○池田國務大臣 皆様より財政金融の今の状況等につきまして御要求がございましたので、最近の状況を申し上げまして御参考に資したいと思うのであります。
まず第一に財政の状況でありますが、さきの国会で御
審議願いました予算は、その
趣旨に基きまして着々実行いたしております。公共事業費の
支出にいたしましても、歳出面全般にわた
つて大体順調なる経過をたど
つて行
つております。ただ問題は地方税が成立しなか
つたために、国と地方との
関係しております公共事業費の
支出が少し遅れぎみでございます。これは先ほど申しましたように、金詰まりの一つの原因をなしておると思うのでございます。
なお予算上重要な地位を占めておりまする補給金の状況は、外国の小麦あるいは米の値段がある
程度予算より下
つて参りました
関係上、このままで推移いたしますと相当の不用額が出るのではないかと思
つております。輸入の状況は、大体第一・四半期は三百十四万トンの四分の一入り、輸入の状況は予定
通りに行
つております。従いまして今年度の見込みといたしましては、歳出は補給金その他不用額はある
程度出ると思いまするが、又一方歳入の面におきましては、租税徴收状況が、かなり心配であるのであります。われわれとしては予算
通り收入いたしたいと鋭意努力をいたしております。法人税とかあるいは酒造税につきましては、予想以上の收入を上げておりまするが、申告納税の
部分につきましては、最近の状況を見ますと少し困難な点があるのであります。一般の市況を調査してみますと、営業面では昨年に比べまして、大体一割
程度の売上げの増加を示しておるようであります。そういう統計から見ますと好況のようでありますが、やはり事業分量がふえ、ストツクがふえたために金には困
つておるようであります。しかし收支計算は幾分初めよりいいというような報告を受けております。いずれにしても今の
状態から申しますると、他と比べまして申告納税の方はなかなか徴收困難ではないか。先般も問題になりました滯納の千二百数十億円につきましては、適時適当な
方法で滯納の
整理をはか
つておるのであります。これがどのくらい入
つて来るかによりまして、今年度の歳入にも影響するのでありますが、金詰まりの現況等にかんがみまして、あまりむりはいたしたくない。二十五年度の予算は、今申し上げましたような状況で、大した心配もなく行くのではないかというふうに思
つております。
二十六年度の予算につきまして、先般閣議で編成方針を決定いたしまして、今月一ぱいに各省から要求が出そろうことに相
なつております。八月、九月とわれわれのところで調査いたしまして、十月には
関係方面と折衝いたし、今の考えでは本年も同様十五箇月予算をつく
つて、来年度の予算編成と同時に、本年度におきまして補正する必要がある分を考える十五箇月予算をつくり、十二月初めにおいて国会の御
審議を願うという考えでおるのであります。大体来年度の
経費といたしましては、
債務償還費がよほど減
つて参ります。御承知のように
一般会計においては、今年七百数十億円や
つております。見返り資金の分は五百億で、前年度の剩余金が二百六億円、その他が五十六億円であります。二十四年度の剩余金の見込みはまだ
清算中でございますが、大体百八、九十億ぐらい剩余金が出るのではないかと思います。百八十億出るといたしますと、九十億は一般財源として使用できます。残りの九十億は財政法に基くものでありますから、二十六年度において
債務償還をいたしますが、本年のような
一般会計からする特別の
債務償還は、来年はしないということになます。そしてまた
価格補給金は本年度に九百億円を計上しておりましたが、来年度におきましては、肥料、鉄綱補給金を廃しますので、半分ぐらいになると思います。それから米の値段をどうするかによりましてよほど違いますが、今後きめらるべき本年の新しい麦類は、大体国際
価格にさや寄せて参ります。今小麦の分は小麦協定に入りますと、六十八ドルないし六十九ドルでありますが、小麦はこの
金額程度に
なつて来るのであります。ただ米の方は御承知の
