、予算の問題よりも、士気の問題だと思います。これは御承知の通りに、かなり危險を伴う場合があるのであります。そこでえてして引込み思案になりがちのものでありますが、これはいろいろな手を使つてやれば相当効果があることは、最近名古屋市におきまして一齊取締りをやつて、それがすぐ酒屋の売れ行きに響いている。こういう実例があるのでございます。これは人のやりくりをして、できるだけ取締りを強化すれば、とにかく取締りをやれば、それの効果はてきめんに現われて来るものだということは、実例が示しているわけであります。これを十分励行して行きたいと思います。  次に今年度の千三十億の予算が今の通りで行けば、千三百億ぐらい出るのじやないかというお話でございますが、私はそこが問題だと思います。税金がそういうふうにとれそうだといつても、お話の通りに、なかなか清酒の売れ行きが思わしくございません。しようちゆうも四百五十円と申しましても、密造が二百五十円ぐらいで売られている状態で、思うように行かない。そこであまり売りあせりをしなさんな、こういう意味で、金を借りて仕込んでいる製酒家については、銀行の取立ても相当急なのでありますが、とにかく倉にあるのだから、一々の売れ行き不振の状況を考えて取立てをしないように、そして来酒造年度の仕込み資金をただいま心配しているのであります。この問題につていもできるだけ金融を考える、こういうことで行つているのであります。たくさん売れて、千三百億ぐらい入ると申しましても、私は今の状況ではなかなか困難でないかという気持を持つているのであります。これは予算なんの問題は、酒が今売れ行きが悪いからといつて、所得税をほうつておいて、酒だけ下げるというここには、なかなか実際問題として行きにくい。物品税の方にいたしましても、五割とか六割とがいう税率をもつと下げろという、かなり強い要望もあります。これは減税問題は、全体と関連して考えてやらなければならぬ問題でありますから、なるべく早く減税したいということは、私も年来の主張でございます。減税には努力いたしますけれども、今年度においてどれだけ減税するかということは、ただいまのところではちよつと申し上げかねるのであります。実情を見まして、とにかくただいまのところ、密造の取締りと同時に、酒造家において売りあせることをしないように、指導して行くよりほかにないと考えております。
  156. 川野芳滿

    ○川野委員 ただいまの大臣の答弁では、密造取締りは人員をやりくりして効果を上げたいということでありましたが、実は大臣はあまり下情に御通じないようであります。現在密造取締りには税務官吏だけではできないのであります。相当数の警察官を使わなければ、密造取締りはできないのであります。こういう現状でありますので予算がいる。こういう結論になつて来るのであります。大臣は下情に通じておらないので、よく国税庁あたりを調査していただきたいのであります。現在の予算では密造取締りは絶対不可能である、こういうことを国税庁の各係も申し、さらに地方税務署等においても、現在の予算では不可能であるから、酒造業者に相当額の寄附を要求しておるような実情でございますので、これらの点ももう少し御調査いただきまして、実際面に即した政治をやつていただくように私は切望いたします。さらに先般酒税局長にも質問いたしたのでありますが、今年はあるいは二、三百億の予算超過になるであろう、こういう見通しの答弁を実は承つたのでありますが、一日も早く国民の輿論が現実できるように希望申し上げたいのであります。
  157. 池田勇人

    ○池田國務大臣 川野さんに申しますが、密造取締りについて、業者から寄附を求めるということは絶対にないのであります。川野さんも酒造家として御関係でありますが、私はそういうことはすべきものではないと考えております。ほかの方面にも誤解があるようですから、この機会に寄附はさせていないことを申し上げておきます。密造取締りに警官あるいはMPの援助を受けるということも知つております。しかし制度上警察官に応援を求めるからといつて、予算を出すことはいかぬのでありまして、今後もそういう予算はとれないのであります。これは繰返して申し上げますが、特別に人員をふやせば別でありますが、私の心構えとしては、やりくりでかなりの効果を上げ得ると思つておるのであります。少い人員でやりくりしまして、今後密造取締りをやらして行きたいと考えております。
  158. 川野芳滿

    ○川野委員 実はただいまの大臣の御答弁を承りまして、非常に心強く感じたのであります。どうか大臣名をもつて地方税務署等に、絶対寄附を受くべからずという通牒を出していただきたいと思います。しからざれば昨年のごとく、相当額の寄附強要というわけではありませんが、ある程度のなぞをかけられまして、業者は泣く泣く出しておるこういうことが行われておりますので、どうかそういう通牒を出していただきたいと存じます。さらに実際問題といたしまして、警察官が密造取締りの応援に出るわけであります。警察官がその報酬を求めるというわけではございませんが、ある時期においては慰労会をやつておる。こういう実情にかんがみまして、私は実情を披瀝いたしたのであります。大臣の御答弁の通り事務のやりくり等で上げ得られるならば、私は何をか言わんやでございます。どうか密造取締りは積極的にやつていただいて、効果の上るようなことをやつていただきたい。こういうことを希望申し上げまして、私の御質問を終ります。
  159. 夏堀源三郎

    夏堀委員長 本日はこれをもつて散会いたします。     午後五時五分散会