通り四千二百五十円と申しますと、七十五、六ドルから八十ドル足らず、朝鮮米を輸入いたしますと、百四十三ドル、ビルマ、シヤム米でも百二十五ドル、こういうふうで国際物価に比べまして非常に安い。これをいかなる
程度にするかということによりまして、輸入補給金が動いて来るのであります。相当米の値が上
つて来るということになりますと、九百億円の
価格補給金の今年度の計上額が半分以下になる、あるいは三分の一ぐらいになるのではないか、こういうふうな計算をしておるのであります。そうすると
価格補給金で五、六百億少くなります。
債務償還をやめるということになりますると、千億余りの財源が出て来るわけであります。私はこれを七百億円ぐらい減税に充て、その他の分を公務員給與の引上げ、あるいは社会政策的施設に使おうという計画を立ててお
つたのでありますが、今回
国家警察予備隊をつくる、あるいは海上保安庁を完備するということになりますると、この金が私の予定しております一千億円余りの上に入り込んで来る。そうすると給與の引上げあるいは減税に、ある
程度の影響が来るのではないかという気持を持
つておりまするが、大体といたしましては、本年の六千六百億円の歳出がかなり減
つて、千億円余りいわゆる財政
支出として減
つて来るのではないかという見通しを持
つておるのであります。
以上が大体でありますが、国庫の概況について申し上げますと、国庫の状況は先ほどお話いたしました
通り、一、三月と四、六月の分は三百億円
程度の上げ超に
なつておりますが、本年度の分といたしましては十億円ばかり散布超過に
なつております。七月から九月の分、第二・四半期につきましては、大体とんとんのつもりでおります、十月かに十二月の分は供米代金の
支拂い、また年末にかけての資金需要のために、相当の散布超過になることを予定しております。その散布超過に
なつた第三・四半期の分は、第四・四半期の税の徴收その他で埋合せをする、こういうことで行
つております。国庫にも大体百億余りの当座預金を持ち、別に百五十億円の各銀行への指定預金をいたしております。この指定預金も状況によりましては引上げてもいいのでありまするが、ただいまのところでは、銀行も相当金詰まりのようでございますので、今しばらくやはり指定預金のまま続けて行く。それでも国庫の方は相当のやり繰りがついて参ります。見返り資金につきましても、今年度できるだけ適時に、適当な金を出すように努力いたしておりまするが、御承知の
通りこれは一々
関係方面の許可がなければできないことでありますので、ただいまのところあまり出方が芳ばしくございません。今年度になりまして大体二百三十六億円ぐらい出ておりましよう。その内訳は通信
関係へ四十億円、全体の予算百二十億円の分が四十億円出ております。それから国有林野の方に、これは全体三十億のものが六億円ばかり出ておると思います。それから私企業の方には、御承知の
通り四つの金融機関のいわゆる優先株式引受けというので、五十二億円出ております。その内訳は勧銀が十億、興銀が十億、農林中金が二十二億、それから商工中金、北海道拓殖銀行が十億、合計五十二億円がただいまのところ出ております。それから
船舶の方へ五億余り出ております。中小企業に一、三月の分と四、六月の分として三億円出ております。従いまして大体六十億が私企業の方に出ております。なおまた進駐軍住宅を建てまするあの五十億円前後の
金額のうち、ただいま二十六億円ほど出ております。結局使い得る金はただいまのところ四百八十億円ぐらいございましよう。これを遊ばしておくといえば遊ばしておく、動かしておるといえば動かしておりますが、食糧証券をほとんど引受けて、食糧証券の方にまわしておる状況であります。
従つて私としては四百八十億円の見返り資金を置いておくということは、金詰まりを激化するものであるという
考え方のもとに、早急にこれを出そうということで折衝を重ねております。私としては大体二百億円
程度常にあればいいじやないか、二、三百億円はこの際使いたいという強い希望を申し出ておりますが、なかなかそういうふうには至
つておりません。しかしこれがいわゆる引上げ超過、金詰まりの大きなフアクターをなしておりますので、極力この方面の金を出すようにいたしたいと努力しておるのであります。
この機会に、この見返り資金を使う
方法として、私は輸出金融公庫というものを設立して、外国の者に信用を與え、日本の品物を買
つてもらう、こういう計画を立てておるのであります。これもいろいろ議論があるのでありまするが、私はそうりつぱなものでなくても、早くスタートしなければいかぬという
考え方のもとに、毎日のように向うに人を派して交渉をしておりまして、本国会にぜひとも出したいという努力を重ねておるのであります。電気
関係の方、あるいは造船
関係の方へ出したいという希望を申し述べておるのでありますが、電気の再編成の問題等があるためかどうかわかりませんが、こういうものになかなか早急に出すという段取りに至
つておりません。まあ、輸出金融公庫よりひとつやろうというので進んでおります。
債務償還の問題につきましては、これも昨日だ
つたか申し上げたかと思うのでありますが、大体ただいまのところ百七十億ばかり四、六の間に償還いたしました。償還先は農地証券とか電話公債、こういうものに七十億円ばかり償還しております。金融
関係の方へ八十億ばかり償還いたしております。これは日本銀行をして国債を買上げさせて、日本銀行で扱
つておるわけであります。買い上げるにつきましても、三分五厘の国債もあるし、四分の国債、五分の国債もあります。これはわれわれの方といたしましては、高い利率のものから早く償還して行くのが本意でありますけれども、やはり銀行側から見れば、安い利率の三分五厘というのが
金利水準に乘らないから、それから先に償還してくれという希望もありまするが、現在高に按分して各利率の分を適当に償還する。そうして八十億円の償還は、これはあとでお話申し上げますが、一般貸付あるいは金融債の引受けにしておるようです。今の百七十億円の償還は、
一般会計から
債務償還しておるのであります。今後は見返り資金にそういうのがありますから、見返り資金から償還しようという計画で行
つておりますが、まだオーケーが参
つておりません。
一般の資本市場の問題でございまするが、昨年は七百七、八十億の株式の発行がございました。そのために株もたれがしたというので、今年になりましてから、株式の発行は非常に困難で、すなわち相当の会社が拂込みをはるかに割
つておるという
状態で、株式の発行は非常に困難である。一、三月の間におきましては、月に二十億
程度の増資株の発行だ
つたんであります。本年度に至りましても、大体四、五月が三十億円余りの株式の発行に
なつておるのであります。株式の発行にかわりまするために、会社の長期資金獲得の
方法として、社債の発行がかなり円滑に行われておりまして、株式発行の五割増あるいは月によ
つて倍額ぐらいの約五、六十億の社債の発行が見られるようになりました。非常にきゆうくつではございますが、やはり除々に資本市場の方も活況を呈して来つつあるのであります。御承知の
通り、最近株価は相当変動がございまして、きのうは下りました。またきようの前場などは下
つておりますが、おとといまでは——七月三日が最近の最低の相場でございまして、東京の取引所に上場しております株の平均は六十二円何ぼであ
つたのが、おとといは七十九円八十九銭、八十円近くまで、二割五分から三割
程度の上昇を見たのでありますが、きのうと、きようの前場は
ちよつと下
つて四、五円から大ものについては二十円くらいの下りがあるのであります。過去十日間相当の取引が行われまして、最高九百万株というレコードをつく
つたりしておりますので、取引員の
手元は少しよく
なつた。しかし私はこの証券対策といたしましては、まず取引員の
資産内容をよくするということが第一であるという方針のもとに、取引員につきまして
資産の再検制度をやるように、勧奬いたしておるのであります。本国会におきまして、証券業者のいわゆる信用を高める手段として、今までの届出制度を少し改正しでみたいという考えで、今法案を練
つておりますが、いずれ不日御
審議願うことと思うのであります。大体株式市場も底をついたようでございますから、今度は除々に上りぎみに
なつて来るのではないかと考えております。
次に一般市中の金融につきまして申し上げてみたいと思います。御承知の
通りに、通貨は昨年来横ばいの状況を来しておるのであります。一昨日は三千八十億
程度にとどま
つておるのであります。月末にかけましては少し増加いたしますので、本月末は多分三千百五十億、あるいは三千二百億近く出るのではないかという気がいたしておりますが、大体横ばいの状況を呈しておるのであります。金詰りという声を聞くのでありまするが、最近一週間の状況では、金詰まりも一時よりはかなり緩和しまして、東京のコール市場は六、七十億円のコールがある
状態で、日歩も下りまして一銭六、七厘に
なつております。先月の初めころから今月にかけまして、かなり金詰まりの声が大きか
つたのは、これはいろいろな事情が一度に来たからであります。すなわち、
政府の引上げ超過というのもございましたし、また預金が五月、六月は相当ふえるのが常態であります。もちろん、四月は三月の決算で年度決済があるので、ある
程度実質的にふえましても、形式的には預金はいつも減るのでありますが、五月は、昨年は一般の銀行の預金増加が二百数十億円あり、毎年ふえるからというので、銀行はそれを予定して貸出しをや
つた。しかるところ二百七、八十億円くらいしか預金がふえない。二、三百億円預金がふえる予定であ
つたところが、預金が入
つて来ない。それで銀行が非常な金詰まりの
状態を惹起しました。そうして日本銀行にかけ込んだわけでございますが、日本銀行もその急に応ずるために相当貸出しをやりました。六月におきましては、最高千四百六十億円ばかりであ
つたのであります。千四百六十億円の日本銀行貸出しと申しますと、これはいまだか
つて例のない貸出し増加であります。昨年の六月は七百九十億円
程度の貸出しだ
つたのが、ほとんど倍近くの千四百六十億、こう
なつたものですから、日本銀行があまり貸し過ぎた、こういう一般の声もあ
つたのでしよう。またいろいろなところからそういう声が入
つて来たのでしようが、そこで日銀はある
程度引締めた方がいいのじやないかという気持を起したと思うのであります。通牒が出たとかどうとかいいますが、一万田総裁としてはそう引締める気持はなか
つたのでありますが、外部には非常に引締めたようなかつこうに
なつております。その現われがいわゆる工業手形の再割引停止、こういうことに
なつたり、あるいは貿易手形の割引を押える、こういうふうなことに
なつて現われたのでありますが、原因は預金がふえなか
つたのに、貸出しは予定
通りや
つたというところで、日銀の貸出しがふえたのであります。私は六月の銀行大会で申し上げましたように、日銀の貸出しがふえる、こう申しましても、
政府の方に引上げ超過によ
つて相当の金があるのだから、それを埋め合すのに日銀の貸出しがふえても何ら心配ない。千四百億をずつと続けるというのではいけないけれども、
政府が散布超過した。あるいは見返り資金を出した。見返り資金を活用するということになりますれば、それが日銀へ返るのであるから、日銀の貸出しが増加した分は
政府が預金として持
つておるのだから、何ら心配はない。千四百億円の貸出しがあ
つてもいいじやないか。通貨が三千億円になり、日銀の貸出しが千四百億に
なつても何ら異常な
状態ではない。日本としては今までの
状態に比べて異常だけれども、外国その他の状況を見ますと、アメリカの連邦準備銀行の状況は、通貨に対しましては大体七〇%余りの貸出しをや
つておる。英蘭銀行にしましても、フランス銀行にしましても、通貨に対して四割
程度以上の貸出しがある。三千億円の通貨に対しまして、千四百億円ということになれば、何もそう大して心配する必要はないのだ、そう引締めるべきではないというので、私は日銀総裁にも意見を申し述べまして、協力さしておるのであります。ただいまのところ、日銀の貸出しは千三百四、五十億であ
つたと思いまするが、とにかく財政と金融とは一体をなして、そうして経済の運営をや
つて行かなければなりません。貸出しが多く
なつた原因が
はつきりわか
つておるのだから、心配はないという方向でや
つておるのであります。
貿易手形なども非常に困
つたという話を聞きまして、さつそく調べましたところ、いろいろな事情がある。ある特定の銀行が預金は少くして、日本銀行からうんと借り出し、そうして貿易手形は自分のところでやるのだという態勢をとる。そうすると日銀では、普通の銀行—昔の特別銀行はないのでございますから、特定の銀行が為替銀行專門で、しかも自分に資金がないのに、日本銀行から借りて行
つて、自分のところだけ貿易手形の割引をしようということはあまりよくない。各銀行がやるべきであるというような意見がある。そして日本銀行が貸出しを少く押えますと、その銀行は貿易手形の割引を停止する。そうすると貿易手形の所有者は、他のB銀行なりC銀行なりへ持
つて行く。そうすると銀行Aで割引を断わられたという悪い
條件がありますから、B銀行、C銀行にも断わられる。通産省ではそういうものを全部合計いたしまして、貿易手形の六割とか七割しか割引ができないと言
つているが、一枚の手形が三つも四つもの銀行に行くからそういうことになる。よく実際に調べますと、大体八割余りは割引をいたしております。借りる方の会社を八十何社につき調査してみましたが、そのうち六十六社はほとんどフリーに貿易手形を割引いておる。十会社くらいは信用
状態がいかがわしいので割引が思うように行かない。割引いてもら
つておるけれども、全部割引いてもら
つてないような状況です。あと十社くらいが割引が不可能、こういう状況なのであります。何と申しましても、一応輸出はあるのですが、やはりその裏を見るとあまりうまくないような輸出業者もありますし、信用
状態が非常によくないというようなものがありまして、八割余りしか割引いておりません。しかしこれは実際に取引が行われることが確実であり、輸出入ができるならば、貿易手形でありますから、とにかく融通するような方針で行
つているのであります。
工業手形の再割はただいま停止しておりますが、工業手形は全然だめだというのではない。担保手形としては相当優遇して貸し出しているのであります。今後金融の情勢を見まして、やはり工業手形に対してもできるだけのことはや
つて行きたいという考えでいるのであります。
金融問題で今最も大きい問題になるのは、預金部資金の百億円の一般金融機関への貸出し、あるいはさきに申し上げました百五十億円の
政府の指定預金、これもただいま引上げなければならぬ
状態に
なつているのでありますが、
政府の資金散布が遅れておりますので、
政府指定預金もしばらくそのままに置いて、金融の緩和に努めようとしているであります。
なお特殊の問題で
復興金融金庫の
回收状況が問題になるのでありますが、
復興金融金庫もただいまのところ八十億ばかり返
つております。予算は御承知の
通り本年度百八十億円取るのであります。この八十億円のうち三十億円は前年度からの繰越し分であります。また十八億円は農林中金から返
つている。通常の
回收のものは三十億
程度で、そう特に
回收を急いでいるというわけのものでもないのであります。
銀行の預金貸出しにつきましては、ただいま申し上げましたように、五月には八十億余りの預金の増加しかございませんでしたが、六月には百八十億二百億近くの銀行預金の増加がありました。農林
関係機関の預金は、やはり農村の不況を反映してか、思わしくございません。また農業協同組合のうちに預金の
支拂いを停止したところも、
ちよい
ちよいあるというようなことがあ
つたりして、農業
関係機関の預金は伸びておりません。ただ預金部の資金、郵便貯金は非常な伸びようであります。大体月に五十億
程度郵便貯金は伸びております。銀行の連中に言わせますと、御承知の
通り無記名預金なくしたり、あるいは税務署の方で預金調査に来たりするので、預金がふえない。郵便貯金をすれば税もかからないし、税務署も調べない、こういうので郵便貯金へ行くんだ、こういうことを言
つております。そういう原因もある
程度あるでしようが、銀行の預金もそう銀行家が言うように、非常に伸びが落ちたということでもないと思います。六月は二百億ふえた。今後も預金はだんだんふえて行くことと考えておりますが、貸出しの方も預金の増加と同様にだんだんふえて行くことになると思います。ただいま銀行の預金は、これは市中銀行だけでありますが、八千六百六十億くらいでありまして、貸出しは七千九百億、まあ八千億くらいで、預金に対しまして九十何パーセントの貸出しで、これはオーバー・ローンだという声が内外ともにあるのでありますが、しかし今日本では銀行が証券の方に金をまわそうと申しましても、国債はだんだん償還されるということで運用先がない。
従つてやはり預か
つた預金は貸し出さざるを得ない。そうして日本銀行はいまだか
つてない貸出しをしておる。それから銀行も内外ともにオーバー・ローンだと非難されるほど貸しておる。どこに金詰まりがあるのだ。こういうふうに貸し過ぎるほど、日本銀行も市中銀行もや
つておるというのでありますから、それではどこに金詰まりがあるのか。やはり日本の企業においては資本の蓄積が少い。どうしてもわれわれが努力して貯蓄してそれを運用しなければならぬ。一般の人は今までのインフレ時代には物をつくればもうかる、物を買い込んでおけばもうかるという観念でどんどん金をほしがるのですが、われわれとしては貸し出す金がない。八千六百億円の預金があ
つて、八千億円貸し出してオーバー・ローンと
なつている。それくらい銀行は貸し出しておる。日本銀行も去年の六月は相当多くて、七百九十億円かあ
つたのですが、普通ならば、去年の平均は貸出額は五百億くらいの平均だ
つたと思う。日本銀行も去年の倍くらい貸し出しておる。これは結局やはり日本における資金の蓄積が十分に行
つてないのでありまして、これはわれわれは一方においてできるだけ資金を蓄積して、また運用の万全を期して、経済再建に必要な方面に重点的に貸すということ以外に、切り拔ける道はないと思います。
しからば通貨は今の
状態で三千八十億でどうだという問題でありますが、昨年の七月は大体二千九百九十億くらであ
つたと思いますが、昨年よりは大体九十億
程度ふえておるのであります。物価はあまり上りませんが、生産もふえ、輸出が伸びて行
つておりますから、八十億円くらいふえるのは当然である。私どもとしてももう少しふえていいくらいである。五十億、百億くらいふえてもいいのではないかと思
つておりますが、なかなか思うように行かないけれども、自分の政策としてはできるだけ通貨も三千百億から二百億の現状を維持して行く。場合によ
つては三千四百億くらいにとどめるような考えのもとに進んでおります。
輸出の問題でありますが、四、五月ごろから相当輸出が伸びて参りまして、五月は六千六百万ドルで終戰後最高の記録を示したわけであります。今後におきましても私は相当輸出が伸びて行くのではないかと思う。ことに輸出金融金庫を設けまして、外国にクレジツトをやるということになりますと、相当伸びて行くように考えております。ことにアメリカの方では東南アジアの開発計画を立てておるようであります。輸出金融金庫の目的は、東南アジア開発計画に乘つか
つて行
つて、ドル資金と円資金とをも
つて東南アジアの諸民族の生活水準を上げ、輸入力をふやし、日本の経済発展に資しようという考えでおるのであります。なお輸出の問題につきましては朝鮮事変が起きまして、朝鮮の第八軍の需要物資が相当にあるのでありますが、この面に対しましては、向うが直接にドルを拂います。セメントを出しましてもセメント業者はドル資金をとる。そして今為替は集中制度をと
つておりますから、ドルの小切手を外国為替銀行にまわしまして、それから外国為替特別会計に入れまして、外貨の対価として円を受取ることになるのであります。そういう制度でやるのであります。朝鮮事変のために実質上相当輸出がふえると思いますが、そうしますとドル資金が入り、それが円にかわる。すると円の金がだぶつくということになりますので、インフレの危險性もなきにしもあらず。そういうことでありますから、私は必要の物資を早急に輸入して、
民間に輸入物資を拂い下げて、なるべく円資金を引上げ、そうして経済再建をして行く。朝鮮とのバーター貿易は六千万ドル
程度でありまして、主として米が大
部分、それから石炭、機械等がありますが、これらはとまりますが、それにもまして、国内での軍
関係物資調弁があるので、実質上輸出は増加する、こういうふうになると思います。
次に中小金融の問題でありまするが、一時新聞にも、日銀は別わく融資をやめたということが出ておりました。しかしやめてはおりません。ああいう新聞が出たけれども、やめたと思われては困るから、ただちに二億円ふやせということで、三十九億を四十一億円にしたのであります。別わく融資もだんだん拡張して参りました。それから見返り資金から出す三億円も、私はこの前の議会で五億円にふやすように言
つてお
つたのでありますが、なかなか解決がつきません。しかし努力を続けて、オーケーが来たら五億円なり十億円くらいにいたしたいと思
つております。今までの中小金融対策を続けますと、同時に、私は新しい制度として中小企業に対しまする貸出しについて、保証制度を全国的にしたらどうか。これはあるA銀行ならA銀行が貸しまして、それが
回收不能に
なつたならば、それの相当の
金額、七割五分とかいうくらいの分は保証する。保証料として一定の
金額、たとえば二%くらいを
金利に加算するわけである。こういうような制度を今設けようと思
つて、われわれとして案ができております。これまた今国会に出したいというので努力しておりますが、こつちの方は間に合うか間に合わないか、とにかく私どもとしてはできるだけの努力を今この方面に佛
つております。御承知の新しい金融機関をつくる、新しい銀行をつくるという問題は、十箇所くらい出ておりますが、今認可に
なつたのは盛岡の東北銀行一つだと思います。
考え方としてはできるだけ適当なものであれば銀行を認可する方針でおりますが、何分にも見込みの立たぬ銀行は、あとで預金者に迷惑を與えても困りますので、選択しなければなりませんけれども、考えとしては適当であれば認めて行きたい。それから御承知の中小企業金融の專門の銀行も、六大都市及び福岡市の七大都市に六十四の店舗ができまして、中小企業金融に力を入れるようにしております。この前御
審議を願いましたこの金融債の問題も、もう見返り資金からの
出資が終りまして、六月には、勧銀に十三億円、それから商工中金も四億円、それから農林中金も十億円、こういうふうに金融債を発行いたしまして全額償還済みであります。これはやはり国債の償還した
部分の一部が金融債にかわ
つて来ておるのであります。今月も今申し上げました金融債以外に、北拓に七、八億の金融債を出そうとしております。金融債によりまする資金は長期資金でございますので、私の考えとしてはできるだけ金融債の分は中小企業の方に向くように、指導をしておるのであります。なかなか戰争によ
つて非常な痛手をこうむり、かつ終戰後三年余りの間インフレの危機に直面したような経済を営んでおるものを、安定から自立に持
つて行く場合におきましては、各方面からいろいろな摩擦、困難があることは覚悟しなければならぬ。どこに支障がある、どこをどうしたかという議論がありますが、インフレをやめて安定経済に行く場合には非常な困難があります。その困難をたやすく見ておる国民が多いのではないか。インフレを安定から自立へ持
つて行くということは並たいていの仕事ではない。これは世界の歴史でほとんど全部失敗に終
つておる。これを日本は失敗せずにようやくここまで乗り切
つて来たのを、わが国一般に楽にできるとか、金詰まりとかいろいろな問題が出て来るのでありますが、いまだか
つてほとんど歴史上ないような大事業をして行こうとしておるのでありますから、非常な困難があると思います。しかしこれはどうしてもわれわれは石にかじりついてもやらなければならぬ。できるだけその困難を少くするように、われわれ日夜苦労いたしておるのであります。今後なおかなりむずかしい問題が起
つて来ることは覚悟しなければなりません。私は決して楽観しているのではありませんが、とにかく努力するよりほかしようがない。あまり先々の取越し苦労をするよりは、努力でこれを越えるという考えのもとにや
つておるのでありますが、皆さん方の御支持によりまして、大体順調な経過をとりつつあると思うのであります。今後も一そうの御援助をいただきまして、とにかく世界の歴史上まれに見るインフレから安定、自立への道をなし遂げたいという覚悟のもとにや
つておるのであります。至らぬところがございますれば、国会を通じましてできるだけ御鞭撻をお願いしまして、最近の財政経済の事情のお話を終りたいと存じます。(拍手)